従来の需要予測手法は,時系列分析や回帰分析等の再現性を保証するサイエンスの観点からの手法と,デルファイ法や市場調査など人間の感性や知識に基づいたアートの観点からの手法に分けることができる.しかし,近年この2つの手法を融合しようとする研究が進んでおり,それがいわゆる予測市場による需要予測手法である.予測市場は大統領選挙などの繰り返し性の低い事象において,集合知メカニズムを用いて的確に予測できる特徴があり,商品の需要予測に応用しようとする研究が行われている.本研究では,集合知メカニズムに基づく投票方式の需要予測手法を提案し,実際の企業において31人の参加者により需要予測精度を確認する実験を5か月間にわたり行った.実験で得られたデータを統計的に検定することで,既存の社内ロジックによる手法と提案手法の需要予測誤差には有意差があることが分かり,提案手法の需要予測精度が高いことを示した.