「プレイステーションよ。これがRPGだ!」と銘打ち、1995年に初作である『幻想水滸伝』が世に出るや否や、熱狂的な『幻水』ファンを生み出し、以来本編と外伝を含めた11のシリーズ作を発売してきた悠久の名作『幻想水滸伝』シリーズ。その『I』と『II』のHDリマスター版『幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争』が2025年3月6日に発売される。
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対応プラットフォームはNintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、Xbox Series X|S、Xbox One、PC。
本作の発売を記念して、主要開発スタッフの内藤塁氏、崎山高博氏、大串達也氏にインタビューを実施。開発秘話と気になる発売後の展開をお聞きした。なお、一部ネタバレにつながる記述があるので、オリジナル版を遊んだことがない方は、その旨了承のうえ読み進めてほしい。
▼“幻想水滸伝Live”第1回の発表内容はこちら。
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原作(プレイステーション版)のイメージを損なわないように、フィールドや街、ダンジョンなどをすべてHDグラフィック化!
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さまざまな敵味方の群像劇が描かれる重厚なシナリオがファンの心をつかむ『幻想水滸伝』の物語。
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『幻水』の醍醐味である108人の仲間を集め、多彩な編成が楽しめる6人制パーティーバトルは、よりサクサクと進められるように改善!
内藤 塁氏(ないとう るい)
本作『HDリマスター』と『幻想水滸伝』IP全体のプロデューサーを担当。
『HDリマスター』はIP復活のカギを握る重要なタイトル
――最初に本作での役割を教えてください。
内藤
本作のプロデューサーと『幻想水滸伝』IP全体のプロデューサーをしています。
崎山
『幻想水滸伝』シリーズIP&ゲームディレクターです。本作では、企画の立ち上げからしばらくはディレクターを担当し、後半は大串ディレクターにバトンタッチをして完成まで導いてもらいました。
大串
開発途中から開発に参加して、本作のディレクターを担当しています。役割としてはチームのまとめ役で、スケジュール管理や方向性の決定、修正指示や確認などを行いました。
――企画はいつごろ動き出したのですか?
崎山
『HDリマスター』制作の企画を立ち上げたのは2020年です。それから制作を進めて、東京ゲームショウ2022の “KONAMI新作発表ステージ”で発表することができました。当時は2023年の発売を目指していましたが、開発の終盤にかけてチェックを進めていく中で、想定以上に根深い不具合がいろいろと発見され……。
それらの不具合を完全に修正するためには、プログラムのさらなる解析と修正方法の再検討をまとめないと今後のスケジュールが立てられないと判断し、発売を延期することになりました。
大串
『幻想水滸伝』のIPを復活させてこれから続けていくためにも、品質はできるだけ上げたほうがいいと考えました。社内でもいろいろ検討した結果、スケジュールは延びてしまいましたが、皆様のもとに自信をもってタイトルをお届けすることができます。
――手応えを感じていると。
内藤
3月4日に配信した公式番組“幻想水滸伝Live”内で複数のプロジェクトを発表しましたが、新たなスタートを切るのがこのHDリマスター版になります。これから『幻想水滸伝』のIPを復活させようとしているのに、本作の品質が悪くてつまずいてしまうと、先に進むことはできません。シリーズファンの方たちもIPの復活を応援してくれると思いますが、今後ますます盛り上げていくためには新規の方たちにも広げていく必要があります。
そのための施策として本作はマルチプラットフォームで展開していますが、快適に遊べるかどうかもかなりこだわっています。各プラットフォームでの最適化も含めて、特定のハードだけロード時間が長くならないようにするなど、細かいところまで確認しました。
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HDリマスターのUI
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原作(プレイステーション版)のUI
多くのファンに長年愛される『幻想水滸伝』の魅力とは?
――じつは、週刊ファミ通読者は『幻想水滸伝』シリーズのファンがすごく多いんです。30年の時を経ても覚めない『幻想水滸伝』の魅力は、どんなところにあるとお考えですか?
崎山
私はやはりストーリーだと思います。そのうえで、物語を形作るキャラクターがいる。キャラクターも単に数が多いだけではなく、人間と人間の関係性をしっかりと描いているのも特徴で、1作目では親子や師弟といった関係性が丁寧に描かれていました。登場人物の関係性がいくつも積み重なっていくことで、物語全体から群像劇のおもしろさを感じてもらえると思います。
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『幻想水滸伝II』にも、主人公と幼馴染の人間関係や、彼らがたどる波乱万丈な運命、ゲーム史に残る名悪役のルカとの対決など、見どころがたくさんあります。108星の仲間たちと力を合わせて戦っていくという体験もほかのRPGにはないので、『幻想水滸伝』は特別だよねと思っていただけているのではないでしょうか。
大串
崎山と重複するところもありますが、登場人物がものすごく多いにも関わらず、バックボーンがひとりひとりにちゃんと用意されているところが、厚みのある魅力的な物語を生み出していると思います。
世界観も洋風だけではなくて、中華風や和風のテイストがいろいろ混ざることで、『幻想水滸伝』ならではの世界を生み出していますし、戦うための信念や理由などを陣営ごとにしっかりと描くことで、壮大な国家間の争いの魅力が増していると感じています。また、とくにコミカルな表現などまでもが凝っているキャラクターのドット絵や、世界観にマッチしたサウンドも、ファンの方たちに愛される理由だと思います。
内藤
『幻想水滸伝』は、人間と人間の争いをしっかり描いているところがすごく好きですし、いちばんの魅力だと思います。あと、余白が感じられるストーリーも魅力的だと感じていて。以前、村山さん(※村山吉隆氏。『幻想水滸伝』シリーズの生みの親)に教えてもらったのですが、“……”の数にもちゃんと意味があるんですよ。
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細部までこだわって考えられたセリフと、いま見てもクオリティーの高いドット絵のキャラクターたちの演技が組み合わさることで、プレイヤーに想像させる余白を、いい感じに生み出してくれていて。プレイヤーが想像をふくらませやすいからこそ、『幻想水滸伝』をより深く好きになってくれる方が多かったと考えています。
――閑話休題。『幻想水滸伝』と言えばキャラクター談議が欠かせないところ。みなさまのいちばんのお気に入り108星を教えてください。
内藤
僕はテオ(※『幻想水滸伝I』の主人公の父親。)かな。主人公との展開が衝撃的でしたし、自分が父親になってからは、テオと同じように主人公を送り出せるのかな、父親って何だろうなといろいろ考えさせられました。
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テオは、帝国五将軍のひとりで主人公の父親。百戦百勝将軍と呼ばれ、圧倒的強さと、皇帝への絶対の忠誠心を持つ。『幻想水滸伝I』のキャラクターは、同作の原作を手掛けた河野純子氏によってイラストが一新されている。
――なるほど。崎山さんは?
崎山
私はオデッサ(※『幻想水滸伝I』の登場人物)です。今回、リマスター版を制作するにあたって、すべてのセリフをまとめ直して確認したのですが、オデッサはセリフがかなり少ないんですよ。それにも関わらず、強く印象に残っているのは、すごいなと思います。オデッサというキャラクターはインパクトがあって好きですね。あと、オデッサに付随して兄のマッシュもお気に入りです。軍師としての主人公との関係性や導きかたというのが、戦記物としてのポイントになっていると思います。
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オデッサは、貴族という身分を捨て帝国の悪政に対抗すべく“解放軍”を創設。決してあきらめることのない強い女性。
この流れで言えば、『幻想水滸伝II』はシュウ。仲間になった後、的確な指示を出す姿からシュウが軍師としてすごい人だと伝わると思いますが、とくに印象的なのは、リッチモンドのパーフェクトな仕事でシュウが仲間になるときのイベントです。絵的にもすごく美しいシーンなのですが、HDリマスター版では水の表現がますますきれいになっているので、ぜひ観ていただきたいですね。
――シュウを仲間にするのが楽しみです! 大串さんのお気に入りは?
大串
2作続けて登場するビクトールは、ものすごく好きなキャラクターですね。ネクロードとの過去の因縁も印象的なのですが、序盤から主人公たちの頼れる先輩としてパーティーに加わり、長くお世話になることもあって、シリーズを代表するキャラクターだと思います。
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解放軍のメンバー。各地を渡り歩くことから“風来坊”の通り名がある。剣の腕や人を見る目は確かだが、気楽で楽天的。『II』でも引き続き登場する。
『幻想水滸伝II』はナナミですね。やはり作品にとっても特別重要なキャラクターだと思っていて、ナナミはユーザーのような視点を持っているんですね。「このままでいいんだろうか」と主人公に投げかけたりして。主人公のよきお姉さんとして、一服の清涼剤のような役割もあるので、ずっといてほしい仲間です。あと、主人公とナナミの協力攻撃も特徴的で好きですね。時代に合わせて多少の調整はしていますが、原作の演出はそのまま残しています。
HDリマスター版で進化した『幻想水滸伝』の魅力
――そんな『幻想水滸伝』の1作目と2作目がHDリマスターとなって復活します。改めて本作で注目してもらいたいところや、こだわって制作したところを教えてください。
大串
時代に合わせてバトルの倍速機能(※2倍速/4倍速)の追加や、移動速度を速めるダッシュ機能の調整をしています。オリジナル版では、とある条件を満たすとダッシュが使えるようになるのですが、今回は魅力的な物語にすぐに触れてもらいたいということで、序盤のテンポを上げるために無条件でダッシュできるようにしています。もともとオリジナル版のテンポもよかったのですが、本作ではさらにテンポよく遊べるようになりました。
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崎山
リマスター版で『幻想水滸伝』の1作目もゲームの最初からダッシュ移動できるようになったことで、オリジナル版で活躍したあのキャラクターの存在意義を心配するファンの方たちの声も聞こえてきましたがご安心ください。パーティーに彼がいることでさらに快適に遊べるようになります。
――それはうれしいですね。崎山さんが考える注目ポイントもお聞きしたいです。
崎山
やはりグラフィックですね。オリジナル版は昔のブラウン管テレビで遊ぶにはほどよい解像度ではありましたが、いまの大画面のテレビで見るとどうしても残念に感じてしまいます。当時は約700MBのCD-ROMの中に、シナリオ、グラフィック、音楽といったすべてのデータを入れなければならなかったので、ものすごい技術を使ってデータを効率よく圧縮して入れていました。
ですので、顔グラフィックにしても圧縮ノイズ(※画像を圧縮する際に生じるノイズのこと)や、使える色数がかなり制限されていたのですが、本作ではグラフィック素材に限らず、サウンドやSEも元になる素材を探してできるだけ綺麗にリマスターしています。街の背景はすべて描き下ろし、ワールドマップは3D表現へリメイクしました。
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――ちなみに、ゲームバランスの調整は?
大串
ゲームバランスのよさも、原作のよかったところのひとつだと思います。そういったところはそのまま残すのがベストだと考えて、不具合の修正以外は、オリジナル版と同じゲームバランスになっています。
崎山
『幻想水滸伝』のバトルは、簡単だと思う方も少なくないと思いますが、冒険に連れて行くキャラクターをプレイヤーが自由に決められるように、あえて遊びやすいゲームバランスになっています。レベルの低いキャラクターのレベルが上がりやすくなっているのも、『幻想水滸伝』においては、このゲームバランスが適切だと確信しているからです。ただ、歯応えのあるバトルを楽しみたいというファンの方へ向けて、本作では少し準備が必要なハードの難易度を追加して選べるようにしました。
アップデートでとあるイベントに関連した便利な機能が登場!
――攻略の部分でも新鮮な気持ちでプレイできそうですね。ダウンロードコンテンツやアップデートなど、発売後の予定は……?
大串
発売してすぐにアップデートを行います。細かい不具合の対応や翻訳のテキストの修正、サウンドのバランス調整などを行っているほか、とあるイベントで利用できるイベントタイマーのオン/オフ機能を追加しています。この機能をオンにしていると、そのイベントの時間制限のタイマーが止まるので、オリジナル版で失敗した人も達成できると思います。
崎山
タイマーがあると、シナリオを飛ばしてプレイするかたちになってしまうので、もったいないとは思っていました。シナリオをじっくり読み進めてもらうためにも、最初のプレイではあまり気にせずに、皆さんが思うままに遊んでもらえるとうれしいですね。
大串
このイベントのことだったのかと理解した後で、1周目とは異なる展開を見るためにオン/オフ機能を利用してほしいです。
――本作をプレイされた方は、当然、『III』や『IV』などのリマスターを期待すると思いますが、今後の展開は……?
内藤
ノーコメントで!
――えぇ! せめてもうひと声……!
内藤
IPを復活させるには、ものすごく丁寧な作業が必要になります。本作も原作を手掛けた河野さん(※河野純子氏。『幻想水滸伝I』のキャラクターデザインを担当。リマスター版の顔グラフィックの書き直しも行っている)たちと密にコミュニケーションを取りながら開発を進めてきました。
それだけ注力したのには、冒頭でお話したように、本作が『幻想水滸伝』のIPを復活させるファーストステップになるからです。このファーストステップを成功させたうえでセカンドステップ、具体的に言うと“幻想水滸伝Live”内で発表した複数のプロジェクトを着実に成功させていきたいと考えています。
セカンドステップがちゃんとできたうえで、さらにプロジェクトを進めていきたいので、決して歩みを止めることはありませんが、駆け上がっていく気もありません。ステップなので、“108ステップ”まであるかもしれませんが……。
崎山
ステップが多いな(苦笑)。
一同 (笑)。
内藤
“108ステップ”はもちろん冗談ですが(苦笑)、いちだんいちだんしっかりと進んでいきたいという思いが強いですね。ファンの方たちにすごい支えられていますので、今後も応援してもらえるようにファンのことを大事にしながらも、新規のファンを増やしていきたいと考えています。『III』や『IV』、『V』、外伝とシリーズ作品があることは重々承知していますが、今後どのようなステップを踏むのがベストなのか、いろいろ考えさせてください。
――ステップの先に、完全新作のナンバリングタイトルを期待するファンも多いと思いますが……。
内藤
もちろん、いずれは出したいと考えています。ただ、108星や『幻想水滸伝』の重圧も感じていて……。『I』、『II』、『III』は村山さんが携わっていて、『III』から先の話は相当練り上げる必要があると思っています。村山さんが退職された後、『IV』、『V』を制作できたのは、『IV』は『I』よりも過去の世界が舞台でしたし、『V』も過去が舞台のうえで、崎山が『幻想水滸伝』の世界をかなり研究してくれていたので、あの時代の物語を完成させることができました。新たなナンバリングタイトルを出すとしても、いつの時代をどのように描けばいいのか、新たな108星が織り成す群像劇をどのように展開させるのかは、しっかり練っていきたいと思います。
――シリーズの新作としては、初のモバイルタイトル『幻想水滸伝 STAR LEAP』が発表されました。こちらの見どころを教えてください。
内藤
『幻想水滸伝 STAR LEAP』は、『幻想水滸伝』シリーズを遊んだことがない人でも、手を出しやすいように基本無料で遊べるモバイルタイトルにしています。だからといって、新たな108星を課金のガチャで集めるようにしてしまうと興ざめしてしまうので、ストーリーを進めれば仲間になる仕様にしています。
ほかのこだわりとしては、モバイルゲームのチームを立ち上げるときに、「ナンバリングタイトルを作る気持ちで開発してほしい」とお願いしました。そのうえで、新しい108星を登場させてほしい、本拠地で触れ合えるようにしてほしい、歴史を一切改変せずに過去作のキャラクターとの交流も描いてほしいと僕の希望を伝えたうえでどこまで実現できるのか、開発スタッフに託しています。僕の希望がどのような形で反映されて開発が進んでいるのかは、モバイルチームへのインタビューでご確認ください。
――最後にメッセージをお願いします。
大串
『幻想水滸伝』の世界をより多くの方に楽しんでもらえるように、複数のプラットフォームでしっかり遊べるように開発を進めてきました。ファンの方たちはもちろん、初めて遊ぶ方たちも、『幻想水滸伝』の世界を堪能していただけるとうれしいです。
崎山
ようやく発売を迎えることができました。発表から発売まで間が空いてしまいましたが、『幻想水滸伝』を復活させることができてうれしいです。本作は、ファンの皆様の思い出補正を超えることを目標に掲げていたので、ぜひプレイしてください。
内藤
『幻想水滸伝』復活のファーストステップは、HDリマスターの発売から始まります。今後いろいろ仕掛けていきますので、ご期待ください。応援よろしくお願いします!

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