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JP7139734B2 - 異常検知方法及び異常検知システム - Google Patents

異常検知方法及び異常検知システム Download PDF

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Description

本発明は、配電盤等の電気設備における異常を検知し、電気設備の動作停止等の不具合の発生、及び、火災等の重大事故の発生を未然に防止することができる異常検知方法及び異常検知システムに関する。
配電盤等の電気設備は、屋外に配置される、直射日光が当たる場所に配置される等、劣悪な環境に設置されることがあり、設置されてから同じ環境で長期間使用される。配電盤等の電気設備に異常が発生すると、電力の供給先の全ての機器に影響が生じることになる。また、異常の発生は、火災等の重大事故にもつながる可能性がある。したがって、電気設備における異常の発生を事前に検知するために、温度等の監視装置を設けることが行なわれている。
例えば、下記特許文献1には、過熱が想定される場所に、不燃性の匂い発生物質を封入した匂い発生部品と、過熱発生時に匂い発生物質から放散する匂い物質を検出する匂いセンサとを設置し、過熱を検知する技術が開示されている。
また、下記特許文献2には、電気設備又はその設置空間に関して、異常の有無を的確に補足して通報する技術が開示されている。具体的には、設備異常警報方法では、光ファイバ式温度測定手段により測定され、時系列に記憶された温度データから、それぞれの温度データの一定時間間隔の平均値、標準偏差値からなる標準パターンを作成し、温度測定値が標準パターンから外れたときに温度異常と判定する。
特開2003-240649号公報 特開平10-11681号公報
しかし、特許文献1では、匂い発生部品を設置した場所しか過熱を検知できず、匂い発生部品の設置及び交換のたびに停電作業が必要になる問題がある。
また、屋外設置される電気設備等では、外部環境(日照、風雨等)のために標準パターンそのものに日毎の変動が大きく発生するので、そのような場合には、特許文献2では正しい異常検知ができない問題がある。
したがって、本発明は、電気設備(電気機器を含む)の設置場所における環境変化等、外部環境による影響を受けることなく電気設備の異常を精度よく検知することができる異常検知方法及び異常検知システムを提供することを目的とする。
本発明の第1の局面に係る異常検知方法は、電気設備に配置された複数のセンサのそれぞれから、同じタイミングで測定された測定データを取得する第1ステップと、取得された複数の測定データから代表値を決定する第2ステップと、複数の測定データのそれぞれから代表値を減算し、差分データを算出する第3ステップと、第1ステップ、第2ステップ及び第3ステップを所定期間繰返し実行することにより得られた差分データを用いて、センサ毎に、移動平均値及び移動標準偏差値の少なくとも一方を算出する第4ステップと、算出された移動平均値及び移動標準偏差値の少なくとも一方を、所定のしきい値と比較することにより、電気設備における異常の発生の有無を判定する第5ステップとを含む。
このように、各センサの測定値と代表値との差分を用いることにより、外部環境(風雨、日照等)の影響をキャンセル又は軽減することができる。移動平均値及び移動標準偏差値により異常発生の有無を評価することにより、差分の短期的な時間変化又は周期的な時間変化(例えば、1日毎、1週間毎の時間変化)をもキャンセル又は軽減することができる。したがって、外部環境による影響を受けることなく電気設備の異常を精度よく検知することができる。
好ましくは、第4ステップにおいて、移動平均値及び移動標準偏差値を算出し、上記の異常検知方法は、移動平均値及び移動標準偏差値から、差分データの乖離値を算出するステップと、乖離値の絶対値を所定のしきい値と比較することにより、電気設備における異常の発生の有無を判定するステップとをさらに含み、Lを所定の定数とし、複数のセンサのうちi番目のセンサの差分データをBiとし、差分データBiよりも前に算出された差分データを最新の差分データとして含む所定期間内の差分データを用いて算出された移動平均値をAVBimとし、差分データBiよりも前に算出された差分データを最新の差分データとして含む所定期間内の差分データを用いて算出された移動標準偏差値をσBimとして、差分データBiの乖離値Qiは、(AVBim-L・σBim)≦Bi≦(AVBim+L・σBim)であれば、Qi=0であり、(AVBim-L・σBim)>Biであれば、Qi=Bi-(AVBim-L・σBim)であり、Bi>(AVBim+L・σBim)であれば、Qi=Bi-(AVBim+L・σBim)である。
これにより、急激な変化を伴う電気設備の異常の可能性を検知することができる。
より好ましくは、所定期間は、7日間の自然数倍の期間である。
これにより、土曜日及び日曜日に休業する工場等の電気設備に関して、差分データに含まれる1週間毎の定期的な傾向をキャンセルすることができるので、電気設備の異常をより精度よく検知することができる。
さらに好ましくは、センサは、温度センサであり、電気設備への複数のセンサの配置位置の高さは、相互に同じである。
これにより、各温度センサに対する外部環境の影響(日照の影響等)が同様になるので、電気設備の異常を検知することが容易になる。
好ましくは、電気設備が複数の電気機器から構成され、温度センサの測定データのうち、温度制御装置を備えている電気機器に配置された温度センサの測定データを除外して、代表値を決定する。
これにより、より適切に代表値を決定することができ、異常の検出精度をすることができる。
本発明の第2の局面に係る異常検知システムは、電気設備に配置された複数のセンサと、複数のセンサのそれぞれから測定データを同じタイミングで所定期間取得するデータ収集装置と、データ収集部により取得された測定データを解析する解析装置とを含む。解析装置は、同じタイミングで測定された複数の測定データから代表値を決定し、同じタイミングで測定された複数の測定データのそれぞれから代表値を減算して差分データを算出し、所定期間に取得された差分データを用いて、センサ毎に、移動平均値及び移動標準偏差値の少なくとも一方を算出し、算出された移動平均値及び移動標準偏差値の少なくとも一方を、所定のしきい値と比較することにより、電気設備における異常の発生の有無を判定する。
これにより、外部環境による影響を受けることなく電気設備の異常を精度よく検知することができる。
複数のセンサのそれぞれは、測定データをデータ収集装置に送信するための無線通信機能を有する。
これにより、既設の電気設備に容易に(条件によっては停電させることなく)、温度センサを設置することができる。
本発明によれば、外部環境による影響を受けることなく電気設備の異常を精度よく検知することができる。また、乖離値を用いることにより、急激な変化を伴う電気設備の異常(過熱等)の可能性を検知することができる。
本発明の実施の形態に係る異常検知システムの概略構成を示すブロック図である。 図1の温度センサの内部構成を示すブロック図である。 図1のデータ収集装置及び解析装置の内部構成を示すブロック図である。 解析装置が実行する処理を示すフローチャートである。 移動平均値及び移動標準偏差値の算出方法を説明するためのグラフである。 変形例に係る温度センサの配置を示すブロック図である。 屋内設備に配置した合計5つの温度センサのうち第1~第3センサの測定データ及その解析結果を示すグラフである。 屋内設備に配置した合計5つの温度センサのうち第4及び第5センサの測定データ及その解析結果を示すグラフである。 図7に示した第1センサの測定データから算出した差分データ、及び、第1センサの測定データの一部に温度異常を発生させたシミュレーション結果を示すグラフである。 屋外設備に配置した合計7つの温度センサのうち第1~第4センサの測定データ及その解析結果を示すグラフである。 屋外設備に配置した合計7つの温度センサのうち第5~第センサの測定データ及その解析結果を示すグラフである。 図10に示した第2センサの測定データから算出した差分データ、及び、第2センサの測定データの一部に温度異常を発生させたシミュレーション結果を示すグラフである。
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
(異常検知システムの構成)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る異常検知システム100は、第1配電盤120~第5配電盤128のそれぞれに配置された第1温度センサ110~第5温度センサ118と、データ収集装置130と、解析装置132とを含む。第1配電盤120~第5配電盤128は、同種の配電盤又は類似する配電盤であり、連結され並べて設置された複数の配電盤(以下、列盤ともいう)である。第1温度センサ110~第5温度センサ118は、第1配電盤120~第5配電盤128の表面上部のほぼ同じ位置(ほぼ同じ高さ)に配置されている。
図2を参照して、第1温度センサ110は、制御部140、記憶部142、通信部144、タイマ146、バス148、センサ素子150及びA/D変換部152を含む。制御部140は、第1温度センサ110を構成する各部を制御し、例えばCPU(Central Processing Unit)、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)等である。記憶部142は、データを記憶し、例えば、書換可能な不揮発性半導体メモリである。通信部144は、外部と通信するための無線通信モジュールである。タイマ146は、制御部140からの要求を受けて、制御部140に現在時刻を表す情報(以下、単に現在時刻という)を伝送する。センサ素子150は、温度を測定するための素子であり、センサ素子150が検出した温度に応じたアナログ信号を出力する。センサ素子150は、例えば測温抵抗体、熱電対等である。A/D変換部152は、所定のタイミングで、センサ素子150から出力されるアナログ信号をデジタルデータに変換して出力する。A/D変換部152から出力されるデジタルデータ(温度の測定データ)は、記憶部142に時系列に記憶される。各部間でのデータ交換は、バス148を介して行なわれる。各部への電力供給は、電池を内蔵することにより、又は、各配電盤に設けられているサービスコンセントによりなされる。
第2温度センサ112~第5温度センサ118も第1温度センサ110と同様に構成されている。なお、第1温度センサ110~第5温度センサ118の通信部は、それぞれを一意に区別するための情報(通信アドレス等)を持っている。また、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれが有するタイマの時刻は、後述する解析装置132が有するタイマの時刻とそろっている(同時刻)とする。なお、同時刻(時刻がそろっている)とは、完全に同一時刻であることを意味するだけでなく、所定の許容範囲内で一致している場合をも含む意味である。
図3を参照して、データ収集装置130及び解析装置132の構成を示す。データ収集装置130は、制御部160、記憶部162、通信部164及びバス166を含む。制御部160は、データ収集装置130を構成する各部を制御し、例えばCPU、マイコン等である。記憶部162は、データを記憶し、例えば、書換可能な不揮発性半導体メモリである。通信部164は、第1温度センサ110~第5温度センサ118及び解析装置132と通信するための通信モジュールである。通信部164は、第1温度センサ110~第5温度センサ118と通信するために無線通信機能を有する。データ収集装置130は、解析装置132と通信するために有線通信機能(例えば、LAN、USB、GPIB、RS-232C等)を有する。データ収集装置130を構成する各部間でのデータ交換は、バス166を介して行なわれる。
解析装置132は、制御部170、記憶部172、通信部174、タイマ176、表示部178、操作部180及びバス182を含む。制御部170は、解析装置132を構成する各部を制御し、例えばCPUである。記憶部172は、データを記憶し、例えば、書換可能な不揮発性半導体メモリである。通信部174は、データ収集装置130と通信するための有線通信モジュールである。タイマ176は、制御部170からの要求を受けて、制御部170に現在時刻を伝送する。表示部178は、視覚情報(テキスト、画像等)を表示する。表示部178は、例えば、液晶ディスプレイパネル等の表示パネルと、表示パネルの各画素を駆動する駆動回路とを備えている。操作部180は、解析装置132に対する指示を入力するためのものであり、例えば、キーボードである。解析装置132を構成する各部間でのデータ交換は、バス182を介して行なわれる。解析装置132は、例えばコンピュータであってもよい。また、データ収集130、又は、データ収集装置130及び解析装置132は、例えばシーケンサーであってもよい。
(異常検知システムの動作)
以下では、複数の温度センサの代表として第1温度センサ110に関して説明する。第2温度センサ112~第5温度センサ118も第1温度センサ110と同様に動作する。
(温度センサの動作)
第1温度センサ110は、一定の時間間隔でセンサ素子150により測定した温度データ(以下、測定データともいう)を、データ収集装置130に送信する。第1温度センサ110のこの機能は、制御部140が、記憶部142に記憶された所定のプログラムを読出して実行することにより実現される。具体的には、制御部140は、タイマ146から現在時刻を取得し、温度を測定する時刻(以下、測定タイミングともいう)になったか否かを判定し、測定タイミングになったと判定すれは、A/D変換部152を制御して、A/D変換部152に入力されているアナログ信号(センサ素子150の測定信号)をデジタルデータに変換して、記憶部142に記憶する。続いて、制御部140は、記憶部142から測定データを読出し、通信部144を介してデータ収集装置130に送信する。
例えば、第1温度センサ110に、1時間毎に第1配電盤120の表面温度を測定して送信させる場合には、測定タイミングの情報として、測定の開始時刻と測定間隔(例えば60分)とを、予め記憶部142に記憶しておけばよい。制御部140は、記憶部142から測定タイミングの情報を読出し、タイマ146により現在時刻を参照して、上記の処理を実現することができる。
ここでは、第1温度センサ110~第5温度センサ118は、同じ測定タイミングが設定されているとする。上記したように、第1温度センサ110~第5温度センサ118のタイマの時刻がそろっているので、第1温度センサ110~第5温度センサ118からは、同じタイミングで、それぞれ第1配電盤120~第5配電盤128の表面温度の測定データが送信される。なお、「同じタイミング」とは、「同時刻」に関して上記したことから明らかなように、完全に同一タイミングであることを意味するだけでなく、所定の許容範囲内で一致している場合をも含む意味である。
(データ収集装置の動作)
データ収集装置130は、第1温度センサ110~第5温度センサ118から送信される測定データを受信し、それらを解析装置132に送信する。データ収集装置130のこの機能は、制御部160が、記憶部162に記憶された所定のプログラムを読出して実行することにより実現される。具体的には、制御部160は、通信部164を制御して、第1温度センサ110~第5温度センサ118から送信される測定データを受信したか否かを繰返し判定する。第1温度センサ110~第5温度センサ118のいずれかから測定データを受信した場合、受信した測定データを、その送信元の温度センサが特定できるように記憶部162に記憶する。例えば、受信した測定データと送信元の送信アドレスとを対応させて記憶する。また、上記したように、第1温度センサ110~第5温度センサ118からは、同時刻に測定が行なわれ、測定データが送信されるので、制御部160は、同時刻に測定された測定データを対応させて記憶部162に記憶する。
データ収集装置130は、第1温度センサ110~第5温度センサ118の全てから測定データを受信するまで、上記の処理を繰返す。第1温度センサ110~第5温度センサ118の全てから測定データを受信すると、データ収集装置130は、受信した測定データを記憶部162から読出して、通信部164を介して解析装置132に送信する。このとき、データ収集装置130は、各測定データがどの温度センサで測定したデータであるかが分かるような形式で、解析装置132に送信する。例えば、測定データと、送信元の温度センサを特定するための情報(送信アドレス、ID等)とを対応させて送信する。測定データの個数が決まっているので、送信する順序、又は、1つのパケットに複数の測定データを含む場合には、パケット内の順序を、送信元の温度センサを特定するための情報として利用してもよい。例えば、第1温度センサ110~第5温度センサ118の順で、対応する測定データを送信すればよい。
(解析装置の動作)
解析装置132は、データ収集装置130から第1温度センサ110~第5温度センサ118の測定データを受信し、受信した測定データを、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれについて時系列に記憶部172に記憶する(過去に受信し、記憶している測定データに追加する)。解析装置132は、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれに関して、後述する解析処理を実行できるだけの数の測定データが記憶部172に記憶されると、解析処理を実行する。解析装置132は、解析結果に基づいて、第1配電盤120~第5配電盤128のいずれかにおいて、異常が発生しているか否か、又は異常が発生する予兆があるか否かを判定する。
解析装置132は、例えば、図4に示す処理を実行する。図4の各処理は、制御部170が、所定のプログラムを記憶部172から読出して実行することにより実現される。
ステップ300において、制御部170は、通信部174により解析装置132から測定データを受信したか否を判定する。受信したと判定された場合、制御はステップ302に移行する。そうでなければ、ステップ300の処理が繰返される。
ステップ302において、制御部170は、受信した測定データを記憶部172に記憶する。上記したように、解析装置132からは、複数の測定データがそれぞれ第1温度センサ110~第5温度センサ118のいずれに対応するかが分かるように送信されるので、制御部170は、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれに関して、時系列に測定データを記憶部172に記憶することができる。
ステップ304において、制御部170は、解析を実行するか否かを判定する。これは、最初に解析を実行するタイミングを判定するためのものである。ステップ304は、新しい測定データを受信する度に繰返し実行され、1度解析処理を実行すると判定された場合、その後にステップ304が実行されると、解析を実行すると判定される。判定の基準は任意に設定することができる。例えば、各温度センサの測定データが所定数以上、記憶部172に記憶されていれば、解析を実行すると判定する。また、測定データを最初に受信してから所定の時間が経過していれば、解析を実行すると判定してもよい。なお、所定のフラグを記憶部172の所定領域に確保し、一度解析を実行すると判定された場合、そのフラグをオンさせて(例えば、フラグに初期値とは別の値をセットする)、その後は、フラグの値(オン)に基づき、常に解析を実行すると判定してもよい。
ステップ306において、制御部170は、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれの測定データに関して、同じタイミングで測定された1組の測定データを記憶部172から読出し、それらの代表値を決定し、決定した代表値を記憶部172に記憶する。ここで、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれの測定データをAijで表す。iは1~5の整数であり、それぞれ第1温度センサ110~第5温度センサ118を表す。jは、収集された順序を表す正の整数である。また、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれに関して、所定期間Tの間に、等時間間隔にn個の測定データが収集されるとする。所定期間Tのn個の測定データを、後述する移動平均値等の算出対象とする。
例えば、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれの測定データAij(i=1~5、j=1~n)に関して、代表値RjをRj=(ΣAij)/5により算出する。Σは、i=1~5に関してAij(jは同じ値)の和を取る演算子を意味する。即ち、Rj(j=1~n)は、同じタイミングで測定された5つの測定データの平均値である。なお、代表値は、同じタイミングで測定された5つの測定データを全て用いた平均値に限らない。一部の測定データを用いて算出した平均値を代表値としてもよい。
なお、最初にステップ306が実行されるときには、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれn個の測定データ(合計5×n)について、代表値Rj(j=1~n)を算出する。その後は、ステップ300で新たな測定データを受信する度に、ステップ306が実行され、過去の測定データに関しては、既に代表値を算出済み(記憶部172に記憶済み)であるので、新たに受信した5つの測定データを用いて代表値を算出し、記憶部172に記憶する。後述する、ステップ308~314の処理に関しても同様である。最初に実行される場合には、第1温度センサ110~第5温度センサ118の合計5×nの測定データについて処理が実行されるが、その後、ステップ300で新たな測定データを受信する度に実行される場合には、新たに受信した5つの測定データを用いて必要な処理が実行され、既に算出済みの結果は、記憶部172から読出して使用される。
ステップ308において、制御部170は、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれの測定データに関して、所定期間Tの測定データを記憶部172から読出し、それらについて代表値と比較した差分を算出し、算出結果(差分データ)を記憶部172に記憶する。具体的には、測定データAijから、対応する代表値Rjを減算して、差分Bijとする(Bij=Aij-Rj(i=1~5、j=1~n))。これにより、第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれに関して、n個の差分データが記憶部172に記憶される。
ステップ310において、制御部170は、所定期間T内の差分データを記憶部172から読出し、それらに関して移動平均値AVを算出し、算出結果(移動平均値)を記憶部172に記憶する。具体的には、i番目の温度センサに関して、n個の差分データBij(j=1~n)の平均値を算出する。ステップ310は、ステップ308で新たに差分データが得られる度に、対象データを変更しつつ実行される。図5に、i番目の温度センサの測定データから得られる差分データを示す。図5の横軸は時刻を表し、縦軸は差分データを表している。差分データを模式的に破線で示す。実際の差分データはデジタルデータであり、図5において、一部を黒丸で示している。図5に示した差分データに関して、移動平均は、平均値を算出する対象データ(所定期間T内のデータ)をシフトしながら、平均値を算出する処理を繰返すことで得られる。例えば、時刻t1~t3の間(期間T)のn個の差分データの平均値を算出し、次に新たな差分データ(時刻t4における差分データBik)が算出されると、時刻t2~t4の間(期間T)のn個の差分データの平均値を算出する。所定期間Tをウィンドウ期間ともいう。
ステップ312において、制御部170は、ステップ310と同様に、所定期間T内の差分データを記憶部172から読出し、それらに関して移動標準偏差値σを算出し、算出結果(移動標準偏差値)を記憶部172に記憶する。具体的には、i番目の温度センサに関して、n個の差分データBij(j=1~n)の標準偏差値を算出する。ステップ312の処理も、ステップ310と同様に、ステップ308で新たに差分データが得られる度に、繰返し実行される。
ステップ314において、制御部170は、乖離値を算出するか否かを判定する。後述するように、乖離値は、現在の差分データが、通常値から乖離している程度を表すものであり、直近の移動平均値と直近の移動標準偏差値を用いて決定する。「直近」とは、乖離値を算出する対象である差分データを含まず、その1つ前の差分データまでの連続するn個の差分データを用いて算出された値を意味する。例えば、図5を参照して、差分データBikの乖離値は、時刻t2~t4の間の差分データではなく、時刻t1~t3の間の差分データを用いて算出された移動平均値及び移動標準偏差値を用いて決定される。したがって、ステップ314が最初に実行されるときには、直近の移動平均値及び直近の移動標準偏差値が存在せず、乖離値を算出しないと判定され、制御はステップ318に移行する。ステップ314が2回目以降に実行される場合には、乖離値を算出すると判定され、制御はステップ316に移行する。
ステップ316において、制御部170は、最新の測定データAi(i=1~5)から得られた最新の差分データBi(Bi=Ai-R(RはA1~A5の代表値))、直近の移動平均値AVBim(mは移動平均値の算出回数)、直近の移動標準偏差値σBim(mは移動標準偏差値の算出回数)を記憶部172から読出し、Lを所定の定数として、次の規則にしたがって、差分データBiの乖離値Qiを算出し、算出結果(乖離値)を記憶部172に記憶する。
(AVBim-L・σBim)≦Bi≦(AVBim+L・σBim)であれば、Qi=0とする。Qi=0は、Biが正常範囲にあることを意味する。
(AVBim-L・σBim)>Biであれば、Qi=Bi-(AVBim-L・σBim)とする。
Bi>(AVBim+L・σBim)であれば、Qi=Bi-(AVBim+L・σBim)とする。
なお、Lの値は任意であり、適宜設定され得るが、L=2~3であることが好ましい。
ステップ318において、制御部170は、ステップ310、312及び316のそれぞれで算出した、移動平均値、移動標準偏差値、及び乖離値の少なくとも1つが、それぞれに対して設定された所定値(以下、しきい値という)よりも大きいか否かを判定する。しきい値は、例えば、初期値又は通常値に一定値を加算した値である。移動平均値、移動標準偏差値、及び乖離値(絶対値)の少なくとも1つが、しきい値よりも大きいと判定された場合、制御はステップ320に移行する。そうでなければ、制御はステップ322に移行する。なお、移動平均値、移動標準偏差値、及び乖離値のそれぞれに対して設定されるしきい値は、異常の発生をどの程度の精度で予測するか(誤検知の可能性をできるだけ低くするのか、より安全性を重視するのか等)に応じて、適宜される。
ステップ320において、制御部170は、異常を表すメッセージを提示する。例えば、制御部170は、表示部178に所定のメッセージを含む画像を表示する。例えば、移動平均値がしきい値を超えていれば、対応する配電盤に異常熱源が存在する(又はその可能性がある)旨のメッセージを提示する。移動標準偏差がしきい値を超えていれば、対応する配電盤に断続的な異常熱源が存在する(又はその可能性がある)旨のメッセージを提示する。乖離値がしきい値を超えていれば、対応する配電盤に過熱に関する異常が発生している(又はその可能性がある)旨のメッセージを提示する。
ステップ322において、制御部170は、終了の指示を受けたか否かを判定する。終了の指示は、例えば操作部180が操作されることにより成される。終了の指示を受けたと判定された場合、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ300に戻り、制御部170は、上記の処理を繰返す。
以上により、異常検知システム100は、列盤における温度異常を精度よく検知することができる。即ち、複数の配電盤の温度データの平均値を代表値とし、各温度センサの測定値と代表値との差分を用いることにより、外部環境(風雨、日照等)の影響をキャンセル又は軽減することができる。また、移動平均値及び移動標準偏差値により、差分の短期的な時間変化又は周期的な時間変化(例えば、1日毎、1週間毎の時間変化)をもキャンセル又は軽減することができ、異常発生の有無を精度よく判定することができる。
移動平均値及び移動標準偏差値のそれぞれの時間変化(以下、トレンドともいう)を確認し、初期値又は通常値に対して一定量の増加があったときに、異常と判定することにより、配電盤等の電気設備が徐々に劣化することによる異常の予兆の有無を適切に検知することができる。移動平均値及び移動標準偏差値のトレンドに、顕著な変化がなければ、電気設備の健全性が確保されている可能性が高いと判断できる。
さらに、上記のように算出した乖離値を用いることにより、急激な温度変化を伴う電気設備の異常(過熱等)の可能性を検知することができる。
上記のように、無線通信機能を有する温度センサを使用することにより、既設の電気設備に容易に(条件によっては停電させることなく)、温度センサを設置することができる。
(変形例)
上記では、複数の配電盤のそれぞれに1つの温度センサを配置する場合を説明したが、これに限定されない。各盤に、複数の温度センサを配置してもよい。また、列盤を構成する一部の配電盤に温度センサを配置しなくてもよい。例えば、ほぼ同じ条件と考えることができる複数の配電盤を、1つの温度センサで代表して温度測定する場合がある。そのような場合には、各温度センサの測定データについて重み付けをして代表値を決定することが好ましい。
例えば、図6は、図1に示した第1温度センサ110~第5温度センサ118が配置された第1配電盤120~第5配電盤128の構成に、第6配電盤202及び第7配電盤204が追加された構成を示す。第6配電盤202には第6温度センサ200が配置されているが、第7配電盤204には温度センサが配置されていない。このような場合、各温度センサの測定データをAi(i=1~6)とすれば、代表値Rを、R=(A1+A2+A3+A4+A5+2・A6)/7 により算出すればよい。第1温度センサ110~第2温度センサ112の測定データの重みが“1”であり、第6配電盤202に配置された第6温度センサ200の測定データの重みは“2”である。
なお、列盤に配置する温度センサの総数は任意であるが、5以上であることが好ましい。温度センサの総数が少ないと、特定の盤の温度異常による測定データの異常が、代表値に大きく影響するので、他の盤の差分データにも影響し易くなる。温度センサの総数が5以上であれば、そのような影響を抑制できる。
また、列盤のうち、特定の盤にのみクーラー等の温度制御装置が配置されていることがある。そのような特定の盤の温度トレンドは、他の盤の温度トレンドと大きく異なる可能性がある。したがって、そのような盤の測定データは、代表値を決定するためのデータとして使用しないことが好ましい。
上記では5台の配電盤により構成される列盤を示したが、これに限定されない。4台以下又は6台以上の配電盤により構成されてもよい。列盤を構成する要素は配電盤に限定されない。配電盤以外の電気設備であってもよい。
また、同種又は類似する電気設備を並列させた列盤に限定されない。近接して配置される複数の電気設備であってもよい。さらには、1つの電気設備に複数の温度センサが配置されたものであってもよい。
上記では、温度センサにより、温度異常を検知する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、温度センサに代えて、又は温度センサに加えて、温度センサ以外のセンサ(例えば、湿度センサ、加速度センサ等)を列盤に配置し、それらの測定データを用いて上記したように移動平均値、移動標準偏差値、及び乖離値を算出して、列盤における異常を検知してもよい。なお、加速度センサを使用する場合、加速度センサの出力データ(加速度)自体を解析対象としても、加速度から算出した振動頻度(例えば、一定期間における所定値以上の加速度の発生期間の割合(%))等を解析対象としてもよい。
上記では、各温度センサが各配電盤の表面上部に配置され、各温度センサの取付け位置の高さがほぼ等しい場合を説明したが、各温度センサの取付け位置は任意である。なお、温度センサを配電盤の上部に配置することにより、配電盤内の過熱等の温度異常を検知することが容易になる。また、各温度センサをほぼ同じ高さに配置することにより、周囲環境(日照等)の各温度センサへの影響を揃えることができ、配電盤内の温度異常の検知がより容易になる。
上記では、移動平均値、移動標準偏差値、及び乖離値を全て算出する場合を説明したが、これに限定されない。移動平均値、移動標準偏差値、及び乖離値の少なくとも1つを算出し、算出値としきい値とを比較することにより、異常を検知することができる。
上記では、解析装置130における移動平均値AVBim及び移動標準偏差値σBimの算出は、測定データの受信毎に実施しているが、そうでなくてもよい。一定期間測定データを記憶した後、まとめて実施してもよく、例えば、1日毎に実施し、算出された移動平均値AVBim及び移動標準偏差値σBimに基づき、次の日の乖離値Qiを算出する方式でもよい。このようにすることにより、算出に必要とするCPU等の負担を減らすことができる。
上記では、データ収集装置130と解析装置132との間の通信が有線通信である場合を説明したが、これに限定されない。データ収集装置130と解析装置132との間の通信は無線通信であってもよい。さらには、解析装置132が無線通信機能を有し、第1温度センサ110~第5温度センサ118と直接通信し、データ収集装置130によるデータ収集の機能を実行するように構成してもよい。
温度センサとデータ収集装置の間の通信は、有線通信であってもよい。その場合、データ収集装置を列盤に装着する、又は、列盤の近傍に配置し、データ収集装置から解析装置には、無線通信によりデータを送信してもよい。また、データ収集装置と解析装置との間が遠距離であれば、有線の場合、例えば、RS422、RS485等の長距離伝送可能な通信方式を使用すればよい。
上記では、第1温度センサ110~第5温度センサ118が、温度を測定する度に測定データを送信する場合を説明したが、これに限定されない。複数回の測定データを記憶しておき、まとめてデータ収集装置130に送信してもよい。第1温度センサ110~第5温度センサ118のそれぞれの測定タイミングは同じであるので、複数のデータをまとめて送信する場合には、送信される複数のデータ間の測定順序が、データ収集装置130において分かるようになっていれば、同じタイミングで測定された第1温度センサ110~第5温度センサ118の測定データを用いて代表値を決定することができる。
上記では、各温度センサがタイマと記憶部とを持ち、一定間隔でデータ収集装置130に測定データを送付しているが、そうでなくてもよい。例えば、データ収集装置130がタイマを持ち、一定間隔(例えば1時間毎)で各温度センサと通信して(例えば、各温度センサに測定データの送信を要求して)温度の現在値を取得し、データ収集装置130の記憶部162にデータロギング(時系列データとして記憶)してもよい。
また、上記では、データ収集装置130と解析装置132との通信については直接通信する方式としているが、そうでなくてもよい。例えば、収集した測定データを、携帯電話等の電波又はインターネットを介して、所定のデータサーバ又はクラウドに保管しておき、当該データサーバ又はクラウドのデータを解析装置132が読出してデータ解析を実施してもよい。
上記では、メッセージを表示部178に提示する場合を説明したが、これに限定されない。音響(音声を含む)又はLEDの点灯等により提示してもよく、さらには、中央監視盤等の遠隔装置への表示又は電子メール送付等により、異常の発生を提示してもよい。
以下に実験結果を示し、本発明の有効性を示す。図1と同様に、屋内に設置された5台の電気設備で構成された列盤の各盤に温度センサを配置して、温度測定を行なった。測定された温度データを、上記したように解析した結果を図7~9に示す。図7及び図8において、左端の「No.」の列に示した(1)~(5)は、図1の第1温度センサ110~第5温度センサ118と同様に配置された温度センタに対応する。図9は、図7の(1)の測定データを用いて解析及びシミューションした結果を示す。
図7において、「温度 A1~A3」の列のグラフは、温度センサの実測値を示す。縦軸は温度であり、横軸は日である。1時間毎、第6温度センサ200日以上の期間、温度測定を行なった。「差分の移動平均 AVB1~AVB3」の列のグラフは、「温度 A1~A3」のそれぞれの測定データを用いて、上記のように、5つの測定データの平均値を代表値として算出した差分データを用いて算出した移動平均値を示す。移動平均値の算出には、ウィンドウ期間を2週間(14日間)とし、連続する336(=14×24)個のデータを使用した。「差分の移動標準偏差 σB1~σB3」の列のグラフは、移動平均値を算出した同じ差分データ(2週間分のデータ)を用いて算出した移動標準偏差値を示す。図8に関しても同様である。
図7及び図8から分かるように、実際に測定された温度データは、いずれの温度センサに関しても約20度の変化(季節変化)があるが、移動平均値は、いずれの温度センサに関してもほぼ一定の値になっている。図9を参照して後述するが、差分データにおいては、季節による長期的な温度変化はキャンセルされるが、日々の比較的大きい温度変化は残存している。それに対して、移動平均値においては、日々の温度変化がキャンセル又は軽減されている。盤内の異常過熱等がなければ、移動平均値はほぼ一定の値になる。移動標準偏差値においても、日々の温度変化がキャンセル又は軽減されている。移動標準偏差値は、移動平均値に対して通常発生する温度のバラツキを示す指標であり、盤内の異常過熱等がなければ、その変化は比較的小さい。通常時の移動平均値及び移動標準偏差値のトレンドを観測して、異常発熱に関するそれぞれのしきい値を適切に設定することができる。
図9に示したグラフの縦軸及び横軸は、図7と同じである。図9の最上段のグラフは、5つの温度センサの測定データの平均値を代表値として、図7の左上のグラフ((1)の温度センサの測定データ)に示した測定データから算出した差分データを示す。上記したように、差分データにおいては、季節による長期的な温度変化はキャンセルされるが、日々の比較的大きい温度変化は残存している。
図9の上から2段目及び3段目のグラフは、図7の最上段の中央及び右端のグラフと同じものである。図9の上から4段目及び5段目のグラフは、異常発熱の発生を模したシミュレーション結果を示す。具体的には、測定開始から数えて操作部180日~第6温度センサ200日の間(図9において矢印で示す期間)の測定データ(A1)のそれぞれに、異常発熱の発生を想定して3℃を加算した。そのデータを用いて、上記と同様に移動平均値及び移動標準偏差値を算出した結果が、それぞれ図9の上から4段目及び5段目のグラフである。移動表平均値を示す上から2段目のグラフと4段目のグラフとの比較から分かるように、3℃を加算した期間において、移動表平均値に明らかな変化が発生している。同様に、移動標準偏差値を示す上から3段目のグラフと5段目のグラフとの比較から分かるように、3℃を加算した期間において、移動標準偏差値に明らかな変化が発生している。このように、屋内に設置された列盤に関して、各盤の表面温度の測定データから算出した移動平均値及び移動標準偏差値により、温度異常の発生を明確に検知することができる。
屋外に設置された列盤の各盤に温度センサを配置して、実施例1と同様に温度測定を行ない、測定データを解析した。実施例1と異なり、列盤は7台の盤で構成されている。1時間毎、約500日近い期間、温度測定を行なった。結果を、図10~12に示す。
図10~12に示した各グラフは、温度センサの数が異なるが、図7~9と同様である。移動平均値及び移動標準偏差を算出するためのウィンドウ期間は、実施例1と同じ2週間である。図10及び図11から分かるように、実際に測定された温度データは、いずれの温度センサに関しても約20度以上の変化(1日の変化及び季節変化)があるが、移動平均値は、いずれの温度センサに関してもほぼ一定の値になっている。図12を参照して後述するが、実施例1と同様に、差分データにおいては、季節による長期的な温度変化はキャンセルされるが、日々の比較的大きい温度変化は残存している。それに対して、移動平均値においては、日々の温度変化がキャンセル又は軽減されている。移動標準偏差値においても、日々の温度変化がキャンセル又は軽減されている。
図12に示したグラフの縦軸及び横軸は、図10と同じである。図12の最上段のグラフは、7つの温度センサの測定データの平均値を代表値として、図10の左端列の上から2段目のグラフ((2)の温度センサの測定データ)に示した測定データから算出した差分データを示す。上記したように、差分データにおいては、季節による長期的な温度変化はキャンセルされるが、日々の比較的大きい温度変化は残存している。
図12の上から2段目及び3段目のグラフは、図10の上から2段目の中央及び右端のグラフと同じものである。図12の上から4段目及び5段目のグラフは、異常発熱の発生を模したシミュレーション結果を示す。具体的には、測定開始から数えて450日以降の間(図12において矢印で示す期間)の測定データ(A2)のそれぞれに、異常発熱の発生を想定して3℃を加算した。そのデータを用いて、上記と同様に移動平均値及び移動標準偏差値を算出した結果が、それぞれ図12の上から4段目及び5段目のグラフである。移動表平均値を示す上から2段目のグラフと4段目のグラフとの比較から分かるように、3℃を加算した期間において、移動表平均値に明らかな変化が発生している。同様に、移動標準偏差値を示す上から3段目のグラフと5段目のグラフとの比較から分かるように、3℃を加算した期間において、移動標準偏差値に明らかな変化が発生している。このように、屋外に設置された列盤に関しても、各盤の表面温度の測定データから算出した移動平均値及び移動標準偏差値により、温度異常の発生を明確に検知することができる。
なお、上記では、測定周期を1時間とし、移動平均値及び移動標準偏差値を算出するためのウィンドウ期間を2週間(14日)としたが、これに限定されない。測定周期は、1時間よりも短い周期又は長い周期であってもよい。また、ウィンドウ期間が、14日間よりも短い期間又は長い期間であってもよい。
土曜日及び日曜日に休業する工場等の電気設備であれば、差分データには、1週間毎の定期的な傾向が表れる場合が多いので、その影響をキャンセルするためには、ウィンドウ期間を7日間(1週間)の自然数倍(正の整数倍)の期間とすることが好ましい。また、屋外に配置された列盤に関しては、日照等の周囲環境の影響により、移動標準偏差値のバラツキが大きくなる傾向にある。そのような場合には、ウィンドウ期間を比較的長く(例えば、21日間又は28日間)することにより、判定が容易になる。
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
100 異常検知システム
110 第1温度センサ
112 第2温度センサ
114 第3温度センサ
116 第4温度センサ
118 第5温度センサ
120 第1配電盤
122 第2配電盤
124 第3配電盤
126 第4配電盤
128 第5配電盤
130 データ収集装置
132 解析装置
140、160、170 制御部
142、162、172 記憶部
144、164、174 通信部
146、176 タイマ
148、166、182 バス
150 センサ素子
152 A/D変換部
178 表示部
180 操作部
200 第6温度センサ
202 第6配電盤
204 第7配電盤

Claims (4)

  1. 電気設備に配置された複数のセンサのそれぞれから、同じタイミングで測定された測定データを取得する第1ステップと、
    取得された複数の前記測定データから代表値を決定する第2ステップと、
    複数の前記測定データのそれぞれから前記代表値を減算し、差分データを算出する第3ステップと、
    前記第1ステップ、前記第2ステップ及び前記第3ステップを所定期間繰返し実行することにより得られた前記差分データを用いて、前記センサ毎に、移動平均値及び移動標準偏差値を算出する第4ステップと、
    算出された前記移動平均値及び前記移動標準偏差値から、前記差分データの乖離値を算出し、前記乖離値の絶対値を、所定のしきい値と比較することにより、前記電気設備における異常の発生の有無を判定する第5ステップとを含み、
    Lを所定の定数とし、複数の前記センサのうちi番目のセンサの差分データをBiとし、前記差分データBiよりも前に算出された差分データを最新の差分データとして含む前記所定期間内の差分データを用いて算出された移動平均値をAVBimとし、前記差分データBiよりも前に算出された差分データを最新の差分データとして含む前記所定期間内の差分データを用いて算出された移動標準偏差値をσBimとして、前記差分データBiの乖離値Qiは、
    (AVBim-L・σBim)≦Bi≦(AVBim+L・σBim)であれば、Qi=0であり、
    (AVBim-L・σBim)>Biであれば、Qi=Bi-(AVBim-L・σBim)であり、
    Bi>(AVBim+L・σBim)であれば、Qi=Bi-(AVBim+L・σBim)であることを特徴とする、異常検知方法。
  2. 前記所定期間は、7日間の自然数倍の期間であることを特徴とする、請求項1に記載の異常検知方法。
  3. 前記センサは、温度センサであり、
    前記電気設備への複数の前記センサの配置位置の高さは、相互に同じであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の異常検知方法。
  4. 電気設備に配置された複数のセンサと、
    複数の前記センサのそれぞれから測定データを同じタイミングで所定期間取得するデータ収集手段と、
    前記データ収集手段により取得された前記測定データを解析する解析手段とを含み、
    前記解析手段は、
    同じタイミングで測定された複数の前記測定データから代表値を決定し、同じタイミングで測定された複数の前記測定データのそれぞれから前記代表値を減算して差分データを算出し、
    前記所定期間に取得された前記差分データを用いて、前記センサ毎に、移動平均値及び移動標準偏差値を算出し、
    算出された前記移動平均値及び前記移動標準偏差値から前記差分データの乖離値を算出し、前記乖離値の絶対値を所定のしきい値と比較することにより、前記電気設備における異常の発生の有無を判定し、
    Lを所定の定数とし、複数の前記センサのうちi番目のセンサの差分データをBiとし、前記差分データBiよりも前に算出された差分データを最新の差分データとして含む前記所定期間内の差分データを用いて算出された移動平均値をAVBimとし、前記差分データBiよりも前に算出された差分データを最新の差分データとして含む前記所定期間内の差分データを用いて算出された移動標準偏差値をσBimとして、前記差分データBiの乖離値Qiは、
    (AVBim-L・σBim)≦Bi≦(AVBim+L・σBim)であれば、Qi=0であり、
    (AVBim-L・σBim)>Biであれば、Qi=Bi-(AVBim-L・σBim)であり、
    Bi>(AVBim+L・σBim)であれば、Qi=Bi-(AVBim+L・σBim)であることを特徴とする、異常検知システム。
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