メルセデス・ベンツ 航続距離1000kmの全固体電池をテスト中 米ファクトリアル社と共同開発
公開 : 2025.02.24 18:25
メルセデス・ベンツは全固体電池を搭載したプロトタイプによるテストを実施している。米ファクトリアル・エナジー社と共同開発した電池は、実走行条件下で1000kmを超える航続距離を実現するという。
5年以内に量産化目指す
メルセデス・ベンツは、1回の充電で1000km以上の走行を可能にする全固体電池のテストを行っている。この電池を搭載した最初の量産車は、2030年までに発売される予定である。
米国の新興企業ファクトリアル・エナジー社と共同開発した全固体電池の効率性、耐久性、性能を評価するための予備試験が実施されている。
メルセデス・ベンツは今月初めに、全固体電池を搭載したプロトタイプで初めて公道走行テストを行った。プロトタイプは市販のEQSセダンを改造したもので、全固体電池を搭載するにあたり、バッテリーハウジングが見直された。
このプロトタイプでは、英国に拠点を置くメルセデス・ベンツF1チームのエンジニアが開発した空気圧アクチュエーターを備えた、フローティング・セルキャリアが採用されている。充電と放電の際に電池セル内の素材の膨張と収縮を管理し、安定性と寿命を向上させる技術だ。
メルセデス・ベンツは全固体電池プロトタイプの技術仕様をすべて公開するには至っていないが、EQSの既存の12モジュール電池コンパートメントで、さまざまな構成と容量に柔軟に対応できると述べている。この新しいエネルギー貯蔵技術により、同等サイズの液体リチウムイオンバッテリーと比較して、航続距離が約25%増加するという。
118kWhの液体リチウムイオンバッテリーを搭載した現行型EQS 450+のWLTPサイクルの航続距離は822kmである。これに対し、メルセデス・ベンツは同社の新しい全固体電池により、EQSプロトタイプの航続距離は実走行条件下で1000kmを超えると予想している。
昨年6月の発表で、ヒョンデやステランティスとも提携している米ファクトリアル・エナジーは、エネルギー密度が最大391Wh/kg、充電容量が106Ahを超える電池セルをメルセデス・ベンツに供給したことを明らかにした。この電池には、特許取得済みのリチウム金属負極とポリマーセパレーターが使われている。
メルセデス・ベンツとファクトリアル・エナジーはコードネーム「ソルスティス(Solstice)」と呼ばれる、より高度な全固体電池を共同開発中だ。ポリマーセパレーターを硫化物ベースの固体電解質に置き換え、エネルギー密度450Wh/kg、現在の液体リチウムイオンバッテリーよりも航続距離80%増を目標としている。
メルセデス・ベンツは、新しい電池技術とともに、新世代のシリコンカーバイド・インバーターとパワーエレクトロニクスの開発も進めている。現在、英国のAMGハイパフォーマンス・パワートレイン社で開発中で、将来の量産車におけるエネルギー効率と性能の向上を目指している。