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JP7292236B2 - 同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法 - Google Patents

同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法に関する。
ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂は、安価で成形性、耐薬品性、耐水性、電気特性など多くの優れた性質を有する。そのため、ポリオレフィン樹脂は、シート、フィルム、成形物等の原料として広く採用されている。しかしながら、ポリオレフィン樹脂基材は、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の極性基材とは異なり、非極性でかつ結晶性を有する。そのため、塗装や接着が困難である。
こうした問題に対して、不飽和カルボン酸変性をはじめとする酸変性ポリオレフィン樹脂が塗装前処理剤、あるいは接着剤として提案されている。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、非極性基材への付着力を有するものの、溶剤溶解性に乏しい。酸変性ポリオレフィン樹脂の溶剤溶解性に乏しい原因は、酸成分のポリオレフィン樹脂に対する変性量が低いためである。
酸変性ポリオレフィン樹脂の溶解性向上を目的として、バッチ式にて酸成分の増量、あるいは酸成分の反応効率を向上させる第3成分との併用が知られている。
しかしながら、酸成分を増量しても、酸成分の低反応率のために、未反応成分が増加するだけでポリオレフィン樹脂の変性量は増加しない。そのため、得られる酸変性ポリオレフィン樹脂の溶剤溶解性は向上されない。また、熱、開始剤ラジカルを増量して酸成分の反応効率を向上させると、副反応としてポリオレフィン樹脂の減成が避けられない。そのため、溶剤溶解性は向上するものの、得られる酸変性ポリオレフィン樹脂の付着力は低下する。一方、酸成分の反応効率を向上させる第3成分、例えば、スチレン等を併用した場合、反応効率向上は認められるものの、第3成分由来の臭気、或いは架橋による溶剤溶解性悪化等の新たな問題が生じる。そのため、実用には至っていない。
この様に、従来のバッチ式では良好な付着力を維持しつつ、溶剤溶解性も良好な酸変性ポリオレフィン樹脂を製造することは非常に困難である。
この問題に対して、2軸押出機等の連続式による高剪断力条件下にて酸変性を行うと、熱量の増加、開始剤ラジカルの増量を行わなくても、酸成分の反応率を向上させ、良好な付着力を維持しつつ、溶剤溶解性も良好な酸変性ポリオレフィン樹脂を製造できることが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。一般に、2軸押出機とは、スクリューエレメントの組み合わせからなるスクリュー構成、バレルの温度、軸回転数等の条件の組み合わせ方により成型、分散、混練、脱溶剤、化学反応等の様々な用途に対応できる機械である。特に上記3条件の組み合わせ方は用途、使用試薬により大きく異なり、適切なスクリュー構成に対して、不適切な温度条件、極端な軸回転数といった組み合わせでは目的とする製品は得ることができない。押出機を用いる上ではこの3条件のバランスが重要である。
しかしながら、特許文献1は、反応方法として2軸押出機の使用を触れているにすぎず、そのスクリュー構成には触れられていない。
また、特許文献2は、温度条件、軸回転数に関する記載があるが、スクリュー構成には触れられていない。
上記に鑑み、本出願人は、同方向2軸押出機のスクリュー構成、温度パターン、軸の回転数を最適化した同方向2軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法を提案している(特許文献3参照)。
特開平6-293818号公報 特開2000-290313号公報 特許第4312440号公報
特許文献3に記載の方法によれば、所望の物性を有する変性ポリオレフィン樹脂が得られる。
ところで、特許文献3に記載の方法では、未反応の不飽和カルボン酸誘導体等の変性成分が残留する場合がある。未反応の変性成分が残留すると、変性ポリオレフィン樹脂の付着力が低下するなど、製品の性能が低下し、べたつきといった変性ポリオレフィン樹脂の物性、臭気、溶液等の性状に影響する場合がある。
これらの問題は、原料の投入量が多くなった際に問題となる場合が多く、製品の品質の一定化に課題がある。
本発明の課題は、製品の品質を一定化できる同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、同方向多軸押出機を、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部からなる構成とし、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度を70~150℃とすることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔6〕を提供する。
〔1〕ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸、その無水物及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性成分のグラフト重量が0.1~20重量%であり、かつ重量平均分子量が5,000~300,000である変性ポリオレフィン樹脂を、同方向多軸押出機を用いて調製するにあたり、前記同方向多軸押出機に投入した、前記ポリオレフィン樹脂と前記変性成分を含む原料が、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して前記変性ポリオレフィン樹脂として押し出され、前記脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度を70~150℃とする、同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
〔2〕前記ベント部の減圧度を-0.096~-0.040MPa(ゲージ圧)とする、上記〔1〕に記載の同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
〔3〕前記脱揮冷却部のバレル長さが、前記同方向多軸押出機の全体長の25~50%である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
〔4〕前記脱揮冷却部のベント部を含むバレルの長さが、前記脱揮冷却部全体の長さの10~65%である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
〔5〕下記式(1)で表される処理比が0.1~1.0である、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
(1):処理比 = (吐出量X)/(軸径Y)
(前記式(1)中、前記吐出量Xは、前記同方向多軸押出機の1時間あたりの吐出量(kg/h)を表し、前記軸径Yは、前記同方向多軸押出機の軸の径(cm)を表す。)
〔6〕軸回転数が50~500rpmである、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
本発明の同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法によれば、製品の品質を一定化できる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書中、「AA~BB」という表記は、AA以上BB以下を意味する。また、「全体長」とは、同方向多軸押出機の軸長さを意味する。
本発明の同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法(以下、単に「製造方法」と略記する)は、ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸、その誘導体及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性成分のグラフト重量が0.1~20重量%であり、かつ重量平均分子量が5,000~300,000である変性ポリオレフィン樹脂を、同方向多軸押出機を用いて製造する方法である。より詳細には、本発明の製造方法では、同方向多軸押出機に投入した、ポリオレフィン樹脂と変性成分を含む原料が、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由し、所望の変性ポリオレフィン樹脂として押し出される。この際、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度を70~150℃とする。
本発明の製造方法に使用される同方向多軸押出機は、原料投入側から順に、原料混合部(原料混合ゾーン)、溶融混練部(溶融混練ゾーン)、反応部(反応ゾーン)、及び脱揮冷却部(減圧冷却ゾーン)(以下、総称して「構成部」ともいう)からなる。そして、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度を70~150℃とする。
同方向多軸押出機の構成部は、流路方向で区別し得る。例えば、同方向多軸押出機の構成部は、バレル毎で区別してもよいし、スクリュー構成で区別してもよい。
尚、本発明の製造方法に使用される同方向多軸押出機としては、同方向2軸押出機、同方向4軸押出機、同方向8軸押出機等が挙げられ、好ましくは同方向2軸押出機である。
本発明の製造方法では、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度を70~150℃とする。従来の製造方法を種々検討したところ、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度が高すぎる場合、ベントアップ(変性ポリオレフィン樹脂が減圧部に詰まる減少)が起こりやすくなり、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度が低すぎる場合、未反応の変性成分が残留しやすくなるという知見を得た。
本発明の製造方法は、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度を70~150℃とするため、ベントアップを抑制しつつ、未反応の変性成分の残留を抑制できる。従って、製品の品質を一定化できる。
なお、本明細書中、ベント部とは、減圧部と連通するバレルをいう。
同方向多軸押出機の全体長(L)/直径(D)は、30~100が好ましく、40~90がより好ましい。全体長(L)/直径(D)が30未満であると、各構成部の目的を達成することが困難であり、目的とする変性ポリオレフィン樹脂が得られない場合がある。全体長(L)/直径(D)が100超であると、トルクが大きくなりすぎる、軸回転数を上げた際の軸のブレから機械の摩耗が激しくなり、回転数が制限されるといった問題が生じ、変性ポリオレフィン樹脂の製造が困難となる場合がある。
同方向多軸押出機の式(1)で表される処理比は、0.1~1.0であることが好ましく、0.1~0.8であることがより好ましい。当該範囲であれば、実際の製造現場における供給量を確保し得る。
(1):処理比 = (吐出量X)/(軸径Y)
(式(1)中、吐出量Xは、同方向多軸押出機の1時間あたりの吐出量(kg/h)を表し、軸径Yは、同方向多軸押出機の軸の径(cm)を表す。)
同方向多軸押出機の軸回転数は、50~500rpmが好ましく、100~400がより好ましい。50~500rpmよりも低くても高くても、各構成部位における役割を十分に発揮させることができない場合がある。
以下、各構成部について詳細を説明する。
(原料混合部)
原料混合部とは、各種原料のポリオレフィン樹脂及び試薬(変性成分を含む)を混練して、溶融混練部に供給する部位である。原料混合部を設けることで、原料供給速度を制御することが可能となる。スクリュー構成は、汎用型の浅溝タイプ及び/又は深溝タイプからなるスクリューエレメントを主体とする。
スクリューエレメントとは、スクリュー、逆スクリューをいう。各エレメントのネジ山の条数は任意であるが、好ましくは2条又は3条である。これよりも小さくても大きくても搬送能力に劣る。谷の深さは、谷直径/山直径の比で表した場合、0.5~0.7であることが好ましい。これよりも小さい場合は一定の速度で搬送することが困難であり、これよりも大きい場合は搬送能力に劣る。各エレメントのl/d(エレメント長/直径)は、2.0以下が好ましい。これよりも大きいと、スクリューエレメントの組み合わせのバリエーションがとれなくなり、溶融混練部の目的が果たせなくなる。
原料混合部のバレル温度は、40~60℃とすることが好ましい。このように、原料混合部のバレル温度を低温とすることで、投入した原料はほとんど溶融しないため、原料混合部の押出速度は、溶融混練部での押出速度に比して遅くなる。そのため、原料混合部にて原料供給速度を制御することが可能となり、溶融混練部からの逆流を防止することができる。
原料混合部のバレル長さは、同方向多軸押出機の全体長の5~10%が好ましい。5%未満であると、溶融混練部から逆流する場合がある。10%超であると、処理速度が著しく遅くなる場合がある。
(溶融混練部)
溶融混練部とは、各種原料のポリオレフィン樹脂及び試薬(変性成分を含む)を溶融し、混練する部位である。ポリオレフィン樹脂と試薬を良好に反応させるためには、この部位にて十分均一に溶融混練する必要がある。これにはポリオレフィン樹脂及び試薬が互いに反応しない程度の温度に保ち、かつ高回転とすることで達成される。また、スクリュー構成は、汎用型の浅溝タイプ及び/又は深溝タイプからなるスクリューエレメントを主体とし、必要に応じて後述のニーディングエレメントの使用も可能である。なお、スクリューエレメントについては前述の通りである。
溶融混練部のバレル温度は、60~150℃が好ましい。60℃未満であると、溶融が不十分となり、均一に溶融混練できない場合がある。150℃超であると、ポリオレフィン樹脂と試薬が局所的に反応し、製品の品質にばらつきが生じる場合がある。
溶融混練部のバレル長さは、同方向多軸押出機の全体長の5~15%が好ましい。5%未満であると、溶融混練が不十分となる場合がある。15%超であると、他の構成部のバレル長さが短くなり、目的とする変性ポリオレフィン樹脂が得られない場合がある。
(反応部)
反応部とは、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸、その無水物及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性成分でグラフト変性される部位である。また、反応部では、ニーディングエレメントが十分に占有していることも必要である。但し、変性ポリオレフィン樹脂の搬送促進、充填率の向上ために必要に応じてスクリューエレメントを使用しても構わない。なお、スクリューエレメントについては前述の通りである。
ニーディングエレメントとは、複数のパドル型円盤が右方向にずれて重なったニーディングディスクライト、複数のパドル型円盤が左方向にずれて重なったニーディングディスクレフト、パドル型円盤が90度ずつずれて重なったニーディングディスクニュートラル、スクリューの山を切り欠いたミキシングスクリュー、及び、逆ミキシングスクリューをいう。各エレメントのネジ山の条数は任意であるが、好ましくは2条又は3条である。これよりも小さくても大きくても混練能力に劣る場合がある。また、各エレメントのl/d(エレメント長/直径)は、0.4~2.0が好ましい。l/dが0.4未満であると、高温下における過剰な混練がポリオレフィン樹脂の減成を促進し、得られる変性ポリオレフィン樹脂の非極性基材に対する付着力が足りなくなる場合がある。l/dが2.0超であると、ニーディングエレメントの組み合わせのバリエーションがとれなくなり、反応部の目的が果たせなくなる場合がある。ニーディングエレメントの組み合わせは任意である。
ニーディングエレメントの占有率(反応部内のニーディングエレメント総バレル長さ/反応部のバレル長さ)は、65~95%が好ましく、70~90%が好ましい。65%未満であると、グラフト変性が不十分となる場合がある。また、95%超であると、内容物の搬送が困難となり、高温下における過剰な混練がポリオレフィン樹脂の減成を促進し、得られる変性ポリオレフィン樹脂の非極性基材に対する付着力が足りなくなる場合がある。
反応部のバレル温度は、120~230℃が好ましく、150~215℃がより好ましい。120℃未満であると、ポリオレフィン樹脂の溶融が不十分であり、グラフト反応が十分に進行しない場合がある。230℃超であると、熱によるポリオレフィン樹脂の減成が促進される。
反応部のバレル長さは、同方向多軸押出機の全体長の25%~55%が好ましく、30~50%がより好ましい。25%未満であると、グラフト変性が不十分となる場合がある。55%超であると、高温下における過剰な混練がポリオレフィン樹脂の減成を促進し、得られる変性ポリオレフィン樹脂の非極性基材に対する付着力が足りなくなる場合がある、或いは脱揮部、冷却部を十分に確保できなくなる場合がある。そのため、目的とする変性ポリオレフィン樹脂を得ることが困難となる場合がある。
(脱揮冷却部)
脱揮冷却部とは、脱揮部と冷却部の総称である。
脱揮部とは、反応終了後、変性ポリオレフィン樹脂中の低分子量揮発成分の除去を行う部位(「ベント部」ともいう)であり、揮発成分の沸点となるように温度と減圧度を調整する必要がある。効率的な脱揮には段階的に脱揮すること、或いは高回転数とすることも重要である。この部位にて脱揮が不十分であると、べたつきといった変性ポリオレフィン樹脂の物性、臭気、溶液等の性状に影響を与える。スクリュー構成は、汎用型の浅溝タイプ及び/又は深溝タイプからなるスクリューエレメントを主体とし、必要に応じてニーディングエレメントの使用も可能である。なお、スクリューエレメント、ニーディングエレメントについては前述の通りである。
冷却部とは、変性ポリオレフィン樹脂を冷却する部位であり、この部位にて冷却が不十分であると、ストランドで押出された変性ポリオレフィン樹脂がべたつき、裁断機にて裁断不能となる。そのため、冷却部位を十分に長くする、温度を低くするといった押出機内における変性ポリオレフィン樹脂の滞留時間を長くする工夫が必要となる。スクリュー構成は、スクリューエレメントを主体とし、必要に応じてニーディングエレメントの使用も可能である。
ベント部のバレル温度は、70~150℃であり、75~120℃がより好ましい。70℃未満であると、変性ポリオレフィン樹脂中の低分子量揮発成分の除去が不十分な場合がある。150℃超であると、変性ポリオレフィン樹脂が減圧部に詰まる場合がある。
ベント部の減圧度は、-0.096~-0.040MPa(ゲージ圧)が好ましく、-0.096~-0.060MPa(ゲージ圧)がより好ましい。-0.040MPa(ゲージ圧)より高いと、変性ポリオレフィン樹脂中の低分子量揮発成分の除去が不十分な場合がある。-0.096MPa(ゲージ圧)より低いと、変性ポリオレフィン樹脂が減圧部に詰まる場合がある。
冷却部のバレル温度は、40~190℃が好ましく、50~140℃がより好ましい。40℃未満であると、変性ポリオレフィン樹脂の溶融が不十分となり、押出機に過大な負荷がかかるため運転が困難になる場合がある。190℃超であると、押出機から吐出された変性ポリオレフィン樹脂の冷却に時間がかかる場合がある。
脱揮冷却部のバレル長さは、同方向多軸押出機の全体長の25~50%が好ましく、30~45%がより好ましい。25%未満であると、低分子量揮発成分の除去や冷却が不十分な場合がある。50%超であると、他の構成部のバレル長さが短くなり、目的とする変性ポリオレフィン樹脂が得られない場合がある。
脱揮冷却部のベント部を含むバレルの長さは、脱揮冷却部全体の長さの10~65%が好ましく、15~35%がより好ましい。10%未満であると、変性ポリオレフィン樹脂中の低分子量揮発成分の除去が不十分となる場合がある。65%超であると、他の構成部のバレル長さが短くなり、目的とする変性ポリオレフィン樹脂が得られない場合がある。
(他の構成)
本発明における同方向多軸押出機には必要に応じて周辺機器を備えてもよい。周辺機器としては、例えば、原料を粉末化するための攪拌機;原料投入のためのフィーダー、ホッパ、試薬の途中添加のためのサイドフィーダー;揮発成分の減圧留去のための真空ポンプ;ストランドで押出された変性ポリオレフィン樹脂を搬送するベルトコンベアー;ストランドを裁断する裁断機;変性ポリオレフィン樹脂を排出するヘッダーやダイスが挙げられる。原料は、フィーダー、ホッパ、或いはサイドフィーダーを用いて、同方向多軸押出機入口又は途中添加口より、粉体、ペレット、液体、あるいはこれらの混合物として投入できる。添加方法は、逐次に添加してもよく、一括添加してもよい。
本発明における同方向多軸押出機には、周辺機器として攪拌機を設けることが好ましい。攪拌機を設けることで、凝集している原料を解砕して原料混合部に投入し得るため、効率を向上することができる。
攪拌機としては、垂直軸回転の多段ブレード型、水平軸回転のショベル羽根型(チョッパー付)、容器回転の多段チョッパー型等が挙げられる。
垂直軸回転型とは、スクリュー型、アーム型、ブレード型といった混合具が混合容器内に存在する垂直軸に取り付けてあるタイプのものをいう。中でも多段ブレード型は、複数の高速回転するブレードにより試料に強い衝撃力が加わり分散混合が可能である。
水平軸回転型とは、上記垂直軸回転型と同様な混合具を備え、回転軸が水平であるものをいう。中でもショベル羽根を有し、更に高速回転するチョッパーを有するタイプのものは、ショベル羽根でかきあげられた試料をチョッパーが高速ではねとばす為、チョッパーと試料あるいは試料同士の衝突により強力な衝撃力が生じ、効率的な分散混合を可能とする。
上記2種は容器が固定されているのに対し容器自体が回転するのが容器回転型である。容器の回転によって試料に遠心力が生じ、容器の側壁にとりつけられたチョッパーと衝突することにより塊状試料の分散を可能とする。
また、上記の高速せんだん性を有する攪拌機は、原料中に粉体成分と液状成分が存在して粉体のダマが発生する場合に、これを均質に分散することが出来るという面においても好ましい。
このような高速せんだん性を有する攪拌機としては、例えば(株)ダルトン製のスパルタン・リューザー、太平洋機工(株)製のプローシェアーミキサー等がある。
(原料)
本明細書中、ポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2~20、好ましくは2~6のα-オレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、ジビニルベンセン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン等の鎖状あるいは環状ポリエン;或いはスチレン、置換スチレン等の単独又は共重合体である。
重合体中のこれらモノマーの割合は任意に選択できる。但し、ポリエチレン、ポリプロピレンを被着材とする場合、プロピレンの割合は、50~98%が好ましく、エチレン-プロピレン、プロピレン-ブテン、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体がより好ましい。50%よりも少ないと、被着材への付着性が劣る場合がある。98%より多いと、柔軟性が不足する場合がある。
重合体の分子量は、変性した後の変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が5,000~300,000となるように自由に選択できる。例えば、重量平均分子量が300,000より大きい重合体であっても、熱やラジカルの存在下で減成して分子量を適当な範囲に調整する等の公知の方法で使用可能になる。
不飽和カルボン酸、その無水物及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性成分は、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸及びこれらの無水物、並びに(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である。好ましくは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートである。
ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸、その無水物及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性成分のグラフト重量は、それぞれ、0.1~20重量%であり、好ましくは0.1~10重量%である。この範囲よりもグラフト重量が少ないと、変性ポリオレフィン樹脂の付着力が低下する場合がある。多すぎると、未反応物が多く発生する場合がある。
また、用途、目的に応じて前記のモノマーと併用して、(メタ)アクリル酸、マレイミド、N-フェニルマレイミド、イソシアネート含有(メタ)アクリレート等の他の不飽和モノマーを使用することもできる。但し、変性ポリオレフィン樹脂の目的とする付着性を得るためには、これら他のモノマーの使用量は、不飽和カルボン酸、その無水物及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性成分の使用量を超えないことが好ましい。
さらに、用途、目的に応じて前記のポリオレフィン樹脂と併用して、ゴム成分を使用することができる。ゴム成分とは、ゴムの原料であり、架橋してゴムとなるものをいう。ゴム成分としては、天然ゴム用のゴム成分と合成ゴム用のゴム成分が存在する。
天然ゴム用のゴム成分としては、例えば、化学修飾を施さない狭義の天然ゴム(NR);塩素化天然ゴム、クロロスルホン化天然ゴム、エポキシ化天然ゴム等の化学修飾した天然ゴム;水素化天然ゴム;脱タンパク天然ゴムが挙げられる。
合成ゴム用のゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらの中でも、非ジエン系のゴムが好ましく、エチレン-プロピレンゴムがより好ましい。
ゴム成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
変性ポリオレフィン樹脂には、使用する目的に応じて変性ポリオレフィン樹脂の安定性の調整のための安定剤、反応促進のためのラジカル開始剤等をさらに配合することができる。
安定剤としては、ヒドロキノン、ベンゾキノン、ニトロソフェニルヒドロキシ化合物等が挙げられる。
ラジカル開始剤は公知のものから適宜選択でき、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
(変性ポリオレフィン樹脂)
変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物のグラフト重量は、それぞれ、0.1~20重量%であり、好ましくは0.1~10重量%である。この範囲よりもグラフト重量が少ないと、変性ポリオレフィン樹脂の溶剤溶解性や、基材への付着力が低下する場合がある。多すぎると、未反応物が多く発生する場合がある。
不飽和カルボン酸及び/又はその無水物のグラフト重量は、アルカリ滴定法により算出する。
変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、5,000~300,000であり、より好ましくは、15,000~250,000であり、さらに好ましくは15,000~200,000である。5,000より小さいと、非極性基材への付着力や凝集力が劣る場合がある。300,000より大きいと、高粘度のために作業性が悪化する場合や、他樹脂との相溶性が低下する場合がある。
重量平均分子量は、溶離液をTHFとしてGPC法により測定した値である。より詳細には、以下のとおりである。
測定機器:HLC-8320GPC(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel(東ソー社製)
標準物質:ポリスチレン(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器:示差屈折計(東ソー製)
測定試料がTHFに溶解しない場合、下記の条件にて塩素化処理を行ったうえで、上記記載のGPC法により測定する。なお、試料を塩素化処理することで、重量平均分子量を維持したまま樹脂の結晶性を低下させるとともに、極性を高め、THF等の溶剤に溶解することが可能となる。
(塩素化処理条件)
変性ポリオレフィン樹脂の塩素化処理方法は特に限定されない。例えば、変性ポリオレフィン樹脂に塩素を導入する工程を含む方法が挙げられる。
塩素導入にあたり、ポリオレフィンを予めクロロホルム等の塩素系溶媒に溶解しておいてもよい。塩素の導入は、通常、反応系への塩素ガスの吹き込みにより行う。塩素ガスの吹き込みは、紫外線の照射下で行ってもよいし、ラジカル反応開始剤の存在下又は不存在下で行ってもよい。塩素ガスの吹き込みの際の圧力は制限されず、常圧でも加圧下でもよい。塩素ガスの吹き込みの際の温度は特に制限されないが、通常は、50~140℃である。
変性ポリオレフィン樹脂への塩素導入が終了した後に塩素化変性ポリオレフィン樹脂が得られる。系内の塩素系溶媒は、通常、減圧などにより留去されるか、或いは、有機溶剤で置換される。
塩素化変性ポリオレフィン樹脂の塩素含有率はJIS-K7229に準じて測定し得る。すなわち、塩素含有樹脂を酸素雰囲気下で燃焼させ、発生した気体塩素を水で吸収し、滴定により定量する「酸素フラスコ燃焼法」を用いて測定できる。後述の実施例における塩素含有率もこの方法で測定した値である。
変性ポリオレフィン樹脂が、不飽和カルボン酸誘導体でグラフトされている場合、そのグラフト重量は、好ましくは0.1~20重量%であり、より好ましくは0.1~10重量%である。この範囲よりもグラフト重量が少ないと、変性ポリオレフィン樹脂の溶剤溶解性や他樹脂との相溶性、基材への付着力が低下する場合がある。多すぎると、未反応物や、ポリオレフィン骨格にグラフトしないホモポリマーやコポリマーが多く発生する場合がある。
不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量は、H-NMRを用いて算出する。
変性ポリオレフィン樹脂の融点の下限は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。変性ポリオレフィン樹脂の融点が50℃以上であると、変性ポリオレフィン樹脂を接着剤、インキ、塗料等の用途に用いる際、十分な塗膜強度を発現し得る。そのため、基材との付着性が十分に発揮され得る。また、その上限は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。ポリオレフィン樹脂の融点が160℃以下であると、変性ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、塗膜が硬くなりすぎることを抑制し得る。そのため、塗膜が適度な柔軟性を発揮し得る。
ポリオレフィン樹脂の融点は、50~160℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。
融点は、JIS K7121(1987)に準拠し、DSC測定装置(例えば、「DISCOVERY DSC2500」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて測定できる。より詳細には、約5mgの試料を200℃で10分間加熱融解状態を保持する。その後、10℃/分の速度で降温し、-50℃で5分間安定保持する。その後、10℃/分で200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度を融点とする。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、「部」とは、別途記載がない限り、重量部を意味し、各バレル長さは、同方向2軸押出機の全体長に対する割合である。
[不飽和カルボン酸及び/又はその無水物のグラフト重量(重量%)]:サンプルの10重量%トルエン溶液に対してKOHメタノール溶液を滴定し、滴定量からサンプル中のグラフト重量を算出した。
[エタノール抽出後の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物のグラフト重量(重量%)]:サンプルの10%重量トルエン溶液を、300mLのエタノールに滴下し、15分間撹拌した。析出した樹脂を回収して40℃で一晩減圧乾燥した。得られた抽出後サンプルの10重量%トルエン溶液に対してKOHメタノール溶液を滴定し、滴定量からサンプル中のグラフト重量を算出した。
尚、特に文中に断りがなければ、エタノール抽出を行っていないサンプルのグラフト重量(重量%)とする。
[不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)]:H-NMRを用いて算出した。
[エタノール抽出後の不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重量(重量%)]:サンプルの10%重量トルエン溶液を、300mLのエタノールに滴下し、15分間撹拌した。析出した樹脂を回収して40℃で一晩減圧乾燥した。得られた抽出後サンプルに対しH-NMRを用いて算出した。
尚、特に文中に断りがなければ、エタノール抽出を行っていないサンプルのグラフト重量(重量%)とする。
[重量平均分子量(万)]:重量平均分子量は、溶離液をTHFとしてGPC法により測定した。より詳細には、以下のとおりである。
測定機器:HLC-8320GPC(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel(東ソー社製)
標準物質:ポリスチレン(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器:示差屈折計(東ソー製)
測定試料がTHFに溶解しない場合、下記の条件にて塩素化処理を行ったうえで、上記記載のGPC法により測定した。
(塩素化処理条件)
変性ポリオレフィン樹脂5kgをグラスライニングされた50L反応釜に投入し、33Lのクロロホルムを入れ、0.2MPaの圧力の下、温度97℃で充分に溶解させた後、開始剤2,2-アゾビスイソブチロニトリルを5g添加し、上記釜内圧力を0.2MPaに制御しながらガス状の塩素を反応釜に吹き込むことで塩素化反応を行った。塩素ガス吹込み終了後、系内のクロロホルムをトルエンに置換し、塩素化度25%の塩素化変性ポリオレフィン樹脂溶液を得た。
[処理比(%)]:下記式(1)に従い、算出した。
(1):処理比 = (吐出量X)/(軸径Y)
(式(1)中、吐出量Xは、同方向2軸押出機の1時間あたりの吐出量(kg/h)を表し、軸径Yは、同方向2軸押出機の軸の径(cm)を表す。)
[融点(℃)]:DSC測定装置(「DISCOVERY DSC2500」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、約5mgの試料を200℃で10分間融解し、-50℃まで10℃/minの速度で降温して結晶化する。その後、10℃/minで200℃まで昇温して融解する。融解した時の融解ピーク温度を融点とした。
[ヒートシール強度(N)]:アルミ箔上に樹脂乾燥膜厚が5μmとなるように、#16のマイヤーバーで調製した変性ポリオレフィン樹脂の溶液試料(固形分:15%、溶剤組成:メチルシクロヘキサン/MEK=80/20(w/w))を接着剤として塗布し、180℃で10秒間乾燥した。変性ポリオレフィン樹脂を塗布したアルミ箔を無延伸ポリプロピレン(CPP)シートと貼合し、200℃、1kgf、1秒間の条件で熱圧着を行った後、15mm幅に切り出して試験片を作製した。試験片を23℃、相対湿度50%の恒温・恒湿条件下で24時間保管した後、剥離角度180°、剥離速度100mm/minの条件でラミネート接着強度を測定した。
(実施例1)
ポリオレフィン樹脂であるα-オレフィン共重合体(プロピレン成分66モル%、エチレン成分11モル%、1-ブテン成分23モル%、Tm=75℃)100部、無水マレイン酸8部、ラウリルメタクリレート8部、及びジクミルパーオキサイド2部を攪拌機にて予混合し、L/D=60、同方向2軸押出機に、処理量21kg/hで投入した。投入した原料は、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して変性ポリオレフィン樹脂として得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂について、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々6.3重量%及び4.7重量%であり、エタノール抽出後の無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々5.6重量%及び4.2重量%であった。重量平均分子量は、5万であり、融点は、75℃であった。
なお、同方向2軸押出機の処理比は、0.19であり、同方向2軸押出機の軸回転数は、300rpmとした。
なお、各バレルの詳細は以下の通りとした。
原料混合部のバレル温度は60℃、バレル長さは7%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなる。
溶融混練部のバレル温度は90~105℃、バレル長さは13%、スクリュー構成はニーディングディスクとミキシングスクリューを組み合わせて用いた。
反応部のバレル温度は150~165℃、バレル長さは39%、スクリュー構成はニーディングディスクの占有率が77%であり、その構成がニーディングディスクライト30%、ニーディングディスクレフト30%、ニーディングディスクニュートラル40%である。
冷却部のバレル温度は50~120℃、脱揮冷却部のバレル長さは33%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなり、逆スクリューの占有率が6%である。
なお、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度は120℃、減圧度は-0.085MPa(ゲージ圧)、脱揮冷却部の全体長さに対するベント部を含むバレルの長さは20%とした。
(実施例2)
α-オレフィン共重合体(プロピレン成分85モル%、エチレン成分15モル%、Tm=60℃)100部、無水マレイン酸1部、ラウリルメタクリレート1部、及びジクミルパーオキサイド0.5部を攪拌機にて予混合し、L/D=60、同方向2軸押出機に、処理量24kg/hで投入した。投入した原料は、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して変性ポリオレフィン樹脂として得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂について、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々0.9重量%及び0.7重量%であり、重量平均分子量は、13万であり、融点は、60℃であった。
なお、同方向2軸押出機の処理比は、0.22であり、同方向2軸押出機の軸回転数は、300rpmとした。
なお、各バレルの詳細は以下の通りとした。
原料混合部のバレル温度は60℃、バレル長さは7%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなる。
溶融混練部のバレル温度は80~110℃、バレル長さは13%、スクリュー構成はニーディングディスクとミキシングスクリューを組み合わせて用いた。
反応部のバレル温度は170~180℃、バレル長さは33%、スクリュー構成はニーディングディスクの占有率が77%であり、その構成がニーディングディスクライト30%、ニーディングディスクレフト30%、ニーディングディスクニュートラル40%である。
冷却部のバレル温度は75~100℃、脱揮冷却部のバレル長さは39%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなり、逆スクリューの占有率が6%である。
なお、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度は75℃、減圧度は-0.082MPa(ゲージ圧)、脱揮冷却部の全体長さに対するベント部を含むバレルの長さは17%とした。
(実施例3)
α-オレフィン共重合体(プロピレン成分70モル%、1-ブテン成分30モル%、Tm=75℃)100部、無水マレイン酸4部、ラウリルメタクリレート4部、及びジクミルパーオキサイド2部を攪拌機にて予混合し、L/D=60、同方向2軸押出機に、処理量24kg/hで投入した。投入した原料は、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して変性ポリオレフィン樹脂として得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂について、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々3.4量%及び2.5重量%であり、重量平均分子量は、10万であり、融点は、74℃であった。
なお、同方向2軸押出機の処理比は、0.22であり、同方向2軸押出機の軸回転数は、150rpmとした。
なお、各バレルの詳細は以下の通りとした。
原料混合部のバレル温度は50℃、バレル長さは7%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなる。
溶融混練部のバレル温度は70~110℃、バレル長さは13%、スクリュー構成はニーディングディスクとミキシングスクリューを組み合わせて用いた。
反応部のバレル温度は165~215℃、バレル長さは39%、スクリュー構成はニーディングディスクの占有率が77%であり、その構成がニーディングディスクライト30%、ニーディングディスクレフト30%、ニーディングディスクニュートラル40%である。
冷却部のバレル温度は80~90℃、脱揮冷却部のバレル長さは33%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなり、逆スクリューの占有率が6%である。
なお、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度は90℃、減圧度は-0.088MPa(ゲージ圧)、脱揮冷却部の全体長さに対するベント部を含むバレルの長さは20%とした。
(実施例4)
α-オレフィン共重合体(プロピレン成分80モル%、1-ブテン成分20モル%、Tm=85℃)100部、無水マレイン酸4部、ラウリルメタクリレート4部、及びジクミルパーオキサイド2部を攪拌機にて予混合し、L/D=60、同方向2軸押出機に、処理量21kg/hで投入した。投入した原料は、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して変性ポリオレフィン樹脂として得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂について、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々3.4重量%及び2.5重量%であり、エタノール抽出後の無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々3.0重量%及び2.2重量%であった。重量平均分子量は、15万であり、融点は、84℃であった。
なお、同方向2軸押出機の処理比は、0.19であり、同方向2軸押出機の軸回転数は、100rpmとした。
なお、各バレルの詳細は以下の通りとした。
原料混合部のバレル温度は60℃、バレル長さは7%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなる。
溶融混練部のバレル温度は80~110℃、バレル長さは13%、スクリュー構成はニーディングディスクとミキシングスクリューを組み合わせて用いた。
反応部のバレル温度は150~170℃、バレル長さは39%、スクリュー構成はニーディングディスクの占有率が77%であり、その構成がニーディングディスクライト30%、ニーディングディスクレフト30%、ニーディングディスクニュートラル40%である。
冷却部のバレル温度は80~90℃、脱揮冷却部のバレル長さは33%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなり、逆スクリューの占有率が6%である。
なお、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度は90℃、減圧度は-0.090MPa(ゲージ圧)、脱揮冷却部の全体長さに対するベント部を含むバレルの長さは20%とした。
(実施例5)
α-オレフィン共重合体(プロピレン成分97モル%、エチレン成分3モル%、Tm=125℃)100部、無水マレイン酸3部、及びジクミルパーオキサイド2部を攪拌機にて予混合し、L/D=60、同方向2軸押出機に、処理量60kg/hで投入した。投入した原料は、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して変性ポリオレフィン樹脂として得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂について、無水マレイン酸のグラフト重量は、2.6重量%、融点は、125℃であった。得られた変性ポリオレフィン樹脂はTHFに溶解しなかったため、塩素化処理を行ったうえでGPC法にて重量平均分子量を測定したところ、9万であった。
なお、同方向2軸押出機の処理比は、0.54であり、同方向2軸押出機の軸回転数は、400rpmとした。
なお、各バレルの詳細は以下の通りとした。
原料混合部のバレル温度は40℃、バレル長さは7%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなる。
溶融混練部のバレル温度は90~120℃、バレル長さは13%、スクリュー構成はニーディングディスクとミキシングスクリューを組み合わせて用いた。
反応部のバレル温度は165~170℃、バレル長さは33%、スクリュー構成はニーディングディスクの占有率が83%であり、その構成がニーディングディスクライト33%、ニーディングディスクレフト33%、ニーディングディスクニュートラル34%である。
冷却部のバレル温度は90~110℃、脱揮冷却部のバレル長さは39%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなり、逆スクリューの占有率が7%である。
なお、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度は100℃、減圧度は-0.073MPa(ゲージ圧)、脱揮冷却部全体の長さに対するベント部を含むバレルの長さは33%とした。
(実施例6)
α-オレフィン共重合体(プロピレン成分97モル%、エチレン成分3モル%、Tm=125℃)100部、無水マレイン酸1部、及びジクミルパーオキサイド4部を攪拌機にて予混合し、L/D=60、同方向2軸押出機に、処理量70kg/hで投入した。投入した原料は、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して変性ポリオレフィン樹脂として得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂について、無水マレイン酸のグラフト重量は、0.8重量%、融点は、125℃であった。得られた変性ポリオレフィン樹脂はTHFに溶解しなかったため、塩素化処理を行ったうえでGPC法にて重量平均分子量を測定したところ、9万であった。
なお、同方向2軸押出機の処理比は、0.63であり、同方向2軸押出機の軸回転数は、300rpmとした。
なお、各バレルの詳細は以下の通りとした。
原料混合部のバレル温度は60℃、バレル長さは7%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなる。
溶融混練部のバレル温度は110~130℃、バレル長さは13%、スクリュー構成はニーディングディスクとミキシングスクリューを組み合わせて用いた。
反応部のバレル温度は190~200℃、バレル長さは33%、スクリュー構成はニーディングディスクの占有率が83%であり、その構成がニーディングディスクライト33%、ニーディングディスクレフト33%、ニーディングディスクニュートラル34%である。
冷却部のバレル温度は100~140℃、脱揮冷却部のバレル長さは39%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなり、逆スクリューの占有率が7%である。
なお、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度は100℃、減圧度は-0.075MPa(ゲージ圧)、脱揮冷却部全体の長さに対するベント部を含むバレルの長さは33%とした。
(実施例7)
処理量10kg/h(処理比0.09)とした以外は、実施例2と同様に製造した。得られた変性ポリオレフィン樹脂について、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々0.9重量%及び0.7重量%であり、重量平均分子量は10万であり、融点は、60℃であった。
(実施例8)
処理量90kg/h(処理比0.81)とした以外は、実施例6と同様に製造した。得られた変性ポリオレフィン樹脂について、無水マレイン酸のグラフト重量は、0.7重量%、融点は、125℃であった。得られた変性ポリオレフィン樹脂はTHFに溶解しなかったため、塩素化処理を行ったうえでGPC法にて重量平均分子量を測定したところ、13万であった。
なお、同方向2軸押出機の処理比は、0.63であり、同方向2軸押出機の軸回転数は、300rpmとした。
実施例1~8では、ベントアップが発生せず安定して変性ポリオレフィン樹脂を製造する事ができた。
(比較例1)
α-オレフィン共重合体(プロピレン成分64モル%、エチレン成分11モル%、1-ブテン成分23モル%、Tm=75℃)100部、無水マレイン酸8部、ラウリルメタクリレート8部、及びジクミルパーオキサイド2部を攪拌機にて予混合し、L/D=60、同方向2軸押出機に、処理量21kg/hで投入した。投入した原料は、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して変性ポリオレフィン樹脂として得たものの、ベントアップが発生し、安定的には得られなかった。得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物について、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々6.9重量%及び5.2重量%であり、エタノール抽出後の無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々5.7重量%及び4.2重量%であった。重量平均分子量は、5万であり、融点は、75℃であった。
なお、同方向2軸押出機の処理比は、0.19であり、同方向2軸押出機の軸回転数は、300rpmとした。
なお、各バレルの詳細は以下の通りとした。
原料混合部のバレル温度は60℃、バレル長さは7%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなる。
溶融混練部のバレル温度は90~105℃、バレル長さは13%、スクリュー構成はニーディングディスクとミキシングスクリューを組み合わせて用いた。
反応部のバレル温度は150~165℃、バレル長さは39%、スクリュー構成はニーディングディスクの占有率が77%であり、その構成がニーディングディスクライト30%、ニーディングディスクレフト30%、ニーディングディスクニュートラル40%である。
冷却部のバレル温度は50~120℃、脱揮冷却部のバレル長さは33%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなり、逆スクリューの占有率が6%である。
なお、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度は155℃、減圧度は-0.086MPa(ゲージ圧)、脱揮冷却部の全体長さに対するベント部を含むバレルの長さは20%とした。
脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度が異なる以外は、ほぼ同一条件で製造した実施例1と比較例1の変性ポリオレフィン樹脂のエタノール抽出後のグラフト重量は、ほぼ同一であるが、エタノール未抽出のグラフト重量は、比較例1の変性ポリオレフィン樹脂の方が高かった。これらの結果は、実施例1の変性ポリオレフィン樹脂と比較例1の変性ポリオレフィン樹脂を比較して、比較例1の変性ポリオレフィン樹脂の未反応の変性成分が多いことを意味する。また、ヒートシール強度を測定したところ、実施例1では7N、比較例1では4Nであった。
上記から、比較例1の変性ポリオレフィン樹脂ではベントアップが発生し、脱揮が不十分となった結果、未反応の変性成分が多く残留し、実施例1の変性ポリオレフィン樹脂と比較して基材への付着強度が劣ったといえる。そのため、ベント部のバレル温度が150℃超であると、製品の品質が一定化しないといえる。
(比較例2)
α-オレフィン共重合体(プロピレン成分80モル%、1-ブテン成分20モル%、Tm=85℃)100部、無水マレイン酸4部、ラウリルメタクリレート4部、及びジクミルパーオキサイド2部を攪拌機にて予混合し、L/D=60、同方向2軸押出機に、処理量21kg/hで投入した。投入した原料は、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して変性ポリオレフィン樹脂として得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物について、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量は、各々3.7重量%及び2.7重量%であり、エタノール抽出後のグラフト重量は、各々3.1重量%及び2.2重量%であった。重量平均分子量は、15万であり、融点は、84℃であった。
なお、同方向2軸押出機の処理比は、0.19であり、同方向2軸押出機の軸回転数は、100rpmとした。
なお、各バレルの詳細は以下の通りとした。
原料混合部のバレル温度は60℃、バレル長さは7%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなる。
溶融混練部のバレル温度は80~110℃、バレル長さは13%、スクリュー構成はニーディングディスクとミキシングスクリューを組み合わせて用いた。
反応部のバレル温度は150~170℃、バレル長さは39%、スクリュー構成はニーディングディスクの占有率が77%であり、その構成がニーディングディスクライト30%、ニーディングディスクレフト30%、ニーディングディスクニュートラル40%である。
冷却部のバレル温度は80~90℃、脱揮冷却部のバレル長さは33%、スクリュー構成はスクリューエレメントからなり、逆スクリューの占有率が6%である。
なお、脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度は60℃、減圧度は-0.090MPa(ゲージ圧)、脱揮冷却部全体の長さに対するベント部を含むバレルの長さは20%とした。
脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度が異なる以外は、同一条件で製造した実施例4と比較例2の変性ポリオレフィン樹脂のエタノール抽出後のグラフト重量は、ほぼ同一であったが、エタノール未抽出のグラフト重量は、比較例2の変性ポリオレフィン樹脂の方が高かった。これらの結果は、実施例4の変性ポリオレフィン樹脂と比較例2の変性ポリオレフィン樹脂を比較して、比較例2の変性ポリオレフィン樹脂の未反応の変性成分が多いことを意味する。また、ヒートシール強度を測定したところ、実施例4では10N、比較例2では5Nであった。
上記から、比較例2の変性ポリオレフィン樹脂では未反応の変性成分が多く残留し、実施例4の変性ポリオレフィン樹脂と比較して基材への付着強度が劣ったといえる。そのため、ベント部のバレル温度が70℃未満であると、製品の品質が一定化しないといえる。

Claims (3)

  1. ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸、その無水物及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性成分のグラフト重量が0.1~20重量%であり、かつ重量平均分子量が5,000~300,000である変性ポリオレフィン樹脂を、同方向多軸押出機を用いて調製するにあたり、
    前記同方向多軸押出機に投入した、前記ポリオレフィン樹脂と前記変性成分を含む原料が、原料混合部、溶融混練部、反応部、及び脱揮冷却部の順に各バレルを経由して前記変性ポリオレフィン樹脂として押し出され、
    前記脱揮冷却部に存在するベント部のバレル温度を75120℃、前記ベント部の減圧度を-0.096~-0.040MPa(ゲージ圧)とし、
    前記脱揮冷却部のバレル長さが、前記同方向多軸押出機の全体長の25~50%であり、前記ベント部を含むバレルの長さが、前記脱揮冷却部全体の長さの15~35%である、
    同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
  2. 下記式(1)で表される処理比が0.1~1.0である、請求項に記載の同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
    (1):処理比 = (吐出量X)/(軸径Y)
    (前記式(1)中、前記吐出量Xは、前記同方向多軸押出機の1時間あたりの吐出量(kg/h)を表し、前記軸径Yは、前記同方向多軸押出機の軸の径(cm)を表す。)
  3. 軸回転数が50~500rpmである、請求項1又は2に記載の同方向多軸押出機を用いた変性ポリオレフィン樹脂の製造方法。
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