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JP7026088B2 - 自動車用衝突エネルギー吸収部品 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用衝突エネルギー吸収部品に関し、特に、車体の前方又は後方から衝突荷重が入力した際に、長手方向に軸圧壊することで衝突エネルギーを吸収する自動車用衝突エネルギー吸収部品に関する。
自動車の衝突エネルギー吸収性能を向上させる技術として、自動車部品の形状・構造・材料等の最適化など多くの技術が存在する。さらに、近年では、閉断面構造を有する自動車部品の内部に樹脂(発泡樹脂など)を発泡させて充填することで、該自動車部品の衝突エネルギー吸収性能の向上と軽量化を両立させる技術が数多く提案されている。
例えば、特許文献1には、サイドシル、フロアメンバー、ピラー等のハット断面部品の天板方向を揃えフランジを重ねて内部に閉鎖空間を形成した構造の自動車用構造部材において、その内部に発泡充填材を充填することにより、最小限の重量増で該自動車用構造部材の曲げ強度、ねじり剛性を向上させ、車体の剛性及び衝突安全性を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献2には、ハット断面部品を対向させてフランジ部を合わせたピラー等の閉断面構造の内部空間内に高剛性発泡体を充填するに際し、該高剛性発泡体の充填および発泡による圧縮反力により発泡体を固定し、振動音の伝達を抑制する防振性の向上を図るとともに、強度、剛性、衝撃エネルギー吸収性を向上させる技術が開示されている。
特開2006-240134号公報 特開2000-318075号公報
特許文献1及び特許文献2に開示されている技術によれば、自動車部品の内部に発泡充填材又は発泡体を充填することにより、該自動車部品の曲げ変形に対する強度や衝突による曲げ変形の衝撃エネルギー吸収性、さらには捻り変形に対する剛性を向上することができ、当該自動車部品の変形を抑制することが可能であるとされている。
しかしながら、本発明が目的とするフロントサイドメンバーやクラッシュボックスのように、自動車の前方又は後方から衝突荷重が入力して軸圧壊する際に、蛇腹状に座屈変形して衝突エネルギーを吸収する自動車部品に対しては、該自動車部品の内部に発泡充填材や発泡体を充填する技術を適用したとしても、衝突エネルギーの吸収性を向上させることが困難であるという課題があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、フロントサイドメンバーやクラッシュボックスのような車体の前方又は後方から衝突荷重が入力して蛇腹状に軸圧壊する際に、衝突エネルギーの吸収効果を向上することができる自動車用衝突エネルギー吸収部品を提供することを目的とする。
(1)本発明に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品は、車体の前部又は後部に設けられ、該車体の前方又は後方から衝突荷重が入力した際に軸圧壊して衝突エネルギーを吸収するものであって、引張強度が590MPa級以上1180MPa級以下の鋼板から形成されてなり、天板部とこれに続く一対の縦壁部を有する筒状部材と、該筒状部材よりも引張強度の低い鋼板から形成されてなり、前記筒状部材の内側に前記天板部を跨ぐように配設されて両端部が前記一対の縦壁部の内面に接合され、該筒状部材の周壁部の一部との間に閉断面空間を形成する閉断面空間形成壁部材と、前記閉断面空間に充填された樹脂と、を有し、該樹脂は、ゴム変性エポキシ樹脂と硬化剤とを含んでなり、引張破断伸びが80%以上、前記筒状部材及び前記閉断面空間形成壁部材との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上、であることを特徴とするものである。
(2)本発明に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品は、車体の前部又は後部に設けられ、該車体の前方又は後方から衝突荷重が入力した際に軸圧壊して衝突エネルギーを吸収するものであって、引張強度が590MPa級以上1180MPa級以下の鋼板から形成されてなり、天板部とこれに続く一対の縦壁部を有する筒状部材と、該筒状部材よりも引張強度の低い鋼板から形成されてなり、前記筒状部材の内側に前記天板部を跨ぐように配設されて両端部が前記一対の縦壁部の内面に接合され、該筒状部材の周壁部の一部との間に閉断面空間を形成する閉断面空間形成壁部材と、前記閉断面空間に充填された樹脂と、を有し、該樹脂は、ゴム変性エポキシ樹脂を含んでなり、引張破断伸びが80%以上、前記筒状部材及び前記閉断面空間形成壁部材との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上、であることを特徴とするものである。
本発明においては、車体の前部又は後部に設けられ、該車体の前方又は後方から衝突荷重が入力した際に軸圧壊して衝突エネルギーを吸収するものであって、引張強度が590MPa級以上1180MPa級以下の鋼板から形成されてなり、天板部とこれに続く一対の縦壁部を有する筒状部材と、該筒状部材よりも引張強度の低い鋼板から形成されてなり、前記筒状部材の内側に前記天板部を跨ぐように配設されて両端部が前記一対の縦壁部の内面に接合され、該筒状部材との間に閉断面空間を形成する閉断面空間形成壁部材と、前記閉断面空間に充填された樹脂と、を有し、該樹脂は、ゴム変性エポキシ樹脂と硬化剤、または、ゴム変性エポキシ樹脂を含んでなり、引張破断伸びが80%以上、前記筒状部材及び前記閉断面空間形成壁部材との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上、であることにより、車体の前方又は後方から衝突荷重が入力して軸圧壊する過程において、前記筒状部材の変形抵抗を低下させることなく蛇腹状に繰り返し座屈変形を発生させることができ、衝突エネルギーの吸収効果を向上させることができる。
本発明の実施の形態に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品の構成を説明する説明図である。 本実施の形態に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品の断面図である。 実施例における自動車用衝突エネルギー吸収部品の軸圧壊試験方法を説明する図である。 実施例において、軸圧壊試験に用いた試験体の構造を示す図である(発明例)。 実施例において、接着強度の測定方法を説明する図である。 実施例において、軸圧壊試験に用いた試験体の構造を示す図である(比較例)。 実施例において、比較例に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品を試験体として軸圧壊試験を行ったときの、衝突荷重と軸圧壊変形量(ストローク)の測定結果を示す図である。 実施例において、発明例に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品を試験体として軸圧壊試験を行ったときの、衝突荷重と軸圧壊変形量(ストローク)の測定結果を示す図である。
本発明の実施の形態に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品について、図1及び図2に基づいて以下に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本実施の形態に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品1は、図1に示すように、アウタ部品5とインナ部品7とからなる筒状部材3を有し、車体の前部又は後部に設けられて該車体の前方又は後方から衝突荷重が入力した際に衝突エネルギーを吸収するものであって、筒状部材3の周壁部の一部であるアウタ部品5との間に閉断面空間を形成する閉断面空間形成壁部材9と、該閉断面空間の断面を充満する樹脂11とを備えたものである。
<筒状部材>
筒状部材3は、軸圧壊して衝突エネルギーを吸収し、天板部5aとこれに続く一対の縦壁部5bを有するものであり、図2に示すように、天板部5aと縦壁部5bとフランジ部5cとからなるハット断面形状のアウタ部品5のフランジ部5cと、平板状のインナ部品7の両側端部とが接合して筒状に形成されたものである。
そして、筒状部材3を構成するアウタ部品5とインナ部品7は、いずれも、引張強度が590MPa級以上1180MPa級以下の鋼板からなるものである。ここで、鋼板の種類としては、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛系めっき鋼板、亜鉛合金系めっき鋼板、アルミ合金系めっき鋼板、などが例示できる。
なお、筒状部材3は、車体前部の左右位置において車体前後方向に延びて車体骨格の一部を構成するフロントサイドメンバーや、該車体骨格の前端又は後端に設けられるクラッシュボックスといった閉断面構造を有する自動車部品に用いられ、該自動車部品は、筒状部材3の軸方向(長手方向)が車体の前後方向と一致するように該車体に配設される。
<閉断面空間形成壁部材>
閉断面空間形成壁部材9は、筒状部材3よりも引張強度の低い鋼板から形成されてなり、図2に示すように、筒状部材3の内側であるアウタ部品5とインナ部品7との間に天板部5aを跨ぐように配設された略コ字断面形状の部材であり、その両端部がアウタ部品5の一対の縦壁部5bに接合され、筒状部材3の周壁部の一部であるアウタ部品5の天板部5a及び縦壁部5bとの間に閉断面空間を形成するものである。
閉断面空間形成壁部材9の両端部と縦壁部5bとは、例えばスポット溶接等により接合されている。
さらに、閉断面空間形成壁部材9とアウタ部品5との間に形成される閉断面空間とは、図1に示す筒状部材3の軸方向に交差する方向の断面形状が閉断面であり、該閉断面が筒状部材3の軸方向に沿って連続して形成された空間のことをいう。
<樹脂>
樹脂11は、閉断面空間形成壁部材9とアウタ部品5との間に形成された閉断面空間に充填されたものである。
樹脂11は、ゴム変性エポキシ樹脂と硬化剤を含んでなるものであり、所定の温度及び時間で加熱処理を行うことで樹脂11自体の接着能によりアウタ部品5と閉断面空間形成壁部材9とに接着させることができる。
さらに、樹脂11は、引張破断伸びが80%以上、筒状部材3及び閉断面空間形成壁部材9との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上の物性を有するものである。これら各物性はいずれも、樹脂11を加熱処理した後の値である。
引張破断伸び、接着強度及び圧縮公称応力は、それぞれ以下の方法により求めた値とすればよい。
≪引張破断伸び≫
所定の間隙に調整した2枚の鋼板の間に未硬化の樹脂を入れ、所定の条件で加熱硬化させ、鋼板を剥がして平板状樹脂を作製し、該平板状樹脂を所定の形状に加工して試験片を作製する。次いで、所定の引張速度で樹脂が破断するまで引張試験を行い、樹脂破断時の標線間伸び量を測定する。そして、該測定した樹脂破断時の標線間伸び量を初期の標線間距離で除して百分率表示した値を引張破断伸びとする。
≪接着強度≫
所定の間隙に調整した2枚の鋼板の間に未硬化の樹脂を入れ、所定の条件で加熱硬化させ、試験片を作製する。次いで、該試験片を所定の引張速度で引張試験を行い、鋼板と樹脂とが破断した時の荷重を測定する。そして、該測定した破断時の荷重を鋼板と樹脂との接着面積で除した値(=せん断接着強度)を接着強度とする。
≪圧縮公称応力≫
所定の間隙に調整した2枚の鋼板の間に未硬化の樹脂を入れ、所定の条件で加熱硬化させ、鋼板を剥がして平板状樹脂を作製する。次いで、該平板状樹脂を円柱状に切り出して試験片を作製する。そして、当該試験片における円形状面を圧縮面とし、所定の試験速度で公称歪10%まで圧縮した時の荷重について、初期の試験片の断面績で除した値を圧縮公称応力する。
本実施の形態に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品1において、樹脂11の種類及び物性を上記のとおり規定する理由は下記のとおりである。
まず、樹脂11がゴム変性エポキシ樹脂及び硬化剤を含んでなることにより、筒状部材3に衝突荷重が入力して蛇腹状に軸圧壊変形する際に、加熱処理により樹脂11を加熱硬化させ、12MPa以上の接着強度で筒状部材3及び閉断面空間形成壁部材9と接着することにより、筒状部材3の変形に追随して樹脂11が変形することができる。
引張破断伸びが80%以上であることにより、筒状部材3の軸圧壊変形に追随して樹脂11が変形する際に樹脂11自体が破断しないようにすることができる。
接着強度が12MPa以上であることにより、筒状部材3の軸圧壊過程において樹脂11が筒状部材3や閉断面空間形成壁部材9から乖離して座屈耐力や変形抵抗が低下することを防ぐことができる。
圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上であることにより、軸圧壊過程において、筒状部材3が蛇腹状に変形しても、樹脂11自体が潰れて破壊しないほど十分な耐力を有することができる。
そして、樹脂11の引張破断伸び、接着強度及び圧縮公称応力が上記範囲となるよう、ゴム変性エポキシ樹脂及び硬化剤の種類や組成、さらには、加熱処理の温度や時間を適宜調整すればよい。
なお、硬化剤としては、ポリアミン系(脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドアミン)、酸無水物系、フェノール系、チオール系、や潜在性硬化剤であるジシアンジアミド、イミダゾール化合物、ケチミン化合物、有機酸ヒドラジド等、使用環境・反応温度等によって最適に選定される硬化剤がよい。
以上、本実施の形態に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品1は、筒状部材3に衝突荷重が入力して軸圧壊する過程において、樹脂11は筒状部材3及び閉断面空間形成壁部材9から乖離することなく座屈抵抗を向上させ、さらに、筒状部材3の変形抵抗を低下させることなく筒状部材3に蛇腹状に繰り返し座屈を発生させることができ、衝突エネルギーの吸収性を向上させることができる。
なお、上記の説明において、樹脂11は、加熱処理した後にゴム変性エポキシ樹脂と硬化剤とを含んでなるものであった。もっとも、閉断面空間形成壁部材9とアウタ部品5との間に形成された閉断面空間に充填する硬化剤の量によっては、所定の温度及び時間で加熱処理した後の樹脂11に硬化剤が残留しない又は検出されない場合がある。
そのため、本発明の実施の形態に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品1の他の態様として、加熱処理した後の樹脂11が硬化剤を含まない又は検出されないもので、所定の温度及び時間で加熱処理を行うことで樹脂11自体の接着能によりアウタ部品5と閉断面空間形成壁部材9とに接着させたものであってもよい。
加熱処理した後の樹脂11が硬化剤を含まない又は検出されないものである場合においても、その物性は、引張破断伸びが80%以上、筒状部材3及び閉断面空間形成壁部材9との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上を有するものとする。そして、樹脂11の引張破断伸び、接着強度及び圧縮公称応力が上記範囲となるよう、加熱処理前に閉断面空間に充填するゴム変性エポキシ樹脂及び硬化剤の種類や組成、さらには、加熱処理の温度や時間を適宜調整すればよい。
ゴム変性エポキシ樹脂を含み、かつ硬化剤を含まない又は検出されない樹脂11が上記物性の範囲内にあれば、筒状部材3に衝突荷重が入力して軸圧壊する過程において、樹脂11は筒状部材3及び閉断面空間形成壁部材9から乖離することなく座屈抵抗を向上させ、さらに、筒状部材3の変形抵抗を低下させることなく筒状部材3に蛇腹状に繰り返し座屈を発生させることができ、衝突エネルギーの吸収性を向上させることができる。
本発明に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品の効果を確認するための実験を行ったので、その結果について以下に説明する。
実験は、本発明に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品を試験体として軸圧壊試験を行うものであり、軸圧壊試験は、図3に示すように、試験体31の軸方向に試験速度17.8m/sで荷重を入力して試験体長(試験体31の軸方向長さL0)を200mmから120mmまで80mm軸圧壊変形させたときの荷重と軸圧壊変形量(ストローク)の関係を示す荷重-ストローク曲線の測定及び高速度カメラによる変形状態の撮影を行った。さらに、測定した荷重-ストローク曲線から、ストロークが0~80mmまでの吸収エネルギーを求めた。
図4に、発明例とした試験体31の構造及び形状を示す。
発明例は、前述した本発明の実施の形態に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品1(図1及び図2)を試験体31とし、軸圧壊試験を行ったものである。
試験体31は、アウタ部品5とインナ部品7とがスポット溶接により接合された筒状部材3を有し、アウタ部品5と閉断面空間形成壁部材9との間に閉断面空間が形成され、該閉断面空間の全領域に樹脂11が充填されている。そして、アウタ部品5と閉断面空間形成壁部材9との間の隙間高さを1mm、3mm、8mm(図4(a)~(c))とした。
アウタ部品5には、引張強度590MPa級~1180MPa級、板厚1.2mm又は1.4mmの鋼板を用い、インナ部品7には、引張強度590MPa級、板厚1.2mmの鋼板を用いた。
また、閉断面空間形成壁部材9には、引張強度270MPa級、板厚0.5mmの鋼板を用いた。
樹脂11は、ゴム変性エポキシ樹脂及び硬化剤を所定の加熱温度及び加熱時間で加熱処理したものであり、加熱処理した後の樹脂11の引張破断伸び、接着強度及び圧縮公称応力のそれぞれの値を本発明の範囲内とした。ここで、引張破断伸び、接着強度及び圧縮公称応力は、それぞれ下記の試験方法を別途行うことにより求めた。
<引張破断伸び>
2枚の鋼板の間隙を2mmに調整し、その間に未硬化の樹脂を入れ、180℃×20分保持の条件で加熱硬化させ、鋼板を剥がして厚さ2mmの平板状樹脂を作製した。続いて、当該平板状樹脂をダンベル形状(JIS6号ダンベル)に加工して試験片を作製し、引張速度2mm/minで樹脂が破断するまで引張試験を行い、樹脂破断時の標線間伸び量を測定した。そして、該測定した樹脂破断時の標線間伸び量を初期の標線間距離(=20mm)で除した値を百分率表示し、引張破断伸びとした。
<せん断接着強度>
図5に示すように、被着体23及び被着体25は、幅25mm、厚さ1.6mm、長さ100mmの鋼板(SPCC)とし、接着部(幅25mm、長さ10mm)に未硬化の樹脂27を設置し、厚み0.15mmに調整した状態で、180℃×20分保持の条件で加熱硬化したものを試験片21とした。次いで、試験片21を引張速度5mm/minで被着体23又は被着体25と樹脂27とが破断するまでの引張試験を行い、破断時の荷重を測定した。そして、破断時の荷重を接着部の面積(接着面積:幅25mm×長さ10mm)で除した値をせん断接着強度とした。
<圧縮公称応力>
2枚の鋼板の間隙を3mmに調整し、その間に未硬化の樹脂を入れ、180℃×20分保持の条件で加熱硬化させ、鋼板を剥がして厚さ3mmの平板状樹脂試験片を作製した。次いで、該平板状樹脂試験片から直径20mmの円柱状に切り出したものを試験片とした。そして、当該試験片における直径20mmの円形状面を圧縮面とし、試験速度2mm/minで公称歪10%まで圧縮した時の荷重について、初期の試験片の断面績で除した値を圧縮公称応力とした。
本実施例では、比較対象として、発明例の筒状部材3及び閉断面空間形成壁部材9と同一形状であって樹脂が充填されていない試験体33(図6)を用いた場合と、発明例と同一形状の試験体31において樹脂11の物性が本発明の範囲外の場合を比較例とし、発明例と同様に軸圧壊試験を行った。
表1に、発明例及び比較例とした試験体の構造、樹脂の種類、引張破断伸び、接着強度、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力の各条件を示す。
Figure 0007026088000001
表1において、発明例1~発明例7は、筒状部材3を構成するアウタ部品5とインナ部品7に用いた鋼板の引張強度(590MPa級以上1180MPa級以下)、閉断面空間形成壁部材9に用いた鋼板の引張強度(270MPa級)、樹脂11の種類、引張破断伸び、接着強度、圧縮公称応力のいずれもが、前述の実施の形態で示した本発明の範囲内としたものである。
そして、発明例1~発明例4は、所定の加熱温度及び加熱時間で加熱処理した後に、樹脂11に硬化剤が残留したものである。また、発明例5~発明例7は、発明例1~4に比べて硬化剤の量が少なく、所定の加熱温度及び加熱時間で加熱処理した後、樹脂11に硬化剤が残留しなかった又は検出されなかったものである。
これらに対し、比較例1~比較例4は、樹脂が充填されていない試験体33を用いたもの、比較例5~比較例7は、樹脂11の種類をエポキシ又はウレタンとし、引張破断伸び、接着強度、圧縮公称応力の少なくともいずれか一つが本発明の範囲外である試験体31を用いたものである。
図7及び図8に、それぞれ比較例1に係る試験体33及び発明例1に係る試験体31を用いて軸圧壊試験を行ったときの荷重―ストローク曲線の測定結果を示す。
図7及び図8は、横軸を衝突開始から試験体の軸方向における変形量を表すストローク(mm)とし、縦軸を試験体に入力した荷重(kN)とした荷重―ストローク曲線である。グラフ中に示す吸収エネルギーは、ストロークが0~80mmにおける衝突エネルギーの吸収量である。
図7に示す比較例1は、樹脂が充填されていない試験体33(図6)の結果であり、試験体33に入力する荷重は、入力開始直後に最大値(約300kN)を示し、その後、筒状部材3の周壁部の座屈とともに荷重の値は変動した。そして、ストロークが80mmに達した試験終了時における吸収エネルギーは6.5kJであった。
図8に示す発明例1は、アウタ部品5及び閉断面空間形成壁部材9との間に形成された閉断面空間に樹脂11が充填され、引張破断伸び(=80%)、接着強度(=12MPa)及び圧縮公称歪10%における圧縮公称応力(=6MPa)のいずれもが本発明の範囲内である試験体31の結果である。図8に示す荷重-ストローク曲線から、荷重入力開始直後の最大荷重は約400kNであり、前述の比較例1に比べて大幅に向上した。さらに、ストロークが10mm以降における変形荷重は、比較例1に比べると安定して高い値で推移した。そして、ストロークが0~80mmにおける吸収エネルギーについても、比較例1に比べて大幅に向上して13.1kJとなった。
このように、発明例1においては、アウタ部品5及び閉断面空間形成壁部材9との間に樹脂11を充填し、その引張破断伸び、接着強度及び圧縮公称応力を本発明の範囲内とすることにより、軸圧壊過程において座屈耐力が増加するとともに樹脂11が剥離せずに変形抵抗が上昇し、蛇腹状の圧縮変形が生じて衝突エネルギーの吸収性が向上したことが分かる。
次に、軸圧壊試験に用いる試験体の構造、樹脂の種類及び接着強度を変更して軸圧壊試験を行い、ストロークが0~80mmにおける吸収エネルギーの測定結果と試験体重量を前掲した表1に示す。
表1中の試験体重量は、樹脂11が充填された試験体31においてはアウタ部品5、インナ部品7、閉断面空間形成壁部材9及び樹脂11の各重量の総和である。一方、樹脂が充填されていない試験体33においては、アウタ部品5、インナ部品7及び閉断面空間形成壁部材9の各重量の総和である。
前述した図8に示したとおり、発明例1における吸収エネルギーは13.1kJであリ、比較例1における吸収エネルギー6.5kJに比べて大幅に向上した。また、比較例1よりも引張強度の高い鋼板(1180MPa級)をアウタ部品5に用いた比較例4における吸収エネルギー(=8.5kJ)と比較しても、発明例1においては吸収エネルギーが大幅に向上した。
発明例1における試験体重量は1.28kgであり、樹脂を充填していない比較例1における試験体重量(=1.06kg)よりも増加した。しかしながら、発明例1においては、吸収エネルギーを試験体重量で除した単位重量当りの吸収エネルギーは10.2kJ/kgであり、比較例1(=6.1kJ/kg)よりも向上した。
発明例2は、樹脂11の厚みが発明例1よりも小さい1mmとした試験体31(図4(c))を用いたものである。
発明例2における吸収エネルギーは9.8kJであり、比較例1(=6.5kJ)に比べて大幅に向上した。
また、発明例2における試験体重量は1.12kgであり、発明例1よりも軽量であった。そして、発明例2における単位重量当たりの吸収エネルギーは8.5kJ/kgであり、比較例1(=6.1kJ/kg)よりも向上した。
発明例3は、アウタ部品5に用いた鋼板の引張強度1180MPa級、樹脂11の厚み1mmとした試験体31(図4(c))を用いたものである。
発明例3における吸収エネルギーは12.6kJであり、比較例4(=8.5kJ)に比べて大幅に向上した。
また、発明例3における試験体重量は1.13kgであり、発明例1よりも軽量であった。その上、発明例3における単位重量当たりの吸収エネルギーは11.2kJ/kgであり、比較例4(=7.9kJ/kg)よりも向上した。
発明例4は、アウタ部品5に用いた鋼板の引張強度590MPa級、樹脂11の厚み3mmとした試験体31(図4(b))を用いたものである。
発明例4における吸収エネルギーは10.1kJであり、比較例1(=6.5kJ)に比べても大幅に向上した。
また、発明例4における試験体重量は1.19kgであり、発明例1よりも軽量となった。そして、発明例4における単位重量当たりの吸収エネルギーは8.5kJ/kgであり、比較例1(=6.1kJ/kg)よりも向上した。
発明例5は、アウタ部品5に用いた鋼板の引張強度590MPa級、樹脂11の厚み8mmとした試験体31(図4(a))を用いたものである。
発明例5における吸収エネルギーは13.1kJであリ、比較例1における吸収エネルギー6.5kJに比べて大幅に向上した。また、比較例1よりも引張強度の高い鋼板(1180MPa級)をアウタ部品5に用いた比較例4における吸収エネルギー(=8.5kJ)と比較しても、発明例5においては吸収エネルギーが大幅に向上した。
発明例6は、アウタ部品5に用いた鋼板の引張強度1180MPa級、樹脂11の厚み1mmとした試験体31(図4(c))を用いたものである。
発明例6における吸収エネルギーは12.6kJであり、比較例4(=8.5kJ)に比べて大幅に向上した。
また、発明例6における試験体重量は1.12kgであり、発明例1よりも軽量であった。その上、発明例6における単位重量当たりの吸収エネルギーは11.2kJ/kgであり、比較例4(=7.9kJ/kg)よりも向上した。
発明例7は、アウタ部品5に用いた鋼板の引張強度590MPa級、樹脂11の厚み3mmとした試験体31(図4(b))を用いたものである。
発明例7における吸収エネルギーは10.1kJであり、比較例1(=6.5kJ)に比べても大幅に向上した。
また、発明例7における試験体重量は1.19kgであり、発明例1よりも軽量となった。そして、発明例7における単位重量当たりの吸収エネルギーは8.5kJ/kgであり、比較例1(=6.1kJ/kg)よりも向上した。
比較例1は、樹脂が充填されていない試験体33(図6)を用いたものであり、試験体重量は1.06kgであった。そして、吸収エネルギーは、前述した図7に示したとおり、6.5kJであり、単位重量当たりの吸収エネルギーは6.1kJ/kgであった。
比較例2は、比較例1と同一形状の試験体33において、アウタ部品5に板厚1.4mmの鋼板を用いたものであり、試験体重量は1.17kgであった。
比較例2における吸収エネルギーは7.0kJ、単位重量当たりの吸収エネルギーは6.0kJ/kgであり、吸収エネルギーは比較例1よりも増加したものの、発明例1~発明例7には及ばなかった。
比較例3は、比較例1と同一形状の試験体33において、アウタ部品5に引張強度980MPa級の鋼板を用いたものであり、試験体重量は1.06kgであった。
比較例3における吸収エネルギーは8.1kJ、単位重量当たりの吸収エネルギーは7.6kJ/kgであり、いずれも比較例1よりも増加したものの、発明例1~発明例7には及ばなかった。
比較例4は、比較例1と同一形状の試験体33において、アウタ部品5に引張強度1180MPa級の鋼板を用いたものであり、試験体重量は1.07kgであった。
比較例4における吸収エネルギーは8.5kJ、単位重量当たりの吸収エネルギーは7.9kJ/kgであり、双方とも比較例1よりも増加したものの、発明例1~発明例7には及ばなかった。
比較例5、比較例6及び比較例7は、発明例2に係る試験体31と同一形状であるが、樹脂の種類、又は、樹脂の引張破断伸び、接着強度及び圧縮公称応力の少なくともいずれか一つが本発明の範囲外である試験体31(図4)を用いたものである。
比較例5、比較例6及び比較例7における吸収エネルギー及び単位重量当たりの吸収エネルギーは、発明例1~発明例7のいずれにも及ばなかった。
以上、本発明に係る自動車用衝突エネルギー吸収部品によれば、軸方向に衝突荷重が入力して軸圧壊する場合において、衝突エネルギーの吸収性能を向上できることが示された。
1 自動車用衝突エネルギー吸収部品
3 筒状部材
5 アウタ部品
5a 天板部
5b 縦壁部
5c フランジ部
7 インナ部品
9 閉断面空間形成壁部材
11 樹脂
21 試験片
23 被着体
25 被着体
27 樹脂
31 試験体
33 試験体

Claims (2)

  1. 車体の前部又は後部に設けられ、該車体の前方又は後方から衝突荷重が入力した際に軸圧壊して衝突エネルギーを吸収する自動車用衝突エネルギー吸収部品であって、
    引張強度が590MPa級以上1180MPa級以下の鋼板から形成されてなり、天板部とこれに続く一対の縦壁部を有し、蛇腹状に繰り返し座屈する筒状部材と、
    該筒状部材よりも引張強度の低い鋼板から形成されてなり、前記筒状部材の内側に前記天板部を跨ぐように配設された略コ字断面形状の部材であって、両端部が前記一対の縦壁部の内面に接合され、該筒状部材の周壁部の一部である前記天板部と前記縦壁部との間に閉断面空間を形成する閉断面空間形成壁部材と、
    前記閉断面空間に充填された樹脂と、を有し、
    該樹脂は、ゴム変性エポキシ樹脂と硬化剤とを含んでなり、
    引張破断伸びが80%以上、前記筒状部材及び前記閉断面空間形成壁部材との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上、であることを特徴とする自動車用衝突エネルギー吸収部品。
  2. 車体の前部又は後部に設けられ、該車体の前方又は後方から衝突荷重が入力した際に軸圧壊して衝突エネルギーを吸収する自動車用衝突エネルギー吸収部品であって、
    引張強度が590MPa級以上1180MPa級以下の鋼板から形成されてなり、天板部とこれに続く一対の縦壁部を有し、蛇腹状に繰り返し座屈するする筒状部材と、
    該筒状部材よりも引張強度の低い鋼板から形成されてなり、前記筒状部材の内側に前記天板部を跨ぐように配設された略コ字断面形状の部材であって、両端部が前記一対の縦壁部の内面に接合され、該筒状部材の周壁部の一部である前記天板部と前記縦壁部との間に閉断面空間を形成する閉断面空間形成壁部材と、
    前記閉断面空間に充填された樹脂と、を有し、
    該樹脂は、ゴム変性エポキシ樹脂を含んでなり、
    引張破断伸びが80%以上、前記筒状部材及び前記閉断面空間形成壁部材との接着強度が12MPa以上、圧縮公称歪10%における圧縮公称応力が6MPa以上、であることを特徴とする自動車用衝突エネルギー吸収部品。
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