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JP6926790B2 - タイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置 - Google Patents

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本発明は、空気入りタイヤを加硫する方法及び装置に関し、更に詳しくは、加硫室内のスチームが凝縮して生成されるドレンに起因する上下方向の温度差を小さくすると共に、安定した品質のタイヤを生産することを可能にしたタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置に関する。
空気入りタイヤを加硫する場合、金型内に回転軸が鉛直方向となるようにセットされたグリーンタイヤの内側にブラダーを挿入し、タイヤ内部の加硫室内に加熱加圧媒体としてスチームを充填すると共に金型を外部から加熱することで加硫を行うことが一般的である。このような加硫方法において、加硫室内に充填されたスチームが熱を奪われると、スチームの一部が凝縮してドレンが生成される。ドレンはスチームよりも冷め易いため、下側のタイヤサイドウォール部に相当する部位に溜まることにより、下側のタイヤサイドウォール部の温度上昇を阻害する。その結果、上側のタイヤサイドウォール部が高温となる一方で下側のタイヤサイドウォール部が低温となり、上下方向に温度差が発生する。そして、加硫工程における上下方向の温度差はタイヤ性能に悪影響を及ぼすのである。
このような問題を解決するために、加硫工程において加硫室内に滞留するドレンをタイヤ加硫装置の外部に排出することが提案されている。より具体的には、タイヤ加硫装置の中心機構にドレンを排出するための新たな排出機構を配設し、この排出機構を加硫時に駆動することにより、加硫室内のドレンをタイヤ加硫装置の外部に排出することが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
しかしながら、上述のような排出機構を設置した場合であっても、加硫工程においてドレンを完全に排出することは困難であり、残留したドレンの影響により上下方向の温度差を十分に解消することができないのが現状である。また、加硫工程を繰り返し行う中でドレンの残留量にバラツキが生じ易いため、安定した品質のタイヤを生産することも困難である。
特公昭61−22610号公報 特公平6−45144号公報
本発明の目的は、加硫室内のスチームが凝縮して生成されるドレンに起因する上下方向の温度差を小さくすると共に、安定した品質のタイヤを生産することを可能にしたタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明のタイヤ加硫方法は、該空気入りタイヤの内側にブラダーを挿入し、該ブラダーの内側に形成される加硫室内にスチームを充填して前記空気入りタイヤを加硫する方法において、前記空気入りタイヤの下側のサイドウォール部に相当する部位に前記ブラダーとは異なる加熱具を配置し、前記加硫室内で前記スチームの凝縮により生成されたドレンの中に少なくとも一部が浸った状態となるように前記加熱具を配置し、前記ドレンを前記加熱具で加熱しながら加硫を行うことを特徴とするものである。
また、上記目的を達成するための本発明のタイヤ加硫装置は、空気入りタイヤの外表面を成形する金型と、前記空気入りタイヤの内側に挿入されるブラダーと、該ブラダーの内側に形成される加硫室内に加熱加圧媒体としてスチームを供給する加熱加圧媒体供給手段とを備えたタイヤ加硫装置において、前記加硫室内に配設された加熱具を備え、前記加熱具は前記ブラダーとは異なるものであって前記空気入りタイヤの下側のサイドウォール部に相当する部位に配置され、前記加熱具は前記加硫室内で前記スチームの凝縮により生成されたドレンの中に少なくとも一部が浸った状態となるように配置されることを特徴とするものである。
本発明では、加硫室内にスチームを充填して空気入りタイヤを加硫するにあたって、加硫室内でスチームの凝縮により生成されたドレンを加熱具で加熱しながら加硫を行うことにより、ドレンの温度低下を抑制し、ドレンに起因する上下方向の温度差を小さくすることができる。また、ドレンの温度を加熱具により調整可能であるので、安定した品質を有するタイヤを生産することができる。
本発明において、加熱具は電気ヒーターであることが好ましい。他の形態として、加熱具は熱流体を通流させる管路であることが好ましい。或いは、加熱具は予め加熱された固体物であることが好ましい。このような加熱具はタイヤ加硫装置の加硫室内に容易に設置することができ、しかもドレンに対して十分な熱量を与えることが可能である。
本発明の実施形態からなるタイヤ加硫装置を示す子午線半断面図である。 図1のタイヤ加硫装置を示す赤道線断面図である。 本発明の他の実施形態からなるタイヤ加硫装置を示す子午線半断面図である。 図3のタイヤ加硫装置を示す赤道断面図である。 本発明の更に他の実施形態からなるタイヤ加硫装置(加熱具の待機状態)を示す子午線半断面図である。 図5のタイヤ加硫装置(加熱具による加熱状態)を示す赤道断面図である。 従来のタイヤ加硫方法(ドレン排出機構なし)における上側及び下側でのブラダー内面温度の変化を示すグラフである。 従来のタイヤ加硫方法(ドレン排出機構あり)における上側及び下側でのブラダー内面温度の変化を示すグラフである。 本発明のタイヤ加硫方法における上側及び下側でのブラダー内面温度の変化を示すグラフである。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は本発明の実施形態からなるタイヤ加硫装置を示すものである。
図1に示すように、このタイヤ加硫装置は、空気入りタイヤTの外表面を成形する金型10と、空気入りタイヤTの内側に挿入される筒状のブラダー20と、該ブラダー20の内側に形成される加硫室Vの中にスチーム等の加熱加圧媒体を供給する加熱加圧媒体供給手段30と、金型10を加熱する加熱手段40とを備えている。
金型10は、空気入りタイヤTのサイドウォール部を成形するための下側サイドプレート11及び上側サイドプレート12と、空気入りタイヤTのビード部を成形するための下側ビードリング13及び上側ビードリング14と、空気入りタイヤTのトレッド部を成形するための複数のセクター15とから構成され、その金型10の内側で空気入りタイヤTを加硫成形するようになっている。なお、金型10の構造は特に限定されるものではなく、図示のようなセクショナルタイプのモールドのほか、二つ割りタイプのモールドを使用することも可能である。
ブラダー20は、その下端部が下側ビードリング13と下側クランプリング21との間に把持され、その上端部が上側クランプリング22と補助リング23との間に把持されている。図1に示すような加硫状態において、ブラダー20は空気入りタイヤTの径方向外側に向かって拡張した状態にあるが、加硫後に空気入りタイヤTを金型10内から取り出す際には上側クランプリング22が上方に移動し、それに伴ってブラダー20が空気入りタイヤTの内側から抜き取られるようになっている。
加熱加圧媒体供給手段30は、所定の温度及び圧力に調整されたスチームと、所定の圧力に調整された窒素ガスとを加熱加圧媒体として適時供給するようになっている。このような加熱加圧媒体が加硫室V内に導入されると、その圧力に基づいて空気入りタイヤTが内側から金型10の内面に向かって押圧される。なお、加熱加圧媒体としてスチームのみを用いることも可能である。
加熱手段40は、金型10を構成する下側サイドプレート11、上側サイドプレート12及びセクター15に付設されていて、加熱手段40により金型10を加熱することにより、空気入りタイヤTの加硫が行われるようになっている。加熱手段40の配置及び構造は特に限定されるものではない。
このように構成されるタイヤ加硫装置において、図1及び図2に示すように、加硫室V内には加熱具1が配設されている。本実施形態において、加熱具1は複数個の電気ヒーター2から構成されている。各電気ヒーター2は、コイル状をなす加熱部と、該加熱部に接続された一対のリード線とを有している。電気ヒーター2の加熱部は、加硫室V内で鉛直方向に最も低くなる位置、即ち、下型のタイヤサイドウォール部に相当する部位に配置され、スチームSが凝縮して生成されるドレンDの中に少なくとも一部が浸った状態となる。また、電気ヒーター2のリード線はタイヤ加硫装置の外部に引き出され、不図示の電源に接続されている。電気ヒーター2のヒーター容量は、例えば0.3kW〜1.5kWの範囲にあると良い。
上述したタイヤ加硫装置を用いて空気入りタイヤTを加硫する場合、金型10内に未加硫の空気入りタイヤTを投入し、その空気入りタイヤTの内側にブラダー20を挿入し、加熱加圧媒体供給手段30により加硫室V内にスチームSを含む加熱加圧媒体を導入すると共に加熱手段40により金型10を外側から加熱することで空気入りタイヤTを加硫する。
加硫工程において、加硫室V内に充填されたスチームSが熱を奪われると、スチームSの一部が凝縮してドレンDが生成される。ドレンDは下側のタイヤサイドウォール部に相当する部位に滞留し、加熱具1と接触することになる。そして、加硫室V内にスチームSを充填して空気入りタイヤTを加硫する際に、電気ヒーター2からなる加熱具1でドレンDを加熱しながら加硫を行うことにより、ドレンDの温度低下を抑制し、ドレンDに起因する上下方向の温度差を小さくすることができる。
つまり、従来は、ドレンDをタイヤ加硫装置の外部に排出することでドレンDに起因して生じる温度差を解消することが行われているが、本発明では、ドレンDをそのまま加硫室V内に残留させる一方で、そのドレンDを加熱具1により積極的に加熱することでドレンDに起因して生じる上下方向の温度差を解消するのである。しかも、ドレンDの温度は加熱具1により調整可能であり、加硫毎に上下方向の温度差が変動することはないので、空気入りタイヤTの品質を安定化することできる。
ドレンDを加熱具1により加熱するにあたって、ドレンDの温度がスチームSの温度以下となるように加熱温度を調整すると良い。このようにドレンDの温度をスチームSの温度以下した場合、加硫室V内の圧力に影響を与えることなくドレンDとスチームSとの間の温度差を小さくすることができる。特に、スチームSの温度と加熱具1による加熱温度との差は5℃以下とすることが望ましい。
図3及び図4は本発明の他の実施形態からなるタイヤ加硫装置を示すものである。図3及び図4において、図1及び図2と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、図3及び図4に示すように、加硫室V内に配設された加熱具1は、スチーム等の熱流体を通流させる管路3から構成されている。この管路3は、耐熱性と柔軟性を有するシリコーン樹脂等の材料からチューブ状に成形されている。管路3は、加硫室V内で鉛直方向に最も低くなる位置、即ち、下型のタイヤサイドウォール部に相当する部位にタイヤ周方向に沿って配置され、スチームSが凝縮して生成されるドレンDの中に少なくとも一部が浸った状態となる。また、管路3の両端部はタイヤ加硫装置の外部に引き出され、不図示の熱流体の供給源に接続されている。
上述した実施形態では、加硫室V内にスチームSを充填して空気入りタイヤTを加硫する際に、熱流体を通流させた管路3からなる加熱具1でドレンDを加熱しながら加硫を行うことにより、ドレンDの温度低下を抑制し、ドレンDに起因する上下方向の温度差を小さくすることができる。この場合も、加硫毎に上下方向の温度差が変動することはないので、空気入りタイヤTの品質を安定化することできる。
図5及び図6は本発明の更に他の実施形態からなるタイヤ加硫装置を示すものである。図5及び図6において、図1及び図2と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、図5及び図6に示すように、加硫室V内に配設された加熱具1は、予め加熱された固体物4から構成されている。この固体物4は、金属や鉱物から構成され、例えば球形状に成形されている。固体物4は滑車5を介して牽引自在のワイヤ6に連結されており、ワイヤ6の操作により図5に示す待機位置と図6に示す加熱位置とに移動自在になっている。下側クランプリング21上には傾斜面を有するガイド部材7が設置されており、このガイド部材7に案内されて固体物4が円滑に移動するようになっている。また、固体物4の待機位置には加熱装置8が配設されており、この加熱装置8が待機位置において固体物4を加熱するようになっている。
この場合、加硫開始前の段階では、固体物5を図5に示す待機位置に配置し、その位置で固体物5を加熱装置8により事前に加熱する。そして、加硫開始後、加硫室V内で鉛直方向に最も低くなる位置、即ち、下型のタイヤサイドウォール部に相当する部位にスチームSの凝縮により生成されたドレンDが溜まり始めたとき、図6に示すように、予め加熱された固体物4をドレンDの中に落とし込む。これにより、予め加熱された固体物4でドレンDを加熱する。
上述した実施形態では、加硫室V内にスチームSを充填して空気入りタイヤTを加硫する際に、予め加熱された固体物4からなる加熱具1でドレンDを加熱しながら加硫を行うことにより、ドレンDの温度低下を抑制し、ドレンDに起因する上下方向の温度差を小さくすることができる。この場合も、加硫毎に上下方向の温度差が変動することはないので、空気入りタイヤTの品質を安定化することできる。
従来例1:
加硫室内にスチームを充填した状態で空気入りタイヤを加硫するにあたって、加硫室内でスチームの凝縮により生成されたドレンをそのままにして加硫を行った。その際、上側及び下側のタイヤサイドウォール部の位置でのブラダー内面温度と加硫時間との関係は図7の通りであった。
従来例2:
加硫室内にドレン用の排出機構を備えたタイヤ加硫装置を使用し、加硫室内にスチームを充填した状態で空気入りタイヤを加硫するにあたって、加硫室内でスチームの凝縮により生成されたドレンを排出機構により排出しながら加硫を行った。その際、上側及び下側のタイヤサイドウォール部の位置でのブラダー内面温度と加硫時間との関係は図8の通りであった。
実施例1:
加硫室内にドレン用の加熱具を備えたタイヤ加硫装置を使用し、加硫室内にスチームを充填した状態で空気入りタイヤを加硫するにあたって、加硫室内でスチームの凝縮により生成されたドレンを加熱具により加熱しながら加硫を行った。その際、上側及び下側のタイヤサイドウォール部の位置でのブラダー内面温度と加硫時間との関係は図9の通りであった。
図7に示すように、従来例1のタイヤ加硫方法では、加硫工程の中盤から下側のブラダー内面温度が徐々に低下していた。また、図8に示すように、従来例2のタイヤ加硫方法では、加硫時に排出機構を用いてドレンを排出しているため、下側のブラダー内面温度の低下が従来例1に比べて少なくなっていた。これに対して、図9に示すように、実施例1のタイヤ加硫方法では、加硫時にドレンを加熱具で加熱しているため、下側のブラダー内面温度の低下が従来例2に比べて更に少なくなっていた。
1 加熱具
2 電気ヒーター
3 熱流体を通流させる管路
4 予め加熱された固体物
10 金型
11 下側サイドプレート
12 上側サイドプレート
13 下側ビードリング
14 上側ビードリング
15 セクター
20 ブラダー
30 加熱加圧媒体供給手段
40 加熱手段
D ドレン
S スチーム
V 加硫室

Claims (8)

  1. 金型内に未加硫の空気入りタイヤを投入し、該空気入りタイヤの内側にブラダーを挿入し、該ブラダーの内側に形成される加硫室内にスチームを充填して前記空気入りタイヤを加硫する方法において、前記空気入りタイヤの下側のサイドウォール部に相当する部位に前記ブラダーとは異なる加熱具を配置し、前記加硫室内で前記スチームの凝縮により生成されたドレンの中に少なくとも一部が浸った状態となるように前記加熱具を配置し、前記ドレンを前記加熱具で加熱しながら加硫を行うことを特徴とするタイヤ加硫方法。
  2. 前記加熱具が電気ヒーターであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫方法。
  3. 前記加熱具が熱流体を通流させる管路であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫方法。
  4. 前記加熱具が予め加熱された固体物であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫方法。
  5. 空気入りタイヤの外表面を成形する金型と、前記空気入りタイヤの内側に挿入されるブラダーと、該ブラダーの内側に形成される加硫室内に加熱加圧媒体としてスチームを供給する加熱加圧媒体供給手段とを備えたタイヤ加硫装置において、前記加硫室内に配設された加熱具を備え、前記加熱具は前記ブラダーとは異なるものであって前記空気入りタイヤの下側のサイドウォール部に相当する部位に配置され、前記加熱具は前記加硫室内で前記スチームの凝縮により生成されたドレンの中に少なくとも一部が浸った状態となるように配置されることを特徴とするタイヤ加硫装置。
  6. 前記加熱具が電気ヒーターであることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ加硫装置。
  7. 前記加熱具が熱流体を通流させる管路であることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ加硫装置。
  8. 前記加熱具が予め加熱された固体物であることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ加硫装置。
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