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JP7545203B2 - ポリオール組成物、発泡性ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォーム - Google Patents

ポリオール組成物、発泡性ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォーム Download PDF

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Description

本発明は、ポリオール組成物、ポリオール組成物を含有する発泡性ポリウレタン組成物、及び発泡性ポリウレタン組成物により形成されるポリウレタンフォームに関する。
ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性及び接着性から、例えば、マンションなどの集合住宅、戸建住宅、学校の各種施設、商業ビルなどの建築物の断熱材として用いられている。ポリウレタンフォームは、建築物の施工現場において、ポリオール組成物とポリイソシアネートとを混合して発泡させ、スプレー装置などを使用して天井や壁、屋根などの対象物に吹き付けることで得られる。
ポリオール組成物には、触媒として樹脂化触媒及び三量化触媒等が含有されることが一般的である。樹脂化触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネートとの反応を促進する触媒であり、三量化触媒は、ポリイソシアネートが互いに反応することでポリイソシアヌレートの生成を促進し、ポリイソシアヌレートの比率を高める触媒である。三量化触媒としては、窒素含有芳香族化合物、カルボン酸アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が使用され、また、樹脂化触媒としては、アミン触媒等が使用されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2018-80328号公報
上記のような触媒が配合された従来のポリオール組成物は、取扱い性の点から良好な発泡性が求められる。一方で、ポリオール組成物を例えば建築物の施工現場にて使用するまでの間に貯蔵する際、触媒が、ポリオール組成物中の発泡剤などと反応して、発泡性が低下することがあり、貯蔵安定性も向上させることが望まれている。特に、近年、発泡剤として、地球温暖化係数が低いハイドロフルオロオレフィン(HFO)が広く使用されつつあるが、HFOは触媒と反応しやすい傾向があり、貯蔵安定性の低下が一層生じやすい。
そこで、本発明は、発泡性及び貯蔵安定性に優れたポリオール組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリオール組成物が、ポリオール化合物、発泡剤、及び触媒を含み、かつ触媒にグアニジン誘導体、イミダゾール誘導体及びアルカリ金属塩を含むことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の[1]~[11]を提供する。
[1]ポリオール化合物、発泡剤及び触媒を含み、前記触媒がグアニジン誘導体、イミダゾール誘導体及びアルカリ金属塩を含む、ポリオール組成物。
[2]前記グアニジン誘導体がテトラアルキルグアニジンであり、前記イミダゾール誘導体が二置換のイミダゾール誘導体であり、前記アルカリ金属塩がカルボン酸アルカリ金属塩である、請求項1に記載のポリオール組成物。
[3]前記アルカリ金属塩がカリウム塩である、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
[4]前記グアニジン誘導体が1,1,3,3-テトラメチルグアニジンであり、前記イミダゾール誘導体が炭素数1~5のアルキル基で置換されたイミダゾール誘導体であり、前記アルカリ金属塩が炭素数6~10のカルボン酸塩である、請求項1~3のいずれかに記載のポリオール組成物。
[5]前記イミダゾール誘導体が1,2-ジメチルイミダゾールを含み、前記アルカリ金属塩が、2-エチルヘキサン酸カリウムを含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリオール組成物。
[6]ポリオール化合物100質量部に対して、前記グアニジン誘導体を0.5~30質量部、前記イミダゾール誘導体を0.5~30質量部、前記アルカリ金属塩を5~60質量部それぞれ含有する、請求項1~5のいずれかに記載のポリオール組成物。
[7]前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、請求項1~6のいずれかに記載のポリオール組成物。
[8]フィラーを含有し、前記フィラーの含有量が、ポリオール化合物100質量部に対して、10質量部以上である、請求項1~7のいずれかに記載のポリオール組成物。
[9]請求項1~8のいずれか1項に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含む発泡性ポリウレタン組成物。
[10]イソシアネートインデックスが250以上である、請求項9に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[11]請求項9又は10に記載の発泡性ポリウレタン組成物を、反応かつ発泡させてなる、ポリウレタンフォーム。
本発明によれば、発泡性及び貯蔵安定性に優れたポリオール組成物を提供できる。
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、ポリオール化合物、発泡剤、及び触媒を含む。本発明のポリオール組成物中の各成分について、以下詳細に説明する。
[ポリオール化合物]
本発明のポリオール組成物は、ポリウレタンフォームの原料となるポリオール化合物を含有する。ポリオール化合物としては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオールなどが挙げられる。ポリオール化合物は、通常、常温(23℃)、常圧(1気圧)で液体となる。
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオールなどが挙げられる。
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラックなどが挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、及びジメチルジシクロへキシルメタンジオールなどが挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオールなどのアルカンジオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、及びα-メチル-ε-カプロラクトンなどのラクトンを開環重合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコールなどとの縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、及びコハク酸などが挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物などが挙げられる。
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオールなどに対し、アクリロニトリル、スチレン、メタクリレート等などのエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、及び多価アルコールの変性ポリオール又はこれらの水素添加物などが挙げられる。
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したものなどが挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、グルコース、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオールなどが挙げられる。
多価アルコールの変性方法は特に限定されないが、アルキレンオキサイド(以下、「AO」ともいう)を付加させる方法が好適に用いられる。AOとしては、炭素数2~6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、「EO」ともいう)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、「PO」ともいう)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、及び1,4-ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、PO及びEOがより好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類、エチレンジアミン及びブチレンジアミンなどのアミン類などが挙げられる。
本発明に使用するポリオール化合物としては、特に限定されないが、発泡性及び反応性の観点から、ポリエステルポリオールが好ましい。その中でも、イソフタル酸(m-フタル酸)などの芳香族環を有する多塩基酸と、ビスフェノールAなどの2価アルコールとを脱水縮合して得られる芳香族系ポリエステルポリオールがより好ましい。芳香族系ポリエステルポリオールを使用することで難燃性が向上しやすくなる。
ポリオールの水酸基価は、20~350mgKOH/gが好ましく、50~300mgKOH/gがより好ましく、100~250mgKOH/gが更に好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性などの観点で好ましい。一方、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタンフォームの架橋密度が上がることにより強度が高くなる。なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
[触媒]
本発明のポリオール組成物は、触媒として、グアニジン誘導体、イミダゾール誘導体、及びアルカリ金属塩を含有する。本発明のポリオール組成物は、これらの化合物を含有することにより、発泡性、貯蔵安定性がいずれも優れたものとなる。
<グアニジン誘導体>
本発明で使用するグアニジン誘導体は、グアニジン骨格を有する化合物であり、その具体例としてテトラアルキルグアニジンが挙げられる。テトラアルキルグアニジンは、1位及び3位の窒素原子に結合している合計4つの水素原子がそれぞれ独立にアルキル基に置換された1,1,3,3-テトラアルキルグアニジンである。
テトラアルキルグアニジンの具体例としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。本発明では、イミダゾール誘導体及びアルカリ金属塩に加えて、グアニジン誘導体を使用することで、ポリオールとイソシアネートとの反応を早期に開始かつ進行させることができ、クリームタイムを早くできるとともに、ゲルタイムも適切な早さに設定できる。そして、後述するようにイソシアネートインデックスを高くしたり、触媒活性の高い三量化触媒を使用したりしても、三量化触媒とウレタン化反応がバランスよく起こり、未反応のポリオールが残りにくくなり、発泡性も良好になる。そのため、例えば、建築物の施工現場にてスプレー噴霧する際の液垂れなどを防止できる。また、上記反応の活性化により、反応熱も発生しやすくなり、そうした反応熱により、ウレタン化反応のみならず、三量化触媒(アルカリ金属塩)を過剰量使用しなくてもポリイソシアネートの三量化反応も促進され、ポリウレタンフォームの難燃性を向上させることができる。なお、テトラアルキルグアニジンは、ウレタンフォーム中に取り込まれて揮発しないため、施工後に臭いの原因となったりすることも防止できる。

(一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立にアルキル基を表す。)
1、R2、R3及びR4のアルキル基は、例えば炭素数1~16のアルキル基であり、好ましくは炭素数1~4である。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐を有していてもよいし、環状構造を有していてもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基などが挙げられる。この中では、安定性、発泡性の観点から、メチル基が好ましく、上記4つのアルキル基がすべてメチル基である、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンがより好ましい。
上記グアニジン誘導体の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対し、0.5~30質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましく、5~18質量部が更に好ましい。グアニジン誘導体の含有量を上記下限値以上とすることで、混合直後から反応が十分に進み反応熱が発生して、三量化反応とウレタン化反応がバランスよく起こり、発泡性などが更に向上する。また、後述するようにフィラーを比較的多く配合しても、発泡性が良好に維持される。一方で、上記上限値以下とすることで、含有量に見合った効果が得られ、ウレタン化反応が過剰に進行したりすることも防止できる。
<イミダゾール誘導体>
本発明のポリオール組成物で使用されるイミダゾール誘導体は、イミダゾール骨格を有する化合物であり、二置換のイミダゾール誘導体が好ましい。イミダゾール誘導体は、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基で置換されたイミダゾール化合物が好ましく、炭素数1~5のアルキル基で置換されたイミダゾール誘導体がより好ましい。イミダゾール誘導体は、ハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、ポリオール組成物の安定性を高めつつポリオール化合物とポリイソシアネートとを反応させやすくする。イミダゾール誘導体の具体例は、下記一般式(2)で表される。

(一般式(2)中、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。)
前記一般式(2)におけるR5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基などが挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基などが挙げられる。
5及びR6のアルキル基又はアルケニル基の炭素数が上記範囲内であると、適度な立体障害により、ハイドロフルオロオレフィンなどの発泡剤の影響を最小限に抑えつつ、ポリオール化合物とポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることができる。これらの観点から、R5及びR6はそれぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
一般式(2)で表されるイミダゾール誘導体の具体例としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが挙げられる。この中では、ハイドロフルオロオレフィン存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがより好ましい。
ポリオール組成物中のイミダゾール誘導体の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.5~30質量部が好ましく、2.0~20質量部がより好ましく、4.5~12質量部が更に好ましい。イミダゾール誘導体の含有量が前記下限値以上であるとウレタン結合の形成が生じやすくなり、反応が速やかに進行する。また、後述するようにフィラーを比較的多く配合しても、反応が速やかに進行して発泡性が良好に維持される。一方、イミダゾール誘導体の含有量が前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなるため好ましい。
<アルカリ金属塩>
本発明のポリオール組成物中の触媒には、前記グアニジン誘導体及び前記イミダゾール誘導体に加え、アルカリ金属塩を含有する。アルカリ金属塩を含有することにより、ポリオール組成物をポリイソシアネートと混合した際、発泡を促進するだけでなく、ポリイソシアネートの三量化を促進し、ポリウレタンフォームの難燃性を向上させることができる。
アルカリ金属塩としては、発泡性の観点から、カルボン酸アルカリ金属塩が好ましい。カルボン酸アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビシウム塩、セシウム塩、フランシウム塩が挙げられるが、この中ではカリウム塩が好ましい。
アルカリ金属塩に使用されるカルボン酸としては、例えば、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、オキソカルボン酸などが挙げられる。カルボン酸の炭素数は、1~20が好ましく、3~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。また、カルボン酸は、直鎖状でも分枝状でも構わないが、分枝状が好ましい。
飽和脂肪族カルボン酸は、モノカルボン酸であり、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸などが挙げられる。
不飽和脂肪族カルボン酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ソルビン酸などが挙げられる。
ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などが挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
トリカルボン酸としては、例えば、アコニット酸などが挙げられる。
オキソカルボン酸としては、例えば、ピルビン酸オキサロ酢酸などが挙げられる。
本発明で使用するアルカリ金属塩のカルボン酸としては、安定性、難燃性などの観点から、飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、炭素数6~10の飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。
アルカリ金属塩の好適な具体例としては、2-エチルヘキサン酸カリウム、酢酸カリウムが挙げられ、中でも2-エチルヘキサン酸カリウムが特に好ましい。
上記カルボン酸カリウム塩の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対し、5~60質量部が好ましく、15~50質量部がより好ましく、20~45質量部が更に好ましい。含有量を前記下限値以上とすることで、ポリイソシアネートの三量化が十分に促進され、良好な難燃性が得られやすくなる。また、後述するようにフィラーを比較的多く配合しても、三量化が十分に進行する。一方、含有量を前記上限値以下とすると、ポリイソシアネートの三量化が過剰に進行することを防止して、未反応のポリオールが残ることが防止され、ポリウレタンフォームの機械特性などが良好となる。
[発泡剤]
本発明のポリオール組成物は、環境保護の観点、及び発泡性の観点から、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含有することが好ましい。本発明では、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いた場合であっても、貯蔵安定性が高く、かつ触媒活性が低下しにくい。ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケンなどを挙げることができる。ハイドロフルオロオレフィンは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケンなどであってもよい。
より具体的には、トリフルオロプロペン、HFO-1234などのテトラフルオロプロペン、HFO-1225などのペンタフルオロプロペン、HFO-1233などのクロロトリフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペンなどが挙げられる。更に具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エンなどが挙げられる。これらの中ではHFO-1233zdが好ましい。
これらのハイドロフルオロオレフィンは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、20~70質量部が好ましく、25~60質量部がより好ましく、30~50質量部が更に好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、ハイドロフルオロオレフィンの含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
本発明のポリオール組成物は、ハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤を含有してもよい。ハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤としては、例えば、水、有機系物理発泡剤、無機系物理発泡剤などが挙げられる。有機系物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ジメチルエーテル、及びシクロプロパンなどの低沸点の炭化水素、ジクロロエタン及びプロピルクロリドなどの塩素化脂肪族炭化水素化合物、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系化合物が挙げられる。無機系物理発泡剤としては、酸素ガス、アルゴンガス、及び二酸化炭素ガスなどが挙げられる。
上記の化合物の中では、イソシアネートインデックスを調整する観点、及び取扱い容易性の観点から水が好ましい。
ポリオール組成物中の水の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部が更に好ましい。発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
[フィラー]
本発明のポリオール組成物は、フィラーを含むことが好ましい。本発明では、フィラーを含有させることで、得られるポリウレタンフォームの難燃性、機械特性などの各種物性を向上させやすくなる。また、本発明では、フィラーを含有していても、上記した触媒の組み合わせを使用することで、ポリオールとイソシアネートとの反応を早期に開始かつ進行させることができる。
フィラーは、通常、粉体成分としてポリオール組成物に分散した状態にあり、固形分(不溶分)の少なくとも一部を構成する。なお、フィラーは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体となる成分である。
フィラーの具体例としては、固形難燃剤が挙げられる。固形難燃剤の具体例としては、赤燐系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、針状フィラー、及び金属水酸化物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<赤燐系難燃剤>
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
ポリオール組成物における赤燐系難燃剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは5~40質量部、より好ましくは12~35質量部、更に好ましくは15~32質量部、より更に好ましくは20~28質量部である。赤燐系難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、赤燐系難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。一方で、上限値以下とすることで、赤燐系難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
<リン酸塩含有難燃剤>
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、各種リン酸と周期律表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸としては、特に限定されないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などが挙げられる。
周期律表IA族~IVB族の金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウムなどが挙げられる。
脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジンなどが挙げられる。芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリンなどが挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミンなどが挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩などが挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから一種もしくは二種以上を使用することができる。
ポリオール組成物におけるリン酸塩含有難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール化合物100質量部に対して、3~40質量部、より好ましくは5~35質量部、さらに好ましくは10~30質量部である。リン酸塩含有難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、リン酸塩含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。一方で、上限値以下とすることでリン酸塩含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
<臭素含有難燃剤>
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物などが挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)などのモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、前記ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物などの臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。更には、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物などの臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、未架橋又は架橋臭素化ポリスチレンなどの臭素化ポリスチレンなどが挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)などのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
ポリオール組成物における臭素含有難燃剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは3~45質量部、より好ましくは14~40質量部、更に好ましくは18~38質量部、より更に好ましくは23~32質量部である。臭素含有難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、臭素含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。一方で、上限値以下とすることで、臭素含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
<塩素含有難燃剤>
塩素含有難燃剤は、ポリウレタンフォームに通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテンなどが挙げられる。
ポリオール組成物における塩素含有難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは3~40質量部、より好ましくは5~35質量部、更に好ましくは10~30質量部である。塩素含有難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、塩素含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。一方で、上限値以下とすることで塩素含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
<アンチモン含有難燃剤>
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩などが挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウムなどが挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウムなどが挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明に使用するアンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
ポリオール組成物におけるアンチモン含有難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは1~40質量部、より好ましくは2~35質量部、さらに好ましくは3~30質量部である。アンチモン含有難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、アンチモン含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることでアンチモン含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
<ホウ素含有難燃剤>
ホウ素含有難燃剤としては、例えば、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩などが挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素などが挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩などが挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウムなどが挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
ポリオール組成物におけるホウ素含有難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは1~40質量部、より好ましくは3~20質量部、更に好ましくは5~15質量部、より更に好ましくは7~13質量部である。ホウ素含有難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、ホウ素含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることでホウ素含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
<針状フィラー>
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、スラグ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、ステンレス繊維などが挙げられる。針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。
ポリオール組成物における針状フィラーの含有量は、特に限定されないが、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは20~90質量部、より好ましくは30~85質量部、更に好ましくは45~75質量である。針状フィラーの含有量をこれら下限値以上とすることで、針状フィラーを含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることで針状フィラーによって発泡が阻害されたりすることがない。
<金属水酸化物>
金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズなどが挙げられる。金属水酸化物は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
ポリオール組成物における金属水酸化物の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは0.2~30質量部、より好ましくは0.3~20質量部、更に好ましくは0.5~15質量部である。金属水酸化物の含有量をこれら下限値以上とすることで、金属水酸化物を含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることで金属水酸化物によって発泡が阻害されたりすることがない。
フィラーとしては、上記固形難燃剤以外の無機充填材を使用してもよい。そのような無機充填材としては、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュなどが挙げられる。
ポリオール組成物におけるフィラーの含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、10質量部以上が好ましい。本発明では、フィラーの含有量を上記下限値以上とすることで、ポリウレタンフォームに難燃性などの各種機能を付与しやすくなる。これらの観点から、ポリオール組成物におけるフィラーの含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が更に好ましく、50質量部以上がより更に好ましい。
また、ポリオール組成物におけるフィラーの含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、120質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、90質量部以下が更に好ましい。フィラーの含有量を上記上限値以下とすることで、触媒の含有量などを適宜調整することで発泡性を良好に維持できる。
フィラーとしては、上記した固形難燃剤を使用するのが好ましい。固形難燃剤を使用することで、得られるポリウレタンフォームの難燃性が更に向上する。固形難燃剤としては、上記した中では、難燃性、発泡性、取り扱い性などの観点から、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、及び針状フィラーから選択される少なくとも1種が好ましい。
フィラーとしては、固形難燃剤を単独で使用してもよいし、固形難燃剤と固形難燃剤以外のフィラーを併用してもよい。フィラー全量に対する固形難燃剤の含有割合は、例えば、50~100質量%、好ましくは70~100質量%、より好ましくは90~100質量%である。
[液状難燃剤]
ポリオール組成物には、難燃剤として液状難燃剤を含有してもよい。また、液状難燃剤は、固形難燃剤と併用することが好ましい。液状難燃剤とは、常温、常圧にて液体となる難燃剤である。液状難燃剤の具体例としては、リン酸エステルが挙げられる。ポリオール組成物に液状難燃剤を含有させることで、ポリオール組成物の難燃性を向上させやすくなり、固形難燃剤と液状難燃剤とを併用することでより一層難燃性を向上させやすくなる。
リン酸エステルとしては、例えば、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステルなどを使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。常温、常圧で液体のものであれば特に限定されないが、具体的には、トリメチルホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェートなどのトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェートなどの芳香環含有リン酸エステルなどが挙げられる。
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェートなどの芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」などが挙げられる。
液状難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
ポリオール組成物が液状難燃剤を含有する場合、ポリオール組成物における液状難燃剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、15~80質量部が好ましく、20~70質量部がより好ましく、30~60質量部が更に好ましい。液状難燃剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、液状難燃剤を含有させる効果を発揮しやすくなる。また、上限値以下とすることで、液状難燃剤によって、発泡性ポリウレタン組成物の発泡が阻害されたりすることもない。
[整泡剤]
本発明のポリオール組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤を含有することでポリウレタンフォームの発泡性を良好にでき、例えば、スプレー噴霧においてポリイソシアネートと反応させる際、発泡を促進できる。
整泡剤としては、具体的には界面活性剤、より具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサンなどのシリコーン整泡剤などが挙げられる。本発明で使用する整泡剤は特に限定されないが、発泡性の観点からシリコーン整泡剤が好ましい。整泡剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
本発明のポリオール組成物中の整泡剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、1~8質量部がより好ましく、2~6質量部が更に好ましい。整泡剤の含有量が前記下限値以上であるとポリオール組成物とポリイソシアネートを反応させる際発泡しやすくなるため、均質なポリウレタンフォームを得ることが可能になる。また、整泡剤の含有量が前記上限値以下であると、製造コストに十分見合った効果を得られる。
[その他の添加剤]
ポリオール組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記以外の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤としては、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤などが挙げられる。
[発泡性ポリウレタン組成物及びポリウレタンフォーム]
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、本発明のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含むものであり、これらを混合して得られる。本発明のポリウレタンフォームは、発泡性ポリウレタン組成物を、反応及び発泡させた反応生成物である。
[ポリイソシアネート]
本発明のポリオール組成物と反応させるポリイソシアネートは、ポリウレタンフォームの形成に使用する公知のポリイソシアネートを使用できる。ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)などが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、又はこれらの混合物がより好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[イソシアネートインデックス]
本発明の発泡性ポリウレタン組成物におけるイソシアネートインデックスに特に制限はないが、250以上が好ましい。イソシアネートインデックスが前記下限値以上であると、ポリオールに対するポリイソシアネートの量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。更に、上記下限値以上とすると、上記したアルカリ金属塩、イミダゾール誘導体、及びグアニジン誘導体を併用することも相俟って、イソシアヌレート結合を十分に有するポリウレタンフォーム、すなわち、難燃性と断熱性とを高い水準で兼ね備えるポリウレタンフォームを製造しやすい。これらの観点から、イソシアネートインデックスは、300以上がより好ましく、350以上が更に好ましく、400以上がより更に好ましい。
また、イソシアネートインデックスは、1000以下が好ましく、800以下がより好ましく、600以下が更に好ましい。イソシアネートインデックスが前記上限値以下であると、製造コストに十分見合った難燃性が得られる。
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
[ポリウレタンフォームの製造方法]
本発明のポリウレタンフォームの製造方法に特に制限はないが、ポリイソシアネートとポリオール組成物とを混合して得た発泡性ポリウレタン組成物を発泡、反応させるとよい。具体的には、ポリイソシアネートとポリオール組成物とをスプレー装置などを用いて衝突混合させ、吹付施工することが好ましい。
本発明においては、ポリイソシアネートとポリオール組成物とを混合した後、金型、枠材等の容器へ注入して硬化させることによりポリウレタンフォームを得てもよい。
[ポリウレタンフォームの用途]
本発明のポリウレタンフォームの用途は、特に限定されないが、難燃性及び断熱性に優れているため、建築物の壁、天井、屋根、床などに好適に用いることができる。また、建築物の構造材の間に生じる目地や穴を含め、建築物に生じる任意の開口部を埋める部材として好適に用いることもできる。
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[使用材料]
<ポリイソシアネート>
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200)
<ポリオール化合物>
p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業株式会社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
<触媒>
・グアニジン誘導体
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(エボニック ジャパン株式会社製、製品名:POLYCAT 201、水及びエチレングリコールとの混合物(1,1,3,3-テトラメチルグアニジン60質量%、エチレングリコール32質量%、水8質量%))
・イミダゾール誘導体(1)
1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-DM70、エチレングリコールとの混合物(1,2-ジメチルイミダゾールが65~75質量%、エチレングリコールが25~35質量%))
・イミダゾール誘導体(2)
1-イソブチル-2-メチルイミダゾール(エボニック ジャパン株式会社製、製品名:NCIM、濃度約98質量%)
・カルボン酸カリウム塩(1)
2-エチルヘキサン酸カリウム(エボニック ジャパン株式会社製、製品名:DABCO K-15、2-エチルヘキサン酸カリウム70~80質量%、ジエチレングリコール20~30質量%)
・カルボン酸カリウム塩(2)
酢酸カリウム(エボニック ジャパン株式会社製、製品名:POLYCAT 46、酢酸カリウム38質量%、エチレングリコールが62質量%)
・比較用触媒
N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-TT)
<発泡剤>
・ハイドロフルオロオレフィン(ハネウェルジャパン株式会社製、製品名:Solstice LBA、HFO-1233zd)
・水
<整泡剤>
シリコーン系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH-193)
<液状難燃剤>
トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製、製品名:TMCPP)
<フィラー>
ウォラストナイト(SiO・CaO)(キンセイマテック社製、製品名:SH-1250)
[実施例1~9、比較例1~5]
表1記載の配合にしたがって各成分混合して、ポリオール組成物を作製して、以下に示す発泡性、及び貯蔵安定性を評価した。なお、各評価で使用したポリオール組成物は、ポリオールが25gとなるように調整した。
[発泡性評価]
(クリームタイム(CT)、ゲルタイム(GT))
各実施例、比較例で作製したポリオール組成物(組成物中のポリオール量25g)をTMCPP150gで希釈して、更にイソシアネートを75g加えて混合し、混合完了から発泡により液面が上昇を始めるまでの時間をクリームタイムとして測定した。また、混合完了から、反応中の発泡体に金属棒を刺した際、金属棒に対して樹脂が糸を引く、又は、金属棒を刺した穴が塞がるまでの時間をゲルタイムとして測定した。
上記の測定の結果、クリームタイム(CT)が1~10秒でかつゲルタイム(GT)が10~70秒の場合を「〇」と評価し、さらに、クリームタイム(CT)が3~7秒でかつゲルタイム(GT)が20~50秒の場合を「◎」と評価した。一方、上記基準を満たさない場合を「×」と評価した。
[貯蔵安定性評価]
各実施例及び比較例で作製したポリオール組成物を恒温槽にて60℃で7日間保管した後に発泡性評価と同様にクリームタイム(CT)及びゲルタイム(GT)を測定して、同様の評価基準にて評価した。


※触媒の各配合量は、製品としての配合量である。
実施例1~9のポリウレタン組成物は、いずれも発泡性及び貯蔵安定性が優れたものとなった。これに対して、比較例1~3のポリオール組成物については発泡性、貯蔵安定性共に低かった。グアニジン誘導体、イミダゾール誘導体、及びアルカリ金属塩のうち、1種類でも含有されていなければ発泡性、貯蔵安定性共に損なわれた。
また、比較例4及び5のポリオール組成物については貯蔵安定性が良好ではなかった。アミン触媒の存在下では、発泡性は良好となるものの、保管中にアミン触媒によりハイドロフルオロオレフィンの分解が促進すると推定され、貯蔵安定性が損なわれた。

Claims (10)

  1. ポリオール化合物、発泡剤及び触媒を含み、前記触媒がグアニジン誘導体、イミダゾール誘導体及びアルカリ金属塩を含み、
    前記ポリオール化合物100質量部に対して、前記グアニジン誘導体を0.5~30質量部、前記イミダゾール誘導体を0.5~30質量部、前記アルカリ金属塩を5~60質量部それぞれ含有する、建築物の断熱材として用いられるポリウレタンフォームを形成するための吹付用ポリオール組成物(但し、イソシアネート反応基を有する第3級アミン触媒を含有するものを除く。)
  2. 前記グアニジン誘導体がテトラアルキルグアニジンであり、前記イミダゾール誘導体が二置換のイミダゾール誘導体であり、前記アルカリ金属塩がカルボン酸アルカリ金属塩である、請求項1に記載の吹付用ポリオール組成物。
  3. 前記アルカリ金属塩がカリウム塩である、請求項1又は2に記載の吹付用ポリオール組成物。
  4. 前記グアニジン誘導体が1,1,3,3-テトラメチルグアニジンであり、前記イミダゾール誘導体が炭素数1~5のアルキル基で置換されたイミダゾール誘導体であり、前記アルカリ金属塩が炭素数6~10のカルボン酸塩である、請求項1~3のいずれかに記載の吹付用ポリオール組成物。
  5. 前記イミダゾール誘導体が1,2-ジメチルイミダゾールを含み、前記アルカリ金属塩が、2-エチルヘキサン酸カリウムを含む、請求項1~4のいずれかに記載の吹付用ポリオール組成物。
  6. 前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、請求項1~5のいずれかに記載の吹付用ポリオール組成物。
  7. フィラーを含有し、前記フィラーの含有量が、ポリオール化合物100質量部に対して、10質量部以上である、請求項1~6のいずれかに記載の吹付用ポリオール組成物。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の吹付用ポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含む吹付用発泡性ポリウレタン組成物。
  9. イソシアネートインデックスが250以上である、請求項8に記載の吹付用発泡性ポリウレタン組成物。
  10. 請求項8又は9に記載の吹付用発泡性ポリウレタン組成物を、反応かつ発泡させてなる、建築物の断熱材として用いられる吹付用ポリウレタンフォーム。
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