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めがねちゃんさんの映画レビュー・感想・評価

めがねちゃん

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田舎司祭の日記(1950年製作の映画)

4.0

病に侵された若い司祭が自らのやるべきことへと向かおうとする。そのなかで、司祭自身も、司祭を取り巻く村の人々も、自らの信仰に心を悩ませる。自らのうちで神と対話して自分で自分の罪に向き合う、という在り方は>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

一部の人しか手に入れられないものは幸福とは言わず、みんなが手に入れられるものを幸福と呼ぶ。うろ覚えだけども、校長先生のセリフが印象に残っている。同じことを「怪物」にも言えるのだろう。自分のなかに、怪物>>続きを読む

血観音(2017年製作の映画)

3.5

誰しも心のうちに鬼がいて、鬼と共にありながら、愛を求めるのだろう。その繊細な心理的運動を絶妙な演技と映像で見せていた。湿度の高い映画は嫌いではない。台湾に行きたいと思った。

日本解放戦線 三里塚(1970年製作の映画)

4.5

シリーズ2作目。カラー。土色の大地と、その土地とともに生きる人々の色とが強烈に描き出されていた。後半、農民の寄り合いで、親戚のしがらみによって売り出されることになる土地を守るためには、血縁とは異なる、>>続きを読む

日本解放戦線 三里塚の夏(1968年製作の映画)

4.5

昭和41年の空港建設閣議決定、43年から測量開始とテロップが入り、機動隊が西瓜畑を踏み荒らす映像。「せっかくこしらえた西瓜をむちゃくちゃにする法はないですよ!」。ベートーヴェンの第九とともにタイトルが>>続きを読む

奇跡の海(1996年製作の映画)

4.5

理念的なものとして外には神が、内には理性というものがあり、そう言ったものの声に耳を傾けることもあれば、愛とか意志という内から湧き出てくる力を信じることもある。『ゲルマニウムの夜』という小説は、主人公が>>続きを読む

ヨーロッパ(1991年製作の映画)

4.0

第二次世界大戦直後、ニューヨークからドイツにやってきた青年の話。「ヨーロッパ」の精神に基づいて走り続ける列車に乗せられて、彼らは己の人生を生きることができない。冒頭、ナレーションは数字を数えて私たちを>>続きを読む

ドッグヴィル(2003年製作の映画)

4.5

ラース・フォン・トリアー監督による独特の映画。わたしたちの「人間性(人間であるということ)」とは何かということに関する重大なテーマを展開している。人が人を人として扱うということは、人が人を犬として扱う>>続きを読む

ロブスター(2015年製作の映画)

4.5

ヨルゴス・ランティモス監督『ロブスター』を見た。シャルル・フーリエの本に登場するような人々のカップリングを管理する社会の延長に、1人か2人かどちらかしかない世界があるのだろう。管理というのはそういうも>>続きを読む

オー・ブラザー!(2000年製作の映画)

4.0

三人の脱獄囚が1930年代のミシシッピの田舎街を渡り歩く、コーエン兄弟による2000年のコメディ(?)。ミシシッピといえば綿花はもちろん、ブルースやカントリーというイメージ通り、人々がよく歌う映画であ>>続きを読む

天使の涙(1995年製作の映画)

4.0

よく居るタイプの殺し屋と、彼に指示を出す前髪の長い相棒のお姉さん。髪の毛が印象的すぎるギャルと、常識が通用しない無口だけど強引な囚人の少年(的青年)。登場人物たちがあまりにもユニークなので、それだけで>>続きを読む

幸福なラザロ(2018年製作の映画)

4.5

以前、渋谷Bunkamura の劇場でみた際の感想を書いておく。最近、PrimeVideoでもレンタルして見ることができるようになったそうなので。

私たちは、どうしても善なる人間を殺してしまうのだと
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欲望の翼(1990年製作の映画)

3.5

飛んだまま眠り、ただ死ぬ時だけ地面に降り立つ鳥と、飛ぶことなく生涯を過ごし、ただ死ぬ時だけ空に飛び立ってゆく鳥がいる。欲望の翼はいつ羽ばたくのかが問題だ。

この映画に登場するものの全てが、大陸の東海
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恋する惑星(1994年製作の映画)

4.0

愉快な小説を読んでいるような台詞が心地よい映画だった。ストーリー自体は、何ということもない心に残る出会い(恋愛とはいつだってそういうものだろう)がふたつ。

全体を構成する愉快な雰囲気を醸し出している
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ミラーズ・クロッシング(1990年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

良いギャング映画には良い音楽。トンプソンマシンガンが火を吹けば、軽やかなハーモニーが流れてきて欲しい。そんな期待にしっかり答えてくれる映画だった。

主人公のトムは終盤まで誰1人殺すことができない。
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バスターのバラード(2018年製作の映画)

3.5

小さい頃、民話がたくさん収録された和綴の小冊子をよく読んでいた。コーエン兄弟のこの作品をみて、こうして感想を書こうとしたら、それを思い出した。あの趣ある冊子にあった取り留めのない説話たちに近い雰囲気が>>続きを読む

別離(2011年製作の映画)

4.0

離婚調停から始まり離婚調停に終わる。その事柄においても、また映画全体を通じても、挟まれているのは彼らの娘であった。親権を争う両親のどちらかを子が選ばなければならないというのは、より一般化して考えてみる>>続きを読む

トム・アット・ザ・ファーム(2013年製作の映画)

3.5

繊細な精神によって描かれた世界には、繊細な魂が宿る。作品を理解することが真にそれと交流することであるならば、観衆もまた同じ魂を持たねばならない。なぜなら、共通の魂の所有こそが、真の交流を可能にするソサ>>続きを読む

パリ、ただよう花(2011年製作の映画)

4.0

人間同士の関係にセックスが入り込むと、何かが歪んでしまう気がしている。それを一概に悪いとも思わないし、反対に良いとも思わない。それは美しいかもしれないし、楽しいかもしれないが、同時に悲しいかもしれない>>続きを読む

ラッキー(2017年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

人は皆いつか死ぬが、いろんなそれぞれの人間にとってその「死」の意味は同じではない。一般的に言って、出来事はひとつだが、出来事の意味はひとつではないのである。だからこそ、誰もが迎えるであろう同じ一つの死>>続きを読む

ふたりの人魚(2000年製作の映画)

3.5

酒の味を覚えたての頃、痺れるような舌の感覚への好奇心から、強い酒ばかり飲んでいた。友人の家にあったズブロッカを初めて飲んだのも、その頃だった。草の香り、もう長いこと飲んでいないがすぐに思い出せる、あの>>続きを読む

リアリティのダンス(2013年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ホドロフスキー監督自身の自伝的内容を戯画的に描き出した映画。時折入るナレーションは少年時代を回顧する自分自身である。幼い頃の自分自身に寄り添い、そして逆に老ホドロフスキー自身も幼い頃の自分に寄り添われ>>続きを読む

第七の封印(1956年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

騎士は「死」とのチェスに負ける。他方で、芸人は「死」に連れ去られてゆく騎士たちを、ある種の至福のうちに見守る。これが復讐でなくて何であろうか。他でもなく、黙示録すなわちアポカリプスの思想とは「強きもの>>続きを読む

蜂蜜(2010年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

『卵』『ミルク』ときて、『蜂蜜』である。我々は鳥から牛から蜂から、あるいは無数の他の生き物たちから収奪し自らの糧とする。そして自らも自然のうちに還ってゆく。そのうちの一部分に人間の物語が存し、そこに詩>>続きを読む

ミルク(2008年製作の映画)

4.0

詩を描く青年ユスフが家を出るまでの話。音楽も、言葉も、いかなるものも彼の感情を語らない。彼の書いた詩がいったいどんな風であったのかも具体的には語られない。ただ映像と物音の力でもって彼の成長が描き出され>>続きを読む

(2007年製作の映画)

4.0

概して、人々が何を考えているのか、本当のところ、わからない。寡黙な詩人が相手ならば尚のことそうであろうし、そうであるべきだろう。ときおり見せる、ユスフの笑顔や涙がいったいどの泉から湧き出てきたものなの>>続きを読む

クロノス(1992年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

クロノスデバイスに仕込まれた「虫」が良い。ガチガチの歯車的機械の心臓部でグロテスクな虫が柔らかく蠢く様子は、映し出される度、我々に興奮を覚えさせるだろう(それが快か不快かはさておき)。

タンゴ調の音
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みじかくも美しく燃え(1967年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

39分あたりのシーン。

「彼女は君を変えた」「なるほど、だがそれが、それが愛じゃないか?お互いに相手の目を借り合うべきだ。世界を経験したいと同時に恋人の経験も知りたい。愛する人の見る世界を知りたい。
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