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スミレ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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スミレ
Viola mandshurica
Viola mandshurica(2006-4-23)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類I Eurosids I
: キントラノオ目 Malpighiales
: スミレ科 Violaceae
: スミレ属 Viola
: スミレ V. mandshurica
学名
Viola mandshurica W.Becker
和名
スミレ
変種[1]
道路縁に群生

スミレ(菫)は、スミレ科スミレ属植物の総称であるが、狭義には、Viola mandshurica という和名である。

ここでは種としてのスミレを記す。なお、類似種や近縁種も多く、一般にはそれらを区別せずにスミレと総称していることが多い。それらについても下記を参照されたい。

特徴

種名としてのスミレViola mandshurica)は、道ばたを咲かせる野草である。深い菫色)の花を咲かせる。

地下茎は太くて短く、多数のを根出状に出す。葉は際から出て、少し長めの葉柄があって、少しやじり形っぽい先の丸い葉をつける。

花は独特の形で、ラッパのような形の花を横向きかやや斜め下向きにつける。5枚の花びらは大きさが同じでなく、下側の1枚が大きいので、花の形は左右対称になる。ラッパのに当たるのは大きい花弁の奥が隆起したもので(きょ)という。花茎は根際から出て、やや立ち上がり、てっぺんで下を向いて花のラッパの管の中程に上側から着く。

平地に普通で、山間部の道ばたから都会まで、都会ではコンクリートのひび割れ等からも顔を出す。

山菜としても利用されている。葉は天ぷらにしたり、茹でておひたし和え物になり、花の部分は酢の物吸い物の椀ダネにする。ただし他のスミレ科植物、例えばパンジーニオイスミレなど有毒なものがあるため注意が必要である。

分布

北海道から屋久島までの日本列島に広く見られる。国外では朝鮮中国からウスリーに及ぶ。

毒性

由来等

「スミレ」の名はその花の形状が墨入れ(墨壺)を思わせることによる、という説を牧野富太郎が唱え、牧野の著名さもあって広く一般に流布しているが、定説とは言えない。

学名種小名 mandshurica は「満州の」という意味である。和名である「スミレ」は、このままだと名や名、さらには名と紛らわしいので、スミレ愛好家は特に本種を指す場合、この名に由来するマンジュリカで呼ぶことがある。

変種

種内の変種としては、以下のようなものがある。

アツバスミレ Viola mandshurica var. triangularis Mizushima
本州中部南岸から九州にわたる海岸に見られるもの。葉は厚くて幅が広く、表面に光沢がある。
アナマスミレ Viola mandshurica var. crassa Tatew.
北海道から本州中部日本海側の海岸型。葉は矛型で細く、厚くて光沢がある。

類似種

スミレ属には種類が多い。日本産でスミレに似た姿の種としては以下のようなものがある。いずれも茎は地表にあって太くてごく短く、葉は根出状。また、人里周辺に顔を出すものも多い。

ヒメスミレ Viola confusa Champ. ex Bentham subsp. nagasakiensis (W. Becker) F. Maek. et Hashimoto
人家周辺に多い。全体に一回り小さく、葉は三角形。本州から九州、台湾に分布。
ノジスミレ Viola yedoensis Makino
平地に生育。普通、葉や花茎一面に毛がある。葉はやや長い楕円形っぽい。本州から九州、朝鮮南部、中国に分布。
コスミレ Viola japonica Langsd.
葉は卵形っぽいハート形。北海道南西部から九州、朝鮮南部に分布。
リュウキュウコスミレ Viola pseudo-japonica Nakai
コスミレに似るが、葉はハート形より三角に近い。南西諸島に分布。
アカネスミレ Viola phalacrocarpa Maxim.
サクラスミレ Viola hirtipes S. Moore
花が大きく、葉はハート形。北海道から九州に分布。
ヒカゲスミレ Viola yezoensis Maxim.

姿が似ていて白い花をつけるものに次のような種がある。

アリアケスミレ Viola betonicifolia Smith var. albescens (Nakai) F. Maek. et
形はスミレに似た点が多く、花は白。本州から九州、朝鮮、中国に分布。琉球列島には同種ながらリュウキュウシロスミレ Viola betonicifolia var. oblongo-sagittata (Nakai) F. Maek. et Hashimoto がある。花がより長い柄の先につく。種としては東南アジア一帯にまで分布する。
シロスミレ Viola patrinii DC

上記種は形態的にスミレに近いものであるが、むしろ、同じスミレ属のタチツボスミレ Viola grypoceras var. grypoceras が普通種で、スミレとも混在するため、これがスミレと認識されている場合が多い。こちらの方は、茎が立ち上がるために知っていれば区別は簡単である。ただしこちらにも類似種が多いので、種の同定はやはり簡単ではない。

外来種は、パンジービオラと呼ばれる園芸種が多い。種としてのスミレは東アジアにしか分布しないから、外国文学に出てくるスミレは別の種を指す。ヨーロッパではニオイスミレも普通に馴染まれている。

その他

脚注

  1. ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)”. 2011年4月30日閲覧。

参考文献

  • いがりまさし『増補改訂日本のスミレ』高橋秀男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2005年1月、126-127頁頁。ISBN 4-635-07006-9 
  • 山田隆彦『スミレハンドブック』文一総合出版、2010年、55頁頁。ISBN 978-4-8299-1077-1 

関連項目

外部リンク