以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤ1を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を構成する。
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチールあるいは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、リムフランジに対する左右のビード部の接触面を構成する。
[トレッド面]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。同図は、オールシーズン用タイヤのトレッド面を示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端である。
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の主溝21、22と、これらの主溝21、22に区画されて成る複数の陸部31~33とをトレッド面に備える。
主溝とは、摩耗末期を示すウェアインジケータを有する周方向溝であり、一般に、5.0[mm]以上の溝幅および7.5[mm]以上の溝深さを有する。
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における左右の溝壁の距離の最大値として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド踏面と溝壁の延長線との交点を基準として、溝幅が測定される。また、溝がタイヤ周方向にジグザグ状あるいは波状に延在する構成では、溝壁の振幅の中心線を基準として、溝幅が測定される。
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
例えば、図2の構成では、4本の主溝21、22がタイヤ赤道面CL上の点を中心として点対称に配置されている。また、これらの主溝21、22により、5列の陸部31~33が区画されている。また、1列の陸部31が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
しかし、これに限らず、主溝21、22がタイヤ赤道面CLを中心として左右非対称に配置されても良い(図示省略)。
また、図2の構成では、主溝21、22が、全体としてストレート形状を有し、左右の陸部31~33のエッジ部が主溝21、22側に突出することにより、各主溝21、22の溝壁がタイヤ周方向に向かってステップ状に変化している。
しかし、これに限らず、主溝21、22が、単純なストレート形状を有しても良いし、タイヤ周方向に屈曲あるいは湾曲しつつ延在するジグザグ形状あるいは波状形状を有しても良い(図示省略)。
ここでは、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の主溝22、22をショルダー主溝と呼ぶ。また、左右のショルダー主溝22、22を境界として、トレッド部センター領域およびトレッド部ショルダー領域を定義する。
また、左右のショルダー主溝22、22に区画されたタイヤ幅方向外側の左右の陸部33、33をショルダー陸部と呼ぶ。左右のショルダー陸部33、33は、左右のタイヤ接地端T、T上にそれぞれ配置される。また、左右のショルダー主溝22、22に区画されたタイヤ幅方向内側の左右の陸部32、32をミドル陸部と呼ぶ。したがって、ミドル陸部32は、ショルダー主溝22に隣接する。また、左右のミドル陸部32、32のタイヤ幅方向内側にある陸部31をセンター陸部と呼ぶ。
また、図2において、センター陸部31の最大接地幅Wb1が、タイヤ接地幅TWに対して0.09≦Wb1/TW≦0.15の関係を有する。また、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2が、タイヤ接地幅TWに対して0.13≦Wb2/TW≦0.19の関係を有する。また、ショルダー陸部33の最大接地幅Wb3が、タイヤ接地幅TWに対して0.17≦Wb3/TW≦0.23の関係を有する。
陸部の接地幅Wb1~Wb3は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときの陸部と平板との接触面におけるタイヤ軸方向の直線距離として測定される。
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の直線距離として測定される。
[センター陸部]
図3は、図2に記載した空気入りタイヤのセンター陸部31およびミドル陸部32を示す拡大図である。図4および図5は、図3に記載した切欠部411を示す説明図である。これらの図において、図4は、切欠部411の周辺の拡大図を示し、図5は、トレッド踏面における切欠部411のエッジ部の輪郭線を示している。図6は、図3に記載したセンター陸部31の断面図である。同図は、センターサイプ512に沿ったセンター陸部31の断面図を示している。
図2に示すように、センター陸部31は、タイヤ周方向に連続するリブであり、貫通ラグ溝を備えていない。かかる構成では、センター陸部31がリブなので、センター陸部がブロック列である構成(図示省略)と比較して、センター陸部31を通過する放射音が低減されて、タイヤの騒音性能が向上する。また、センター陸部31の剛性が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が確保される。なお、後述するセンターサイプ511~513は、タイヤ接地時に閉塞するため、リブとしてのセンター陸部31の機能を阻害しない。
また、図2に示すように、センター陸部31は、複数の切欠部411を備える。
切欠部411は、センター陸部31のエッジ部に形成される。また、複数の切欠部411が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。また、センター陸部31が、左右のエッジ部のそれぞれに切欠部411を有する。これらの切欠部411により、センター陸部31のエッジ成分が確保されて、泥濘路でのタイヤのトラクション性が向上する。
切欠部411は、センター陸部31のエッジ部に形成されてセンター陸部31の踏面およびセンター主溝21の壁面に開口する凹部として定義される。切欠部411は、センター陸部31の踏面とセンター主溝21の壁面とを平面(例えば、C面取り)または曲面(例えば、R面取り)で接続する面取部であっても良いし、センター陸部31のエッジ部に開口する短尺な溝部であっても良い。
また、図3に示すように、切欠部411は、後述する第一および第二のミドルラグ溝421、422のうちの一方の溝中心線の延長線上に配置される。一方で、切欠部411は、他方の溝中心線の延長線上には配置されない。具体的に、センター陸部31が、第一および第二のミドルラグ溝421、422のうちの他方の溝中心線の延長線上にて、タイヤ周方向に分断されていない連続したエッジ部を有する。例えば、図3の構成では、切欠部411が、小さい交差角θ2をもつ第二ミドルラグ溝422の延長線上にのみ配置されている。一方で、第一ミドルラグ溝421の延長線上では、センター陸部31のエッジ部が、切欠部、溝あるいはサイプにより分断されておらず、センター主溝21に沿って連続して延在するプレーンなエッジ部を有している。
なお、上記に限らず、切欠部411が、第一ミドルラグ溝421の延長線上に配置され、第二ミドルラグ溝422の延長線上に配置されない構成が採用されても良い(図示省略)。
上記の構成では、センター陸部31のエッジ部が一方のミドルラグ溝422の延長線上に切欠部411を有することにより、タイヤ転動時におけるエッジ成分の連続性が高まり、タイヤのマッド性能が向上する。一方で、センター陸部31のエッジ部が他方のミドルラグ溝421の延長線上に切欠部を有さない、すなわちタイヤ周方向に分断されていない連続したエッジ部を有することにより、タイヤの騒音性能が向上する。上記により、タイヤのマッド性能および騒音性能が両立する。
また、図3において、切欠部411の周方向長さLcが、後述する第二ミドルラグ溝422のピッチ長P2に対して0.15≦Lc/P2≦0.45の関係を有することが好ましく、0.25≦Lc/P2≦0.35の関係を有することがより好ましい。
切欠部411の周方向長さLcは、切欠部411全体のタイヤ周方向への延在距離として測定される。
また、図4において、切欠部411の最大幅Wcが、センター陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.05≦Wc/Wb1≦0.25の関係を有することが好ましく、好ましく、0.10≦Wc/Wb1≦0.15の関係を有することがより好ましい。
切欠部411の最大幅Wcは、切欠部411全体のタイヤ幅方向への最大延在長さとして測定される。
また、図4において、切欠部411の最大幅位置と、後述するミドルブロック321、322(図3参照)のうち切欠部411に対向する第一ミドルブロック321の鋭角側の角部とのタイヤ周方向の距離D1が、センター主溝21に対する第一ミドルラグ溝421の開口幅W21cに対して0≦D1/W21c≦0.30の関係を有することが好ましく、0.03≦D1/W21c≦0.23の関係を有することがより好ましい。したがって、切欠部411の最大幅位置と第一ミドルブロック321の鋭角側の角部とが、タイヤ周方向で略同位置にある。
切欠部411の最大幅位置は、切欠部411の最大幅Wcの測定点に一致する。
また、図4に示すように、切欠部411が、トレッド平面視にて、タイヤ周方向に凸となるV字形状(ないしはフック状)のエッジ部を有する。また、切欠部411が、V字形状の頂部をタイヤ周方向に向けて配置される。また、図5に示すように、切欠部411のV字形状が、タイヤ周方向に対して相互に同一方向に傾斜する長尺部4111と短尺部4112とを接続して成る。また、切欠部411のV字形状の屈曲角θcが、10[deg]≦θ≦70[deg]の範囲にあることが好ましく、15[deg]≦θc≦55[deg]の範囲にあることがより好ましく、20[deg]≦θc≦43[deg]の範囲にあることがさらに好ましい。このように、切欠部411がタイヤ周方向に凸となる鋭角なV字形状を有することにより、切欠部411の長尺部4111が、第一ミドルラグ溝421の溝中心線の延長線(図3参照)に沿って延在する。
切欠部411の屈曲角θcは、トレッド踏面における切欠部411の開口部の輪郭線にて測定される。また、図5に示すように、切欠部411が湾曲した辺を有する場合には、屈曲角θcが、V字形状の頂点における湾曲した辺の接線を測定点として測定される。なお、屈曲角θcは、ピッチバリエーション構造を有するトレッドパターンのピッチ長との関係で適宜設定され得る。
また、図5の構成では、切欠部411のV字形状の長尺部4111が円弧であり、短尺部4112が直線である。しかし、これに限らず、切欠部411のV字形状の2辺の双方が、直線であっても良いし、円弧であっても良い(図示省略)。また、切欠部411が、円形、楕円形、三角形、矩形、台形などの任意の形状を有し得る(図示省略)。
また、図6において、切欠部411の最大深さHcが、センター主溝21の最大溝深さHg1に対して0.30≦Hc/Hg1≦0.70の関係を有することが好ましく、0.40≦Hc/Hg1≦0.60の関係を有することがより好ましい。また、切欠部411の壁面の最大傾斜角αcが、20[deg]≦αc≦50[deg]の範囲にあることが好ましい。
切欠部411の最大深さHcは、トレッド踏面から切欠部411の最大深さ位置までの距離として測定される。
また、図3の構成では、センター陸部31が、複数のサイプ511~513を備える。具体的には、第一サイプ511が、ジグザグ形状を有し、切欠部411に開口してセンター陸部31をタイヤ幅方向に貫通する。また、第二サイプ512が、ジグザグ形状を有し、切欠部411に開口することなく、センター陸部31をタイヤ幅方向に貫通する。また、第三サイプ513が、一方の端部にてセンター陸部31のエッジ部に開口し、他方の端部にてセンター陸部31の内部で終端する。また、これらのサイプ511~513が、タイヤ周方向に対して同一方向に傾斜する。
サイプ511~513は、トレッド踏面に形成された切り込みであり、1.5[mm]未満のサイプ幅および2.0[mm]以上のサイプ深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。
また、図4において、切欠部411のV字形状の頂部から切欠部411に対する第一サイプ511の接続点までのタイヤ周方向の距離D2が、切欠部411の最大長さLcに対して0.30≦D2/Lc≦0.80の関係を有することが好ましく、0.50≦D2/Lc≦0.70の関係を有することがより好ましい。これにより、切欠部411の配置位置におけるセンター陸部31の剛性が適正に確保される。
また、図6において、切欠部411に開口する第一サイプ511の最大深さHsが、センター主溝21の最大溝深さHg1に対して0.60≦Hs/Hg1≦0.80の関係を有する。
[ミドル陸部]
図7および図8は、図3に記載したミドル陸部32の断面図である。これらの図において、図7は、第一ミドルラグ溝421に沿ったミドル陸部32の断面図を示し、図8は、第二ミドルラグ溝422に沿ったミドル陸部32の断面図を示している。
図2に示すように、ミドル陸部32は、第一および第二のミドルラグ溝421、422と、これらのミドルラグ溝421、422に区画されて成る第一および第二のミドルブロック321、322とを備える。
ミドルラグ溝421、422は、ミドル陸部32をタイヤ幅方向に貫通して、左右のセンター主溝21およびショルダー主溝22に開口する。また、これらのミドルラグ溝421、422が、相互に異なる傾斜角を有し、また、タイヤ周方向に対して同一方向に傾斜する。また、第一および第二のミドルラグ溝421、422が、タイヤ周方向に交互に配置される。
また、図3に示すように、センター主溝21に対する第一ミドルラグ溝421の交差角θ1が、第二ミドルラグ溝422の交差角θ2に対してθ2<θ1の関係を有する。また、第一ミドルラグ溝421の交差角θ1が50[deg]≦θ1≦75[deg]の範囲にあり、第二ミドルラグ溝422の交差角θ2が15[deg]≦θ2≦40[deg]の範囲にある。また、交差角θ1、θ2の差が10[deg]≦θ1-θ2の範囲にあることが好ましく、15[deg]≦θ1-θ2の範囲にあることがより好ましい。
また、図3の構成では、第一および第二のミドルラグ溝421、422の溝中心線が、緩やかな円弧形状を有し、タイヤ赤道面CL側に向かってタイヤ周方向に対する傾斜角を徐々に減少させている。また、第一および第二のミドルラグ溝421、422の溝中心線の延長線が、センター陸部31の内部で相互に交差している。
ミドルラグ溝421、422の交差角θ1、θ2は、センター主溝21の溝中心線と、ミドルラグ溝421、422の溝中心線の延長線とのなす角として測定される。
上記の構成では、ミドル陸部32がブロック列であることにより、泥濘路でのトラクション性が向上して、タイヤのマッド性能が向上する。一方で、ミドル陸部32のミドルラグ溝421、422が相互に異なる交差角θ1、θ2を有することにより、気柱共鳴音の周波数が分散されて、タイヤの騒音性能が向上する。
また、図3において、第一および第二のミドルラグ溝421、422の溝幅W21、W22が、2.0[mm]以上6.0[mm]以下の範囲にある。また、図3に示すように、第一および第二のミドルラグ溝421、422の溝幅W21、W22が、タイヤ幅方向の相互に異なる方向に向かって単調増加する。これにより、気柱共鳴音が分散されて、タイヤの騒音性能が高まる。また、ミドル陸部32の剛性バランスが確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が高まる。
また、図3の構成では、第一ミドルラグ溝421の溝幅W21が、ショルダー主溝22側に向かって単調増加している。具体的に、第一ミドルラグ溝421がショルダー主溝22側の領域に拡幅部4211を有することにより、第一ミドルラグ溝421の溝幅W21がショルダー主溝22側の開口部で拡幅されている。一方で、第二ミドルラグ溝422の溝幅W22が、センター主溝21側に向かって単調増加している。具体的に、第二ミドルラグ溝422がセンター主溝21側の領域に拡幅部4221を有することにより、第二ミドルラグ溝422の溝幅W22がショルダー主溝22側の開口部で拡幅されている。これにより、ミドル陸部32の剛性バランスが確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が高められている。
また、上記の構成では、センター主溝21に対する第二ミドルラグ溝422の開口幅W22c(図4参照)が、ショルダー主溝22に対する第二ミドルラグ溝422の溝幅W22s(図3参照)に対して1.15≦W22c/W22s≦1.50の関係を有することが好ましく、1.17≦W22c/W22s≦1.40の関係を有することがより好ましい。かかる構成では、延長線上に切欠部411を有する第二ミドルラグ溝422の溝幅W21が、センター主溝21側に向かって単調増加する。これにより、ミドル陸部32の第二ミドルラグ溝422からセンター陸部31の切欠部411に至る溝容積の連続性が増加して、スノートラクション性が効率的に向上する。
また、図4において、センター主溝21に対する第二ミドルラグ溝422の開口幅W22cが、センター主溝21に対する第一ミドルラグ溝421の開口幅W21cに対して1.15≦W22c/W21c≦1.50の関係を有することが好ましく、1.17≦W22c/W21c≦1.40の関係を有することがより好ましい。
また、後述する図9において、ショルダー主溝22に対する第一および第二のミドルラグ溝421、422の開口幅W21s、W22sが、0.15≦W21s/W22s≦0.50の関係を有することが好ましく、1.17≦W21s/W22s≦0.40の関係を有することがより好ましい。
また、図7および図8において、第一および第二のミドルラグ溝421、422の溝深さH21、H22が、2.5[mm]以上9.0[mm]以下の範囲にある。また、第一および第二のミドルラグ溝421、422の溝深さH21、H22の最大値が、ショルダー主溝22の最大溝深さHg2に対して60[%]以上85[%]以下の範囲にあることが好ましい。また、図7および図8に示すように、第一および第二のミドルラグ溝421、422の溝深さH21、H22が、タイヤ幅方向の相互に異なる方向に向かって単調増加する。これにより、気柱共鳴音が分散されて、タイヤの騒音性能が高まる。また、ミドル陸部32の剛性バランスが確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が高まる。
また、図7の構成では、第一ミドルラグ溝421の溝深さH21が、センター主溝21側に向かって単調減少する。具体的に、第一ミドルラグ溝421がセンター主溝21側の領域に底上部4212を有することにより、センター主溝21に対する第一ミドルラグ溝421の開口部の溝深さH21cが、ショルダー主溝22に対する第一ミドルラグ溝421の開口部の溝深さH21sよりも浅くなっている。また、センター主溝21に対する第一ミドルラグ溝421の開口部の溝深さH21cが、ショルダー主溝22の最大溝深さHg2に対して30[%]以上60[%]以下の範囲にあることが好ましい。
一方で、図8に示すように、第二ミドルラグ溝422の溝深さH22が、ショルダー主溝22側に向かって単調減少する。具体的に、第二ミドルラグ溝422がショルダー主溝22側の領域に底上部4222を有することにより、ショルダー主溝22に対する第二ミドルラグ溝422の開口部の溝深さH22sが、センター主溝21に対する第二ミドルラグ溝422の開口部の溝深さH22cよりも浅くなっている。また、ショルダー主溝22に対する第二ミドルラグ溝422の開口部の溝深さH22sが、ショルダー主溝22の最大溝深さHg2に対して30[%]以上60[%]以下の範囲にあることが好ましい。
第一および第二のミドルブロック321、322は、上記のように、隣り合う第一および第二のミドルラグ溝421、422に区画されて成る。また、第一および第二のミドルブロック321、322が、タイヤ周方向に交互に配置される。また、図3に示すように、第一および第二のミドルラグ溝421、422が相互に異なる傾斜角θ1、θ2を有することにより、第一および第二のミドルブロック321、322が相互に異なる形状を有する。これにより、タイヤ接地時における気柱共鳴音が分散されて、車外騒音が低減される。
また、図3の構成では、第一および第二のミドルブロック321、322が、タイヤ幅方向に相互にオフセットして配置されている。このため、隣り合うミドルブロック321、322のうちの一方のブロック321のエッジ部が、センター主溝21側に突出している。これに対して、センター陸部31のエッジ部が上記した切欠部411を有することにより、センター主溝21がミドルブロック321の突出位置にて拡幅される。これにより、センター主溝21の溝幅がタイヤ周方向に均一化されて、タイヤの排水性能が確保される。
また、図2および図3に示すように、第一および第二のミドルブロック321、322が、1本の周方向細溝323、324をそれぞれ備える。
周方向細溝323、324は、ミドルブロック321、322をタイヤ周方向にそれぞれ貫通して、第一および第二のミドルラグ溝421、422に開口する。また、周方向細溝323、324の溝幅が1.5[mm]以上4.0[mm]以下の範囲にあり、溝深さH23(図7および図8参照)がショルダー主溝22の最大溝深さHg2に対して0.30≦H23/Hg2≦0.60の関係を有する。これらの周方向細溝323、324は、タイヤ接地時に塞がることなく開口して、ミドルブロック321、322をタイヤ幅方向に分断する。これにより、タイヤ接地時におけるミドルブロック321、322の接地面圧が均一化される。
また、図3の構成では、周方向細溝323、324が、ミドルブロック321、322のタイヤ幅方向の中央領域(ブロック幅の1/3の領域)に配置されて、ミドルブロック321、322の踏面をタイヤ幅方向に略二等分している。また、周方向細溝323、324が、タイヤ幅方向に振幅をもつZ字形状ないしはクランク形状の屈曲部を有している。また、屈曲部の屈曲角φが、80[deg]≦φ≦100[deg]の範囲にあることが好ましく、直角あるいは鈍角、すなわち90[deg]≦φ≦100[deg]の範囲にあることがより好ましい。これにより、ブロック321、322のエッジ成分が増加して、タイヤのトラクション性が向上する。
また、図3に示すように、ミドルブロック321、322が、周方向細溝323、324に区画されて成る一対の小ブロック(図中の符号省略)を備える。このとき、一対の小ブロックのタイヤ周方向(すなわち、第一および第二のミドルラグ溝421、422)のエッジ部のうちの少なくとも一方が、面一に配置されることが好ましい。例えば、図3の構成では、ミドルブロック321、322のそれぞれにおいて、一対の小ブロックの図中下方のエッジ部が、段差を有することなく1つの円弧に沿って面一に配置されている。一方で、第一および第二のミドルラグ溝421、422が片側に拡幅部4211、4221を有することにより、一対の小ブロックの図中上方のエッジ部が、ステップ状の段差部を有している。
また、図3において、ミドルブロック321、322の各小ブロックが、均一な接地面積を有する。具体的には、隣り合うミドルブロック321、322を構成する4つの小ブロックの接地面積の最大値と最小値との比が100[%]以上120[%]以下の範囲にあることが好ましく、100[%]以上110[%]以下の範囲にあることがより好ましい。これにより、小ブロックの接地面積が均一化されて、タイヤの偏摩耗が抑制される。
また、図3の構成では、ミドルブロック321、322の小ブロックのそれぞれが、サイプ521を有する。また、各サイプ521が、一方の端部にてミドルブロック321、322の主溝21、22側のエッジ部で開口し、他方の端部にてミドルブロック321、322の内部で終端するセミクローズド構造を有する。これにより、ミドルブロック321、322の剛性が確保され、また、タイヤのマッド性能が高められている。
また、図2において、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2が、センター陸部31の最大接地幅Wb1に対して1.30≦Wb2/Wb1≦1.70の関係を有することが好ましく、1.40≦Wb2/Wb1≦1.60の関係を有することより好ましい。かかる構成では、ミドル陸部32がセンター陸部31に対して幅広構造を有することにより、ブロック列の剛性が確保される。また、幅狭構造を有するセンター陸部31がリブであることにより、センター陸部31の剛性がミドル陸部32の剛性に対して均一化される。これらにより、タイヤの耐偏摩耗性が向上する。
また、図2の構成では、後述する図10に示すように、隣り合うミドルブロック321、322のショルダー主溝21側のエッジ部が、タイヤ幅方向に相互にオフセットして配置される。また、ミドルブロック321、322のオフセット量G2が、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2(図2参照)に対して0.04≦G2/Wb2≦0.20の範囲にあることが好ましい。これにより、タイヤのスノートラクション性が向上する。
オフセット量G2は、ミドルブロック321、322のショルダー主溝21側のエッジ部の最大幅位置を測定点として測定される。
[ショルダー陸部]
図9は、図2に記載した空気入りタイヤのミドル陸部32およびショルダー陸部33を示す拡大図である。図10は、図9に記載したショルダー主溝21の左右のエッジ部を示す説明図である。図11および図12は、図10に記載したショルダー陸部33のエッジ部の段差部331、332を示す拡大図である。図13は、図11に記載した段差部331を示すA視断面図である。
図2に示すように、ショルダー陸部33は、タイヤ周方向に連続するリブであり、貫通ラグ溝を備えていない。かかる構成では、ショルダー陸部33がリブなので、ショルダー陸部がブロック列である構成(図示省略)と比較してショルダー陸部33を通過する放射音が低減されて、タイヤの騒音性能が向上する。また、ショルダー陸部33の剛性が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が確保される。なお、後述するショルダーサイプ531~533は、タイヤ接地時に閉塞するため、リブとしてのショルダー陸部33の機能を阻害しない。
また、図2に示すように、ショルダー陸部33は、複数のショルダーラグ溝43を備える。これらのショルダーラグ溝43は、タイヤ幅方向に延在し、一方の端部にてタイヤ接地端Tに開口すると共に、他方の端部にてショルダー陸部33内で終端する。また、複数のショルダーラグ溝43が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。また、ショルダーラグ溝43のピッチ数が、ミドル陸部32の第一および第二のミドルラグ溝421、422のピッチ数の2倍である。
また、図2に示すように、ショルダーラグ溝43が、ミドル陸部32の第一および第二のミドルラグ溝421、422に対して逆方向に傾斜する。また、図9において、ショルダーラグ溝43のタイヤ周方向に対する傾斜角θ3が、60[deg]≦θ3≦85[deg]の範囲にあることが好ましい。
ショルダーラグ溝43の傾斜角θ3は、タイヤ接地領域におけるショルダーラグ溝43の両端部を通る仮想直線とタイヤ周方向とのなす角として測定される。
また、図9において、ショルダーラグ溝43の最大溝幅W3が、2.5[mm]≦W3≦7.0[mm]の範囲にある。また、図13において、ショルダーラグ溝43の最大溝深さH3が、ショルダー主溝22の最大溝深さHg2に対して0.60≦H3/Hg2≦0.85の関係を有する。また、ショルダーラグ溝43の溝幅および溝深さが、ショルダー陸部33内の終端部に向かって減少する。
また、図9において、タイヤ接地面内におけるタイヤ幅方向へのショルダーラグ溝43の延在長さL31が、ショルダー陸部33の最大接地幅Wb3に対して0.70≦L31/Wb3≦0.95の関係を有することが好ましく、0.75≦L31/Wb3≦0.85の関係を有することがより好ましい。
また、図9に示すように、ショルダー陸部33は、第一から第三のサイプ531、532、533を備える。
サイプ531~533は、トレッド踏面に形成された切り込みであり、1.5[mm]未満のサイプ幅および2.0[mm]以上のサイプ深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。
第一サイプ531は、タイヤ幅方向に延在して、ショルダーラグ溝43の終端部とショルダー主溝21とを接続する。第一サイプ531がタイヤ接地時に閉塞することにより、ショルダーラグ溝43とショルダー主溝21との連通が遮断されて、ショルダー陸部33を通過する放射音が低減される。
第二サイプ532は、タイヤ幅方向に延在して、一方の端部にてショルダー主溝21に開口し、他方の端部にてショルダー陸部33内で終端する。第三サイプ533は、第二サイプ532の延長線上に配置され、タイヤ幅方向に延在して、両端部にてショルダー陸部33内で終端する。また、第三サイプ533が第二サイプ532に対して離間して配置される。また、隣り合う第二サイプ532および第三サイプ533のタイヤ幅方向への延在長さ(図中の寸法記号省略)の総和が、ショルダー陸部33の最大接地幅Wb3に対して60[%]以上90[%]以下の範囲にあることが好ましい。
また、図2に示すように、ショルダー陸部33のショルダー主溝22側のエッジ部が、トレッド平面視にてステップ状に屈曲しつつタイヤ周方向に延在する。具体的には、ショルダー陸部33のエッジ部が、タイヤ幅方向に相互にオフセットしつつタイヤ周方向に対して平行に延在する第一および第二の直線部と、隣り合う第一および第二の直線部を接続する段差部331、332(図10参照)とから構成される。また、エッジ部のステップ形状のピッチ数が、ショルダーラグ溝43のピッチ数に等しい。
また、図2に示すように、ショルダー陸部33のエッジ部のステップ形状が、ミドル陸部32の第一および第二のミドルラグ溝421、422の開口位置にてショルダー主溝22に対して凹となる。また、ステップ形状の凹部が、ミドルラグ溝421、422の左右の溝壁の延長線の全域を含むように配置されることが好ましい(図10参照)。これにより、ミドルラグ溝421、422の開口位置におけるショルダー主溝22の溝容積が拡大されて、タイヤのトラクション性能が向上する。
また、図10において、段差部331、332の段差量G3が、ショルダー陸部33の最大接地幅Wb3(図2参照)に対して0.04≦G3/Wb3≦0.20の範囲にあることが好ましい。これにより、タイヤのスノートラクション性が向上する。
また、図13に示すように、段差部331(332)の最大深さH31(H32)が、ショルダー主溝21の最大溝深さHg2に対して0.80≦H31/Hg2≦1.00の関係を有することが好ましく、0.90≦H31/Hg2≦1.00の関係を有することがより好ましい。図13の構成では、段差部331、332の最大深さH31がショルダー主溝21の最大溝深さHg2に等しい。したがって、ショルダー主溝21の溝壁がステップ状の屈曲することにより、段差部331、332が形成されている。
段差部331、332の最大深さH31、H32は、ショルダー陸部33の踏面から段差部331、332の最大深さ位置までの距離として測定される。
また、図10に示すように、第一段差部331が、ショルダーラグ溝43の延長線上に配置される。また、ショルダーラグ溝43の終端部と第一段差部331の立ち上げ部とが、第一サイプ531を介して接続される。また、第一段差部331が、ミドルブロック321のショルダー主溝21側のエッジ部に対向する位置に配置される。具体的には、ミドルブロック321のショルダー主溝21側の角部から第一段差部331までのタイヤ周方向の距離D31が、ミドルブロック321のショルダー主溝21側のエッジ長L21に対して0.30≦D31/L21≦0.70の範囲にある。
また、図11において、第一段差部331のエッジ部のタイヤ周方向に対する傾斜角β1が、100[deg]≦β1≦160[deg]の範囲にある。特に図11の構成では、傾斜角β1が鈍角となっている。また、図12において、第二段差部332のエッジ部のタイヤ周方向に対する傾斜角β2が、50[deg]≦β2≦80[deg]の範囲にある。特に図12の構成では、傾斜角β2が鋭角となっている。
また、図2において、ショルダー陸部33の最大接地幅Wb3が、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2に対して1.10≦Wb3/Wb2≦1.30の関係を有することが好ましく、1.15≦Wb3/Wb2≦1.25の関係を有することより好ましい。これにより、リブであるショルダー陸部33とブロック列であるミドル陸部32との最大接地幅Wb3、Wb2の比Wb3/Wb2が適正化されて、タイヤの偏摩耗が抑制される。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、一対のセンター主溝21、21および一対のショルダー主溝22、22と、これらのセンター主溝21およびショルダー主溝22に区画されて成る単一のセンター陸部31、一対のミドル陸部32、32および一対のショルダー陸部33、33とを備える(図2参照)。また、ミドル陸部32が、ミドル陸部32をタイヤ幅方向に貫通する第一および第二のミドルラグ溝421、422と、第一および第二のミドルラグ溝421、422に区画されて成る複数のミドルブロック321、322とを備える。また、センター主溝21に対する第一ミドルラグ溝421の交差角θ1が、第二ミドルラグ溝422の交差角θ2に対してθ2<θ1の関係を有する(図3参照)。また、ショルダー陸部33が、タイヤ周方向に連続するリブである。
かかる構成では、(1)ミドル陸部32がブロック列であることにより、泥濘路でのトラクション性が向上して、タイヤのマッド性能が向上する。一方で、(2)ミドル陸部32のミドルラグ溝421、422が相互に異なる交差角θ1、θ2を有することにより、気柱共鳴音の周波数が分散されて、タイヤの騒音性能が向上する。また、(3)ショルダー陸部33がリブなので、ショルダー陸部がブロック列である構成と比較してショルダー陸部33を通過する放射音が低減されて、タイヤの騒音性能が向上する。これにより、タイヤのマッド性能および騒音性能が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダー陸部33が、一方の端部にてタイヤ接地端Tに開口すると共に他方の端部にてショルダー陸部33内で終端するショルダーラグ溝43を備える(図2参照)。かかる構成では、ショルダーラグ溝43のエッジ成分により、トラクション性が向上する利点があり、また、ショルダーラグ溝43がショルダー陸部33内で終端することにより、タイヤの騒音性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ接地面内におけるタイヤ幅方向へのショルダーラグ溝43の延在長さL31が、ショルダー陸部33の最大接地幅Wb3に対して0.70≦L31/Wb3≦0.95の関係を有する(図9参照)。これにより、ショルダーラグ溝43の延在長さL31が適正化される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダーラグ溝43の終端部とショルダー主溝22とを接続するサイプ531を備える(図9参照)。かかる構成では、ショルダー陸部33の剛性がサイプ531により低減されて、走行路面に対するショルダー陸部33の接地面の追従性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダー陸部33のショルダー主溝22側のエッジ部が、トレッド平面視にてステップ状に屈曲しつつタイヤ周方向に延在する(図2参照)。これにより、ショルダー陸部33のエッジ成分が増加して、タイヤのトラクション性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、上記ステップ形状が、第一および第二のミドルラグ溝421、422の開口位置にてショルダー主溝22に対して凹となる(図2参照)。これにより、ミドルラグ溝421、422の開口位置におけるショルダー主溝22の溝容積が拡大されて、タイヤのトラクション性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダー陸部33が、一方の端部にてタイヤ接地端Tに開口すると共に他方の端部にてショルダー陸部33内で終端するショルダーラグ溝43を備える(図2参照)。また、上記ステップ形状の段差部331が、ショルダーラグ溝43の延長線上に配置される(図10参照)。これにより、ショルダーラグ溝43と段差部331との位置関係が適正化されて、タイヤのトラクション性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダー陸部33が、一方の端部にてタイヤ接地端Tに開口すると共に他方の端部にてショルダー陸部33内で終端するショルダーラグ溝43を備える(図2参照)。また、上記ステップ形状の段差部332が、隣り合うショルダーラグ溝43、43の間に配置される(図10参照)。これにより、ショルダーラグ溝43と段差部331との位置関係が適正化されて、タイヤのトラクション性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、上記ステップ形状の段差部が、タイヤ周方向に対して鈍角な傾斜角β1をもつ第一段差部331と、タイヤ周方向に対して鋭角な傾斜角β2をもつ第二段差部332とを含む(図10~図12参照)。これにより、段差部331、332間における排泥性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、隣り合うミドルブロック321、322のショルダー主溝22側のエッジ部が、タイヤ幅方向に相互にオフセットして配置される(図2参照)。これにより、これにより、ミドル陸部32のエッジ成分が増加して、タイヤのトラクション性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、第一および第二のミドルラグ溝421、422の溝幅W21、W22が、タイヤ幅方向の相互に異なる方向に向かって単調増加する(図3参照)。これにより、気柱共鳴音が分散されて、タイヤの騒音性能が高まる利点がある。また、ミドル陸部32の剛性バランスが確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が高まる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、第一ミドルラグ溝421の溝幅W21が、ショルダー主溝22側に向かって単調増加し、且つ、第二ミドルラグ溝422の溝幅W22が、センター主溝21側に向かって単調増加する(図3参照)。かかる構成では、延長線上に切欠部411を有する第二ミドルラグ溝422の溝幅W21が、センター主溝21側に向かって単調増加する。これにより、ミドル陸部32の第二ミドルラグ溝422からセンター陸部31の切欠部411に至る溝容積の連続性が増加して、トラクション性が効率的に向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、第一および第二のミドルラグ溝421、422の溝深さH21、H22が、タイヤ幅方向の相互に異なる方向に向かって単調減少する(図7および図8参照)。これにより、気柱共鳴音が分散されて、タイヤの騒音性能が高まる利点がある。また、ミドル陸部32の剛性バランスが確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が高まる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ミドル陸部32が、ミドルブロック321、322をタイヤ周方向に貫通すると共に屈曲部を有する周方向細溝323を備える(図2参照)。これにより、タイヤのトラクション性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダー陸部33の最大接地幅Wb3が、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2に対して1.10≦Wb3/Wb2≦1.30の関係を有する(図2参照)。これにより、リブであるショルダー陸部33とブロック列であるミドル陸部32との最大接地幅Wb3、Wb2の比Wb3/Wb2が適正化されて、タイヤの偏摩耗が抑制される。
図14は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)マッド性能および(2)騒音性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ285/60R18 116Vの試験タイヤがリムサイズ18×8Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤに230[kPa]の空気圧およびJATMA規定の最大負荷が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である排気量3.5[L]の四輪駆動のSUV( Sport Utility Vehicle)車の総輪に装着される。
(1)マッド性能に関する評価では、試験車両が試験場を走行し、未舗装の岩石路での登坂性および泥濘路での走破性についてテストドライバーが官能評価を行う。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。また、数値が98以上であれば、性能が適性に維持されているといえる。
(2)騒音性能に関する評価では、試験車両がISO(International Organization for Standardization)試験路を速度80[km/h]で走行して、その通過騒音(車外騒音)の音圧レベルが測定されて、評価が行われる。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど音圧レベルが低くて、好ましい。
実施例の試験タイヤは、図1および図2の構成を備え、ショルダー陸部33がタイヤ周方向に連続するリブである。また、タイヤ接地幅TWが190[mm]であり、センター陸部31の最大接地幅Wb1が22[mm]であり、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2が32[mm]であり、ショルダー陸部33の最大接地幅Wb3が38[mm]である。ショルダー主溝22の溝深さHg2が9.0[mm]である。
従来例の試験タイヤは、図1および図2の構成において、センター陸部31およびショルダー陸部33がラグ溝による分断されたブロック列である。
試験結果に示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤのマッド性能および騒音性能が両立することが分かる。