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JP6928435B2 - 端子付き電線の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は例えば自動車等に用いられる端子付き電線の製造方法等に関するものである。
従来、自動車、OA機器、家電製品等の分野では、電力線や信号線として、電気導電性に優れた銅系材料からなる電線が使用されている。特に、自動車分野においては、車両の高性能化、高機能化が急速に進められており、車載される各種電気機器や制御機器が増加している。したがって、これに伴い、使用される端子付き電線も増加する傾向にある。
一方、環境問題が注目される中、自動車の軽量化が要求されている。したがって、ワイヤハーネスの使用量増加に伴う重量増加が問題となる。このため、従来使用されている銅線に代えて、軽量なアルミニウム電線が注目されている。
ここで、このような電線同士を接続する際や機器類等の接続部においては、接続用端子が用いられる。しかし、アルミニウム電線を用いた端子付き電線であっても、接続部の信頼性等のため、端子部には、電気特性に優れる銅が使用される場合がある。このような場合には、アルミニウム電線と銅製の端子とが接合されて使用される。
しかし、異種金属を接触させると、標準電極電位の違いから、いわゆる電食が発生する恐れがある。特に、アルミニウムと銅との標準電極電位差は大きいため、接触部への水の飛散や結露等の影響により、電気的に卑であるアルミニウム側の腐食が進行する。このため、接続部における電線と端子との接続状態が不安定となり、接触抵抗の増加や線径の減少による電気抵抗の増大、更には断線が生じて電装部品の誤動作、機能停止に至る恐れがある。
このため、被覆導線と端子との接続部を樹脂部材で被覆する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
特開2015−153721号公報
従来の方法は、端子と被覆導線を圧着した後、接続部の外周に樹脂部材を塗布して、樹脂部材で互いの接触部分を被覆するものである。しかし、被覆導線と端子との微小な隙間に樹脂部材を塗布することは困難である。特に、被覆導線の先端近傍は、被覆部が除去されて内部の導線が露出するが、被覆部の端部と導線露出部の境界部において、外径の変化に伴う微小な隙間が生じやすい。したがって、被覆部と被覆圧着部との隙間を通じて、圧着部内部に水が浸入するおそれがある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、圧着部の内部へ水が浸入することを抑制することが可能な端子付き電線の製造方法等を提供することを目的とする。
前述した目的を達するために第1の発明は、被覆導線と端子とが接続された端子付き電線の製造方法であって、前記端子は、前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、前記圧着部は、前記被覆導線の被覆部を圧着する被覆圧着部と、前記被覆部から露出する導線を圧着する導線圧着部とを有し、前記導線圧着部と前記導線を本圧着する第1圧着工程と、前記被覆圧着部における前記被覆部から前記導線圧着部の先端側の前記導線の露出部にわたって樹樹脂部材を塗布する樹脂塗布工程と、前記被覆圧着部と、前記樹脂部材が塗布された前記被覆部を本圧着する第2圧着工程と、をこの順に具備することを特徴とする端子付き電線の製造方法である。
前記第2圧着工程の前に、前記樹脂部材を硬化させる樹脂硬化工程を具備してもよい。
硬化後の前記樹脂部材の硬度が、前記被覆部の硬度よりも低いことが望ましい。
前記第2圧着工程の後に、前記樹脂部材を硬化させる樹脂硬化工程を具備してもよい。
前記樹脂部材の硬化前の粘度が、10〜1000mPa・sであってもよい。
前記第2圧着工程の後に、さらに樹脂部材を塗布する工程を具備してもよい。
前記樹脂塗布工程の前に、前記被覆圧着部と前記被覆部を仮圧着する仮圧着工程を具備してもよい。
第1の発明によれば、被覆圧着部における被覆部に対して、圧着前に樹脂部材を塗布するため、樹脂部材の塗布時においては、被覆部と被覆圧着部との間に十分な隙間を確保することができる。このため、確実に樹脂部材を被覆部の端部と導線露出部の境界部周辺における導線と端子との間の隙間に浸透させることができる。また、被覆部と被覆圧着部との間に塗布することができる。また、この際、導線圧着部を樹脂部材の塗布前に圧着することで、導線と導線圧着部との間に樹脂部材が塗布されることにより、互いの導通不良が生じることを抑制することができる。
また、第2圧着工程の前に樹脂部材を硬化させることで、被覆圧着時における樹脂部材の飛散等を防止することができる。また、樹脂部材を硬化する際に、被覆部と被覆圧着部との間に十分な隙間を確保することができるため、例えば紫外線照射などを行う場合に、より深くまで紫外線を照射することができる。
また、この際、硬化後の樹脂部材の硬度が被覆部の硬度よりも低ければ、被覆部の圧着時に、樹脂部材が容易に変形して、被覆部と被覆圧着部との隙間を確実に埋めることができる。
また、第2圧着工程の後に樹脂部材を硬化させることで、圧着時に樹脂部材が容易に流動して、被覆部と被覆圧着部との隙間を確実に埋めることができる。
また、樹脂部材の粘度が10mPa・s以上であれば、樹脂部材を塗布した際に、樹脂部材が流れ落ちることを抑制し、樹脂部材の被覆厚を確保することができる。また、樹脂部材の粘度が1000mPa・s以下であれば、樹脂部材を効率よく隙間に浸透させることができる。
また、第2圧着工程の後に、さらに樹脂部材を塗布することで、被覆圧着時に生じる隙間に対しても、樹脂部材を被覆することができる。
また、樹脂塗布工程の前に、被覆圧着部と被覆部を仮圧着することで、被覆圧着部の形状をある程度整えた状態で樹脂部材を塗布することができる。このため、樹脂部材の流れ出しなどを抑制することができる。
本発明によれば、圧着部の内部へ水が浸入することを抑制することが可能な端子付き電線の製造方法等を提供することができる。
端子付き電線10を示す斜視図。 端子付き電線10の圧着前の状態を示す斜視図。 端子付き電線10の圧着前の状態を示す断面図。 導線圧着部7を圧着した状態を示す断面図。 樹脂部材17を塗布した状態を示す図。 被覆圧着部9を圧着した状態を示す断面図。 (a)は、図4のA−A線断面図、(b)は、図5のB−B線断面図、(c)は、図6のC−C線断面図。 (a)は、図4のD部拡大、(b)は、図5のE部拡大、(c)は、図6のF部拡大。 さらに樹脂部材17aを塗布した状態を示す図。 導線圧着部7を本圧着し、被覆圧着部9を仮圧着した状態を示す図。 樹脂部材17を塗布した状態を示す図。 端子付き電線10の評価方法を示す図。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、端子付き電線10を示す斜視図である。なお、図は、樹脂部材17を透視した図である。端子付き電線10は、端子1および被覆導線11等から構成される。端子1は、オープンバレル型であり、銅もしくは黄銅などの銅合金あるいはそれらにスズなどがめっきされたものが使用される。端子付き電線10は、端子1と被覆導線11が接続されて構成される。被覆導線11は、アルミニウム線またはアルミニウム合金線である導線13と、導線13を被覆する被覆部15からなる。すなわち、被覆導線11は、被覆部15と、その先端から露出する導線13とを具備する。
端子1は、端子本体3と圧着部5とからなる。端子本体3は、所定の形状の板状素材を、断面が矩形の筒体に形成したものである。端子本体3は、内部に、板状素材を矩形の筒体内に折り込んで形成される弾性接触片を有する。端子本体3は、前端部から雄端子などが挿入されて接続される。なお、以下の説明では、端子本体3が、雄型端子等の挿入タブ(図示省略)の挿入を許容する雌型端子である例を示すが、本発明において、この端子本体3の細部の形状は特に限定されない。例えば、雌型の端子本体3に代えて例えば雄型端子の挿入タブを設けてもよい。
圧着部5は、被覆導線11と圧着される部位であり、圧着前において、端子1の長手方向に垂直な断面形状が略U字状のバレル形状を有する。端子1の圧着部5は、被覆導線の先端側に被覆部から露出する導線を圧着する導線圧着部7と、被覆導線11の被覆部15を圧着する被覆圧着部9とからなる。
導線圧着部7の内面の一部には、幅方向(長手方向に垂直な方向)には、図示を省略したセレーションが設けられる。このようにセレーションを形成することで、導線を圧着した際に、導線の表面の酸化膜を破壊しやすく、また、導線との接触面積を増加させることができる。
被覆導線11の先端は、被覆部15が剥離され、内部の導線13が露出する。被覆導線11の被覆部は、端子1の被覆圧着部9によって圧着される。また、被覆部15が剥離されて露出する導線13は、導線圧着部7により圧着される。導線圧着部7において導線13と端子1とが電気的に接続される。なお、被覆部15の端面は、被覆圧着部9と導線圧着部7の間に位置する。
本発明では、少なくとも、被覆部15や端子1から露出する導線13が、樹脂部材17で覆われる。本実施形態では、導線圧着部7および被覆圧着部9が樹脂部材17によって被覆され、少なくとも導線13は、樹脂部材17によって外部に露出しない。すなわち、被覆圧着部9における被覆部15から導線圧着部7の先端側の導線13の露出部にわたって樹脂部材17が塗布されて、樹脂部材17によって覆われる。樹脂部材17は、例えば、シリコーンアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアクリレートなどの紫外線硬化樹脂である。なお、樹脂部材17の詳細については後述する。
次に、端子付き電線10の製造方法について説明する。図2は、端子1に対して被覆導線11を配置した状態を示す斜視図であり、図3は、端子付き電線10(被覆導線11)の長手方向の断面図である。まず、被覆導線11の先端の所定長さの被覆部15を除去して、導線13を露出させる。次に、圧着部5に被覆導線11を配置する。この際、導線圧着部7には導線13の露出部が位置し、被覆圧着部9には被覆部15が位置する。
次に、図4に示すように、導線圧着部7と導線13を本圧着する(第1圧着工程)。すなわち、この状態においては、導線圧着部7のみが本圧着され、被覆圧着部9は圧着されない。
次に、図5に示すように、被覆圧着部9における被覆部15から導線圧着部7の先端側の導線13の露出部にわたって樹脂部材17を塗布する(樹脂塗布工程)。すなわち、この状態においては、露出する導線13が完全に樹脂部材17によって被覆される。
なお、導線圧着部7における導線13の表面の樹脂部材17の被覆厚は、20μm以上であることが望ましい。樹脂部材17の被覆厚が十分でないと、防食性が悪くなる。
次に、図6に示すように、被覆圧着部9と、樹脂部材17が塗布された被覆部15を本圧着する(第2圧着工程)。すなわち、この状態においては、被覆圧着部9によって、樹脂部材17とともに被覆部15が本圧着される。
図7(a)は、図4のA−A線断面図、図7(b)は、図5のB−B線断面図、図7(c)は、図6のC−C線断面図である。また、図8(a)は、図4のD部拡大図、図8(b)は、図5のE部拡大図、図8(c)は、図6のF部拡大図である。前述したように、導線圧着部7の本圧着時には、被覆圧着部9は圧着されていない。このため、図7(a)に示すように、被覆圧着部9は、上方に向けて開口し、被覆部15と被覆圧着部9との間には、十分な隙間が生じる。特に、図8(a)に示すように、被覆部15の端部(被覆部15の端部と導線露出部の境界部周辺における導線13と端子(圧着部5)との間の隙間)には、十分な隙間が形成され、上部に開口する。
したがって、図7(b)、図8(b)に示すように、被覆圧着部9の上方から樹脂部材17を容易に塗布することができ、樹脂部材17を被覆部15と被覆圧着部9の隙間(特に、被覆部15の端部と導線露出部の境界部周辺における導線13と端子(圧着部5)との間の隙間)に浸透させることができる。
なお、本実施形態では、樹脂部材17のJIS Z 8803による塗布時(硬化前)の粘度が、10〜2000mPa・s(より望ましくは、樹脂部材17の粘度が、10〜1000mPa・s)であることが望ましい。粘度が10mPa・s未満では、樹脂部材17を塗布した際に、樹脂部材17が圧着部近傍から流れ出し、適切に被覆がされない恐れがある。粘度が1000mPa・sを超えると、樹脂部材17を塗布した際に、樹脂部材17が圧着部の内部まで十分に浸透せず、内部に隙間が生じるおそれがあり、特に粘度が2000mPa・sを超えると、樹脂部材17を被覆部15の下部に浸透させることが困難となる。
このように、樹脂部材17を塗布した状態で、被覆圧着部9を圧着することで、図7(c)、図8(c)に示すように、圧着後には、被覆部15と被覆圧着部9との隙間が狭くなる部分、特に、被覆部15の端部と導線露出部の境界部周辺における導線13と端子(圧着部5)との間の隙間も、確実に樹脂部材17で埋めることができる。
なお、樹脂部材17は、例えば紫外線硬化樹脂である。この場合、被覆圧着部9の圧着(第2圧着工程)の前に、樹脂部材17を硬化(樹脂硬化工程)させてもよく、被覆圧着部9の圧着(第2圧着工程)の後に、樹脂部材17を硬化(樹脂硬化工程)させてもよい。
被覆圧着部9の圧着の前に、樹脂部材17を硬化させれば、図7(b)に示すように、被覆圧着部9の上方が開いており、被覆部15と被覆圧着部9の隙間も大きいため、紫外線をより深くまで照射することができる。また、被覆圧着部9の圧着時に、樹脂部材17の飛散などが生じにくい。
なお、この場合には、硬化後の樹脂部材17の硬度が、被覆部15の硬度よりも低いことが望ましい。例えば、硬化後の樹脂部材17および被覆部15の樹脂によって、それぞれ2mm厚のシートを作成し、JIS K6253−3による硬度測定を行った場合、被覆部のデュロメータ硬さはA50〜A100であり、硬化後の樹脂部材17のデュロメータ硬さはA20〜A50の範囲である。
このように、樹脂部材17の硬度が低いと、被覆部15を圧着した際に、樹脂部材17が容易に変形し、被覆部15と被覆圧着部9との隙間を確実に埋めることができる。
一方、被覆圧着部9の圧着の後に、樹脂部材17を硬化させれば、被覆圧着部9の圧着時において、樹脂部材17の流動性を確保することができる。
ここで、前述したように、樹脂部材17は、例えば紫外線硬化樹脂である。この場合、樹脂部材17が塗布された端子付き電線10に上方から紫外線を照射すると、導線13の影が生じる。すなわち、紫外線が、導線13の下部の樹脂部材17へ十分に照射されない恐れがある。しかし、上方から照射された紫外線は、樹脂部材17を透過し、導線13の表面や端子1の内面で反射する。このため、導線13による影部分へも、紫外線が回り込み、樹脂部材17を硬化させることができる。
このため、樹脂部材17は、紫外線が透過しやすい樹脂であれば、より深くまで紫外線を照射することができる。そこで、本発明では、樹脂部材17の厚さ0.2mmにおける波長365nmの分光透過率を60%以上とすることが望ましい。
ここで、厚さ0.2mmにおける分光透過率が60%以上とは、樹脂部材17を構成する樹脂で0.2mm厚さのシートを形成し、シートの一方の側から入射した光(例えば光照射量3000mJ/cm)が、他方へ透過する透過率である。具体的には、紫外線を照射し、所定の距離で分光光度計によって光強度Iを測定する。次に、光源と分光光度計の間に、当該シートを配置して、同様に光強度Iを測定する。この際、I/Iが厚さ0.2mmにおける分光透過率となる。
なお、透過率の対数とシート厚みとは比例関係にある。具体的には、シート厚みをtとし、透過率をTとすると、t=−Dp×log10Tとなる。ここで、Dpは、硬化深度であり、シート厚みの増加に伴う透過率の減少(対数)のグラフの傾きとして表せられる。したがって、0.2mm厚以外のシートを用いて評価を行う場合には、上記式によって、そのシートの厚みに応じた透過率の範囲を算出すればよい。
なお、透過率は、光開始剤の添加量によって調整することができる。ここで、透過率が高すぎると、樹脂部材17を視認することが困難となり、目視での品質確認が困難となるため、透過率は90%以下であることが望ましい。
なお、樹脂部材17の透過率を向上させたとしても、導線13と端子1との隙間が狭くなりすぎると、反射回数が増えるため、反射に伴う光の減衰によって、紫外線が導線13の影部に十分に回り込みにくくなる。このため、導線13と端子1との隙間を適切に設定することが望ましい。
例えば、被覆圧着部9の圧着の後に、樹脂部材17を硬化する場合において、導線13と端子1との隙間は、被覆部15の端面と導線圧着部7までの距離と、被覆部15の端面における導線13と端子1との距離によって形成される。この場合、端子付き電線10の長手方向の断面における、被覆部15の端面と導線圧着部7までの距離が0.1mm以上であることが望ましく、被覆部15の端面における導線13と端子1との距離が、0.1mm以上であることが望ましい。このようにすることで、光が隙間に回り込みやすく、導線13の影部の樹脂部材17を硬化させることができる。なお、被覆部15の端面における導線13と端子1との距離は、概ね、被覆部15の厚みと言い換えることができる。
なお、樹脂部材17は、紫外線硬化のみではなく、紫外線硬化と湿気硬化、嫌気硬化、熱硬化などを組み合わせたハイブリッド硬化型であってもよい。このようにすることで、紫外線の照射困難な部位も容易に硬化させることができる。
また、硬化させた樹脂部材17の厚さ200μmのシートを作製し、JIS K7113により25℃破断伸びを測定した際の、樹脂部材17の破断伸びは、100%以上が好ましい。このように、樹脂部材17の破断伸びが100%以上であれば、圧着後における温度変化や外力などによる膨張や変形に対して、樹脂部材17を容易に追従させることができる。
また、樹脂部材17の、JIS K6850による引張せん断接着強度は1MPa以上であることが望ましい。より詳細には、接着剤の引張せん断接着強さ試験方法により、錫めっき付銅板とアクリル板を重ね合わせて樹脂部材17で接着した際の引張せん断接着強さ、アルミ板とアクリル板を重ね合わせて樹脂部材17で接着した際の引張せん断接着強さ、および、軟質PVC板とアクリル板とを重ね合わせて樹脂部材17で接着した際の引張せん断接着強さの各々に対して、引張せん断接着強度は1MPa以上であることが望ましい。このようにすることで、樹脂部材17が導線圧着部7や被覆部15から剥がれて隙間が生じることを抑制することができる。
また、被覆圧着部9を圧着した後、さらに、図9に示すように、樹脂部材17aを塗布してもよい。このようにすることで、被覆圧着部9の圧着時に生じた隙間等に対しても、樹脂部材17aで被覆することができる。なお、この場合、樹脂部材17と樹脂部材17aは、同じ樹脂であってもよいが、異なる樹脂であってもよい。例えば、樹脂部材17は、浸透性が高い相対的に粘度が低いものを適用し、樹脂部材17aは、被覆厚を確保するために、相対的に粘度の高いものを適用することができる。
また、本実施形態においては、図10に示すように、導線圧着部7の本圧着時に、被覆圧着部9を仮圧着(仮圧着工程)してもよい。すなわち、樹脂塗布工程の前に、被覆圧着部9と被覆部15を仮圧着してもよい。仮圧着では、被覆圧着部9は完全に被覆部15と圧着されず、十分な隙間を維持しつつ、被覆圧着部9の形状を円形に近い形に整えることができる。これにより、導線圧着部7の本圧着時に、被覆圧着部9における電線が端子底面から所定量以上浮き上がってしまい、その後の樹脂塗布工程において樹脂部材17aを適切に塗布できなくなることを防ぐことができる。
この状態から、図11に示すように、樹脂部材17を塗布することで、樹脂部材17を効率よく被覆部15と被覆圧着部9との隙間に浸透させることができる。このため、この後の被覆圧着部9の圧着によって、確実に樹脂部材17によって、被覆部15と被覆圧着部9との隙間を埋めることができる。
ウレタンアクリルオリゴマー、アクリルモノマー、および光開始剤を主成分とする紫外線硬化と湿気硬化の硬化機構を持つ紫外線硬化型樹脂組成物を作成し、各種条件で端子付き電線に塗布した。この際、本組成物のオリゴマー成分、モノマー成分を調整して粘度の異なる樹脂部材を作成して、防食試験を実施した。
防食性能は、図12に示すように、水槽31に塩水33を貯留し、端子付き電線10(端子1)を浸漬した後、端子−電線間の抵抗変動を測定することで評価を行った。塩水33の濃度は、NaCl3.0±0.5%とした。また、端子1の浸漬深さは300±10mmとした。また、水没時間は24時間とし、水没後60±5℃で、95±5%RH雰囲気に48時間の環境で放置した後に、抵抗を測定し、塩水浸漬前の抵抗と比較した。なお、電線は、0.75sqサイズを用いた。
表1は、樹脂部材の粘度を変えて、被覆圧着前に樹脂部材を塗布した結果である。なお、以下の各実施例は、それぞれn=10で評価を行い、表中の、「防食性合否」については、n=10の全ての抵抗変動が、1.0mΩ以下であったものを「◎」とし、2.0mΩ以下であったものを「○」とした。また、n=10の一部の抵抗変動が2.0mΩを超えたものを「△」とし、n=10の全ての抵抗変動が、2.0mΩを超えたものを「×」とした。また、各樹脂部材の粘度は塗布時の粘度である。
Figure 0006928435
樹脂部材を被覆圧着前に塗布した場合には、樹脂部材の粘度が10mPa・s〜2000mPa・sの範囲において良好な結果となり、特に、樹脂部材の粘度が10mPa・s〜1000mPa・sの範囲においては、特に良好な結果となった。粘度が3000mPa・sのものは、樹脂部材が十分に隙間に浸透せずに、防食性が劣った。
一方、表2は、樹脂部材の粘度を変えて、被覆圧着後に樹脂部材を塗布した結果である。なお、各評価方法は表1と同様である。
Figure 0006928435
被覆圧着後に樹脂部材を塗布すると、樹脂部材の粘度によらず、防食性が悪い結果となった。
なお、他の径(0.5sq〜2.5sq)の導線に対しても評価を行ったところ、同様の結果となった。
以上説明したように、本実施形態によれば、樹脂部材17によって、端子1と被覆導線11との接続部を覆うため、効率良く防食効果を得ることができる。この際、被覆圧着前に樹脂部材17を塗布するため、被覆圧着後における被覆部15と被覆圧着部9との狭い隙間(特に、被覆部15の端部と導線露出部の境界部周辺における導線13と端子(圧着部5)との間の隙間)にも、確実に樹脂部材17を塗布することができる。このため、被覆部15と被覆圧着部9との隙間を伝い、被覆部15の端部と導線露出部の境界部から水が浸入することを防止することができる。したがって、被覆圧着部9の長手方向の少なくとも一部において、被覆部15と被覆圧着部9との間に、全周にわたって樹脂部材17が塗布された、高い防食性を有する端子付き電線を得ることができる。
また、被覆圧着前に樹脂部材17を硬化させることで、より深い部位まで紫外線を照射することができ、より確実に樹脂部材17を硬化させることができる。また、被覆圧着時に、樹脂部材17が飛散することを抑制することができる。
また、この際、硬化後の樹脂部材17の硬度が、被覆部15の硬度よりも低ければ、樹脂部材17が被覆圧着時に容易に変形し、被覆圧着部9および被覆部15の変形に追従して、隙間を埋めることができる。
また、被覆圧着後に樹脂部材17を硬化させることもできる。この場合には、被覆圧着時における、樹脂部材17の流動性が良好であるため、樹脂部材17を狭い隙間にも確実に塗布することができる。
また、樹脂部材17を塗布する前に、被覆圧着部を仮圧着して、形状を整えることで、樹脂部材17の流れ落ちなどを抑制することができる。
また、被覆圧着後にさらに樹脂部材17aを塗布することで、より確実に被覆部15と被覆圧着部9との隙間を埋めることができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………端子
3………端子本体
5………圧着部
7………導線圧着部
9………被覆圧着部
10………端子付き電線
11………被覆導線
13………導線
15………被覆部
17、17a………樹脂部材
31………水槽
33………塩水

Claims (8)

  1. 被覆導線と端子とが接続された端子付き電線の製造方法であって、
    前記端子は、前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、
    前記圧着部は、前記被覆導線の被覆部を圧着する被覆圧着部と、前記被覆部から露出する導線を圧着する導線圧着部とを有し、
    前記導線圧着部と前記導線を本圧着する第1圧着工程と、
    前記被覆圧着部における前記被覆部から前記導線圧着部の先端側の前記導線の露出部にわたって樹脂部材を塗布する樹脂塗布工程と、
    前記被覆圧着部と、前記樹脂部材が塗布された前記被覆部を本圧着する第2圧着工程と、
    をこの順に具備することを特徴とする端子付き電線の製造方法。
  2. 前記第2圧着工程の前に、前記樹脂部材を硬化させる樹脂硬化工程を具備することを特徴とする請求項1記載の端子付き電線の製造方法。
  3. 硬化後の前記樹脂部材の硬度が、前記被覆部の硬度よりも低いことを特徴とする請求項2記載の端子付き電線の製造方法。
  4. 前記第2圧着工程の後に、前記樹脂部材を硬化させる樹脂硬化工程を具備することを特徴とする請求項1記載の端子付き電線の製造方法。
  5. 前記樹脂部材の硬化前の粘度が、10〜2000mPa・sであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の端子付き電線の製造方法。
  6. 前記樹脂部材の硬化前の粘度が、10〜1000mPa・sであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の端子付き電線の製造方法。
  7. 前記第2圧着工程の後に、さらに樹脂部材を塗布する工程を具備することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の端子付き電線の製造方法。
  8. 前記樹脂塗布工程の前に、前記被覆圧着部と前記被覆部を仮圧着する仮圧着工程を具備することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の端子付き電線の製造方法。
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