ソーセージ
ソーセージ(フランス語: saucisse, 英語: sausage)とは、鳥獣類の挽肉などを塩や香辛料で調味した食品。湯煮や燻煙などの燻製処理を行い保存食とされる。
概要
多くは羊の腸などのケーシングに詰められるが、アメリカのブレックファスト・ソーセージのように成型のみで腸詰されないものも存在する。
挽肉をケーシングに詰める作業にはソーセージフィーラーあるいは専用の絞り器もしくは絞り袋を用いる。このうちソーセージフィーラーは本体がシリンダー状になったもので、ケーシングをファンネル部(口金)にセットした後で圧力をかけると挽肉がケーシングに詰められながら出るような仕組みになっている。
なお、現代の日本においては魚肉からできたものもソーセージと呼ぶ場合がある(いわゆる魚肉ソーセージ)。
ソーセージの歴史はハムよりも古く、ホメロスの『オデュッセイア』には既に、山羊の胃袋に血と脂身を詰めた兵士の携行食として登場している[1]。
語源
後期ラテン語のサルスス(salsus、「塩漬にした」)に由来するサルシキウス(salsicius)の単数女性形サルシキア(salsicia)から転じた古北部フランス語ソーシッシュ(saussiche)が語源[2]。
種類
- ウインナーソーセージ…太さ20mm未満(羊腸を使用したもの)
- フランクフルトソーセージ…20mm以上36mm未満(豚腸を使用したもの)
- ボロニアソーセージ…36mm以上(牛腸を使用したもの)
- ドイツのヴァイスヴルスト
- オーストリア・ウイーンのウインナー(ウインナーソーセージ)、ケーゼ・クライナー
- スペインとラテンアメリカのチョリソ
- ポルトガルのリングィーサ
- フランスのトゥールーズやリヨネーズ
- イタリアのチポラータやモルタデッラ
- ハンガリーのハンガリーサラミ
- トルコのシェフターリ・ケバブ
- リビアのオスベーン
- 東ヨーロッパのキシュカ
- ポーランドのキェウバーサ
- 中国の香腸(シアンチャン)や臘腸
- 朝鮮半島のスンデ
- タイ王国のネームやサイクローク・イーサーン
日本では、ソーセージといえばドイツのソーセージが特に有名である。ドイツ語ではソーセージのことをヴルスト(Wurst)というが、地方ごとに多種多様な形態があり、その地名を冠して呼ぶことが多い。日本で「フランクフルト」と呼ばれる太くて大きなソーセージも、本来はフランクフルト名産のヴルストなので、フランクフルターヴルスト(フランクフルト風ソーセージ)と呼ばれている。他に、細くて長いチューリンガー・ヴルスト、短いニュルンベルガー・ヴルスト、ミュンヘナー・ヴルストやカレーソースがかかったカレーブルストなども有名で、様々な種類がある。ソーセージに似た郷土料理としては、メス豚の胃に赤身肉やジャガイモを詰めてゆでたファルツ風胃袋詰め Pfälzer Saumagen がある。
また、血を腸に詰めたソーセージ(ブラッドソーセージ)としてフランスのブーダン、台湾の豬血糕などがあり、ブーダンはリンゴを添えた料理が一般的である。臓物を腸に詰めたフランスのアンドゥイエットというものもあり、大きさによって従来のソーセージのように一本丸ごと使うかまたはハムのようにスライスする。いずれも独特の臭味があるが慣れると好む人も多い。
マグリブ諸国にはイスラム文化の影響から豚肉の代わりにハラールな羊肉を使ったメルゲーズという辛味の腸詰があり、北アフリカからの移民の多いフランスでも一般的である。
日本
由来
日本におけるソーセージのルーツは第一次世界大戦時に捕虜として習志野俘虜収容所に連れてこられたドイツ兵のカール・ヤーンら5名のソーセージ職人が千葉市に新設された農商務省畜産試験場の求めに応じてソーセージ作りの秘伝を公開した事に由来している。この技術は農商務省の講習会を通じて、日本全国に伝わっていった。なお、捕虜となったドイツ人の何人かは日本にとどまり、ヘルマン・ウォルシュケ、アウグスト・ローマイヤー、カール・ブッチングハウスなどは日本にソーセージの文化を広める事に貢献した。一方、北海道では1919年に来日したカール・ワイデル・レイモンの功績が大きい。
規格
日本ではJASによりソーセージの規格が定められている。規格では、原材料や調理法やケーシング(腸もしくはフィルムの皮)によっていくつかの名称が付けられている。一般に多く目にするのはケーシングによる区別で、羊の腸に詰めた(もしくは直径20mm未満の)物を「ウィンナーソーセージ」、豚の腸に詰めた(もしくは直径20mm以上36mm未満の)物を「フランクフルトソーセージ」、牛の腸に詰めた(もしくは直径36mm以上の)物を「ボロニアソーセージ」としている。また製品の水分量が55%以下の物を「セミドライソーセージ」35%以下の物を「ドライソーセージ」としている。ケーシングや水分量によらず、魚肉及び鯨肉の原材料に占める重量の割合が15%以上になると、これら「ソーセージ」の規格を外れ、魚肉及び鯨肉が15%以上50%未満なら「混合ソーセージ」、50%以上なら「魚肉ソーセージ」の規格に分類される。
赤いウインナー
日本独自の商品として、赤色102号、コチニール色素などで表面を赤く着色したウインナー・ソーセージがある。これはソーセージに良質の素材を用いることができなかった昭和中期に考案されたもので、プレスハムなどと同様に発色の悪さを隠すための苦肉の策であったと伝えられている。しかしながら現在ではたこさんウィンナーに代表されるお弁当の定番として多くの日本人の支持を得ているほか、アニメなどを通じて日本固有の食材として海外にもその存在を知られるに至っている。
魚肉ソーセージも参照の事。
ソーセージを含んだことわざ・比喩
- ソーセージと法律(政策)は作る過程を見ない方がいい
- どんなにきれいにまとまった良い政策でも、その立法過程(政治)は根回しなどで、醜悪であるということ(ドイツのことわざ)。
- ソーセージの中身は肉屋と神様しか知らない
- 真実とは当事者以外には分からないものなので、むやみに他人の言葉を信じて騙されないようにという謹言(ヨーロッパのことわざ)。
両者とも、完成品であるソーセージからは、実際に使われている肉の種類や添加物、製造現場の衛生状態などは判別困難であり、ひき肉(血や内臓などを混ぜることもある)や動物の腸などのグロテスク(?)な材料の姿も思い浮かばないことから。
- それはソーセージだ
- それはどうでもよいことだ、それは大したことがない(ドイツの言い回し)。
- ダブルミーニングのネタとして
- ソーセージ/ウィンナー(またはその語)が男性器(陰茎)を暗喩するダブルミーニングとしてギャグに使われることが多々ある。(オースティン・パワーズシリーズなど)
ボツリヌス菌との関係
ソーセージやハムによる食中毒が1000年以上前から起きていたが、ソーセージに原因があることが判明したのは1870年のことであった。このときソーセージを意味するラテン語「ボツルス」を元に「ボツリヌス中毒」と名付けられる。さらに1895年に原因菌のボツリヌス菌が発見された。なお、ボツリヌス菌が作り出す毒素は強烈であるが熱に弱く、食べる前にソーセージを加熱することで簡単に分解する。また、今日の日本では、万が一のことを考慮し加熱殺菌済みのソーセージが多く流通している。
脚注
- ^ 宮崎正勝『知っておきたい「食」の日本史』角川ソフィア文庫・P217
- ^ wiktionary:en:sausage