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JPWO2018180847A1 - 絶縁電線 - Google Patents

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JPWO2018180847A1
JPWO2018180847A1 JP2019509639A JP2019509639A JPWO2018180847A1 JP WO2018180847 A1 JPWO2018180847 A1 JP WO2018180847A1 JP 2019509639 A JP2019509639 A JP 2019509639A JP 2019509639 A JP2019509639 A JP 2019509639A JP WO2018180847 A1 JPWO2018180847 A1 JP WO2018180847A1
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Abstract

本発明の絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が複数の気孔を含み、上記絶縁層の気孔率が20体積%以上65体積%以下であり、上記絶縁電線の長手方向に50cm間隔で30個所の断面で、各断面毎に8点の上記絶縁層の膜厚を測定し、これらの測定値から算定される下記式(1)のバラツキ割合が25%以下である。バラツキ割合(%)=(4σ/平均膜厚)×100 ・・・(1)(上記式(1)中、平均膜厚は各測定値の平均値を示し、σは各測定値の標準偏差を示す。)

Description

本発明は、絶縁電線に関する。本出願は、2017年3月30日出願の日本出願第2017−069028号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモーター等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁層表面で部分放電(コロナ放電)が発生し易くなる。コロナ放電の発生により、局部的な温度上昇、オゾンの発生、イオンの発生等が引き起こされると、早期に絶縁破壊を生じ、絶縁電線ひいては電気機器の寿命が短くなる。このため、適用電圧が高い電気機器に使用される絶縁電線には、優れた電気絶縁性、機械的強度等に加えてコロナ放電開始電圧の向上も求められる。
コロナ放電開始電圧を上げる工夫としては、絶縁層の低誘電率化が有効であり、この低誘電率化の方法の1つとして、絶縁層中に気孔を形成する方法がある。
絶縁層中に気孔を形成する方法として、アゾビスイソブチロニトリル等の発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルを用いる方法(特開平5−20928号公報及び特開平8−77849号公報参照)、及び熱硬化性樹脂の溶剤とこの溶剤よりも沸点が高い溶剤と気泡形成剤との混合溶剤を用いる方法が提案されている。
特開平5−20928号公報 特開平8−77849号公報
本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が複数の気孔を含み、上記絶縁層の気孔率が20体積%以上65体積%以下であり、上記絶縁電線の長手方向に50cm間隔で30個所の断面で、各断面毎に8点の上記絶縁層の膜厚を測定し、これらの測定値から算定される下記式(1)のバラツキ割合が25%以下である。
バラツキ割合(%)=(4σ/平均膜厚)×100 ・・・(1)
(上記式(1)中、平均膜厚は各測定値の平均値を示し、σは各測定値の標準偏差を示す。)
本発明の実施形態に係る絶縁電線の模式的断面図である。 実施例におけるバラツキ割合の測定方法を説明するための図である。 実施例における誘電率の測定方法を説明するための模式図である。
[本開示が解決しようとする課題]
一般に絶縁層の気孔率を上げることにより誘電率を低下させることができる。しかし、上述の従来技術で形成された絶縁層では、発泡剤の発泡倍率の制御が難しいため、又は揮発速度が互いに異なる複数の溶剤を用いているため、気孔率を上げると絶縁層の膜厚が導体の断面の周囲において不均一になる。また、絶縁層の厚みは絶縁電線の絶縁性及び強度に大きな影響を与え、特に絶縁層が薄い部分において絶縁性及び強度が不十分になるおそれがある。さらに、近年、占積率が高く、各種機器の小型化を図ることができることから、断面が略長方形状の平角導体が広く使用されるようになっている。しかし、この平角導体を用いる場合、絶縁層の厚みは特に不均一になり易いため、絶縁電線の絶縁性及び強度が低下し易い。また、絶縁層の厚みが不均一である平角導体を用いると、巻線の状態において、電線同士が接触せず不要な空間が形成され、占積率が低下するおそれがある。
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、絶縁層の低誘電率化を達成しつつ、絶縁性及び強度に優れる絶縁電線を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本発明の絶縁電線は、絶縁層の低誘電率化を達成しつつ、絶縁性及び強度に優れる。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が複数の気孔を含み、上記絶縁層の気孔率が20体積%以上65体積%以下であり、上記絶縁電線の長手方向に50cm間隔で30個所の断面で、各断面毎に8点の上記絶縁層の膜厚を測定し、これらの測定値から算定される下記式(1)のバラツキ割合が25%以下である。
バラツキ割合(%)=(4σ/平均膜厚)×100 ・・・(1)
(上記式(1)中、平均膜厚は各測定値の平均値を示し、σは各測定値の標準偏差を示す。)
当該絶縁電線は、絶縁層に気孔を含み、この絶縁層の気孔率を上記範囲内とすることにより、絶縁層の低誘電率化を達成できる。また、当該絶縁電線は、絶縁層の膜厚のバラツキ割合を上記値以下とし、膜厚の均一性を高めることにより、最低膜厚を小さくすることができ、その結果、コロナ放電開始電圧が向上し、絶縁性に優れ、かつ強度にも優れる。 ここで、「気孔率」とは、絶縁層の気孔を含む体積に対する気孔の容積の百分率を意味する。
上記絶縁層の平均膜厚としては60μm以上が好ましい。このように、絶縁層の平均膜厚を上記値以上とすることにより、当該絶縁電線は、絶縁性及び強度をより向上させることができる。
上記導体が、断面長方形の平角導体であるとよい。一般に絶縁層の膜厚を均一にすることが難しい平角導体の場合でも、絶縁層の低誘電率化を達成でき、かつ絶縁性及び強度に優れる絶縁電線とすることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る絶縁電線及び絶縁電線の製造方法を説明する。
[絶縁電線]
図1の当該絶縁電線は、線状の導体1と、この導体1の外周面に被覆される絶縁層2とを備える。この絶縁層2は、複数の気孔3を含む。
<導体>
上記導体1の断面の形状としては、例えば円形状、楕円形状、レーストラック形状、六角形状、三角形状、正方形、長方形等の四角形状などの多角形状などが挙げられる。導体1としては、これらの中で、断面正方形の角導体又は断面長方形の平角導体が好ましい。
また、導体1は、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
導体1の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。導体1として、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミニウム線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
導体1の平均断面積の下限としては、0.01mmが好ましく、0.1mmがより好ましい。一方、導体1の平均断面積の上限としては、20mmが好ましく、5mmがより好ましい。導体1の平均断面積が上記下限未満であると、導体1に対する絶縁層2の体積が大きくなり、当該絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。逆に、導体1の平均断面積が上記上限を超えると、誘電率を十分に低下させるために絶縁層2を厚く形成しなければならず、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
<絶縁層>
上記絶縁層2は、図1に示すように、複数の気孔3を含む。
絶縁層2の気孔率の下限としては、20体積%であり、25体積%が好ましく、30体積%がより好ましい。一方、絶縁層2の気孔率の上限としては、65体積%であり、60体積%が好ましく、55体積%がより好ましい。絶縁層2の気孔率が上記下限未満であると、絶縁層2の誘電率が十分に低下せず、コロナ放電開始電圧を十分に向上できないおそれがある。逆に、絶縁層2の気孔率が上記上限を超えると、当該絶縁電線の強度を確保できないおそれがある。絶縁層2の気孔率(体積%)は、絶縁層2についてその外形から算出される見かけの体積V1に絶縁層2の材質の密度ρ1を乗じて求められる気孔がない場合の質量W1と、絶縁層2の実際の質量W2とから、(W1−W2)×100/W1の式により求められる値である。
絶縁層2の平均膜厚の下限としては、10μmが好ましく、60μmがより好ましく、80μmがさらに好ましく、100μmが特に好ましい。一方、絶縁層2の平均膜厚の上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。絶縁層2の平均膜厚が上記下限未満であると、絶縁層2に破れが生じ、導体1の絶縁が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁層2の平均膜厚が上記上限を超えると、当該絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
絶縁層2の膜厚のバラツキ割合の上限としては、25%であり、20%が好ましく、15%がより好ましく、12%がさらに好ましく、10%が特に好ましい。一方、絶縁層2の膜厚のバラツキ割合の下限としては、1%が好ましく、5%がより好ましい。絶縁層2の膜厚のバラツキ割合が上記上限を超えると、当該絶縁電線の絶縁性及び強度が不十分となるおそれがある。
絶縁層2の膜厚のバラツキ割合は、当該絶縁電線の長手方向に50cm間隔で30個所の断面で、各断面毎に8点の絶縁層の膜厚を測定し、これらの測定値から下記式(1)により算定される。
バラツキ割合(%)=(4σ/平均膜厚)×100 ・・・(1)
(上記式(1)中、平均膜厚は各測定値の平均値を示し、σは各測定値の標準偏差を示す。)
気孔3の平均径の下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、上記気孔3の平均径の上限としては、10μmが好ましく、8μmがより好ましい。上記気孔3の平均径が上記下限未満であると、絶縁層2中でのコロナ放電の発生を十分に抑制できないおそれがある。逆に、上記気孔3の平均径が上記上限を超えると、気孔3の分布を均一にし難くなり、誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。
絶縁層2は、絶縁性を有する樹脂組成物、この樹脂組成物中に散在する気孔3で形成される。この絶縁層2は、後述するワニスの導体1外周面への塗布及び焼付により形成される。
絶縁層2を形成する樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリビニルホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、芳香族ポリアミド、熱硬化ポリアミドイミド、熱硬化ポリイミド等の熱硬化性樹脂や、例えばポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルフォン、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂を主成分とする。ここで「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば50質量%以上含有される成分である。
また、絶縁層2を形成する樹脂組成物に、上記樹脂と共に硬化剤を含有させてもよい。
硬化剤としては、チタン系硬化剤、イソシアネート系化合物、ブロックイソシアネート、尿素やメラミン化合物、アミノ樹脂、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式酸無水物、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物などが例示される。これらの硬化剤は、使用する樹脂組成物が含有する樹脂の種類に応じて、適宜選択される。例えば、ポリアミドイミド系の場合、硬化剤として、イミダゾール、トリエチルアミン等が好ましく用いられる。
なお、上記チタン系硬化剤としては、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラヘキシルチタネート等が例示される。上記イソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の炭素数5〜18の脂環式イソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、これらの変性物などが例示される。上記ブロックイソシアネートとしては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等のイソシアネート基にジメチルピラゾール等のブロック剤が付加した化合物などが例示される。上記メラミン化合物としては、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、メチロール化メラミン、ブチロール化メラミン等が例示される。
[絶縁電線の製造方法]
次に、当該絶縁電線の製造方法について説明する。当該絶縁電線の製造方法は、絶縁層2を形成する樹脂と、この樹脂の焼付温度よりも低い温度で熱分解する熱分解性樹脂を含む粒子(熱分解性樹脂含有粒子)とを希釈しワニスを調製する工程(ワニス調製工程)、導体1の外周面へ上記ワニスを塗布する工程(ワニス塗布工程)、及び加熱により上記熱分解性樹脂含有粒子中の熱分解性樹脂を除去する工程(加熱工程)を備える。
<ワニス調製工程>
上記ワニス調製工程において、絶縁層2を形成する樹脂及び熱分解性樹脂含有粒子を溶剤で希釈してワニスを調製する。
上記熱分解性樹脂含有粒子が含む熱分解性樹脂としては、上記絶縁層2を形成する樹脂の焼付温度よりも低い熱分解温度を有する樹脂であれば特に限定されない。絶縁層2を形成する樹脂の焼付温度は、樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、通常200℃以上350℃以下程度である。従って、上記熱分解性樹脂の熱分解温度の下限としては、200℃が好ましく、上限としては300℃が好ましい。ここで、熱分解温度とは、窒素雰囲気下で室温から10℃/分で昇温し、質量減少率が50%となるときの温度を意味する。熱分解温度は、例えば熱重量測定−示差熱分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社の「TG/DTA」)を用いて熱重量を測定することにより求めることができる。
上記熱分解性樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の片方、両方の末端又は一部をアルキル化、(メタ)アクリレート化又はエポキシ化した化合物、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1以上6以下のアルキルエステル重合体、ウレタンオリゴマー、ウレタンポリマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート等の変性(メタ)アクリレートの重合物、ポリ(メタ)アクリル酸、これらの架橋物、ポリスチレン、架橋ポリスチレン等が挙げられる。
これらのうち、(メタ)アクリル系重合体の架橋物が好ましく、架橋ポリ(メタ)アクリレートがより好ましい。また、上記熱分解性樹脂は、上記絶縁層2を形成する樹脂の海相に微小粒子の島相となって均等分布できることが、独立気孔を形成できる点で好ましい。
従って、上記熱分解性樹脂としては、上記絶縁層2を形成する樹脂との相溶性に優れると共に、球状にまとまることができる樹脂であることが好ましく、具体的には架橋樹脂が好ましい。
上記架橋ポリ(メタ)アクリル系重合体は、例えば(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとを乳化重合、懸濁重合、溶液重合等により重合することで得られる。
ここで、(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
また、多官能性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
なお、架橋ポリ(メタ)アクリル系重合体の構成モノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマー及び多官能性モノマー以外に他のモノマーを使用してもよい。他のモノマーとしては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のグリコールエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体などが挙げられる。
上記熱分解性樹脂含有粒子は球状であることが好ましい。上記熱分解性樹脂含有粒子の平均粒子径の下限としては、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。一方、上記熱分解性樹脂含有粒子の平均粒子径の上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましく、30μmがさらに好ましく、10μmが特に好ましい。上記熱分解性樹脂含有粒子は絶縁層2を形成する樹脂の焼付け時に熱分解して存在していた部分に気孔を形成する。そのため、上記熱分解性樹脂含有粒子の平均粒子径が上記下限未満であると、絶縁層2に気孔が形成され難くなるおそれがある。逆に、上記熱分解性樹脂含有粒子の平均粒子径が上記上限を超えると、絶縁層2表面に凹凸が生じ易くなるおそれがある。ここで、上記熱分解性樹脂含有粒子の平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した粒度分布において、最も高い含有割合を示す粒径を意味する。
上記ワニスにおける熱分解性樹脂の含有量の下限としては、絶縁層2を形成する樹脂100質量部に対して、5質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましい。一方、上記ワニスにおける熱分解性樹脂の含有量の上限としては、絶縁層2を形成する樹脂100質量部に対して、350質量部が好ましく、150質量部がより好ましく、90質量部がさらに好ましい。上記熱分解性樹脂の含有量が上記下限未満であると、絶縁層2の誘電率を十分に低下できないおそれがある。逆に、上記熱分解性樹脂の含有量が上記上限を超えると、当該絶縁電線が十分な強度を確保できないおそれがある。
希釈用溶剤としては、絶縁ワニスに従来より用いられている公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン等の極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、クレゾール、クロルフェノール等のフェノール類、ピリジン等の第三級アミン類などが挙げられ、これらの有機溶媒はそれぞれ単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
なお、これらの有機溶剤により希釈して調製したワニスの樹脂固形分濃度の下限としては、15質量%が好ましく、22質量%がより好ましい。一方、上記ワニスの樹脂固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、28質量%がより好ましい。上記ワニスの樹脂固形分濃度が上記下限未満であると、ワニスを塗布する際の1回の塗布量が少なくなるため、所望の厚みの絶縁層2を形成するためのワニス塗布工程の繰り返し回数が多くなり、ワニス塗布工程の時間が長くなるおそれがある。逆に、上記ワニスの樹脂固形分濃度が上記上限を超える場合、ワニスが増粘することにより、ワニスの保存安定性が悪化するおそれや、ワニス塗布時の付着性が悪化するおそれがある。
上記熱分解性樹脂含有粒子としては、上記熱分解性樹脂のみからなる粒子であってもよいが、上記熱分解性樹脂を主成分とするコアと、上記熱分解性樹脂の熱分解温度よりも高い熱分解温度を有する樹脂を主成分とするシェルとを有するコアシェル粒子が好ましい。
上記シェルの主成分の樹脂としては、誘電率が低く、耐熱性が高いものが好ましい。シェルの主成分の樹脂としては、例えばポリスチレン、シリコーン、フッ素樹脂、ポリイミド等が挙げられる。これらの中でも、シェルに弾性を付与すると共に絶縁性及び耐熱性を向上させ易い点において、シリコーンが好ましい。ここで、「フッ素樹脂」とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状又は分岐状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等を挙げることができる。なお、絶縁性を損なわない範囲でシェルに金属が含まれてもよい。
なお、シェルの主成分の樹脂は、上記絶縁層2を形成する樹脂と同種のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。例えばシェルの主成分の樹脂として、上記絶縁層2を形成する樹脂と同種のものを用いた場合でも、上記熱分解性樹脂より熱分解温度が高いので、熱分解性樹脂がガス化してもシェルの主成分の樹脂は熱分解し難いため、気孔3の連通抑制効果が得られる。このようなワニスで形成された当該絶縁電線は、電子顕微鏡で観察してもシェルの存在を確認できない場合がある。一方、シェルの主成分の樹脂として上記絶縁層2を形成する樹脂と異なるものを用いることにより、シェルを上記絶縁層2と一体化され難くできるので、上記絶縁層2を形成する樹脂と同種の樹脂を用いる場合に比べて、気孔3の連通抑制効果が得易くなる。
シェルの平均厚みの下限としては、特に制限はないが、例えば0.01μmが好ましく、0.02μmがより好ましい。一方、シェルの平均厚みの上限としては、0.5μmが好ましく、0.4μmがより好ましい。シェルの平均厚みが上記下限未満であると、気孔3の連通抑制効果が十分に得られないおそれがある。逆に、シェルの平均厚みが上記上限を超えると、気孔3の体積が小さくなり過ぎるため、絶縁層2の気孔率を所定以上に高められないおそれがある。なお、シェルは、1層で形成されてもよいし、複数の層で形成されてもよい。シェルが複数の層で形成される場合、複数の層の合計厚みの平均が、上記厚みの範囲内であればよい。
上記熱分解性樹脂含有粒子のCV値の上限としては、30%が好ましく、20%がより好ましい。このように、CV値が上記上限以下の熱分解性樹脂含有粒子を用いることで、気孔サイズの違いで生じる気孔部分での電荷集中による絶縁性低下や加工応力の集中による絶縁層2の強度低下を抑制できる。なお、熱分解性樹脂含有粒子のCV値の下限としては、特に限定されないが、例えば1%である。ここで、「CV値」とは、JIS−Z8825(2013)に規定される変動変数を意味する。
<ワニス塗布工程>
上記ワニス塗布工程において、上記ワニス調製工程で調製したワニスを導体1の外周面に塗布した後、塗布ダイスにより導体1のワニスの塗布量の調節及び塗布されたワニス面の平滑化を行う。
上記塗布ダイスは開口部を有し、ワニスを塗布した導体1がこの開口部を通過することで余分なワニスが除去され、ワニスの塗布量が調整される。これにより、当該絶縁電線は、絶縁層2の厚みがより均一になり、当該絶縁電線の絶縁性及び強度がより向上する。
<加熱工程>
次に、上記加熱工程において、上記ワニスが塗布された導体1を焼付炉に通して、ワニスを焼付けることで、導体1表面に絶縁層2を形成する。焼付の際、ワニスに含まれる熱分解性樹脂含有粒子の熱分解性樹脂が熱分解によりガス化して除去される。その結果、熱分解性樹脂含有粒子に由来する気孔3が絶縁層2内に形成される。このように、上記加熱工程は、ワニスの焼付工程を兼ねる。
[利点]
当該絶縁電線は、絶縁層2が気孔3を含み、この絶縁層2の気孔率が上記範囲内であることにより、絶縁層2の低誘電率化を達成できる。また、当該絶縁電線は、絶縁層の膜厚のバラツキ割合を上記値以下として、膜厚の均一性に優れることにより、最低膜厚を小さくすることができ、その結果、コロナ放電開始電圧が向上し、絶縁性に優れ、かつ強度にも優れる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上記実施形態においては、1層の絶縁層が導体の外周面に積層される絶縁電線について説明したが、複数の絶縁層が導体の外周面に積層される絶縁電線としてもよい。つまり、図1の導体1と気孔3を含む絶縁層2との間に1又は複数の絶縁層が積層されていてもよいし、図1の気孔3を含む絶縁層2の外周面に1又は複数の絶縁層が積層されてもよいし、図1の気孔3を含む絶縁層2の外周面及び内周面の両方に1又は複数の絶縁層が積層されていてもよい。
また、例えば当該絶縁電線において、導体と絶縁層との間にプライマー処理層等のさらなる層が設けられてもよい。プライマー処理層は、層間の密着性を高めるために設けられる層であり、例えば公知の樹脂組成物により形成することができる。
導体と絶縁層との間にプライマー処理層を設ける場合、このプライマー処理層を形成する樹脂組成物は、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステル及びフェノキシ樹脂の中の1種又は複数種の樹脂を含むとよい。また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、密着向上剤等の添加剤を含んでもよい。このような樹脂組成物によって導体と絶縁層との間にプライマー処理層を形成することで、導体と絶縁層との間の密着性を向上することが可能であり、その結果、当該絶縁電線の強度等の特性を効果的に高めることができる。
また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、上記樹脂と共に他の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂等を含んでもよい。また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物に含まれる各樹脂として、市販の液状組成物(絶縁ワニス)を使用してもよい。
プライマー処理層の平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。一方、プライマー処理層の平均厚みの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。プライマー処理層の平均厚みが上記下限未満であると、導体との十分な密着性を発揮できないおそれがある。逆に、プライマー処理層の平均厚みが上記上限を超えると、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[絶縁電線の製造]
表1のNo.1に示す絶縁電線を以下のようにして製造した。まず、絶縁層を形成する樹脂としてのポリイミドを、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンで希釈した。次に、これに、熱分解性樹脂含有粒子としてのコアがPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)粒子でシェルがシリコーンの平均粒子径3μmのコアシェル粒子を、計算値で絶縁層の気孔率が30体積%となる量分散させてワニスを調製した。このワニスを用い、竪型塗装設備を使用して、断面が2mm×2mmの角形状の導体を浸漬した後、導体と相似形状の開口部を有するダイスを、速度6m/分で通過させ、焼付炉中を通過させて、350℃で1分間焼付を行い、絶縁被膜を形成した。このワニスの塗布、ダイス通過、焼付を13回繰り返して、ポリイミド樹脂被膜を絶縁層とする絶縁電線(No.1)を製造した。
表1のNo.2に示す絶縁電線を以下のようにして製造した。まず、絶縁層を形成する樹脂としてのポリイミドを、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンで希釈した。次に、これに、熱分解性樹脂含有粒子としてのコアがPMMA粒子でシェルがシリコーンの平均粒子径3μmのコアシェル粒子を、計算値で絶縁層の気孔率が30体積%となる量分散させてワニスを調製した。このワニスを用い、竪型塗装設備を使用して、断面が2mm×2mmの角形状の導体を浸漬した後、導体と相似形状の開口部を有するダイスを、速度6m/分で通過させ、焼付炉中を通過させて、350℃で1分間焼付を行い、絶縁被膜を形成した。このワニスの塗布、ダイス通過、焼付を15回繰り返して、ポリイミド樹脂被膜を絶縁層とする絶縁電線(No.2)を製造した。
表1のNo.3に示す絶縁電線を以下のようにして製造した。まず、絶縁層を形成する樹脂としてのポリイミドを、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンで希釈した。次に、これに、熱分解性樹脂含有粒子としてのコアがPMMA粒子でシェルがシリコーンの平均粒子径3μmのコアシェル粒子を、計算値で絶縁層の気孔率が30体積%となる量分散させてワニスを調製した。このワニスを用い、竪型塗装設備を使用して、断面が2mm×2mmの角形状の導体を浸漬した後、導体と相似形状の開口部を有するダイスを、速度6m/分で通過させ、焼付炉中を通過させて、350℃で1分間焼付を行い、絶縁被膜を形成した。このワニスの塗布、ダイス通過、焼付を30回繰り返して、ポリイミド樹脂被膜を絶縁層とする絶縁電線(No.3)を製造した。
表1のNo.4に示す絶縁電線を以下のようにして製造した。まず、絶縁層を形成する樹脂としてのポリイミドを、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンで希釈した。次に、これに、熱分解性樹脂含有粒子としてのコアがPMMA粒子でシェルがシリコーンの平均粒子径3μmのコアシェル粒子を、計算値で絶縁層の気孔率が55体積%となる量分散させてワニスを調製した。このワニスを用い、竪型塗装設備を使用して、断面が2mm×2mmの角形状の導体を浸漬した後、導体と相似形状の開口部を有するダイスを、速度6m/分で通過させ、焼付炉中を通過させて、350℃で1分間焼付を行い、絶縁被膜を形成した。このワニスの塗布、ダイス通過、焼付を30回繰り返して、ポリイミド樹脂被膜を絶縁層とする絶縁電線(No.4)を製造した。
表1のNo.5に示す絶縁電線を以下のようにして製造した。まず、絶縁層を形成する樹脂としてのポリイミドを、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンで希釈した。次に、これに、気孔形成材としてのアゾ系熱膨張性マイクロカプセル粒子を、計算値で絶縁層の気孔率が30体積%となる量分散させてワニスを調製した。このワニスを用い、竪型塗装設備を使用して、断面が2mm×2mmの角形状の導体を浸漬した後、導体と相似形状の開口部を有するダイスを、速度6m/分で通過させ、焼付炉中を通過させて、350℃で1分間焼付を行い、絶縁被膜を形成した。このワニスの塗布、ダイス通過、焼付を15回繰り返して、ポリイミド樹脂被膜を絶縁層とする絶縁電線(No.5)を製造した。
[評価]
No.1〜No.5の絶縁電線について、絶縁層の気孔率、絶縁層の平均膜厚、標準偏差σ、バラツキ割合、誘電率及びコロナ放電開始電圧(PDIV)を、下記方法に従い評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
(絶縁層の気孔率)
得られた絶縁電線において、絶縁層を導体から筒状に剥離し、この筒状の絶縁層の質量W2を測定した。また、筒状の絶縁層の外形から見かけの体積V1を求め、このV1に絶縁層の材質の密度ρ1を乗じて気孔がない場合の質量W1と算出した。これらW1及びW2の値から、下記式により気孔率を算出した。
気孔率=(W1−W2)×100/W1 (体積%)
(絶縁層の平均膜厚)
得られた絶縁電線の断面について、図2の丸数字で示した8点の膜厚を測定した。50cm間隔で、N=30の断面について、膜厚を測定し、8点×30=240点について、測定した膜厚の平均値(算術平均)を求め、これを平均膜厚とした。また、測定値の標準偏差σを求めた。平均膜厚が同程度であっても、4σの値が大きいものは、バラツキが大きいことを意味する。
(バラツキ割合)
上記求めた平均膜厚及び標準偏差σの値を用いて、絶縁層の膜厚のバラツキ割合を下記式により求めた。
バラツキ割合=(4σ/平均膜厚)×100(%)
バラツキ割合25%を超えるものは、膜厚の均一性が低く、いわゆるドッグボーン形状の絶縁層が形成され易いといえる。
(誘電率)
No.1〜No.5の絶縁電線について、絶縁層2の誘電率εを測定した。図3は、誘電率の測定方法を説明するための模式図である。まず、絶縁電線の表面3カ所に銀ペーストPを塗布すると共に、絶縁電線の一端側の絶縁層2を剥離して導体1を露出させた測定用のサンプルを作製した。ここで、絶縁電線の表面3カ所に塗布した銀ペーストPの絶縁電線長手方向の塗布長さは、長手方向に沿って順に10mm、100mm、10mmとした。長さ10mmで塗布した2カ所の銀ペーストPを接地し、これらの2カ所の銀ペーストの間に塗布した長さ100mmの銀ペーストPと上記露出させた導体1との間の静電容量をLCRメータMで測定した。この測定した静電容量及び絶縁層2の平均膜厚から絶縁層2の誘電率εを算出した。なお、上記誘電率εの測定は、105℃で1時間加熱した後にn=3で実施し、その平均値を求めた。
(コロナ放電開始電圧の測定)
部分放電試験機(菊水電子工業社の「KPD2050S」)を使用して測定した。2本の絶縁電線の面同士を長さ100mmにわたって隙間が無いように密着させ、2本の導体間に電極を繋いだ。25℃にて、周波数60Hzで昇圧し、100pC以上の部分放電が発生した時の電圧を読み取った。n=5で実施し、その平均値で評価した。
Figure 2018180847
表1の結果より、絶縁層の気孔率及びバラツキ割合が上記範囲であるNo.1〜No.4の絶縁電線は、誘電率が低く、コロナ放電開始電圧が高く、絶縁層の低誘電率化を促進すると共に、絶縁性に優れることが分かる。一方、No.5の絶縁電線は、バラツキ割合が上記範囲外であり、膜厚が近似するNo.2に比べコロナ放電開始電圧が低下していた。これらの差異は、コアシェル粒子では膨張・発泡が起こり難いが、気孔形成材(発泡材など)を使用すると皮膜内の気孔膨張に伴い膜厚のバラツキが大きくなることに起因すると考えられる。
1 導体
2 絶縁層
3 気孔
M LCRメータ
P 銀ペースト

Claims (3)

  1. 線状の導体と、この導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、
    上記絶縁層が複数の気孔を含み、
    上記絶縁層の気孔率が20体積%以上65体積%以下であり、
    上記絶縁電線の長手方向に50cm間隔で30個所の断面で、各断面毎に8点の上記絶縁層の膜厚を測定し、これらの測定値から算定される下記式(1)のバラツキ割合が25%以下である絶縁電線。
    バラツキ割合(%)=(4σ/平均膜厚)×100 ・・・(1)
    (上記式(1)中、平均膜厚は各測定値の平均値を示し、σは各測定値の標準偏差を示す。)
  2. 上記絶縁層の平均膜厚が60μm以上である請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 上記導体が、断面長方形の平角導体である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
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