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電気自動車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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電気自動車(タケオカミリューTM09)

電気自動車でんきじどうしゃ, EVElectric Vehicle))とは、バッテリーと電気モーターの組み合わせを動力源とする自動車

電気自動車の環境性能

電気自動車は「排気ガスを出さないので、環境にやさしい」ものであると考えられている。電気自動車は排気ガスを排出しないので、局所的な大気汚染の緩和策には有効である。また、騒音源である内燃機関を搭載していないため、一般に音が静かであるという特徴もある。反面で自動車の接近に気づきにくく危険である、とも言われている。

エネルギー効率については、最新の火力発電所などの発電効率が良いこと、一方で自動車などに搭載されている内燃機関の部分負荷効率が悪いこと、などの事情を総合すると、電気自動車は内燃機関自動車を上回るものと考えられている。燃料電池風力発電で発電された電力を活用できることも優位点である。

重金属希土類や化学物質などを多量に消費するバッテリーを大量に搭載することからライフサイクルアセスメント(LCA)の観点からの問題も指摘されている。LCAに基づいた環境負荷計算は、変数をどう取るかなどによって大きく変わるものであるため、内燃機関自動車との環境性能の優劣については、明確な結論が出ていない。また、日本国内に限っていえば、電気自動車の運用は深夜の余剰電力を利用することが前提となっているが、内燃機関自動車の相当数を代替した場合、深夜電力は明らかに不足であり、発電所の増設が必須(環境負荷の増加)との試算もなされている。

エネルギー密度問題

電気自動車の最大の問題は、バッテリーのエネルギー密度が低いことである。ガソリンの9000[Wh/L]に対して、最新のリチウムイオン電池でもエネルギー密度は545[Wh/L]に過ぎない。これはガソリン車並の航続性能を実現するためには、単純計算で16.5倍の容量の燃料タンクが必要なことを意味する。(9000÷545=16.5) ただし、最新のモーターはガソリンエンジンよりも効率が5倍(単体同士での単純比較)程度良いので、必要なバッテリーの量も1/5で済むことになり、バッテリーの容量はガソリン車の燃料タンクの3倍で済む。(9000÷545/5=3.3) なお、以上の計算はあくまでも概算であり、実際にはバッテリーの重量増加分、制御装置のロス、エアコンなどの補機の運用まで考慮すると、容量は4倍以上になると考えられる。

仮に、普通車サイズの電気自動車に現行の4倍の容量の燃料タンク(=バッテリー)を持たせれば、乗車定員、荷物室の減少を意味することになる。逆に、乗車定員や荷物室の容量を現行並に保つとすれば、必然的に車体は大きく重くなる。このような重量増は燃費(エネルギー効率)の悪化を招くことになる。

(電気自動車がもっぱら乗用車用として研究され、大型の電気トラックが研究されていないのは、車体の重量増加が航続距離の減少を招き、それを補うためにバッテリーの搭載量を増やすとさらに車体重量の増加を招くという悪循環に陥ってしまい、モノにならないからである。)

最善の方法は、航続距離の減少に目をつぶって、実用性を損なわない量のバッテリーを搭載するしかないが、長距離を走行中にバッテリーの充電量がなくなり、急速充電で対応した場合、不足しがちな昼間電力を利用することになるため、環境負荷の面からは明らかにマイナスである。

電気自動車の効率がエンジン車より良いのは事実であるが、それはあくまでもエンジン車の総合性能と比較しない場合である。結局のところ、電気自動車は、近距離での集配業務のように、エンジン車の苦手な分野を代替する存在にはなれても、エンジン車の存在自体を代替する存在にはなり得ないのである。

歴史と現状

電気自動車の歴史は古く、蒸気機関ガソリンエンジンと自動車の動力源として覇権を争っていた。1899年に初めて100km/hを突破した自動車は電気自動車であり、各車輪に電気モーターを備えた四輪駆動車も、ローナー社在籍当時のフェルディナント・ポルシェによって1900年に開発されている。このような状況から、特にアメリカ合衆国では電気モーターにのみ将来性があると考えられており、最初のガソリンエンジン車が登場するのは1891年と、電気自動車に5年遅れての登場となった。

現在(2005年時点)、電気自動車は最高速度、加速性能などでガソリンエンジン車と遜色ない性能を持つが、重量やサイズあたりのバッテリーの給電能力(容量)が足らない・充電時間が長いという2点に基づく航続距離の短さ、バッテリーの寿命や価格などの問題が残されており、内燃機関エンジンを使った自動車に肩を並べるような競争力は持っていない。

国内における導入実例には、ダイハツが生産し1970年大阪万博の会場輸送で使われたもの、ホンダが栃木県のサーキットツインリンクもてぎ内で提供している会場内専用のレンタル車輌、トヨタニッサンが開発したシティコミュータ電気自動車を使用した自動車共用実験などがある。また、技術的に注目すべきものとしては、NECラミリオンエナジー(NEC富士重工業合弁会社)が開発した5分の充電で100キロの航続距離が可能なもの、東京電力三菱自動車が共同で開発している家庭で充電できるものなどがある。海外では、スイスの観光地ツェルマットなど、内燃機関自動車の乗り入れを禁止し村内の自動車は原則としてすべて電気自動車とされている場所などもある。

他に、特殊用途自動車としては、フォークリフトゴルフカートでは電動式のものが少なくない割合を占めている。動力つき車椅子や老齢者用カートは、大半が電動式であり、これらも電気自動車の一種といえよう。

市販の自動車の電気自動車への改造は、改造申請がガソリン車と比べると排気ガス検査がないなどの理由から比較的簡単であるため、まれに行われている。改造電気自動車には、近距離の荷物配達用バン(デリバリー・バン)や霊柩車などの実例がみられる。

燃料電池自動車やハイブリッド車の基礎技術としての電気自動車

電気自動車は多くのメーカが開発を進めていたが、航続距離などの問題を解決できるめどが立たないことから、内燃機関自動車を代替するものという位置づけは、ほぼ断念された。しかし燃料電池自動車やシリーズ型ハイブリッド車は、足回り部分は電気自動車そのものであり、これまでの電気自動車の研究開発成果はそれらに生かされている。

都市内交通としてのバスや業務用自動車は電気自動車や燃料電池車で、郊外も走るトラックや自家用車はLPG自動車やハイブリッドカーで、という使い分けも考えられている。

発売されたことのある車種

関連項目

外部リンク