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JP7419462B2 - 経口固形組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、経口固形組成物に関し、更に詳細には、塩基性化合物を含有することでナプロキセンの効果発現を早めた経口固形組成物に関する。
ナプロキセンは、プロピオン酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤であり、発熱や炎症を引き起こす原因となるプロスタグランジンの生合成を抑制することによって、消炎、鎮痛、解熱作用を有する。しかし、ナプロキセンを固形製剤とし、経口投与した場合、ナプロキセンは水に溶解し難い薬物であるため、服用してから解熱鎮痛等の効能が表れるまでに時間がかかることが知られている。
このような、経口固形製剤でのナプロキセンの効果発現が遅いという欠点を解消するために、ナプロキセンの溶解を速めるための試みがなされており、例えば、ナプロキセンナトリウムに、スプレー乾燥した粒径75~300ミクロンのマンニトールを組み合わせる技術が報告されている(特許文献1)。しかしながら、この技術では、予めマンニトールをスプレー乾燥しなければならず、さらに、スプレー乾燥時にマンニトールを上記のような特定の粒径に調整する必要があるため、製造において複雑で手間がかかるという問題があった。
特開2003-192582号公報
従って、本発明は、簡単な手段によってナプロキセンの難溶性を改善し、速やかな効果発現が期待できる経口固形組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行っていたところ、ナプロキセンに塩基性化合物を組み合わせることにより、ナプロキセンが水に対して速やかに溶解するとの知見を得、この知見を利用すれば効果発現が速やかな経口固形組成物が得られることを見出した。特に、塩基性化合物として、1~3価の金属を含む塩基性化合物を使用した場合は、速やかに、かつ、持続的な溶解性が得られることを見出した。また、セルロース系水膨潤性高分子を更に配合させることにより、固形製剤とした場合であっても、崩壊性の良い即効性のある経口固形組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ナプロキセンまたはその塩と塩基性化合物とを含有することを特徴とする経口固形組成物である。
また、本発明は、上記塩基性化合物が、1~3価の金属を含む塩基性化合物及びアミン系塩基性化合物から選ばれる一種以上である上記経口固形組成物である。
さらに、本発明は、セルロース系水膨潤性高分子をさらに含有する上記経口固形組成物である。
本発明の経口固形組成物によれば、ナプロキセンを速く溶解させることができるため、即効性に優れた消炎、鎮痛、解熱作用を有する経口固形組成物を提供することができる。また、塩基性物質として、1~3価の金属を含む塩基性化合物を使用した場合は、速やかに、かつ、持続的な溶解性に優れた経口固形組成物を提供することができる。さらに、セルロース系水膨潤性高分子をさらに配合することで、固形製剤とした場合であっても、経口摂取時の口腔内等での崩壊性が高まり、より速やかな薬効を得ることができる。
本発明の経口固形組成物は、ナプロキセンまたはその塩と塩基性化合物とを含有するもの(以下、「本発明組成物」という)である。
本発明組成物で用いられるナプロキセンは、消炎、鎮痛、解熱作用を有することが知られている化合物であり、化学名は(2S)-2-(6-メトキシナフタレン-2-イル)プロパン酸((2S)-2-(6-Methoxynaphthalen-2-yl)propanoic acid)、その分子式がC1414で、分子量は230.26である。
本発明組成物で使用されるナプロキセンまたはその塩としては、フリーのナプロキセンおよび薬学的に許容されるその塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メグルミン塩、トリス塩、塩基性アミノ酸の塩等が挙げられる。本発明組成物で使用するナプロキセンまたはその塩としては、フリーのナプロキセンをそのまま用いることが好ましい。
本発明組成物におけるナプロキセンまたはその塩(以下、単に「ナプロキセン」という)の配合量は、服用者の性別、年齢、症状等によって適宜決定すればよい。例えば、成人1日当たりの服用量として、通常10~1200mg、好ましくは15~600mg、より好ましくは20~400mgとなるように本発明組成物中に配合することが好ましい。また、本発明組成物の全質量に対するナプロキセンの含有量は、例えば、1~99質量%(以下、「%」という)が好ましく、5~95%がより好ましい。
一方、本発明組成物で用いられる塩基性化合物としては、1~3価の金属を含む塩基性化合物やアミン系塩基性化合物等が挙げられる。1~3価の金属を含む塩基性化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物等の1~3価の金属を含む塩基性無機化合物や、クエン酸ナトリウム、アルジオキサ、スクラルファート、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等の1~3価の金属を含む塩基性有機化合物を挙げることができる。
また、上記アミン系塩基性化合物としては、特に限定されないが、例えば、グリシナール、アルギニン等が挙げられる。
本発明組成物における塩基性化合物は単独または二種以上を組み合わせて本発明組成物に使用することができ、その好ましいものとしては、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムゲル、クエン酸ナトリウム、アルジオキサ、スクラルファート等の1~3価の金属を含む塩基性化合物を挙げることができる。1~3価の金属を含む塩基性化合物を用いることにより、速やかで持続的な溶解性を得ることができる。
本発明組成物におけるナプロキセンと塩基性化合物の含有比は、特に限定されず、ナプロキセンの配合量に応じて適宜検討して決定すればよいが、ナプロキセン1質量部に対し、塩基性物質を0.001~100質量部含有することが好ましく、0.01~50質量部含有することがより好ましく、0.1~30質量部含有することがさらに好ましい。
また、本発明組成物は、更に、セルロース系水膨潤性高分子を配合することが望ましい。セルロース系水膨潤性高分子を配合することで、経口投与した際の口腔内等での崩壊性が良くなり、ナプロキセンの溶解性をさらに高めることができる。
上記セルロース系水膨潤性高分子としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。このうち好ましいものとしては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
セルロース系水膨潤性高分子として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いる場合は、優れた形状および粒子径の経口固形組成物に加工しやすいという製造性の面からヒドロキシプロポキシ基が5.0~16.0質量%であるものが好ましく、さらに7.0~13.0質量%であるものが好ましい。このような低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えば信越化学(株)製、LH-11(ヒドロキシプロポキシ基10.0~12.9質量%)、LH-21(ヒドロキシプロポキシ基10.0~12.9質量%)LH-22(ヒドロキシプロポキシ基7.0~9.9質量%)LH-31(ヒドロキシプロポキシ基10.0~12.9質量%)、LH-32(ヒドロキシプロポキシ基7.0~9.9質量%)、LH-B1(ヒドロキシプロポキシ基10.0~12.9質量%)、NBD-020(ヒドロキシプロポキシ基13.0~15.9質量%)、NBD-021(ヒドロキシプロポキシ基10.0~12.9質量%)NBD-022(ヒドロキシプロポキシ基7.0~9.9質量%)などが挙げられる。さらに、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの平均粒径はおよそ60μm以下が好ましく、55μm以下がより好ましい。
本発明組成物において、セルロース系水膨潤性高分子を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、例えば、本発明組成物中1~99%が好ましく、5~95%がより好ましい。
本発明組成物には、上記した各成分の他、その他の活性医薬成分として、例えば、ナプロキセン以外の抗炎症・解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、鎮咳去痰薬、中枢神経興奮薬、ビタミン及び生薬等を添加してもよい。
上記ナプロキセン以外の抗炎症・解熱鎮痛薬としては、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ロキソプロフェン、ラクチルフェネチジン、イソプロピルアンチピリン、グリチルリチン、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸カリウム、グリチルリチン酸二カリウム等のグリチルリチン酸及びその類縁物質若しくはその塩、トラネキサム酸等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を使用しても良い。
また、上記抗ヒスタミン薬及び抗アレルギー薬としては、例えば、アゼラスチン塩酸塩、アリメマジン酒石酸塩、イソチペンジル塩酸塩、イプロヘプチン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩、エバスチン、エメダスチンフマル酸塩、オキサトミド、カルビノキサミンジフェニルジスルホン酸塩、カルピノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェテロール塩酸塩、ジフェテロールリン酸塩、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミンタンニン酸塩、セチリジン塩酸塩、トリプロリジン塩酸塩水和物、トリペレナミン塩酸塩、トンジルアミン塩酸塩、フェキソフェナジン、フェネタジン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、ベポタスチンベシル酸塩、ホモクロルシクリジン塩酸塩、メキタジン、メトジラジン塩酸塩、メブヒドロリンナパジシル酸塩、レボセチリジン塩酸塩等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を使用しても良い。
さらに、上記鎮咳去痰薬としては、アンブロキソール塩酸塩、塩酸アロクラミド、クエン酸チペピジン、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩水和物、ジブナートナトリウム、チペピジンヒベンズ酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、ペントキシベリンクエン酸塩、ジメモルファンリン酸塩、ノスカピン、ノスカピン塩酸塩水和物、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリンサッカリン塩、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、L-カルボシステイン、L-エチルシステイン塩酸、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド、エプラジノン塩酸塩等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を使用しても良い。
さらにまた、上記中枢神経興奮薬としては、安息香酸ナトリウムカフェイン、無水カフェイン、カフェイン水和物が挙げられる。これらは、1種または2種以上を混合して添加しても良い。
前記ビタミンとしては、例えば、ビタミンB及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等が挙げられ、また、上記生薬としては、例えば、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、セキサン、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、カジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ジリュウ、チクセツニンジン、ニンジン、葛根湯、葛根湯加桔梗、桂枝湯、香蘇散、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等を挙げることができる。これらは、1種または2種以上を混合して添加しても良い。
また、本発明組成物には、必要に応じて通常の経口固形組成物に含有させることのできる製剤添加剤を添加してもよい。
製剤添加剤としては、一般的に使用され得る賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤の他、各種担体、安定(化)剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢化剤、可溶(化)剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、吸着剤、矯味剤、懸濁(化)剤、抗酸化剤、光沢化剤、コーティング剤、剤皮、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼化剤、着色剤、着香剤、香料、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘稠化剤、粘稠剤、発泡剤、pH調整剤、稀釈剤、分散剤、崩壊補助剤、崩壊延長剤、芳香剤、防湿剤、防腐剤、保存剤、流動化剤、帯電防止剤、増量剤、保湿剤、付湿剤等を挙げることができる。これら添加剤の例は、薬食発1204第1号(薬事行政法令)、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社)及び第8版食品添加物公定書(日本食品添加物協会)に記載されている。
上記製剤添加剤のうち賦形剤としては、例えば、乳糖、糖アルコール類、軽質無水ケイ酸、酸化チタン等が挙げられる。これらの賦形剤は1種または2種以上を使用することができる。
上記結合剤としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム末、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、プルラン、デキストリン、メタクリル酸コポリマー等のアクリル酸誘導体、セラック、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。これらの結合剤は1種または2種以上を使用することができる。
また崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、クロスリンクドインソルブルポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの崩壊剤は1種または2種以上を使用することができる。
上記滑沢剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの滑沢剤は1種または2種以上を使用することができる。
本発明組成物は、ナプロキセンと塩基性化合物、あるいはこれらとセルロース系水膨潤性高分子に、必要に応じて上記した他の活性医薬成分や製剤添加剤を常法に従って配合し、これを適宜固形製剤とすることによって調製される。この固形製剤の例としては、粉末製剤、顆粒剤、錠剤等の内服固形製剤を挙げることができ、また、必要に応じてフィルムコーティングや糖衣を施し、コーティング製剤とすることも、また徐放性製剤等とすることもできる。
本発明組成物の製造にあたり、各成分を混合する方法としては、例えば、乳鉢やメカノミル(MM-20N型、岡田精工社製)、高速撹拌造粒機(パウレック社製)等の装置を使用して混合する方法を挙げることができる。混合の条件としては、均一に混合することができれば特に制限はなく、混合に用いられる成分の種類や量により適宜選択することができる。
また、本発明組成物は、さらに上記混合末に、練合液を添加して練合、造粒することができる。この際の練合液の添加量は、混合末の質量に対して、0.05~10倍量程度が好ましい。また、練合液としては、精製水、エタノール等を用いることができ、この中でも、精製水が好ましい。練合のために使用する装置としては、例えば、乳鉢、メカノミル(MM-20N型、岡田精工社製)、高速撹拌造粒機(パウレック社製)等が挙げられる。練合の条件としては、均一に練合することができれば特に制限はなく、練合に用いられる成分の種類や量により適宜選択することができる。
さらに、造粒は上記練合した練合物を、例えば、円筒造粒機、ロータリー型造粒機、スクリュー押し出し造粒機、ペレットミル型造粒機等の押し出し造粒装置等を利用し行うことができる。得られた造粒物は、そのまま、又はマルメライザー(不二パウダル社製)等の球形整粒機により球形にした後、乾燥することができる。乾燥に使用する装置としては、例えば、箱型乾燥機(エスペック社製)、流動層乾燥機(フロイント産業社製)等の乾燥機を使用し、40~90℃の条件で乾燥するのがよい。なお、乾燥を終える目安としては、例えば、赤外線水分計FD-800(ケツト科学研究所社製)を使用して、水分率が2%以下になるまで乾燥を行えばよい。造粒物を乾燥後、必要に応じて、ステンレススクリーン等を用いて整粒してもよい。
斯くして得られる本発明組成物は、ナプロキセンの溶解性が速いため、ナプロキセンを服用後、直ちにナプロキセン効果が表れるというものである。そのため、本発明組成物は、例えば、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤等の用途、特に速やかにナプロキセンの消炎鎮痛効果が求められる用途に用いることができる。
次に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
実 施 例 1
溶解性試験:
粉末製剤(1)
ナプロキセン1gと表1に記載の塩基性物質1gを乳鉢で混合し、粉末製剤を製造した。得られた粉末製剤について、下記の溶出試験方法によりナプロキセンの溶出率を測定した。なお、比較品として同じ粒度のナプロキセンについても溶出率を測定した。これらの結果を併せて表1に示す。
Figure 0007419462000001
上記結果より、ナプロキセン単独(比較品)よりも、ナプロキセンに表1に記載された塩基性物質を組み合わせたものの方が、ナプロキセンが速く溶解することが確認された。また、塩基性物質として、特に炭酸マグネシウムや酸化マグネシウム使用した場合は、ナプロキセンの30分後の溶出率が極めて高いことが確認された。
<溶出試験方法>
日本薬局方溶出試験法第2法に従い、精製水900mLにナプロキセンとして20mg含有量の各粉末製剤を入れ、パドル回転数50rpm、温度37±0.5℃の条件下で溶出試験を行った。ナプロキセンの溶出量は、液体クロマトグラフ法により測定し、この溶出量から溶出率を算出した。
実 施 例 2
溶解性試験:
粉末製剤(2)
ナプロキセン15g、表2に記載の塩基性物質15g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロポキシ基11.1質量%のもの;信越化学工業社製;以下同じ)15gを、メカノミル(MM-20N型、岡田精工社製)を用い、主軸回転数900rpmで、3分間混合して粉末製剤を製造した。この粉末製剤について、上記同様の方法により溶出率を測定した。なお、比較品としては、実施例1と同様のナプロキセン粉末を使用した。結果を併せて表2に示す。
Figure 0007419462000002
上記結果より、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合する場合において、ケイ酸カルシウムを使用すると、30分後のナプロキセンの溶出率が、実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合しない場合より高くなることが確認された。また、酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムを使用する場合、5分後のナプロキセンの溶出率が極めて高いことが確認された。
実 施 例 3
溶解性試験:
顆粒剤(1)
ナプロキセン14.0g、表3に記載の塩基性物質14.0g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 14.0gをメカノミル(MM-20N型、岡田精工社製)を用いて、主軸回転数900rpmで、3分間混合した。この混合末に、練合液として精製水を56g加え、メカノミルで3分間、主軸回転数900rpmで練合した。この練合物をステンレススクリーンで押し出した後、箱型乾燥機(エスペック社製)で、水分率2%以下になるまで乾燥させて造粒物を得た(造粒物の水分量は、赤外線水分計FD-800(ケット科学研究所社製、60℃、10分)により測定した;以下同じ)。
得られた造粒物を、26メッシュのステンレススクリーンで篩分し、それを通過した造粒物を、さらに150メッシュのステンレススクリーンで篩分し、スクリーン上に残ったものを回収し、100~600μmの整粒顆粒を得た。この整粒顆粒について、上記同様の方法により溶出率を測定した。結果を併せて表3に示す。
Figure 0007419462000003
上記結果より、顆粒製剤とした場合、塩基性物質として、特に炭酸水素カリウムや炭酸水素ナトリウムを使用すると、5分後の溶出率が極めて高く、15分後及び30分後においても高い溶出率が維持されることが確認された。
実 施 例 4
フィルムコーティング錠(1):
表4に記載の処方に従い、秤量した各成分を高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)に投入し、3分間混合した。次いで、処方1から処方5に対応する各混合末に適量の精製水をそれぞれ添加し、高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)にて、3分間練合した。次に、その練合物を押出造粒機(TDG-80型、ダルトン社製)を用いて造粒した。更に、得られた押出造粒物を流動層乾燥機(FLO-2型、フロイント産業社製)に投入し、造粒物中の水分が2%以下になるまで乾燥したのち、コーミルにて整粒を行い、顆粒を得た。
Figure 0007419462000004
次いで、得られた各顆粒900gに結晶セルロース140g、ステアリン酸マグネシウム10gを各々添加し、V型混合機(TCV-5型、徳寿工作所社製)にて混合し、打錠末1050gを得た。次に、ロータリー打錠機(VIRG0512型、菊水製作所社製)にて打錠を行い、ナプロキセン含量100mgの直径9.5mm、錠剤質量350mgの素錠を製造した。
次に、ヒプロメロース120g、ポリエチレングリコール 20gを精製水に溶解した後、タルク10g及び酸化チタン10gを分散して固形分濃度8%のフィルムコーティング液2000gを調製した。次いで、素錠500gをコーティング機(HC-LABO型、フロイント産業社製)に投入し、調製したフィルムコーティング液を噴霧してコーティングを行い、錠剤質量360mgの白色のフィルムコーティング錠を得た。
実 施 例 5
フィルムコーティング錠(2):
表5に記載の処方に従い、秤量した各成分を高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)に投入し、3分間混合した。次いで、処方6から処方10に対応する各混合末に適量の精製水をそれぞれ添加し、高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)にて、3分間練合、造粒した。次に、得られた造粒物を流動層乾燥機(FLO-2型、フロイント産業社製)に投入し、水分が2%以下になるまで乾燥したのち、コーミルにて整粒を行い、顆粒を得た。
Figure 0007419462000005
次いで、得られた各顆粒900gに結晶セルロース140g、ステアリン酸マグネシウム10gを各々添加し、V型混合機(TCV-5型、徳寿工作所社製)にて混合し、打錠末1050gを得た。次に、ロータリー打錠機(VIRG0512型、菊水製作所社製)にて打錠を行い、ナプロキセン含量100mgの直径9.5mm、錠剤質量350mgの素錠を製造した。
次に、ヒプロメロース120g、ポリエチレングリコール20gを精製水に溶解した後、タルク10g及び酸化チタン10gを分散して固形分濃度8%のフィルムコーティング液2000gを調製した。次いで、素錠500gをコーティング機(HC-LABO型、フロイント産業社製)に投入し、調製したフィルムコーティング液を噴霧してコーティングを行い、錠剤質量360mgの白色のフィルムコーティング錠を得た。
実 施 例 6
顆粒剤(2):
表6に記載の処方に従い、秤量した各成分を高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)に投入し、3分間混合した。次いで、処方11から処方15に対応する各混合末に適量の精製水をそれぞれ添加し、高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)にて、3分間練合した。次に、その練合物を押出造粒機(TDG-80型、ダルトン社製)を用いて造粒した。更に、得られた押出造粒物を流動層乾燥機(FLO-2型、フロイント産業社製)に投入し、造粒物中の水分が2%以下になるまで乾燥したのち、コーミルにて整粒を行い、顆粒を得た。
Figure 0007419462000006
次いで、得られた各顆粒800gにアスパルテーム10g、アセスルファムカリウム10g及びステアリン酸マグネシウム4gを各々添加し、V型混合機(TCV-5型、徳寿工作所社製)にて混合し、充填用顆粒末824gを得た。次に、アルミヒートシール包装を行い、ナプロキセン含量100mgで1包質量が1236mgの顆粒剤を得た。
実 施 例 7
顆粒剤(3):
表7に記載の処方に従い、秤量した各成分を高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)に投入し、3分間混合した。次いで、処方16から処方20に対応する各混合末に適量の精製水をそれぞれ添加し、高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)にて、3分間練合した。次に、得られた練合造粒物を流動層乾燥機(FLO-2型、フロイント産業社製)に投入し、造粒物中の水分が2%以下になるまで乾燥したのち、コーミルにて整粒を行い、顆粒を得た。
Figure 0007419462000007
次いで、得られた各顆粒800gにアスパルテーム10g、アセスルファムカリウム10g及びステアリン酸マグネシウム4gを各々添加し、V型混合機(TCV-5型、徳寿工作所社製)にて混合し、充填用顆粒末824gを得た。次に、アルミヒートシール包装を行い、ナプロキセン含量100mgで1包質量が1236mgの顆粒剤を得た。
実 施 例 8
硬カプセル剤(1):
表8に記載の処方に従い、秤量した各成分を高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)に投入し、3分間混合した。次いで、処方21から処方26に対応する各混合末に適量の精製水をそれぞれ添加し、高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)にて、3分間練合した。次に、その練合物を押出造粒機(TDG-80型、ダルトン社製)を用いて造粒した。更に、得られた押出造粒物を流動層乾燥機(FLO-2型、フロイント産業社製)に投入し、造粒物中の水分が2%以下になるまで乾燥したのち、コーミルにて整粒を行い、顆粒を得た。
Figure 0007419462000008
次いで、得られた各顆粒840gにステアリン酸マグネシウム8.4gを各々添加し、V型混合機(TCV-5型、徳寿工作所社製)にて混合し、充填用顆粒末848.4gを得た。次に、カプセル充填機(Liqufil-5型、クオリカプス社製)を用いて1号ゼラチンカプセルにカプセル充填を行い、ナプロキセン含量100mgで1カプセル内容物質量が303mgの硬カプセル剤を得た。
実 施 例 9
硬カプセル剤(2):
表9に記載の処方に従い、秤量した各成分を高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)に投入し、3分間混合した。次いで、処方27から処方32に対応する各混合末に適量の精製水をそれぞれ添加し、高速撹拌造粒機(VG-10型、パウレック社製)にて、3分間練合した。次に、得られた練合造粒物を流動層乾燥機(FLO-2型、フロイント産業社製)に投入し、造粒物中の水分が2%以下になるまで乾燥したのち、コーミルにて整粒を行い、顆粒を得た。
Figure 0007419462000009
次いで、得られた各顆粒840gにステアリン酸マグネシウム8.4gを各々添加し、V型混合機(TCV-5型、徳寿工作所社製)にて混合し、充填用顆粒末848.4gを得た。次に、カプセル充填機(Liqufil-5型、クオリカプス社製)を用いて1号ゼラチンカプセルにカプセル充填を行い、ナプロキセン含量100mgで1カプセル内容物質量が303mgの硬カプセル剤を得た。
実 施 例 10
顆 粒 剤(4)
ナプロキセン15.0g、炭酸水素ナトリウム15.0g及び表10に示す各種の水膨潤性ポリマー15.0gを、メカノミル(MM-20N型、岡田精工社製)に入れ、主軸回転数900rpmで3分間混合した。この混合末に、練合液として精製水60gを加え、メカノミルで3分間、主軸回転数900rpmで練合した。この練合物をステンレススクリーンで押し出した後、箱型乾燥機(エスペック社製)で水分率2%以下になるまで乾燥させて造粒物を得た。
Figure 0007419462000010
得られた造粒物を、26メッシュのステンレススクリーンで篩分し、それを通過した造粒物を、さらに150メッシュのステンレススクリーンで篩分し、スクリーン上に残ったものを回収し、100~600μmの整粒顆粒を得た。この整粒顆粒について、下記の方法により30分までの溶出率を測定した。結果を表11に示す。
< 溶出試験 >
日本薬局方溶出試験法第2法に従い、pH4.0の緩衝液900mLに、ナプロキセンとして100mg含有の各顆粒製剤を入れ、パドル回転数50rpm、温度37.0±0.5℃の条件下で溶出試験を行った。ナプロキセンの溶出量は、液体クロマトグラフ法により測定し、この溶出量から溶出率を算出した。
Figure 0007419462000011
実 施 例 11
顆粒剤(5):
ナプロキセン15.0g、表12に記載の量の炭酸水素ナトリウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをメカノミル(MM-20N型、岡田精工社製)に取り、これを主軸回転数900rpmで3分間混合した。この混合末に、練合液として精製水を50~60gを加え、メカノミルで3分間、主軸回転数900rpmで練合した。
この練合物をステンレススクリーンで押し出した後、箱型乾燥機(エスペック社製)で水分率2%以下になるまで乾燥させて造粒物を得た。得られた造粒物を、26メッシュのステンレススクリーンで篩分し、それを通過した造粒物を、さらに150メッシュのステンレススクリーンで篩分し、スクリーン上に残ったものを回収し、100~600μmの整粒顆粒を得た。この整粒顆粒について、実施例12の溶出試験により30分までの溶出率を測定した。この結果を表13に示す。
Figure 0007419462000012
Figure 0007419462000013
実 施 例 12
フィルムコーティング錠:
常法に従い、表14中の顆粒部に記載の配合成分と適量の精製水を使用して顆粒を得た。次いでこの顆粒に、錠剤添加部に記載の配合成分を加え、常法に従って、1錠360mgの素錠を打錠した。
一方、表14の被覆部に記載の各固形成分を、適量の精製水中に分散・懸濁させてコーティング液を調製した。このコーティング液を用い、常法に従って前記素錠をコーティングし、乾燥させて、1錠370mgのフィルムコーティング剤を得た。
得られたフィルムコーティング剤(ナプロキセンとして100mg含有)を、pH4.0の緩衝液900mlに入れ、日本薬局方溶出試験法第2法に準じて溶解性試験を行った(37℃、50rpm)。対照としては同量のナプロキセン原末を用いた。この結果を表15に示す。
Figure 0007419462000014
Figure 0007419462000015
本発明組成物は、ナプロキセンと塩基性化合物とを組み合わせて使用することにより、ナプロキセンの難溶性を改善したものである。さらに、これにセルロース系水膨潤性高分子を配合した場合は、製剤の崩壊性をも高めることができるものである。従って本発明は、即効性のある消炎解熱鎮痛等の作用を有する経口固形組成物を提供することができるものであり、製薬の分野において広く利用しうるものである。

Claims (6)

  1. ナプロキセンと塩基性化合物とセルロース系水膨潤性高分子を含有する経口固形組成物であって、
    塩基性化合物が、沈降炭酸カルシウムおよびケイ酸マグネシウムよりなる群から選ばれた一種以上である、
    ことを特徴とする経口固形組成物。
  2. ナプロキセンと塩基性化合物の配合比が、ナプロキセン1質量部に対して、塩基性化合物が0.001~100である請求項1記載の経口固形組成物。
  3. セルロース系水膨潤性高分子を1~99質量%含有する請求項1または2記載の経口固形組成物。
  4. セルロース系水膨潤性高分子が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、アルファー化デンプンおよびカルボキシメチルスターチナトリウムよりなる群から選ばれた一種以上である請求項1~3のいずれかに記載の経口固形組成物。
  5. 粉末製剤、顆粒剤または錠剤である請求項1~4のいずれかに記載の経口固形組成物。
  6. 解熱剤、鎮痛剤または消炎剤である請求項1~5のいずれかに記載の経口固形組成物。
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