JP7026088B2 - 自動車用衝突エネルギー吸収部品 - Google Patents
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Description
しかしながら、本発明が目的とするフロントサイドメンバーやクラッシュボックスのように、自動車の前方又は後方から衝突荷重が入力して軸圧壊する際に、蛇腹状に座屈変形して衝突エネルギーを吸収する自動車部品に対しては、該自動車部品の内部に発泡充填材や発泡体を充填する技術を適用したとしても、衝突エネルギーの吸収性を向上させることが困難であるという課題があった。
筒状部材3は、軸圧壊して衝突エネルギーを吸収し、天板部5aとこれに続く一対の縦壁部5bを有するものであり、図2に示すように、天板部5aと縦壁部5bとフランジ部5cとからなるハット断面形状のアウタ部品5のフランジ部5cと、平板状のインナ部品7の両側端部とが接合して筒状に形成されたものである。
閉断面空間形成壁部材9は、筒状部材3よりも引張強度の低い鋼板から形成されてなり、図2に示すように、筒状部材3の内側であるアウタ部品5とインナ部品7との間に天板部5aを跨ぐように配設された略コ字断面形状の部材であり、その両端部がアウタ部品5の一対の縦壁部5bに接合され、筒状部材3の周壁部の一部であるアウタ部品5の天板部5a及び縦壁部5bとの間に閉断面空間を形成するものである。
さらに、閉断面空間形成壁部材9とアウタ部品5との間に形成される閉断面空間とは、図1に示す筒状部材3の軸方向に交差する方向の断面形状が閉断面であり、該閉断面が筒状部材3の軸方向に沿って連続して形成された空間のことをいう。
樹脂11は、閉断面空間形成壁部材9とアウタ部品5との間に形成された閉断面空間に充填されたものである。
さらに、樹脂11は、引張破断伸びが80%以上、筒状部材3及び閉断面空間形成壁部材9との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上の物性を有するものである。これら各物性はいずれも、樹脂11を加熱処理した後の値である。
所定の間隙に調整した2枚の鋼板の間に未硬化の樹脂を入れ、所定の条件で加熱硬化させ、鋼板を剥がして平板状樹脂を作製し、該平板状樹脂を所定の形状に加工して試験片を作製する。次いで、所定の引張速度で樹脂が破断するまで引張試験を行い、樹脂破断時の標線間伸び量を測定する。そして、該測定した樹脂破断時の標線間伸び量を初期の標線間距離で除して百分率表示した値を引張破断伸びとする。
所定の間隙に調整した2枚の鋼板の間に未硬化の樹脂を入れ、所定の条件で加熱硬化させ、試験片を作製する。次いで、該試験片を所定の引張速度で引張試験を行い、鋼板と樹脂とが破断した時の荷重を測定する。そして、該測定した破断時の荷重を鋼板と樹脂との接着面積で除した値(=せん断接着強度)を接着強度とする。
所定の間隙に調整した2枚の鋼板の間に未硬化の樹脂を入れ、所定の条件で加熱硬化させ、鋼板を剥がして平板状樹脂を作製する。次いで、該平板状樹脂を円柱状に切り出して試験片を作製する。そして、当該試験片における円形状面を圧縮面とし、所定の試験速度で公称歪10%まで圧縮した時の荷重について、初期の試験片の断面績で除した値を圧縮公称応力する。
まず、樹脂11がゴム変性エポキシ樹脂及び硬化剤を含んでなることにより、筒状部材3に衝突荷重が入力して蛇腹状に軸圧壊変形する際に、加熱処理により樹脂11を加熱硬化させ、12MPa以上の接着強度で筒状部材3及び閉断面空間形成壁部材9と接着することにより、筒状部材3の変形に追随して樹脂11が変形することができる。
発明例は、前述した本発明の実施の形態に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品1(図1及び図2)を試験体31とし、軸圧壊試験を行ったものである。
試験体31は、アウタ部品5とインナ部品7とがスポット溶接により接合された筒状部材3を有し、アウタ部品5と閉断面空間形成壁部材9との間に閉断面空間が形成され、該閉断面空間の全領域に樹脂11が充填されている。そして、アウタ部品5と閉断面空間形成壁部材9との間の隙間高さを1mm、3mm、8mm(図4(a)~(c))とした。
また、閉断面空間形成壁部材9には、引張強度270MPa級、板厚0.5mmの鋼板を用いた。
2枚の鋼板の間隙を2mmに調整し、その間に未硬化の樹脂を入れ、180℃×20分保持の条件で加熱硬化させ、鋼板を剥がして厚さ2mmの平板状樹脂を作製した。続いて、当該平板状樹脂をダンベル形状(JIS6号ダンベル)に加工して試験片を作製し、引張速度2mm/minで樹脂が破断するまで引張試験を行い、樹脂破断時の標線間伸び量を測定した。そして、該測定した樹脂破断時の標線間伸び量を初期の標線間距離(=20mm)で除した値を百分率表示し、引張破断伸びとした。
図5に示すように、被着体23及び被着体25は、幅25mm、厚さ1.6mm、長さ100mmの鋼板(SPCC)とし、接着部(幅25mm、長さ10mm)に未硬化の樹脂27を設置し、厚み0.15mmに調整した状態で、180℃×20分保持の条件で加熱硬化したものを試験片21とした。次いで、試験片21を引張速度5mm/minで被着体23又は被着体25と樹脂27とが破断するまでの引張試験を行い、破断時の荷重を測定した。そして、破断時の荷重を接着部の面積(接着面積:幅25mm×長さ10mm)で除した値をせん断接着強度とした。
2枚の鋼板の間隙を3mmに調整し、その間に未硬化の樹脂を入れ、180℃×20分保持の条件で加熱硬化させ、鋼板を剥がして厚さ3mmの平板状樹脂試験片を作製した。次いで、該平板状樹脂試験片から直径20mmの円柱状に切り出したものを試験片とした。そして、当該試験片における直径20mmの円形状面を圧縮面とし、試験速度2mm/minで公称歪10%まで圧縮した時の荷重について、初期の試験片の断面績で除した値を圧縮公称応力とした。
表1に、発明例及び比較例とした試験体の構造、樹脂の種類、引張破断伸び、接着強度、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力の各条件を示す。
図7及び図8は、横軸を衝突開始から試験体の軸方向における変形量を表すストローク(mm)とし、縦軸を試験体に入力した荷重(kN)とした荷重―ストローク曲線である。グラフ中に示す吸収エネルギーは、ストロークが0~80mmにおける衝突エネルギーの吸収量である。
発明例2における吸収エネルギーは9.8kJであり、比較例1(=6.5kJ)に比べて大幅に向上した。
また、発明例2における試験体重量は1.12kgであり、発明例1よりも軽量であった。そして、発明例2における単位重量当たりの吸収エネルギーは8.5kJ/kgであり、比較例1(=6.1kJ/kg)よりも向上した。
発明例3における吸収エネルギーは12.6kJであり、比較例4(=8.5kJ)に比べて大幅に向上した。
また、発明例3における試験体重量は1.13kgであり、発明例1よりも軽量であった。その上、発明例3における単位重量当たりの吸収エネルギーは11.2kJ/kgであり、比較例4(=7.9kJ/kg)よりも向上した。
発明例4における吸収エネルギーは10.1kJであり、比較例1(=6.5kJ)に比べても大幅に向上した。
また、発明例4における試験体重量は1.19kgであり、発明例1よりも軽量となった。そして、発明例4における単位重量当たりの吸収エネルギーは8.5kJ/kgであり、比較例1(=6.1kJ/kg)よりも向上した。
発明例5における吸収エネルギーは13.1kJであリ、比較例1における吸収エネルギー6.5kJに比べて大幅に向上した。また、比較例1よりも引張強度の高い鋼板(1180MPa級)をアウタ部品5に用いた比較例4における吸収エネルギー(=8.5kJ)と比較しても、発明例5においては吸収エネルギーが大幅に向上した。
発明例6における吸収エネルギーは12.6kJであり、比較例4(=8.5kJ)に比べて大幅に向上した。
また、発明例6における試験体重量は1.12kgであり、発明例1よりも軽量であった。その上、発明例6における単位重量当たりの吸収エネルギーは11.2kJ/kgであり、比較例4(=7.9kJ/kg)よりも向上した。
発明例7における吸収エネルギーは10.1kJであり、比較例1(=6.5kJ)に比べても大幅に向上した。
また、発明例7における試験体重量は1.19kgであり、発明例1よりも軽量となった。そして、発明例7における単位重量当たりの吸収エネルギーは8.5kJ/kgであり、比較例1(=6.1kJ/kg)よりも向上した。
比較例2における吸収エネルギーは7.0kJ、単位重量当たりの吸収エネルギーは6.0kJ/kgであり、吸収エネルギーは比較例1よりも増加したものの、発明例1~発明例7には及ばなかった。
比較例3における吸収エネルギーは8.1kJ、単位重量当たりの吸収エネルギーは7.6kJ/kgであり、いずれも比較例1よりも増加したものの、発明例1~発明例7には及ばなかった。
比較例4における吸収エネルギーは8.5kJ、単位重量当たりの吸収エネルギーは7.9kJ/kgであり、双方とも比較例1よりも増加したものの、発明例1~発明例7には及ばなかった。
比較例5、比較例6及び比較例7における吸収エネルギー及び単位重量当たりの吸収エネルギーは、発明例1~発明例7のいずれにも及ばなかった。
3 筒状部材
5 アウタ部品
5a 天板部
5b 縦壁部
5c フランジ部
7 インナ部品
9 閉断面空間形成壁部材
11 樹脂
21 試験片
23 被着体
25 被着体
27 樹脂
31 試験体
33 試験体
Claims (2)
- 車体の前部又は後部に設けられ、該車体の前方又は後方から衝突荷重が入力した際に軸圧壊して衝突エネルギーを吸収する自動車用衝突エネルギー吸収部品であって、
引張強度が590MPa級以上1180MPa級以下の鋼板から形成されてなり、天板部とこれに続く一対の縦壁部を有し、蛇腹状に繰り返し座屈する筒状部材と、
該筒状部材よりも引張強度の低い鋼板から形成されてなり、前記筒状部材の内側に前記天板部を跨ぐように配設された略コ字断面形状の部材であって、両端部が前記一対の縦壁部の内面に接合され、該筒状部材の周壁部の一部である前記天板部と前記縦壁部との間に閉断面空間を形成する閉断面空間形成壁部材と、
前記閉断面空間に充填された樹脂と、を有し、
該樹脂は、ゴム変性エポキシ樹脂と硬化剤とを含んでなり、
引張破断伸びが80%以上、前記筒状部材及び前記閉断面空間形成壁部材との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上、であることを特徴とする自動車用衝突エネルギー吸収部品。 - 車体の前部又は後部に設けられ、該車体の前方又は後方から衝突荷重が入力した際に軸圧壊して衝突エネルギーを吸収する自動車用衝突エネルギー吸収部品であって、
引張強度が590MPa級以上1180MPa級以下の鋼板から形成されてなり、天板部とこれに続く一対の縦壁部を有し、蛇腹状に繰り返し座屈するする筒状部材と、
該筒状部材よりも引張強度の低い鋼板から形成されてなり、前記筒状部材の内側に前記天板部を跨ぐように配設された略コ字断面形状の部材であって、両端部が前記一対の縦壁部の内面に接合され、該筒状部材の周壁部の一部である前記天板部と前記縦壁部との間に閉断面空間を形成する閉断面空間形成壁部材と、
前記閉断面空間に充填された樹脂と、を有し、
該樹脂は、ゴム変性エポキシ樹脂を含んでなり、
引張破断伸びが80%以上、前記筒状部材及び前記閉断面空間形成壁部材との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上、であることを特徴とする自動車用衝突エネルギー吸収部品。
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