抄録
代表的な屋根構法である折板屋根は,耐風圧性能を高めることが構造安全性を確保する上で最も重要なポイントである.しかし,適切に設計された折板屋根の耐風圧性能レベルや不十分な施工管理等による耐力の低下やばらつきが強風被害の発生に与える影響等は定量的に十分明らかにされていない.そこで,本研究では折板屋根を対象として,強風に対するバルナラビリティの評価及び評価結果に基づく強風被害状況の予測を行った.
まず鋼板製屋根構法標準にしたがった折板屋根接合部の耐力試験の結果を,モンテカルロシミュレーションを通して確率モデルの構築に反映させた.そして確率モデルに基づき,信頼性指標に応じた破壊時に想定される瞬間風速を示した.次に設計後の不十分な施工管理や維持管理の状況を反映した係数を導入し,それらが要因となる耐力の低下やばらつきが被害発生に与える影響を定量的に示す方法を提示した.