遺伝学においてエンハンサー(英: enhancer)は、特定の遺伝子の転写の可能性を高めるためにタンパク質(アクチベーター)が結合する、短い(50–1500塩基対)DNA領域である。多くの場合、これらのエンハンサーに結合するタンパク質は転写因子と呼ばれる。エンハンサーはシスに作用し、遺伝子から最大で100万塩基対も離れている場合もあり、転写開始部位の上流に位置する場合も下流に位置する場合もある。エンハンサーは原核生物と真核生物の双方に存在し、ヒトのゲノム中には数十万個のエンハンサーが存在する。 真核生物のエンハンサーが最初に発見されたのは1983年、免疫グロブリン重鎖の遺伝子においてである。巨大なイントロンの内部に位置するこのエンハンサーによって、遺伝子再構成が起こっていないVhプロモーターは不活性であるのに対し、再構成が起こったVhプロモーターからの転写が活性化されることの説明が可能となった。