分子イオン
分子イオン(ぶんしイオン、英: molecular ion)または多原子イオン(polyatomic ion) は、共有結合または錯体を作る2つまたはそれより多くの原子から構成されるイオンである。酸塩基化学においては単一の構造として働き、塩(えん)を形成する。かつては、必ずしも電荷を持たず、不対電子を持つラジカルの意味でも用いられていた。
例えば、水酸化物イオンは、1つの酸素原子と1つの水素原子から構成されており、OH-と表わされ、-1の電荷を持つ。アンモニウムイオンは、1つの窒素原子と4つの水素原子から構成され、NH4+の化学式を持ち、電荷は+1である。
分子イオンは、しばしば中性分子の共役酸または共役塩基と考えられる。例えば、硫酸イオンSO42-は、SO3+H2Oに分解されるH2SO4に由来する。
命名
[編集]分子イオンの命名には、2つの規則がある。1つ目は、biという接頭辞が付けられると、化学式に水素が1つ加わり、電荷が1増加する。biの代わりにhydrogenという言葉が用いられる場合もある。H+とCO32-から構成されるHCO3-は、bicarbonateまたはhydrogen carbonateと呼ばれる。
多くの分子イオンは、非金属元素酸化物由来の酸の共役塩基である。例えば、SO42-は、H2SO4に由来する。
2つ目の規則は、イオンの酸素原子の数に着目したものである。塩素のオキソアニオンを例にとると、以下のようになる。
酸化数 | −1 | +1 | +3 | +5 | +7 |
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陰イオン名 | 塩化物イオン | 次亜塩素酸イオン | 亜塩素酸イオン | 塩素酸イオン | 過塩素酸イオン |
化学式 | |||||
構造 |
まず、基本となる名前は、-ateという語尾を持つ。1つ酸素が付加されると、perという接頭辞が付けられる。酸素が1つ減ると-ateの語尾が-iteに変わり、もう1つ減ると-iteの語尾はそのままでhypoという接頭辞が付けられる。これら全ての場合において、電荷は影響を受けない。
以上の規則は、全ての分子イオンに適用はできないが、ほとんどの場合(硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、塩素酸イオン)に適用可能である。
分子イオンの例
[編集]以下の表は、分子イオンの例である。
陰イオン | |
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酢酸イオン | |
アセチリド | |
安息香酸イオン | |
炭酸水素イオン | |
炭酸イオン | |
シアン化イオン | |
水酸化物イオン | |
過酸化物イオン | |
超酸化物イオン | |
硝酸イオン | |
リン酸イオン | |
硫酸イオン |
陽イオン | |
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アンモニウムイオン | |
ホスホニウムイオン | |
オキソニウムイオン | |
フルオロニウムイオン | |
水銀イオン | |
トロピリウムイオン |