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JPWO2014192482A1 - ガラス基板の切断方法及びガラス基板の製造方法 - Google Patents

ガラス基板の切断方法及びガラス基板の製造方法 Download PDF

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JPWO2014192482A1
JPWO2014192482A1 JP2015519748A JP2015519748A JPWO2014192482A1 JP WO2014192482 A1 JPWO2014192482 A1 JP WO2014192482A1 JP 2015519748 A JP2015519748 A JP 2015519748A JP 2015519748 A JP2015519748 A JP 2015519748A JP WO2014192482 A1 JPWO2014192482 A1 JP WO2014192482A1
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Abstract

【解決手段】レーザ光を照射してガラス基板を切断予定線に沿って切断するガラス基板の切断方法であって、ガラス基板の一方の表面にレーザ光を照射するレーザ光の照射領域を含むガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を、ガラス基板の幅方向に湾曲させ、レーザ光の照射領域において、ガラス基板の一方の表面から他方の表面までのレーザ光照射部が気化する温度以上に加熱し、レーザ光の照射領域をガラス基板の切断予定線に沿って、ガラス基板に対して相対的に移動させることを特徴とするガラス基板の切断方法を提供する。

Description

本発明は、ガラス基板の切断方法及びガラス基板の製造方法に関する。
ガラス基板の切断方法としてレーザ光を用いた切断方法が検討されてきた。
例えば特許文献1には、レーザ光を照射することにより所定の深さの切り欠き凹部を形成した直後に、圧縮ガス等により強制冷却するガラス基板の切断方法が開示されている。
また、特許文献2には、ガラス基板にレーザ光を走査しつつ照射し、レーザ光の照射部分についてガラスを溶融させ、溶融したガラスをアシストガスにより吹き飛ばすガラス基板の切断方法が開示されている。
日本国特開2004−059328号公報 日本国特開昭60−251138号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたガラス基板の切断方法によれば、その切断面にはレーザ光を照射することにより形成した切り欠き凹部に対応する部分と、その後強制冷却を行った際に切り欠き凹部の下部に形成された部分とが含まれ、両者の表面特性は異なっている。
このように切断面中に切断方法に起因する表面特性の異なる部分がある場合、製品とするためには切断面を研磨して、表面特性が均一な切断面とする必要があった。このため、切断面についての研磨工程に時間を要していた。
また、レーザ光を照射した直後にガラス基板に対して圧縮ガス(アシストガス)を吹き付ける必要があるため、ガラス基板の位置が変位し易く切断精度が低下する場合があった。
特許文献2に記載されたガラス基板の切断方法によれば、アシストガスの圧力によりガラス基板の位置が変位し、切断する際の精度が低くなる場合があるという問題があった。また、レーザ光のエネルギー密度によっては、局所的なガラスの熱変形量が大きくなりガラス基板に亀裂を生じる場合があった。さらに、アシストガスにより除去された溶融したガラスが、切断面やその周辺に付着、凝固するため、これを除去するために研磨工程に時間を要していた。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、上記ガラス基板にアシストガスを吹き付ける従来のガラス基板の切断方法と比較してガラス基板を精度良く切断加工することができ、ガラス基板への亀裂の発生を抑制し、均一な切断面が得られるガラス基板の切断方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明は、レーザ光を照射してガラス基板を切断予定線に沿って切断するガラス基板の切断方法であって、前記ガラス基板の一方の表面に前記レーザ光を照射するレーザ光の照射領域を含む前記ガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を、前記ガラス基板の前記幅方向に湾曲させ、前記レーザ光の照射領域において、前記ガラス基板の一方の表面から他方の表面までのレーザ光照射部が気化する温度以上に加熱し、前記レーザ光の照射領域を前記ガラス基板の切断予定線に沿って、前記ガラス基板に対して相対的に移動させることを特徴とするガラス基板の切断方法を提供する。
本発明のガラス基板の切断方法によれば、従来のアシストガスを使用したガラス基板の切断方法と比較してガラス基板を精度良く切断加工することができる。また、切断時にガラス基板への亀裂の発生を抑制し、均一な切断面とすることができる。
本発明の実施形態に係るガラス基板の切断方法の説明図 表面に凹凸を含むガラス基板に対してレーザ光を照射する際のレーザ発振装置とガラス基板の一方の表面との間の距離の説明図 表面に凹凸を含むガラス基板に対してレーザ光を照射する際のレーザ発振装置とガラス基板の一方の表面との間の距離の説明図 支持部材を備えた搬送ローラの構成例の説明図 支持部材を備えた搬送ローラをガラス基板の搬送経路上に配置した構成例の説明図 支持部材を備えた搬送ローラをガラス基板の搬送経路上に配置した構成例の説明図 ガラス基板の幅方向の一部の領域を湾曲させる搬送ローラの構成例の説明図 本発明の実施形態に係るガラス基板の切断方法における加熱工程の説明図 本発明の実施形態に係るガラス基板の切断方法における冷却工程の説明図 本発明の実施形態に係るガラス基板の切断方法における冷却工程での析出物についての説明図 本発明の実験例1のガラス基板の搬送速度およびレーザ光のエネルギー密度と、切断面の評価との関係の説明図 本発明の実験例2のガラス基板の搬送速度およびレーザ光のエネルギー密度と、切断面の評価との関係の説明図 本発明の実験例3のガラス基板の搬送速度およびレーザ光のエネルギー密度と、切断面の評価との関係の説明図 本発明の実験例4のガラス基板の搬送速度およびレーザ光のエネルギー密度と、切断面の評価との関係の説明図 ガラス基板の幅方向の一部の領域を湾曲させる他の方法の説明図
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
本実施の形態では、本発明のガラス基板の切断方法の構成例について説明を行う。
本実施形態のガラス基板の切断方法は、レーザ光を照射してガラス基板を切断予定線に沿って切断するガラス基板の切断方法であって、以下の構成を有している。
ガラス基板の一方の表面にレーザ光を照射するレーザ光の照射領域を含むガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向(以下、「ガラス基板の幅方向」とも記載する)の一部の領域を、ガラス基板の幅方向に湾曲させる。
そして、レーザ光の照射領域において、ガラス基板の一方の表面から他方の表面までのレーザ光照射部が気化する温度以上に加熱する。
さらに、レーザ光の照射領域をガラス基板の切断予定線に沿って、ガラス基板に対して相対的に移動させることを特徴とするガラス基板の切断方法である。
図1〜図8を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明のガラス基板切断方法によりガラス基板を切断しているところを、レーザ光を照射する側(一方の表面側)のガラス基板上面から見た構成を模式的に示している。
ガラス基板11は図1中矢印Aで示す方向に搬送されており、図示しないレーザ発振装置から発振されたレーザ光12が照射されている部分(レーザ光の照射領域)が、ガラス基板上の切断予定線13に沿って移動できるようになっている。
そして、本実施形態のガラス基板の切断方法においては、レーザ光の照射領域を含むガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を、ガラス基板の幅方向に湾曲させている。この点について以下に説明する。
ガラス基板の板厚が薄く、特にガラス基板が搬送されている場合に、ガラス基板にシワが生じることがある。ガラス基板にシワが生じると、ガラス基板の表面が凹凸を含むこととなる。そして、表面に凹凸を含むガラス基板に対してレーザ光を照射する際、図2Aに示すように搬送ローラ21上を搬送されているガラス基板11の凸部22にレーザ光を照射する場合、レーザ発振装置23とガラス基板11の一方の表面との間は距離D1となる。これに対して、図2Bに示すように搬送ローラ21上を搬送されているガラス基板11の凹部24にレーザ光を照射する場合、レーザ発振装置23の位置は変化しないことから、レーザ発振装置23とガラス基板11の一方の表面との間は距離D1よりも長くなり、距離D2となる。このように、ガラス基板表面の凹凸のため、レーザ発振装置とガラス基板の一方の表面との間の距離が変化し、レーザ光により適切にガラス基板を加熱できない場合があった。
これに対して、レーザ光の照射領域を含むガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を湾曲させることにより、少なくともガラス基板の湾曲した部分ついてガラス基板にシワが発生することを抑制することができる。このため、レーザ光照射領域において、ガラス基板11の一方の表面とレーザ光の光源であるレーザ発振装置との間の距離を安定させ、ガラス基板の切断予定線に沿って適切に加熱を行うことが可能になる。そして、ガラス基板を精度良く切断加工することができ、均一な切断面とすることができる。
ガラス基板11の一方の表面にレーザ光12を照射するレーザ光の照射領域を含むガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を、ガラス基板の幅方向に湾曲させる方法は特に限定されるものではない。なお、ガラス基板の幅方向に湾曲させるとは、搬送方向に垂直なガラス基板の断面を、上方または下方に湾曲させるともいえる。
ここで、上記ガラス基板の一部の領域をガラス基板の幅方向に湾曲させる方法の構成例について、図3〜図6および図14を用いて説明する。図3は支持部材33を備えた搬送ローラ32の構成例を示している。図4、図5は、図3に示した支持部材33を備えた搬送ローラ32をガラス基板の搬送経路上に配置した構成例を、レーザ光を照射する側(一方の表面側)のガラス基板上面から見た構成を模式的に示している。
ガラス基板の一部の領域をガラス基板の幅方向に湾曲させる方法として、レーザ光の照射領域を含むガラス基板の幅方向の一部の領域がガラス基板の他の部分の領域から突出するように、支持部材によって、ガラス基板の他方の表面側からガラス基板を支持する方法が挙げられる。
図3に示すように、搬送ローラ32の幅方向の一部に支持部材33を配置すると、該支持部材33によって、ガラス基板の一部の領域31の表面が、ガラス基板の他の部分の領域34よりも高くなるように、ガラス基板の下面側(他方の面側)から支持することができる。
そして、図4に示すように、図中ブロック矢印Aで示した方向に搬送されているガラス基板の搬送経路上に配置された複数の搬送ローラ32のうち、少なくとも一部の搬送ローラ32を上記のように支持部材33を備えた搬送ローラ32とすることができる。搬送ローラをこのように構成することにより、図4中の領域41で示した範囲においてガラス基板の幅方向の一部の領域を、湾曲させることができる。つまり、搬送方向に垂直なガラス基板の断面を、上方に湾曲させることができる。なお、この際、レーザ光12の照射領域が少なくとも、上記領域41内にあるように上記支持部材33を備えた搬送ローラを配置する場所を選択することができる。
図4においては、搬送ローラ32の幅方向の一方の端部側にのみ支持部材33を設けた例を示しているが、係る形態に限定されるものではない。ガラス基板の切断予定線13の数に応じて、ガラス基板の幅方向のうち複数の箇所に支持部材33を設けることができる。例えばガラス基板の幅方向の両端部を切断する場合には、搬送ローラ32の幅方向の他方の端部側についても支持部材33を設けることができる。
なお、搬送ローラ32に形成する支持部材33の構成については特に限定されるものではない。図4に示すように、搬送ローラ32毎に支持部材33を形成する場合、例えば支持部材33として搬送ローラ32にOリングを配置する等により、搬送ローラ32表面の幅方向の一部領域について環状の凸部を形成することができる。また、搬送ローラ32毎に設けるのではなく、図5に示すように複数の搬送ローラ間に巻き掛けされたテープ状ガイド部材、すなわち、ベルトにより支持部材33を構成することもできる。この場合も、図5中領域41で示した範囲においてガラス基板11の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を湾曲させることができる。つまり、搬送方向に垂直なガラス基板の断面を、上方に湾曲させることができる。
支持部材は、上記のようにその構成は特に限定されるものではないが、図5に示すように複数の搬送ローラ間に巻掛けされたテープ状ガイド部材により支持部材を構成することが好ましい。支持部材を搬送ロール間に巻掛けされたテープ状ガイド部材により構成した場合、搬送ロール間においても該支持部材によりガラス基板を他方の面側から支持することができ、ガラス基板の湾曲した部分の形状を均一に保ち、シワの発生をより抑制できるためである。
図3に示した支持部材33の高さHについては特に限定されるものではなく、切断するガラス基板の板厚等に応じて任意に選択することができる。
また、支持部材33のガラス基板と接する面の形状については特に限定されるものではなく、図3に示すように、平坦な形状であってもよく、また、搬送ローラの幅方向に湾曲した形状であってもよい。
ガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を湾曲させる他の方法として、例えば図6に示すように、レーザ光照射領域周辺の一部の搬送ローラ32において、他の部分よりも直径が細い部分61を有する搬送ローラ32で構成する方法が挙げられる。
このように搬送ローラ32に、他の部分よりも直径が細い部分61を設けることにより、搬送ローラ32の表面に凹部(concave)が形成されることになる。このため、該凹部でガラス基板が撓み、図6に示すように他の部分よりも直径が細い部分61とその他の部分との境目近傍でガラス基板11を湾曲させることもできる。つまり、搬送方向に垂直なガラス基板の断面を、下方に湾曲させることができる。
搬送ローラの形状に依存せずに、ガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を湾曲させる方法として、例えば図14に示すように、搬送ローラまたはテーブル等の保持部材40によって保持されているガラス基板11の前記一部の領域を保持部材40からはみ出させ、前記一部の領域を自重によって撓ませて湾曲させる方法が挙げられる。なお、保持部材40がテーブルのときは、ガラス基板11およびレーザ発振装置のうち少なくとも一方を移動させて、ガラス基板11を切断加工する。
以上のようにレーザ光12の照射領域を含む該ガラス基板の幅方向の一部の領域を湾曲させた際、レーザ光12の照射領域は、ガラス基板の湾曲された部分のうち、斜面部分に配置されていることが好ましい。これは、図3、図6、および図14に示したように湾曲したガラス基板の斜面部分においては、ガラス基板を他方の表面(下面)側から支持する搬送ローラ32や支持部材33、または保持部材40と、ガラス基板11と、の間に隙間を生じることとなる。このため、レーザ光を照射した際に、搬送ローラ32や、支持部材33等が加熱されることを抑制することができ、搬送ローラ32等の損傷を抑制することができるためである。
レーザ光12のガラス基板に対する入射角度は特に限定されるものではない。例えば図3、図6、図14の図中に示したように、レーザ光12はガラス基板の湾曲していない領域、すなわち、例えば図3におけるガラス基板の他の部分の領域34、におけるガラス基板表面と略垂直になるように照射することができる。また、レーザ光12の照射領域におけるガラス基板の傾斜角に応じて、レーザ光12を照射する角度を調整してもよい。すなわち、レーザ光の照射領域においてガラス基板11の表面とレーザ光12とが略垂直になるようにレーザ光12をガラス基板11に照射してもよい。
また、図3の場合、ガラス基板が放物線形状に湾曲しているため、該湾曲した部分のうち斜面が図中右側と図中左側に生じる。このため、矢印12´で示したように図中左側の斜面にレーザ光を照射してもよい。
ただし、ガラス基板の湾曲させた部分が複数の斜面を有する場合、支持部材33は、ガラス基板の他の部分の領域から突出した、ガラス基板の幅方向の一部の領域のうち、ガラス基板の幅方向の端部側の斜面にレーザ光の照射領域が配置されるように、ガラス基板を支持することが好ましい。すなわち、レーザ光の照射領域は、ガラス基板の幅方向の端部側の斜面にあることが好ましい。
上述のように、少なくともレーザ光の照射領域を含むガラス基板の幅方向の一部の領域をガラス基板の幅方向に湾曲させていればよく、ガラス基板の長さ方向に関してはガラス基板を湾曲させる範囲は特に限定されるものではない。すなわち、ガラス基板の長さ方向のうちレーザ光の照射領域の範囲についてのみ、ガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域をガラス基板の幅方向に湾曲させていてもよい。なお、ここでいうガラス基板の長さ方向とはガラス基板の搬送方向と平行な方向を意味している。
ただし、ガラス基板のレーザ光の照射領域から、ガラス基板の切断予定線に沿って所定距離離隔した部分までの範囲に渡って、ガラス基板の切断予定線を含むガラス基板の幅方向の一部の領域をガラス基板の幅方向に湾曲させることが好ましい。
上記のように、少なくともレーザ光の照射領域を含むガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域について、ガラス基板を湾曲させていれば、湾曲させていない場合と比較してレーザ光の照射領域においてシワの発生を抑制できる。しかし、例えばガラス基板を搬送している場合に、レーザ光の照射領域の直前でガラス基板を上記のように湾曲させようとするとシワの発生の抑制の程度が十分ではない場合がある。このため、レーザ光の照射領域よりも例えばガラス基板の搬送方向の上流側の所定の範囲に渡って、ガラス基板の切断予定線を含むガラス基板の幅方向の一部の領域についてガラス基板の切断予定線が斜面上に配置されるようにガラス基板を湾曲させることが好ましい。
例えば、図4に示したように支持部材33を備えた搬送ローラ32を配置する場合、ガラス基板の搬送方向の最も上流側に配置された該支持部材33を備えた搬送ローラ32の頂点位置よりも下流側にレーザ光12の照射領域がくるように構成することが好ましい。すなわち、図4の場合、X−X´線よりもガラス基板の搬送方向下流側にレーザ光の照射領域が配置されるように構成することが好ましい。また、特に、レーザ光を照射する際に搬送ローラ32等が損傷することを防止するため、レーザ光12の照射領域は搬送ローラ32間に配置することが好ましい。
以上のようにして、本実施形態のガラス基板の切断方法においてはレーザ光の照射領域を含むガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を、ガラス基板の幅方向に湾曲させている。そして、レーザ光12が照射されている部分(レーザ光の照射領域)ではガラス基板が一方の表面から他方の表面までのレーザ光照射部が加熱されている(加熱工程)。さらに、レーザ光が既に照射された領域14は、ガラス基板11が搬送されることにより、レーザ光の照射領域から離れ、レーザ光照射後のレーザ光照射部(レーザ光が照射されてガラスが気化した部分)15の周辺部が冷却されることとなる(冷却工程)。この点について、図1、図7、図8を用いて以下に説明する。なお、図1、図7、図8においては記載の便宜上、レーザ光の照射領域の周辺についても平坦な形状として記載している。また、ガラス基板の切断予定線13を図中に示しているが、実際のガラス基板上に係る線が設けられている訳ではない。
本実施形態のガラス基板の切断方法を適用できるガラス基板の組成は特に限定されるものではなく、各種ガラス基板に適用することができる。例えば、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスなどが挙げられる。
また、ガラス基板の厚さについても特に限定されるものではなく、例えば用いるレーザ発振装置の出力等に応じて任意に選択することができる。
ただし、ガラス基板の板厚が薄い場合に特にガラス基板にシワが発生しやすくなること。また、本実施形態のガラス基板の切断方法では、レーザ光の照射領域において、ガラス基板の一方の表面から他方の表面までのレーザ光照射部について、すなわち、その板厚方向全体に渡って、ガラスが気化する温度以上に加熱すること。以上の2点の理由から、ガラス基板の板厚が薄い場合に特に効果を発揮する。このため、例えば、ガラス基板の板厚は3.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましく、0.2mm以下であること特に好ましい。下限値については特に限定されるものではない。
また、図1に示したガラス基板の形状は矩形であるが、ガラス基板の形状も特に限定されるものではない。例えば、フロート法やダウンドロー法などのガラス基板成形装置によって成形された帯状のガラス基板であってもよい。
次に、レーザ光の照射領域(ガラス基板にレーザ光が照射されている部分)で行われる加熱工程について説明する。図7は、図1におけるB−B´線での断面のうち、レーザ光12の照射領域周辺を拡大して示したものである。
本発明のガラス基板の切断方法においては、上記の様にレーザ光12をガラス基板に照射することにより、レーザ光の照射領域において加熱工程が行われる。
ガラス基板のレーザ光の照射領域について、ガラス基板の一方の表面からガラス基板の他方の表面までのレーザ光の照射部71が、ガラスが気化する温度以上に加熱される。ここで、ガラス基板の一方の表面とはレーザ光が入射する側の面、他方の表面とはその対向面を意味している。このため、レーザ光の照射部71については、ガラスが気化されて短時間でレーザ光の照射方向(ガラス基板の厚さ方向)に沿って貫通孔が形成される。
そして、レーザ光の照射部71の周辺部72についてもレーザ光の照射部からの伝熱により加熱されることとなる。
このように、加熱工程やその直後において、すなわち、レーザ光照射時(ガラス気化時)や、レーザ光照射直後において、前記レーザ光照射部にアシストガスを吹き付けずに(アシストガスを使用することなく)、短時間でレーザ光照射部についてガラスを気化することができる。このため、ガラス基板の位置ずれ等を生じることがなく精度良く加工することができ、ガラス基板への亀裂の発生を抑制できる。
加熱工程におけるレーザ光の照射条件としては限定されるものではなく、ガラス基板のレーザ光照射領域において、ガラス基板の一方の表面(レーザ光が入射する側の面)側から他方の表面側までのレーザ光照射部がガラスの気化温度以上に加熱できるように選択すればよい。
具体的には、例えば、被切断物であるガラス基板の板厚、ガラス組成、ガラス基板の搬送速度(レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度)等から、レーザ光照射部について上記のように加熱できるようにレーザ光のエネルギー密度等を選択すればよい。例えば予め予備試験を行うことにより算出することができる。
特に、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度をv(m/時間)、前記レーザ光のエネルギー密度をE(W/mm)、ガラス基板の板厚をt(mm)とした場合に、
E≧50×t×v
の関係を満たすように照射するレーザ光のエネルギー密度を調整することが好ましい。
係る規定を充足する状態で加熱工程を含むガラス基板の切断を行うことにより、レーザ光の照射領域において、ガラス基板の一方の表面からガラス基板の他方の表面までのレーザ光照射部をガラスが気化する温度以上に確実に加熱することができる。
ガラス基板に照射するレーザ光のスポット径(ガラス基板の一方の表面におけるレーザ光のビーム径)についても限定されるものではなく、要求される加工精度等により選択することができる。
なお、用いるレーザの種類については特に限定されるものではなく、ガラス基板に発振したレーザ光を照射することにより、該照射した部分についてガラス基板を加熱できるものであればよい。具体的には例えばCOレーザ、エキシマレーザ、銅蒸着レーザ、YAGレーザ等を用いることができる。
加熱工程においては、上記のようにガラス基板にレーザ光を照射することによって、レーザ光照射部についてガラスを気化させる。このため、レーザ光照射部及びその周辺には気化したガラス成分(気体)が発生することになる。係る成分が、レーザ光の光路上に配置されたレーザ発振装置のレンズやミラー等の光学系の表面に析出、付着すると、ガラス基板に対して十分なエネルギーのレーザ光を照射できなくなる場合や、所望の場所にレーザ光を照射できなくなる場合等があり、ガラス基板の加工精度等に影響を与える恐れがある。このため、ガラス基板にレーザ光を照射することにより、気化したガラス成分を除去することが好ましい。すなわち、加熱工程において、気化した前記レーザ光照射部のガラス成分を除去することが好ましい。気化したガラス成分を除去する手段については、特に限定されるものではなく、気化したガラス成分を吸引する機構や、ガスにより気化したガラス成分を吹き飛ばす機構等を用いることができる。その配置についても用いる手段に応じて選択すればよく、加熱工程を阻害せず、気化したガラス成分がレーザ光の光路上に配置されたレンズ、ミラー等に付着する前に除去できるように配置すればよい。例えば、図7において、73で示したように、レーザ光が照射されている部分の近傍に配置することが考えられる。
なお、ガスにより気化したガラス成分を吹き飛ばす機構を用いる場合、用いるガスの種類は特に限定されるものではないが、ガラス基板がレーザ光により加熱されている部分の周辺で用いることから、不燃性ガスを用いることが好ましい。具体的には例えば窒素、アルゴン等の不活性ガスや、空気等を使用することができる。また、この場合、ガラス基板の位置の変位を防止するため、ガラス基板に対してガスがあたらないように供給することが好ましい。
次に、冷却工程について説明する。
冷却工程は、レーザ光が照射された後、ガラス基板が搬送されることにより、レーザ光照射後のレーザ光照射部(既にレーザ光が照射された部分)が、レーザ光の照射領域から遠ざかり、レーザ光照射部の周辺部が冷却されるものである。
冷却工程においては、図7に示すように、レーザ光照射部(加熱工程でレーザ光が照射され気化した部分)71の周辺部72が冷却される。冷却される際、該周辺部72の少なくとも一部が図8に示すように、略糸状の析出物81、82としてガラス基板表面(ガラス基板の一方の表面および/または他方の表面)に析出する場合がある。これは、ガラスは熱伝導率が低いため、加熱工程後、冷却工程において該周辺部72内に温度勾配が生じるため、該周辺部72内で発生した応力によりガラス基板上に周辺部72の少なくとも一部が排除され析出するものと推認される。なお、図中では析出物81、82がガラス基板の上面(一方の表面)に析出しているが、下面(他方の表面)側に析出する場合もある。また、冷却工程において析出物が析出する場所は冷却条件等により変化するため特に限定されないが、例えば、該析出物81、82はレーザ光12の照射領域よりもガラス基板の搬送方向の下流側であって、レーザ光12の照射領域から外れた位置より析出する。
このように、レーザ光照射部の周辺部72の少なくとも一部がレーザ光を照射した切断面から排除されるため、最終的に均一な切断面を得ることが可能になる。
冷却工程において前記析出物を生じさせ、均一な切断面を得るためにはレーザ光照射部の周辺部が適切な冷却速度で冷却されることが好ましい。該冷却速度はレーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度により変化させることができる。このため、予備実験等を行い冷却工程において上記析出物が生じるように、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度を選択することが好ましい。
レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度は上述のように予備実験等により選択でき、特定されるものではないが例えば144(m/時間)以上とすることができる。
冷却工程において、析出物81、82が生じると、析出物81、82の温度や両者の間の距離等によっては、析出物81と析出物82とが接着する場合がある。さらに場合によっては、析出物81と析出物82とが接着するとレーザ光照射部71の周辺部72から該周辺部72の一部が排出されにくくなり、ガラス基板の切断面が均一な切断面とならない場合がある。しかしながら、本実施形態のガラス基板の切断方法においては、レーザ光の照射領域を含むガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を、ガラス基板の幅方向に湾曲させている。このため、例えば図9に示したように、析出物81、82の温度が特に高いレーザ光照射部(加熱工程でレーザ光が照射され気化した部分)71の周辺において、切断された一方の側のガラス基板91と、他方の側のガラス基板92との高さが異なる。従って、レーザ光照射部71周辺で、析出物81、82同士が接着することを抑制し、その結果、より確実に切断面を均一な切断面とすることができる。
なお、析出物81は搬送ローラ間で析出し、かつ他方の側のガラス基板92の上面側または下面側に析出する。図9においては図面の記載の便宜上、析出物81が搬送ローラの下端部側に回り込んでいるようにも見えるが、析出物81は他方の側のガラス基板92の下面側に析出した場合でも、例えばガラス基板92と搬送ローラ間に位置し搬送ローラの挙動を阻害するものではない。
冷却工程で生じる析出物81、82は、冷却の妨げとなる場合もあることから、レーザ光照射部の周辺部に発生した析出物を除去することが好ましい。該析出物を除去する手段としては特に限定されるものではなく、例えば、ガスにより吹き飛ばす、吸引除去する、ブラシや邪魔板等により除去する等の方法により簡単に除去することができる。
なお、ガスで析出物を吹き飛ばす場合には、ガラス基板に振動等を与え、ガラス基板の切断精度に影響を与えないよう低圧のガスを用いることが好ましい。
冷却工程は、上記のようにレーザ光照射後のレーザ光照射部の周辺部72を冷却するものであり、その冷却温度については限定されるものではない。例えば、レーザ光照射部の周辺部は、レーザ光照射部の加熱後、ガラス転移温度以下にまで冷却することが好ましい。
この際、加熱工程後、周辺雰囲気の温度により冷却する場合には、周辺温度は少なくともガラス転移温度以下であることが好ましく、100℃以下であることが好ましく、40℃以下であることが特に好ましい。なお、ここでいう周辺温度とは少なくとも冷却工程を行っている部分の周辺の温度であるが、切断を行っているガラス基板全体を含む周辺の温度であることが好ましい。
ここまで説明した本実施形態のガラス基板の切断方法は特にガラス基板の搬送方向に沿った切断線でガラス基板を切断する際に好ましく用いることができる。
そして、一般的にガラス基板を製造する際、ガラス基板を所望のサイズとするためガラス基板の幅方向の両端部をガラス基板の搬送方向に沿った切断線で切断するが、この際に本実施形態のガラス基板の切断方法を好ましく用いることができる。この場合、ガラス基板の幅方向の両端部を切断後、幅方向の中央部のみが製品として用いられるため、ガラス基板の幅方向の両端部すなわち耳部は切断後、ガラス基板の搬送経路から分離されることが好ましい。
具体的には例えば、加熱工程よりもガラス基板の搬送方向下流側に、耳離し手段を設け、耳離し手段により、切断されたガラス基板の耳部をガラス基板の搬送方向から離反する向きに方向変更させ、分離することができる。
耳離し手段の具体的構成は特に限定されないが、例えば、ガラス基板の耳部の方向変更の支点となる搬送ローラと、支点となる搬送ローラと反対側においてガラス基板の耳部に接触して搬送ローラとともに耳部を押さえる耳部安定保持手段とにより構成できる。
分離されたガラス基板の耳部は搬送経路とは異なる副搬送経路に導入し、ガラス基板の中央部とは別途回収することができる。
以上の本実施形態のガラス基板の切断方法の説明においては、搬送ローラ32上を水平搬送されているガラス基板を例に本実施形態のガラス基板の切断方法について説明してきた。しかしながら、本実施形態のガラス基板の切断方法は水平搬送されているガラス基板の切断に限定されるものではなく、例えばダウンドロー法等により成形され、垂直搬送されているガラス基板に対しても適用することができる。この場合、例えばガラス基板の一方の面から押圧部材により、レーザ光を照射するレーザ光の照射領域を含むガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を、ガラス基板の幅方向に湾曲させることができる。そして、上述のように加熱工程、冷却工程を行うことにより垂直搬送されているガラス基板についても同様に切断することができる。
また、ガラス基板を垂直搬送している場合でも、ガラス基板の幅方向両端部を切断する際に本実施形態のガラス基板の切断方法を好ましく用いることができる。この場合も、切断されたガラス基板の幅方向の両端部はガラス基板の搬送経路から分離されることが好ましい。
以上に本発明のガラス基板の切断方法について説明してきたが、係るガラス基板の切断方法においては、アシストガスをガラス基板に吹き付けるものではないため、ガラス基板の位置の変位を抑制し、ガラス基板を精度良く切断加工することができる。また、切断時にガラス基板への亀裂の発生を抑制し、表面特性の均一な切断面とすることができる。
以上に説明した本実施形態のガラス基板の切断方法をガラス基板の製造工程に適用し、該ガラス基板の切断方法を用いたガラス基板の製造方法とすることができる。
係るガラス基板の製造方法においては、ガラス基板を精度良く切断加工することができ、切断時にガラス基板への亀裂の発生を抑制し、均一な切断面とすることができるため、ガラス基板の製造歩留まりの向上や、研磨工程における切断面の研磨時間の短縮又は研磨工程省略の効果が得られる。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
本実験例では、レーザ光のエネルギー密度、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度を変化させてガラス基板を切断し、切断後のガラス基板の切断面について評価を行った。
ガラス基板の切断に当たっては、図1に示した構成により、縦100mm、横100mm、板厚0.1mmの無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(旭硝子株式会社製 商品名:AN100)について、所定の搬送速度でガラス基板を搬送しながら、切断予定線に沿ってCOレーザを用いたレーザ光をスポット径が約0.3mmであり、所定のエネルギー密度になるように照射して行った。切断を行う際ガラス基板の周辺温度(環境温度)は、室温(25℃)であった。
また、この際、図3、図4に示したように、搬送ローラ32に支持部材33を設け、レーザ光が照射されているレーザ光の照射領域を含むガラス基板の幅方向の一部の領域を、ガラス基板の幅方向に湾曲させながら、レーザ光の照射を行った。この際、レーザ光12は、図3中矢印12で示すようにガラス基板の幅方向の端部側の斜面に照射した。また、図4に示すように、支持部材33は2つの搬送ローラ32に設け、支持部材33を設けた搬送ローラ32間にレーザ光12の照射領域を配置した。
切断を行った後のガラス基板について、切断ができていなかったものについてはCとして、切断はできたものの、レーザを照射した部分において析出物が観察されず、切断面を目視で確認したところ均一になっていない、またはガラス基板に亀裂が生じたものについてはBとして評価した。ガラス基板を切断でき、目視で均一な切断面であると確認できたものについてはAとして評価を行った。結果を表1及び図10に示す。図10は表1の結果の一部をグラフ化したものである。
Figure 2014192482
図10に示したグラフにおいて、直線Xは、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ここではガラス基板の搬送速度)をv(m/時間)、前記レーザ光のエネルギー密度をE(W/mm)、ガラス基板の板厚をt(mm)とした場合に、E=50×t×vとなる直線である。
そして、直線Yは冷却工程において析出物を生じた、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ここではガラス基板の搬送速度)の最小値を示しており、この場合144(m/時間)であった。
図10によれば、直線Xと直線Yで囲まれる範囲にA評価が分布しており、直線Xよりもエネルギー密度が小さい場合はC評価、直線Yよりも搬送速度が遅い場合にはB評価となっている。
これは、まず、各レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ガラス基板の搬送速度)において、直線X以上のエネルギー密度のレーザ光を照射した場合、レーザ光の照射領域における、ガラス基板の一方の表面から他方の表面までのレーザ光照射領域についてガラスが気化する温度以上に確実に加熱することができているためであると考えられる。
そしてさらに、直線Y以上の搬送速度とすることにより、レーザ光照射後のレーザ光照射領域の周辺部を十分に冷却し、析出物として切断面部分から排除できるため、表面特性が均一な切断面とすることができるためと考えられる。
すなわち、C評価となったガラス基板では、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ガラス基板の搬送速度)に対して十分なレーザ光のエネルギーが付与できておらず、レーザ光の照射領域について、ガラス基板の他方の表面までガラスが気化する温度以上に加熱することができていなかった(ガラス基板の板厚方向全ての範囲について十分に昇温できていなかった)と考えられる。このため、ガラス基板を切断できなかったと推認される。
また、B評価となったガラス基板は、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ガラス基板の搬送速度)に対して十分なエネルギー密度のレーザ光を照射できているため、ガラス基板の切断が行えている。
しかし、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ガラス基板の搬送速度)が十分ではなく、レーザ光照射後のレーザ光照射領域の周辺部の冷却速度が遅くなり、該周辺部が析出物として排除されずに残り、切断面が均一にならなかったためと推認される。もしくは、レーザ光照射後のレーザ光照射領域の周辺部の温度が、ガラス基板が搬送されることにより冷却される際、所望の冷却速度ではないため、切断面およびその周辺に亀裂が生じたものと推認される。
これに対して、A評価のガラス基板はレーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ガラス基板の搬送速度)にあわせてレーザ光のエネルギー密度を適切に選択できていると考えられる。このため、レーザ光の照射領域についてガラス基板の一方の表面から他方の表面まで、ガラスが気化する温度以上に加熱されていると考えられる。さらに、ガラス基板の搬送速度が適切であるため、レーザ光照射後のレーザ光照射領域の周辺部が適切な冷却速度で冷却され、該レーザ光照射後のレーザ光照射領域の周辺部が析出物として排除され、均一な切断面が得られたものと考えられる。
[実験例2]
本実験例では、切断を行うガラス基板の板厚を0.2mmとした以外は、実験例1と同様にして、レーザ光のエネルギー密度、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度を変化させてガラス基板を切断し、切断後のガラス基板の切断面について評価を行った。
結果を表2、図11に示す。図11は表2の結果をグラフ化したものである。
Figure 2014192482
図11に示したグラフにおいても、直線Xは上述のE=50×t×v(t=0.2mm)となる直線である。
また、直線Yは冷却工程において析出物を生じた、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ここではガラス基板の搬送速度)の最小値を示しており、この場合144(m/時間)であった。
これによると、直線Xと直線Yで囲まれる範囲にA評価が分布していることが確認できた。
[実験例3]
本実験例では、切断を行うガラス基板の板厚を0.3mmとした以外は、実験例1と同様にして、レーザ光のエネルギー密度、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度を変化させてガラス基板を切断し、切断後のガラス基板の切断面について評価を行った。
結果を表3、図12に示す。図12は表3の結果をグラフ化したものである。
Figure 2014192482
図12に示したグラフにおいても、直線Xは上述のE=50×t×v(t=0.3mm)となる直線である。
また、直線Yは冷却工程において析出物を生じた、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ここではガラス基板の搬送速度)の最小値を示しており、この場合144(m/時間)であった。
本実験例ではガラス基板の搬送速度を変化させず、照射するレーザ光のエネルギー密度を変化させてガラス基板の切断を行っている。これによるとレーザ光のエネルギー密度を増加させて直線Xよりも大きなエネルギー密度とした場合に、レーザ光の照射領域について、ガラス基板の一方の表面から他方の表面までレーザ光照射領域についてガラスが気化する温度以上に加熱することができ、A評価となることが確認できた。
[実験例4]
本実験例では、切断を行うガラス基板の板厚を0.6mmとした以外は、実験例1と同様にして、レーザ光のエネルギー密度、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度を変化させてガラス基板を切断し、切断後のガラス基板の切断面について評価を行った。
結果を表4、図13に示す。図13は表4の結果をグラフ化したものである。
Figure 2014192482
図13に示したグラフにおいても、直線Xは上述のE=50×t×v(t=0.6mm)となる直線である。
また、直線Yは冷却工程において析出物を生じた、レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度(ここではガラス基板の搬送速度)の最小値を示しており、この場合144(m/時間)であった。
本実験例においては、直線Xよりも照射するレーザ光のエネルギー密度が低かった。このため、レーザ光の照射領域の、ガラス基板に対する相対移動速度(ガラス基板の搬送速度)に対して十分なレーザ光のエネルギーが付与できず、レーザ光の照射部について、ガラス基板の他方の表面までガラス基板が気化する温度以上に加熱できなかったと考えられる。従って、ガラス基板を切断できずC評価となったと考えられる。
以上にガラス基板の切断方法、及びガラス基板の製造方法を、実施形態等で説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
本出願は、2013年5月28日に日本国特許庁に出願された特願2013−112182号に基づく優先権を主張するものであり、特願2013−112182号の全内容を本国際出願に援用する。
11 ガラス基板
12 レーザ光
33 支持部材
40 保持部材
71 レーザ光照射部
72 レーザ光照射部の周辺部
81、82 析出物

Claims (12)

  1. レーザ光を照射してガラス基板を切断予定線に沿って切断するガラス基板の切断方法であって、
    前記ガラス基板の一方の表面に前記レーザ光を照射するレーザ光の照射領域を含む前記ガラス基板の切断予定線に対して直交する幅方向の一部の領域を、前記ガラス基板の前記幅方向に湾曲させ、
    前記レーザ光の照射領域において、前記ガラス基板の一方の表面から他方の表面までのレーザ光照射部が気化する温度以上に加熱し、
    前記レーザ光の照射領域を前記ガラス基板の切断予定線に沿って、前記ガラス基板に対して相対的に移動させることを特徴とするガラス基板の切断方法。
  2. 前記レーザ光の照射領域から、前記ガラス基板の切断予定線に沿って所定距離離隔した部分までの範囲に渡って、
    前記ガラス基板の切断予定線を含む前記ガラス基板の前記幅方向の一部の領域を前記ガラス基板の前記幅方向に湾曲させる請求項1に記載のガラス基板の切断方法。
  3. 前記レーザ光の照射領域を含む前記ガラス基板の前記幅方向の一部の領域がガラス基板の他の部分の領域から突出するように、支持部材によって、前記ガラス基板の他方の表面側から前記ガラス基板を支持することにより、
    前記レーザ光の照射領域を含む前記ガラス基板の前記幅方向の一部の領域を、前記ガラス基板の幅方向に湾曲させる請求項1または2に記載のガラス基板の切断方法。
  4. 前記支持部材は、
    ガラス基板の前記他の部分の領域から突出した、前記ガラス基板の前記幅方向の一部の領域のうち、前記ガラス基板の前記幅方向の端部側の斜面に前記レーザ光の照射領域が配置されるように、
    前記ガラス基板を支持する請求項3に記載のガラス基板の切断方法。
  5. 前記レーザ光の照射領域を含む前記ガラス基板の前記幅方向の一部の領域が自重によってガラス基板の他の部分の領域から撓むように、保持部材によって、前記ガラス基板の他方の表面側から前記ガラス基板を保持することにより、
    前記レーザ光の照射領域を含む前記ガラス基板の前記幅方向の一部の領域を、前記ガラス基板の幅方向に湾曲させる請求項1または2に記載のガラス基板の切断方法。
  6. 前記レーザ光照射部の周辺部は、前記レーザ光照射部の加熱後、ガラス転移温度以下までに冷却される請求項1乃至5いずれか一項に記載のガラス基板の切断方法。
  7. 前記レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度をv(m/時間)、前記レーザ光のエネルギー密度をE(W/mm)、ガラス基板の板厚をt(mm)とした場合に、
    E≧50×t×v
    の関係を満たす請求項1乃至6いずれか一項に記載のガラス基板の切断方法。
  8. 前記レーザ光の照射領域のガラス基板に対する相対移動速度が144(m/時間)以上である請求項1乃至7いずれか一項に記載のガラス基板の切断方法。
  9. 気化した前記レーザ光照射部のガラス成分を除去する請求項1乃至8いずれか一項に記載のガラス基板の切断方法。
  10. 前記レーザ光照射部の周辺部に発生した析出物を除去する請求項1乃至9いずれか一項に記載のガラス基板の切断方法。
  11. 前記ガラス基板の板厚は、3.0mm以下である請求項1乃至10いずれか一項に記載のガラス基板の切断方法。
  12. 請求項1乃至11いずれか一項に記載のガラス基板の切断方法を用いたガラス基板の製造方法。
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