JP6917123B2 - 太陽電池モジュール用の保護シート、及び、それを用いた太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
先ず、本発明の太陽電池モジュール用の保護シート1を用いた両面採光型太陽電池モジュール10について説明する。両面採光型太陽電池モジュール10は、図1に示すように、両面採光型太陽電池モジュール10の両面から、それぞれ、入射光5A及び5Bをモジュール内に採光し、両面採光型の太陽電池素子4に到達させることにより、発電を行うものである。両面採光型太陽電池モジュールには、太陽電池素子4が視認可能なシースルー型のものもあるが、近年は、太陽電池モジュールの最表面が着色されていることにより、所望の色彩、模様、文字等の情報からなる意匠性に優れた外観を備えるものが、強く求められるようになっている。
両面採光型太陽電池モジュール10は、上記の各構成部材を例えば、真空熱ラミネート加工により加熱圧着して一体化することにより製造することができる。この際のラミネート温度は、130℃以上190℃以下の範囲内とすることが好ましい。又、ラミネート時間は、5分〜60分の範囲内が好ましく、特に8分〜40分の範囲内が好ましい。
[層構成概略]
図3に示す通り、保護シート1は、透明基材樹脂層11と、透明基材樹脂層11の表面に形成される赤外線透過層12と、を含んで構成される。赤外線透過層12は、図4に示すように透明基材樹脂層11の両面に形成されていてもよい(12A、12B)。
赤外線透過層12は、透明基材樹脂層11の表面に、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過する赤外線透過型の有色顔料を含むインキをスクリーン印刷等の各種印刷方法によってコーティングすることによって形成することができる。尚、この有色インキに硬化剤等を適量配合することにより有色の接着剤として、例えば、透明基材樹脂層11と透明密着樹脂層13の層間に配置することによって赤外線透過層12を構成することもできる。又、赤外線透過層12は、この層を形成するための透明性の樹脂に赤外線透過型の顔料を練り込んで有色樹脂シートを形成し、これを赤外線透過層12として透明基材樹脂層11に積層したものであってもよい。近赤外線を透過する赤外線透過型の有色顔料の詳細については後述する。
赤外線透過層12の色味は、上記の有色顔料の混色により、様々な色味とすることができるが、以下、赤外線透過層6に、好ましい黒色系の意匠性と、発電効率の向上に寄与しうる赤外線透過性を付与することができる赤外線透過性暗色インキにについて、その詳細を説明する。この赤外線透過性暗色インキは、上記の茶色系顔料と、フタロシアニン系顔料とからなる暗色顔料を含むものである。このような暗色顔料を含んでなる顔料成分を含有する赤外線透過性暗色インキは、外観が暗色であって、赤外線透過率が高い優れたインキであることは後に実施例において実証されている通りである。
透明基材樹脂層11は、両面採光型太陽電池モジュールにおいて、入射光の太陽電池素子4への到達を阻害しないために、可視光域及び近赤外線領域の光線を透過する透明樹脂材料を主たる材料とするものであることが好ましい。透明基材樹脂層11を形成する材料樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合体)等のフッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂等の樹脂シート、或いは、ポリカーボネートからなる樹脂シートを好ましく用いることができる。透明基材樹脂層11を「可視光域及び近赤外線領域の光線を透過」する層とすることによって、両面採光型太陽電池モジュールの発電効率の低下を回避することができる。尚、本明細書における「透明」とは「可視光域及び近赤外線領域の光線を透過」可能であることを言い、より詳しくは、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率が80%以上であることを意味するものとする。尚、保護シート1の赤外線透過層12は、上記の通り、紫外線遮断層としても機能するため、例えば、透明基材樹脂層11の材料として特に紫外線劣化し易いポリカーボネートを用いた場合であっても、紫外線吸収剤を添加することなく、或いは、ごく微少な添加で、透明基材樹脂層11の紫外線による黄変等の樹脂劣化を回避することができる。
透明密着樹脂層13は、透明基材樹脂層11と同等の光線透過性を有するものであることが好ましい。又、透明密着樹脂層13は、例えば、エチレン−酢酸ビニルアルコール共重合体樹脂(EVA樹脂)、又はポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等、封止材との密着を強化するために、封止材を構成する樹脂と同種の樹脂で構成することができる。
保護シート1は、例えば赤外線透過層12を、赤外線透過性暗色インキを透明基材樹脂層11の表面に印刷法等により形成した後に、更に透明密着樹脂層13をその上にドライラミネート加工により一体化することにより製造することができる。ドライラミネート法に用いる接着剤は、透明接着剤、又は、上記の有色顔料を含む赤外線透過性を有する有色の接着剤によることが好ましい。
本発明の保護シート1は、その最表面に配置される赤外線透過層12を、複数種の異なる色彩を有する有機系顔料(例えば、図5において、暗色系顔料121と、黄色系顔料122等)からなるインキ等を、その表面における所定の部分領域毎に使い分けて形成することもできる。これにより、赤外線透過層12の表面、即ち、保護シート1の最表面に、視認可能な文字、図形、又は模様等の視覚情報を形成することができる。例えば、図5に示すような、視覚情報がその表面に形成されている保護シート1を用いて構成された両面採光型太陽電池モジュール10は、屋外において、所望の発電効率を維持し発電モジュールとしての基本機能を発揮しながら、同時に、大型のディスプレー等としての役割も果たすことができる。
窒素雰囲気下、攪拌機、窒素ガス導入管を備えたフラスコに、エチレングリコール(32.3質量部)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(270.8質量部)、1,6−ヘキサンジオール(122.9質量部)、アジピン酸(228.1質量部)、イソフタル酸(664質量部)を加え、180℃から220℃にて窒素にてバブリングさせ、酸価2mgKOH/gまで反応させ、酢酸エチル(860質量部)を加え、ポリエステルジオールHの50%溶液を得た。得られた樹脂の水酸基価は、32mgKOH/gであり、数平均分子量は約3500であった。
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDIアダクト:2官能)とイソシアヌレート変性のイソホロンジイソシアネート(ヌレート変性IPDI)の混合物を使用した。上記アダクト変性HDI及びヌレート変性IPDIの混合比(HDIアダクト)/(ヌレート変性IPDI)を6:4(質量比)とした。
顔料:茶色系顔料(ベンズイミダゾロン系顔料(PigmentBrown25、粒径0.08μm))、フタロシアニン系顔料(非晶質型フタロシアニン系顔料青(PigmentBlue15、粒径0.15〜0.20μm))
溶剤:酢酸エチル
主剤(固形分率50質量%)、上記硬化剤(固形分率10質量%)、上記茶色系顔料(ベンズイミダゾロン系顔料)、上記フタロシアニン系顔料(非晶質型フタロシアニン系顔料)(ベンズイミダゾロン系顔料とフタロシアニン系顔料との含有量比が52.5:47.5、樹脂成分100質量部に対して顔料成分が35質量部)を、上記溶剤に溶解させて調整した。
有機系顔料を以下のようにし、固形分塗布量10g/m2以上20g/m2以下(硬化後膜厚10μm以上20μm以下)となるように調整した以外はインキ1同様に調整した。
顔料:ジオキサジン化合物16.7質量%(樹脂成分100質量部に対して顔料成分が20質量部)
本実施形態に係る赤外線透過性暗色インキを用いた保護シートの近赤外線の反射性能を評価するために、実施例及び比較例として、以下に示す方法で、反射性測定用試料を作製した。
透明密着樹脂層を形成するものとして厚さ60μmのポリエチレンを用いた。
[実施例1]
上記の透明基材樹脂層に、赤外線透過性暗色インキ1をグラビアコートで塗布し、厚さ5μmの赤外線透過層を形成した。その表面上に、厚み2.5μm(乾燥状態)の透明接着層を介して上記の透明密着樹脂層を積層し、45℃以上55℃以下、168時間のエージング処理をして過熱硬化させることにより保護シート(実施例1)を作成した。
上記の透明基材樹脂層に、赤外線透過性暗色インキ2をグラビアコートで塗布し、厚さ12μmの赤外線透過層を形成した。その表面上に、厚み12μm(乾燥状態)の透明接着剤層を介して上記の透明密着樹脂層を積層し、45℃〜55℃、168時間のエージング処理をして過熱硬化させることにより保護シート(実施例2)を作成した。
上記の透明基材樹脂層に、赤外線透過性暗色インキ1における顔料を上記顔料に替えてカーボンブラックとした顔料とした他は、実施例1と同条件で保護シート(比較例1)を作成した。
分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「U−4100」)を用いて、実施例1及び2の保護シートについて、赤外線透過層の側から光を入射したときの、紫外線(295nm-400nm)及び近赤外線(750−1500nm)の各領域における平均の光線透過率を測定した。測定結果を表1に示した。
このような保護シート1によれば、モジュールの両面からの採光が必要な両面採光型太陽電池モジュール10において、好ましい発電効率を維持したまま、様々な意匠上の要求に対応することができる。よって、保護シート1は、両面採光型太陽電池モジュール10の意匠性と発電効率の向上に寄与することが出来る有色の保護シートである。
このような保護シート1は、赤外線透過層12が併せ持つ紫外線に対するバリア性により、紫外線吸収剤を添加せずに、保護シート1を紫外線による各樹脂層の劣化を回避することができる。紫外線吸収剤を添加する必要がないので、同剤の添加による光学特性や基材密着性の低減のリスクも未然に回避することができる。又、コスト面でも有利である。
これにより、保護シート1を用いた両面採光型太陽電池モジュール10を発電モジュールとしての機能を発揮しながら、同時に情報伝達装置としての役割を果たすものとすることが実現できる。近赤外線を透過する上述の各種の有色顔料を用いることにより、発電効率を良好に保持したまま、太陽電池モジュール10の意匠の自由度を大きく広げることができる。
例えば、このような保護シートを、両面採光型太陽電池モジュール10の一方の面に配置することにより、当該一方の面の意匠性を向上させ、他方の面においては、太陽電池素子の隙間から、この有色の層が視認される態様とすることによって、他方の面における意匠性をも保持することができる。(6)の保護シートの太陽電池モジュールへの配置は、特に赤外線透過層12の色みと太陽電池素子4の表面の色みが近似しているとき顕著な効果を発揮する。
これにより、保護シート1が、封止材等の他の構成部材と、赤外線透過層12が対面する態様で太陽電池モジュールとしての一体化される場合であっても、当該層間の密着強度を極めて良好な強度とすることができる。
11 透明基材樹脂層
12 赤外線透過層
13 透明密着樹脂層
2、3 封止材
4 太陽電池素子
5、5A、5B 入射光
10 両面採光型太陽電池モジュール
Claims (8)
- 透明基材樹脂層と、
前記透明基材樹脂層の両面に有機系顔料を含んで形成されている有色の層であって、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過する赤外線透過層と、
全光線を透過する透明密着樹脂層と、
を含む複数の層を積層してなり、
一方の最表面には前記赤外線透過層のうちの一方が配置されていて、
他方の最表面には前記透明密着樹脂層が配置されていて、
前記複数の層は、いずれも前記近赤外線を50%以上透過する層である、
太陽電池モジュール用の保護シート。 - 前記透明基材樹脂層の一方の面に形成されている赤外線透過層は、赤外線を透過する有色接着剤層であって、
前記透明密着樹脂層は、前記有色接着剤層を介して透明基材樹脂層に接合されている、
請求項1に記載の太陽電池モジュール用の保護シート。 - 前記複数の層のうちのいずれの層にも、紫外線吸収波長域が295nm以上400nm以下の範囲である紫外線吸収剤を含有せず、前記赤外線透過層の295nm以上400nm以下の紫外線の透過率の平均値が12.0%以下である請求項1又は2に記載の保護シート。
- 前記有機系顔料が、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリン系顔料、キナクリドン系顔料、及び、茶色系顔料から選ばれる一種又は複数種の顔料であって、
前記茶色系顔料は、ベンズイミダゾロン系顔料、4−[(2,5−ジクロロフェニル)アゾ]−3−ヒドロキシ−N−(2,5−ジメトキシフェニル)−2−ナフタレンカルボキサミド、1−[(4−ニトロフェニル)アゾ]−2−ナフタレノール、ビス[3−ヒドロキシ−4−(フェニルアゾ)−2−ナフタレンカルボン酸]銅塩、C.I.PigmentBrown7、N,N’−ビス(2,4−ジニトロフェニル)−3,3’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボンサンジイミド、Δ2,2’(1H,1’H)−ビナフト[2,1−b]チオフェン−1,1’−ジオン及びN、N’−(10,15,16,17−テトラヒドロ−5,10,15,17−テトラオキソ−5H−ジナフト[2,3−a:2’3’−i]カルバゾール−4,9−ジイル)ビス(ベンズアミド)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の顔料である、請求項1から3のいずれかに記載の保護シート。 - 前記有機系顔料が、前記茶色系顔料と、前記フタロシアニン系顔料と、からなる暗色顔料である請求項4に記載の保護シート。
- 前記赤外線透過層の表面には、複数種の異なる色彩を有する前記有機系顔料によって視認可能に形成されている文字、図形、又は模様が形成されている請求項1から5のいずれかに記載の保護シート。
- 請求項1から6のいずれかに記載の保護シートと、封止材と、両面採光型の太陽電池素子と、が一体化されている両面採光型太陽電池モジュール。
- 両最外面に前記保護シートがそれぞれ積層されている請求項7に記載の両面採光型太陽電池モジュール。
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