日立製作所ニュートン・エイクリフ工場
日立レール ニュートン・エイクリフ工場 | |
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工場外観 | |
操業開始 | 2015年9月3日 |
場所 |
ニュートン・エイクリフ、 ダラム、イギリス |
業種 | 鉄道車両ノックダウン生産 |
生産品 |
385形 800形 801形 802形 803形 810形 |
従業員数 | 1,000人(2017年) |
所有者 | 日立レール(日立製作所子会社) |
座標: 北緯54度35分33秒 西経1度35分15秒 / 北緯54.5925度 西経1.5875度
日立製作所ニュートン・エイクリフ工場(英語: Hitachi Newton Aycliffe、Newton Aycliffe Manufacturing Facility)はイギリス、イングランド北東部のダラム、ニュートン・エイクリフに所在する日立レール・リミテッド(日立製作所子会社)の鉄道車両工場である[1]。
概要
[編集]日立製作所におけるヨーロッパ初の工場であり、イースト・コースト本線およびグレート・ウェスタン本線のインターシティ125、225の置き換え計画であるインターシティ・エクスプレス計画(IEP)の受注を機に[2]2013年に着工、総工費8200万ポンドをかけて2015年に完成した[3]。当初は構体の製造設備はなく、日本からの構体への部品取り付けのみを担当したが、2021年に構体溶接設備が増設され、構体製造以降の全工程が可能となった[4]。最盛期の2017年10月には従業員数が1000人を突破したが[5][6]、新車需要が一段落した2020年以降は700人程度まで減少している。
沿革
[編集]イギリス運輸省は2007年にインターシティ125の置き換えのために新型車両を導入することを決め、2009年2月12日に日立製作所が主導する合弁企業であるアジリティ・トレインズが落札したと発表した。2011年に日立製作所は新工場の場所としてイングランド北東部ダラムのニュートン・エイクリフにマーチャント・プレイス開発が開発した工業団地アマゾン・パーク(2013年半ばにマーチャント・パークに改称)を選定した[7][8][9]。ヘイントン駅(英語版)の近くにあり、ティーズ・ヴァレー線の線路に隣接した面積43,000km2の用地である。2012年7月にはファースト・グレート・ウェスタンとの契約の締結を受けて建設を進めることを発表し、2013年11月1日にシェファード・グループ(英語版)と建設の契約が8200万ポンドで結ばれた[10][11][12]。建設の開始は同年中に予定され、2015年に生産開始、2016年に完全操業というスケジュールがたてられ、2014年6月に骨組みが完成、10月にはトッピング・アウトが行われた[13][10][14][15]。2015年9月3日には中西宏明日立製作所会長、デイヴィッド・キャメロン首相、ジョージ・オズボーン財務相ら出席のもと、開所式が行われた[16][17][18]。開所時点で420人の雇用を創出しており、最大でさらに700人以上を雇用するとされた。この地域では2015年にティーズサイド製鉄所が一部設備を残して閉鎖され、3000人が解雇されており、求人には16,000人以上が応募したと報道されている。
2016年1月にはエディンバラ~グラスゴー改善計画(英語版)の一環として日立製作所が385形の製造契約を落札し、大半をニュートン・エイクリフ工場で組み立てることが発表された[19]。また、同年3月にはファーストグループのトランスペナイン・エクスプレス・フランチャイズ落札を受け、802形がニュートン・エイクリフ工場にて組み立てられることが発表された[20]。
また、イギリスのEU離脱をめぐっては、中西宏明は離脱が決まった場合にはニュートン・エイクリフ工場への投資規模が縮小されることになると述べており、地元労働党議員で離脱反対派のフィル・ウィルソン(英語版)はこれを強調している[21]。
2019年3月にはファーストグループがイースト・コースト・トレインズ向けにAT300(A-trainの一種・803形)を5本発注した。これらはニュートン・エイクリフ工場で製造され、1億ポンドの契約の一環として10年間日立が整備を請け負うことになっている[22]。発表時、日立側はロンドン地下鉄の車両置き換え計画でシーメンスに負けたばかりであり、新規の受注が必要だったと述べた。また、イースト・ミッドランズ・フランチャイズの電気・ディーゼル両用車両やタイン・アンド・ウィア・メトロの車両置き換え計画に入札する予定だとした[23]。
同年7月、日立がイースト・ミッドランズ・レールウェイ向けに165両の車両を製造することが明らかになった。これらは編成あたりディーゼルエンジンを4基搭載した電気・ディーゼル両用車両であり、5両編成に組成される(810形)。ミッドランド本線の車両限界の関係上、車体長はインターシティ・エクスプレス計画の800・801・802形より2m短い24mとなり、契約の金額は4億ポンドであるとされている[24]。
2020年1月、IEP関連の受注が一段落したことから250人規模の人員削減を表明した[25]。
2020年のアヴァンティ・ウェスト・コースト向け805形の受注を機に翌年には摩擦攪拌溶接設備が新設され、それまで笠戸事業所で実施してきた構体溶接作業が本事業所内でも可能となった。これにより更なるサプライチェーン拡大及び雇用増が見込まれるとされた。
工場
[編集]ニュートン・エイクリフ工場は31.5エーカーの面積があり、建屋部分だけでも44,000m2にのぼる[26]。最大で月間35両の組み立てが可能である。なお、工場はジョージ・スティーヴンソンが世界で初めて旅客営業を行った蒸気機関車であるロコモーション1号を組み立てた場所の近くにある。[27]
脚注
[編集]- ^ “Our Locations | Hitachi Rail EU”. www.hitachirail-eu.com. 2020年2月18日閲覧。
- ^ “Train manufacture starts at Hitachi Newton Aycliffe plant”. Darlington and Stockton Times. 2016年7月28日閲覧。
- ^ UK. “Hitachi opens Newton Aycliffe rolling stock plant”. 2016年7月28日閲覧。
- ^ “Hitachi adds welding facility to Newton Aycliffe factory” (英語). Railinsider. 2022年6月22日閲覧。
- ^ “Hitachi unveils first UK built trains at Co Durham factory” (英語). ITV News 2017年11月5日閲覧。
- ^ “Hitachi unveils first finished ScotRail Class 385”. www.railtechnologymagazine.com. 2017年11月5日閲覧。
- ^ “Amazon Park”. 24 May 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月8日閲覧。
- ^ "Hitachi go-ahead 'a massive boost for the North East'" (PDF) (Press release). Merchant Place Developments. 8 March 2011. 2012年4月26日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。
- ^ "Agility Trains Confirm Intercity Express Programme Contract" (PDF) (Press release). Agility Trains. 1 March 2011. 2012年2月20日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。
- ^ a b "Intercity Express Programme Financial Close Paves Way for Hitachi Investment in Rail Manufacturing and Assembly Plant" (Press release). Hitachi via Japan Corporate News Network. 25 July 2012.
- ^ Knowlson, Laura (1 November 2013). “Shepherd to build £82 million train factory”. The Press (York)
- ^ Hitachi Rail Europe Manufacturing Plant - Start of Construction Phase Ceremony with Rt Hon Dr Vince Cable MP and Rt Hon Patrick McLoughlin MP (Press release), Hitachi, (1 November 2013)
- ^ "£4.5 billion investment in new trains creates new jobs" (Press release). Department for Transport. 25 July 2012. 2012年7月25日閲覧。
- ^ “Hitachi Rail Europe Completes Steel Frame of Manufacturing Facility”, www.railway-news.com, (2 June 2014), オリジナルの6 June 2014時点におけるアーカイブ。
- ^ “Hitachi Rail Europe tops out Newton Aycliffe factory”, www.railwaygazette.com, (30 October 2014)
- ^ “New Hitachi facility opens in Newton Aycliffe” (英語). ITV News. 2020年3月28日閲覧。
- ^ Ltd, Merchant Place Corporate Finance. “Official Opening of Hitachi Rail Vehicle Manufacturing Facility” (英語). www.prnewswire.co.uk. 2020年3月28日閲覧。
- ^ 2015-09-03T13:52:00+01:00. “Hitachi opens Newton Aycliffe rolling stock plant” (英語). Railway Gazette International. 2020年3月28日閲覧。
- ^ UK. “ScotRail Class 385 EMUs under construction”. 2016年8月6日閲覧。
- ^ UK. “Hitachi awarded TransPennine Express multiple-unit contract”. 2016年8月6日閲覧。
- ^ “Brexit could force Newton Aycliffe's Hitachi to rethink its commitment to UK, warns chairman”. The Northern Echo. 2016年8月6日閲覧。
- ^ “FirstGroup and Hitachi announce new partnership for high speed trains linking London and Edinburgh”. Rail Professional. (21 March 2019) 21 April 2019閲覧。
- ^ Clinnick, Richard (10 April 2019). “Train orders crucial to Newton Aycliffe future”. Rail Magazine (Peterborough: Bauer Media) (876): 20–21. ISSN 0953-4563.
- ^ Clinnick, Richard (14 August 2019). “£400m bi-modes order launches EMR replacement programme”. Rail Magazine (Peterborough: Bauer Media) (885): 22. ISSN 0953-4563.
- ^ “Hitachi makes changes at Newton Aycliffe factory as IEP production ends”. レールウェイ・ガゼット・インターナショナル. (2020年1月10日)
- ^ Ltd. “UK Manufacturing Facility | Hitachi Rail Europe”. www.hitachirail-eu.com. 2016年7月28日閲覧。
- ^ Richardson (3 Sep 2015). “Cameron welcomes train manufacturing back to the North-East”. The Northern Echo. Newsquest. 28 July 2016閲覧。 “The new factory is close to Heighington Crossing where, almost 190 years ago to the day, George Stephenson assembled Locomotion No. 1 and began the first generation of passenger engines.”