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JP7377741B2 - 蓄熱ボード - Google Patents

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JP7377741B2 JP2020033354A JP2020033354A JP7377741B2 JP 7377741 B2 JP7377741 B2 JP 7377741B2 JP 2020033354 A JP2020033354 A JP 2020033354A JP 2020033354 A JP2020033354 A JP 2020033354A JP 7377741 B2 JP7377741 B2 JP 7377741B2
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Description

本発明は、遮音性を有した蓄熱ボードに関する。
従来から、遮音性を高めるために、裏面に複数の溝を形成した木質系基材と、木質系基材の裏面に貼り付けられた緩衝シートと、を備えた遮音床が提案されている(例えば特許文献1参照)。この遮音床によれば、木質系基材の表面に衝撃音が発生すると、この衝撃音を、木質系基材の表面から木質系基材の裏面側に形成された溝で低減することができる。
特開2015-135017号公報
ところで、ボードの蓄熱性を高めるために、蓄熱シートを用いることがある。ここで、特許文献1に示す遮音床などの遮音性を有したボートに対して、蓄熱シートを適用した場合、木質系基材の表面側から熱が入熱されるため、蓄熱シートを木質系基材と緩衝シートとの間に配置することになる。この場合、木質系基材の裏面に蓄熱シートを貼着することになるが、ボードの表面に発生する衝撃音が十分に低減できないことがわかった。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄熱性と遮音性との両立を図ることができる蓄熱ボードを提供することにある。
前記課題を鑑みて、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、蓄熱シートを用いた場合、特に低音の衝撃音(たとえば、125Hz~250Hz近傍の周波数領域の音)を低減することが難しいことがわかった。さらに、発明者らが検討を進めると、この衝撃音は、木質系基材の撓み(変形)により低減され易いことがわかった。しかしながら、上述したように、木質系基材の裏面全体に蓄熱シートを貼着してしまうと、蓄熱ボードの表面で低音の衝撃音が発生した際に、蓄熱シートにより木質系ボードの撓みを拘束してしまい、衝撃音を十分に低減することができないとの新たな知見を得た。
本発明は、発明者らによる新たな知見によるものであり、本発明に係る蓄熱ボードは、裏面に複数の溝が形成された木質系基材と、前記木質系基材の裏面側に配置された蓄熱シートと、前記蓄熱シートの裏面側に配置された緩衝シートと、を備える、遮音性を有した蓄熱ボードであって、前記蓄熱シートは、前記蓄熱シートよりも可撓性が高い可撓性シートで構成された保持部材の内部に保持されており、前記保持部材は、前記木質系基材と前記緩衝シートとに、貼着されており、前記保持部材のうち前記木質系基材に貼着された部分と、前記蓄熱シートとが、非拘束となる状態で、前記蓄熱シートが、前記保持部材に保持されていることを特徴とする。
本発明によれば、蓄熱ボードは、木質系基材の裏面側に、蓄熱シートを備えているので、蓄熱ボードの蓄熱性を高めることができる。さらに、蓄熱シートは、可撓性を有した保持部材の内部に保持され、かつ、保持部材のうち、前記木質系基材に貼着された部分と、蓄熱シートとが、非拘束となる状態で、蓄熱シートは、保持部材に保持されている。これにより、木質系基材の裏面には、蓄熱シートに非拘束の状態で、蓄熱シートよりも可撓性が高い可撓性シートが貼着されているため、木質系基材に蓄熱シートを直接貼着したものに比べて、木質系基材の撓みを拘束し難い。これにより、木質系基材の表面で低音の衝撃音が発生した場合であっても、木質系基材の撓みにより、衝撃音を十分に低減することができる。
ここで、たとえば、蓄熱シートは、1枚のシートからなってもよいが、より好ましい態様としては、蓄熱シートは、複数に分割された分割シートで構成されている。この態様によれば、蓄熱シートが、複数の分割シートで構成される。この態様によれば、木質系基材の表面で低音の衝撃音が発生した際に、木質系基材の撓みに伴い、分割シートが独立して撓むので、木質系基材が撓み易い。これにより、木質系基材の表面で低音の衝撃音が発生した場合であっても、その衝撃音を十分に低減することができる。
さらに、遮音性を確保することができるのであれば、蓄熱シートの分割位置は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記木質系基材は、短手方向と長手方向を有し、前記溝は、少なくとも前記短手方向に沿って複数形成されており、前記分割シートは、少なくとも前記短手方向に沿って前記蓄熱シートを複数に分割したシートである。
この態様によれば、少なくとも木質系基材の短手方向に沿って、溝が形成されているため、木質系基材は、長手方向に撓み易い。したがって、木質系基材の短手方向に沿って、蓄熱シートを分割するので、低音の衝撃音の発生時に、木質系基材の長手方向の撓みが、分割シートにより阻害され難い。これにより、木質系基材は長手方向に撓み易く、木質系基材の表面で発生した低音の衝撃音を十分に低減することができる。
ここで、木質系基材の裏面のうち、保持部材が拘束される領域は、蓄熱ボードの遮音性が阻害されないのであれば、特に限定されるものではないが、より好ましい態様としては、前記木質系基材は、短手方向と長手方向を有し、前記溝は、少なくとも前記短手方向に沿って複数形成されており、前記木質系基材の裏面には、接着剤を介して前記保持部材を拘束する拘束領域と、前記保持部材を拘束しない非拘束領域とが、前記長手方向に交互に設けられている。
この態様によれば、少なくとも木質系基材の短手方向に沿って、溝が形成されているため、木質系基材は、長手方向に撓み易い。したがって、木質系基材の裏面に、長手方向に拘束領域と非拘束領域とを交互に設けることにより、非拘束領域では、保持部材が拘束されないので、低音の衝撃音の発生時に、木質系基材の長手方向の撓みが、蓄熱シートにより阻害され難い。これにより、木質系基材は長手方向に撓み易く、木質系基材の表面で発生した低音の衝撃音を十分に低減することができる。
ここで、蓄熱シートが木質系基材に対して非拘束の状態を確保することができるのであれば、蓄熱シートの一部が、木質系基材に接触していてもよい。しかしながら、より好ましい態様としては、前記保持部材と前記蓄熱シートとの間のうち、少なくとも前記木質系基材側には、離型シートが配置されている。
この態様によれば、木質系基材側における保持部材と蓄熱シートとの間に離型シートが配置されているので、蓄熱シートが木質系基材の裏面に直接接触することがない。これにより、低音の衝撃音の発生時に、木質系基材の撓みが、蓄熱シートにより阻害され難い。これにより、木質系基材は長手方向に撓み易く、木質系基材の表面で発生した低音の衝撃音を十分に低減することができる。
ここで、低音の衝撃音の発生時に、木質系基材の長手方向の撓みを低減することができるのであれば、保持部材を構成する可撓性シートの材質は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記可撓性シートは、不織布である。不織布は、蓄熱シートに比べて伸び易く、可撓性も高いため、この態様によれば、可撓性シートを不織布にすることにより、可撓性シートを木質系基材の裏面に貼り付けても、低音の衝撃音の発生時に、木質系基材が撓み易く、低音の衝撃音を十分に低減することができる。
本発明に係る蓄熱ボードによれば、蓄熱性と遮音性との両立を図ることができる。
本発明の実施形態に係る蓄熱ボードの要部の模式的概念図である。 図1に係る蓄熱ボードを下方から視たときの分解斜視図である。 図2に示す蓄熱シートを保持部材で保持させる状態を説明するための分解斜視図である。 図3に示す蓄熱ボードの要部断面図である。 (a)および(b)は、変形例に係る蓄熱ボードを説明するための図であり、接着剤の塗布領域(拘束領域)を示した木質系基材の平面図である。 (a)および(b)は、変形例に係る蓄熱ボードを説明するための図であり、蓄熱シートの分割位置を示した図である。 変形例に係る蓄熱ボードを説明するための図であり、図2で示す蓄熱シートを保持部材で保持させる状態を説明するための分解斜視図である。 図7の変形例に係る蓄熱ボードの要部断面図である。
図1~図8を参照しながら、本発明の実施形態およびその変形例に係る蓄熱ボードを説明する。
1.蓄熱ボード1について
以下に蓄熱ボード1の構成を簡単に説明する。図1および図2に示すように、本実施形態に係る蓄熱ボード1は、遮音性と蓄熱性を有したボードであり、図1では、床材に適用した例を示しているが、例えば、壁材等の建材に適用されてもよい。蓄熱ボード1は、裏面2bに複数の溝25、25…が形成された木質系基材2と、木質系基材2の裏面2b側に配置された蓄熱シート3と、蓄熱シート3の裏面側に配置された緩衝シート4と、を備えている。なお、緩衝シート4の裏面には、裏面シート(図示せず)をさらに設けてもよい。
蓄熱シート3は、蓄熱シート3よりも可撓性が高い可撓性シート6aで構成された保持部材6の内部に保持されている。保持部材6は、木質系基材2と緩衝シート4とに、貼着されている。保持部材6のうち木質系基材2に貼着された貼着部分6bと、蓄熱シート3とが、非拘束となる状態で、蓄熱シート3が、保持部材6に保持されている。さらに、保持部材6のうち木質系基材2に貼着された貼着部分6bと、蓄熱シート3との間には、離型シート7が配置されている。以下の各構成について簡単に説明する。
1-2.木質系基材2について
木質系基材2は、長手方向Lと短手方向Sを有した基材であり、表面化粧材21とベース材22とをたとえば貼着等により積層したものであり、表面化粧材21は必ずしも積層されなくてもよい。たとえば、表面化粧材21としては、化粧単板、樹脂製の化粧シート、挽き板、または突板などを挙げることができ、表面化粧材21の代わりに、ベース材22の表面に化粧用の印刷、たとえば適宜下地処理後のUV硬化型インクジェット印刷やグラビア印刷等が施されていてもよい。
ベース材22としては、合板、パーティクルボード(PB)、木質繊維板(MDF・インシュレーションボード・ハードボードなど)、配向性ストランドボード、OSB、LVL、集成材、無垢材などを挙げることができ、これらを熱処理・薬剤処理などをしたものであってもよく、これらを2種類以上積層した木質複合ベース材のようなものであってもよい。
また、図1に示すように、木質系基材2(具体的にはベース材22)の周縁には、雄実部23および雌実部24が形成されている。蓄熱ボード1を床下地面Fに敷設する際に、隣接する蓄熱ボード1、1同士の雄実部23と雌実部24を接合することにより、複数の蓄熱ボード1を連結することができる。また、木質系基材2の表面から裏面までの厚さ(見かけ上の厚さ)は、好ましくは6~12mmであり、より好ましくは8~10mmである。
さらに、本実施形態では、木質系基材2の裏面2bに、複数の溝25、25、…が形成されている。複数の溝25、25、…は、木質系基材2の短手方向Sおよび長手方向Lに沿って、等間隔(等ピッチ)に形成されている。溝のピッチは、3~1000mm、溝幅は、0.3~10mm、深さ1~10mmの範囲であることが好ましい。これにより、蓄熱ボード1の表面(すなわち、木質系基材2の表面)に衝撃荷重等の荷重が作用した際に、木質系基材2を好適に撓ませることができる。
なお、本実施形態では、長手方向Lに沿った溝25と短手方向Sに沿った溝25が交差するように、複数の溝25、25、…を形成したが、上述した撓みの効果を期待することができるのであれば、いずれか一方の方向に沿ってのみ複数の溝が形成されていてもよく、短手方向Sおよび長手方向Lと交差する方向に沿って複数の溝が形成されていてもよく、各溝の幅、深さ等が異なっていてもよい。
1-3.蓄熱シート3について
蓄熱シート3は、木質系基材2の裏面2bを覆うように配置されている。本実施形態では、蓄熱シート3は、1枚の木質系基材2を覆う領域に対して、4枚に分割した矩形状の分割シート3a、3a、…により構成されている。本実施形態では、分割シート3a、3a、…は、蓄熱シート3を長手方向Lおよび短手方向Sに沿って分割したものであるが、後述するように、蓄熱ボード1の遮音性を高めることができるのであれば、その分割位置は特に限定されるものではない。
蓄熱シート3は、液相から固相への潜熱により蓄熱する潜熱蓄熱材を含むシートであり、液相時に潜熱蓄熱材が蓄熱シート3から溶出しないものであることが好ましい。本実施形態では、蓄熱シート3は、潜熱蓄熱材をマイクロカプセルに内包した蓄熱粒子を、樹脂基材に分散されたシート状の部材であり、可撓性を有するものが好ましい。マイクロカプセルおよび樹脂基材は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれであってもよく、マイクロカプセルから潜熱蓄熱材が流出しなければ、その樹脂は限定されるものではない。樹脂基材は、成形時の加熱温度以下で軟化する(軟化する)熱可塑性樹脂であってもよい。ここで、樹脂基材を構成する熱可塑性樹脂は、塩化ビニルなどを挙げることができ、蓄熱シート3は、樹脂基材を発泡させた発泡シートであってもよい。
潜熱蓄熱材の液相から固相への相変化温度(融点)は、18~25℃であることが好ましい。潜熱蓄熱材としては、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン等或いはこれらの混合物で構成される、典型的には炭素数16~24の、n-パラフィンやパラフィンワックス等の飽和脂肪族炭化水素;1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等或いはこれらの混合物で構成される、典型的には炭素数16~24の、直鎖α-オレフィン等の一価又は多価不飽和脂肪族炭化水素;オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等或いはこれらの混合物で構成される長鎖脂肪酸;上記脂肪酸のエステル、ポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物等を挙げることができる。たとえば28℃で融解するものであれば、n-オクタデカンを選択し、18℃で融解するものであれば、n-ヘキサデカンを選択する。さらに、上述した融点の異なる複数の潜熱蓄熱材を混合して用いてもよい。
また、蓄熱シート3として、たとえば、金属、樹脂またはこれらを積層したフィルムからなる袋体に、上述した潜熱蓄熱材を密封したものであってもよい。この他にも、蓄熱シート3は、相変化温度以上でゲル状となる潜熱蓄熱材からなってもよい。この態様によれば相変化温度以上で固形状からゲル状となるので、相変化温度以上になったとしても潜熱蓄熱材の形状を容易に保持することができる。
さらに、出願人が既に出願した国際公開2015/174523に開示されるように、潜熱蓄熱材と水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとを含む蓄熱材組成物が、蓄熱シート3に含まれてもよい。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)からなる群から選択される少なくとも1種(2種以上の混合物であってもよい)等を挙げることができる。
1-4.緩衝シート4について
緩衝シート4は、蓄熱シート3の裏面側に配置されている。緩衝シート4は、厚さ方向にクッション性を有したシート材であり、緩衝シート4としては、不織布または発泡樹脂シートを挙げることができる。
緩衝シート4が、不織布である場合には、不織布は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロンを含むポリアミド系樹脂などからなる樹脂繊維、または、綿、羊毛等の天然繊維等からなる。
さらに、不織布シートは、厚さ方向にクッション性を有する(弾性変形する)ものであれば、特に限定されず、不織布の密度は、たとえば、0.4g/cm~1.0g/cmの範囲であることが好ましく、不織布の繊維径は、たとえば、0.5μm~15μmの範囲であることが好ましく、緩衝シート4の厚さは、好ましくは、2~7mmの範囲にあり、より好ましくは3~5mmである。
緩衝シート4が、発泡樹脂シートであり場合には、発泡樹脂の樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、または、ポリプロピレン樹脂などを挙げることができ、中でも、圧縮方向に弾性変形率が高いポリウレタン樹脂が好ましい。
1-5.保持部材6について
保持部材6は、蓄熱シート3よりも可撓性が高い可撓性シート6aで構成されており、保持部材6の内部に蓄熱シート3が保持されている。ここで、「可撓性シート6aが、蓄熱シート3よりも可撓性が高い」とは、たとえば、厚みは変えずに、蓄熱シート3と可撓性シート6aとを同じ大きさ(幅および長さ)に切断し、これを片持ち支持したときに、切断した蓄熱シートよりも、切断した可撓性シートの方が、撓み量が大きいことをいう。本実施形態では、蓄熱シート3が樹脂を主材としたシートであることから、可撓性シート6aとして、たとえば、織布、不織布、または樹脂フィルムなどを挙げることができる。
本実施形態では、保持部材6は、蓄熱シート3を包むように形成されている。より具体的には、保持部材6は、離型シート7とともに蓄熱シート3を包むように形成されており、たとえば、図3に示す可撓性シート6aを折り曲げ線6cを山折りにして、可撓性シート6aにより、保持部材6を包んでもよく、可撓性シート6aで袋体を形成し、袋体の内部に蓄熱シート3を挿入してもよい。なお、本実施形態では、1枚の可撓性シートで蓄熱シートを包んで保持部材としているが、複数枚の可撓性シートで蓄熱シートを包んだ保持部材としてもよい。この場合には、複数層の可撓性シートの層が保持部材に形成される。
離型シート7は、離型紙または離型フィルムなど、接着剤が非接着状態となる表面を有したシートである。離型紙としては、いわゆる剥離紙であり、紙の表面(両面)に剥離加工が施されたものを挙げることができる。離型フィルムとしては、たとえば、樹脂フィルムの表面にシリコーン樹脂が被覆されたフィルム、またはシリコーン樹脂からなるフィルムを挙げることができる。なお、離型シート7も、蓄熱シート3よりも可撓性が高いシートである。
図4に示すように、保持部材6は、木質系基材2と緩衝シート4とに、接着剤を介して、貼着されている。本実施形態では、保持部材6は、木質系基材2の裏面の全面または一部の領域に貼着されている。接着剤として、尿素・メラミン樹脂系接着剤、または、変性酢酸ビニル接着剤などのエチレン酢酸ビニル共縮合樹脂系接着剤などの水性接着剤;一成分型のポリウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤などの湿気により化学反応し硬化する機能を有した接着剤;ポリアミド系接着剤、EVA系接着剤などのホットメルト系接着剤、を挙げることができる。この他にも、接着材料となる樹脂に、炭化水素系の有機溶剤で溶解した接着剤であってもよい。
本実施形態では、保持部材6のうち木質系基材2に貼着される、可撓性シート6aの一部からなる貼着部分6bと、蓄熱シート3とが、非拘束となる状態で、蓄熱シート3が、保持部材6に保持されている。より具体的には、保持部材6のうち木質系基材2に貼着される貼着部分6bと、蓄熱シート3との間には、離型シート7が配置されている。このため、貼着部分6bと蓄熱シート3とは、直接接触することがなく、蓄熱シート3は、離型シート7に対して非拘束である(移動自在である)。
本実施形態では、蓄熱ボード1は、木質系基材2の裏面2b側に、蓄熱シート3を備えているので、蓄熱ボードの蓄熱性を高めることができる。さらに、蓄熱シート3は、可撓性を有した保持部材6の内部に保持され、かつ、保持部材6のうち木質系基材2の裏面2bに貼着された貼着部分6bと、蓄熱シート3とが、非拘束となる状態で、蓄熱シート3は、保持部材6に保持されている。
これにより、木質系基材2の裏面2bには、蓄熱シート3が非拘束となる状態で、蓄熱シート3よりも可撓性が高い可撓性シート6aが貼着されているため、木質系基材2に蓄熱シート3を直接貼着したものに比べて、木質系基材2の撓みを拘束し難い。これにより、木質系基材2の表面で低音の衝撃音が発生した場合であっても、木質系基材2の撓みにより、衝撃音を十分に低減することができる。
さらに、木質系基材2側における保持部材6と蓄熱シート3との間に離型シート7が配置されているので、蓄熱シート3が木質系基材2の裏面2bに直接接触することがない。これにより、低音の衝撃音の発生時に、木質系基材2の撓みが、蓄熱シート3により阻害され難きため、木質系基材2の表面で発生した低音の衝撃音を、木質系基材2の撓みにより、十分に低減することができる。
ここで、たとえば、図1~図4に示す実施形態では、木質系基材2の裏面2bの全体に、接着剤を塗布することにより、保持部材6を木質系基材2の裏面2bに貼着していたが、たとえば、図5(a)および(b)に示す変形例のように、木質系基材2の裏面2bに、部分的に接着剤を塗布してもよい。なお、図5(a)および(b)では、木質系基材2の裏面2bのうち、保持部材6を拘束する拘束領域2cと、保持部材6を拘束しない非拘束領域2dを示しており、裏面に形成された溝は省略している。
図5(a)および(b)に示すように、この変形例では、木質系基材2の裏面2bには、接着剤を介して保持部材6を拘束する拘束領域2cと、保持部材6を拘束しない非拘束領域2dとが、設けられている。具体的には、拘束領域2cは、接着剤が塗布されて保持部材6が貼着された領域であり、非拘束領域2dは、接着剤が塗布されず、保持部材6が貼着されていない領域である。
たとえば、図5(a)および(b)において、非拘束領域2d、2d…の合計面積と、拘束領域2c、2c、2c…の合計面積を総面積とし、この総面積に対する拘束領域2c、2c、2c…の合計面積の割合(面積率)は、30~70%であることが好ましく、より好ましくは、40~60%である。このような範囲を満たすことにより、木質系基材2の撓みと、保持部材6の安定した貼着と、を両立することができる。
なお、接着剤は、木質系基材2の裏面2bまたは保持部材6の貼着部分6bの表面のいずれか一方、または、双方に塗布され、木質系基材2に保持部材6が貼着される。なお、木質系基材2に保持部材6を貼着させる場合には、図3に示すように、保持部材6に蓄熱シート3を保持させた後、保持部材6を木質系基材2の裏面2bに貼着させてもよく、可撓性シート6aを木質系基材2の裏面2bに貼着させた後、可撓性シート6aを折り曲げ線6cで折り曲げて、蓄熱シート3を保持してもよい。
図5(a)では、拘束領域2cと非拘束領域2dとが、短手方向Sに沿って複数形成されており、拘束領域2cと非拘束領域2dとが、木質系基材2の長手方向Lに交互に設けられている。図5(b)では、拘束領域2cと非拘束領域2dとが、長手方向Lに沿って複数形成されており、拘束領域2cと非拘束領域2dとが、木質系基材2の長手方向Lに交互に設けられている。
本実施形態では、木質系基材2の長手方向Lおよび短手方向Sに沿って、複数の溝25、25、…が形成されており、短手方向Sに比べて長手方向Lの方が、木質系基材2は撓み易い。したがって、図5(a)に示すように、拘束領域2cと非拘束領域2dとを、木質系基材2の長手方向Lに交互に設けることで、図5(b)よりも、木質系基材2の撓みによる遮音効果を阻害することなく、木質系基材2の表面2aで発生した低音の衝撃音を十分に低減することができる。
ここで、たとえば、図1~図4に示す実施形態では、木質系基材2の裏面2bを形成する領域に合わせて、蓄熱シート3を準備し、この蓄熱シート3を、複数枚の分割シート3aに分割したが、たとえば、蓄熱シート3を分割しない1枚のシート材で構成してもよい。
この他にも、図6(a)および(b)に示す変形例のように、蓄熱シート3を分割してもよい。具体的には、図6(a)では、分割シート3cは、短手方向Sに沿って蓄熱シート3を複数に分割したシートである。本実施形態では、各分割シート3cが、各分割シート3aの形状に応じた保持部材6により保持されている。しかしながら、これらの分割シート3cを、1つの保持部材で保持してもよく、数枚の分割シート3c毎に、保持部材6で保持してもよい。
さらに、図6(b)では、保持部材6に保持されている分割シート3eは、長手方向Lおよび短手方向Sに分割されている。この変形例では、長手方向Lに沿って配列された複数(具体的には6枚)の分割シート3e、3e、…を1つの保持部材6で保持している。したがって、保持部材6の内部において、分割シート3e、3e同士が、木質系基材2の短手方向Sに沿って分離している。
このように構成することにより、1つの保持部材6において、木質系基材2の短手方向Sに沿って、蓄熱シート3を分割するので、低音の衝撃音の発生時に、木質系基材2の長手方向Lの撓みが、蓄熱シート3により阻害され難い。これにより、木質系基材2は長手方向Lに撓み易く、木質系基材2の表面2aで発生した低音の衝撃音を十分に低減することができる。特に、図6(b)に示す構造では、木質系基材2の長手方向Lに沿って配列された複数の分割シート3e、3e、…を1つの保持部材6で保持しており、分割シート3eを保持した保持部材6を木質系基材2の短手方向Sに配列している。このため、1つの保持部材6内において、長手方向Lに配列された分割シート3e、3eは、木質系基材2の撓みに応じて変形し易いため、木質系基材2の表面2aで発生した低音の衝撃音を十分に低減することができる。
さらに、図3に示す保持部材による保持方法の変形例として、図7に示すように、たとえば不織布または樹脂フィルムなどの被覆シート8を、折り曲げ線8c、8c…で折り曲げて、蓄熱シート3を覆ってもよい。被覆シート8は、可撓性シート6aと同じ材料であってもよい。これに加えて、この変形例に示すように、保持部材6の可撓性シート6aのうち、貼着部分6bに、木質系基材2の短手方向Sに沿って複数の貫通孔6dを形成してもよい。この場合には、蓄熱シート3は、被覆シート8と可撓性シート6aとの2重構造となる。この変形例によれば、図8に示すように、可撓性シート6aの貼着部分6bから離型シート7が露出するが、この離型シート7は、木質系基材2の裏面2bに拘束されず、貫通孔6d、6d同士の間に形成された貼着部分6bが、木質系基材2の裏面2bに貼り付けられる。したがって、このような場合には、図5(b)と同様に、拘束領域2cと非拘束領域2dとが、木質系基材2の長手方向Lに交互に設けられることになる。
以下に、本発明に係る実施例を説明する。
〔実施例1〕
厚さ6mmの木質系基材と、厚さ3mmの蓄熱シートと、厚さ4.5mmの不織布からなる緩衝シートと、を準備した。木質系基材は、合板の表面に化粧材が貼り合わされたものであり、裏面には、遮音用の複数の溝が形成されているものであり、一般的に市販されている木質系基材である。蓄熱シートは、潜熱蓄熱材を内包したマイクロカプセルを、塩化ビニルに分散したシート材である。次に蓄熱シートの一方側に表面に離型紙を配置した状態で、これらを厚さ3mmの不織布を2重に巻き付けて、保持部材を作製した。次に、緩衝シート、蓄熱シートおよび離型紙が内包された保持部材、木質系基材の順に積層し、これらを接着剤を介して貼り合わせ、蓄熱ボードを作製した。離型紙は、蓄熱シートよりも木質系基材側に配置されている。
〔実施例2〕
実施例1と同じように、蓄熱ボードを作製した。実施例1と相違する点は、蓄熱シートを木質系基材の短手方向に沿って5分割し、これらを保持部材の内部に保持した点である。
〔実施例3〕
実施例1と同じように、蓄熱ボードを作製した。実施例1と相違する点は、蓄熱シートを木質系基材の長手方向に沿って3分割し、これらを保持部材の内部に保持した点である。
〔実施例4〕
実施例1と同じように、蓄熱ボードを作製した。実施例1と相違する点は、木質系基材の裏面に、接着剤を介して保持部材を拘束する拘束領域(10カ所)と、保持部材を拘束しない非拘束領域(9カ所)とを、長手方向に交互に設けた点である。なお、拘束領域と非拘束領域との総面積に対する、拘束領域の総面積は、50%である。
〔実施例5〕
実施例1と同じように、蓄熱ボードを作製した。実施例1と相違する点は、木質系基材の裏面に、接着剤を介して保持部材を拘束する拘束領域(3カ所)と、保持部材を拘束しない非拘束領域(5カ所)とを、短手方向に交互に設けた点である。なお、拘束領域と非拘束領域との総面積に対する、拘束領域の総面積は、50%である。
〔比較例1〕
実施例1と同じように、蓄熱ボードを作製した。実施例1と相違する点は、保持部材を用いずに、蓄熱シートを、木質系基材と緩衝シートに直接貼着した点である。
(遮音試験)
実施例1~5および比較例1に係る蓄熱ボードに対して、JIS A 1418に準拠した床衝撃音レベル低減量(以下低減量という)を測定した。この結果を、表1に示す。
Figure 0007377741000001
実施例1~5に係る蓄熱ボードの床衝撃音レベル低減量は、周波数が125Hz~1kHzの範囲において、比較例1のものよりも大きいことがわかった。特に、周波数が125Hzである場合には、実施例1~5に係る蓄熱ボードの低減量は、比較例1の物に比べて2~3倍程度であった。これは、比較例1の蓄熱ボードの木質系基材の裏面に、蓄熱シートが貼り合わされているため、木質系基材の撓みが拘束されるからであると考えられる。
さらに、実施例2に係る蓄熱ボードの床衝撃音レベル低減量は、周波数が125Hz~1kHzの範囲において、実施例3のものよりも大きく、実施例4に係る蓄熱ボードの床衝撃音レベル低減量は、周波数が125Hz~1kHzの範囲において、実施例5のものよりも大きかった。これは、上述した如く、図6(a)および(b)で説明したように、実施例2に係る蓄熱ボードは、分割シートを、短手方向に沿って蓄熱シートを複数に分割し、図5(a)および(b)で説明したように、実施例4に係る蓄熱ボードは、拘束領域と非拘束領域とを長手方向に交互に設けたことにより、木質系基材の撓みが向上したからであると考えられる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1:蓄熱ボード、2:木質系基材、2b:裏面、2c:拘束領域、2d:非拘束領域、25:溝、3:蓄熱シート、3a、3c、3e:分割シート、4:緩衝シート、6:保持部材、6a:可撓性シート、6b:貼着部分、7:離型シート、S:短手方向、L長手方向

Claims (6)

  1. 裏面に複数の溝が形成された木質系基材と、
    前記木質系基材の裏面側に配置された蓄熱シートと、
    前記蓄熱シートの裏面側に配置された緩衝シートと、を備える、遮音性を有した蓄熱ボードであって、
    前記蓄熱シートは、前記蓄熱シートよりも可撓性が高い可撓性シートで構成された保持部材の内部に保持されており、
    前記保持部材は、前記木質系基材と前記緩衝シートとに、貼着されており、
    前記保持部材のうち前記木質系基材に貼着された部分と、前記蓄熱シートとが、非拘束となる状態で、前記蓄熱シートが、前記保持部材に保持されていることを特徴とする蓄熱ボード。
  2. 前記蓄熱シートは、複数に分割された分割シートで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱ボード。
  3. 前記木質系基材は、短手方向と長手方向を有し、
    前記溝は、少なくとも前記短手方向に沿って複数形成されており、
    前記分割シートは、少なくとも前記短手方向に沿って前記蓄熱シートを複数に分割したシートであることを特徴とする請求項2に記載の蓄熱ボード。
  4. 前記木質系基材は、短手方向と長手方向を有し、
    前記溝は、少なくとも前記短手方向に沿って複数形成されており、
    前記木質系基材の裏面には、接着剤を介して前記保持部材を拘束する拘束領域と、前記保持部材を拘束しない非拘束領域とが、前記長手方向に交互に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄熱ボード。
  5. 前記保持部材と前記蓄熱シートとの間のうち、少なくとも前記木質系基材側には、離型シートが配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄熱ボード。
  6. 前記可撓性シートは、不織布であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄熱ボード。
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