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JP7364987B1 - 共重合体、成形体、押出成形体およびトランスファー成形体 - Google Patents

共重合体、成形体、押出成形体およびトランスファー成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融状態でも変形しにくく、120℃耐摩耗性、薬液低透過性、90℃高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性、耐クリープ性、210℃で加わる引張力に対する耐久性に優れる成形体を得ることができる共重合体を提供すること。【解決手段】テトラフルオロエチレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.4~3.4質量%であり、372℃におけるメルトフローレートが、0.8~1.4g/10分であり、官能基数が、主鎖炭素数106個あたり、20個以下である共重合体を提供する。【選択図】 なし

Description

本開示は、共重合体、成形体、押出成形体およびトランスファー成形体に関する。
特許文献1には、パーハロカーボン及び/又は水からなる反応媒体中でパーハロモノマーの重合を行うことよりなるパーハロポリマーの製造方法であって、
前記パーハロモノマーの重合は、下記一般式(I)
[(CFCF][(CF)CY]Ra-CF(CF)Y (I)
(式中、Raは、不対電子1個を有する炭素原子を表し、Y、Y及びYは、同一又は異なって、F若しくはRfを表し、Rfは、直鎖状又は分枝状の炭素数1~16のパーフルオロアルキル基を表す。)で表される極安定パーフルオロアルキルラジカルの存在下に行うものであり、
前記パーハロカーボンは、前記パーハロモノマーと前記極安定パーフルオロアルキルラジカルとに対して不活性であり、炭素数が1~16であるものである
ことを特徴とするパーハロポリマーの製造方法が記載されている。
特開2006-312736号公報
本開示では、溶融状態でも変形しにくく、120℃耐摩耗性、薬液低透過性、90℃高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性、耐クリープ性、210℃で加わる引張力に対する耐久性に優れる成形体を得ることができる共重合体を提供することを目的とする。
本開示によれば、テトラフルオロエチレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.4~3.4質量%であり、372℃におけるメルトフローレートが、0.8~1.4g/10分であり、官能基数が、主鎖炭素数10個あたり、20個以下である共重合体が提供される。
本開示によれば、溶融状態でも変形しにくく、120℃耐摩耗性、薬液低透過性、90℃高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性、耐クリープ性、210℃で加わる引張力に対する耐久性に優れる成形体を得ることができる共重合体を提供することができる。
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本開示の共重合体は、テトラフルオロエチレン(TFE)単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)単位を含有する。
TFE単位およびPPVE単位を含有する共重合体(PFA)は、厚物シートを形成する材料として利用されている。このような厚いシートは、一般に、押出成形機を用いて、共重合体を押出成形することにより製造される。押出成形機から吐出された溶融状態の共重合体は、冷却されて固化されるまでに、その自重により容易に変形しやすいため、厚いシートを製造しようとすると、所望の厚みを有するシートを製造することが容易でない問題がある。一方で、自重による変形を抑制しようとすると、シートの薬液低透過性、高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性が劣る傾向がある。
TFE単位およびPPVE単位を含有する共重合体のPPVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数を適切に調整することにより、溶融状態でも変形しにくい共重合体が得られるとともに、120℃耐摩耗性、薬液低透過性、90℃高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性、耐クリープ性、210℃で加わる引張力に対する耐久性に優れる成形体を得ることができる共重合体が得られることが見出された。
本開示の共重合体は溶融加工性のフッ素樹脂である。溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
共重合体のPPVE単位の含有量は、全単量体単位に対して、2.4~3.4質量%である。共重合体のPPVE単位の含有量は、好ましくは2.5質量%以上であり、より好ましくは2.6質量%以上であり、好ましくは3.3質量%以下である。共重合体のPPVE単位の含有量が多すぎると、90℃高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性に劣る。共重合体のPPVE単位の含有量が少なすぎると、120℃耐摩耗性、210℃で加わる引張力に対する耐久性に劣る。
共重合体のTFE単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは96.6質量%以上であり、より好ましくは96.7質量%以上であり、好ましくは97.6質量%以下であり、より好ましくは97.5質量%以下であり、さらに好ましくは97.4質量%以下である。共重合体のTFE単位の含有量が少なすぎると、90℃高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性に劣るおそれがある。共重合体のTFE単位の含有量が多すぎると、120℃耐摩耗性、210℃で加わる引張力に対する耐久性に劣るおそれがある。
本開示において、共重合体中の各単量体単位の含有量は、19F-NMR法により測定する。
共重合体は、TFEおよびPPVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位を含有することもできる。この場合、TFEおよびPPVEと共重合可能な単量体単位の含有量は、共重合体の全単量体単位に対して、好ましくは0~1.0質量%であり、より好ましくは0.05~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.3質量%である。TFEおよびPPVEと共重合可能な単量体単位の含有量は、共重合体の全単量体単位に対して、0.1質量%以下であってよい。
TFEおよびPPVEと共重合可能な単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、CZ=CZ(CF(式中、Z、ZおよびZは、同一または異なって、HまたはFを表し、Zは、H、FまたはClを表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、CF=CF-ORf(式中、Rfは炭素数1~8のパーフルオロアルキル基)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕(ただし、PPVEを除く)、および、CF=CF-OCH-Rf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。なかでも、HFPが好ましい。
共重合体としては、TFE単位およびPPVE単位のみからなる共重合体、および、TFE/HFP/PPVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFE単位およびPPVE単位のみからなる共重合体がより好ましい。
共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.8~1.4g/10分である。共重合体のMFRは、好ましくは0.9g/10分以上であり、より好ましくは1.0g/10分以上であり、さらに好ましくは1.1g/10分以上であり、好ましくは1.3g/10分以下であり、より好ましくは1.2g/10分以下であり、さらに好ましくは1.1g/10分以下である。共重合体のMFRが高すぎると、溶融状態で変形しやすくなり、所望の形状を有する成形体を得ることが困難になる。また、共重合体のMFRが高すぎると、120℃耐摩耗性、210℃で加わる引張力に対する耐久性に劣る。共重合体のMFRが低すぎると、薬液低透過性、90℃高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性に劣る。
本開示において、MFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサーを用いて、372℃、5kg荷重下で内径2.1mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
MFRは、単量体を重合する際に用いる重合開始剤の種類および量、連鎖移動剤の種類および量などを調整することによって、調整することができる。
共重合体の主鎖炭素数10個当たりの官能基数は、20個以下である。共重合体の主鎖炭素数10個当たりの官能基数は、好ましくは15個以下であり、より好ましくは10個以下であり、さらに好ましくは6個未満である。官能基数が多すぎると、薬液低透過性、耐クリープ性に優れる成形体を得ることができない。
上記官能基の種類の同定および官能基数の測定には、赤外分光分析法を用いることができる。
官能基数については、具体的には、以下の方法で測定する。まず、上記共重合体をコールドプレスにより成形して、厚さ0.25~0.30mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、上記共重合体の赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、上記共重合体における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出する。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
参考までに、いくつかの官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表1に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT-IR測定データから決定したものである。
Figure 0007364987000001
-CHCFH、-CHCOF、-CHCOOH、-CHCOOCH、-CHCONHの吸収周波数は、それぞれ表中に示す、-CFH、-COF、-COOH freeと-COOH bonded、-COOCH、-CONHの吸収周波数から数十カイザー(cm-1)低くなる。
たとえば、-COFの官能基数とは、-CFCOFに起因する吸収周波数1883cm-1の吸収ピークから求めた官能基数と、-CHCOFに起因する吸収周波数1840cm-1の吸収ピークから求めた官能基数との合計である。
官能基は、共重合体の主鎖末端または側鎖末端に存在する官能基、および、主鎖中または側鎖中に存在する官能基である。官能基数は、-CF=CF、-CFH、-COF、-COOH、-COOCH、-CONHおよび-CHOHの合計数であってよい。
上記官能基は、たとえば、共重合体を製造する際に用いた連鎖移動剤や重合開始剤によって、共重合体に導入される。たとえば、連鎖移動剤としてアルコールを使用する、あるいは重合開始剤として-CHOHの構造を有する過酸化物を使用した場合、共重合体の主鎖末端に-CHOHが導入される。また、官能基を有する単量体を重合することによって、上記官能基が共重合体の側鎖末端に導入される。
このような官能基を有する共重合体を、フッ素化処理することによって、上記範囲内の官能基数を有する共重合体を得ることができる。すなわち、本開示の共重合体は、フッ素化処理されたものであることが好ましい。本開示の共重合体は、-CF末端基を有することも好ましい。
共重合体の融点は、好ましくは295~315℃であり、より好ましくは300℃以上であり、さらに好ましくは305℃以上であり、特に好ましくは306℃以上であり、最も好ましくは307℃以上である。融点が上記範囲内にあることにより、特に120℃耐摩耗性、薬液低透過性、90℃高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性、耐クリープ性、210℃で加わる引張力に対する耐久性に一層優れる成形体を与える共重合体を得ることができる。
本開示において、融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて測定できる。
共重合体のジメチルカーボネート透過度は、好ましくは11.9g・cm/m以下であり、より好ましくは11.5g・cm/m以下である。本開示の共重合体は、TFE単位およびPPVE単位を含有する共重合体のPPVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数が適切に調整されていることから、優れた薬液低透過性を有している。すなわち、本開示の共重合体を用いることにより、ジメチルカーボネートなどの薬液を透過させにくい成形体を得ることができる。
本開示において、ジメチルカーボネート透過度は、温度60℃、40日間の条件で、測定できる。ジメチルカーボネート透過度の具体的な測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
本開示の共重合体は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合などの重合方法により、製造することができる。重合方法としては、乳化重合または懸濁重合が好ましい。これらの重合において、温度、圧力などの各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、共重合体の組成や量に応じて適宜設定することができる。
重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
油溶性ラジカル重合開始剤は公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえば、
ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類;
t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類;
ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類;
などが代表的なものとしてあげられる。
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、[(RfCOO)-](Rfは、パーフルオロアルキル基、ω-ハイドロパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基)で表されるジアシルパーオキサイドが挙げられる。
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、たとえば、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロプロピオニル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどが挙げられる。
水溶性ラジカル重合開始剤は公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイドなどの有機過酸化物、t-ブチルパーマレート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
重合においては、界面活性剤、連鎖移動剤、および、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、たとえば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。なかでも、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合性酸素を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)、炭素数4~20の直鎖または分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。界面活性剤の添加量(対重合水)は、好ましくは50~5000ppmである。
連鎖移動剤としては、たとえば、エタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。連鎖移動剤の添加量は、用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01~20質量%の範囲で使用される。
溶媒としては、水や、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;CFCFHCFHCFCFCF、CFHCFCFCFCFH、CFCFCFCFCFCFCFH等のハイドロフルオロアルカン類;CHOC、CHOCCFCFCHOCHF、CFCHFCFOCH、CHFCFOCHF、(CFCHCFOCH、CFCFCHOCHCHF、CFCHFCFOCHCF等のハイドロフルオロエーテル類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性および経済性の面から、水性媒体に対して10~100質量%が好ましい。
重合温度としては特に限定されず、0~100℃であってよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量および蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0~9.8MPaGであってよい。
重合反応により共重合体を含む水性分散液が得られる場合は、水性分散液中に含まれる共重合体を凝析させ、洗浄し、乾燥することにより、共重合体を回収できる。また、重合反応により共重合体がスラリーとして得られる場合は、反応容器からスラリーを取り出し、洗浄し、乾燥することにより、共重合体を回収できる。乾燥することによりパウダーの形状で共重合体を回収できる。
重合により得られた共重合体を、ペレットに成形してもよい。ペレットに成形する成形方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を用いることができる。たとえば、単軸押出機、二軸押出機、タンデム押出機を用いて共重合体を溶融押出しし、所定長さに切断してペレット状に成形する方法などが挙げられる。溶融押出しする際の押出温度は、共重合体の溶融粘度や製造方法により変える必要があり、好ましくは共重合体の融点+20℃~共重合体の融点+140℃である。共重合体の切断方法は、特に限定は無く、ストランドカット方式、ホットカット方式、アンダーウオーターカット方式、シートカット方式などの従来公知の方法を採用できる。得られたペレットを、加熱することにより、ペレット中の揮発分を除去してもよい(脱気処理)。得られたペレットを、30~200℃の温水、100~200℃の水蒸気、または、40~200℃の温風と接触させて処理してもよい。
重合により得られた共重合体を、フッ素化処理してもよい。フッ素化処理は、フッ素化処理されていない共重合体とフッ素含有化合物とを接触させることにより行うことができる。フッ素化処理により、共重合体の-COOH、-COOCH、-CHOH、-COF、-CF=CF、-CONHなどの熱的に不安定な官能基、および、熱的に比較的安定な-CFHなどの官能基を、熱的に極めて安定な-CFに変換することができる。結果として、共重合体の-COOH、-COOCH、-CHOH、-COF、-CF=CF、-CONH、および、-CFHの合計数(官能基数)を容易に上述した範囲に調整できる。
フッ素含有化合物としては特に限定されないが、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源が挙げられる。上記フッ素ラジカル源としては、Fガス、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、フッ化ハロゲン(たとえばIF、ClF)などが挙げられる。
ガスなどのフッ素ラジカル源は、100%濃度のものであってもよいが、安全性の面から不活性ガスと混合し、5~50質量%に希釈して使用することが好ましく、15~30質量%に希釈して使用することがより好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、経済的な面より窒素ガスが好ましい。
フッ素化処理の条件は、特に限定されず、溶融させた状態の共重合体とフッ素含有化合物とを接触させてもよいが、通常、共重合体の融点以下、好ましくは20~240℃、より好ましくは100~220℃の温度下で行うことができる。上記フッ素化処理は、一般に1~30時間、好ましくは5~25時間行う。フッ素化処理は、フッ素化処理されていない共重合体をフッ素ガス(Fガス)と接触させるものが好ましい。
本開示の共重合体と、必要に応じてその他の成分とを混合し、組成物を得てもよい。その他の成分としては、充填剤、可塑剤、加工助剤、離型剤、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤、脱フッ化水素剤等を挙げることができる。
充填剤としては、たとえば、シリカ、カオリン、クレー、有機化クレー、タルク、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、架橋ポリスチレン、チタン酸カリウム、カーボン、チッ化ホウ素、カーボンナノチューブ、ガラス繊維等が挙げられる。導電剤としてはカーボンブラック等があげられる。可塑剤としては、ジオクチルフタル酸、ペンタエリスリトール等があげられる。加工助剤としては、カルナバワックス、スルホン化合物、低分子量ポリエチレン、フッ素系助剤等があげられる。脱フッ化水素剤としては有機オニウム、アミジン類等があげられる。
上記その他の成分として、上記した共重合体以外のその他のポリマーを用いてもよい。その他のポリマーとしては、上記した共重合体以外のフッ素樹脂、フッ素ゴム、非フッ素化ポリマーなどが挙げられる。
上記組成物の製造方法としては、共重合体とその他の成分とを乾式で混合する方法や、共重合体とその他の成分とを予め混合機で混合し、次いで、ニーダー、溶融押出し機等で溶融混練する方法等を挙げることができる。
本開示の共重合体または上記の組成物は、加工助剤、成形材料等として使用できるが、成形材料として使用することが好適である。本開示の共重合体の水性分散液、溶液、懸濁液、および共重合体/溶媒系も利用可能であり、これらは塗料として塗布したり、包封、含浸、フィルムの流延に使用したりできる。しかし、本開示の共重合体は上述した特性を有するものであるので、上記成形材料として使用することが好ましい。
本開示の共重合体または上記の組成物を成形して、成形体を得てもよい。
上記共重合体または上記組成物を成形する方法は特に限定されず、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、トランスファー成形法、ロト成形法、ロトライニング成形法等が挙げられる。成形方法としては、なかでも、押出成形法、圧縮成形法またはトランスファー成形法が好ましく、高い生産性で成形体を生産できることから、押出成形法またはトランスファー成形法がより好ましく、押出成形法がさらに好ましい。すなわち、成形体としては、押出成形体、圧縮成形体、射出成形体またはトランスファー成形体であることが好ましく、高い生産性で生産できることから、押出成形体またはトランスファー成形体であることがより好ましく、押出成形体であることがさらに好ましい。本開示の共重合体を押出成形法またはトランスファー成形により成形することにより、美麗な成形体を得ることができる。
本開示の共重合体を含有する成形体としては、たとえば、ナット、ボルト、継手、フィルム、ボトル、ガスケット、電線被覆、チューブ、ホース、パイプ、バルブ、シート、シール、パッキン、タンク、ローラー、容器、コック、コネクタ、フィルターハウジング、フィルターケージ、流量計、ポンプ、ウェハーキャリア、ウェハーボックス等であってもよい。
本開示の共重合体を含有する成形体は、120℃耐摩耗性、薬液低透過性、90℃高温時剛性、繰り返し荷重に対する耐久性、耐クリープ性、210℃で加わる引張力に対する耐久性に優れていることから、シート、パイプなどに特に好適に利用することができる。
本開示の共重合体、上記の組成物、または上記の成形体は、例えば、次の用途に使用できる。
食品包装用フィルム、食品製造工程で使用する流体移送ラインのライニング材、パッキン、シール材、シート等の食品製造装置用流体移送部材;
薬品用の薬栓、包装フィルム、薬品製造工程で使用される流体移送ラインのライニング材、パッキン、シール材、シート等の薬液移送部材;
化学プラントや半導体工場の薬液タンクや配管の内面ライニング部材;
自動車の燃料系統並びに周辺装置に用いられるO(角)リング・チューブ・パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材等、自動車のAT装置に用いられるホース、シール材等の燃料移送部材;
自動車のエンジン並びに周辺装置に用いられるキャブレターのフランジガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、シール材、ホース等、自動車のブレーキホース、エアコンホース、ラジエーターホース、電線被覆材等のその他の自動車部材;
半導体製造装置のO(角)リング、チューブ、パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材、ロール、ガスケット、ダイヤフラム、継手等の半導体装置用薬液移送部材;
塗装設備用の塗装ロール、ホース、チューブ、インク用容器等の塗装・インク用部材;
飲食物用のチューブ又は飲食物用ホース等のチューブ、ホース、ベルト、パッキン、継手等の飲食物移送部材、食品包装材、ガラス調理機器;
廃液輸送用のチューブ、ホース等の廃液輸送用部材;
高温液体輸送用のチューブ、ホース等の高温液体輸送用部材;
スチーム配管用のチューブ、ホース等のスチーム配管用部材;
船舶のデッキ等の配管に巻き付けるテープ等の配管用防食テープ;
電線被覆材、光ファイバー被覆材、太陽電池の光起電素子の光入射側表面に設ける透明な表面被覆材および裏面剤等の各種被覆材;
ダイヤフラムポンプのダイヤフラムや各種パッキン類等の摺動部材;
農業用フィルム、各種屋根材・側壁等の耐侯性カバー;
建築分野で使用される内装材、不燃性防火安全ガラス等のガラス類の被覆材;
家電分野等で使用されるラミネート鋼板等のライニング材;
上記自動車の燃料系統に用いられる燃料移送部材としては、更に、燃料ホース、フィラーホース、エバポホース等が挙げられる。上記燃料移送部材は、耐サワーガソリン用、耐アルコール燃料用、耐メチルターシャルブチルエーテル・耐アミン等ガソリン添加剤入燃料用の燃料移送部材として使用することもできる。
上記薬品用の薬栓・包装フィルムは、酸等に対し優れた耐薬品性を有する。また、上記薬液移送部材として、化学プラント配管に巻き付ける防食テープも挙げることができる。
上記成形体としては、また、自動車のラジエータタンク、薬液タンク、ベロース、スペーサ、ローラー、ガソリンタンク、廃液輸送用容器、高温液体輸送用容器、漁業・養魚タンク等が挙げられる。
上記成形体としては、更に、自動車のバンパー、ドアトリム、計器板、食品加工装置、調理機器、撥水撥油性ガラス、照明関連機器、OA機器の表示盤・ハウジング、電照式看板、ディスプレイ、液晶ディスプレイ、携帯電話、プリント基盤、電気電子部品、雑貨、ごみ箱、浴槽、ユニットバス、換気扇、照明枠等に用いられる部材も挙げられる。
本開示の共重合体を含有する成形体は、ガスケット、パッキンなどの被圧縮部材として好適に利用することができる。本開示の被圧縮部材は、ガスケットまたはパッキンであってよい。
本開示の被圧縮部材の大きさや形状は用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。本開示の被圧縮部材の形状は、たとえば、環状であってよい。また、本開示の被圧縮部材は、平面視で円形、長円形、角を丸めた四角形などの形状を有し、かつその中央部に貫通孔を有するものであってよい。
本開示の被圧縮部材は、非水電解液電池を構成するための部材として用いることが好ましい。本開示の被圧縮部材は、非水電解液電池中の非水電解液と接する状態で用いられる部材として、特に好適である。すなわち、本開示の被圧縮部材は、非水電解液電池中の非水電解液との接液面を有するものであってもよい。
非水電解液電池としては、非水電解液を備える電池であれば特に限定されず、たとえば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタなどが挙げられる。また、非水電解液電池を構成する部材としては、封止部材、絶縁部材などが挙げられる。
上記非水電解液は、特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチルラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの公知の溶媒の1種もしくは2種以上が使用できる。非水電解液電池は、電解質をさらに備えてもよい。上記電解質は、特に限定されるものではないが、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCl、LiBr、CHSOLi、CFSOLi、炭酸セシウムなどを用いることができる。
本開示の被圧縮部材は、たとえば、封止ガスケット、封止パッキンなどの封止部材、絶縁ガスケット、絶縁パッキンなどの絶縁部材として、好適に利用できる。封止部材は、液体もしくは気体の漏出または外部からの液体もしくは気体の侵入を防止するために用いられる部材である。絶縁部材は、電気を絶縁するために用いられる部材である。本開示の被圧縮部材は、封止および絶縁の両方の目的のために用いられる部材であってもよい。
本開示の共重合体は、電線被覆を形成するための材料として好適に利用することができる。
被覆電線は、心線と、前記心線の周囲に設けられており、本開示の共重合体を含有する被覆層と、を備えるものである。例えば、心線上に本開示の共重合体を溶融押出成形した押出成形体を上記被覆層とすることができる。被覆電線は、高周波伝送ケーブル、フラットケーブル、耐熱ケーブル等に好適であり、なかでも高周波伝送ケーブルに好適である。
心線の材料としては、例えば、銅、アルミ等の金属導体材料を用いることができる。心線は、直径0.02~3mmであるものが好ましい。心線の直径は、0.04mm以上であることがより好ましく、0.05mm以上が更に好ましく、0.1mm以上が特に好ましい。心線の直径は、2mm以下がより好ましい。
心線の具体例としては、例えば、AWG(アメリカンワイヤゲージ)-46(直径40マイクロメートルの中実銅製ワイヤー)、AWG-26(直径404マイクロメートルの中実銅製ワイヤー)、AWG-24(直径510マイクロメートルの中実銅製ワイヤー)、AWG-22(直径635マイクロメートルの中実銅製ワイヤー)等を用いてもよい。
被覆層の厚みは、0.1~3.0mmであるものが好ましい。被覆層の厚みは、2.0mm以下であることも好ましい。
高周波伝送ケーブルとしては、同軸ケーブルが挙げられる。同軸ケーブルは、一般に、内部導体、絶縁被覆層、外部導体層および保護被覆層が芯部より外周部に順に積層することからなる構造を有する。本開示の共重合体を含有する成形体は、共重合体を含有する絶縁被覆層として、好適に利用することができる。上記構造における各層の厚さは特に限定されないが、通常、内部導体は直径約0.1~3mmであり、絶縁被覆層は、厚さ約0.3~3mm、外部導体層は、厚さ約0.5~10mm、保護被覆層は、厚さ約0.5~2mmである。
被覆層は、気泡を含有するものであってもよく、気泡が被覆層中に均一に分布しているものが好ましい。
気泡の平均泡径は限定されるものではないが、例えば、60μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、35μm以下であることが更に好ましく、30μm以下であることが更により好ましく、25μm以下であることが特に好ましく、23μm以下であることが殊更に好ましい。また、平均泡径は、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。平均泡径は、電線断面の電子顕微鏡画像を取り、画像処理により各泡の直径を算出し、平均することにより求めることができる。
被覆層は、発泡率が20%以上であってもよい。より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは33%以上であり、更により好ましくは35%以上である。上限は特に限定されないが、例えば、80%である。発泡率の上限は60%であってもよい。発泡率は、((電線被覆材の比重-被覆層の比重)/電線被覆材の比重)×100として求める値である。発泡率は、例えば後述する押出機中のガスの挿入量の調節等により、あるいは、溶解するガスの種類を選択することにより、用途に応じて適宜調整することができる。
被覆電線は、上記心線と上記被覆層との間に別の層を備えていてもよく、被覆層の周囲に更に別の層(外層)を備えていてもよい。被覆層が気泡を含有する場合、本開示の電線は、心線と被覆層の間に非発泡層を挿入した2層構造(スキン-フォーム)や、外層に非発泡層を被覆した2層構造(フォーム-スキン)、更にはスキン-フォームの外層に非発泡層を被覆した3層構造(スキン-フォーム-スキン)であってもよい。非発泡層は特に限定されず、TFE/HFP系共重合体、TFE/PAVE共重合体、TFE/エチレン系共重合体、フッ化ビニリデン系重合体、ポリエチレン〔PE〕等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル〔PVC〕等の樹脂からなる樹脂層であってよい。
被覆電線は、たとえば、押出機を用いて、共重合体を加熱し、共重合体が溶融した状態で心線上に押し出し、被覆層を形成することにより製造することができる。
被覆層の形成に際しては、共重合体を加熱し、共重合体が溶融した状態で、共重合体中にガスを導入することにより、気泡を含有する上記被覆層を形成することもできる。ガスとしては、たとえば、クロロジフルオロメタン、窒素、二酸化炭素等のガス又は上記ガスの混合物を用いることができる。ガスは、加熱した共重合体中に加圧気体として導入してもよいし、化学的発泡剤を共重合体中に混和させることにより発生させてもよい。ガスは、溶融状態の共重合体中に溶解する。
また、本開示の共重合体は、高周波信号伝送用製品の材料として、好適に利用することができる。
上記高周波信号伝送用製品としては、高周波信号の伝送に用いる製品であれば特に限定されず、(1)高周波回路の絶縁板、接続部品の絶縁物、プリント配線基板等の成形板、(2)高周波用真空管のベース、アンテナカバー等の成形体、(3)同軸ケーブル、LANケーブル等の被覆電線等が挙げられる。上記高周波信号伝送用製品は、衛星通信機器、携帯電話基地局などのマイクロ波、特に3~30GHzのマイクロ波を利用する機器に、好適に使用することができる。
上記高周波信号伝送用製品において、本開示の共重合体は、誘電正接が低い点で、絶縁体として好適に用いることができる。
上記(1)成形板としては、良好な電気特性が得られる点で、プリント配線基板が好ましい。上記プリント配線基板としては特に限定されないが、例えば、携帯電話、各種コンピューター、通信機器等の電子回路のプリント配線基板が挙げられる。上記(2)成形体としては、誘電損失が低い点で、アンテナカバーが好ましい。
本開示の共重合体を含有する成形体は、フィルムまたはシートとして好適に利用することができる。
本開示のフィルムは、離型フィルムとして有用である。離型フィルムは、本開示の共重合体を、溶融押出成形、カレンダー成形、プレス成形、流延成形等により成形して製造することができる。均一な薄膜が得られる観点から、溶融押出成形により離型フィルムを製造することができる。
本開示のフィルムは、OA機器に用いるロールの表面に適用することができる。また、本開示の共重合体を、押出成形、圧縮成形、プレス成形などにより必要な形状に成形してシート状やフィルム状、チューブ状に成形し、OA機器ロールまたはOA機器ベルト等の表面材料に使用することができる。特に溶融押出成形法により薄肉のチューブやフィルムを製造することができる。
本開示の共重合体を含有する成形体は、ボトル、チューブ、継手、バルブ、配管部材などとして好適に利用することができる。これらは、薬液の保管や流通のために用いることができる。
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
<1> 本開示の第1の観点によれば、
テトラフルオロエチレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、
パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.4~3.4質量%であり、
372℃におけるメルトフローレートが、0.8~1.4g/10分であり、
官能基数が、主鎖炭素数10個あたり、20個以下である
共重合体が提供される。
<2> 本開示の第2の観点によれば、
パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.6~3.3質量%である第1の観点による共重合体が提供される。
<3> 本開示の第3の観点によれば、
372℃におけるメルトフローレートが、0.9~1.3g/10分である第1または第2の観点による共重合体が提供される。
<4> 本開示の第4の観点によれば、
第1~第3のいずれかの観点による共重合体を含有する押出成形体が提供される。
<5> 本開示の第5の観点によれば、
第1~第3のいずれかの観点による共重合体を含有するトランスファー成形体が提供される。
<6> 本開示の第6の観点によれば、
第1~第3のいずれかの観点による共重合体を含有する成形体であって、前記成形体が、シートまたはパイプである成形体が提供される。
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
(単量体単位の含有量)
各単量体単位の含有量は、NMR分析装置(たとえば、ブルカーバイオスピン社製、AVANCE300 高温プローブ)により測定した。
(メルトフローレート(MFR))
ASTM D1238に従って、メルトインデクサーG-01(東洋精機製作所社製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2.1mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)を求めた。
(官能基数)
共重合体のペレットを、コールドプレスにより成形して、厚さ0.25~0.30mmのフィルムを作製した。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析装置〔FT-IR(Spectrum One、パーキンエルマー社製)〕により40回スキャンし、分析して赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得た。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って試料における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出した。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
参考までに、本開示における官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表2に示す。モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT-IR測定データから決定したものである。
Figure 0007364987000002
(融点)
示差走査熱量計(商品名:X-DSC7000、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、昇温速度10℃/分で200℃から350℃までの1度目の昇温を行い、続けて、冷却速度10℃/分で350℃から200℃まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で200℃から350℃までの2度目の昇温を行い、2度目の昇温過程で生ずる溶融曲線ピークから融点を求めた。
比較例1
5.88L容積の撹拌機付きオートクレーブに純水1.752Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン1.383kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)52g、メタノール19gとを仕込み、系内の温度を35℃に保った。次いで、テトラフルオロエチレン(TFE)を0.64MPaまで圧入した後、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.9gを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEをTFEの供給15g毎に0.6g追加投入した。TFEの追加投入量が484gに達したところで重合を終了させた。未反応のTFEを放出して、オートクレーブ内を大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して502gの粉末を得た。
得られた粉末を、14φスクリュー押出機(井元製作所製)により360℃にて溶融押出して、共重合体のペレットを得た。得られたペレットを用いて上記した方法によりPPVE含有量を測定した。
得られたペレットをポータブルリアクタ(TVS1型、耐圧ガラス工業社製)に入れ、210℃に昇温した。真空引き後、Nガスで20体積%に希釈したFガスを大気圧まで導入した。Fガス導入時から0.5時間後、いったん真空引きし、再度Fガスを導入した。さらにその0.5時間後、再度真空引きし、再度Fガスを導入した。以降、上記Fガス導入及び真空引きの操作を1時間に1回行い続け、210℃の温度下で10時間反応を行った。反応終了後、反応器内をNガスに十分に置換して、フッ素化反応を終了した。フッ素化したペレットを用いて、上記した方法により、各種物性を測定した。
比較例2
PPVEを39g、メタノールを96g、PPVEをTFEの供給15g毎に0.5g追加投入に変更し、乾燥粉末499gを得た以外は、比較例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
比較例3
PPVEを42g、メタノールを105g、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.5g、PPVEをTFEの供給15g毎に0.5g追加投入に変更し、乾燥粉末500gを得た以外は、比較例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
比較例4
PPVEを23g、メタノールを90g、PPVEをTFEの供給15g毎に0.3g追加投入に変更し、乾燥粉末495gを得た以外は、比較例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
比較例5
PPVEを46g、メタノールを44g、PPVEをTFEの供給15g毎に0.5g追加投入に変更し、乾燥粉末501gを得た以外は、比較例1と同様にして、フッ素化していないペレットを得た。
実施例1
PPVEを31g、メタノールを174g、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.5g、PPVEをTFEの供給15g毎に0.4g追加投入に変更し、乾燥粉末497gを得た以外は、比較例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
実施例2
PPVEを39g、メタノールを36g、PPVEをTFEの供給15g毎に0.5g追加投入に変更し、乾燥粉末498gを得た以外は、比較例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
実施例3
PPVEを46g、メタノールを44g、PPVEをTFEの供給15g毎に0.5g追加投入に変更し、乾燥粉末501gを得た以外は、比較例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
実施例および比較例で得られたペレットを用いて、上記した方法により、各種物性を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0007364987000003
表3中の「<6」との記載は、官能基数が6個未満であることを意味する。
次に得られたペレットを用いて、下記の特性を評価した。結果を表4に示す。
(摩耗試験)
ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、厚さ約0.2mmのシート状試験片を作製し、これから10cm×10cmの試験片を切り出した。テーバー摩耗試験機(No.101 特型テーバー式アブレーションテスター、安田精機製作所社製)の試験台に作製した試験片を固定し、試験片表面温度120℃、荷重500g、摩耗輪CS-10(研磨紙#240で20回転研磨したもの)、回転速度60rpmの条件で、テーバー摩耗試験機を用いて摩耗試験を行った。1000回転後の試験片重量を計量し、同じ試験片でさらに4000回転試験後に試験片重量を計量した。次式により、摩耗量を求めた。
摩耗量(mg)=M1-M2
M1:1000回転後の試験片重量(mg)
M2:4000回転後の試験片重量(mg)
(ジメチルカーボネート(DMC)透過度)
ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、厚さ約0.2mmのシート状試験片を作製した。試験カップ(透過面積12.56cm)内にジメチルカーボネート(DMC)を10g入れ、シート状試験片で覆い、PTFEガスケットを挟んで締め付け、密閉した。シート状試験片とDMCが接するようにして、温度60℃で40日間保持した後取出し、室温で1時間放置後に質量減少量を測定した。次式により、DMC透過度(g・cm/m)を求めた。
DMC透過度(g・cm/m)=質量減少量(g)×シート状試験片の厚さ(cm)/透過面積(m
(90℃荷重たわみ率)
ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、厚さ約2.7mmのシート状試験片を作製し、これから80×10mmの試験片を切り出し、電気炉にて100℃で20時間加熱した。得られた試験片を用いた以外は、JIS K-K 7191-1に記載の方法に準じて、ヒートディストーションテスター(安田精機製作所社製)にて、試験温度30~150℃、昇温速度120℃/時間、曲げ応力1.8MPa、フラットワイズ法の条件にて試験を行った。次式により荷重たわみ率を求めた。90℃での荷重たわみ率が小さいシートは、高温時剛性に優れている。
荷重たわみ率(%)=a2/a1×100
a1:試験前の試験片厚み(mm)
a2:90℃でのたわみ量(mm)
(1万回サイクル後引張強度)
島津製作所社製疲労試験機MMT-250NV-10を用いて1万回サイクル後引張強度を測定した。ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、厚さ約2.4mmのシートを作製し、ASTM D1708マイクロダンベル用いて、ダンベル形状(厚み2.4mm、幅5.0mm、測定部長さ22mm)のサンプルを作製した。サンプルを測定治具に装着し、サンプルを装着した状態で測定治具を150℃の恒温槽中に設置した。ストローク0.2mm、周波数100Hzで、一軸方向への引張りを繰り返し、引張り毎の引張強度(ストロークが+0.2mmの時の引張強度)を測定した。以下の式に従って測定値から1万回サイクル後引張強度を算出した。本実施例では、サンプルの断面積は12.0mmである
1万回サイクル後引張強度(mN/mm)=引張強度(1万回)(mN)/サンプルの断面積(mm
1万回サイクル後引張強度は、サンプルの断面積に対する、繰返し荷重を1万回負荷した時の引張強度の比率である。1万回サイクル後引張強度が高いシートは、荷重を1万回負荷した後でも高い引張強度を維持しており、繰り返し荷重に対する耐久性に優れている。
(耐クリープ性評価)
耐クリープ性の測定は、ASTM D395またはJIS K6262:2013に記載の方法に準じた。ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、外径13mm、高さ8mmの成形体を作製した。得られた成形体を切削することにより、外径13mm、高さ6mmの試験片を作製した。作製した試験片を、圧縮装置を用いて、常温で圧縮変形率25%まで圧縮した。圧縮した試験片を圧縮装置に固定したまま、電気炉内に静置し、80℃、72時間放置した。電気炉から圧縮装置を取り出し、室温まで冷却後、試験片を取り外した。回収した試験片を室温で30分放置した後、回収した試験片の高さを測定し、次式により復元割合を求めた。
復元割合(%)=(t-t)/t×100
:スペーサーの高さ(mm)
:圧縮装置から取り外した試験片の高さ(mm)
:圧縮変形させた高さ(mm)
上記の試験においては、t=4.5mm、t=1.5mmである。
(溶融時自重変形試験)
ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、直径13mm、高さ約6.5mmの成形体を作製した。得られた成形体を切削して、高さ6.3mmの試験片を作製した。作製した試験片をSUS製シャーレに入れ、電気炉にて370℃で30分間加熱後、試験片を入れたシャーレごと水冷した。取り出した試験片のシャーレに接していた面(底面)の直径をノギスで計測し、次式により、底面積増加率を算出した。
底面積増加率(%)={加熱後試験片底面積(mm)―加熱前試験片底面積(mm)}/加熱前試験片底面積(mm)×100
底面積増加率が低いほど、成形体が溶融時に自重により変形しにくいことを意味する。底面積増加率が低い成形体を与える共重合体は、押出成形法によって共重合体を成形して、厚いシートや大型のパイプを作製する場合であっても、溶融状態の成形体が変形しにくく、冷却固化した後に所望の形状の成形体が得られる点で優れている。
(210℃引張強度)
ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、2.0mm厚の試験片(圧縮成形)を得た。上記試験片から、ASTM V型ダンベルを用いてダンベル状試験片を切り抜き、得られたダンベル状試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所社製 AG―I 300kN)を使用して、ASTM D638に準じて、50mm/分の条件下で、210℃で引張強度を測定した。
210℃引張強度が高い成形体は、高温で引張力が加わった場合でも破損しにくい。
Figure 0007364987000004

Claims (6)

  1. テトラフルオロエチレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、
    パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.4~3.4質量%であり、
    テトラフルオロエチレン単位の含有量が、全単量体単位に対して、96.6~97.6質量%であり、
    372℃におけるメルトフローレートが、0.8~1.4g/10分であり、
    -CF=CF 、-CF H、-COF、-COOH、-COOCH 、-CONH および-CH OHの官能基数が、主鎖炭素数10個あたり、20個以下である
    共重合体。
  2. パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.6~3.3質量%である請求項1に記載の共重合体。
  3. 372℃におけるメルトフローレートが、0.9~1.3g/10分である請求項1または2に記載の共重合体。
  4. 請求項1または2に記載の共重合体を含有する押出成形体。
  5. 請求項1または2に記載の共重合体を含有するトランスファー成形体。
  6. 請求項1または2に記載の共重合体を含有する成形体であって、前記成形体が、シートまたはパイプである成形体。
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