本開示の蓄電デバイス用外装材は、外側から順に、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、前記基材層は、ポリアミドフィルムを含んでおり、フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定される前記ポリアミドフィルムの結晶化指数が、1.80以上であることを特徴とする。本開示の蓄電デバイス用外装材は、両面テープなどで筐体に固定された蓄電デバイスを筐体から引き剥がす際に、蓄電デバイス用外装材が破損することが抑制されている。
以下、本開示の蓄電デバイス用外装材について詳述する。なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
1.蓄電デバイス用外装材の積層構造と物性
本開示の蓄電デバイス用外装材10は、例えば図1に示すように、外側から順に、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4を備える積層体から構成されている。蓄電デバイス用外装材10において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。蓄電デバイス用外装材10と蓄電デバイス素子を用いて蓄電デバイスを組み立てる際に、蓄電デバイス用外装材10の熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で、周縁部を熱融着させることによって形成された空間に、蓄電デバイス素子が収容される。本開示の蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体において、バリア層3を基準とし、バリア層3よりも熱融着性樹脂層4側が内側であり、バリア層3よりも基材層1側が外側である。
蓄電デバイス用外装材10は、例えば図2から図4に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着剤層2を有していてもよい。また、例えば図3及び図4に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着層5を有していてもよい。また、図5に示すように、基材層1の外側(熱融着性樹脂層4側とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層6などが設けられていてもよい。
蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、上限については、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、好ましくは約180μm以下、約155μm以下、約120μm以下が挙げられ、下限については、蓄電デバイス素子を保護するという蓄電デバイス用外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、35~180μm程度、35~155μm程度、35~120μm程度、45~180μm程度、45~155μm程度、45~120μm程度、60~180μm程度、60~155μm程度、60~120μm程度が挙げられ、これらの中でも特に60~120μmが好ましい。
本開示の蓄電デバイス用外装材10の基材層1は、ポリアミドフィルムを含んでおり、フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定されるポリアミドフィルムの結晶化指数が、1.80以上である。ポリアミドフィルムについて、結晶化指数(透過法)を測定する方法は以下の通りである。
<ポリアミドフィルムの結晶化指数(透過法)の測定>
ポリアミドフィルムを100mm×100mmの正方形に裁断してサンプルを作製する。得られたサンプルをFT-IRの透過測定モードを用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で赤外吸収スペクトル測定を実施する。装置としては、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製:Nicolet iS10が使用できる。得られた吸収スペクトルから、ナイロンのα晶の吸収に由来する1200cm-1付近のピーク強度Pと、結晶とは無関係の吸収に由来する1370cm-1付近のピーク強度Qを測定し、ピーク強度Qに対するピーク強度Pの強度比X=P/Qを結晶化指数として算出する。なお、蓄電デバイスや蓄電デバイス用外装材からポリアミドフィルムを取得して、ポリアミドフィルムの結晶化指数を測定する場合には、蓄電デバイスの熱融着部や側面ではなく、天面又は底面から蓄電デバイス用外装材を取得してサンプルを作製する。
(測定条件)
手法:透過法
波数分解能:8cm-1
積算回数:32回
検出器:DTGS検出器
入射角:45°
ベースライン:波数1100cm-1から1400cm-1間で直線近似として求めた。
吸収ピーク強度Y1200:波数1195cm-1から1205cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
吸収ピーク強度Y1370:波数1365cm-1から1375cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
ポリアミドフィルムにおいて、前記の結晶化指数(透過法)は、1.80以上であればよいが、前述の引き剥がしの際に蓄電デバイス用外装材が破損することをより一層効果的に抑制する観点から、より好ましくは1.85以上である。また、前記の結晶化指数(透過法)の上限については、特に制限されないが、例えば2.50以下、2.10以下などが挙げられる。当該結晶化指数の好ましい範囲としては、例えば、1.80~2.50、1.85~2.50、1.80~2.10、1.85~2.10などが挙げられる。
蓄電デバイス用外装材10の基材層1に含まれるポリアミドフィルムの結晶化指数(透過法)を1.80以上にまで高める方法としては、ポリアミドフィルムの製造工程における延伸倍率、熱固定温度、さらには、後加熱の温度や時間などによって結晶化を促進する(α晶の生成を促進する)方法が挙げられる。
また、フーリエ変換赤外分光法のATR法により測定される蓄電デバイス用外装材の基材層の結晶化指数(ATR法)については、前述の引き剥がしの際に蓄電デバイス用外装材が破損することをより一層効果的に抑制する観点から、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.55以上、さらに好ましくは1.60以上、特に好ましくは1.65以上である。また、当該結晶化指数(ATR法)の上限については、特に制限されないが、例えば2.50以下、1.80以下などが挙げられる。当該結晶化指数(ATR法)を測定する方法は以下の通りである。当該結晶化指数の好ましい範囲としては、例えば、1.50~2.50、1.60~2.50、1.65~2.50、1.50~1.80、1.60~1.80、1.65~1.80などが挙げられる。
<蓄電デバイス用外装材の基材層の結晶化指数(ATR法)の測定>
蓄電デバイス用外装材を100mm×100mmの正方形に裁断してサンプルを作製する。得られたサンプルの外側に位置しているポリアミドフィルムの表面を、FT-IRのATR測定モードを用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で赤外吸収スペクトル測定を実施する。装置としては、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製:Nicolet iS10が使用できる。得られた吸収スペクトルから、ナイロンのα晶の吸収に由来する1200cm-1付近のピーク強度Pと、結晶とは無関係の吸収に由来する1370cm-1付近のピーク強度Qを測定し、ピーク強度Qに対するピーク強度Pの強度比X=P/Qを結晶化指数として算出する。なお、蓄電デバイスから蓄電デバイス用外装材を取得して、基材層の結晶化指数を測定する場合には、蓄電デバイスの熱融着部や側面ではなく、天面又は底面から蓄電デバイス用外装材を取得してサンプルを作製する。
(測定条件)
手法:マクロATR法
波数分解能:8cm-1
積算回数:32回
検出器:DTGS検出器
ATRプリズム:Ge
入射角:45°
ベースライン:波数1100cm-1から1400cm-1間で直線近似として求めた。
吸収ピーク強度Y1200:波数1195cm-1から1205cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
吸収ピーク強度Y1370:波数1365cm-1から1375cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
なお、蓄電デバイス用外装材10の外側の表面が基材層1のポリアミドフィルムにより構成されている場合には、蓄電デバイス用外装材10をそのまま結晶化指数(ATR法)の測定対象とすることができる。また、基材層1が後述のように多層構造を有しており、ポリアミドフィルムとは異なる樹脂フィルム(例えばポリエステルフィルム)がポリアミドフィルムよりも外側に位置している場合や、基材層1の外側に後述の表面被覆層6が積層されている場合など、蓄電デバイス用外装材10の外側の表面が基材層1のポリアミドフィルムにより構成されていない場合には、ポリアミドフィルムよりも外側に位置する層を蓄電デバイス用外装材10から取り除き、ポリアミドフィルムの表面を露出させた状態で、結晶化指数(ATR法)を測定することができる。
蓄電デバイス用外装材10の基材層1に含まれるポリアミドフィルムの結晶化指数(ATR法)を1.50以上にまで高める方法としては、ポリアミドフィルムの製造工程における延伸倍率、熱固定温度、さらには、後加熱の温度や時間などによって結晶化を促進する(α晶の生成を促進する)方法が挙げられる。
2.蓄電デバイス用外装材を形成する各層
[基材層1]
本開示において、基材層1は、蓄電デバイス用外装材の基材としての機能を発揮させることなどを目的として設けられる層である。基材層1は、蓄電デバイス用外装材の外層側に位置する。
基材層1は、ポリアミドフィルムを含んでいる。前記の通り、フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定されるポリアミドフィルムの結晶化指数は、1.80以上である。
ポリアミドフィルムを形成するポリアミドとしては、α晶を有するものであればよく、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族ポリアミド等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリアミドフィルムは、ナイロンフィルムであることが好ましい。
ポリアミドフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。基材層1が未延伸フィルムを含む場合、蓄電デバイス用外装材10の各層を積層する際に、押出して成形して未延伸フィルムとしてもよいし、予め用意した未延伸フィルムを貼り合わせてもよいし、樹脂(ポリアミド)を塗布して未延伸フィルムとしてもよい。樹脂を塗布する方法としては、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、押出コーティング法などが挙げられる。また、基材層1が延伸フィルムである場合、蓄電デバイス用外装材10の各層を積層する際に、予め用意した延伸フィルムを貼り合わせる。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。
ポリアミドフィルムは、特に二軸延伸ナイロンフィルムであることが好ましい。
本開示の蓄電デバイス用外装材10においては、フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定される結晶化指数が1.80以上であるポリアミドフィルムを、基材層1に用いて製造することもできるし、蓄電デバイス用外装材10の製造過程でポリアミドフィルムに熱を加えることにより、結晶化指数を高めて、当該結晶化指数を1.80以上とすることもできる。後述の「5.ポリアミドフィルム」の項目で説明するとおり、本開示の蓄電デバイス用外装材10においては、フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定される結晶化指数(透過法)が、1.80以上であるポリアミドフィルムを基材層1に用いて製造されることが好ましい。すなわち、前記の結晶化指数(透過法)が予め1.80以上に調整されたポリアミドフィルムを基材層1に用い、バリア層3、熱融着性樹脂層4などの各層と積層することによって、本開示の蓄電デバイス用外装材10を製造することが好ましい。なお、後述の実施例においても示されているように、蓄電デバイス用外装材10に適用される前のポリアミドフィルムよりも、蓄電デバイス用外装材10に積層されて基材層1に含まれるポリアミドフィルムの結晶化指数(透過法)を高めることができる。
ポリアミドフィルムの厚みについては、前述の引き剥がしの際に蓄電デバイス用外装材が破損することをより一層効果的に抑制する観点から、好ましくは約3μm以上、より好ましくは約10μm以上であり、また、好ましくは約50μm以下、より好ましくは約35μm以下であり、好ましい範囲としては、3~50μm程度、3~35μm程度、10~50μm程度、10~35μm程度が挙げられ、これらの中でも10~35μm程度が特に好ましい。
基材層1は、ポリアミドフィルムとは異なる樹脂フィルムをさらに有していてもよい。ポリアミドフィルムとは異なる樹脂フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物が挙げられる。また、樹脂は、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。これらの中でも、好ましくはポリエステルが挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
ポリエステルフィルムは、延伸ポリエステルフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエステルフィルムであることがより好ましい。
ポリエステルフィルムは、特に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
基材層1がポリアミドフィルムとは異なる樹脂フィルムをさらに有する場合、他の樹脂フィルムの厚みについては、本発明の効果を阻害しないことを限度として、特に制限されず、好ましくは約3μm以上、より好ましくは約10μm以上であり、また、好ましくは約50μm以下、より好ましくは約35μm以下であり、好ましい範囲としては、3~50μm程度、3~35μm程度、10~50μm程度、10~35μm程度が挙げられ、これらの中でも10~35μm程度が特に好ましい。
基材層1は、ポリアミドフィルムを含んでいれば、単層であってもよいし、2層以上により構成されていてもよく、蓄電デバイス用外装材10を薄型化する観点から、ポリアミドフィルムの単層であることが好ましい。
基材層1が2層以上により構成されている場合、基材層1は、樹脂フィルムを接着剤などで積層させた積層体であってもよいし、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体であってもよい。また、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体を、未延伸のまま基材層1としてもよいし、一軸延伸または二軸延伸して基材層1としてもよい。
基材層1において、2層以上の樹脂フィルムの積層体の具体例としては、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとの積層体、2層以上のナイロンフィルムの積層体などが挙げられ、好ましくは、延伸ナイロンフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの積層体、2層以上の延伸ナイロンフィルムの積層体が好ましい。例えば、基材層1が2層の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリアミド樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体、またはポリエステル樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体が好ましく、ナイロンフィルムとナイロンフィルムの積層体、またはポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体がより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、基材層1が2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムが基材層1の最外層に位置することが好ましい。
基材層1が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、2層以上の樹脂フィルムは、接着剤を介して積層させてもよい。好ましい接着剤については、後述の接着剤層2で例示する接着剤と同様のものが挙げられる。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着剤としてポリウレタン接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着剤の厚みとしては、例えば2~5μm程度が挙げられる。また、樹脂フィルムにアンカーコート層を形成し積層させても良い。アンカーコート層は、後述の接着剤層2で例示する接着剤と同様のものがあげられる。このとき、アンカーコート層の厚みとしては、例えば0.01から1.0μm程度が挙げられる。
また、基材層1の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本開示において、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4~15mg/m2程度、さらに好ましくは5~14mg/m2程度が挙げられる。
基材層1の表面に存在する滑剤は、基材層1を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層1の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
基材層1の総厚みについては、基材としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、3~50μm程度、好ましくは10~35μm程度が挙げられる。
[接着剤層2]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3との接着性を高めることを目的として、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は限定されないが、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、2液硬化型接着剤(2液性接着剤)であってもよく、1液硬化型接着剤(1液性接着剤)であってもよく、硬化反応を伴わない樹脂でもよい。また、接着剤層2は単層であってもよいし、多層であってもよい。
接着剤に含まれる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;ポリエーテル;ポリウレタン;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド;ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;セルロース;(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン接着剤が挙げられる。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。
ポリウレタン接着剤としては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。接着剤層2がポリウレタン接着剤により形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与され、側面に電解液が付着しても基材層1が剥がれることが抑制される。
また、接着剤層2は、接着性を阻害しない限り他成分の添加が許容され、着色剤や熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラーなどを含有してもよい。接着剤層2が着色剤を含んでいることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
顔料の種類は、接着剤層2の接着性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン-ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
着色剤の中でも、例えば蓄電デバイス用外装材の外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.05~5μm程度、好ましくは0.08~2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
接着剤層2における顔料の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が着色されれば特に制限されず、例えば5~60質量%程度、好ましくは10~40質量%が挙げられる。
接着剤層2の厚みは、基材層1とバリア層3とを接着できれば、特に制限されないが、下限については、例えば、約1μm以上、約2μm以上が挙げられ、上限については、約10μm以下、約5μm以下が挙げられ、好ましい範囲については、1~10μm程度、1~5μm程度、2~10μm程度、2~5μm程度が挙げられる。
[着色層]
着色層は、基材層1とバリア層3との間に必要に応じて設けられる層である(図示を省略する)。接着剤層2を有する場合には、基材層1と接着剤層2との間、接着剤層2とバリア層3との間に着色層を設けてもよい。また、基材層1の外側に着色層を設けてもよい。着色層を設けることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。
着色層は、例えば、着色剤を含むインキを基材層1の表面、接着剤層2の表面、またはバリア層3の表面に塗布することにより形成することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
着色層に含まれる着色剤の具体例としては、[接着剤層2]の欄で例示したものと同じものが例示される。
[バリア層3]
蓄電デバイス用外装材において、バリア層3は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。
バリア層3としては、例えば、バリア性を有する金属箔、蒸着膜、樹脂層などが挙げられる。蒸着膜としては金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜などが挙げられ、樹脂層としてはポリ塩化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類やテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類やフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類などのフッ素含有樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。また、バリア層3としては、これらの蒸着膜及び樹脂層の少なくとも1層を設けた樹脂フィルムなども挙げられる。バリア層3は、複数層設けてもよい。バリア層3は、金属材料により構成された層を含むことが好ましい。バリア層3を構成する金属材料としては、具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、鋼板などが挙げられ、金属箔として用いる場合は、アルミニウム合金箔及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含むことが好ましい。
アルミニウム合金箔は、蓄電デバイス用外装材の成形性を向上させる観点から、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム合金などにより構成された軟質アルミニウム合金箔であることがより好ましく、より成形性を向上させる観点から、鉄を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。鉄を含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、鉄の含有量は、0.1~9.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた成形性を有する蓄電デバイス用外装材を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた蓄電デバイス用外装材を得ることができる。軟質アルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、又はJIS H4000:2014 A8079P-Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。また必要に応じて、ケイ素、マグネシウム、銅、マンガンなどが添加されていてもよい。また軟質化は焼鈍処理などで行うことができる。
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系のステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに成形性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供する観点から、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
バリア層3の厚みは、金属箔の場合、少なくとも水分の浸入を抑止するバリア層としての機能を発揮すればよく、例えば9~200μm程度が挙げられる。バリア層3の厚みは、例えば、上限については、好ましくは約85μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、特に好ましくは約35μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約10μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上が挙げられ、当該厚みの好ましい範囲としては、10~85μm程度、10~50μm程度、10~40μm程度、10~35μm程度、20~85μm程度、20~50μm程度、20~40μm程度、20~35μm程度、25~85μm程度、25~50μm程度、25~40μm程度、25~35μm程度が挙げられ、これらの中でも特に25~40μm程度が好ましい。バリア層3がアルミニウム合金箔により構成されている場合、上述した範囲が特に好ましい。また、特に、バリア層3がステンレス鋼箔により構成されている場合、ステンレス鋼箔の厚みとしては、上限については、好ましくは約60μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、さらに好ましくは約30μm以下、特に好ましくは約25μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上が挙げられ、好ましい厚みの範囲としては、10~60μm程度、10~50μm程度、10~40μm程度、10~30μm程度、10~25μm程度、15~60μm程度、15~50μm程度、15~40μm程度、15~30μm程度、15~25μm程度が挙げられる。
また、バリア層3が金属箔の場合は、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも基材層と反対側の面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。バリア層3は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、ニッケルやクロムなどのメッキ処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をバリア層の表面に行い、バリア層に耐腐食性を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行ってもよいし、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。また、1層だけではなく多層化することもできる。さらに、これらの処理のうち、熱水変成処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、バリア層3が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてバリア層3とする。
耐腐食性皮膜は、蓄電デバイス用外装材の成形時において、バリア層(例えば、アルミニウム合金箔)と基材層との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、バリア層表面の溶解、腐食、特にバリア層がアルミニウム合金箔である場合にバリア層表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、バリア層表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層とバリア層とのデラミネーション防止、成形時の基材層とバリア層とのデラミネーション防止の効果を示す。
化成処理によって形成される耐腐食性皮膜としては、種々のものが知られており、主には、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物、及び希土類酸化物のうち少なくとも1種を含む耐腐食性皮膜などが挙げられる。リン酸塩、クロム酸塩を用いた化成処理としては、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、リン酸-クロム酸塩処理、クロム酸塩処理などが挙げられ、これらの処理に用いるクロム化合物としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどが挙げられる。また、これらの処理に用いるリン化合物としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などが挙げられる。また、クロメート処理としてはエッチングクロメート処理、電解クロメート処理、塗布型クロメート処理などが挙げられ、塗布型クロメート処理が好ましい。この塗布型クロメート処理は、バリア層(例えばアルミニウム合金箔)の少なくとも内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後、脱脂処理面にリン酸Cr(クロム)塩、リン酸Ti(チタン)塩、リン酸Zr(ジルコニウム)塩、リン酸Zn(亜鉛)塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液、または、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液、あるいは、これらと合成樹脂などとの混合物からなる処理液をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法等の周知の塗工法で塗工し、乾燥する処理である。処理液は例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。また、このとき用いる樹脂成分としては、フェノール系樹脂やアクリル系樹脂などの高分子などが挙げられ、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、またはこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等の誘導体であることが好ましい。特にポリアクリル酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩等のポリアクリル酸の誘導体が好ましい。本開示において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体を意味している。また、アクリル系樹脂は、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体であることも好ましく、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩であることも好ましい。アクリル系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万程度であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。アミノ化フェノール重合体は、例えば、フェノール化合物又はナフトール化合物とホルムアルデヒドとを重縮合して上記一般式(1)又は一般式(3)で表される繰返し単位からなる重合体を製造し、次いでホルムアルデヒド及びアミン(R1R2NH)を用いて官能基(-CH2NR1R2)を上記で得られた重合体に導入することにより、製造される。アミノ化フェノール重合体は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
耐腐食性皮膜の他の例としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理によって形成される薄膜が挙げられる。コーティング剤には、さらにリン酸またはリン酸塩、ポリマーを架橋させる架橋剤を含んでもよい。希土類元素酸化物ゾルには、液体分散媒中に希土類元素酸化物の微粒子(例えば、平均粒径100nm以下の粒子)が分散されている。希土類元素酸化物としては、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ネオジウム、酸化ランタン等が挙げられ、密着性をより向上させる観点から酸化セリウムが好ましい。耐腐食性皮膜に含まれる希土類元素酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。希土類元素酸化物ゾルの液体分散媒としては、例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノ化フェノールなどが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、あるいは(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記リン酸またはリン酸塩が、縮合リン酸または縮合リン酸塩であることが好ましい。
耐腐食性皮膜の一例としては、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをバリア層の表面に塗布し、150℃以上で焼付け処理を行うことにより形成したものが挙げられる。
耐腐食性皮膜は、必要に応じて、さらにカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも一方を積層した積層構造としてもよい。カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーとしては、上述したものが挙げられる。
なお、耐腐食性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。
化成処理においてバリア層3の表面に形成させる耐腐食性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、塗布型クロメート処理を行う場合であれば、バリア層3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で例えば0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、リン化合物がリン換算で例えば0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が例えば1.0~200mg程度、好ましくは5.0~150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
耐腐食性皮膜の厚みとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層や熱融着性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm~20μm程度、より好ましくは1nm~100nm程度、さらに好ましくは1nm~50nm程度が挙げられる。なお、耐腐食性皮膜の厚みは、透過電子顕微鏡による観察、または、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐腐食性皮膜の組成の分析により、例えば、CeとPとOからなる2次イオン(例えば、Ce2PO4
+、CePO4
-などの少なくとも1種)や、例えば、CrとPとOからなる2次イオン(例えば、CrPO2
+、CrPO4
-などの少なくとも1種)に由来するピークが検出される。
化成処理は、耐腐食性皮膜の形成に使用される化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層の表面に塗布した後に、バリア層の温度が70~200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層に化成処理を施す前に、予めバリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。また、脱脂処理にフッ素含有化合物を無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、このような場合には脱脂処理だけを行ってもよい。
[熱融着性樹脂層4]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮する層(シーラント層)である。
熱融着性樹脂層4を構成している樹脂については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む樹脂が好ましい。熱融着性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。また、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。熱融着性樹脂層4が無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記のポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。
また、熱融着性樹脂層4は、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4が滑剤を含む場合、蓄電デバイス用外装材の成形性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。滑剤の具体例としては、基材層1で例示したものが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、好ましくは10~50mg/m2程度、さらに好ましくは15~40mg/m2程度が挙げられる。
熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層4の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~85μm程度が挙げられる。なお、例えば、後述の接着層5の厚みが10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~45μm程度が挙げられ、例えば後述の接着層5の厚みが10μm未満である場合や接着層5が設けられていない場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35~85μm程度が挙げられる。
[接着層5]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着層5は、バリア層3(又は耐酸性皮膜)と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、例えば接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。なお、接着層5の形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましく、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンが挙げられる。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。また、接着層5を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
バリア層3と熱融着性樹脂層4とを強固に接着する観点から、接着層5は、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
さらに、蓄電デバイス用外装材の厚みを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた蓄電デバイス用外装材とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
また、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層5は、ポリウレタン、ポリエステル、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリウレタン及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。ポリエステルとしては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層5は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。なお、接着層5に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
また、バリア層3と接着層5との密着性をより高める観点から、接着層5は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C-O-C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ポリウレタンなどが挙げられる。接着層5がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
接着層5における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50~2000程度、より好ましくは100~1000程度、さらに好ましくは200~800程度が挙げられる。なお、第1の開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
ポリウレタンとしては、特に制限されず、公知のポリウレタンを使用することができる。接着層5は、例えば、2液硬化型ポリウレタンの硬化物であってもよい。
接着層5における、ポリウレタンの割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
なお、接着層5が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物は、それぞれ、硬化剤として機能する。
接着層5の厚さは、上限については、好ましくは、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約5μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは、約0.1μm以上、約0.5μm以上が挙げられ、当該厚さの範囲としては、好ましくは、0.1~50μm程度、0.1~40μm程度、0.1~30μm程度、0.1~20μm程度、0.1~5μm程度、0.5~50μm程度、0.5~40μm程度、0.5~30μm程度、0.5~20μm程度、0.5~5μm程度が挙げられる。より具体的には、接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合は、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは1~5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。なお、接着層5が接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、例えば、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、接着層5を形成することができる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合、例えば、熱融着性樹脂層4と接着層5との押出成形により形成することができる。
[表面被覆層6]
本開示の蓄電デバイス用外装材は、意匠性、耐電解液性、耐傷性、成形性などの向上の少なくとも一つを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層3とは反対側)に、表面被覆層6を備えていてもよい。表面被覆層6は、蓄電デバイス用外装材を用いて蓄電デバイスを組み立てた時に、蓄電デバイス用外装材の最外層側に位置する層である。
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂により形成することができる。
表面被覆層6を形成する樹脂が硬化型の樹脂である場合、当該樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれであってもよいが、好ましくは2液硬化型である。2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン、2液硬化型ポリエステル、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも2液硬化型ポリウレタンが好ましい。
2液硬化型ポリウレタンとしては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタンが挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタンが挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。表面被覆層6がポリウレタンにより形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与される。
表面被覆層6は、表面被覆層6の表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層6やその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、前述した滑剤や、アンチブロッキング剤、艶消し剤、難燃剤、酸化防止剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、平均粒子径が0.5nm~5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
添加剤は、無機物及び有機物のいずれであってもよい。また、添加剤の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、鱗片状などが挙げられる。
添加剤の具体例としては、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロナイト、マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施してもよい。
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、表面被覆層6を形成する樹脂を塗布する方法が挙げられる。表面被覆層6に添加剤を配合する場合には、添加剤を混合した樹脂を塗布すればよい。
表面被覆層6の厚みとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されず、例えば0.5~10μm程度、好ましくは1~5μm程度が挙げられる。
3.蓄電デバイス用外装材の製造方法
蓄電デバイス用外装材の製造方法については、本開示の蓄電デバイス用外装材が備える各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、外側から順に、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4がこの順となるように積層する工程を備える方法が挙げられる。具体的には、本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法は、外側から順に、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とが積層された積層体を得る工程を備えており、前記基材層は、ポリアミドフィルムを含んでおり、フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定される前記ポリアミドフィルムの結晶化指数(透過法)が、1.80以上である。
本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布、乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に熱融着性樹脂層4を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法、押出ラミネート法などの方法により積層すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法、タンデムラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法や、積層体Aのバリア層3上に接着層5が積層した積層体を形成し、これを熱融着性樹脂層4とサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)、(4)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を溶液コーティングし、乾燥させる方法や、さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4を積層する方法などが挙げられる。
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層6を積層する。表面被覆層6は、例えば表面被覆層6を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層6を形成した後、基材層1の表面被覆層6とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、外側から順に、必要に応じて設けられる表面被覆層6/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/バリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4を備える積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層2及び接着層5の接着性を強固にするために、さらに、加熱処理に供してもよい。
蓄電デバイス用外装材において、積層体を構成する各層には、必要に応じて、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施すことにより加工適性を向上させてもよい。例えば、基材層1のバリア層3とは反対側の表面にコロナ処理を施すことにより、基材層1表面へのインクの印刷適性を向上させることができる。
4.蓄電デバイス用外装材の用途
本開示の蓄電デバイス用外装材は、正極、負極、電解質等の蓄電デバイス素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を収容して、蓄電デバイスとすることができる。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を、本開示の蓄電デバイス用外装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、蓄電デバイス素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材を使用した蓄電デバイスが提供される。なお、本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する場合、本開示の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂部分が内側(蓄電デバイス素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
蓄電デバイスは、一般に、各種製品の筐体に両面テープや接着剤を介して固定される。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材10は、各種製品の筐体に両面テープや接着剤を介して固定される。筐体の材質としては、製品の種類によって様々であり、例えばステンレス鋼、アルミニウム合金、ニッケル合金などの金属、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレンなどのプラスチック、ガラスなど多岐に亘る。
また、蓄電デバイスと筐体との接着強度は、例えば、蓄電デバイスを筐体から引き剥がすことが可能な程度に調整される。蓄電デバイスと筐体との剥離強度は、例えば、後述の(両面テープの剥離強度の測定)で測定されるステンレス鋼板に対する剥離強度が5~15N/7.5mm程度となるような両面テープを用いて固定されていることが好ましい。蓄電デバイス用外装材10は、筐体に対する剥離強度が5~15N/7.5mm程度となる両面テープで筐体に固定されている蓄電デバイスに対して、好適に使用することができる。
5.ポリアミドフィルム
本開示のポリアミドフィルムは、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材の基材層に用いるためのポリアミドフィルムであって、フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定される結晶化指数(透過法)が、1.80以上である。蓄電デバイス用外装材10の詳細については、前述の通りである。
本開示のポリアミドフィルムを蓄電デバイス用外装材の基材層1に用いることにより、蓄電デバイス用外装材10の基材層1のポリアミドフィルムについて、結晶化指数(透過法)を好適に1.80以上に設定することができ、前述の引き剥がしの際に蓄電デバイス用外装材が破損することを効果的に抑制することができる。すなわち、前記の結晶化指数(透過法)が予め1.80以上に調整された本開示のポリアミドフィルムを基材層1に用い、バリア層3、熱融着性樹脂層4などの各層と積層することによって、本開示の蓄電デバイス用外装材10を製造することが好ましい。前記の通り、蓄電デバイス用外装材10に適用される前のポリアミドフィルムよりも、蓄電デバイス用外装材10に積層されて基材層1に含まれるポリアミドフィルムの結晶化指数(透過法)を高めることができる。具体的には、蓄電デバイス用外装材10の製造過程でポリアミドフィルムに熱を加えることにより、結晶化指数(透過法)を高めることもできる。
本開示のポリアミドフィルムについて、結晶化指数(透過法)を測定する方法は、前記の<ポリアミドフィルムの結晶化指数(透過法)の測定>の項目に記載の通りである。
また、前述の引き剥がしの際に蓄電デバイス用外装材が破損することをより一層効果的に抑制する観点から、本開示のポリアミドフィルムは、フーリエ変換赤外分光法のATR法により測定される結晶化指数(ATR法)が、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.55以上、さらに好ましくは1.60以上、特に好ましくは1.65以上である。また、当該結晶化指数(ATR法)の上限については、特に制限されないが、例えば2.50以下、1.80以下などが挙げられる。当該結晶化指数の好ましい範囲としては、例えば、1.50~2.50、1.60~2.50、1.65~2.50、1.50~1.80、1.60~1.80、1.65~1.80などが挙げられる。当該結晶化指数(ATR法)を測定する方法は以下の通りである。
<ポリアミドフィルムの結晶化指数(ATR法)の測定>
ポリアミドフィルムを100mm×100mmの正方形に裁断してサンプルを作製する。得られたサンプルの表面をFT-IRのATR測定モードを用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で赤外吸収スペクトル測定を実施する。装置としては、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製:Nicolet iS10が使用できる。得られた吸収スペクトルから、ナイロンのα晶の吸収に由来する1200cm-1付近のピーク強度Pと、結晶とは無関係の吸収に由来する1370cm-1付近のピーク強度Qを測定し、ピーク強度Qに対するピーク強度Pの強度比X=P/Qを結晶化指数として算出する。
(測定条件)
手法:マクロATR法
波数分解能:8cm-1
積算回数:32回
検出器:DTGS検出器
ATRプリズム:Ge
入射角:45°
ベースライン:波数1100cm-1から1400cm-1間で直線近似として求めた。
吸収ピーク強度Y1200:波数1195cm-1から1205cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
吸収ピーク強度Y1370:波数1365cm-1から1375cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
ポリアミドフィルムを形成するポリアミドの具体例としては、蓄電デバイス用外装材10の基材層1の項目で説明した通りである。ポリアミドフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。樹脂を塗布する方法としては、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、押出コーティング法などが挙げられる。
ポリアミドフィルムは、特に二軸延伸ナイロンフィルムであることが好ましい。
ポリアミドフィルムの厚みについては、前述の引き剥がしの際に蓄電デバイス用外装材が破損することをより一層効果的に抑制する観点から、好ましくは約3μm以上、より好ましくは約10μm以上であり、また、好ましくは約50μm以下、より好ましくは約35μm以下であり、好ましい範囲としては、3~50μm程度、3~35μm程度、10~50μm程度、10~35μm程度が挙げられ、これらの中でも10~35μm程度が特に好ましい。
ポリアミドフィルムの表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。添加剤の詳細については、蓄電デバイス用外装材10の基材層1の項目で説明した通りである。
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
<蓄電デバイス用外装材の製造>
実施例1-3及び比較例1-2
基材層として、それぞれ、延伸ナイロン(ONy)フィルム(厚さ25μm)を準備した。後述の通り、実施例1-3及び比較例1-2で使用した延伸ナイロンフィルムは、それぞれ、延伸倍率、熱固定温度を変更して結晶化指数を表1に記載の値に調整したものである。延伸ナイロンフィルムには、滑剤としてエルカ酸アミドが塗布されている。バリア層として、アルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H-O(厚さ40μm))を用意した。次に、アルミニウム合金箔の一方面に、接着剤(2液型ウレタン接着剤)を塗布し、乾燥させた。次いで、バリア層上の接着剤と基材層をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層(厚さ25μm)/接着剤層(硬化後の厚さ3μm)/バリア層(厚さ40μm)の積層体を作製した。アルミニウム合金箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム合金箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム合金箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
次に、上記で得られた各積層体のバリア層の上に、接着層(厚さ23μm)としての無水マレイン酸変性ポリプロピレンと、熱融着性樹脂層(厚さ23μm)としてのランダムポリプロピレンとを共押出しすることにより、バリア層の上に接着層/熱融着性樹脂層とを積層させて、エージングして、外側から順に、基材層(厚さ25μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/接着層(23μm)/熱融着性樹脂層(23μm)が積層された積層体(総厚み114μm)を得た。
<蓄電デバイス用外装材の基材層の結晶化指数(ATR法)の測定>
蓄電デバイス用外装材を100mm×100mmの正方形に裁断してサンプルを作製した。得られたサンプルの外側に位置している延伸ナイロンフィルムの表面をサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製:Nicolet iS10 FT-IRのATR測定モードを用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で赤外吸収スペクトル測定を実施した。得られた吸収スペクトルから、ナイロンのα晶の吸収に由来する1200cm-1付近のピーク強度Pと、結晶とは無関係の吸収に由来する1370cm-1付近のピーク強度Qを測定し、ピーク強度Qに対するピーク強度Pの強度比X=P/Qを結晶化指数として算出した。結果を表1に示す。
(測定条件)
手法:マクロATR法
波数分解能:8cm-1
積算回数:32回
検出器:DTGS検出器
ATRプリズム:Ge
入射角:45°
ベースライン:波数1100cm-1から1400cm-1間で直線近似として求めた。
吸収ピーク強度Y1200:波数1195cm-1から1205cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
吸収ピーク強度Y1370:波数1365cm-1から1375cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
<延伸ナイロンフィルムの結晶化指数(透過法及びATR法)の測定>
蓄電デバイス用外装材の基材層に用いた延伸ナイロンフィルムを100mm×100mmの正方形に裁断してサンプルを作製した。得られたサンプルの表面をサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製:Nicolet iS10 FT-IRの透過測定モード又はATR測定モードを用いて、それぞれ、温度25℃、相対湿度50%の環境下で赤外吸収スペクトル測定を実施した。得られた吸収スペクトルから、ナイロンのα晶の吸収に由来する1200cm-1付近のピーク強度Pと、結晶とは無関係の吸収に由来する1370cm-1付近のピーク強度Qを測定し、ピーク強度Qに対するピーク強度Pの強度比X=P/Qを結晶化指数として算出した。結果を表1に示す。
(測定条件(透過法))
手法:透過法
波数分解能:8cm-1
積算回数:32回
検出器:DTGS検出器
入射角:45°
ベースライン:波数1100cm-1から1400cm-1間で直線近似として求めた。
吸収ピーク強度Y1200:波数1195cm-1から1205cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
吸収ピーク強度Y1370:波数1365cm-1から1375cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
(測定条件(ATR法))
手法:マクロATR法
波数分解能:8cm-1
積算回数:32回
検出器:DTGS検出器
ATRプリズム:Ge
入射角:45°
ベースライン:波数1100cm-1から1400cm-1間で直線近似として求めた。
吸収ピーク強度Y1200:波数1195cm-1から1205cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
吸収ピーク強度Y1370:波数1365cm-1から1375cm-1の範囲におけるピーク強度の最大値からベースラインの値を引いた値
<蓄電デバイスの引き剥がし試験>
蓄電デバイスの引き剥がし試験を以下の手順により行った。図5から図8を参照しながら、説明する。まず、蓄電デバイスの引き剥がし試験に用いるサンプルの作製手順を、図5を参照しながら説明する。図5aに示すように、蓄電デバイス用外装材を縦(MD)200mm、横(TD)90mmの矩形状に裁断する。次に、縦55mm(MD)×横32mm(TD)の口径の成型金型(雌型)とこれに対応した成型金型(雄型)を用いて、蓄電デバイス用外装材の短辺から15mm離れた位置に、熱融着性樹脂層側から5.0mmの深さに冷間成形し、凹部M(図5aの破線で囲まれた領域)を形成した。次に、長さ55mm、幅32mm、厚さ5mmのアクリル板を凹部Mに挿入した(図5b、c)。次に、凹部Mが内側になるようにして、成型後の蓄電デバイス用外装材を折り目Pの位置(凹部Mの短辺に沿った位置)でTD方向に2つ折りにした(図5d)。次に、凹部Mの周縁に沿うようにして、熱融着性樹脂層同士が重なり合っている部分をMD、TDに沿って3箇所ヒートシール(190℃、3秒、面圧1MPa)して、凹部Mを密封した(図5e)。図5eにおいて、着色された領域Sがヒートシールされている部分である。次に、図5fに示す用に、凹部Mに沿うようにして、縦(MD)60mm、横(TD)37mmのサイズにトリミングして、蓄電デバイスの引き剥がし試験に用いるサンプル12を作製した。図6に、サンプル12の側面図(図6a)と平面図(図6b)を示す。
次に、図7の模式図に示すように、サンプル12の平面側の表面(凹部Mが形成されている面とは反対側の面)に、縦方向(MD)に沿って3本の両面テープ(幅7.5mm、長さ55mm)を両端と中央の位置に貼り付けた。なお、両面テープの被対象物への剥離強度については、後述の方法で測定した。
次に、両面テープを貼り付けたサンプル12を、ステンレス鋼板に貼り付けて、60℃環境で24時間養生した。なお、ステンレス鋼板は、蓄電デバイスを両面テープで固定する筐体を見立てたものである。次に、図8の模式図に示すようにして、金属ヘラを用いてサンプル12をステンレス鋼板から慎重に引き剥がし、引き剥がされたサンプル12の穴の有無を目視で確認し、それぞれ、サンプル3つずつについて、以下の基準に従って蓄電デバイスの引き剥がし試験の評価を行った。図8に示すように、蓄電デバイスの引き剥がしは、サンプル12の横方向(TD)から力を加えることで行った。結果を表1に示す。
A:3つ全てのサンプルに穴が開いていなかった。
B:1つ又は2つのサンプルに穴が開いていた。
C:3つ全てのサンプルに穴が開いていた。
実施例1~3の蓄電デバイス用外装材は、外側から順に、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、前記基材層は、ポリアミドフィルムを含んでおり、フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定される前記ポリアミドフィルムの結晶化指数(透過法)が、1.80以上である。また、実施例1~3の蓄電デバイス用外装材の基材層に用いたポリアミドフィルムは、フーリエ変換赤外分光法のATR法により測定される結晶化指数(透過法)が、1.80以上である。実施例1~3の蓄電デバイス用外装材は、両面テープなどで固定された蓄電デバイスを筐体から引き剥がす際に蓄電デバイス用外装材が破損することが効果的に抑制されることが分かる。
蓄電デバイス用外装材の基材層について測定した結晶化指数(ATR法)と、延伸ナイロンフィルムについて測定した結晶化指数(ATR法)の値の相違は、蓄電デバイス用外装材のエージングによる影響と考えられる。比較例1,2で用いた延伸ナイロンフィルムは、結晶化指数(ATR法)の値が実施例1~3よりも大幅に小さいが、蓄電デバイス用外装材の基材層とした後に測定された値は、延伸ナイロンフィルムの状態で測定された値よりもかなり大きくなっている。しかしながら、比較例1,2において、基材層の外側から測定されるポリアミドフィルムの結晶化指数(ATR法)は、蓄電デバイス用外装材のエージングでは1.50以上にまでは高められず、蓄電デバイスの引き剥がし試験評価は、実施例1~3よりも劣っていた。
(両面テープの剥離強度の測定)
実施例1-3の蓄電デバイス用外装材(縦15mm×横70mm)と、<蓄電デバイスの引き剥がし試験>で用いた両面テープ(縦7.5mm×横60mm)と、アルミニウム箔(厚さ35μm×縦15mm×横150mm)と、固定用両面粘着テープ(縦5mm×横60mm)と、アクリル板(厚さ3mm×縦50mm×横70mm)とを用意した。まず、蓄電デバイス用外装材の延伸ナイロンフィルムの表面と、両面テープの一方面とを貼り合わせ、さらに両面テープの他方面にアルミニウム箔を貼り合わせ、アルミニウム箔の上から、2kgのローラを一往復させて積層体Pを得た。また、アクリル板と、固定用両面粘着テープの一方面とを貼り合わせて積層体Qを得た。さらに、積層体Qの固定用両面粘着テープの他方面に、積層体Pの蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層表面を貼り合わせ、手で押さえつけることにより、アクリル板、固定用両面粘着テープ、蓄電デバイス用外装材、両面テープ、アルミニウム箔が順に積層された積層体Rを得、これを試験サンプルMとした。試験サンプルMを温度60℃環境で24時間保管した。次に、蓄電デバイス用外装材の延伸ナイロンフィルム表面と、両面テープの端部を1mm程度剥離させて、剥離強度を測定するきっかけ部分を設けた。次に、試験サンプルMのアクリル板を固定し、引張り試験機(島津製作所製、AG-Xplus(商品名))を用いて、引張角度180°、剥離速度300mm/min、剥離距離50mm以上の条件でアルミニウム箔を引張り、蓄電デバイス用外装材の延伸ナイロンフィルム表面と、両面テープの界面で(前記のきっかけ部分から)剥離させて、剥離距離10mm、20mm、30mm、40mmでの剥離強度と、10~40mm間の最大剥離強度の合計5つの剥離強度の平均を算出して剥離強度(延伸ナイロンフィルムに対する両面テープの剥離強度(N/7.5mm))とした。結果を表2に示す。
次に、<蓄電デバイスの引き剥がし試験>で用いた、ステンレス鋼板(厚さ3mm×縦50mm×横70mm)及び両面テープ(縦7.5mm×横60mm)、さらに前記のアルミニウム箔(厚さ35μm×縦15mm×横150mm)を用意した。ステンレス鋼板の表面と、両面テープの一方面とを貼り合わせ、さらに両面テープの他方面にアルミニウム箔を貼り合わせ、アルミニウム箔の上から、2kgのローラを一往復させて積層体を得、これを試験サンプルNとした。試験サンプルNを温度60℃環境で24時間保管した。次に、ステンレス鋼板表面と、両面テープの端部を1mm程度剥離させて、剥離強度を測定するきっかけ部分を設けた。次に、試験サンプルNのステンレス鋼板を固定し、引張り試験機(島津製作所製、AG-Xplus(商品名))を用いて、引張角度180°、剥離速度300mm/min、剥離距離50mm以上の条件でアルミニウム箔を引張り、ステンレス鋼板表面と、両面テープの界面で(前記のきっかけ部分から)剥離させて、剥離距離10mm、20mm、30mm、40mmでの剥離強度と、10~40mm間の最大剥離強度の合計5つの剥離強度の平均を算出して剥離強度(ステンレス鋼板に対する両面テープの剥離強度(N/7.5mm))とした。結果を表2に示す。
表2に示される結果から明らかな通り、<蓄電デバイスの引き剥がし試験>に使用した両面テープの剥離強度は、延伸ナイロンフィルム、ステンレス鋼板に対して同程度のものであった。
以上の通り、本開示は、以下に示す態様の発明を提供する。
項1. 外側から順に、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
前記基材層は、ポリアミドフィルムを含んでおり、
フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定される前記ポリアミドフィルムの結晶化指数が、1.80以上である、蓄電デバイス用外装材。
項2. フーリエ変換赤外分光法のATR法により、前記基材層の外側から測定される前記ポリアミドフィルムの結晶化指数が、1.50以上である、項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
項3. 前記基材層と前記バリア層との間に、接着剤層を備えている、項1又は2に記載の蓄電デバイス用外装材。
項4. 前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えている、項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項5. 外側から順に、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とが積層された積層体を得る工程を備えており、
前記基材層は、ポリアミドフィルムを含んでおり、
フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定される前記ポリアミドフィルムの結晶化指数が、1.80以上である、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
項6. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
項7. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材の前記基材層に用いるためのポリアミドフィルムであって、
前記ポリアミドフィルムは、フーリエ変換赤外分光法の透過法により測定される結晶化指数が、1.80以上である、ポリアミドフィルム。
項8. 前記ポリアミドフィルムは、フーリエ変換赤外分光法のATR法により測定される結晶化指数が、1.50以上である、項7に記載のポリアミドフィルム。