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ダンクシー

クリーン、シェーブンのダンクシーのレビュー・感想・評価

クリーン、シェーブン(1993年製作の映画)
4.0
「お前と別れてずっとだ。病院に閉じ込められ手術された。奴らがパパにしたのは頭に受信機を指先に送信機を埋め込んだ。何か分かる?」
「無線機?」
「そうだ。送信機を取り出すために爪をはがした」

スゲェ…。幼女殺人事件が起きて、容疑者として主人公が刑事に追われるというストーリー。逃走劇という訳ではなく、何をしているかイマイチ分からない主人公の行動と、ひっそりとマークして捜査する刑事の2つの視点から描くサスペンス要素のある仕上がりになっている。
淡い色味とか雰囲気とかは、アングストを思い出した。幻聴とか頭をハサミで切るとことかカットの雰囲気とかは、レクイエムフォードリームとπを思い出した。にしても、暗転が多いのがちょっと気になったなぁ…。

「なぜニコールを養子に出した?」
「壊れていく息子を見てられず…元から静かだったけど明るい子だった。でも急に変わったの。ニコールはそうなってほしくない」

外界の音などを過敏に感じ取ってしまう統合失調症のニコールの世界。理解不能な苦痛と刺激。息苦しさと不安定な精神を強烈に描いており、自分も追体験しているようで恐ろしかった。多くを語らない不明瞭さが特徴的だ。
娘を遊びに誘うシーンの不審者感がエグすぎて笑ったが、実際はかなり切ない作品だった。生きることの難しさ、そして人間の弱さを後味悪く不穏にも、美しく表現していた。適切な治療と家族のサポートがあれば、心優しい彼に戻れたのかもなぁ。。
演出としてノイズもかなりあるしグロい描写もあるし、不快に感じる人が多いのは当然だと思う。けど、不快にさせるだけの安い映画じゃなくて静けさと儚さに、固定観念で決めつけることの危うさを刑事だけでなく我々観客にも暗に伝わるようになってる構造がリアルだし、印象深く心に残る作品だ。

p.s.死体を見て怒りが込み上げてハンドルをバンバンバンバンするとこ好き。
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