1月はAppleの新型iPad Proを旧式iPadユーザーの視点で見たり、旧iPhoneのバッテリーを交換したりしてきましたが、今月は自作PCのお話をお届けしたいと思います。
2000年代後半(特に2007年のNetbook以降)から2010年代にかけてPCの低価格化が一気に進みました。いわゆる“つるしのPC”(店頭で売っている、OSを含めた完成品PCのことです)を買う方がコストパフォーマンスが高くなってから久しいです。
PCの絶対的な性能を優先するならば、やはり今でも「自作PC」に軍配が上がりますが、すでにPCの性能は大きく底上げがなされており、ビデオ編集や科学計算、マクロの山となったビジネス処理といった特定の用途を除けば、極端なパフォーマンス不足に悩まされることもほぼないと言えるでしょう。
さまざまな要素が重なり、自分の用途や好みのパーツを選んで組み立てる自作PCは、今やすっかり趣味の世界の話になっています。かく言う筆者も、2014年に開発コード名「Devil's Canyon」ことCore i7-4790KでデスクトップPCを組んで以降、自作の世界から遠ざかっているのが実情です。
2年前に降ってわいたAMDのRyzenブーム(安価でメニーコアCPUが入手可能)の時も大いに心を動かされましたが、第2世代の“Sandy Bridgeおじさん”が戦えるのだから、「第4世代のHaswellだって戦えるさ」と、かろうじて踏みとどまった経緯があります。
このCore i7-4790Kは、Haswell Reflesh世代の最後っぺとして登場したCPUで、Intelの一般向けCPUとしては史上初となる定格4GHzで動作(最大4.4GHz)することもあって話題を集めました。
製造プロセスは22nm、TDP(Thermal Design Power、熱設計消費電力)は88W、CPUパッケージはLGA1150、統合型のグラフィックス機能としてIntel HD Graphics 4600を備えます。4コア8スレッドというスペックは、一気に進んだ昨今のマルチコア化の中では控えめなものですが、発売から約5年がたった今でも、Webブラウズや一般的な利用において、性能面で不満を覚えることはほぼありません。
このCore i7-4790Kは2014年6月に発売されました。デュアルチャネルでの動作を目指してメモリはDDR3-1600の8GBを2枚、当時最上位のチップセットとなるIntel Z97 Express搭載マザーボードを同時に買い、後日GeForce GTX 970搭載グラフィックスカードを追加しました。しかし、数年後にマザーボードが突然死を迎え、つなぎでIntel H81チップセット搭載の中古製品を購入し、今に至ります。
そんなすっかりさびついた筆者が、久しぶりに自作をする気になったのは、たまたま耳にしたIntel NUC製品のリリースがきっかけでした。Next Unit of Computingの略称であるNUCは、2012年10月にIntelが提唱した小型フォームファクター(約10cm角のマザーボードを採用)で、今ではベアボーンモデルとメモリやストレージ、OSがあらかじめセットになった完成品が売られています。
実はNUCなんて、小さいだけで価格も高いし性能もいまひとつだよなぁと思っていました。実際、4コア8スレッドのCPUを搭載したモデルはドクロマークでおなじみの「Intel NUC6i7KYK」や、内蔵GPUにAMD Radeon RX VEGA Mを突っ込んだ「Intel NUC8i7HVK Hades Canyon」では、ボディーがほぼ弁当箱サイズになり、高負荷時の騒音や発熱が気になって食指が動きませんでした。
そんな状況が一変したのは、2018年11月に店頭に並んだ新型NUC「Bean Canyon」(開発コード名)でした。スタンダードな形状のNUCに、4コア8スレッドで動作する第8世代Coreプロセッサを採用しています。
4コア8スレッド動作のCPUという意味では、「NUC7i7DN」シリーズが初となりますが、システムに負荷をかけ続けると冷却ファンの耳障りな風切り音や、発熱でCPUの性能が自動的にダウンするという話が出ている点が気になっていたのです。
一方、Bean Canyonの「NUC8i7BEH」に搭載されているCore i7-8559U(開発コード名:Coffee Lake-U)はTDPこそ従来NUCに採用されていた15Wを上回る28Wになりましたが、冷却機構の改良によって静音化が果たされているというではありませんか。これは大いに気になるところです。
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