『英霊の聲』(えいれいのこえ)は、三島由紀夫の短編小説。二・二六事件で銃殺刑に処せられた青年将校と、神風たらんと死んだ特攻隊員の霊が、天皇の人間宣言に憤り、呪詛する様を描いた作品である。〈などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし〉という哀切なリフレインが、能の修羅物の2場6段の構成で綴られている。 二・二六事件で処刑された青年将校・磯部浅一の獄中の手記(獄中日記、行動記)や、河野壽の兄・河野司著『二・二六事件』から影響を受けて執筆された『英霊の聲』は、1960年代の三島の一つの転換点となり、その後に書かれる『文化防衛論』などの評論への前駆的な役割を担っていた作品である。 なお、『英霊の聲』の挿入歌の先行試作と見られる、7篇の歌からなる『悪臣(あくしん)の歌』という草稿が、1999年(平成11年)に三島由紀夫文学館で見つかり、記念展図録で公開された。