JP7217559B2 - 歯科用接着性組成物、歯科用接着材、及び歯科用接着材包装体 - Google Patents
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Description
Xはラジカル重合性基を含む1価の有機基であり、
R1、R2、及びR3は、互いに同種又は異種の1価の有機基であり、
R1、R2、及びR3の少なくとも1つは、下記一般式2で示される1価の有機基である。)
*は、当該1価の有機基が、前記一般式1におけるケイ素原子と結合する位置を表し、
R4、R5及びR6は、夫々、水素原子;フェニル基;炭素数1~20の非置換アルキル基;1又は複数の水素原子が、アルコキシ基、シロキシ基及びアミノ基のうちの少なくとも1つで置換された炭素数1~20の置換アルキル基;又は炭素数が2~20の前記非置換アルキル基若しくは前記置換アルキル基の主鎖C-C結合間に、-O-結合、-C(=O)-O-結合、若しくは-NH-結合を有する1価の有機基である。)
以下、本発明の歯科用組成物で使用する各成分について説明する。
本発明において(A)成分として使用する耐加水分解性シランカップリング剤は、1つのケイ素原子に4つの1価の基が結合した有機シラン化合物であって、前記4つの1価の基は、(i)ラジカル重合性基を有する1価の基及び(ii)炭素数が3以上40以下のアルキレン鎖を有し、前記ケイ素原子から見てβ位の炭素原子に不飽和結合を有する1価の基を含み、且つシリルエーテル構造を含まない、有機シラン化合物(a1)からなるものであれば特に限定されず、たとえば前記特許文献4に記載されているようなケイ素化合物からなるものが特に制限なく使用できる。
R4、R5、及びR6は、夫々、1)水素原子; 2)フェニル基; 3)炭素数1~20の非置換アルキル基; 4)1又は複数の水素原子が、アルコキシ基、シロキシ基及びアミノ基のうちの少なくとも1つで置換された炭素数1~20の置換アルキル基;又は 5)炭素数が2~20の前記非置換アルキル基若しくは前記置換アルキル基の主鎖のC-C結合間に、-O-結合、-C(=O)-O-結合、若しくは-NH-結合を有する1価の有機基、である。
(B)成分は、本発明の歯科用組成物中にフッ化物イオンを供給するフッ化物イオン源となるもので、このような機能を有する無機フッ化物塩及び/又は有機フッ化物塩が特に制限なく使用できる。好適に使用できるフッ化物塩を具体的に示すと、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化セシウム、フッ化アルミニウム、フッ化イッテルビウム、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化アンモニウム、ホスホリルコリンフルオリド、フルオロアルミノシリケートなどを挙げることができる。これらの中でも溶解性の観点からテトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ホスホリルコリンフルオリド等の有機フッ化物塩が特に好適に使用される。
(C)成分は、酸性基含有重合性単量体(c1)を含有する必要がある。該(C)成分は酸性基含有重合性単量体(c1)のみからなっていてもよいが、接着材層の機械強度や耐水性が向上するという理由から酸性基を有しない重合性単量体(c2)を含むことが好ましい。以下、これら成分について説明する。
(c1)成分である酸性基含有重合性単量体は、歯質を脱灰、塑造化する効果がある。また、酸性基が歯質表面のカルシウムと化学結合することにより歯質接着性を得ることができるようになる。
本発明の歯科用組成物は、接着性の観点から、酸モノマー以外に、酸性基を有しない重合性単量体(c2)(「非酸モノマー」ともいう。)をさらに含むことが好ましい。(c2)成分である非酸モノマーとしては、酸性基を有さず且つ少なくとも1つの重合性不飽和基を持つ化合物が特に制限なく使用できる。好適に使用できる非酸モノマーを例示すれば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリジジル(メタ)アクリレート、2-シアノメチル(メタ)アクリレート、ベンジルメタアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート等の単官能性重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2'-ビス[4-(メタ)アクリオイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシエトキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'-ビス{4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の多官能性重合性単量体;フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー等のスチレン、α-メチルスチレン誘導体;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。これらは単独で使用しても良いし、複数のものを併用しても良い。
本発明の歯科用組成物は、水(D)を含むことにより、酸性基含有重合性単量体(c1)による脱灰作用を促進できる。本発明の歯科用組成物の調製に使用される水としては、接着性に悪影響を及ぼす不純物を持ちこまないようにするため、蒸留水またはイオン交換水が好ましい。本発明の歯科用組成物における(D)成分の含有量は、他成分との相溶性、接着性及び保管安定性の観点から、重合性単量体(C)の全量を100質量部としたとき、2~20質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがより好ましい。
有機溶媒(E)としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族系溶媒、ハイドロカーボン系溶媒、塩素系溶媒、フッ素系溶媒などが使用できるが、為害性の低さ及び接着性などの観点から水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。好適に使用できる水溶性有機溶媒を例示すれば、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。(E)成分は必要に応じて、2種類以上を組み合わせて使用してよい。
(E)成分の配合量は、塗布に適した粘度、エアブロー等による乾燥の手間、エアブロー後の接着材層に残留して接着材層や機械強度が低下するのを防止するといった観点から、重合性単量体(C)の全量を100質量部としたとき、10~200質量部であることが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、歯質接着性の観点から重合開始剤を含むことがより好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(A)成分以外のシランカップリング剤、重合禁止剤、重合促進剤、顔料、ポリマー、フィラー、防かび剤、抗菌剤などの成分を含有することができる。ただし、フィラーとして表面にシラノール基を有する無機フィラーを配合した場合には、前記(A)成分がこれと反応してしまい、本発明の効果が損なわれるので、本発明の歯科用組成物は、表面にシラノール基を有する無機フィラーを含まないことが好ましい。
重合開始剤(F)としては、従来の歯科用接着性組成物で重合開始剤として使用される光重合開始剤、化学重合開始剤が特に制限なく使用することができる。
本発明の歯科用接着性組成物は、必ずしも1液型で使用する必要は無く、用途によっては複数の包装に分けた分包タイプとして使用できることは勿論であるが、秤量・混合操作が省略できるという観点から、単一の容器内に収容した所謂1液型として使用することが好ましい。本発明の歯科用接着性組成物を単一の容器内に収容した歯科用接着材包装体とする場合の容器は、接着性組成物と接触し得る容器の表面にシラノール基が存在しないようにするという理由から、少なくも内表面が樹脂製である容器を使用することが好ましく、保存安定性の観点からは、遮光性を有する容器を使用することが好ましい。この場合、(F)重合開始剤としては、化学重合開始剤以外の重合開始剤を使用することが好ましく、光重合開始剤を使用することが特に好ましい。
本発明の歯科用接着性組成物は、様々な被接着体を対象とすることができる。具体的には、ジルコニアセラミックスや、シリカ系セラミックス(ポーセレンなど)などのセラミックス、歯質(象牙質、エナメル質)、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、アルミニウム、銅、チタン等を主成分として含む卑金属、金、白金、パラジウム、銀等を主成分として含む貴金属、シリカ粒子あるいはシリカ-ジルコニア粒子などのフィラーを分散含有するレジン硬化体(硬質レジン歯、ハイブリッドレジン、CAD/CAMレジンブロック)等の各種歯科材料に対する接着に利用できる。
<(A)耐加水分解性シランカップリング剤(耐加水分解性SCA)>
・TAPM:3-(トリアリルシリル)プロピルメタクリレート
・TMPM:3-(トリメタリルシリル)プロピルメタクリレート
・DAMM:ジアリルシリルメチルメタクリレート
・ADMPM:3-(アリルジメチルシリル)プロピルメタクリレート。
・MPS:γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
・NaF:フッ化ナトリウム
・KF:フッ化カリウム
・CsF:フッ化セシウム
・TBAF:テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド3水和物
・TEAF:テトラエチルアンモニウムフルオリド。
<(c1)酸モノマー>
・MDP:10-メタクリルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(リン酸基含有重合性単量体)
・AET:4-アクリロイルオキシエチルトリメット酸(カルボン酸基含有重合性単量体)
・MHPA:6-メタクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート(ホスホン酸基含有重合性単量体)
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・Bis-GMA:ビスフェノールAジ(2‐ヒドロキシプロポキシ)ジメタクリレート
・UDMA:ジ(メタクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジウレタン。
・EtOH:エタノール
・IPA:イソプロパノ―ル
・CQ:カンファーキノン
・DMBE:p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル。
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエン。
歯科用接着材の接着性評価は、各歯科用接着材を用いて(1)歯質とコンポジットレジンとを接着させたときの歯質/コンポジットレジン系(歯質/CR系)及び(2)ポーセレン陶材とレジンセメントを接着させたときのポーセレン陶材/レジンセメント系(P陶材/Rセメント系)の夫々の系についての初期接着性試験と接着耐久性試験を行い、そのときの接着強さによって評価した。
<歯質-コンポジットレジン間の接着強さ(歯質/CR系接着強度)測定用試料作製>
屠殺後24時間以内に抜去した牛前歯を、注水下、耐水研磨紙P600で研磨し、唇面に平行かつ平坦になるように、エナメル質平面を削り出した被着体を準備した。
次に、これら2種類の被着体のそれぞれの研磨面に、直径3mmの穴を開けた両面テープを貼り付けた。続いて、研磨面のうち両面テープの穴から露出している接着面に、各実施例および各比較例で調製した歯科用接着材を塗布し、5秒間エアブローして乾燥させた。
被着体として、シリカ系結晶化ガラスを材質とする歯科用セラミックス(いわゆるポーセレン)である「ノリタケスーパーポーセレンAAA」(クラレノリタケ社製、縦15mm×横15mm×厚さ3mm)を用い、この被着体の片面を#800の耐水研磨紙で研磨した。その後、被着体の研磨面に、直径3mmの穴を開けた両面テープを貼り付けた。続いて、研磨面のうち両面テープの穴から露出している接着面に各実施例、および各比較例の歯科用組成物をそれぞれマイクロブラシで塗布し、接着面に塗布された歯科用組成物を5秒間エアブローすることにより乾燥させた。
その後、あらかじめ研磨したSUS304製丸棒(直径8mm、高さ18mm)をレジンセメント(リライエックスアルティメットレジンセメント、3MESPE社製)で接着し、評価用試料(サンプル)を作製した。なお、使用したレジンセメント(リライエックスアルティメットレジンセメント、3MESPE社製)は、化学重合性の組成物である。
上記のようにして作成したサンプルを各実施例あるいは比較例ごとに2つの試験群に分け、その一方の試験群について、各サンプルを37℃の水中にて24時間浸漬した後に万能試験機(島津製作所社製オートグラフ)を用い、クロスヘッドスピード2mm/分で引張接着強さ(初期接着強さ)を測定した。測定は、接着強さ測定用のサンプルを水中から引き上げて約1日以内に実施した。各実施例および各比較例について、4個のサンプルの測定値を平均し、測定結果とした。
もう一方の試験群について、各サンプルを5℃および55℃の恒温水槽に各1分ずつ交互に浸漬するサーマルサイクルを3000サイクル実施することで接着耐久性測定用のサンプルとし、上記と同様にして引張接着強さ(耐久試験後接着強さ)を測定した。
実施例1
(1)歯科用接着性組成物の調製: 1.0gのTAPM、0.15gのTBAF、0.5gのMDP、1.0gの精製水、1.5gのEtOH、6.5gのBis-GMA、3.0gのHEMA、0.01gのBHT、0.2gのCQ、0.1gのDMBEを混合し、歯科用組成物を得た。
(2)接着性評価: (1)で得た歯科用接着性組成物を接着材として用いて、前記した接着性評価を行った。その調製直後の組成物を用いた結果は、歯質に対する接着強さは、初期において、18.8MPa、耐久試験後で16.4MPaと共に高い接着強さを示している。ポーセレンに対する接着強さも同様に高く、初期で25.7MPa、耐久試験後で23.1MPaであった。さらに、50℃2週間保管した組成物を用いた場合は、歯質に対する接着強さが初期で17.3MPa、耐久試験後で15.2MPaであった。ポーセレンに対する接着強さは初期で23.9MPa、耐久試験後で21.5MPaであった。50℃2週間保管後も良好な接着強さを示したことから、本発明の歯科用組成物は優れた保管安定性を有するといえる。
各成分の量比を表1に示されるように変える他は実施例1と同様にして、接着性組成物の調製し、得られた組成物を接着材として用いて接着性評価及び評価を行った。評価結果は表2に示しているが、何れの実施例においても初期・保管後ともに高い接着強さを示している。
各成分の量比が表3に示されるように変えた他は実施例1と同様にして、組成物の調製及び評価を行った。評価結果は表4に示す。
Claims (6)
- シリルエーテル構造を含まず、1つのケイ素原子に4つの1価の基が結合した有機シラン化合物(a1)からなり、前記4つの1価の基は、(i)ラジカル重合性基を有する1価の基と、(ii)炭素数が3以上40以下のアルキレン鎖を有し、前記ケイ素原子から見てβ位の炭素原子に不飽和結合を有する1価の基とを含む、シランカップリング剤(A)と、
フッ化物塩(B)と、
酸性基含有重合性単量体(c1)を含む重合性単量体(C)と、
水(D)と、
有機溶媒(E)と、
を含む混合物からなる、ことを特徴とする歯科用接着性組成物。 - 前記(a1)の有機シラン化合物が下記一般式(1)で示される、請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
Xは、ラジカル重合性基を有する1価の有機基であり、
R1、R2、及びR3は、互いに同種又は異種の1価の有機基であり、
R1、R2、及びR3の少なくとも1つは、下記一般式(2)で示される1価の有機基である。)
*は、当該1価の有機基が、前記一般式1におけるケイ素原子と結合する位置を表し、
R4、R5及びR6は、夫々、水素原子;フェニル基;炭素数1~20の非置換アルキル基;1又は複数の水素原子が、アルコキシ基、シロキシ基及びアミノ基のうちの少なくとも1つで置換された炭素数1~20の置換アルキル基;又は炭素数2~20の前記非置換アルキル基若しくは前記置換アルキル基の主鎖のC-C結合間に、-O-結合、-C(=O)-O-結合、若しくは-NH-結合を有する1価の有機基である。) - 前記有機シラン化合物(a1)1molに対して、0.01~10molの前記フッ化物塩(B)を含有する、請求項1又は2に記載の歯科用接着性組成物。
- 請求項1乃至3の何れか一項に記載された歯科用接着性組成物からなる、歯科用接着材。
- 表面にシラノール基を有する無機物質からなる接着面を有する第一の被着体と、重合性単量体を含む硬化性組成物又はその硬化体からなる第二の被着体と、を接着するための歯科用接着材である、請求項4に記載の歯科用接着材。
- 請求項1乃至3の何れか一項に記載された歯科用接着性組成物を単一の容器内に収容してなる、歯科用接着材包装体。
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