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JP7500303B2 - インクセット、インクセットを使用して形成された化粧板及び化粧板の製造方法 - Google Patents

インクセット、インクセットを使用して形成された化粧板及び化粧板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、インクセット、インクセットを使用して形成された化粧板及び化粧板の製造方法に関する。
インク組成物として、各種の水溶性染料を水、又は水と有機溶剤との混合液に溶解させた水性型のインク組成物や水を含有せず、有機溶剤を主成分とする溶剤型のインク組成物が広く用いられている。
建築物、家具、建具、造作部材等の表面化粧の手段としてこのインク組成物が用いられることがある。例えば、紙、不織布、織布等の繊維質基材上にこのインク組成物が用いて天然の木材と同じ木目調の図柄を形成した後、該基材中にメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の未硬化組成物を含浸して、熱プレス加工することによりメラミン化粧板等の化粧板を得て、被着体となる建築物、家具、建具、造作部材等の表面にこの化粧板を接着して、天然の木材と同じ意匠外観を有する建築物、家具、建具、造作部材等を得ることができる。
このような図柄を形成する方式としてインクジェット方式が用いられることがある。インクジェット方式はグラビア方式のように製版コストがかからないため小ロット生産にも対応可能である。例えば、特許文献1には、化粧板用基材は表面にインク受容層を有し、シアンインクの濃度が100%の吐出(印刷)を行った後のシアンインクの反射濃度が1.3以上であることを特徴とする化粧板が開示されている。
特許文献1によればその化粧板は、インクジェット化粧板用基材における様々な問題を解決し、インクジェット方式の特質を生かした実用的な化粧板であることが記載されている。
特開2018-176517号公報
さて、木目調の図柄、天然の石材面の図柄、天然皮革の表面の図柄などの化粧板によく用いられる図柄は、いわゆる暖色(赤味や黄味)系の色柄となる。すると一般的なインクジェット方式に用いられるインクセットによりこのような暖色系の色柄を吐出した場合には、グラビア方式と比較して青味が強くなることが本発明者らによって明らかとなった。
図柄の色味を制御する手段として、例えばインクセットに含まれる各インク組成物におけるインクジェット方式の吐出濃度(印刷濃度)を制御するようなことが考えられる。しかしながら、このように色味を制御するために特定のインク組成物の吐出濃度(印刷濃度)を変化させた場合には、例えば形成される図柄に粒状感(ざらつき)が発生することや、インク組成物の吐出量が変化したことにより、インク組成物が基材に多く浸透して裏抜けが発生することなど、基材の表面にインク組成物を吐出して化粧板を製造する際に様々な問題が生じることがあった。
本発明は、インクジェット方式により吐出されるインク組成物であっても、意匠性に優れた図柄を形成することのできる化粧板用のインクセットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、それぞれのインク組成物に含まれる顔料の含有量を制御することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
(1)シアンインクと、マゼンタインクと、イエローインクと、を含み、インクジェット方式により吐出される化粧板用のインクセットであって、
それぞれのインク組成物は、顔料を含有し、
前記シアンインクに含まれる顔料の含有量Cは、前記マゼンタインクに含まれる顔料の含有量M又は前記イエローインクYに含まれる顔料の含有量よりも少ない
インクセット。
(2)前記シアンインクに含まれる顔料の含有量Cに対する前記マゼンタインクに含まれる顔料の含有量Mと前記イエローインクに含まれる顔料の含有量Yの合計値との比(M+Y)/Cが2.5以上である
(1)に記載のインクセット。
(3)前記シアンインクに含まれる顔料の含有量Cは前記シアンインク100質量部中2.5質量部以上であり、
前記マゼンタインクに含まれる顔料の含有量Mは前記マゼンタインク100質量部中4.0質量部以上であり、
前記イエローインクに含まれる顔料の含有量Mは前記イエローインク100質量部中4.0質量部以上である
(1)又は(2)に記載のインクセット。
(4)前記シアンインクに含まれる顔料にはフタロシアニン系化合物を含み、
前記マゼンタインクに含まれる顔料にはキナクリドン系化合物を含み、
前記イエローインクに含まれる顔料にはイソインドリノン系化合物を含む
(1)から(3)のいずれかに記載のインクセット。
(5)インクジェット方式によってJIS P8141(2004年)に規定される吸水度が10mm/10分以上の化粧板用基材の表面に直接吐出される
(1)から(4)のいずれかに記載のインクセット。
(6)インクセットに含まれるインク組成物は水性型のインク組成物である
(1)から(5)のいずれかに記載のインクセット。
(7)インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含有される前記水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中20質量部以上55質量部以下であり、
インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含まれる沸点が250℃以上の水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中15質量部以下である
(6)に記載のインクセット。
(8)(1)から(7)のいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物の加飾層が化粧板用基材の表面に積層された化粧板。
(9)(1)から(7)のいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物をインクジェット方式にて化粧板用基材の表面に吐出する化粧板の製造方法。
本発明によれば、インクジェット方式により吐出されるインク組成物であっても、意匠性に優れた図柄を形成することのできる化粧板用のインクセットである。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
<1.インクセットの概要>
本実施の形態に係るインクセットは、シアンインクと、マゼンタインクと、イエローインクと、を含む。本明細書におけるインクセットとは、例えばシアンインクと、マゼンタインクと、イエローインクを含むような色の異なるインクを含むインクセットを意味するものであり、例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクからなるインクセットやそれらにホワイトインクを加えたインクセットを意味するものである。
そして、このインクセットに含まれるそれぞれのインク組成物は顔料を含有しており、シアンインクに含まれる顔料の含有量Cは、マゼンタインクに含まれる顔料の含有量M又はイエローインクYに含まれる顔料の含有量よりも少ないこと(すなわち、C<M及び/又はC<Yであること)を特徴とする。
このようにそれぞれのインク組成物に含まれる顔料の含有量を制御することにより、図柄の青味が強くなることを抑制して、意匠性に優れた図柄を形成することができる。
そして、シアンインクに含まれる顔料の含有量Cに対するマゼンタインクに含まれる顔料の含有量Mとイエローインクに含まれる顔料の含有量Yとの合計値(M+Y)/Cの比が2.5以上であることが好ましい。このようにそれぞれのインク組成物に含まれる顔料の含有量を制御することにより、図柄の青味が強くなることをより効果的に抑制することができる。なお、この比(M+Y)/Cは、2.7以上であることがより好ましく、3.0以上であることが更に好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.5以下であることが更に好ましい。
より具体的には、シアンインクに含まれる顔料の含有量Cはシアンインク100質量部中2.5質量部以上であることが好ましく、マゼンタインクに含まれる顔料の含有量Mはマゼンタインク100質量部中4.0質量部以上であることが好ましく、イエローインクに含まれる顔料の含有量Mはイエローインク100質量部中4.0質量部以上であることが好ましい。
従来のインクジェット方式により吐出される化粧板用のインク組成物は、化粧板用基材の表面にインク受容層を有することが一般的であり(例えば、特許文献1)化粧板用基材の表面に直接吐出することを想定していない。本実施の形態に係るインクセットは、主に吸水性基材である化粧板用基材の表面に直接吐出されることを想定したものであり、インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物における顔料の含有量を制御することにより、意匠性に優れた図柄を形成することを可能にしたものである。
次に、インクセットを構成するインク組成物ついて説明する。
<2.インク組成物>
インク組成物は、少なくとも、顔料と、樹脂と、溶媒(水及び/又は有機溶剤)を含有する。又は、インク組成物が活性エネルギー線硬化型のインク組成物である場合には、後述するように少なくとも、顔料と、活性エネルギー線重合性化合物と、を含有する。以下、インク組成物に含有される顔料、その他の添加剤について説明する。
[顔料]
インクセットに含まれるインク組成物には、顔料を含有する。顔料は、上記で述べた所定の範囲を満たすものであれば特に制限はされない。顔料は、インク組成物に一般的に用いられるものを用いることができる。
イエローインクに含有されるイエロー系顔料は、縮合アゾ化合物、イソインドリノン系化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントイエロー112、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、111、128、129、147、168等が挙げられる。
その中でもイソインドリノン系化合物を含むものが好ましい。イソインドリノン系化合物は、より詳細には、C.I.ピグメントイエロー109、110、173等が挙げられ、C.I.ピグメントイエロー110が特に好ましい。
マゼンタインクに含有されるマゼンタ系顔料は、縮合アゾ系化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ベリレン化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、122、209144、146、166、169、177、184、185、202、206、207、220、221、254、C.I.ピグメントバイオレット19、42等が挙げられる。
その中でもキナクリドン系化合物を含むものが好ましい。キナクリドン系化合物は、より詳細には、C.I.ピグメントレッド122、202、206、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19、42等が挙げられ、ピグメントレッド122、202、C.I.ピグメントバイオレット19が好ましく、C.I.ピグメントバイオレット19が特に好ましい。
シアンインクに含有されるシアン系顔料は、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキカゴウブツ等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15;1、15;2、15;3、15;4、60、62、66等が挙げられる。
その中でもフタロシアニン系化合物を含むものが好ましい。フタロシアニン系化合物は、より詳細には、C.I.ピグメントブルー15;3が特に好ましい。
シアンインクの場合、シアン系顔料の含有量は、シアンインク100質量部中2.5質量部以上であることが好ましく、シアンインク100質量部中3.0質量部以上であることがより好ましく、シアンインク100質量部中4.0質量部以上であることが更に好ましい。これにより、基材の表面に積層された加飾層(塗膜)の発色性を向上させることができる。シアン系顔料の含有量は、シアンインク100質量部中20.0質量部以下であることが好ましく、10.0質量部以下であることがより好ましく、6.0質量部以下であることが更に好ましい。
マゼンダインクの場合、マゼンダ系顔料の含有量は、マゼンダインク100質量部中4.0質量部以上であることが好ましく、マゼンダインク100質量部中4.5質量部以上であることがより好ましく、マゼンダインク100質量部中5.0質量部以上であることが更に好ましい。これにより、基材の表面に形成された加飾層(塗膜)の発色性を向上させることができる。マゼンダ系顔料の含有量は、マゼンダインク100質量部中20.0質量部以下であることが好ましく、15.0質量部以下であることがより好ましい。
イエローインクの場合、イエロー系顔料の含有量は、イエローインク100質量部中4.0質量部以上であることが好ましく、イエローインク100質量部中4.5質量部以上であることがより好ましく、イエローインク100質量部中5.0質量部以上であることが更に好ましい。これにより、基材の表面に積層された加飾層(塗膜)の発色性を向上させることができる。イエロー系顔料の含有量は、イエローインク100質量部中20.0質量部以下であることが好ましく、15.0質量部以下であることがより好ましい。
顔料の平均分散粒径は、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではない。顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、顔料の平均粒径は、70nm以上が好ましく、500nm以下が好ましい。平均分散粒径が500nm以下であれば、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを起こしにくく、再現性の高い均質な画像を得ることができる。平均分散粒径が70nm以上であれば、得られる積層体の耐候性を良好なものとすることができる。なお、顔料の平均分散粒径は、測定温度25℃にて濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製、型式:FPAR-1000)を用いて測定することができる。
以下、水性型のインク組成物と溶剤型のインク組成物と活性エネルギー線硬化型のインク組成物について説明する。
[2-1.水性型のインク組成物]
水性型のインク組成物とは、水を主成分とし、有機溶媒を含有してもよいインク組成物である。このインク組成物は基材の表面に吐出されて、そのインク組成物から水や有機溶剤を揮発させて加飾層となる。
水性型のインク組成物は、低コストであり活性エネルギー線を照射せずに加飾層を積層することができる。また、水を主成分とする溶媒を使用した場合には、安全であり環境面でも優れるインク組成物である。
[水]
水性型のインク組成物において、含有される水としては、種々のイオンを含有するものではなく、脱イオン水を使用することが好ましい。水の含有量としては、各成分を分散又は溶解可能な含有量であれば特に限定されるものではないが、インク組成物100質量部中に10質量部以上であることが好ましく、中でもインク組成物100質量部中に20質量部以上であることが好ましく、特にインク組成物100質量部中に30質量部以上であることが好ましい。インク組成物全量中に95質量部以下であることが好ましく、中でもインク組成物100質量部中に90質量部以下であることがより好ましい。
[有機溶剤]
水性型のインク組成物に含有される有機溶剤は、インク組成物に含有される成分を分散又は溶解することができるものである。このような有機溶剤としては、水溶性を有する水溶性溶媒であっても非水溶性溶媒であってもよい。ここで、水溶性を有するとは、25℃の水100質量部中に、1気圧下で5質量部以上溶解することができるものをいう。
水溶性溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール等の炭素数1~5のアルキルアルコール類;3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等の1価のアルコール類;1-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、3-メトキシプロパンアミド、3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロパンアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類:メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル,イソブチル)エーテル等のモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の含窒素複素環化合物;γ-ブチロラクトン、スルホラン等の環状化合物等が挙げられる。
水溶性溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中20質量部以上であることが好ましい。水溶性溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中55質量部以下であることが好ましい。これにより、インク組成物に含まれる顔料や樹脂の分散性や溶解性を向上させることができる。
また、沸点が250℃以上の水溶性溶媒を含有してもよいが、インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含まれる沸点が250℃以上の水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。
[顔料分散剤]
水性型のインク組成物には顔料分散剤が含有されていてもよい。ここで顔料分散剤とは、顔料表面の一部に付着することでインク内での顔料の分散性を向上させる機能を有する樹脂又は界面活性剤のことを意味する。
水性型のインク組成物において、用いることのできる顔料分散剤は特に限定されない。例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン(シリコン)系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
水性型のインク組成物おいて用いることのできる顔料分散剤としては、水溶性高分子分散剤を好ましく用いることができる。水溶性高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプトラクトン系の主鎖を有し、側鎖に、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の極性基を有する分散剤等が挙げられる。例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物とアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの共重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル樹脂を含有する水溶性高分子分散剤が、インク組成物の分散安定性と、加飾層の画像鮮明性の観点から好ましい。
水溶性高分子分散剤の具体例としては、SARTOMER社製SMA1440、SMA2625、SMA17352、SMA3840、SMA1000、SMA2000、SMA3000、BASFジャパン社製JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL680、JONCRYL682、JONCRYL690、JONCRYL819、JONCRYL-JDX5050、EFKA4550、EFKA4560、EFKA4585、EFKA5220、EFKA6230、ルーブリゾール社製SOLSPERSE20000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE41000、SOLSPERSE41090、SOLSPERSE43000、SOLSPERSE44000、SOLSPERSE46000、SOLSPERSE47000、SOLSPERSE54000、ビックケミー社製BYKJET-9150、BYKJET-9151、BYKJET-9170、DISPERBYK-168、DISPERBYK-190、DISPERBYK-198、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2015、等が挙げられる。これらの顔料分散剤は、水性型のインク組成物において好適に用いることができる。
水性型のインク組成物において、用いることのできる顔料は、顔料を顔料分散剤によって水溶性溶媒中に分散させた顔料分散体、であっても、顔料の表面に直接に親水性基を修飾した自己分散型顔料とした顔料分散体であってもよい。本実施形態において、水性型のインク組成物に用いることのできる顔料は、複数の先述した顔料を併用してもよく、先述した顔料分散剤によって水溶性溶媒中に分散させた顔料分散体と自己分散型顔料を併用したものであってもよい。自己分散型顔料を用いる場合、従来公知の自己分散型顔料を用いることができる。
[樹脂]
水性型のインク組成物には樹脂を含有してもよい。樹脂は本実施形態のインク組成物において必須ではないが、インク組成物に樹脂を含有することで、インク組成物により積層される加飾層の耐水性が向上する。また、水性型のインク組成物では、含有する樹脂の少なくとも一部は、樹脂エマルジョンとして含有することが好ましい。本実施形態の水性型のインク組成物において、樹脂エマルジョンとは、連続相が水溶性溶媒であり、分散粒子が樹脂微粒子である水性分散液を意味する。樹脂エマルジョンを形成することによって、樹脂が静電反発力によって樹脂微粒子として水性型のインク組成物中に分散することができる。上記樹脂エマルジョンは、一般に連続相である水溶性溶媒が蒸発や浸透等により減少すると、増粘・凝集する性質を持ち、顔料の基材への定着を促進する効果を有する。
本実施形態の水性型のインク組成物に含有される樹脂は、所望の耐水性を示すことができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン(シリコン)樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂、硝化綿等のセルロース系樹脂或いはこれらの共重合樹脂や混合物を用いることができる。これらのものは耐水性に加えて耐溶剤性も向上させることができる点で好ましい。中でも、耐水性及び耐溶剤性に優れたものとすることができ、インクジェット方式での吐出安定性に優れたものとすることができることからアクリル樹脂を含むものであることが好ましい。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成するモノマーの主成分として含むものであれば特に限定されるものではない。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、公知の化合物を使用することができ、単官能の(メタ)アクリル酸エステルを好ましく用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等を挙げることができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-iso-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-iso-オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸-iso-ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸-1,1,1-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-n-プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸-3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-シアノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリル酸エステル類、等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味するものである。これらのモノマーは、三菱レイヨン(株)、日本油脂(株)、三菱化学(株)、日立化成工業(株)等から入手することができる。
市販の樹脂エマルジョンとしては、例えば、アクリットWEM-031U、WEM-200U、WEM-321、WEM-3000、WEM-202U、WEM-3008、(大成ファインケミカル(株)製、アクリル-ウレタン樹脂エマルジョン)、アクリットUW-550CS、UW-223SX、AKW107、RKW-500(大成ファインケミカル(株)製、アクリル樹脂エマルジョン)、LUBRIJET N240(ルーブリゾール製、アクリル樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス150、210、470、500M、620、650、E2000、E4800、R5002(第一工業製薬(株)製、ウレタン樹脂エマルジョン)、ビニブラン701FE35、701FE50、701FE65、700、701、711、737、747(日信化学(株)製、塩ビ-アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2706、2685(日信化学(株)製、アクリル樹脂エマルジョン)、モビニール743N、6600、7470、7720、(日本合成化学(株)製、アクリル樹脂エマルジョン)、PRIMAL AC-261P、 AC-818(ダウ・ケミカル社製 アクリル樹脂粒子エマルジョン)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
樹脂エマルジョンの平均粒子径は、インク組成物中での分散安定性の観点、特にインクジェット方式での吐出安定性の観点から、下限は30nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。上限は300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。なお、本実施形態において、樹脂エマルジョンの数平均粒子径は、測定温度25℃にて濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製、型式:FPAR-1000)を用いて測定することができる。
樹脂エマルジョンの質量平均分子量は、インク組成物の安定性と、膜耐水性の観点から、10000以上が好ましく、100000以上がより好ましい。樹脂エマルジョンの質量平均分子量は、インク組成物の安定性と、膜耐水性の観点から、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。なお、本実施形態において樹脂の分子量は、質量平均分子量Mwを示すものであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値であり、東ソー社製の「HLC-8120GPC」にて、校正曲線用ポリスチレンスタンダードを標準にして測定することができる。
樹脂エマルジョンのガラス転移点(Tg)は、積層体を形成するために高い温度をかけることを回避でき、多くのエネルギーを不要とすることや、積層体が熱による損傷を受けにくいものとすることができることから、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がより好ましい。また、同様の理由により、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がより好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えば島津製作所社製の示差走査熱量計「DSC-50」にて測定することができる。
樹脂エマルジョンは、カチオン性、ノニオン性、アニオン性いずれかに限定されるものではないが、樹脂エマルジョンの酸価は、積層体における加飾層の耐水性、インク組成物の保存安定性等の観点から、25mgKOH/g以下であることが好ましい。
水性型のインク組成物において、インク組成物100質量部中に含まれる樹脂(樹脂エマルジョン)の質量部は、所望の耐水性及び耐溶剤性を有する積層体が形成可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、インク組成物100質量部中に0.05質量部以上含まれることが好ましく、中でも、0.1質量部以上含まれることが好ましく、更に0.5質量部以上含まれることが好ましく、1質量部以上含まれることが最も好ましい。インク組成物100質量部中に20質量部以下含まれることが好ましく、中でも、15質量部以下含まれることが好ましい。
インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物は、顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることが好ましい。インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物は、顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で5.5以下であることが好ましく、5.0以下であることが好ましい。なお、本明細書中で顔料(P)と樹脂(V)との含有比とはインク組成物中の顔料と樹脂(固形分)の質量比を意味する。
特に、本実施の形態のインクセットにおいては、シアンインクのP/VがマゼンタインクのP/Vよりも小さいことが好ましく、(マゼンタインクのP/V)-(シアンインクのP/V)は0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましい。シアンインクのP/VがマゼンタインクのP/Vよりも小さいことにより、インクジェット方式にて暖色系の色柄を印刷(吐出)した場合であっても、青味が強くなることはなく化粧板の意匠性を向上させることができる。なお、(マゼンタインクのP/V)-(シアンインクのP/V)は1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。
[界面活性剤]
水性型のインク組成物において、その他の添加剤として界面活性剤が含有されていてもよい。本実施形態の水性型のインク組成物において用いることのできる界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリシロキサン化合物、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤、アルキレンオキサイド非変性アセチレングリコール系界面活性剤等を挙げることができる。
本実施形態の水性型のインク組成物においては、中でも、アルキレンオキサイド非変性アセチレングリコール系界面活性剤、アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤、及びポリシロキサン化合物のいずれかを、表面張力調整剤として含むことが、インク組成物の化粧板用基材に対する濡れ広がり性をより優れたものとすることができるため、好ましい。
<2-2.溶剤型のインク組成物>
溶剤型のインク組成物とは、水を含有せず、有機溶剤を主成分とするインク組成物である。本実施形態の溶剤型のインク組成物において「水を含有しない」とは、水を意図的に含有させずに製造されたインク組成物であることを意味し、例えば大気中等に含有される水蒸気等や添加剤に含有される水等に起因するような製造者が意図しないような原因により含有されてしまうような水は考慮しない。
[有機溶剤]
溶剤型のインク組成物において、上述した水性型のインク組成物に含有される有機溶剤と同様の有機溶剤を使用することができる。
[樹脂]
本実施形態の溶剤型のインク組成物には樹脂を含有する。インク組成物に樹脂を含有することで、インク組成物により積層される加飾層の耐水性が向上する。樹脂としては、特に限定はなく、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性樹脂、フエノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、セルロースアセテートブチレート、シリコーン(シリコン)樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂、或いはこれらの共重合樹脂や混合物を用いることができる。
本実施形態の溶剤型のインク組成物においては、中でも、耐水性及び耐溶剤性を向上させることができ、インクジェット方式での高速印刷時の吐出応答性を向上する点、及び吐出安定性を向上させることができることから、アクリル樹脂を含むものであることが好ましい。
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成するモノマーの主成分として含むものであれば特に限定されるものではなく、上述の水性型のインク組成物と同様のものを例示することができる。アクリル樹脂は、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよいし、ラジカル重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよく、特に、本実施形態の溶剤型のインク組成物として好ましいアクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単独の重合体、或いは、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルよりなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物との共重合体である。
本実施形態の溶剤型のインク組成物において、インク組成物100質量部中に含まれる樹脂の質量部は、特に限定されるものではないが、例えば、インク組成物中に0.05質量部以上であることが好ましく、中でも、0.1質量部以上であることが好ましく、更に0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。インク組成物100質量部中に含まれる樹脂の質量部は、特に限定されるものではないが、例えば、インク組成物中に20質量部以下であることが好ましく、中でも、15質量部以下であることがより好ましい。
インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物は、顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは上述した水性型のインク組成物と同様である。
[分散剤]
本実施形態の溶剤型のインク組成物において必要に応じて分散剤を用いてもよい。分散剤としては、溶剤型のインク組成物において用いられている任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、高分子分散剤を用いるとよい。こうした分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk-2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)が用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)が用いられる。好ましい分散剤としては、ポリエステル系分散剤であり、例えばヒノアクトKF-1000、T-6000、T-7000、T-8000、T-8000E、T-9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000(ルーブリゾール社製)、フローレンDOPA-15BHFS、17HF、22、G-700、900、NC-500、GW-1500(共栄社化学(株)製)、Efka4310、4320、4330、4401、4402、4403N、4570、7411、7477、7700(BASF社製)の単独、又はそれらの混合物を用いることができる。
[界面活性剤]
また、本実施形態の溶剤型のインク組成物においては、ノズル部やチューブ内等の機器内での溶剤型のインク組成物の揮発抑制、固化防止、又は、固化した際の再溶解性を目的として、室温、大気圧下で液状の非イオン性ポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP-208、P-210、P-213、E-202S、E-205S、E-215、K-204、K-220、S-207、S-215、A-10R、A-13P、NC-203、NC-207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A-90、A-60(花王(株)製)、フローレンG-70、D-90(共栄社化学(株)製)、ポエムJ-0081HV(理研ビタミン(株)製)、アデカトールNP-620、NP-650、NP-660、NP-675、NP-683、NP-686、アデカコールCS-141E、TS-230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW-20、TW-80、ノイゲンCX-100(第一工業製薬(株)製)等が例示される。
界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができ、添加目的に合わせて適宜選択されればよい。
(インク組成物の製造方法)
本実施形態の水性型のインク組成物や溶剤型のインク組成物を製造する方法は、顔料と、樹脂と、溶媒(水及び/又は有機溶剤)と、を混合することによりインク組成物を製造する製造方法を挙げることができる。
例えば、有機溶剤、水、顔料、樹脂、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加して作製する方法、水と有機溶剤とを含有する溶媒に、顔料と分散剤を加えて分散した後、樹脂、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加して作製する方法、水と有機溶剤とを含有する溶媒に顔料と樹脂と界面活性剤と必要に応じてその他の成分を添加した後、顔料を分散して作製する方法等が挙げられる。
[2-3.活性エネルギー線硬化型のインク組成物]
活性エネルギー線硬化型のインク組成物とは、活性エネルギー線重合性化合物を含有するインク組成物である。活性エネルギー線重合性化合物とは、遠紫外線、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線の活性エネルギー線を照射することにより重合されるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。
なお、活性エネルギー線硬化型のインク組成物に含有される顔料は、上述した水性型や溶剤型のインク組成物に含有される顔料と同様のものを用いることができる。
(活性エネルギー線重合性化合物)
活性エネルギー線重合性化合物の例として、単官能重合性化合物や多官能重合性化合物を挙げることができる。単官能重合性化合物としては、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(CTFA)、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル))メチル(メタ)アクリレート、アルキルシクロアルキルアクリレートである4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、クレゾールアクリレート、2-アクリロイロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-アクリロイロキシプロピルフタレート、パラクミルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、1-アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3-3-5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルカプロラクタム、イミドアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及び、これらのアクリレートにアルコキシ変性、及びカプロラクトン変性等の各種変性を有するもの、を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
多官能重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、アルコキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリントリアクリレート、及びこれらの変性数違い、変性種違い、構造違いの(メタ)アクリレートを挙げることができる。
(活性エネルギー線重合開始剤)
活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、必要に応じて活性エネルギー線重合開始剤を含有してもよい。活性エネルギー線は、ラジカル、カチオン、アニオン等の重合反応の契機となり得るエネルギー線であれば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線等のいずれであってもよいが、硬化速度、照射装置の入手容易さ、価格等の観点において、紫外線照射による硬化が好ましい。活性エネルギー線重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射により活性エネルギー線硬化型インク組成物中のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重合反応を促進するものであれば特に限定されず、従来公知の活性エネルギー線重合開始剤を用いることができる。活性エネルギー線重合開始剤の具体例として、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α-アミノアルキルフェノン類、α-ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられる。
活性エネルギー線重合開始剤の量は、活性エネルギー線重合性化合物の重合反応を適切に開始できる量であればよく、インク組成物100質量部中1.0質量部以上であることが好ましく、3.0質量部以上であることがより好ましい。また、インク組成物100質量部中20.0質量部以下であることが好ましい。なお、本実施の形態に係るインク組成物においては、活性エネルギー線重合開始剤は必ずしも必須でなく、例えば活性エネルギー線として電子線を用いる場合には活性エネルギー線重合開始剤は用いなくてもよい。
(分散剤)
活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、必要に応じて分散剤を含有してもよい。分散剤としては例えば高分子分散剤が挙げられる。この高分子分散剤の主鎖はポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系等からなり、高分子分散剤は、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基等の極性基やこれらの塩を有するのが好ましい。
好ましい高分子分散剤はポリエステル系分散剤であり、具体例として、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース33000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース24000」;ビックケミー社製「Disperbyk168」、;味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」、エボニック・ジャパン社製「TEGO Dispers685」等が挙げられる。
(その他の添加剤)
活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、その他の添加剤として、可塑剤、重合禁止剤、光安定化剤、酸化防止剤等、種々の添加剤を含有していてもよい。なお、活性エネルギー線硬化型のインク組成物であっても水や有機溶剤を含有していてもよいが、水や有機溶剤は含有していないことが好ましい。水や有機溶剤は含有していない活性エネルギー線硬化型のインク組成物であれば、基材の表面に転移された形状を変化させずに加飾層を積層することができる。
(活性エネルギー線硬化型のインク組成物の製造方法)
活性エネルギー線硬化型のインク組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。活性エネルギー線硬化型のインク組成物には、分散機を用いて、活性エネルギー線重合性化合物、分散剤等で分散し、その後、必要に応じて活性エネルギー線重合開始剤、レベリング剤等を添加して均一に撹拌することにより、混合物を得て、その後有機樹脂フィラーを添加して更にフィルターで濾過することによってインク組成物が得られる。
<3.化粧板用基材>
化粧板用基材とは、上記のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物に使用される化粧板用の基材である。斯かる基材としては、液状樹脂組成物の含侵性の有る纖維質の材料(繊維質基材)が好ましい。例えば、チタン紙、上質紙、クラフト紙、リンター紙、パーチメント紙、グラシン紙、薄葉紙等の各種の紙、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂や硝子等の無機物の纖維からなる不織布、織布等の纖維質基材に代表される吸水性基材が使用できるが、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の未硬化液状組成物を含侵した後、含侵組成物を硬化させて所謂「熱硬化性樹脂化粧板」を得る場合は、代表的な例としては、原紙に酸化チタンの粒子が抄き込まれたチタン紙を用いることができる。これらの化粧板用基材の坪量は、50~200g/m程度、一般的には、80~120g/m程度とされる。
これらの化粧板用基材のJIS P8141(2004年)に規定される吸水度(「クレム法で測定した吸水度」乃至は「クレム吸水度」ともいう。)の下限は、10mm/10分以上、好ましくは45mm/10分以上とされる。水を主成分とするインク組成物はJIS P8141(2004年)に規定される吸水度が10mm/10分以上である吸水性基材であっても、その基材に対する浸透性が低い。上記のインクセットはそれぞれのインク組成物に含まれる顔料の含有量が制御されていることから、インク組成物が基材裏面(基材の加飾層積層側とは反対側の面)側へ浸透することが抑制され、より効果的に裏抜けを抑制することができる。
また、これらの化粧板用基材のJIS P8141(2004年)に規定される吸水度の上限は、通常は200mm/10分以下とされ、好ましくは120mm/10分以下とされる。化粧板用基材の吸水度が極端に高過ぎると、上記のインクセットを以ってしてもインク組成物の十分な裏抜け抑制が難しくなることと、印刷後の各種後工程に於ける十分に熱硬化性樹脂の未硬化液状組成物の含侵適性上も適正な基材の吸水度の範囲があること、及び入手可能な市販の各種繊維質基材の吸水度の範囲等を考慮すると、化粧板用基材の吸水度の上限は上記の範囲となる。
所望の加飾層を積層した化粧板用基材には、更に、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂溶液などの熱硬化性樹脂の未硬化液状組成物を含浸した後、加熱及び加圧等により含侵した該組成物を硬化せしめて化粧板とすることができる。加飾層表面の耐擦傷性等の耐久性を向上させる為に、加飾層を積層した化粧板用基材の該加飾層上に、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸した紙をオーバーレイ紙として積層することができる。
基材としてチタン紙を用いる場合には、溶媒として水を主成分とする水性型のインク組成物を使用することが好ましい。水を主成分とするインク組成物であれば、液状の熱硬化性樹脂の未硬化組成物を加飾層が積層されたチタン紙に含侵する工程で、この基材中の紙纖維間に存在している空気が液状組成物に多く置換されることとなる。これにより、熱硬化性樹脂化粧板の成型時や成型後の加熱する工程において、纖維間における残留空気の熱膨張に起因して発生するスポット状の微小な膨れやへこみ(ブリスター)を効果的に抑制することができる。特に、この未硬化組成物が水を溶媒又は分散媒に含む場合には、ブリスターの発生をより効果的に抑制することができる。
特に、シアンインクがシアンインク100質量部中2.5質量部以上であって、マゼンダインクがマゼンダインク100質量部中4.0質量部以上であって、イエローインクがイエローインク100質量部中4.0質量部以上である場合には、それぞれのインク組成物に含有される顔料が浸透せずに基材の表面に維持されることとなるため、化粧板用基材の表面にインク受容層が積層されていなくとも裏抜けを効果的に抑制することができる。
ここで、熱硬化性樹脂化粧板に用いられる熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。
なお、化粧板用の基材としては、前記繊維質基材に代表される吸水性基材に限定されず、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネー樹脂当の樹脂フィルム、アルミニウム、鉄、チタニウム、銅等の金屬元素単体から成る純金屬或いはこれら純金屬の1種以上を含む炭素鋼、ステンレス鋼、ジュラルミン、真鍮青銅等の金屬の板又は箔等の非吸水性基材であってもよい。
<4.インク組成物の加飾層>
加飾層とは、化粧板の基材上、更には該化粧板を表面に接着した被着体に杉、松、欅等の天然の木材板表面と同じ木目調の図柄などの意匠外観を与える層である。上記のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物から水や有機溶媒を揮発させて加飾層となる。
加飾層は、その平面視形状、即ち該積層体をその厚み方向(加飾層の法線方向でもある)から観察した形状が所望の意匠外観を与える。斯かる意匠外観としては、木目調の図柄の他にも花崗岩、大理石等の天然の石材面の図柄、即ち、石目模樣、各種纖維の糸から織られ或いは編まれ、必要に応じて、各種の色や模樣上に染色したり、刺繍された織布の表面の図柄、即ち、布目模樣、天然皮革の表面の図柄、即ち、革シボ(革絞)模樣、花柄模様、水玉模様、縞模樣、雷紋模樣、唐草模様、各種幾何学模様のような所謂抽象模樣柄を挙げることができる。
加飾層の層厚(乾燥状態)は、特に限定されるものではないが、例えば0.5μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。尚、加飾層の層厚の上限は特に制限はないが、生産性の観点から、例えば100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
加飾層には、着色顔料、着色染料、光安定化剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等が含有されていてもよい。着色顔料は、有機顔料又は無機顔料を挙げることができるが、加飾層における耐候性の観点から無機顔料を含有してもよい。
<5.表面保護層>
この積層体においては、必要に応じて加飾層の表面上に、更に、透明な表面保護層を積層してもよい。表面保護層は、樹脂層の積層、塗膜の塗工、又は樹脂層の積層と塗膜の塗工の併用により積層することができる。いずれの場合に於いても、表面保護層は、該層を透視して加飾層を視認可能な程度の透明性を有するものであればよく、無色透明、着色透明のいずれであってもよい。
表面保護層に用いる樹脂層としては、基材の例示に於いて、先に例示した樹脂の中から適宜選択することができる。
塗膜の塗工の場合には、例えば、熱硬化型ウレタン樹脂、熱硬化型ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の公知の熱硬化型樹脂(1液硬化型又は2液硬化型のもの)、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により架橋乃至重合するアクリル酸エステル系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系等の公知の電離放射線硬化型樹脂等の中から適宜選択することができる。塗膜の厚さは、通常、1μm以上100μm以下程度(硬化後の膜厚)とすることができる。
また、上記の基材や加飾層と組み合わせて必要に応じて更に、加飾層上への塗工、他の基材との積層、エンボス加工等による賦形、樹脂含侵、加熱処理、加圧処理、所望の形状及び寸法への裁断乃至切り抜き、粘着剤乃至接着剤層の積層等の加工や処理を施した上で、各種用途に用いることもできる。
<6.吐出方法>
上記のインクセットに含有されるインク組成物をインクジェット方式にて化粧板用基材の表面に吐出する方法は、特に限定されるものではないが、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等の従来公知の方式を挙げることができる。装置が備えるインクジェットヘッドは特に限定されず、シリアルヘッドであってもラインヘッド型であってもよい。
<7.化粧板>
化粧板は、上記の化粧板用基材の表面にインク組成物の加飾層が積層されたシートに熱硬化性樹脂の未硬化物である液状組成物(メラミン樹脂化粧板の場合であれば、メラミン樹脂の未硬化物であるメチロールメラミンを含有する液状組成物)を含浸して、加熱或いは加熱プレス加工することにより得ることができる。被着体となる建築物、家具、建具、造作部材等の表面にこの化粧板を接着して、天然の木材と同じ意匠外観を有する建築物、家具、建具、造作部材等を得ることができる。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
<インク組成物の調整>
顔料、樹脂(顔料分散剤、樹脂エマルジョン)、有機溶剤、界面活性剤、水(イオン交換水)を用いて下記表のように実施例及び比較例のインク組成物(インクセット)を調整した。各成分の数字は質量部を意味する。なお、「顔料」と「樹脂」は固形分の質量部を意味する。
Figure 0007500303000001
表中「シアン顔料」とは、フタロシアニン系化合物(C.I.ピグメントブルー15:3)を意味する。
表中「マゼンタ顔料」とは、キナクリドン系化合物(C.I.ピグメントバイオレット19)を意味する。
表中「イエロー顔料」とは、イソインドリノン系化合物(C.I.ピグメントイエロー110)を意味する。
表中の「分散剤」とは、DISPERBYK-190(ビックケミー社製)を意味する。そして、このDISPERBYK-190(分散剤)は樹脂(V)であり、低分子の繰り返し構造を有する重合体(高分子)に該当する。
表中の「アクリルEm」とは、PRIMAL AC-261P(ダウ・ケミカル社製)のバインダー樹脂(エマルジョン樹脂)を意味する。そして、このバインダー樹脂(エマルジョン樹脂)は樹脂(V)であり、低分子の繰り返し構造を有する重合体(高分子)に該当する。
表1、2中「1,3-PD」とは、1,3-ペンタンジオール(沸点:210℃)を意味する。
表1、2中「PEG200」とは、ポリエチレングリコール(沸点:250℃)を意味する。
表1、2中「GLY」とは、グリセリン(沸点:290℃)を意味する。
表1、2中「Dynol 604(エボニック社製)」とは、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール,エトキシラテドを意味する。
[評価1]
(意匠性評価)
実施例及び比較例のインクセットについて意匠性評価を行った。具体的には、600×600dpi、12plでJIS P8141(2004年)に規定される吸水度が45~200mm/10分の条件に該当する化粧板用基材(KJ特殊紙社製 KSH-801P)の表面(インク受容層が積層されていない)に室温環境下でインクジェット方式により吐出することにより木目調の図柄のパターンの加飾層を積層し、メラミン樹脂の未硬化物であるメチロールメラミンを含有する液状組成物を含浸したオーバーレイ紙、コア紙を重ねて150℃、14MPa(約140kgf/cm)、20分の条件で加熱圧縮して化粧板を製造した。
そして、グラビア用のインクセット(シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料がそれぞれ2.0質量部)を用いてグラビア方式により吐出することにより加飾層を積層し同様に製造した化粧板と比較して青味がかっているか目視により判断した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
〇:化粧板の加飾層が青味を有していなかった。
×:化粧板の加飾層が青味を有していた。
表1からわかるように、実施例のインクセットは、インクジェット方式により吐出されるインク組成物であっても、加飾層が青味を有しておらず、意匠性に優れた図柄を形成することのできる化粧板用のインクセットであることが分かる。一方、比較例のインクセットは、加飾層が青味を有しており、意匠性に優れた図柄を形成できていないことが分かる。
[評価2]
以下の評価は、実施例のインクセットについては、上記同様にインクジェット方式により吐出することにより加飾層を積層した。一方、比較例のインクセットについては、図柄の青味を弱くして青味かからない木目調の図柄のパターンを形成するために、マゼンタインクと、イエローインクにおけるインクジェット方式の吐出濃度(印刷濃度)を上げて(つまり、シアンインクにおけるインクジェット方式の吐出濃度(印刷濃度)を相対的に下げて)実施例のインクセットと同様の色調になるように木目調のパターンで加飾層を積層し、下記の評価を行った。なお、化粧板用基材としては、「粒状感確認試験」、「裏抜け試験」については、KJ特殊紙社製 KSH-801P(紙)を使用し、「乾燥性試験」についてはKJ特殊紙社製 KSH-801P(紙)及びフィルム(ポリエステル(PET)フィルム ルミラーT-60 東レ社製)を使用した。いずれの化粧板用基材もインク受容層は積層されていないものである。
(粒状感確認試験)
実施例及び比較例のインクセットについて粒状感を確認した。具体的には、実施例及び比較例の各インクセットにより製造した化粧板について、形成される図柄に粒状感(ざらつき)を下記評価基準により評価をした。評価結果を表2に示す。
(評価基準)
○:粒状感(ざらつき)なし
△:わずかに粒状感(ざらつき)あり
×:粒状感(ざらつき)あり
(裏抜け試験)
実施例及び比較例のインクセットについて裏抜け試験を行った。具体的には、実施例及び比較例の各インクセットにより製造した化粧板について、裏抜けの有無を観察し、下記評価基準により評価をした。評価結果を表2に示す。
(評価基準)
○:裏抜けなし
△:わずかに裏抜けが発生していた
×:裏抜けが発生していた
(乾燥性試験)
実施例及び比較例のインクセットについて乾燥性試験を行った。具体的には、実施例及び比較例の各インクセットにより製造した化粧板について、加飾層を指触して、インク組成物が付着しなくなるまでの乾燥時間を測定し、下記評価基準により評価を行った。評価結果を表2に示す(表2中、「乾燥性」と表記。)。なお、乾燥性は、化粧板用基材をKJ特殊紙社製 KSH-801P(紙)及び「フィルム」についてそれぞれ確認した。
(評価基準)
〇:5分以内にインク組成物の付着がなくなった
△:5分超10分以内にインク組成物の付着がなくなった
×:10分超にインク組成物の付着がなくなった
Figure 0007500303000002
表2から分かるように、実施例のインクセットでは、形成される図柄に粒状感(ざらつき)や裏抜けが発生せず、化粧板用基材(紙及びフィルム)の表面に吐出した場合であっても乾燥性も良好なインクセットであることが分かる。
一方、シアンインクに含まれる顔料の含有量と、マゼンタインクに含まれる顔料の含有量と、イエローインクに含まれる顔料の含有量と、が所定の含有量となっていない比較例1~3のインクセットでは、形成される図柄に粒状感(ざらつき)が発生し、又は裏抜けや加飾層の乾燥性が低下することとなってしまい、化粧板を製造する際に様々な問題が生じ得ることが分かる。


Claims (6)

  1. シアンインクと、マゼンタインクと、イエローインクと、を含み、インクジェット方式により吐出される化粧板用のインクセットであって、
    それぞれのインク組成物は、顔料を含有し、
    前記シアンインクに含まれる顔料の含有量Cは、前記マゼンタインクに含まれる顔料の含有量M又は前記イエローインクYに含まれる顔料の含有量よりも少なく、
    前記シアンインクに含まれる顔料の含有量Cは前記シアンインク100質量部中2.5質量部以上であり、
    前記マゼンタインクに含まれる顔料の含有量Mは前記マゼンタインク100質量部中4.0質量部以上であり、
    前記イエローインクに含まれる顔料の含有量Yは前記イエローインク100質量部中4.0質量部以上であり、
    前記インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含有される水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中20質量部以上55質量部以下であり、
    前記インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含まれる沸点が250℃以上の水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中10質量部以下であり、
    インクジェット方式によってJIS P8141(2004年)に規定される吸水度が10mm/10分以上の化粧板用基材の表面に直接吐出される
    インクセット。
  2. 前記シアンインクに含まれる顔料の含有量Cに対する前記マゼンタインクに含まれる顔料の含有量Mと前記イエローインクに含まれる顔料の含有量Yとの含有量Yの合計値との比(M+Y)/Cが2.5以上である
    請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記シアンインクに含まれる顔料にはフタロシアニン系化合物を含み、
    前記マゼンタインクに含まれる顔料にはキナクリドン系化合物を含み、
    前記イエローインクに含まれる顔料にはイソインドリノン系化合物を含む
    請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物は水性型のインク組成物である
    請求項1からのいずれかに記載のインクセット。
  5. 請求項1からのいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物の加飾層が化粧板用基材の表面に積層された化粧板。
  6. 請求項1からのいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物をインクジェット方式にて化粧板用基材の表面に吐出する化粧板の製造方法。

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