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JP7421020B1 - 鋳物製造用構造体 - Google Patents

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JP7421020B1
JP7421020B1 JP2023575987A JP2023575987A JP7421020B1 JP 7421020 B1 JP7421020 B1 JP 7421020B1 JP 2023575987 A JP2023575987 A JP 2023575987A JP 2023575987 A JP2023575987 A JP 2023575987A JP 7421020 B1 JP7421020 B1 JP 7421020B1
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春樹 池永
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Abstract

筒状の鋳物製造用構造体(1)であって、胴部(11)と、該胴部(11)に連設され、内径が該胴部(11)の外径以上であるメス型嵌合部(12)とを有する筒状の本体部(20)を具備しており、前記胴部(11)の内面を被覆する胴部内面被覆層(31)、及び前記メス型嵌合部(12)の外面を被覆する外面被覆層(32)を有する、鋳物製造用構造体(1)。前記外面被覆層(32)は前記メス型嵌合部(12)の外面の全域を被覆していることが好ましい。

Description

本発明は、鋳物製造用構造体に関する。
鋳物の製造では、一般に、鋳物砂で内部にキャビティを有する鋳型を形成するとともに、該キャビティに溶湯を供給する受け口、湯口、湯道及び堰を該キャビティに通じるように形成し、さらに、外部に通じるガス抜き、押湯、揚がりを形成している。キャビティ内には、中子が配されることもある。本出願人は、先に、湯道や揚がりとして使用することができる鋳物製造用構造体を提案している(特許文献1及び2)。特許文献1及び2に記載の鋳物製造用構造体は、筒状の本体部及び該本体部の内面に形成された被覆層を有している。
また特許文献3には、紙管の内面又は外面に耐火物を固着させた湯道が記載されている。
特開2021-70052号公報 特開2012-24841号公報 実公昭56-34834号公報
本発明は、筒状の鋳物製造用構造体に関する。
一実施形態では、胴部と、該胴部に連設され、内径が該胴部の外径以上であるメス型嵌合部とを有する筒状の本体部を具備していることが好ましい。
一実施形態では、前記胴部の内面を被覆する胴部内面被覆層、及び前記メス型嵌合部の外面を被覆する外面被覆層を有することが好ましい。
一実施形態では、胴部の一端部に、メス型嵌合部に内嵌合されるオス型嵌合部を有する筒状の本体部を具備していることが好ましい。
一実施形態では、前記オス型嵌合部の外径は、前記メス型嵌合部の内径以下であることが好ましい。
一実施形態では、前記胴部の内面を被覆する胴部内面被覆層、及び前記オス型嵌合部の外面を被覆する外面被覆層を有することが好ましい。
また本発明は、筒状の鋳物製造用構造体の製造方法に関する。
一実施態様では、前記鋳物製造用構造体は、胴部と、該胴部に連設され、内径が該胴部の外径以上であるメス型嵌合部とを有する筒状の本体部を具備していることが好ましい。
一実施態様では、前記胴部の内面に塗工液を塗工し、該胴部の内面を被覆する胴部内面被覆層を形成する胴部塗工工程を有することが好ましい。
一実施態様では、前記メス型嵌合部の外面に、該メス型嵌合部の全周に亘って塗工液を塗工し、該メス型嵌合部の外面を被覆する外面被覆層を形成するメス型嵌合部塗工工程を有することが好ましい。
図1は、本発明に係る鋳物製造用構造体の好ましい一実施形態を模式的に示す斜視図である。 図2(a)は、図1のIIa-IIa線断面図、図2(b)は、図1のIIb-IIb線断面図、図2(c)は、図1のIIc-IIc線断面図である。 図3は、図1に示す鋳物製造用構造体どうしを連結した状態を模式的に示す斜視図である。 図4は、図3の要部断面拡大図である。 図5は、図1に示す鋳物製造用構造体を内部に納めた鋳型の模式断面図である。 図6(a)は、本発明に係る鋳物製造用構造体の別の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図であり、図2(a)相当図である。図6(b)は、図6(a)に示す鋳物製造用構造体どうしを連結した状態を模式的に示す要部断面拡大図であり、図4相当図である。 図7(a)は、本発明に係る鋳物製造用構造体の更に別の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図であり、図2(a)相当図である。図7(b)は、図7(a)に示す鋳物製造用構造体どうしを連結した状態を模式的に示す要部断面拡大図であり、図4相当図である。 図8(a)は、本発明に係る鋳物製造用構造体の更に別の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図であり、図2(a)相当図である。図8(b)は、図8(a)に示す鋳物製造用構造体どうしを連結した状態を模式的に示す要部断面拡大図であり、図4相当図である。 図9(a)は、本発明に係る鋳物製造用構造体の更に別の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図であり、図2(a)相当図である。図9(b)は、図9(a)に示す鋳物製造用構造体どうしを連結した状態を模式的に示す要部断面拡大図であり、図4相当図である。 図10(a)は、本発明に係る鋳物製造用構造体の更に別の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図であり、図2(a)相当図である。図10(b)は、図9(a)に示す鋳物製造用構造体どうしを連結した状態を模式的に示す要部断面拡大図であり、図4相当図である。 図11は、本発明に係る鋳物製造用構造体の更に別の好ましい一実施形態を模式的に示す要部断面拡大図である。 図12は、本発明に係る鋳物製造用構造体の更に別の好ましい一実施形態を模式的に示す斜視図であり、図1相当図である。 図13(a)は、図12のXIIIa-XIIIa線断面図、図13(b)は、図12のXIIIb-XIIIb線断面図である。 図14は、図12に示す鋳物製造用構造体どうしを連結した状態を模式的に示す斜視図であり、図3相当図である。 図15は、図14の要部断面拡大図である。 図16(a)は、本発明に係る鋳物製造用構造体の更に別の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図であり、図13(a)相当図である。図16(b)は、図16(a)に示す鋳物製造用構造体どうしを連結した状態を模式的に示す要部断面拡大図であり、図15相当図である。 図17(a)~(d)は、本発明に係る鋳物製造用構造体の変形例を模式的に示す斜視図であり、図2(a)相当図である。 図18(a)~(e)は、本発明に係る鋳物製造用構造体の製造方法の好ましい一実施態様を説明する模式断面図である。 図19(a)~(e)は、本発明に係る鋳物製造用構造体の製造方法の好ましい一実施態様の変形例を説明する模式断面図である。
発明の詳細な説明
特許文献1の鋳物製造用構造体は、筒状の胴部と該胴部に連設された嵌合部とを備える。同文献の鋳物製造用構造体は、隣り合う一方の鋳物製造用構造体の胴部における嵌合部から遠い側の一端部を、他方の鋳物製造用構造体の嵌合部に挿入して嵌合させることによって、複数の鋳物製造用構造体を連結可能である。同文献の鋳物製造用構造体は、胴部の一端部の内径を他端部の内径よりも1.0mm以上小さくすることによって、隣り合う鋳物製造用構造体どうしが嵌合している部分において、注湯時における被覆層の剥離を抑制することができるようにしたものである。しかしながら、注湯時に、特に鋳物製造用構造体の内部の溶湯の圧力が高い場合において、溶湯が鋳物製造用構造体の外側に滲出してしまう可能性については、改善の余地がある。この溶湯の滲出は、隣り合う鋳物製造用構造体どうしが嵌合している部分において特に起こりやすい。特許文献2の鋳物製造用構造体についても同様に改善の余地がある。
特許文献3には、複数の筒状の鋳物製造用構造体を嵌合させたものを湯道として用いることについて何ら記載されておらず、隣り合う鋳物製造用構造体どうしが嵌合している部分において溶湯が滲出することを防ぐことについて、何ら検討していない。
本発明は、注湯時の溶湯の滲出を防ぐことができる鋳物製造用構造体に関する。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の鋳物製造用構造体の好ましい第1実施形態に係る鋳物製造用構造体(以下、単に「構造体」ともいう。)1を示す。
構造体1は、典型的には筒状である。ここでいう「筒状」には、図1のように通直なもの、図17(a)に示すように軸方向の一部に屈曲部17を有するもの、図17(b)に示すように軸方向の全体が円弧状に湾曲しているもの、図17(c)及び(d)に示すように筒状の第1部18から筒状の第2部19が分岐したもの等が含まれる。また「筒状」には、断面円形の筒状、即ち円筒状の他、断面多角形状の筒状、即ち角筒状も含まれる。円筒状の構造体の軸方向に直交する断面形状は、典型的には円形であるが楕円形でもよく、角筒状の構造体の軸方向に直交する断面形状は、典型的には正方形であるが、三角形、長方形若しくは五角形以上の多角形でもよく、多角形の角部を丸めた形状でもよい。
構造体1は、筒状の本体部20を有する。本体部20は、典型的には有機繊維、無機繊維、無機粒子及びバインダーを含有している。本体部20が含有する各成分については後述する。本体部20は、構造体1の主体をなす部分である。
本体部20は、胴部11と、該胴部11に連設され、内径が該胴部11の外径以上であるメス型嵌合部12とを有することが好ましい。メス型嵌合部12は、胴部11の軸方向の一端1aに形成されていてもよい。この一例を図2に示す。図2に示す構造体1の一例では、本体部20は、その内径が、軸方向Zの一端1a側の方が他端1b側よりも大きくなっていることが好ましい。
またメス型嵌合部12は、胴部11から分岐して形成されていてもよい。この一例を図17(d)に示す。図17(d)に示す構造体1の一例では、構造体1におけるメス型嵌合部12以外の端部1c,1dの内径が、メス型嵌合部12の内径以下であることが好ましい。なお、図17(d)に示す構造体1の一例では、構造体1の端部1cの内径と、該構造体1の端部1dの内径とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、構造体1の端部1c及び端部1dのいずれか一方の内径のみが、メス型嵌合部12の内径以下であっていてもよい。
メス型嵌合部12は、胴部11よりも、内径及び外径の両方が大きいことが好ましい。図2に示す構造体1の一例では、胴部11における軸方向Zの一端1a側の端部には、胴部11の径方向の外方に張り出した段部15が形成されており、該段部15を介して胴部11にメス型嵌合部12が連設されている。
構造体1は、同一又は同種の構造体を複数連結可能となっていることが好ましい。
図1に示す構造体1の一例では、本体部20における軸方向Zの両端は開口している。
メス型嵌合部12以外の構造体1の端部の外径D1は、メス型嵌合部12の内径D2以下であることが好ましい。
図1及び2に示す構造体1の一例では、メス型嵌合部12以外の構造体1の端部は、胴部11における軸方向Zの一端1aとは反対側の他端1b側の端部である。
図17(d)に示す構造体1の一例では、メス型嵌合部12以外の構造体1の端部は、第1部18の端部1c,1dである。第1部18の端部1cの外径D11と、第1部18の端部1dの外径D12とが異なる場合、前記外径D1は、該外径D11及び該外径D12のうち、いずれか小さい方とする。第1部18の端部1cの外径D11及び第1部18の端部1dの外径D12のいずれか一方のみが、メス型嵌合部12の内径D2以下であってもよいが、該外径D11及び該外径D12の両方が該内径D2以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、内径及び外径は、特に説明しない限り、本体部及び該本体部の表面を被覆する被覆層の両方を含めた構造体1全体における内径及び外径を意味する。
構造体1は、メス型嵌合部12以外の構造体1の端部を、他の構造体1のメス型嵌合部12に挿入して嵌合させることによって、構造体1どうしを連結することができるようにされていることが好ましい。複数の構造体1を所望の個数連結することにより、所望の長さの長尺の筒状体10を形成可能となる(図3参照)。
メス型嵌合部12以外の構造体1の端部は、内径が胴部11の外径以上であるメス型嵌合部に内嵌合されるオス型嵌合部13となっていることが好ましい。図17(d)に示す構造体1の一例では、第1部18の端部1cの外径D11及び第1部18の端部1dのいずれか一方のみがオス型嵌合部13となっていてもよいが、該端部1c及び該端部1dの両方がオス型嵌合部13となっていることがより好ましい。
オス型嵌合部13とは、メス型嵌合部12以外の構造体1の端部を、同一又は同種の構造体1のメス型嵌合部12に内嵌合させたときに、該メス型嵌合部12内に挿入される部分を意味する。詳細には、オス型嵌合部13の長さL1は、メス型嵌合部12の深さL2と同一である。ここで、「同一」とは、オス型嵌合部13の長さL1及びメス型嵌合部12の深さL2が同じである場合のみならず、該長さL1及び該長さL2が概ね一致しているとみなせる程度に近似している場合を含む。具体的には、メス型嵌合部12の深さL2に対するオス型嵌合部13の長さL1の割合が、好ましくは80%以上120%以下、より好ましくは90%以上110%以下、さらに好ましくは95%以上105%以下である場合、前記深さL2と前記長さL1とが同一であるとみなす。前記長さL1及び前記深さL2の例を、図2(a)及び図17(d)に示す。
オス型嵌合部13の長さL1は、図2に示す構造体1の一例では、胴部11の軸方向Zに沿うオス型嵌合部13の長さであり、図17(d)に示す構造体1の一例では、第1部18の軸方向Zxに沿うオス型嵌合部13の長さである。
図2に示す構造体1の一例では、胴部11の軸方向Zの長さL3はメス型嵌合部12の深さL2より長いことが好ましい。図2に示す構造体1の一例において、胴部11の軸方向Zの長さL3がメス型嵌合部12の深さL2よりも短い場合、又は胴部11の該長さL3及びメス型嵌合部12の深さL2が同じである場合、胴部11は実質的に全域がオス型嵌合部13となる。
構造体1は、胴部11の内面を被覆する胴部内面被覆層31、及びメス型嵌合部12の外面を被覆する外面被覆層(以下、「メス型嵌合部の外面被覆層」ともいう。)32を有することが好ましい。この一例を図2(a)に示す。
胴部内面被覆層31及び外面被覆層32は、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる耐火性無機粒子、バインダー並びに粘土鉱物を含有していることが好ましい。両被覆層31,32が含有する各成分については後述する。
胴部内面被覆層31は、構造体1の周方向の全周に亘って連続していることが好ましい。この一例を図2(b)に示す。
また胴部内面被覆層31は、軸方向Zにおいて胴部11の全域に亘って連続していることが好ましい。つまり、胴部内面被覆層31は胴部11の内面の全域を被覆していることが好ましい。この一例を図2(a)に示す。
高温の溶融金属が該構造体1内に流れ込むことに起因し、本体部20に含まれる有機繊維やバインダー等が熱分解する際や、鋳物砂からガスが発生する。構造体1は、胴部内面被覆層31を有することで、ガスが構造体1内に侵入することを防ぐことができる。これにより、構造体1内を流れる溶湯内にガスが混入しにくくなっている。
この効果が一層顕著に奏されるようにする観点からは、胴部内面被覆層31は、構造体1の周方向の全周に亘って連続していることが好ましく、胴部11の内面の全域を被覆していることがより好ましい。
メス型嵌合部12の外面被覆層32は、構造体1の周方向の全周に亘って連続していることが好ましい。この一例を図2(c)に示す。
また外面被覆層32は、軸方向Zにおいてメス型嵌合部12の外面の全域に亘って連続していることが好ましい。つまり、外面被覆層32は、メス型嵌合部12の外面の全域を被覆していることが好ましい。この一例を図2(a)に示す。
構造体1は、例えば、以下のようにして鋳物の製造に用いることができる。
先ず、構造体1どうしを連結して、筒状体10を形成する。そして、図5に示すように、筒状体10を、鋳物砂内の所定位置に埋設し、鋳型40を形成する。図5に示す例では、鋳型40は砂型である。構造体は、典型的には、一部の開口部を残して埋設される。具体的には、連結されて筒状体10を構成する複数の構造体1のうち、最も上流に位置する構造体1の該上流側の開口部を鋳物砂外に露出させた状態で埋設されることが好ましい。
筒状体10の埋設方法には、特に制限はなく、例えば、筒状体10を所定位置に配した後、鋳物砂を配してもよいし、鋳物砂を所定の状態に配した後、筒状体10を配置してもよい。
砂型40の鋳物砂には、従来からこの種の鋳物の製造に用いられている通常のものを制限なく用いることができる。
そして、鋳型40に溶融金属を注湯し鋳込みを行う。具体的には、筒状体10の一端に設けられた注湯口41から溶融金属を注ぎ入れ、キャビティ42内に溶融金属を供給し、鋳造を行う。このとき、構造体1は、熱間強度が維持され、熱分解に伴う熱収縮が小さいため、各構造体1のひび割れや、構造体1自体の破損が抑制され、溶融金属の構造体1への差込みや鋳物砂などの付着も生じにくい。
鋳造後、所定の温度まで冷却し、鋳枠を解体して鋳物砂を取り除き、さらにブラスト処理によって鋳物製造用構造体を取り除いて鋳物を露呈させる。その後必要に応じて鋳物にトリミング処理等の後処理を施して鋳物の製造を完了する。
構造体1は、例えば鋳造に用いられる湯道や揚がり湯道として好適に用いられるものである。
また構造体1は、鋳鋼の製造における湯道又は揚がり湯道として特に好適に用いられるものである。鋳鉄と比べ鋳鋼は融点が高いので、注湯する際の溶融金属の温度が高く、また動粘度が低くなりやすいためである。
構造体1は、メス型嵌合部12の外面被覆層32を有していることにより、注湯時の溶湯の滲出を防ぐことができるようになっている。以下、この点について詳述する。
構造体1どうしを連結させる場合、一方の構造体1におけるメス型嵌合部12以外の端部の端面11e、即ち一方の構造体1のオス型嵌合部13の端面11eと、他方の構造体1のメス型嵌合部12の内側に配されている端面12eとを隙間なく密着させることは困難である。そのため、一方の構造体1の前記端面11eと、他方の構造体1の前記端面12eとの間に隙間が生じてしまうことがある(図4参照)。図示例では、メス型嵌合部12の前記端面12eは、段部15の上面12eである。
注湯時に、前記隙間内に侵入した溶湯が、メス型嵌合部12の内周面12aと段部15の上面12eとからなる角部(以下、「メス型嵌合部の角部」ともいう。)に接触することがある。これによって、該角部が損傷し、メス型嵌合部12を貫通する微細な細孔が生じる場合がある。このような細孔を通って、構造体1内を流れる溶湯が構造体1の外部へと滲出する恐れがある。
しかしながら、メス型嵌合部12の外面を、外面被覆層32が被覆することによって、溶湯がメス型嵌合部12を貫通して構造体1の外部へと滲出することを防ぐことができる。外面被覆層32は、上述のようにメス型嵌合部12の外面を被覆するものであるので、メス型嵌合部12にオス型嵌合部13を嵌合させたときに剥離してしまう恐れがない。そのため、溶湯の滲出を防ぐという効果が確実に奏されるようにすることができる。溶湯の滲出を一層効果的に防ぐ観点からは、外面被覆層32に加えて、メス型嵌合部12の内面を被覆するメス型嵌合部内面被覆層33を有することが好ましい。メス型嵌合部内面被覆層33については、後述する。
溶湯が構造体1の外部に滲出した場合、溶湯が鋳物砂と接触してしまい溶融金属に鋳物砂が混じってしまう焼着が発生してしまう。一般に、鋳物を製造する際には、砂型のキャビティ内の溶融金属が固化して形成された製品部分と、湯道管の内部の溶融金属が固化して形成された製品以外の部分とが得られる。溶融金属に鋳物砂が混じることを抑制することにより、製品以外の部分を再利用しやすくすることができる。また、製品以外の部分を再溶解して得られた溶融金属から鋳物砂を除去するための工程を省略することができるのでコストを抑制することができ、製品以外の部分を再溶解して得られる溶融金属の品質を安定化することができる。
注湯時の溶湯の構造体1からの滲出を防ぐ効果は、構造体1における胴部11の内径D3が大きい場合により顕著に奏される。一般に、注湯時の溶湯の滲出は、構造体1の溶湯の圧力が高い場合に発生しやすい。鋳造に用いる鋳型40のキャビティ42が大きい場合、注湯する溶融金属の量が多くなる。多量の溶融金属を注湯するときに注湯途中で溶融金属の温度が下がらないようにするために、鋳型40内に埋設される筒状体10を構成する構造体1として、注湯する溶融金属の流量を大きくすることができる、胴部11の内径D3が大きいものが好んで使用される。また、キャビティ42が大きい場合、鋳型40もそれに伴い大きくなるため、筒状体10の鉛直方向の高さも高くなりやすい。そのため、構造体1における胴部11の内径D3が大きい場合、溶湯の圧力が高くなる条件で使用されることが多い。具体的には、胴部11における軸方向Zの一端1a側とは反対側の他端部、即ちオス型嵌合部13の内径D3が45mm以上である場合、溶湯の圧力が高い条件で使用されることが想定される。
本発明の構造体1では、構造体1における胴部11の内径D3が大きく、胴部11内の溶湯の圧力が高い場合であっても、注湯時の溶湯の滲出を防ぐことができる。注湯時の溶湯の滲出を防ぐことができるという効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、オス型嵌合部13の内径D3は、好ましくは65mm以上、より好ましくは90mm以上である。
また、ハンドリング性の観点から、オス型嵌合部13の内径D3は、好ましくは700mm以下、より好ましくは550mm以下、さらに好ましくは350mmである。
メス型嵌合部12の外面被覆層32は、構造体1の周方向において不連続であってもよいが、溶湯の滲出を効果的に防ぐ観点からは、構造体1の周方向の全周に亘って連続していることが好ましい。
またメス型嵌合部12の外面被覆層32は、軸方向Zにおいて、メス型嵌合部12の外面の一部のみを被覆していてもよいが、溶湯の滲出を効果的に防ぐ観点からは、軸方向Zにおいてメス型嵌合部12の外面の全域を被覆していることが好ましい。
外面被覆層32は、構造体1の周方向の全周に亘って連続しており、且つ軸方向Zにおいてメス型嵌合部12の外面の全域を被覆していることがより好ましい。換言すれば、外面被覆層32は、メス型嵌合部12の外面の全域を被覆していることがより好ましい。
構造体1では、上述のように、メス型嵌合部12以外の構造体1の端部の外径D1は、メス型嵌合部12の内径D2以下であることが好ましい。これにより、メス型嵌合部12以外の構造体1の端部を、他の構造体1のメス型嵌合部12に挿入しやすくし、両者を嵌合させやすくすることができる。
メス型嵌合部12以外の構造体1の端部13、即ち構造体1のオス型嵌合部13を、他の構造体1のメス型嵌合部12に一層挿入しやすくする観点から、前記内径D2に対する前記外径D1の比D1/D2は、好ましくは1以下、より好ましくは0.9999以下、更に好ましくは0.9995以下である。
また、構造体1のオス型嵌合部13と、他の構造体1のメス型嵌合部12とを嵌合させたときに、該オス型嵌合部13の外面と該メス型嵌合部12の内面との間の隙間が大きくなり過ぎることを防ぎ、両者の嵌合状態を一層安定化させる観点から、前記比D1/D2は、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.95以上、更に好ましくは0.99以上である。
これらの両立の観点から、前記比D2/D1は、好ましくは0.9以上1未満、より好ましくは0.95以上0.9999以下、更に好ましくは0.99以上0.9995以下である。
構造体1は、該構造体1の外径のうち、メス型嵌合部12の外径D4が最も大きいことが好ましい。こうすることにより、複数の構造体1を連結した状態で注湯する際に、溶融金属の流れをスムーズにすることが可能となる。
また構造体1は、該構造体1の内径のうち、メス型嵌合部12の内径D2が最も大きいことが好ましい。こうすることにより、複数の構造体1を連結した状態で注湯する際に、溶融金属の流れをスムーズにすることが可能となる。
次に、本発明の好ましい第2~9実施形態の構造体1について説明する。第2~9実施形態については、第1実施形態と異なる点について説明し、特に説明しない点については第1実施形態についての説明が適宜適用される。
図6には、第2実施形態の構造体1が示されている。
構造体1は、メス型嵌合部12の内面を被覆するメス型嵌合部内面被覆層33を有していることが好ましい。メス型嵌合部12の内面には、メス型嵌合部12の内周面12aと、段部15の上面12eとが含まれる。
メス型嵌合部内面被覆層33は、前記内周面12a及び前記上面12eの両方を被覆していることが好ましい。換言すれば、メス型嵌合部内面被覆層33は、メス型嵌合部12の内面の全域を被覆している。この一例を図6に示す。
構造体1は、メス型嵌合部内面被覆層33を有することで、注湯時の溶湯の滲出を一層効果的に防ぐことができるようになっている。以下、この点について詳述する。
構造体1どうしを連結させる場合、上述のように、一方の構造体1の前記端面11eと、他方の構造体1の内側に配されている前記端面12eとの間に隙間が生じてしまうことがある。メス型嵌合部内面被覆層33を有することで、該隙間を小さくし、該隙間ができにくくすることができる。
また、仮に前記隙間が生じ、該隙間に溶湯が侵入したとしても、メス型嵌合部12を保護することができる。メス型嵌合部12の内面、特にメス型嵌合部の角部における内面がメス型嵌合部内面被覆層33によって被覆されているためである。この一例を図6に示す。
前記隙間に侵入した溶湯は、一方の構造体1のオス型嵌合部13の外周面と、他方の構造体1のメス型嵌合部12の内周面12aとの間まで侵入する恐れがある。しかしながら、メス型嵌合部12の内周面12aもメス型嵌合部内面被覆層33によって被覆されることで、この侵入を防ぐことができる。一方の構造体1のオス型嵌合部13の外周面と、他方の構造体1のメス型嵌合部12の内周面12aとの間にメス型嵌合部内面被覆層33が配されているためである。
仮に、両者の間に溶湯が侵入したとしても、メス型嵌合部12を保護することができる。メス型嵌合部12の内周面12aはメス型嵌合部内面被覆層33によって被覆されているためである。この一例を図6に示す。
構造体1は、メス型嵌合部内面被覆層33のみならず、メス型嵌合部12の外面被覆層32も有していることが好ましい。つまり、メス型嵌合部12の内面及び外面の両方が被覆されていることが好ましい。このことも、注湯時に溶湯が構造体1の外部へ滲出することを一層効果的に防ぐことに寄与している。
メス型嵌合部12を保護するという効果が一層顕著に奏されるようにする観点からは、メス型嵌合部内面被覆層33は、構造体1の周方向の全周に亘って連続していることが好ましく、メス型嵌合部12の内面の全域を被覆していることが好ましい。
メス型嵌合部内面被覆層33と、胴部内面被覆層31とが連続していることが好ましい。これにより、メス型嵌合部12及び胴部11の内面を隙間なく保護することができる。
メス型嵌合部内面被覆層33と、胴部内面被覆層31とは、不連続であってもよい。例えば、メス型嵌合部内面被覆層33と、胴部内面被覆層31とは、別体であってもよい。
本体部20の内面の全域が、メス型嵌合部内面被覆層33及び胴部内面被覆層31によって被覆されていることがより好ましい。これにより、本体部20の内面の全域を保護することができるので、注湯時に溶湯が滲出することを一層効果的に防ぐことができる。
図7には、第3実施形態の構造体1が示されている。
構造体1は、メス型嵌合部12における構造体1の最も外側の端面を被覆する端面被覆部(以下、「メス型嵌合部の端面被覆部」ともいう。)34を有していることが好ましい。
端面被覆部34は、メス型嵌合部12の端面の一部のみを被覆していてもよいし、該端面の全域を被覆していてもよい。
メス型嵌合部12の端面被覆部34を有することで、注湯時の溶湯の構造体1からの滲出を一層効果的に防ぐことができるようになっている。以下、この点について詳述する。
構造体1どうしを連結させる場合、上述のように、溶湯が、一方の構造体1の前記端面11eと、他方の構造体1の前記端面12eとの間に生じた隙間に侵入する場合がある。その後、一方の構造体1のメス型嵌合部12の内面と、他方の構造体1のオス型嵌合部13の外面との間に侵入する場合がある。そして、一方の構造体1の一端1a側、即ち、一方の構造体1のメス型嵌合部12の端面側から、構造体1外へ滲出する恐れがある。しかしながら、メス型嵌合部12の端面を端面被覆部34が被覆することで、溶湯が、構造体1のメス型嵌合部12の端面側から、構造体1外へ滲出することを防ぐことができる。
この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、端面被覆部34は、構造体1の周方向の全周に亘って連続していることが好ましく、メス型嵌合部12の端面の全域を被覆していることがより好ましい。
メス型嵌合部12の外面被覆層32を有している構造体1において、該外面被覆層32と、メス型嵌合部12の端面被覆部34とは、不連続であってもよい。しかし、注湯時の溶湯の滲出を一層効果的に防ぐ観点から、外面被覆層32と端面被覆部34とは連続していることが好ましく、一体として成形されていることが好ましい。
図8には、第4実施形態の構造体1が示されている。
構造体1は、胴部11の外面を被覆する胴部外面被覆層35を有していることが好ましい。
また構造体1は、胴部内面被覆層31を有していることが好ましい。
構造体1は、胴部11の内面及び外面の両方が被覆されていることがより好ましい。この一例を図8に示す。
構造体1が胴部内面被覆層31及び胴部外面被覆層35を有することで、注湯時の溶湯の滲出、特に溶湯が胴部11を貫通して滲出することを効果的に防ぐことができるようになっている。例えば、構造体1内の溶湯の圧力が高い場合であっても、溶湯の滲出を防ぐことができる。
この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、胴部外面被覆層35は、構造体1の周方向の全周に亘って連続していることが好ましい。
メス型嵌合部内面被覆層33を有する構造体1は、メス型嵌合部12及び胴部11の内面を隙間なく保護する観点から、メス型嵌合部内面被覆層33と胴部内面被覆層31とは連続していることが好ましく、両者は一体として成形されていることが好ましい。
外面被覆層32は、メス型嵌合部12の端面を通って、胴部11の内面まで延在していることが好ましい。換言すれば、メス型嵌合部12の外面被覆層32、メス型嵌合部12の端面被覆部34、メス型嵌合部内面被覆層33及び胴部内面被覆層31が連続していることが好ましい。
また、胴部外面被覆層35は、メス型嵌合部12の外面及び端面を通って、胴部11の内面まで延在していることも好ましい。換言すれば、第4実施形態の構造体1は、胴部外面被覆層35、メス型嵌合部12の外面被覆層32、メス型嵌合部12の端面被覆部34、メス型嵌合部内面被覆層33及び胴部内面被覆層31を有しており、これらが連続していることが好ましい。
胴部内面被覆層31とメス型嵌合部内面被覆層33とは、別体として形成されていてもよい。この場合、メス型嵌合部内面被覆層33は、胴部11の内面まで延在しており、その一部が胴部内面被覆層31と重なっていることが好ましい。メス型嵌合部内面被覆層33の一部が胴部内面被覆層31と重なっていることにより、別体として形成された胴部内面被覆層31とメス型嵌合部内面被覆層33との界面からの溶湯の滲出を抑制することが可能となる。この一例を図9に示す。
メス型嵌合部内面被覆層33の一部が胴部内面被覆層31と重なっている場合、構造体1の半径方向において、どちらが内方側に位置していてもよい。しかし、メス型嵌合部内面被覆層33が、胴部内面被覆層31よりも、構造体1の半径方向の内方に位置していることが好ましい。メス型嵌合部内面被覆層33及び胴部内面被覆層31の位置関係を、このような位置関係とすることにより、構造体1内を一端1a側から他端1b側に向かって流れる溶湯が胴部内面被覆層31における一端1a側の端部に衝突することを防ぐことが可能となり、注湯時に、胴部内面被覆層31が、一端1a側の端部を起点として剥離してしまうことを抑制することが可能となる。
メス型嵌合部内面被覆層33の一部が胴部内面被覆層31と重なっている場合、両者が重なっている部分の厚みT1は、メス型嵌合部内面被覆層33における最も厚みが厚い部分の厚み(以下、「メス型嵌合部内面被覆層の最大厚み」ともいう。)T2、及び胴部内面被覆層31における最も厚みが厚い部分の厚み(以下、「胴部内面被覆層の最大厚み」ともいう。)T3のいずれよりも厚いことが好ましい。T1~T3の例は図9に示す。
胴部内面被覆層31及びメス型嵌合部内面被覆層33は厚みが一定であることが好ましい。ここで、厚みが一定とは、製造上不可避な厚みの変化等、意図しない僅かな厚みの変化が生じている場合も含まれる。
前記厚みT1が、前記厚みT2よりも厚いことの利点は、以下のとおりである。複数の構造体1を連結し注湯する際に、構造体1どうしの接続部では溶融金属の流れが乱れやすいところ、前記厚みT1が前記厚みT2よりも厚いことにより、前記接続部において、構造体1内を流れる溶湯の流れが乱れることを防ぐことができ、該溶湯がメス型嵌合部12の角部に衝突することを抑制することができるので、メス型嵌合部12の角部を保護することができる。
前記厚みT1が、前記厚みT3よりも厚いことの利点は、以下のとおりである。一般に、注湯するときには、溶湯を、メス型嵌合部12が配されている構造体1の一端1a側から、他端1b側に向かって流す。前記厚みT1が前記厚みT3よりも厚いことにより、構造体1内を流れる溶湯が、胴部内面被覆層31における一端1a側の端部に衝突することを防ぐことができる。これにより、注湯時に胴部内面被覆層31を保護することができる。
前記厚みT2に対する前記厚みT1の比T1/T2は、メス型嵌合部12の角部を保護する観点から、好ましくは1超、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上である。
また前記比T1/T2は、構造体1どうしを接続するときの摩擦からメス型嵌合部内面被覆層33を保護する観点から、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
これらの両立の観点から、前記比T1/T2は、好ましくは1超15以下、より好ましくは1.5以上10以下、更に好ましくは2以上5以下である。
前記厚みT3に対する前記厚みT1の比T1/T3は、注湯時に胴部内面被覆層31を保護する観点から、好ましくは1超、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上である。
また前記比T1/T3は、注湯時に構造体1どうしの接続部での湯流れをスムーズにする観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
これらの両立の観点から、前記比T1/T2は、好ましくは1超5以下、より好ましくは1.1以上3以下、更に好ましくは1.2以上2以下である。
メス型嵌合部内面被覆層33の最大厚みT2は、胴部内面被覆層31の最大厚みT3よりも薄いことが好ましい。こうすることにより、構造体1のメス型嵌合部12に、他の構造体1の他端1b側の端部を挿入し嵌合させやすくすることができる。
構造体1のメス型嵌合部12に、他の構造体1の他端1b側の端部を一層嵌合させやすくする観点からは、前記厚みT3に対する前記厚みT2の比T2/T3は、好ましくは1未満、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下である。
また前記比T2/T3は、メス型嵌合部12における本体部20を保護する観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上である。
これらの両立の観点から、前記比T2/T3は、好ましくは0.01以上1未満、より好ましくは0.05以上0.8以下、更に好ましくは0.1以上0.5以下である。
胴部内面被覆層31及びメス型嵌合部内面被覆層33の厚みは一定でなくてもよい。図10に、胴部内面被覆層31の厚みが一定でない構造体1の例を示す。
胴部内面被覆層31の厚みが一定でない場合、胴部内面被覆層31は、該胴部内面被覆層31における、胴部11の軸方向Zの一端1a側の端部に配されている部分31aよりも、厚みが厚い部分を有することが好ましい。こうすることにより、構造体1どうしを連結して得られた筒状体10の内部を流れる溶湯が、該溶湯の流れる方向Z1における上流側の構造体1の胴部11内を通過し、該方向Z1における下流側の構造体1の胴部11内に入る際に、該下流側の構造体1における胴部11の一端1a側の端部の内面を被覆する胴部内面被覆層31の表面に、該溶湯の流れが直接に衝突しにくい。したがって、前記下流側の構造体1の胴部11の一端1a側の端部に衝撃が加わることを防ぎ、胴部内面被覆層31を保護することができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、胴部内面被覆層31は、前記部分31aの厚みが最も薄いことが好ましい。
胴部内面被覆層31は、軸方向Zの一端1a側から他端1b側に向かって厚みが漸増していることが好ましい。この一例を図10に示す。
また、胴部内面被覆層31とメス型嵌合部内面被覆層33とが、別体として形成されている場合、メス型嵌合部内面被覆層33と外面被覆層32とは、メス型嵌合部12の連設方向Yの基端側の端縁の位置が一致していてもよいし、一致していなくてもよい。メス型嵌合部内面被覆層33及び外面被覆層32を有する構造体1を簡便に製造することができるようにする観点からは、メス型嵌合部内面被覆層33における前記基端側の端縁33bの位置と、外面被覆層32における前記基端側の端縁32bの位置が一致していることが好ましい。
ここで、メス型嵌合部内面被覆層33の前記端縁33bの位置と、外面被覆層32の前記の端縁32bの位置とが一致しているとは、メス型嵌合部12の連設方向Yにおける両者の位置が完全に一致している場合のみならず、両者の位置が概ね一致しているとみなせる程度に近似している場合を含む。具体的には、メス型嵌合部12の外面の前記連設方向Yの長さL4に対する、メス型嵌合部内面被覆層33の前記端縁33bと、外面被覆層32の前記の端縁32bとの前記連設方向Yの距離L5の割合が、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である場合、メス型嵌合部内面被覆層33の前記端縁33bの位置と、外面被覆層32の前記の端縁32bの位置とが一致しているとみなす。前記長さL4及び前記距離L5の例を、図11に示す。
また、構造体1において、本体部20の表面を被覆する被覆層のうち、メス型嵌合部内面被覆層33の厚みが最も薄いことも好ましい。換言すれば、メス型嵌合部内面被覆層33は、該メス型嵌合部内面被覆層33以外の被覆層よりも厚みが薄いことが好ましい。こうすることにより、メス型嵌合部12以外の構造体1の端部を、メス型嵌合部12に挿入しやすくし、両者を嵌合させやすくすることができる。また、メス型嵌合部12にオス型嵌合部13を嵌合させたときに被膜層が剥離してしまった場合でも剥離量を低減することができ製品品質への影響を少なくすることができる。
図12には、第5実施形態の構造体1Bが示されている。
構造体1Bは、筒状の本体部20を具備していることが好ましい。
本体部20は、胴部11の一端部にオス型嵌合部13を有することが好ましい。
オス型嵌合部13は、メス型嵌合部に内嵌合するようになっていることが好ましい。オス型嵌合部13の外径は、メス型嵌合部の内径以下であることが好ましい。
構造体1Bは、胴部11の他端部に、内径が胴部11の外径以上であるメス型嵌合部12が連設されていることが好ましい。
メス型嵌合部12は、胴部11よりも、内径及び外径の両方が大きいことが好ましい。典型的には、胴部11におけるメス型嵌合部12側の端部には、胴部11の径方向の外方に張り出した段部15が形成されており、該段部15を介して胴部11にメス型嵌合部12が連設されている。
構造体1Bは、同一又は同種の構造体を複数連結可能となっていることが好ましい。
図12に示す例の構造体1Bでは、本体部20における軸方向Zの両端は開口している。
メス型嵌合部12の内径は、胴部11のオス型嵌合部13側の外径以上であることが好ましい。
構造体1Bは、構造体1Bのオス型嵌合部13を、他の構造体1Bのメス型嵌合部12に挿入して嵌合させることによって、構造体1Bどうしを連結することができることが好ましい。複数の構造体1Bを所望の個数連結することにより、所望の長さの長尺の筒状体10を形成可能となる。この一例を図14に示す。
構造体1Bは、胴部内面被覆層31、及びオス型嵌合部13の外面を被覆する外面被覆層(以下、「オス型嵌合部の外面被覆層」ともいう。)36を有することが好ましい。
オス型嵌合部13の外面被覆層36は、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる耐火性無機粒子、バインダー並びに粘土鉱物を含有していることが好ましい。外面被覆層36が含有する各成分については後述する。
胴部内面被覆層31は、構造体1Bの周方向の全周に亘って連続していることが好ましい。この一例を図13(b)に示す。
胴部内面被覆層31は、軸方向Zにおいて胴部11の全域に亘って連続していることが好ましい。つまり、構造体1Bにおいても、胴部内面被覆層31は胴部11の内面の全域を被覆している。この一例を図13(a)に示す。
構造体1Bは、胴部内面被覆層31を有することで、構造体1B内を流れる溶湯内にガスが混入しにくくなっている。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点からは、胴部内面被覆層31は、構造体1Bの周方向の全周に亘って連続していることが好ましく、胴部11の内面の全域を被覆していることがより好ましい。
外面被覆層36は、オス型嵌合部13の外面の全域を被覆していることが好ましい。
第5実施形態の構造体1Bも、第1実施形態の構造体1と同様にして鋳物の製造に用いることができる。
構造体1Bは、オス型嵌合部13の外面被覆層36を有することで、注湯時の溶湯の構造体1Bからの滲出を防ぐことができるようになっている。以下、この点について詳述する。
構造体1Bどうしを連結させる場合、一方の構造体1Bのオス型嵌合部13の端面11eと、他方の構造体1Bのメス型嵌合部12の内側に配されている端面12eとの間に隙間が生じてしまうことがある。前記隙間に侵入した溶湯は、一方の構造体1Bのオス型嵌合部13の外周面11bと、他方の構造体1Bのメス型嵌合部12の内周面12aとの間まで侵入する恐れがある。しかしながら、構造体1Bでは、前記外周面11bと前記内周面12aとの間への溶湯の侵入を防ぐことができる。オス型嵌合部13の外周面11bも外面被覆層36によって被覆されているためである。また、一方の構造体1のオス型嵌合部13の外周面11bと、他方の構造体1Bのメス型嵌合部12の内周面12aとの間に、オス型嵌合部13の外面被覆層36が配されているためである。
また、構造体1Bは、オス型嵌合部13の外面被覆層36及び胴部内面被覆層31を有しており、オス型嵌合部13は、その外面及び内面が被覆されていることが好ましい。これにより、注湯時に、溶湯がオス型嵌合部13を貫通して滲出することを効果的に防ぐことができるようになっている。
オス型嵌合部13の外面被覆層36は、構造体1Bの周方向において不連続であってもよいが、溶湯の滲出を効果的に防ぐ観点からは、構造体1Bの周方向の全周に亘って連続していることが好ましい。
第5実施形態では、上述のように、胴部内面被覆層31が、胴部11の内面の全域を被覆している。これにより、本体部20の内面の全域を保護することができるので、注湯時に溶湯が滲出することを一層効果的に防ぐことができる。
第5実施形態の構造体1Bにおいても、第1実施形態の構造体1と同様に、構造体1における胴部11の内径D3が大きい場合に、注湯時に溶湯が滲出することを一層効果的に防ぐことができるという効果がより顕著に奏される。
第5実施形態に係るオス型嵌合部13の内径D3の好ましい数値範囲は、第1実施形態と同様である。
図16には、第6実施形態の構造体1Bが示されている。
構造体1Bは、オス型嵌合部13の外面被覆層36と、オス型嵌合部13の端面11eを被覆する端面被覆部(以下、「オス型嵌合部の端面被覆部」ともいう。)37を有していることが好ましい。端面被覆部37は、オス型嵌合部13の端面の一部のみを被覆していてもよいし、該端面の全域を被覆していてもよい。
オス型嵌合部13の端面被覆部37を有することで、注湯時の溶湯の滲出を一層効果的に防ぐことができるようになっている。以下、この点について詳述する。
構造体1Bどうしを連結させる場合、上述のように、一方の構造体1Bのオス型嵌合部13の端面11eと、他方の構造体1Bのメス型嵌合部12の内側に配されている端面12eとの間に隙間が生じてしまうことがある。構造体1Bは、オス型嵌合部13の端面被覆部37を有することで、該隙間を小さくし、該隙間ができにくくすることができる。この一例を図16に示す。
構造体1Bは、オス型嵌合部13の外面被覆層36を有する場合、該外面被覆層36と、オス型嵌合部13の端面被覆部37とは、不連続であってもよい。しかし、注湯時の溶湯の滲出を一層効果的に防ぐ観点からは、外面被覆層36と、端面被覆部37とは、連続していることが好ましく、一体として成形されていることが好ましい。
構造体1Bは胴部内面被覆層31を有する場合、オス型嵌合部13の端面被覆部37は、胴部内面被覆層31と連続していることが好ましく、これらは一体として成形されていることが好ましい。
オス型嵌合部13の外面被覆層36は、オス型嵌合部13の端面を通って、胴部11の内面まで延在していることが好ましい。
オス型嵌合部13の外径D1は、胴部11における軸方向Zの一端側とは反対側の他端側の端部、即ちメス型嵌合部12の内径D2以下であることが好ましい。こうすることにより、構造体1Bのオス型嵌合部13を、他の構造体1Bのメス型嵌合部12に挿入しやすくし、両者を嵌合させやすくすることができる。
前記内径D2に対する前記外径D1の比D1/D2の好ましい数値範囲は、第1実施形態における比D1/D2の好ましい数値範囲と同様である。
胴部内面被覆層31は、該胴部内面被覆層31が配されている部分において、構造体1,1Bの半径方向の最も内方側に配されていることが好ましい。こうすることにより、構造体1,1Bにおける胴部内面被覆層31が、構造体1,1Bの内部を通る溶湯と接触することになるので、構造体1,1Bの本体部20を保護しやすくなる。
図1に示す構造体1の一例では、胴部内面被覆層31が配されている部分における構造体1の半径方向は、構造体1の軸方向Zに直交する横断面における半径方向である。また図17(d)に示す構造体1の一例では、胴部内面被覆層31が配されている部分における構造体1の半径方向は、第1部18に配されている胴部内面被覆層31の場合、第1部18の軸方向Zxに直交する横断面における半径方向であり、メス型嵌合部12に配されている胴部内面被覆層31の場合、第2部19の軸方向Zy、すなわちメス型嵌合部12の連設方向Yに直交する横断面における半径方向である。
メス型嵌合部12の外面被覆層32は、構造体1の軸方向Zに直交する横断面における半径方向の最も外方側に配されていることが好ましい。こうすることにより、製造の簡便さと本体部20の保護を両立することが可能となる。
本体部20は、2つ以上の層が積層された積層構造を有していてもよい。しかし、簡便に製造する観点からは、本体部20は、単層構造を有していることが好ましい。
本体部20は、周方向において一体として形成されたものであることが好ましい。こうすることにより、本体部20は、周方向の全周において連続したものとなるので、本体部20に隙間や孔が生じることを防ぐことができ、注湯時に溶湯が滲出することを効果的に防ぐことができる。
構造体1,1Bは、本体部20の外面の一部に被覆層32,35,36によって覆われていない部分を有することが好ましい。注湯時には、溶融金属が構造体1内に流れ込むことに起因し、本体部20に含まれる有機繊維やバインダー等が熱分解する際にガスが発生する。本体部20の外面の一部が被覆層32,35,36によって覆われていないことによって、該一部から、ガスを鋳砂側、即ち構造体1,1Bの外部に優先的に排出することができる。
本体部20における胴部11、オス型嵌合部13及びメス型嵌合部12のいずれの外面に、被覆層32,35,36によって覆われていない部分を有していてもよい。ガスを構造体1,1Bの外部に優先的に排出するという効果が効果的に奏されるようにする観点からは、本体部20における胴部11の外面に、胴部外面被覆層35によって被覆されていない部分が存在することが好ましい。
胴部11の外面の全面積S1に対する、胴部外面被覆層35によって被覆されていない部分の面積の割合である非被覆面積割合は、ガスを構造体1,1Bの外部に優先的に排出する観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である。
前記非被覆面積割合は、注湯時に溶湯が構造体1の外部へ滲出することを防ぐ観点からは、好ましくは100%以下、より好ましくは95%以下、更に好ましくは90%以下である。
前記非被覆面積割合は、これらの両立の観点からは、好ましくは30%以上100%以下、より好ましくは50%以上95%以下、更に好ましくは70%以上90%以下である。
次に構造体1,1Bの構成材料について説明する。
本体部20は、典型的には、有機繊維、無機繊維、無機粒子(以下、第1無機粒子ともいう)、バインダー(以下、第1バインダーともいう)を含有する。
斯かる本体部20は典型的には以下の手段で製造する。まず、有機繊維、無機繊維、第1無機粒子、第1バインダー及び分散媒を含有するスラリー状組成物(以下、原料スラリーという)を調製する。次いで、抄造・脱水成形用の金型を用いて本体部20の中間成形体、例えば含水状態の本体部を抄造する。次に金型を用いて該中間成形体を加熱・乾燥することにより、本体部20を形成することができる。
有機繊維は、本体部20において鋳造に用いられる前の状態では無機繊維、無機粒子に絡み構造体1、1Bの形状を維持する効果を示す。鋳造時には溶融金属の熱によって、その一部若しくは全部が燃焼する。
有機繊維には、パルプ繊維、合成繊維、再生繊維(例えばレーヨン繊維)等から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
これらの中でもパルプ繊維を含むことが好ましい。その理由は、抄造により多様な形態に成形でき、脱水、乾燥された成形体の強度特性が優れ、パルプ繊維の入手性が容易且つ安定的で、経済的であるためである。
パルプ繊維には、木材パルプ、コットンパルプ、リンターパルプ、竹や藁その他の非木材パルプから選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。また、バージンパルプ若しくは古紙パルプ(回収品)から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
入手の容易性、環境保護、製造費用の低減等の点から、新聞古紙などの古紙パルプを含むことが好ましい。
無機繊維は、主として本体部20において鋳造に用いられる前の状態では構造体1,1Bの強度を向上させる。鋳造時に溶融金属の熱によっても燃焼せずにその形状を維持する。特に、後述する有機バインダーが用いられた場合には、該無機繊維は溶融金属の熱による該有機繊維の燃焼並びに有機バインダーの熱分解に起因する熱収縮を抑えることができる。
無機繊維には、炭素繊維、ロックウール等の人造鉱物繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、天然鉱物繊維から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
これらの中でも、前記の熱収縮を抑える点から金属が溶融するような高温でも高強度を有する炭素繊維を含むことが好ましい。
製造費用を抑える点からはロックウール及びガラス繊維から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
第1無機粒子としては、ムライト、黒鉛、雲母、シリカ、中空セラミックス、フライアッシュ等の耐火物の骨材粒子から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
第1無機粒子の平均粒子径は、本体部20の通気性を良くする観点から、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。
また第1無機粒子の平均粒子径は、本体部20の成形性を向上させる観点から、好ましくは100μm以下である。
第1無機粒子の平均粒子径が上記の下限以上であれば、本体部20の通気性が良くなり、鋳造時の鋳型内のガス圧力が適度に減少する。また、本体部20の通気性が上がることで、本体部20の材料間の空隙が増加し、後述する塗液組成物の本体部20への浸透性が向上し、本体部20から被覆層が剥離しにくくなる。
第1無機粒子が上記の上限以下であれば、本体部20の表面から無機粒子が脱落しにくくなるとともに、成形性が良くなる。
第1無機粒子の見掛け比重は、原料分散性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは2.8以上である。
また、第一無機粒子の見掛け比重は、軽量化の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2.8以下であり、更に好ましくは2.5以下である。
見掛け比重とは、中空粒子の内部の中空部分の体積を中空粒子の体積の一部であると仮定した場合の中空粒子の比重であり、内部の中空部分が存在しない中実粒子の場合は真比重と一致する。
第1無機粒子の見掛け比重が前記範囲にあることで、分散媒に水を使用した場合の抄造工程における原料分散性が良好となる。また、成形して得られた本体部20の質量を軽量化できるため、取り扱い性が良くなる。
なお、本体部20の組成は、第1無機粒子の見掛け比重と共に嵩比重を考慮して決めることができる。嵩比重とは、粒子を一定容積の容器の中に、一定状態で入れたときに、容器内に入る粒子の量を測定し、単位体積あたりの質量を求めたものである。
第1無機粒子は中空であっても良い。中空粒子を用いることで、第1無機粒子の見掛け比重を小さくすることができる。
本発明では、第1バインダーとしては、有機バインダー及び無機バインダーから選ばれる一種又は二種以上を使用することができる。
鋳造後の除去性に優れる観点から有機バインダーを含むことが好ましい。
有機バインダーとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
これらの中でも、可燃性ガスの発生が少なく、燃焼抑制効果があり、熱分解(炭化)後における残炭率が高い等の点からフェノール樹脂を含むことが好ましい。
フェノール樹脂としては、ノボラックフェノール樹脂、レゾールタイプ等のフェノール樹脂、尿素、メラミン、エポキシ等で変性した変性フェノール樹脂等から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
中でも、レゾールタイプのフェノール樹脂を含むことで、酸、アミン等の硬化剤を必要とせず、本体部20成形時の臭気や、本体部20を鋳型として用いた場合の鋳物欠陥を低減することができるので、好ましい。
ノボラックフェノール樹脂を使用した場合には、硬化剤を併用することが好ましい。該硬化剤は水に溶け易いため、本体部20の脱水後にその表面に塗工されるのが好ましい。硬化剤には、ヘキサメチレンテトラミン等を用いることが好ましい。
無機バインダーとしてリン酸系バインダー、ケイ酸塩等の水ガラス、石膏、硫酸塩、シリカ系バインダー、シリコン系バインダーから選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
原料スラリーに用いられる分散媒としては、水、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、アセトン、キシレンなどの溶剤から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
その中でも、取り扱い易さの点から、水を含むことが好ましい。
本体部20は、有機繊維、無機繊維、第1無機粒子及び第1バインダーの他に、紙力強化材を含有していてもよい。紙力強化材は、該中間成形体の形状維持に作用がある。
紙力強化材としては、ラテックス、アクリル系エマルジョン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂等から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
胴部内面被覆層31、メス型嵌合部12の外面被覆層32、メス型嵌合部内面被覆層33、メス型嵌合部12の端面被覆部34、胴部外面被覆層35、オス型嵌合部13の外面被覆層36、オス型嵌合部13の端面被覆部37(以下、これらをまとめて「被覆層」と称する場合がある。)は、典型的には、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる平均粒子径1μm以上100μm以下の耐火性無機粒子(以下、第2無機粒子ともいう)、バインダー(以下、第2バインダーともいう)並びに粘土鉱物を含有する塗液組成物を、本体部20の表面に塗布することにより形成することができる。
耐火性無機粒子について、耐火性であるとは、融点1500℃以上、好ましくは1600℃以上、より好ましくは1700℃以上であることをいう。
第2無機粒子は、金属酸化物、及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
具体的には、ムライト、ジルコン、ジルコニア、アルミナ、オリビン、スピネル、マグネシア、クロマイト等から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
鋳物のガス欠陥を改善する観点から、ジルコンを含むことが好ましい。
鋳鉄よりも炭素含有量の低い鋳鋼では、炭素質以外の骨材粒子を含むことが好ましく、融点が高く、溶融金属との濡れ性が低いジルコンを含むことが、より好ましい。
本体部20の表面の封孔性、本体部20と被覆層との密着性などの観点から、第2無機粒子の平均粒子径は1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。
また第2無機粒子の平均粒子径は、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。
構造体1、1Bにおいては、本体部20が含有する第1無機粒子の平均粒子径と、被覆層が含有する第2無機粒子の平均粒子径との比は、本体部20の表面の封孔性の観点から、〔第1無機粒子の平均粒子径〕/〔第2無機粒子の平均粒子径〕で0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましい。
また、本体部20が含有する第1無機粒子の平均粒子径と、被覆層が含有する第2無機粒子の平均粒子径との比は、〔第1無機粒子の平均粒子径〕/〔第2無機粒子の平均粒子径〕で35以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、6以下が殊更好ましい。
構造体1、1Bにおいては、被覆層中、第2無機粒子の割合が50質量%以上100質量%未満であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが殊更好ましい。
被覆層は、熱間強度向上の観点と塗布時の粘度を付与する観点から、粘土鉱物を含有していることが好ましい。粘土鉱物を、被覆層を得るための分散液(塗液組成物)に配合することで、分散液に適度な粘度を付与し、分散液中での原料の沈降防止、原料分散性が向上する。
粘土鉱物としては、層状ケイ酸塩鉱物、複鎖構造型鉱物などから選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。これらは天然、合成を問わない。
層状ケイ酸塩鉱物としては、スメクタイト属、カオリン属、イライト属に属する粘土鉱物、例えばベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、活性白土、木節粘土、ゼオライト等から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
複鎖構造型鉱物としては、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト等から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
熱間強度向上の観点や塗布時の粘度を確保する観点から、アタパルジャイト、セピオライト、ベントナイト、スメクタイトから選ばれる一種又は二種以上を用いることが好ましく、アタパルジャイト、セピオライトから選ばれる一種又は二種以上を用いることがより好ましい。
粘土鉱物は、層状構造又は複鎖構造である点で、例えば、六方最密充填構造を主に含み、通常、層状構造又は複鎖構造をとらない耐火性無機粒子とは区別される。
粘土鉱物は、耐火性無機粒子100質量部に対して、0.5質量部以上含まれることが好ましく、1質量部以上含まれることがより好ましい。
粘土鉱物は、耐火性無機粒子100質量部に対して、30質量部以下含まれることが好ましく、20質量部以下含まれることがより好ましく、2質量部以下含まれること更に好ましい。
この比率において粘土鉱物が上記の下限以上であれば、分散液に適度な粘度を付与することができ、分散液中での原料沈降・浮遊を防止できる。
被覆層は、熱間強度向上の観点から、更に第2バインダーを含有することが好ましい。被覆層を形成する際に第2バインダーを用いることが、鋳物製造用構造体の常温強度及び耐熱性を向上させる観点から好ましい。
第2バインダーとしては、有機バインダーと無機バインダーから選ばれる一種又は二種以上を用いることができ、無機バインダーを含むことが好ましい。
有機バインダーとしては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂、水溶性多糖類、酢酸ビニル樹脂又はその共重合体などから選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
無機バインダーとしては、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、リチウムシリケート、ジルコニアゾル、コロイダルシリカ、アルミナゾルなど各種ゾルなどから選ばれる一種又は二種以上を用いることができ、コロイダルシリカ及びリン酸アルミニウムからなる群から選ばれる一種又は二種以上を用いることが好ましく、コロイダルシリカを含むことがより好ましい。
第2バインダーは、第2無機粒子100質量部に対して、有効分換算で、1質量部以上含まれることが好ましく、3質量部以上含まれることがより好ましい。
第2バインダーは、第2無機粒子100質量部に対して、有効分換算で、50質量部以下含まれることが好ましく、40質量部以下含まれることがより好ましく、7質量部以下含まれることが更に好ましい。
本発明の鋳物製造用構造体の製造方法の好ましい一実施態様について、図18に示す構造体1の製造方法を例に説明する。
本実施態様の製造方法は、典型的には、胴部内面被覆層31を形成する胴部塗工工程と、メス型嵌合部外面被覆層32を形成するメス型嵌合部塗工工程とを有する。
本実施態様に係るメス型嵌合部塗工工程では、メス型嵌合部外面被覆層32に加えて、メス型嵌合部内面被覆層33、メス型嵌合部端面被覆部34も形成する。
胴部塗工工程では、本体部20の胴部11の内面に塗工液を塗工し、胴部内面被覆層31を形成することが好ましい。具体的には、胴部11に塗液組成物70を注入し、胴部11内に塗液組成物70を充填する(図18(a)及び(b)参照)ことが好ましい。
詳細には、オス型嵌合部13の開口端に蓋体60を配する。そして胴部11内に塗液組成物70を充填する。塗液組成物70の上面が所望の高さとなったときに、塗液組成物70の充填を終了する。その後、一定時間経過後、蓋体60を開放する。そして、塗液組成物70を胴部11の内面に残液するものを残して排出する。
そして、塗液組成物70が残液した胴部11を、該胴部11の軸方向Zを鉛直方向Z1と略平行にした状態で静置し、胴部11の内面に残液した塗液組成物70を乾燥・固化させて、胴部11の内面に胴部内面被覆層31を形成する(図18(c)参照)ことが好ましい。
メス型嵌合部塗工工程は、胴部塗工工程の後に行うことが好ましい。メス型嵌合部塗工工程では、本体部20におけるメス型嵌合部12の内面及び外面、端面に、該メス型嵌合部12の全周に亘って塗液組成物を塗工することが好ましい。
詳細には、塗液組成物71中に、本体部20におけるメス型嵌合部12を浸漬させることが好ましい。そして、メス型嵌合部12の内面及び外面、端面に塗液組成物71をなじませる(図18(d)参照)。その後、一定時間経過後、メス型嵌合部12を塗液組成物71から取り出す。そして、塗膜、即ちメス型嵌合部12の内面及び外面、端面に残液した塗液組成物71を乾燥・固化させることで、メス型嵌合部内面被覆層33及びメス型嵌合部外面被覆層32、メス型嵌合部端面被覆部34が形成される。
このようにして、胴部内面被覆層31、メス型嵌合部内面被覆層33及びメス型嵌合部外面被覆層32、メス型嵌合部端面被覆部34を有する構造体1が製造される。
本実施態様の製造方法によれば、構造体1を効率的に製造することができる。
胴部塗工工程では、胴部11内に充填する塗液組成物70は、段部15の上面12eまで達していてもよいし(図18(b)参照)、達していなくてもよい(図19(a)参照)。また胴部11内に充填する塗液組成物70は、メス型嵌合部12まで達していてもよい(図19(b)及び(c)参照)。塗液組成物70が、メス型嵌合部12まで達している場合、該塗液組成物70は、メス型嵌合部12の開口端まで達していてもよいし(図19(b)参照)、達していなくてもよい(図19(c)参照)。
胴部塗工工程では、胴部11内に塗液組成物70を充填することに代えて、例えば刷毛等で塗液組成物70を胴部11の内面に塗布することにより、胴部11の内面に塗液組成物70を塗工してもよい。
胴部内面被覆層31を容易に形成できるようにし、構造体1を一層効率的に製造できるようにする観点からは、胴部11内に塗液組成物70を充填することによって塗液組成物70を塗工することが好ましい。
メス型嵌合部塗工工程では、本体部20における段部15の下面15aの位置まで、塗液組成物70中に浸漬させてもよいし(図18(d)参照)、メス型嵌合部12における段部15の下面15aよりも一端1a側の部分のみを塗液組成物70中に浸漬させてもよいし(図19(d)参照)、本体部20における段部15の下面15aよりも他端1b側の位置まで、塗液組成物71中に浸漬させてもよい(図19(e)参照)。
本実施態様のメス型嵌合部塗工工程では、メス型嵌合部内面被覆層33及びメス型嵌合部外面被覆層32、メス型嵌合部端面被覆部34を形成したが、メス型嵌合部塗工工程ではメス型嵌合部外面被覆層32のみを形成してもよい。例えば、刷毛等で塗液組成物71をメス型嵌合部12の外面に塗布することにより、メス型嵌合部12の外面に塗液組成物71を塗工してもよい。
メス型嵌合部内面被覆層33及びメス型嵌合部外面被覆層32、メス型嵌合部端面被覆部34を容易に形成できるようにし、構造体1を一層効率的に製造できるようにする観点からは、塗液組成物71中に、本体部20におけるメス型嵌合部12を浸漬させることによって塗液組成物71を塗工することがより好ましい(図18(d)参照)。
メス型嵌合部塗工工程と胴部塗工工程を行う順番は特に制限されない。例えば、メス型嵌合部塗工工程の後に胴部塗工工程を行ってもよいし、メス型嵌合部塗工工程及び胴部塗工工程を同時に行ってもよい。
また、胴部塗工工程における塗液組成物70と、メス型嵌合部塗工工程における塗液組成物71とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本体部20は、例えば以下の方法により製造することができる。
<本体部20の製造方法>
本体部20は、抄造工程を有する成形法により製造することができる。このような成型方法は、例えば特開2012-024841号公報の段落〔0052〕~〔0071〕に記載されている。
具体的には、先ず、有機繊維、無機繊維、第1無機粒子及び第1バインダーを所定割合で含む原料スラリーを調製する。原料スラリーは、有機繊維、無機繊維、第1無機粒子及び第1バインダーを、所定の分散媒に分散させて調製する。なお、第1バインダーは、原料スラリーには配合せず、本体部20に含浸させてもよい。
分散媒としては、水の他、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、アセトン、キシレンなどの溶剤から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。その中でも、取り扱いやすさの点から、水を含むことが好ましい。
原料スラリー中の有機繊維、無機繊維、第1無機粒子及び該第1バインダーの含有割合は、目的とする本体部20の組成となるように各成分の割合を適切に調整する。
原料スラリーには、必要に応じて、紙力強化剤、凝集剤、防腐剤等の添加剤を添加することができる。
次に、原料スラリーを用い、本体部20の中間成形体を抄造する。
前記中間成形体の抄造工程では、例えば、2個で一組をなす割型を突き合わせることにより、当該中間成形体の外形に対応した形状のキャビティが内部に形成される抄造・脱水成形用の金型を用いる。そして、該金型の上部開口部から該キャビティ内に所定量の原料スラリーを加圧注入する。これにより、該キャビティ内を所定圧力に加圧する。各割型には、その外部とキャビティとを連通する複数の連通孔をそれぞれ設けておき、また、各割型の内面は、所定の大きさの網目を有するネットによってそれぞれ被覆しておく。原料スラリーの加圧注入には例えば圧送ポンプを用いる。前記原料スラリーの加圧注入の圧力は、0.01MPa以上5MPa以下が好ましく、0.01MPa以上3MPa以下がより好ましく、0.1MPa以上0.5MPa以下が更に好ましい。
前述のとおり、前記キャビティ内は加圧されているので、該原料スラリー中の分散媒は前記連通孔から金型の外へ排出される。一方、前記原料スラリー中の固形分が前記キャビティを被覆する前記ネットに堆積されて、該ネットに繊維積層体が均一に形成される。このようにして得られた繊維積層体は、有機繊維と無機繊維が複雑に絡み合い、且つこれらの間にバインダーが介在したものである。そのため、複雑な形状であっても乾燥成形後においても高い保形性が得られる。また、前記キャビティ内が加圧されるので、中空の中間成形体を成形する場合でも、原料スラリーがキャビティ内で流動して原料スラリーが撹拌される。そのため、キャビティ内のスラリー濃度は均一化され、前記ネットに繊維積層体が均一に堆積する。
繊維積層体が形成された後、前記原料スラリーの加圧注入を停止し、前記キャビティ内に空気を圧入して該繊維積層体を加圧・脱水する。その後、空気の圧入を停止し、前記キャビティ内は前記連通孔を通して吸引し、弾性を有し伸縮自在で且つ中空状をなす中子(弾性中子)を該キャビティ内に挿入する。中子は、引張強度、反発弾性及び伸縮性等に優れたウレタン、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム又はエラストマー等によって形成されていることが好ましい。
次に、前記キャビティ内に挿入された前記弾性中子内に、加圧流体を供給して弾性中子を膨張させ、膨張した弾性中子により前記繊維積層体を該キャビティの内面に押圧する。これにより、前記繊維積層体は、前記キャビティの内面に押し付けられ、当該繊維積層体の外表面に当該キャビティの内面形状が転写されるとともに該繊維積層体の脱水が進行する。
前記弾性中子を膨張させるために用いられる前記加圧流体には、例えば圧縮空気(加熱空気)、油(加熱油)、その他各種の液が使用される。また、加圧流体の供給圧力は、成形体の製造効率を考慮すると0.01MPa以上5MPa以下が好ましく、効率良く製造する観点から0.1MPa以上3MPa以下がより好ましく、0.1MPa以上0.5MPa以下が更に好ましい。0.01MPa以上であると繊維積層体の乾燥効率が良好で、表面性及び転写性も充分となり、5MPa以下であれば良好な効果が得られ、装置を小型化できる。
このように、前記繊維積層体をその内部からキャビティの内面に押し付けるため、キャビティの内面の形状が複雑であっても、その内面形状が精度よく前記繊維積層体の外表面に転写される。また、製造される成形体が複雑な形状であっても、各部分の貼り合わせ工程が不要なので、最終的に得られる部品には貼り合わせによるつなぎ目及び肉厚部は存在しない。すなわち、最終的に得られる本体部20は、該本体部20の周方向において一体として成形されたものとなる。
前記繊維積層体の外表面に前記キャビティの内面形状が充分に転写され且つ該繊維積層体を所定の含水率まで脱水できたら、前記弾性中子内の加圧流体を抜き、弾性中子を元の大きさまで自動的に収縮させる。そして、縮んだ弾性中子をキャビティ内より取り出し、更に前記金型を開いて所定の含水率を有する湿潤した状態の繊維積層体を取り出す。前述の弾性中子を用いた繊維積層体の押圧・脱水を、省略し、キャビティ内への空気の圧入による加圧・脱水のみによって繊維積層体を脱水成形することもできる。
脱水成形された前記繊維積層体は、次に加熱・乾燥工程に移される。
加熱・乾燥工程では、前記中間成形体の外形に対応した形状のキャビティが形成される乾燥成形用の金型を用いる。そして、該金型を所定温度に加熱し、該金型内に脱水成形された湿潤状態の前記繊維積層体を装填する。
次に、前記抄造工程で用いた前記弾性中子と同様の弾性中子を前記繊維積層体内に挿入し、該弾性中子内に加圧流体を供給して該弾性中子を膨張させ、膨張した該弾性中子で前記繊維積層体を前記キャビティの内面に押圧する。フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等によって表面改質された弾性中子を用いるのが好ましい。加圧流体の供給圧力は、前記脱水工程と同様の圧力とすることが好ましい。この状態下に、繊維積層体を加熱・乾燥し、前記中間成形体を乾燥成形する。
乾燥成形用の前記金型の加熱温度(金型温度)は、表面性を向上させる観点や乾燥時間を短縮する観点から100℃以上300℃以下が好ましく、150℃以上250℃以下がより好ましく、190℃以上240℃以下が更に好ましい。熱処理時間は、加熱温度によって変わるため一概には言えないが、品質及び生産性を向上させる等の観点から、0.5分以上30分以下が好ましく、1分以上10分以下がより好ましい。加熱温度が300℃以下であれば中間成形体の表面性が良好であり、また、100℃以上であれば中間成形体の乾燥時間も短縮できる。
前記繊維積層体が、充分に乾燥したら、前記弾性中子内の前記加圧流体を抜き、該中子を縮ませて当該繊維積層体から取り出す。そして、前記金型を開いて、前記中間成形体を取り出す。この中間成形体は熱硬化性樹脂が熱処理により硬化し、本体部20として使用される。
このようにして得られる本体部20は、弾性中子によって押圧されているため、内表面及び外表面の平滑性が高い。このため、成形精度も高く、嵌合部やネジ部を有する場合にも精度の高い構造体が得られる。したがって、これらの嵌合部やネジ部で連結された構造体はその中を溶融金属がスムーズに流れる。また、鋳造時の該本体部20の熱収縮率も5%未満となるため、構造体のひび割れや変形等による溶融金属の漏れを問題なく防ぐことができる。
得られた中間成形体には、更に第1バインダーを部分的又は全体に含浸させることができる。一方、中間成形体に第1バインダーを含浸させ、原料スラリー中に含ませない場合には原料スラリーや白水の処理が簡便になる。第1バインダーとして熱硬化性バインダーを用いた場合、中間成形体を所定温度で加熱乾燥し、熱硬化性バインダーを熱硬化させて本体部20の製造を完了する。
以上、本発明をその好ましい実施形態及び実施態様に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態及び実施態様に制限されない。上述した各実施形態及びその変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合せることができる。例えば、本発明の鋳物製造用構造体は、メス型嵌合部12の外面被覆層32及びオス型嵌合部13の外面被覆層36の両方を有していてもよい。
以下、実施例を基に本発明を更に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
図9に示す構造体1を、上述した製造方法により製造し、実施例1の鋳物製造用構造体とした。実施例1の鋳物製造用構造体の構成は、表1及び以下に示すとおりである。具体的には、被覆層は、ジルコンを100質量部に対し、アタパルジャイトを1.25質量部、コロイダルシリカを5質量部配合した。本体部は、全ての成分の合計を100質量部とし、新聞古紙を10.2質量部、炭素繊維を8.5質量部、球状シリカを66質量部、フェノール樹脂を15.3質量部配合した。
ジルコン:ハクスイテック株式会社製、ジルコシルNo.1
アタパルジャイト:林化成株式会社製、アタゲル50
コロイダルシリカ:日産化学株式会社製、スノーテックス50
炭素繊維:東レ株式会社製、トレカ チョップドファイバー
球状シリカ:株式会社マイクロン製、S85-P
フェノール樹脂:エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製、ベルパールS890
オス型勘合部の内径は99.4mm、外径は102.4mmであった。メス型嵌合部内面被覆層の厚みT2は0.1mm、胴部内面被覆層の厚みT3は0.3mm、メス型嵌合部内側被覆層と胴部内面被覆層とが重なっている部分の厚みT1は0.4mmであった。
〔実施例2〕
図1に示す構造体1を、上述した製造方法により製造し、実施例2の鋳物製造用構造体とした。なお、メス型嵌合部塗工工程では、刷毛等で塗液組成物70をメス型嵌合部12の外面に塗布することにより、メス型嵌合部12の外面に塗液組成物70を塗工した。実施例2の鋳物製造用構造体の組成は、実施例1の鋳物製造用構造体と同じである。
〔比較例1〕
メス型嵌合部塗工工程を行わなかった以外は、実施例1と同様に、鋳物製造用構造体を製造した。
Figure 0007421020000001
〔注湯時の溶湯の滲出の有無の評価〕
実施例1及び比較例1の鋳物製造用構造体それぞれについて、該鋳物製造用構造体を連結して筒状体を作製した。そして、各筒状体を湯道管として有する砂型である鋳型に、溶融金属を流し込み、鋳物を製造した。溶融金属は、炭素鋼鋳鋼SC450(JIS分類)を5t用いた。そして、溶融金属固化後の残存した各筒状体の表面の目視観察、および嵌合部の切断面観察を行った。筒状体から溶融金属が滲み出ることなく、砂型と筒状体内部の金属が分離できているものを「滲出なし」と評価した。また、筒状体から溶融金属が滲み出て、砂型の一部の鋳物砂が焼着したものを「滲出あり」と評価した。
表1に示すとおり、比較例1においては、溶湯の滲出が発生していた。これに対し、実施例1においては、溶湯の滲出が発生していなかった。したがって、本発明の鋳物製造用構造体によれば、嵌合部からの滲出による焼着を抑制することができることが判る。
本発明の鋳物製造用構造体によれば、注湯時の溶湯の滲出を防ぐことができる。
本発明の鋳物製造用構造体の製造方法によれば、注湯時の溶湯の滲出を防ぐことができる鋳物製造用構造体を効率的に製造することができる。

Claims (10)

  1. 筒状の鋳物製造用構造体であって、
    胴部と、該胴部に連設され、内径が該胴部の外径以上であるメス型嵌合部とを有する筒状の本体部を具備しており、
    前記胴部の内面を被覆する胴部内面被覆層、及び前記メス型嵌合部の外面を被覆する外面被覆層を有する、鋳物製造用構造体。
  2. 前記外面被覆層は前記メス型嵌合部の外面の全域を被覆している、請求項1に記載の鋳物製造用構造体。
  3. 前記メス型嵌合部の端面を被覆する端面被覆部を有する、請求項1に記載の鋳物製造用構造体。
  4. 前記端面被覆部と前記外面被覆層とが連続している、請求項3に記載の鋳物製造用構造体。
  5. 前記メス型嵌合部の内面を被覆するメス型嵌合部内面被覆層と、前記メス型嵌合部の端面を被覆する端面被覆部とを有しており、該端面被覆部と該メス型嵌合部内面被覆層とが連続している、請求項1に記載の鋳物製造用構造体。
  6. 筒状の鋳物製造用構造体であって、
    胴部の一端部に、メス型嵌合部に内嵌合されるオス型嵌合部を有する筒状の本体部を具備しており、
    前記オス型嵌合部の外径は、前記メス型嵌合部の内径以下であり、
    前記胴部の内面を被覆する胴部内面被覆層、及び前記オス型嵌合部の外面を被覆する外面被覆層を有する、鋳物製造用構造体。
  7. 前記オス型嵌合部の端面を被覆する端面被覆部を有する、請求項に記載の鋳物製造用構造体。
  8. 筒状の鋳物製造用構造体の製造方法であって、
    前記鋳物製造用構造体は、胴部と、該胴部の軸方向に連設され、内径が該胴部の外径以上であるメス型嵌合部とを有する筒状の本体部を具備しており、
    前記胴部の内面に塗工液を塗工し、該胴部の内面を被覆する胴部内面被覆層を形成する胴部塗工工程と、
    前記メス型嵌合部の外面に、該メス型嵌合部の全周に亘って塗工液を塗工し、該メス型嵌合部の外面を被覆する外面被覆層を形成するメス型嵌合部塗工工程とを有する、鋳物製造用構造体の製造方法。
  9. 請求項1~のいずれか一項に記載の鋳物製造用構造体を、該鋳物製造用構造体が有する開口部のうちの一部の開口部を残して鋳物砂に埋設する工程を有する、鋳鋼用鋳型の製造方法。
  10. 請求項1~のいずれか一項に記載の鋳物製造用構造体を、該鋳物製造用構造体が有する開口部のうちの一部の開口部を残して鋳物砂に埋設し、鋳型を製造する鋳型製造工程と、
    前記鋳型に溶融金属を注湯する鋳込み工程とを有する、鋳鋼鋳物の製造方法。
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