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JP7217559B2 - 歯科用接着性組成物、歯科用接着材、及び歯科用接着材包装体 - Google Patents

歯科用接着性組成物、歯科用接着材、及び歯科用接着材包装体 Download PDF

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JP7217559B2 JP2021562506A JP2021562506A JP7217559B2 JP 7217559 B2 JP7217559 B2 JP 7217559B2 JP 2021562506 A JP2021562506 A JP 2021562506A JP 2021562506 A JP2021562506 A JP 2021562506A JP 7217559 B2 JP7217559 B2 JP 7217559B2
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Description

本発明は、新規な歯科用組成物に関する。詳しくは、特定の構造を有する有機シラン化合物、フッ化物塩、酸性化合物、水、有機溶媒を含有してなる新規な歯科用組成物に関する。
歯科治療において、う蝕を除去したあとの窩洞に修復材料を充填する際に、歯質に対して様々な材質を接着する必要がある。修復材料の種類は例えばコンポジットレジン、金属、ジルコニア、アルミナ、二ケイ酸リチウムガラス、ポーセレンなど多岐にわたる。従来、歯質あるいは前記の修復材料を接着するために、各材料専用の接着材を使用する必要があり、操作が煩雑であった。そこで操作の簡便化のために、歯質に対する接着成分と各種修復材料に対する接着成分を1つの組成物中に添加し、歯質接着性と修復材料に対する接着性を兼ね備えた接着材が提案されている。
このような歯科用接着材においては、歯質に対する接着性を得るために、酸性基含有重合性単量体(以下、「酸モノマー」ともいう。)及び水を必須成分として配合するのが一般的であり、また、シリカ系セラミックスを被着体とする場合には、当該被着体との接着性を高めるためにシランカップリング剤を配合することが一般的に行われている。ここで、シランカップリング剤とは、分子内に有機材料と反応結合する官能基、および無機材料と反応結合する官能基を同時に有する有機ケイ素化合物又は当該化合物を主要成分とする剤を意味し、前記有機ケイ素化合物としては、無機材料表面に存在するシラノール基(Si原子に結合した水酸基)と反応してシロキサン結合を形成するアルコキシ基を有するアルコキシシラン化合物が汎用されている。
ところで、酸成分、水、シランカップリング剤が共存した場合には、シランカップリング剤が加水分解・縮合しオリゴマーとなることで不活性化するため、これら成分を含む歯科用接着材では、これらが共存しないように複数(通常2つ)の剤に分けて保管し、使用時に両剤が混合されるようにして使用するのが一般的である(特許文献1及び2参照)。このような所謂2液型の歯科用接着材においては、使用時に両者が適正な配合割合になるように秤量して混合する必要がある。
一方、各剤を秤量して混合する操作が必要なく、操作が改良された1液型の接着材もいくつか提案されている。たとえば、特許文献3には、「(A)ラジカル重合性単量体;(B)シランカップリング剤;(C)増感色素;(D)光酸発生剤及び/又は光塩基発生剤、並びに(E)光ラジカル発生剤、または上記(D)成分として光酸発生剤を用いた場合において、アリールボレート化合物若しくはスルフィン酸塩;の各成分が一剤に混合された保管形態からなるセラミックス製歯科修復物用接着性組成物」が開示されている。そして、特許文献3記載の技術によれば、事前のプライマー処理が省略できるほどに高い接着性を有すると共に、接着性組成物を構成する各成分を一剤に混合した状態で長期間安定的に保管できるため、使用直前の試薬の混合操作が省略できる接着性組成物を提供できるとされている。
また、特許文献4には、(1)少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を有し、かつ、ケイ素原子に結合するC~C40の直鎖または分岐鎖のフェニル基を含みうるアルキレン鎖が、ケイ素原子からβ位炭素に不飽和結合を含むことを特徴とする有機シラン化合物、(2)ホスホン酸基含有重合性単量体、(3)多価カルボン酸基含有重合性単量体、(4)重合性単量体、(5)水、(6)水溶性有機溶媒、及び(7)重合開始剤を含むことを特徴とする医科歯科用硬化性組成物が提案されている。そして、特許文献4には、前記医科歯科用硬化性組成物の保管安定性及び耐久性は、ともに良好であることが示されている。また、特許文献4には、このような効果が得られる理由について、上記(1)の有機ケイ素化合物が無機材料からなる被着体と結合する際の反応機構、たとえばアリル基が結合した有機シラン化合物については、被着体の表面に存在するシラノール基から水素を奪い、生成した酸素アニオンが有機シラン化合物のケイ素原子を攻撃する事で(プロペンの脱離を伴って)共有結合するという反応機構が、従来のアルコキシ基を有するシランカップリング剤における結合の反応機構と異なるため、加水分解による劣化や変質を受け難くなったと考えられる旨が記載されている。
特開2003-230574号公報 特開2006-225350号公報 特開2007-277114号公報 特開2019-64937号公報
特許文献3に例示されるシランカップリング剤と光酸発生剤とを含む組成物は、シランカップリング剤の加水分解・縮合反応に必要な触媒となる酸や塩基とシランカップリング剤とを保管中に共存させないことによって保存安定性を高めることができる反面、上記触媒として、光を照射した時のみ機能生する光酸発生剤及び/又は光塩基発生剤を用いる必要があり、また、重合硬化方法も光重合方法に限定されてしまう。さらに、酸モノマーを使用していないため、酸モノマーを含む系に比べると歯質に対する接着性が低い傾向がある。
一方、特許文献4に記載された前記(1)の有機シラン化合物は、分子内に有機材料と反応結合する官能基、および無機材料と反応結合する官能基を同時に有する有機ケイ素化合物であるから、広義のシランカップリング剤であると言えるものであるが、アルコキシシランのような加水分解性を有する従来の一般的なシランカップリング剤(以下、「加水分解性シランカップリング剤」ともいう。)とは異なり、アルコキシ基のような加水分解性の基を有しない有機ケイ素化合物からなるシランカップリング剤(以下、特許文献4に記載されたケイ素化合物と同様な機構で無機材料と反応結合するシランカップリング剤を「耐加水分解性シランカップリング剤」ともいう。)である。そして、無機材料と結合するための反応機構も、前記したように上記従来の一般的な加水分解性シランカップリング剤における"アルコキシ基等の加水分解性基の加水分解と、それによって生じたシラノール基と無機材料表面のシラノール基との脱水縮合によるシロキサン結合形成"と異なる。そのため、耐加水分解性シランカップリング剤を用いた特許文献4に記載された前記医科歯科用硬化性組成物は、1液型で高い保存安定性を有し、その重合形式は特に限定されず、酸モノマーを含むため、歯質に対する接着性も高いと言う利点がある。
しかしながら、上記医科歯科用硬化性組成物は、酸モノマーとして(2)ホスホン酸基含有重合性単量体及び(3)多価カルボン酸基含有重合性単量体を併用するものであり、両者を併用しない組成物について前記効果は検証されていない。そこで、本発明者等が酸モノマーとして(2)ホスホン酸基含有重合性単量体及び(3)多価カルボン酸基含有重合性単量体を併用しない組成で、前記有機ケイ素化合物及び水を含む組成物の性能評価を行ったところ、長期間保管した後の接着性能が低下することがあることが確認された(後述の比較例2、及び比較例6~8参照)。
そこで、本発明は、1液型としても使用できる、酸モノマー・水・耐加水分解性シランカップリング剤が共存する歯科用接着性組成物であって、使用する酸モノマーの種類によらず、確実に長期間保管した後においてもシリカ系セラミックスと歯質の両方に対し高い接着性を維持できる(高い保存安定性を発揮できる)歯科用接着性組成物を提供することを課題とする。
本発明者等は、前記技術課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、耐加水分解性シランカップリング剤、酸モノマー及び水を含む歯科用接着性組成物にフッ化物イオン源となるフッ化物塩を配合した場合には、使用する酸モノマーの種類によらず再現性良く保存安定性や接着耐久性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の本発明は、シリルエーテル構造を含まず、1つのケイ素原子に4つの1価の基が結合した有機シラン化合物(a1)からなり、前記4つの1価の基は、(i)ラジカル重合性基を有する1価の基と、(ii)炭素数が3以上40以下のアルキレン鎖を有し、前記ケイ素原子から見てβ位の炭素原子に不飽和結合を有する1価の基とを含む、シランカップリング剤(A)と、フッ化物塩(B)と、酸性基含有重合性単量体(c1)を含む重合性単量体(C)と、水(D)と、有機溶媒(E)と、を含む混合物からなることを特徴とする歯科用接着性組成物である。
上記本発明の歯科用接着性組成物においては、前記(a1)の有機シラン化合物が下記一般式1で示されることが好ましく、また、前記有機シラン化合物(a1)1molに対して、0.01~10molの前記フッ化物塩(B)を含有することが好ましい。
Figure 0007217559000001
(上記一般式(1)式中、
Xはラジカル重合性基を含む1価の有機基であり、
、R、及びRは、互いに同種又は異種の1価の有機基であり、
、R、及びRの少なくとも1つは、下記一般式2で示される1価の有機基である。)
Figure 0007217559000002
(上記一般式(2)中、
*は、当該1価の有機基が、前記一般式1におけるケイ素原子と結合する位置を表し、
、R及びRは、夫々、水素原子;フェニル基;炭素数1~20の非置換アルキル基;1又は複数の水素原子が、アルコキシ基、シロキシ基及びアミノ基のうちの少なくとも1つで置換された炭素数1~20の置換アルキル基;又は炭素数が2~20の前記非置換アルキル基若しくは前記置換アルキル基の主鎖C-C結合間に、-O-結合、-C(=O)-O-結合、若しくは-NH-結合を有する1価の有機基である。)
第二の本発明は、上記本発明の歯科用接着性組成物からなる、歯科用接着材である。当該本発明の歯科用接着材においては、表面にシラノール基を有する無機物質からなる接着面を有する第一の被着体と、重合性単量体を含む硬化性組成物又はその硬化体からなる第二の被着体と、を接着するための歯科用接着材であることが好ましい。
第三の本発明は、前記本発明の歯科用接着性組成物を単一の容器内に収容してなる歯科用接着材包装体である。
本発明の歯科用接着性組成物は、コンポジットレジン、歯質以外にポーセレンに対して高い接着強さと接着耐久性を示すばかりでなく、これら成分が共存する1液型歯科用接着性組成物とした場合であっても、高い保存安定性を示す。しかも、従来の1液型歯科用接着性組成物と異なり、光酸発生剤を使用する必要もなく、使用する酸モノマーの種類に拘わらず、上記効果を発揮することができる。
本発明の歯科用接着性組成物は、前記特許文献4に記載された医科歯科用硬化性組成物と同様に、耐加水分解性シランカップリング剤、すなわち「少なくとも一種類以上のラジカル重合性基を有し、かつ、ケイ素原子に結合するC~C40の直鎖または分岐鎖のフェニル基を含みうるアルキレン鎖が、ケイ素原子からβ位炭素に不飽和結合を含む有機シラン化合物」を使用することにより、アルコキシ基などの加水分解性基を有する従来の一般的なシランカップリング剤が酸及び水と共存する場合には避けることができない、保存中における加水分解・縮合による(カップリング剤としての)活性低下を防止している。そして、(B)フッ化物塩を更に含むことにより、使用する酸モノマーの種類によらず、高い接着効果を発現するようにしたものである。
フッ化物塩の共存により何故このような効果が得られるようになるのかという理由は必ずしも明らかではないが、フッ化物イオンはケイ素原子に対して高い親和性を有することから、本発明の歯科用接着性組成物においてフッ化物イオンが上記ケイ素化合物と何らかの相互作用を起こして、活性がより高い状態となるか、または、施用時において被着体の表面に存在するシラノール基とフッ化物イオンとが相互作用して前記ケイ素化合物(耐加水分解性シランカップリング剤)と反応し易くなったためであると考えられる。
以下、本発明の歯科用組成物で使用する各成分について説明する。
<耐加水分解性シランカップリング剤(A);(A)成分>
本発明において(A)成分として使用する耐加水分解性シランカップリング剤は、1つのケイ素原子に4つの1価の基が結合した有機シラン化合物であって、前記4つの1価の基は、(i)ラジカル重合性基を有する1価の基及び(ii)炭素数が3以上40以下のアルキレン鎖を有し、前記ケイ素原子から見てβ位の炭素原子に不飽和結合を有する1価の基を含み、且つシリルエーテル構造を含まない、有機シラン化合物(a1)からなるものであれば特に限定されず、たとえば前記特許文献4に記載されているようなケイ素化合物からなるものが特に制限なく使用できる。
反応性が高く安定した接着強さが得られるという観点から、耐加水分解性シランカップリング剤としては、前記有機シラン化合物(a1)が下記一般式(1)で示されることが好ましい。
Figure 0007217559000003
なお、上記一般式(1)中のXは、ラジカル重合性基を有する1価の有機基を表し、R、R、及びRは、互いに同種又は異種の1価の有機基を表し、且つR、R、及びRの少なくとも1つは、下記一般式(2)で示される1価の有機基である。
Figure 0007217559000004
なお、上記一般式(2)中の*は、上記一般式(2)で示される1価の有機基が、前記一般式(1)におけるケイ素原子と結合する位置を表し、
、R、及びRは、夫々、1)水素原子; 2)フェニル基; 3)炭素数1~20の非置換アルキル基; 4)1又は複数の水素原子が、アルコキシ基、シロキシ基及びアミノ基のうちの少なくとも1つで置換された炭素数1~20の置換アルキル基;又は 5)炭素数が2~20の前記非置換アルキル基若しくは前記置換アルキル基の主鎖のC-C結合間に、-O-結合、-C(=O)-O-結合、若しくは-NH-結合を有する1価の有機基、である。
前記一般式(1)中のXとしては、一方端部にラジカル重合性基を有し他方端部において前記一般式(1)中のケイ素原子と結合する1価の有機基であれば特に限定されないが、ラジカル重合性基が主鎖の原子数が1~30である2価の有機基を介して前記ラジカル重合性基と前記ケイ素原子とが結合する構造を有する基であることが好ましい。また、この場合においてラジカル重合性基がアクリロキシ基、メタクリロキシ基、アクリルアミド基、又はメタクリルアミド基であり、前記2価の有機基が主鎖の炭素原子数が1~30、特に1~20のアルキレン基又はフェニレン基であることが好ましい。また、前記一般式(1)中のR、R、及びRの全ては前記一般式(2)で示される1価の有機基であることが好ましい。さらに、前記一般式(2)におけるR及びRは、夫々水素原子又はメチル基であることが好ましく、Rは、水素又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。
(A)耐加水分解性シランカップリング剤として好適に使用できる有機シラン化合物を具体的に示すと、トリアリルシリルメチルアクリレート、トリアリルシリルメチルメタクリレート、2-(トリアリルシリル)エチルアクリレート、2-(トリアリルシリル)エチルメタクリレート、3-(トリアリルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリアリルシリル)プロピルメタクリレート、4-(トリアリルシリル)ブチルアクリレート、4-(トリアリルシリル)ブチルメタクリレート、5-(トリアリルシリル)ペンチルアクリレート、5-(トリアリルシリル)ペンチルメタクリレート、6-(トリアリルシリル)ヘキシルアクリレート、6-(トリアリルシリル)ヘキシルメタクリレート、トリメタリルシリルメチルアクリレート、トリメタリルシリルメチルメタクリレート、2-(トリメタリルシリル)エチルアクリレート、2-(トリメタリルシリル)エチルメタクリレート、3-(トリメタリルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメタリルシリル)プロピルメタクリレート、4-(トリメタリルシリル)ブチルアクリレート、4-(トリメタリルシリル)ブチルメタクリレート、5-(トリメタリルシリル)ペンチルアクリレート、5-(トリメタリルシリル)ペンチルメタクリレート、6-(トリメタリルシリル)ヘキシルアクリレート、6-(トリメタリルシリル)ヘキシルメタクリレート、3-(ジアリルメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(ジアリルメチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(ジアリルエチルシリル)プロピルアクリレート、3-(ジアリルエチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(ジアリルイソプロピルシリル)プロピルアクリレート、3-(ジアリルイソプロピルシリル)プロピルメタクリレート、3-(ジメタリルメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(ジメタリルメチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(ジメタリルエチルシリル)プロピルアクリレート、3-(ジメタリルエチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(ジメタリルイソプロピルシリル)プロピルアクリレート、3-(ジメタリルイソプロピルシリル)プロピルメタクリレート、3-(アリルジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(アリルジメチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(アリルジエチルシリル)プロピルアクリレート、3-(アリルジエチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(アリルジイソプロピルシリル)プロピルアクリレート、3-(アリルジイソプロピルシリル)プロピルメタクリレート、3-(メタリルジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(メタリルジメチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(メタリルジエチルシリル)プロピルアクリレート、3-(メタリルジエチルシリル)プロピルメタクリレート、3-(メタリルジイソプロピルシリル)プロピルアクリレート、3-(メタリルジイソプロピルシリル)プロピルメタクリレート、等を挙げることができる。
本発明の歯科用組成物における(A)成分の含有量は接着性および保管安定性の観点から、(C)成分である重合性単量体の合計量を100質量部とした時に、2質量部以上50質量部以下(以下、x以上、y以下を単にx~yと表記することもある。)であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。(A)成分は、必要に応じ2種類以上を併用してもよい。
なお、(A)成分は、本発明の歯科用接着性組成物を構成する前記混合物の材料の一つであるが、前記したように他の成分と共存した場合には、少なくともその一部は、他の成分と反応したり複合化したりして存在形態が、例えば、(A)成分の誘導体(具体的には(a1)の誘導体)に変化している可能性がある。系中に実際に存在している形態を特定することは困難であるため、本発明では、このような形態も含めて(A)成分或いは(a1)として取り扱うこととする。
<フッ化物塩(B);(B)成分>
(B)成分は、本発明の歯科用組成物中にフッ化物イオンを供給するフッ化物イオン源となるもので、このような機能を有する無機フッ化物塩及び/又は有機フッ化物塩が特に制限なく使用できる。好適に使用できるフッ化物塩を具体的に示すと、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化セシウム、フッ化アルミニウム、フッ化イッテルビウム、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化アンモニウム、ホスホリルコリンフルオリド、フルオロアルミノシリケートなどを挙げることができる。これらの中でも溶解性の観点からテトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ホスホリルコリンフルオリド等の有機フッ化物塩が特に好適に使用される。
効果の観点から、フッ化物塩(B)の配合量は、本発明の歯科用組成物中に溶解する量であることが好ましく、更にこのような条件を満たし且つ有機シラン化合物(a1)1molに対して、0.01~10mol、特に0.05~5molであることが好ましい。(A)成分に対する(B)成分の量が少なすぎると接着促進効果が低下する。また、多すぎる場合には、過剰使用となり非効率である。
なお、(B)成分は、本発明の歯科用接着性組成物を構成する前記混合物の材料の一つであるが、当該(B)成分は前記混合物中で少なくとも一部は水に溶解してイオン化し、更にそのイオン(フッ化物イオン)の少なくとも一部は(A)成分と反応又は複合化しているものと思われる。そこで、当該(B)成分についてもこのような形態変化した状態のものを含めて(B)成分として扱うこととする。
<重合性単量体(C);(C)成分>
(C)成分は、酸性基含有重合性単量体(c1)を含有する必要がある。該(C)成分は酸性基含有重合性単量体(c1)のみからなっていてもよいが、接着材層の機械強度や耐水性が向上するという理由から酸性基を有しない重合性単量体(c2)を含むことが好ましい。以下、これら成分について説明する。
<酸性基含有重合性単量体(c1):(c1)成分(酸モノマー)>
(c1)成分である酸性基含有重合性単量体は、歯質を脱灰、塑造化する効果がある。また、酸性基が歯質表面のカルシウムと化学結合することにより歯質接着性を得ることができるようになる。
(C)成分における(c1)成分:酸性基含有重合性単量体(酸モノマー)としては、一般的な歯科用接着性組成物において使用される酸モノマー、たとえば分子内に酸性基としてホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{-P(=O)(OH)}、カルボキシル基{-C(=O)OH}、リン酸二水素モノエステル基{-O-P(=O)(OH)}、リン酸水素ジエステル基{(-O-)P(=O)OH}、スルホ基(-SOH)、及び酸無水物骨格{-C(=O)-O-C(=O)-}等を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つの重合性不飽和基を持つ化合物が特に制限なく使用できる。
水に対する安定性が高く、歯面のスメアー層の溶解や歯牙脱灰を緩やかに実施できると言う理由から、酸性基として、カルボキシル基、リン酸二水素モノエステル基、又はリン酸水素ジエステル基を有する酸モノマーを使用することが好ましい。好適に使用できる酸モノマーとしては、酸性基としてカルボキシル基を有するものとして、アクリル酸、メタクリル酸、4-(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、1,4-ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等を;酸性基として有するものとして、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸等を;酸性基としてリン酸二水素モノエステル基又はリン酸水素ジエステル基を有するものとして、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルプロパン-2-ジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルプロパン-2-フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5-{2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等を挙げることができる。これらは単独で使用しても良いし、複数のものを併用しても良い。
これら酸モノマーの中でも前記効果が特に高いと言う理由から、リン酸二水素モノエステル基又はリン酸水素ジエステル基を有する酸モノマーを使用することが好ましく、下記式(但し、下記式中のRは、水素原子、またはメチル基を表す。)で示される酸モノマーを使用することが特に好ましい。
Figure 0007217559000005
なお、前記したように、本発明の歯科用接着性組成物は、1液型の歯科用接着材として使用したときに、酸モノマーとして"ホスホン酸基含有重合性単量体及び多価カルボン酸基含有重合性単量体を併用した系"以外の系の酸モノマーを使用した場合にも、高い保存安定性及び高い接着性を発揮する点に大きな特徴を有する。したがって、本発明の効果が顕著であると言う観点からは、酸モノマーとしては、「ホスホン酸基含有重合性単量体及び多価カルボン酸基含有重合性単量体を併用したものを除く」酸モノマーを使用することが好ましい。
本発明の歯科用組成物における(c1)成分(酸モノマー)の含有量は、接着性及び保管安定性の観点から、(C)成分である重合性単量体の全量を100質量部としたときに、2~50質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。
<酸性基を有しない重合性単量体(c2);(c2)成分>
本発明の歯科用組成物は、接着性の観点から、酸モノマー以外に、酸性基を有しない重合性単量体(c2)(「非酸モノマー」ともいう。)をさらに含むことが好ましい。(c2)成分である非酸モノマーとしては、酸性基を有さず且つ少なくとも1つの重合性不飽和基を持つ化合物が特に制限なく使用できる。好適に使用できる非酸モノマーを例示すれば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリジジル(メタ)アクリレート、2-シアノメチル(メタ)アクリレート、ベンジルメタアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート等の単官能性重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2'-ビス[4-(メタ)アクリオイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシエトキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'-ビス{4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の多官能性重合性単量体;フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー等のスチレン、α-メチルスチレン誘導体;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。これらは単独で使用しても良いし、複数のものを併用しても良い。
<水(D);(D)成分>
本発明の歯科用組成物は、水(D)を含むことにより、酸性基含有重合性単量体(c1)による脱灰作用を促進できる。本発明の歯科用組成物の調製に使用される水としては、接着性に悪影響を及ぼす不純物を持ちこまないようにするため、蒸留水またはイオン交換水が好ましい。本発明の歯科用組成物における(D)成分の含有量は、他成分との相溶性、接着性及び保管安定性の観点から、重合性単量体(C)の全量を100質量部としたとき、2~20質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがより好ましい。
<有機溶媒(E);(E)成分>
有機溶媒(E)としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族系溶媒、ハイドロカーボン系溶媒、塩素系溶媒、フッ素系溶媒などが使用できるが、為害性の低さ及び接着性などの観点から水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。好適に使用できる水溶性有機溶媒を例示すれば、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。(E)成分は必要に応じて、2種類以上を組み合わせて使用してよい。
(E)成分の配合量は、塗布に適した粘度、エアブロー等による乾燥の手間、エアブロー後の接着材層に残留して接着材層や機械強度が低下するのを防止するといった観点から、重合性単量体(C)の全量を100質量部としたとき、10~200質量部であることが好ましい。
<その他成分>
本発明の歯科用組成物は、歯質接着性の観点から重合開始剤を含むことがより好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(A)成分以外のシランカップリング剤、重合禁止剤、重合促進剤、顔料、ポリマー、フィラー、防かび剤、抗菌剤などの成分を含有することができる。ただし、フィラーとして表面にシラノール基を有する無機フィラーを配合した場合には、前記(A)成分がこれと反応してしまい、本発明の効果が損なわれるので、本発明の歯科用組成物は、表面にシラノール基を有する無機フィラーを含まないことが好ましい。
以下に、本発明の歯科用組成物に配合することが好ましい、重合開始剤について詳しく説明する。
<重合開始剤(F);(F)成分>
重合開始剤(F)としては、従来の歯科用接着性組成物で重合開始剤として使用される光重合開始剤、化学重合開始剤が特に制限なく使用することができる。
光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光増感剤、具体的には、紫外線に対する光増感剤であるベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アシルホスフィンオキサイド類、クマリン類、ハロメチル基置換-s-トリアジン誘導体や、可視光線に対する光増感剤であるα-ジケトン類が使用でできる。これら光増感剤(光重合開始剤)は、単独でも、2種類以上のものを組み合わせて使用することもできるし、第三級アミン類等の光重合促進剤を組み合わせて用いることもできる。人体に有害な紫外線を必要としないという観点から光増感剤としてはα-ジケトン類、特にカンファーキノンを用いることが好ましく、カンファーキノンと、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル等の芳香族基に直接窒素原子が置換したアミン類からなる光重合促進剤と、の組み合わせを使用することがより好ましい。
化学重合開始剤としては、有機過酸化物及びアミン類の組み合わせ;有機過酸化物、アミン類及びスルフィン酸塩類の組み合わせ;酸性化合物及びアリールボレート化合物の組み合わせ;第4周期遷移金属化合物及び有機過酸化物の組み合わせ;有機過酸化物及びチオ尿素誘導体の組み合わせ;バルビツール酸;アルキルボラン等が使用できる。
<包装形態>
本発明の歯科用接着性組成物は、必ずしも1液型で使用する必要は無く、用途によっては複数の包装に分けた分包タイプとして使用できることは勿論であるが、秤量・混合操作が省略できるという観点から、単一の容器内に収容した所謂1液型として使用することが好ましい。本発明の歯科用接着性組成物を単一の容器内に収容した歯科用接着材包装体とする場合の容器は、接着性組成物と接触し得る容器の表面にシラノール基が存在しないようにするという理由から、少なくも内表面が樹脂製である容器を使用することが好ましく、保存安定性の観点からは、遮光性を有する容器を使用することが好ましい。この場合、(F)重合開始剤としては、化学重合開始剤以外の重合開始剤を使用することが好ましく、光重合開始剤を使用することが特に好ましい。
なお、重合開始剤(F)として化学重合開始剤を使用する場合には、化学重合開始剤を構成する全成分(前記反応成分の全て)が共存すると重合反応が開始されるため、保存(保管)時に上記反応成分を分包する必要がある。このため、少なくとも一方の反応成分は本発明の歯科用組成物とは別に保管し、使用時に混合する多剤タイプとなるか、又は1液型とする場合には、本発明の歯科用組成物に前記反応成分の一部成分を配合し、残余の成分が被着体や前処理剤等から供給されるようにする必要がある。
<歯科用接着性組成物の好適な用途(被接着体)>
本発明の歯科用接着性組成物は、様々な被接着体を対象とすることができる。具体的には、ジルコニアセラミックスや、シリカ系セラミックス(ポーセレンなど)などのセラミックス、歯質(象牙質、エナメル質)、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、アルミニウム、銅、チタン等を主成分として含む卑金属、金、白金、パラジウム、銀等を主成分として含む貴金属、シリカ粒子あるいはシリカ-ジルコニア粒子などのフィラーを分散含有するレジン硬化体(硬質レジン歯、ハイブリッドレジン、CAD/CAMレジンブロック)等の各種歯科材料に対する接着に利用できる。
このような被接着体への接着用途の中でも、特に、表面にシラノール基を有する無機物質からなる接着面を有するセラミックスやシリカ系粒子を含むレジン硬化体に対する接着性に優れる。このため、本発明の歯科用接着性組成物は、セラミックスプライマーおよび多目的接着用接着材として好適に使用することができる。また、このような、表面にシラノール基を有する無機物質からなる接着面を有する被着体を第一の被着体とし、歯科用ボンディング材などの重合性単量体を含む硬化性組成物又はその硬化体を第二の被着体として、両者を本発明の歯科用接着性組成物により接着することも好ましい態様である。
なお、前記したように、重合開始剤(F)として化学重合開始剤を使用し、且つ本発明の歯科用組成物に前記反応成分の一部成分を配合し、残余の成分が被着体や前処理剤等から供給されるようにする場合には、残余の成分を含む被着体としては、歯科用ボンディング材、コンポジットレジン、コンポマー、レジンコア、レジンセメント、レジン強化型グラスアイオノマーセメント、義歯床用レジンなどが好適に使用される。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。
1.先ず、各実施例および各比較例の歯科用接着性組成物において使用した物質及びその略称等について以下に説明する。
[シランカップリング剤(SCA)]
<(A)耐加水分解性シランカップリング剤(耐加水分解性SCA)>
・TAPM:3-(トリアリルシリル)プロピルメタクリレート
・TMPM:3-(トリメタリルシリル)プロピルメタクリレート
・DAMM:ジアリルシリルメチルメタクリレート
・ADMPM:3-(アリルジメチルシリル)プロピルメタクリレート。
<(A)成分以外のシランカップリング剤(加水分解性SCA)>
・MPS:γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
[(B)フッ化物塩]
・NaF:フッ化ナトリウム
・KF:フッ化カリウム
・CsF:フッ化セシウム
・TBAF:テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド3水和物
・TEAF:テトラエチルアンモニウムフルオリド。
[(C)重合性単量体]
<(c1)酸モノマー>
・MDP:10-メタクリルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(リン酸基含有重合性単量体)
・AET:4-アクリロイルオキシエチルトリメット酸(カルボン酸基含有重合性単量体)
・MHPA:6-メタクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート(ホスホン酸基含有重合性単量体)
<(c2)非酸モノマー>
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・Bis-GMA:ビスフェノールAジ(2‐ヒドロキシプロポキシ)ジメタクリレート
・UDMA:ジ(メタクリロイルオキシ)-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジウレタン。
[(E)有機溶媒]
・EtOH:エタノール
・IPA:イソプロパノ―ル
[(F)重合開始剤]
・CQ:カンファーキノン
・DMBE:p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル。
[重合禁止剤]
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエン。
2.次に、実施例及び比較例で調製した歯科用接着材の評価方法について説明する。
歯科用接着材の接着性評価は、各歯科用接着材を用いて(1)歯質とコンポジットレジンとを接着させたときの歯質/コンポジットレジン系(歯質/CR系)及び(2)ポーセレン陶材とレジンセメントを接着させたときのポーセレン陶材/レジンセメント系(P陶材/Rセメント系)の夫々の系についての初期接着性試験と接着耐久性試験を行い、そのときの接着強さによって評価した。
また、保存安定性を調べるために、上記評価を、調製直後の組成物を接着剤として使用した場合と、調製後50℃の温度下で2週間保存した後の組成物を接着剤と使用した場合の夫々について行った。以下に評価方法の詳細を説明する。
[評価試料(サンプル)作製]
<歯質-コンポジットレジン間の接着強さ(歯質/CR系接着強度)測定用試料作製>
屠殺後24時間以内に抜去した牛前歯を、注水下、耐水研磨紙P600で研磨し、唇面に平行かつ平坦になるように、エナメル質平面を削り出した被着体を準備した。
次に、これら2種類の被着体のそれぞれの研磨面に、直径3mmの穴を開けた両面テープを貼り付けた。続いて、研磨面のうち両面テープの穴から露出している接着面に、各実施例および各比較例で調製した歯科用接着材を塗布し、5秒間エアブローして乾燥させた。
直径8mmの穴が設けられた厚み0.5mmのパラフィンワックスを、パラフィンワックスの穴と、両面テープの穴とが同心円となるように歯科用接着材が塗布された接着面に貼り付けて模擬窩洞を作製した。この模擬窩洞に歯科用コンポジットレジン(エステライトΣクイック、トクヤマデンタル社製)を充填してポリエステルフィルムで軽く圧接した後、可視光線照射器(エリパー、3MESPE社製)を用い、光照射10秒による光硬化を行った。その後、あらかじめ研磨したSUS304製丸棒(直径8mm、高さ18mm)をレジンセメント(ビスタイトII、トクヤマデンタル社製)で接着し、評価用試料(サンプル)を作製した。なお、使用したコンポジットレジンは、カンファーキノンおよびアミン化合物を含む光重合性の組成物である。
<ポーセレン陶材-コンポジットレジン間の接着強さ(P陶材/Rセメント系接着強度)測定用試料作製>
被着体として、シリカ系結晶化ガラスを材質とする歯科用セラミックス(いわゆるポーセレン)である「ノリタケスーパーポーセレンAAA」(クラレノリタケ社製、縦15mm×横15mm×厚さ3mm)を用い、この被着体の片面を#800の耐水研磨紙で研磨した。その後、被着体の研磨面に、直径3mmの穴を開けた両面テープを貼り付けた。続いて、研磨面のうち両面テープの穴から露出している接着面に各実施例、および各比較例の歯科用組成物をそれぞれマイクロブラシで塗布し、接着面に塗布された歯科用組成物を5秒間エアブローすることにより乾燥させた。
その後、あらかじめ研磨したSUS304製丸棒(直径8mm、高さ18mm)をレジンセメント(リライエックスアルティメットレジンセメント、3MESPE社製)で接着し、評価用試料(サンプル)を作製した。なお、使用したレジンセメント(リライエックスアルティメットレジンセメント、3MESPE社製)は、化学重合性の組成物である。
[初期接着強さ試験]
上記のようにして作成したサンプルを各実施例あるいは比較例ごとに2つの試験群に分け、その一方の試験群について、各サンプルを37℃の水中にて24時間浸漬した後に万能試験機(島津製作所社製オートグラフ)を用い、クロスヘッドスピード2mm/分で引張接着強さ(初期接着強さ)を測定した。測定は、接着強さ測定用のサンプルを水中から引き上げて約1日以内に実施した。各実施例および各比較例について、4個のサンプルの測定値を平均し、測定結果とした。
[接着耐久性試験]
もう一方の試験群について、各サンプルを5℃および55℃の恒温水槽に各1分ずつ交互に浸漬するサーマルサイクルを3000サイクル実施することで接着耐久性測定用のサンプルとし、上記と同様にして引張接着強さ(耐久試験後接着強さ)を測定した。
3.実施例及び比較例
実施例1
(1)歯科用接着性組成物の調製: 1.0gのTAPM、0.15gのTBAF、0.5gのMDP、1.0gの精製水、1.5gのEtOH、6.5gのBis-GMA、3.0gのHEMA、0.01gのBHT、0.2gのCQ、0.1gのDMBEを混合し、歯科用組成物を得た。
(2)接着性評価: (1)で得た歯科用接着性組成物を接着材として用いて、前記した接着性評価を行った。その調製直後の組成物を用いた結果は、歯質に対する接着強さは、初期において、18.8MPa、耐久試験後で16.4MPaと共に高い接着強さを示している。ポーセレンに対する接着強さも同様に高く、初期で25.7MPa、耐久試験後で23.1MPaであった。さらに、50℃2週間保管した組成物を用いた場合は、歯質に対する接着強さが初期で17.3MPa、耐久試験後で15.2MPaであった。ポーセレンに対する接着強さは初期で23.9MPa、耐久試験後で21.5MPaであった。50℃2週間保管後も良好な接着強さを示したことから、本発明の歯科用組成物は優れた保管安定性を有するといえる。
実施例2~31
各成分の量比を表1に示されるように変える他は実施例1と同様にして、接着性組成物の調製し、得られた組成物を接着材として用いて接着性評価及び評価を行った。評価結果は表2に示しているが、何れの実施例においても初期・保管後ともに高い接着強さを示している。
Figure 0007217559000006
Figure 0007217559000007
比較例1~8
各成分の量比が表3に示されるように変えた他は実施例1と同様にして、組成物の調製及び評価を行った。評価結果は表4に示す。
シランカップリング剤が加水分解性シランカップリング剤である場合(比較例1)は、50℃保管後のポーセレンに対する耐久試験後の接着強さが低かった。シランカップリング剤の縮合による不活性化が起こったためである。フッ化物イオン源が含まれない(比較例2及び比較例6~8)場合は、シランカップリング剤が活性化されず、調製直後と50℃保管後の両方において、ポーセレンに対する接着強さが低かった。酸性基含有重合性単量体を含まない場合(比較例3)、脱灰が不十分であることと接着成分が少ないことから、歯質に対する接着強さが低下した。水を含まない場合は(比較例4)、歯質の脱灰が不十分であり、歯質に対する接着強さに低下がみられた。溶媒が含まれない場合(比較例5)、水とモノマー成分が相溶せず、均一な歯科用組成物を調製することができなかった。
Figure 0007217559000008
Figure 0007217559000009

Claims (6)

  1. シリルエーテル構造を含まず、1つのケイ素原子に4つの1価の基が結合した有機シラン化合物(a1)からなり、前記4つの1価の基は、(i)ラジカル重合性基を有する1価の基と、(ii)炭素数が3以上40以下のアルキレン鎖を有し、前記ケイ素原子から見てβ位の炭素原子に不飽和結合を有する1価の基とを含む、シランカップリング剤(A)と、
    フッ化物塩(B)と、
    酸性基含有重合性単量体(c1)を含む重合性単量体(C)と、
    水(D)と、
    有機溶媒(E)と、
    を含む混合物からなる、ことを特徴とする歯科用接着性組成物。
  2. 前記(a1)の有機シラン化合物が下記一般式(1)で示される、請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
    Figure 0007217559000010
    (上記一般式(1)中、
    Xは、ラジカル重合性基を有する1価の有機基であり、
    、R、及びRは、互いに同種又は異種の1価の有機基であり、
    、R、及びRの少なくとも1つは、下記一般式(2)で示される1価の有機基である。)
    Figure 0007217559000011
    (上記一般式(2)中、
    *は、当該1価の有機基が、前記一般式1におけるケイ素原子と結合する位置を表し、
    、R及びRは、夫々、水素原子;フェニル基;炭素数1~20の非置換アルキル基;1又は複数の水素原子が、アルコキシ基、シロキシ基及びアミノ基のうちの少なくとも1つで置換された炭素数1~20の置換アルキル基;又は炭素数2~20の前記非置換アルキル基若しくは前記置換アルキル基の主鎖のC-C結合間に、-O-結合、-C(=O)-O-結合、若しくは-NH-結合を有する1価の有機基である。)
  3. 前記有機シラン化合物(a1)1molに対して、0.01~10molの前記フッ化物塩(B)を含有する、請求項1又は2に記載の歯科用接着性組成物。
  4. 請求項1乃至3の何れか一項に記載された歯科用接着性組成物からなる、歯科用接着材。
  5. 表面にシラノール基を有する無機物質からなる接着面を有する第一の被着体と、重合性単量体を含む硬化性組成物又はその硬化体からなる第二の被着体と、を接着するための歯科用接着材である、請求項4に記載の歯科用接着材。
  6. 請求項1乃至3の何れか一項に記載された歯科用接着性組成物を単一の容器内に収容してなる、歯科用接着材包装体。
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