以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
2.第2の実施形態
3.第3の実施形態
4.ハードウェア構成例
5.まとめ
<<1.第1の実施形態>>
本実施形態は、外耳道の入り口付近に配置される音響情報取得部を有する音響処理装置(耳穴開放デバイス)によるノイズキャンセル処理に関する。
<1.1.技術的課題>
近年では、常時装着することが想定される様々なウェアラブルデバイスが開発されている。例えば、近年、装着状態において耳穴(外耳道の入り口)を密閉しない耳穴開放デバイスが登場した。耳穴開放デバイスは、いわゆるイヤホン装置の一種であり、イヤホン装置と同様にユーザに装着されて使用される。ただし、耳穴開放デバイスは、装着状態において耳穴を密閉しないので、非装着時と同等の周囲音の聴取特性を実現する。しかし、耳穴開放デバイスでは、耳がイヤーパッド等により密閉されないので、パッシブな遮音によるノイズキャンセルは期待できない。従って、耳穴開放デバイスに、アクティブ処理によるノイズキャンセル機能が付加されることが望ましい。しかしながら、上記特許文献1及び2では、密閉型のイヤホン/ヘッドホンにおけるノイズキャンセル処理について開示されているのみであった。
そこで、本実施形態では、耳穴開放型デバイスに適したアクティブ処理によるノノイズキャンセル処理について開示する。
<1.2.耳穴開放デバイスの外観構成>
図1は、本実施形態に係る耳穴開放デバイスの外観構成の一例を説明するための図である。図1に示すように、耳穴開放デバイス100は、聴取者(即ち、ユーザ)の片耳に装着されて用いられる。図1では、一例として右耳に装着された耳穴開放デバイス100の外観を示している。Y軸は水平方向前方(目の方向)を正とする座標軸であり、X軸は水平方向のうち人の左手側を正とする座標軸であり、Z軸は鉛直方向を負とする座標軸である。以降の図においても、これらの座標軸を用いるものとする。
図1に示すように、耳穴開放デバイス100は、音響を出力(発生)する音響出力部110と、音響出力部110により発生される音響を一端121から取り込む音導部120と、音導部120を他端122付近で保持する保持部130を備えている。音導部120は、中空の管材から成り、その両端は共に開放端である。音導部120の一端121は、音響出力部110からの発生音の音響入力孔であり、他端122はその音響出力孔である。従って、一端121が音響出力部110に取り付けられることで、音導部120は片側開放状態となっている。
保持部130は、外耳道の入り口付近(例えば、珠間切痕)と係合して、音導部120の他端122の音響出力孔が外耳道の奥側を向くように、音導部120をその他端122付近で支持する。音導部120の少なくとも他端122付近の外径は、耳穴(外耳道5の入り口)の内径よりも小さくなるように形成されている。従って、音導部120の他端122が保持部130によって外耳道の入り口付近で保持されている状態でも、聴取者の耳穴を塞ぐことはない。すなわち、耳穴は開放されている。耳穴開放デバイス100は、典型的なイヤホンとは異なり、耳穴開放型のイヤホンであると言える。
また、保持部130は、音導部120を保持した状態でも、耳穴を外界に開放する開口部131を備えている。図1に示した例では、保持部130はリング状の構造体であり、リング内側方向へ設けられた棒状の支持部材132がリング中心付近で合わさる部分に音響情報取得部140が設けられており、リング状構造体のそれ以外の部分はすべて開口部131となっている。なお、保持部130は、リング状構造に限定されるものではなく、中空構造を備えていれば、音導部120の他端122を支持し、音響情報取得部140を設けられる任意の形状でよい。
管状の音導部120は、音響出力部110から発生される音響をその一端121から管内に取り込むと、その空気振動を伝搬して、保持部130によって外耳道の入り口付近に保持された他端122から外耳道に向けて放射して、鼓膜に伝える。
上述したように、音導部120の他端122付近を保持する保持部130は、外耳道の入り口(耳穴)を外界に開放する開口部131を備えている。従って、耳穴開放デバイス100を装着した状態でも、聴取者の耳穴が塞がれることはない。聴取者は、耳穴開放デバイス100を装着して音響出力部110から出力される音響を聴取している間も、開口部131を介して周囲音を十分に聴取することができる。
また、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100は、耳穴を開放しているが、音響出力部110からの発生音(即ち、再生音)の外部への漏れを低減することができる。なぜならば、音導部120の他端122が外耳道の入り口付近で外耳道の奥を向くように取り付けられ、音響出力部110の出力が小さくても十分な音質を得ることができるからである。また、音導部120の他端122から放射される空気振動の指向性も、音漏れの防止に寄与し得る。
音導部120は、中間部分に、耳介の背面側から正面側に折り返す屈曲形状を有している。この屈曲部分は、開閉構造を有するピンチ部123となっており、ピンチ力を発生して耳垂を挟持することで、耳穴開放デバイス100の聴取者への装着を維持することが可能である。
リング状の保持部130のリング中心付近に設けられる音響情報取得部140は、鼓膜と反対側を向いて設けられる。音響情報取得部140は、典型的には音響入力部(即ち、マイク)を含み、周囲音を主に検出(即ち、収音)する。即ち、音響入力部は、外耳道の奥側を向いて配置される他端122と逆方向を向いて設けられる。そのため、音響入力部による収音結果への、他端122から出力される音響出力部110からの発生音の影響が軽減される。
音響情報取得部140は、ノイズキャンセルのためのいわゆるエラーマイクとして機能し、音響情報取得部140による検出結果はエラー信号として扱われる。音響情報取得部140が耳穴付近、即ち鼓膜付近に配置されるので、高いノイズキャンセル性能が期待される。
なお、図1に示した耳穴開放デバイス100は、右耳に装着されることを想定して構成されているが、左耳装着用の耳穴開放デバイス100は、これとは左右対称に構成される。また、耳穴開放デバイス100は、右耳用と左耳用との両方を含む両耳用として構成されてもよい。両耳用に構成される場合、右耳用の耳穴開放デバイス100と左耳用の耳穴開放デバイス100とが互いに分離独立して構成され、相互に通信してもよい。
<1.3.耳穴開放デバイスの内部構成>
図2は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100の内部構成の一例を示す図である。図2に示すように、耳穴開放デバイス100は、音響出力部110、音響情報取得部140、及び制御部150を含む。
・音響出力部110
音響出力部110は、音響信号に基づいて音響を出力する機能を有する。音響出力部110は、ドライバとも称され得る。ドライバ110は、信号処理部151から出力された出力信号に基づいて音響を空間に出力する。
・音響情報取得部140
音響情報取得部140は、音響情報を取得する機能を有する。音響情報取得部140は、音響入力部141及び鼓膜音圧取得部142を含む。
音響入力部141は、周囲音を検出するマイクロホン(以下、単にマイクとも称する)を含み、マイクによる収音結果を示す音響信号を生成する。即ち、音響情報は、マイクによる収音結果を示す音響信号であってもよい。鼓膜音圧取得部142は、鼓膜の音圧を推定して、鼓膜の音圧情報を生成する。即ち、音響情報は、鼓膜の音圧情報であってもよい。鼓膜音圧取得部142は、例えば鼓膜の振動を測定して鼓膜音圧を直接的に推定する。鼓膜音圧取得部142の構成については、後に詳しく説明する。
なお、鼓膜音圧は、直接的に測定されなくてもよい。例えば、鼓膜音圧は、外耳道入り口付近の音圧を以て近似されてもよい。図1に示したように、音響入力部141(音響情報取得部140)は外耳道の入り口付近に保持されるので、音響入力部141により生成される音響信号も、鼓膜音圧を示す情報として捉えることが可能である。
・制御部150
制御部150は、演算処理装置及び制御装置として機能し、各種プログラムに従って耳穴開放デバイス100による処理全般を制御する。制御部150は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)、DSP(Demand-Side Platform)等の電子回路によって実現される。なお、制御部150は、使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、及び適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。
図2に示すように、制御部150は、信号処理部151、動作制御部153及び認証部155を含む。
信号処理部151は、音響情報取得部140により取得された音響情報(音響信号又は鼓膜の音圧情報)に基づいて、ノイズを対象とするノイズキャンセル信号を生成する機能を有する。例えば、信号処理部151は、音響情報をエラー信号としてFB方式又はFF方式のノイズキャンセル処理を行い、ノイズキャンセル信号を生成する。信号処理部151は、ノイズキャンセル信号に基づいて音響信号(以下、出力信号とも称する)を生成し、音響出力部110に出力に出力する。出力信号は、ノイズキャンセル信号そのままであってもよいし、音源から取得された音楽信号等の他の音響信号とノイズキャンセル信号とが合成された合成信号であってもよい。信号処理部151は、図8〜図13等を参照して説明するノイズキャンセル処理のための各種構成要素を含む。例えば、信号処理部151は、ノイズキャンセル信号を生成するための各種フィルタ回路、フィルタ回路を適応的に制御するための適応制御部、信号を合成するための加算器、並びに後述する自声抽出部、及び内部モデル等を含む。また、信号処理部151は、アンプ、ADC(Analog Digital Converter)及びDAC(Digital Analog Converter)等の回路も含む。信号処理部151は、ノイズキャンセリング処理に加えて、音響情報取得部140により取得された音響情報(音響信号又は鼓膜の音圧情報)に含まれる音声情報の高域をより強調したり、残響を付加したりする等の処理を行ってもよい。これにより、周囲の音を聞き取りやすくすることができる。即ち、本実施形態に係る技術は、開放空間におけるノイズキャンセリング技術、又は補聴器にも適用可能である。
動作制御部153は、耳穴開放デバイス100の動作モードを制御する機能を有する。例えば、動作制御部153は、耳穴開放デバイス100の機能の一部又は全部を停止させたり起動させたりする。
認証部155は、耳穴開放デバイス100を装着したユーザを識別し、認証する機能を有する。
<1.4.耳穴開放デバイスの装着態様>
図3は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100を用いたノイズキャンセル処理の概要を説明するための図である。図3では、耳穴開放デバイス100を左耳に装着したユーザの頭部の、外耳道における断面図が示されている。図3に示すように、ノイズNは、音響情報取得部140に到達すると共に、開口部131を通過して、外耳道5を通って鼓膜9に到達する。耳穴開放デバイス100は、音響情報取得部140により取得されたノイズNに基づいてノイズキャンセル信号を生成する。音響出力部110は、ノイズキャンセル信号に基づいて生成される音響信号に基づいて音響を出力する。音響出力部110から出力された音響は、音導部120を伝搬して他端122から放出され、ノイズNをキャンセルする。
図3に示すように、音響情報取得部140の位置は、外耳道5の入り口付近、即ち鼓膜9付近である。このため、マイク141は、鼓膜9付近の音響を収音することができる。マイク141をキャンセルポイントとするノイズキャンセル処理が行われる場合には、高いノイズキャンセル性能が実現される。また、鼓膜音圧取得部142は、鼓膜9付近から鼓膜9の音圧情報を取得することができる。これにより、音圧情報の精度が高まるので、ノイズキャンセル性能の向上に寄与することができる。
保持部130は、音響情報取得部140と音響出力部110から出力される音響の出力孔である他端122との相対的位置関係を維持する。即ち、音響出力部110と音響情報取得部140との間の空間の特性(後述する特性H1)が固定化される。これにより、ノイズキャンセル性能を安定化させることができる。なお、相対的位置関係の維持は、保持部130が音導部120と音響情報取得部140とを共に保持することにより、実現される。
続いて、図4〜図7を参照して、耳穴開放デバイスの装着位置について説明する。以下では、耳穴開放デバイス100に、音響情報取得部140として、マイク141が搭載されるものとして説明する。
図4は、人の典型的な耳の構造を説明するための図である。図4に示すように、人の耳1において耳介2は特有の凹凸を形づくり、様々な方向からの音響を反射して外耳道5に導く。外耳道5は、音響の通路であり、外耳道5を通過した音響は外耳道5の奥にある鼓膜に到達する。外耳道5周りには、耳輪脚3、耳甲介腔4、耳珠6、珠間切痕7及び対珠8がある。
図5は、人の耳に到来するノイズNを説明するための図である。図5に示すように、ノイズNは、水平方向のあらゆる方向から人の耳1に到来する。図5では左耳について示されているが、右耳についても同様である。マイク141の配置によっては、マイク141により収音されるノイズは、ノイズの到来方向に依存した周波数特性を持つ。例えば、ユーザの正面(即ち、Y軸正側)から到来したノイズと、背面(即ち、Y軸負側)から到来したノイズとで、耳介2から受ける反射の影響は異なる。そのため、マイク141の配置によっては、特定の方向からのノイズを十分にキャンセルできても、別の方向からのノイズを十分にキャンセルできない事象が発生し得る。このことは、水平方向のみに限定されず、仰角方向についても同様である。
図6は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100のマイク141の配置を説明するための図である。図6では、外耳道の様子を示す断面図が示されている。図6に示すように、外耳道5は、第1カーブ11及び第2カーブ12の各々で屈曲するS字形状を有し、外耳道5の奥に鼓膜9がある。耳珠6よりも鼓膜9側の空間であれば、図5を参照して上記説明したノイズの到来方向への周波数特性の依存性は比較的少ないと考えられる。そのため、マイク141は、耳珠6より鼓膜9側の空間に配置されることが望ましい。さらに言えば、マイク141は、外耳道5の内部、即ち、耳甲介腔4と外耳道5との境界19より鼓膜9側の空間に配置されることが望ましい。これにより、特に高いノイズキャンセル性能を実現することができる。
マイク141は、耳甲介腔4と外耳道5の境界19から鼓膜9側に15mmまでの空間、又は耳甲介腔4と外耳道5の境界19から鼓膜9と反対側に15mmまでの空間に配置されることが望ましい。換言すると、保持部130は、耳穴開放デバイス100がユーザに装着された状態で、耳甲介腔4と外耳道5の境界19から鼓膜9側に15mmまでの空間、又は耳甲介腔4と外耳道5の境界19から鼓膜9と反対側に15mmまでの空間にマイク141を保持することが望ましい。ここで、マイク141の位置における周波数特性と鼓膜9の位置における周波数特性との差は、マイク141が鼓膜9に近いほど少なくなる。従って、マイク141の位置は鼓膜9に近いほど望ましい。この点、境界19から鼓膜9と反対側に15mmまでの空間であれば、上記周波数特性の差は許容可能な範囲に収めることができ、所定のノイズキャンセル性能を担保することができる。また、境界19から鼓膜9側に15mm以内の範囲にマイク141が配置される場合、境界19から鼓膜9と反対側の空間にマイク141が配置される場合と比較して、マイク141の位置を鼓膜9の近くにすることができる。さらに、少なくともマイク141が鼓膜9に接触して鼓膜9を傷つけることを防止し、安全性を担保することができる。
マイク位置M−a及びM−bは、境界19から鼓膜9側に15mmまでの空間にある。詳しくは、マイク位置M−aは、外耳道5の第1カーブ11と第2カーブ12との間にある。マイク位置M−bは、境界19と外耳道5の第1カーブ11との間にある。また、マイク位置M−cは、境界19から鼓膜9と反対側に15mmまでの空間にある。これらのいずれのマイク位置においても、所定のノイズキャンセル性能を担保することができる。とりわけ、上記周波数特性の到来方向への依存性を最小化できる点で、マイク位置M−aが最も望ましい。
図7は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100がユーザに装着された様子を示す図である。図7に示すように、保持部130は、耳穴開放デバイス100がユーザに装着された状態で、片耳の外耳道5の内壁に当接している。そして、保持部130は、マイク141を、耳珠6より鼓膜9側の空間であって、耳甲介腔4と外耳道5の境界19から鼓膜9側に15mmまでの空間に保持している。さらに詳しく言えば、保持部130は、マイク141を、図6に示したマイク位置M−aに保持している。このような配置により、マイク141(即ち、キャンセルポイント)の位置を、鼓膜9の位置との周波数特性の差が小さい位置にすることができ、高いノイズキャンセル性能を実現することができる。なお、保持部130が当接する場所は外耳道5の内壁に限定されない。保持部130は、例えば耳甲介腔4に当接してもよい。
<1.5.ノイズキャンセル処理の詳細>
以下、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100によるノイズキャンセル処理について説明する。
(1)古典制御FB方式
まず、図8及び図9を参照しながら、古典制御FB方式について説明する。
図8は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100による古典制御FB方式のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図8に示すようなモデル構成例において示されるブロックの記号は、ノイズキャンセルシステムの系における特定の回路部位又は回路系等に対応する特性(即ち、伝達関数)を示すものである。音響信号(若しくは音響)は、各ブロックを経由するごとに、当該ブロックにおいて示されている特性が適用される。図8〜図13に示す各ブロックの記号の意味は、次の通りである。
H1:ドライバ110からマイク141までの空間203の特性
H2:マイク141から鼓膜までの空間205の特性(外耳道の空間特性)
M:マイク141の特性
A:アンプ202の特性
D:ドライバ110の特性
F:パッシブ遮音素子220の特性
M´:マイク141のMの模擬特性
A´:アンプ202の模擬特性
D´:ドライバ110の模擬特性
H´:空間203の模擬特性
A´D´H1´M´:内部モデル208の特性
−β1:第1のFBフィルタ201の特性
β2:第2のFBフィルタ207の特性
E:イコライザ213の特性
また、Nはノイズを示し、Mは音楽信号を示し、Pは鼓膜位置の音圧を示し、Vはユーザの声(自声)を示す。
マイク141は、音響を収音し、音響信号を生成する。マイク141が生成した音響信号は、第1のFBフィルタ201に入力される。
第1のFBフィルタ201は、FB方式のノイズキャンセル処理を行うフィルタ回路である。第1のFBフィルタ201は、マイク141から入力された音響信号に基づき、マイク141をキャンセルポイントとするノイズキャンセル処理を行い、ノイズキャンセル信号を生成する。第1のFBフィルタ201を経由した音響信号は、アンプ202に入力される。
アンプ202は、入力された音響信号を増幅して出力するパワーアンプである。アンプ202は、第1のFBフィルタ201から入力された音響信号を増幅して出力する。アンプ202を経由した音響信号は、ドライバ110に入力される。
ドライバ110は、入力された音響信号に基づいて、空間内に音響を出力する。
ドライバ110から出力された音響は、まず、空間203を経由後、空間204においてノイズNと干渉し、ノイズNをキャンセルする。キャンセルされきれなかったノイズNは、マイク141により収音される。さらに、キャンセルされきれなかったノイズNは、開口部131を通過して、空間205を経由し、鼓膜音圧Pとして鼓膜位置に到達する。
マイク141は、ノイズを最小化するポイント(即ち、キャンセルポイント)である。そのため、マイク141の配置位置は、鼓膜に近いほど望ましい。
ここで、比較例として、耳穴開放デバイス100が、開口部131を有さないイヤホン(密閉型ノイズキャンセルイヤホン)として構成される場合のノイズキャンセル処理について、図9を参照して説明する。
図9は、比較例に係る密閉型ノイズキャンセルイヤホンによる古典制御FB方式のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図9に示すモデル構成例は、パッシブ遮音素子220を有する点を除き、図8に示したモデル構成例と同様である。密閉型ノイズキャンセルイヤホンでは、密閉されたハウジング又はイヤーピース等のパッシブ遮音素子220が、ノイズNからマイク141までの間に存在することになる。このため、ノイズNはパッシブ遮音素子220の影響で減衰し、その後マイク141により収音される。換言すると、耳穴開放デバイス100では、密閉型ノイズキャンセルイヤホンと比較して、相対的に大きなノイズが収音される。従って、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100には、密閉型ノイズキャンセルイヤホンと比較して出力が大きいアンプ及びドライバが用いられることが望ましい。
ここで、図8を参照して説明した、耳穴開放デバイス100による古典制御FB方式のノイズキャンセル処理について考察する。
まず、ドライバ110に入力される音響信号をyとする。すると、マイク141の位置での音圧Pは、次の数式(A1)で定義される。
音響信号yは、次の数式(A2)で定義される。
数式(A1)及び数式(A2)により、音圧Pは、次式(A3)のように導かれる。
ここで、数式(A3)のノイズNにかかる係数は、感度関数とも称される。第1のFBフィルタ201の特性β1は、設計可能なパラメータである。β1を最大化することにより、感度係数の分母は最大となり、感度係数は最小となり、その結果、音圧Pは最小化される。即ち、β1を最大化することにより、鼓膜位置における音圧が減少し、ノイズがより大きくキャンセルされる。
(2)内部モデル制御FB方式
続いて、図10を参照しながら、内部モデル制御FB方式(IMC(Inter Model Control)方式)について説明する。
図10は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100による内部モデル制御FB方式のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図10に示すモデル構成例は、第1のFBフィルタ201に代えて第2のFBフィルタ207を有する点、及び内部モデル208及び加算器206を有する点で、図8に示したモデル構成例と相違する。以下では、図8に示すモデル構成例との相違に関して主に説明する。
第2のFBフィルタ207は、FB方式のノイズキャンセル処理を行うフィルタ回路である。第2のFBフィルタ207は、入力された音響信号に基づき、マイク141をキャンセルポイントとするノイズキャンセル処理を行い、ノイズキャンセル信号を生成する。第2のFBフィルタ207を経由した音響信号は、アンプ202に入力されると共に、内部モデル208にも入力される。
内部モデル208は、耳穴開放デバイス100の内部モデルに対応する。内部モデルとは、信号処理内部の経路であり、2次経路(Secondary Path)を模擬した特性を有するモデルである。なお、2次経路とは、2次音源からエラーマイクまでの、物理的な空間伝達特性である。ここでの内部モデル208は、第2のFBフィルタ207から出力されたノイズキャンセル信号がドライバ110から出力されてマイク141により収音され、第2のFBフィルタに戻ってくるまでの特性を模擬した特性を有する。図10に示したモデル構成例における内部モデル208は、A´D´H1´M´の特性を有する。内部モデル208を経由した音響信号は、加算器206に入力される。加算器206は、マイク141により生成された音響信号から、内部モデル208を経由した音響信号を、減算して合成する。かかる合成信号は、第2のFBフィルタ207に入力される。
(3)古典制御FB方式と内部モデル制御FB方式の併用
続いて、図11を参照しながら、古典制御FB方式と内部モデル制御FB方式とを併用する場合について説明する。
図11は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100による古典制御FB方式と内部モデル制御FB方式とを併用するノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図11に示すモデル構成例は、図10に示したモデル構成例に、第1のFBフィルタ(特性:−β1)及び加算器209を加えたものである。以下では、図10に示すモデル構成例から新たに追加された構成要素に関して主に説明する。
マイク141により入力された音響信号は、加算器206に入力されると共に、第1のFBフィルタ201に入力される。第1のFBフィルタ201は、上述したように、入力された音響信号に基づいてノイズキャンセル信号を生成する。
第1のFBフィルタ201及び第2のFBフィルタ207の各々を経由した音響信号は、加算器209に入力されて、合成される。かかる合成信号は、内部モデル208に入力されると共に、アンプ202を経由してドライバ110から出力される。
以上、FB方式のノイズキャンセル処理について説明したが、本技術はかかる例に限定されない。耳穴開放デバイス100は、FB方式のノイズキャンセル処理と共に、又は代えて、FF方式のノイズキャンセル処理を行ってもよい。その場合、耳穴開放デバイス100は、ユーザに装着された際の音響特性を事前に測定し、FFフィルタの特性を設定しておくことが望ましい。
(4)音楽を再生する場合の処理
図12は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100による音楽再生時の古典制御FB方式のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図12に示すモデル構成例は、図8に示したモデル構成例に、内部モデル208、加算器210及び加算器211を加え、さらに音響信号Mが入力されるものである。以下では、図8に示すモデル構成例から新たに追加された構成要素に関して主に説明する。
音楽信号Mは、内部モデル208及び加算器211に入力される。内部モデル208を経由した音楽信号は、加算器210に入力される。また、加算器210には、マイク141により生成された音響信号が入力される。加算器210は、マイク141により生成された音響信号から、内部モデル208を経由した音楽信号を減算して合成する。そして、かかる合成信号が、第1のFBフィルタ201に入力される。第1のFBフィルタ201を経由した音響信号は、加算器211に入力される。加算器211は、第1のFBフィルタ201を経由した音響信号と音楽信号Mとを合成する。かかる合成信号は、アンプ202を経由してドライバ110から出力される。
このように、本ノイズキャンセル処理では、マイク141から出力される、ノイズを含む音響信号から音楽信号の成分を差し引いた上で、FBフィルタが適用される。これにより、再生すべき音楽が、ノイズとともに低減されることを防止することができる。
(5)自声を抽出する場合の処理
信号処理部151は、両耳用の一対の音響情報取得部140の各々により取得された音響情報に基づいてユーザの自声を抽出し、抽出したユーザの自声をノイズキャンセル信号に合成する。ユーザの自声も含んでノイズが収音される場合、ノイズキャンセル信号は、ユーザの自声をキャンセルする成分を含む。この点、ユーザの自声がノイズキャンセル信号に合成されることで、ユーザの自声が耳元で出力されるようになる。よって、自分の声がノイズとしてキャンセルされて、自分の声が遠くなったような違和感をユーザに与えることを、防止することができる。以下、図13を参照して、自声を抽出してノイズキャンセル信号に合成する処理について詳細に説明する。
図13は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100による自声抽出を含む古典制御FB方式のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図13に示すモデル構成例は、図8に示したモデル構成例に、自声抽出部212、イコライザ213、加算器214、空間215を加えたものである。到来するノイズNは、ノイズソースNS及びユーザの話声V(即ち、自声)が空間215において合成された音響である。ただし、図13に示したモデル構成例は、左耳側のモデル構成例を示しており、右耳側は省略されている。以下では、図13に示したモデル構成例において、図8に示すモデル構成例から新たに追加された構成要素に関して主に説明する。
左耳用のマイク141は、空間204を経由したノイズNを収音し、音響信号を生成する。右耳に関しても同様である。左右各々のマイク141により生成された音響信号は、自声抽出部212に入力される。自声抽出部212は、入力された音響信号に基づいて、自声Vを抽出する。例えば、自声抽出部212は、入力された音響信号から同相信号成分を抽出することで、自声Vを抽出する。自声抽出部212は、抽出した自声Vを示す音響信号を、左右各々の加算器214に出力する。
一方で、マイク141により生成された音響信号は、第1のFBフィルタ201にも入力される。第1のFBフィルタ201により生成されたノイズキャンセル信号は、加算器214に入力される。また、音楽信号Mは、イコライザ213に入力される。イコライザ213は、入力された音楽信号Mの音質を特性Eに基づき調整する。イコライザ213を経由した音楽信号は加算器214に入力される。
加算器214は、自声抽出部212、第1のFBフィルタ201及びイコライザ213の各々から入力された音響信号を合成する。かかる合成信号は、アンプ202を経由してドライバ110から出力される。
これにより、開口部131を通過した自声Vがノイズキャンセル信号によりキャンセルされても、自声抽出部212により抽出された自声Vがドライバ110から出力されることになる。これにより、自分の声がノイズとしてキャンセルされて、自分の声が遠くなったような違和感をユーザに与えることを、防止することができる。
なお、耳穴開放デバイス100は、音響情報取得部140として、保持部130により保持されるマイク141の他に、ユーザの自声を収音するためのマイクをさらに備えていてもよい。例えば、耳穴開放デバイス100は、図1に示すピンチ部123付近にかかるマイクを備え得る。その場合、自声抽出部212は、当該マイクにより生成された音響信号にさらに基づいてユーザの自声を抽出する。これにより、自声抽出部212は、より高い精度でユーザの自声を抽出することができる。
<1.6.鼓膜の音圧情報に基づくノイズキャンセル処理>
耳穴開放デバイス100は、鼓膜の音圧情報に基づいてノイズキャンセル処理を行ってもよい。その場合、音響情報取得部140は、音響情報として、鼓膜の音圧情報を取得する。そして、信号処理部151は、マイク141により生成される音響信号に変えて、鼓膜の音圧情報に基づいてノイズキャンセル処理を行う。もちろん、信号処理部151は、マイク141により生成される音響信号と鼓膜音圧取得部142により取得される鼓膜の音圧情報とを併用して、ノイズキャンセル処理を行ってもよい。以下では、耳穴開放デバイス100に、音響情報取得部140として、鼓膜音圧取得部142が搭載されるものとして説明する。
(1)鼓膜音圧取得部142の構成
鼓膜音圧取得部142は、外耳道又は鼓膜の振動情報を取得し、取得した振動情報に基づいてキャンセルポイントの音圧情報を取得する機能を有する。
詳しくは、鼓膜音圧取得部142は、送信波を送信し、当該送信波が反射された反射波を取得して、反射点における変位又は速度を示す振動情報を取得する。反射波には、反射点の移動速度に比例した周波数変化が発生する。具体的には、物体が近づく場合に反射波の周波数は高くなり、物体が遠ざかる場合に周波数が低くなる。鼓膜音圧取得部142は、送信波と反射波との周波数差分に基づいて、反射点の変位又は速度を推定する。送信波は、外耳道又は鼓膜に送信され、外耳道又は鼓膜における任意の反射点に反射される。反射点は、キャンセルポイントと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
例えば、鼓膜音圧取得部142はレーザー測距装置により実現されてもよく、送信波はレーザーであってもよい。他にも鼓膜音圧取得部142は、超音波測距装置により実現されてもよく、その場合、送信波は超音波である。ただし、干渉の観点から、送信波はレーザーである方が望ましい。レーザーを用いる場合、マイク141における風切り音の収音が原理的に発生しないメリットがある。なお、レーザー光源は、連続的に発光せず、間欠的に発光してもよい。また、発光頻度は、反射波取得に係るサンプリングレートと同等でよい。これらにより、消費電力を低減することができる。以下では、鼓膜音圧取得部142は、レーザー測距装置により実現されるものとして説明する。
鼓膜音圧取得部142は、鼓膜音圧取得部142と反射点との間の距離を測定することも可能である。例えば、レーザー測距装置は、レーザーを送信してから、反射点により反射されたレーザーを受信するまでの時間に基づいて、レーザー測距装置と反射点との距離を測定する。このような測定方法は、ToF(Time of Flight)方式とも称される。なお、鼓膜音圧取得部142のうち、少なくとも送信波を送信し受信波を受信する装置が保持部130により保持されていればよく、振動情報に基づいて鼓膜音圧を推定及び取得する装置等の配置は特に限定されない。
キャンセルポイントは、鼓膜の1点である。即ち、鼓膜音圧取得部142は、鼓膜の音圧情報を取得する。鼓膜の音圧情報がノイズキャンセル処理に用いられることで、高いノイズキャンセル性能を実現することができる。
反射点も、鼓膜の1点であることが望ましい。この場合、鼓膜の振動情報が直接的に取得されるので、鼓膜音圧取得部142は、鼓膜の振動情報に基づいて鼓膜の音圧情報を取得することができる。よって、鼓膜の音圧情報を高い精度で推定することができる。
一方で、反射点は、外耳道の内壁にあってもよい。その場合、鼓膜音圧取得部142は外耳道の内壁の2以上の点の振動情報に基づいて、鼓膜の音圧情報を推定する。例えば、鼓膜音圧取得部142は、外耳道の内壁の振動と鼓膜の振動との相関関係のモデルを参照して、外耳道の内壁の2以上の点の振動情報に基づいて鼓膜の振動情報を推定する。そして、鼓膜の振動情報の推定結果に基づいて、鼓膜の音圧情報を推定する。これにより、鼓膜に直接レーザーが照射されない場合であっても、鼓膜の音圧情報を用いたノイズキャンセル処理を実行することが可能となる。また、鼓膜音圧取得部142は、鼓膜の振動情報と外耳道の内壁の振動情報とを測定し、これらの測定結果に基づいて鼓膜位置の音圧情報を推定してもよい。この場合、鼓膜位置の音圧情報をより高精度に推定することができる。
また、鼓膜音圧取得部142は、外耳道の内壁の振動情報に基づいて、肉伝導による自発生音(例えば、自声)を測定することができる。鼓膜音圧取得部142は、外耳道の内壁の振動情報に加え、左右の空気伝搬音波情報に基づいて、自発生音を測定することができる。
なお、反射点が鼓膜であるか外耳道の内壁であるかは、例えば後述する三次元形状を示す情報に基づいて判断され得る。
以下、図14〜図17を参照して、レーザー測距装置として実現される鼓膜音圧取得部142による測距の様子を詳しく説明する。
図14は、ユーザの左耳の外耳道内部の様子を示す断面図である。図14に示すように、鼓膜振動面14は外耳道下壁13に対して、所定の角度を成している。成人の場合、鼓膜振動面14は外耳道下壁13に対して、約50度の角度をなしている。
図15〜図17は、図14に示したユーザの左耳の外耳道内部に耳穴開放デバイス100によりレーザーが照射された様子を示す図である。図15は、図14と同じ視点の図であり、図16は、Z軸正方向からZ軸負方向へ見下ろす視点の図であり、図17は、X軸正方向とZ軸正方向の中間付近から原点へ向かう視点の図である。図15〜図17に示すように、鼓膜音圧取得部142(レーザー測距装置)によりレーザー16が鼓膜9に向けて照射されている。図15及び図16に示すように、レーザー16の照射方向17と鼓膜9の振動方向15とは、特定の角度を持って交わり得る。鼓膜9の音圧情報を精度よく推定するためには、この角度差を補正することが望ましい。この角度差の補正は、論理的な計算により行われてもよいし、後述するレーザーの照射方向の物理的な制御により行われてもよい。
図15及び図16に示すように、保持部130は、鼓膜音圧取得部142と鼓膜9との直線上に外耳道5の内壁が存在しない位置に鼓膜音圧取得部142を保持することが望ましい。換言すると、鼓膜音圧取得部142から鼓膜9までの間に障害物がない位置に鼓膜音圧取得部142が保持されることが望ましい。これにより、鼓膜音圧取得部142から照射されたレーザーを鼓膜9上の1点に直接反射させることが可能となる。
(2)鼓膜音圧の取得処理
以下、図18〜図20を参照して、鼓膜音圧の取得処理を説明する。
・第1の例
図18は、本実施形態に係る鼓膜音圧の推定処理のモデル構成例を説明するための図である。
レーザーダイオード230は、レーザーを生成し、照射する。レーザーダイオード230から照射されたレーザーは、ビームスプリッタ231により2つの方向に分離され、そのうち一方のビームがビームスプリッタ232及びフォーカスレンズ233を通過して鼓膜9に到達する。鼓膜9により反射されたレーザーは、フォーカスレンズ233を通過して、ビームスプリッタ232及びミラー234に反射され、ビームスプリッタ237を通過して光電気変換器238に入力される。
一方で、レーザーダイオード230から照射されたレーザーのうちビームスプリッタ231により分離された他の一方のビームは、光学周波数変換器236に入力される。基準周波数発振器235により基準周波数で発振された信号も、光学周波数変換器236に入力される。光学周波数変換器236は、レーザーダイオード230から照射されたレーザーの周波数を基準周波数に変調して出力する。光学周波数変換器236から出力されたレーザーは、ビームスプリッタ237により反射されて、光電気変換器238に入力される。
ビームスプリッタ237を経由したレーザーは、光電気変換器238により光の強度信号に変換される。光の強度信号は、基準周波数で周波数変調された鼓膜振動周波数を示す。光の強度信号は、周波数電圧変換器239により周波数領域の信号に変換され、帯域制限フィルタ240が適用され、速度加速度変換器241に入力される。帯域制限フィルタ240による帯域制限フィルタ処理が適用された信号は、鼓膜振動の速度信号である。速度加速度変換器241は、鼓膜の速度信号に基づいて、鼓膜の速度を鼓膜の加速度に変換し、鼓膜の加速度を示す信号を鼓膜音圧推定部242に出力する。鼓膜音圧推定部242は、鼓膜の加速度に基づいて、鼓膜音圧(鼓膜9の音圧情報)を推定する。なお、鼓膜音圧は、下記の式により推定される。
鼓膜音圧PD=K・a
ただし、a[m/s2]は、速度加速度変換器241にて得られる加速度信号である。K[kg/m2]は、鼓膜の面積、質量、張力、及びレーザーの鼓膜への侵入角による補正係数等からなる定数である。なお、鼓膜音圧の取得処理の少なくとも一部は、デジタル回路により行われてもよい。例えば、速度加速度変換器241及び鼓膜音圧推定部242の処理がデジタル回路により行われてもよい。また、鼓膜音圧推定部242が、速度加速度変換器241としての機能を含んでいてもよい。
・第2の例
人によって、耳の形状、とりわけ外耳道の形状及び鼓膜の配置は異なる。そのため、ユーザに耳穴開放デバイス100が装着された状態で、必ずしもレーザーの照射点(即ち、反射点)が鼓膜の中心に位置するとは限らない。
そこで、鼓膜音圧取得部142は、ユーザの外耳道の三次元形状を示す情報にさらに基づいて鼓膜の音圧情報を推定してもよい。例えば、鼓膜音圧取得部142は、外耳道の三次元形状を示す情報に基づいてレーザーの照射方向を制御し、鼓膜を反射点とする。これにより、鼓膜音圧を直接的に推定することができるので、精度を向上させることができる。
鼓膜音圧取得部142は、送信波の送信方向を変更しながら外耳道を走査することで外耳道の三次元形状を示す情報を取得する。詳しくは、鼓膜音圧取得部142は、レーザーの照射方向を逐次的に変更しながら測距することで、鼓膜音圧取得部142と反射点との距離のマップを、走査結果として取得する。この距離のマップは、鼓膜音圧取得部142を基準とする外耳道の三次元形状を示す情報である。
図19は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100による外耳道の走査の様子を示す図である。図19に示すように、鼓膜音圧取得部142から照射方向を変えながらレーザー16が照射されている。耳穴開放デバイス100は、レーザーが照射された範囲18の三次元形状を示す情報を取得する。よって、例えば鼓膜音圧取得部142は、鼓膜9に直接レーザーを照射可能な方向を探索することができる。
外耳道の三次元形状を示す情報を取得するための機構は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャナとして実現され得る。以下、図20を参照して、MEMSスキャナを用いて鼓膜音圧を推定する処理を説明する。
図20は、本実施形態に係る鼓膜音圧の推定処理のモデル構成例を説明するための図である。図20に示すモデル構成例は、図18に示したモデル構成例における、ビームスプリッタ232とフォーカスレンズ233との間にMEMSスキャナ243を含むものである。MEMSスキャナ243は、入力されたレーザーの照射角を補正して出力する、照射角補正部として機能する。MEMSスキャナ243は、ビームスプリッタ232から入力されたレーザーの照射方向を変更することができる。鼓膜音圧取得部142は、レーザーの照射方向を逐次的に変更するようMEMSスキャナ243を制御することで、外耳道の三次元形状を示す情報を取得する。そして、鼓膜音圧取得部142は、外耳道の三次元形状を示す情報に基づいて、鼓膜が反射点となる方向にレーザーが照射されるよう、MEMSスキャナ243を制御する。
(3)三次元形状を示す情報の活用
・個人認証
認証部155は、鼓膜音圧取得部142により取得された外耳道の三次元形状を示す情報に基づいて、ユーザを認証してもよい。例えば、認証部155は、予め記憶されたユーザの外耳道の三次元形状を示す情報の特徴量と、鼓膜音圧取得部142により取得された外耳道の三次元形状を示す情報の特徴量とを比較する。認証部155は、この比較結果に基づいて、装着したユーザが事前登録されたユーザと一致するか否かを判定する。外耳道の形状は、人によって異なるため、当該認証が可能となる。人間の耳は一個人においても左右の耳の形状がことなるため、認証部155は、左右両耳に関し上記比較を行うことで、認証精度をより一層向上させることもできる。信号処理部151は、認証結果に基づく信号処理を行ってもよい。例えば、信号処理部151は、ユーザごとに予め設定されたフィルタの特性を用いてノイズキャンセル処理を行ってもよい。
以下、図21を参照して、外耳道の三次元形状を示す情報を用いた個人認証処理について説明する。
図21は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100及び端末装置により実行される個人認証処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図21に示すように、本シーケンスには耳穴開放デバイス100及び端末装置800が関与する。端末装置800は、スマートフォン、タブレット端末又はエージェント機器等の任意の装置である。
図21に示すように、耳穴開放デバイス100は、まだユーザに装着されておらず、装着待ち状態にある(ステップS102)。また、端末装置800は、耳穴開放デバイス100と接続しておらず、接続待ちの状態にある(ステップS104)。
図21に示すように、まず、耳穴開放デバイス100は、測距距離が所定値以内であるか否かを判定する(ステップS106)。ここでの所定値は、例えば、外耳道の長さの最大値である。所定値以内であれば、少なくとも外耳道内で測距が行われたことが分かる。測距距離が所定値以内ではないと判定された場合(ステップS106/NO)、処理は再度ステップS106に戻り、装着待ちの状態が継続される。
一方で、測距距離が所定値以内であると判定された場合(ステップS106/YES)、耳穴開放デバイス100は、外耳道内の三次元形状を示す情報を取得し、特徴量を抽出する(ステップS108)。
次いで、耳穴開放デバイス100は、抽出した特徴量と、事前に記憶した特徴量とを比較し、一致するか否かを判定する(S110)。一致しないと判定された場合(ステップS110/NO)、処理は再度ステップS106に戻る。
一致すると判定された場合(ステップS110/YES)、耳穴開放デバイス100は、ユーザ認証が完了したことを示す認証情報を端末装置800に送信する(ステップS112)。端末装置800は、耳穴開放デバイス100から認証情報を受信及び確認して(ステップS114)、接続処理を行い、接続完了通知を耳穴開放デバイス100に送信する(ステップS116)。これにより、端末装置800は、接続完了状態となる。耳穴開放デバイス100は、端末装置800から接続完了通知を受信する(ステップS118)。これにより、耳穴開放デバイス100は、接続完了状態となる。
・装着検出
動作制御部153は、鼓膜音圧取得部142により取得された三次元形状を示す情報に基づいて、耳穴開放デバイス100が装着されているか否かを判定する。例えば、動作制御部153は、鼓膜音圧取得部142による測距距離が、所定値以内である場合に装着されたと判定し、所定値を超える場合に装着されていないと判定する。ここでの所定値は、例えば、外耳道の長さの最大値である。そして、動作制御部153は、判定結果に基づいて、耳穴開放デバイス100の動作を制御する。例えば、動作制御部153は、耳穴開放デバイス100が装着されていると判定した場合に、信号処理部151にノイズキャンセル信号の生成を開始させてもよい。また、動作制御部153は、耳穴開放デバイス100が装着されていると判定した場合に、ドライバ110に出力信号の出力を開始させてもよい。これにより、ユーザが耳穴開放デバイス100を装着すると自動的に耳穴開放デバイス100の動作が開始されるので、ユーザの操作負担が軽減される。また、動作制御部153は、耳穴開放デバイス100が装着されていないと判定した場合、ノイズキャンセル信号の生成及び出力信号の出力を停止させてもよい。これにより、非装着時には耳穴開放デバイス100の動作が停止又は一部停止されるので、無駄な電力消費を防止することができる。
・再生音の補正
信号処理部151は、外耳道の三次元形状を示す情報に基づいて、ドライバ110から出力される出力信号の音質を調整してもよい。例えば、信号処理部151は、外耳道の三次元形状を示す情報に基づいて、過度に反響する周波数の音を減衰させ、過度に低減される周波数の音を強調する処理を行う。これにより、ユーザの外耳道の三次元形状に応じた最適な音質を、ユーザに提供することが可能となる。
(4)その他
・ハウリングキャンセラ
耳穴開放デバイス100は、ドライバ110により出力される音響をマイク141が収音した際に発生する、ハウリングを検出してもよい。そして、耳穴開放デバイス100は、ハウリングを検出した際に、ドライバ110からの出力、またはノイズキャンセリング処理を停止、または一時停止させ、停止したことを装着に通知してもよい。また、ハウリングの発生した状況を、後述の無線通信部170を介して外部に送信してもよい。
・校正信号
耳穴開放デバイス100は、ドライバ110から既定の校正信号を出力し、マイク141によりかかる校正信号を収音することで、ドライバ110からマイク141までの伝達特性を得ることができる。この伝達特性は、装着者個々の耳の形状及び装着状態に依存する。そのため、耳穴開放デバイス100は、ユーザに装着された状態で、ドライバ110からマイク141までの伝達特性を実際に測定することで、より適したドライバ110の出力構成を行うことが可能である。また、耳穴開放デバイス100は、出力信号と、マイク141から収音した実際の音響信号とを用いて、適応的に出力構成を行うこともできる。
<1.7.まとめ>
以上、第1の実施形態について詳細に説明した。上記説明したように、第1の実施形態に係る耳穴開放デバイス100は、耳甲介腔、又は外耳道の内壁に当接する保持部130により、音響情報を取得する音響情報取得部140を耳珠よりも鼓膜側の空間に保持しつつも、開口部131により耳穴を外界に開放する。そして、耳穴開放デバイス100は、当該音響情報取得部140により取得された音響情報に基づいてノイズキャンセル信号を生成する。例えば、耳穴開放デバイス100は、音響情報取得部140の位置又は鼓膜位置をキャンセルポイントとするノイズキャンセル処理を行う。鼓膜に近い位置又は鼓膜がキャンセルポイントになるので、高いノイズキャンセル性能を実現することができる。
耳穴開放デバイス100に、このようなアクティブ処理によるノイズキャンセル機能が搭載されることにより、様々な効果が奏される。以下、本実施形態において奏される効果について具体例を挙げて説明する。
例えば、オフィスなどでは、オフィス内の空調の音、並びにオフィス外から漏れ込んでくる電車又は自動車の走行音等の、話声などと比べて低い周波数のノイズであふれている。耳穴開放デバイス100は、このノイズをキャンセルする。この場合、耳穴開放デイバス100を装着したユーザは、他者とより円滑にコミュニケーションをとることが可能であるし、精神的負荷及び肉体的負荷が軽減される。
また、話声のような中域の周波数帯域をノイズキャンセルの対象外とすることで、話声はキャンセルされず、さらに耳穴が開放されているので、話声はそのまま鼓膜に到達する。このため、耳穴開放デバイス100を装着したユーザは、会話をするために耳穴開放デバイス100を都度外さずにすむ。
また、耳穴が開放されているので、外耳道内外の空気は自由に移動することができる。このため、耳穴開放デバイス100は、外耳道内の湿度及び温度に起因する不快感をユーザに与え辛い。よって、ユーザは、耳穴開放デバイス100を長時間装着することができる。
また、耳穴開放デバイス100は、音楽又は音声を出力する場合に、周囲のノイズを低減することで、信号対雑音比を大きくとることができる。このことは、同じ音量の音楽又は音声であっても、ユーザは目的音の聴取がしやすいことを意味する。裏を返せば、同等の信号対雑音比を維持するために出力すべき音楽又は音声の音量は抑制される。したがって、耳穴開放デバイス100により出力される音楽又は音声の、周囲への漏れ音を低減することができる。
さらに、耳穴が開放されているので、ユーザ自身の声(自声)、鼓動音、咀嚼音、唾をのみこむときの音、血流音、呼吸音、歩行時の体を伝わる振動音、ケーブル等の衣擦れ音、及びイヤーピースが外耳道と接触する部分の摩擦音等が、強調されない。
<<2.第2の実施形態>>
第2の実施形態は、外耳道の入り口付近に配置されるマイクを有する音響処理装置(ヘッドホン)によるノイズキャンセル処理に関する。
<2.1.技術的課題>
まず、図22〜図27を参照して、比較例に係るヘッドホンによるノイズキャンセル処理を説明し、本実施形態の技術的課題を説明する。
図22は、FB−NC機能付きヘッドホン380−1の構成例を示す図である。図22に示すように、FB−NC機能付きヘッドホン380−1は、ハウジング381及びイヤーパッド382を含む。ハウジング381及びイヤーパッド382により、FB−NC機能付きヘッドホン380−1を装着したユーザの片耳は覆われる(典型的には、密閉される)。ハウジング381には、ドライバ(スピーカ)383、FB−NC用マイク384及びFBフィルタ385(特性:−β)等の信号処理のための各種装置が格納される。
FB−NC用マイク384は、周囲音を収音して音響信号を生成する。FBフィルタ385は、FB−NC用マイク384により生成された音響信号に基づくFB方式のノイズキャンセル処理により、ノイズキャンセル信号を生成する。ドライバ383は、FBフィルタ385により生成されたノイズキャンセル信号に基づいて音響を出力する。これにより、ハウジング381、イヤーパッド382、及びユーザの頭部等のパッシブ遮音素子によるパッシブ遮音後のノイズをキャンセルすることができる。このようなノイズキャンセル処理について、図23を参照して詳しく説明する。
図23は、図22に示したFB−NC機能付きヘッドホン380−1によるノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図23に示すようなモデル構成例において示されるブロックの記号は、ノイズキャンセルシステムの系における特定の回路部位又は回路系等に対応する特性(即ち、伝達関数)を示すものである。各記号の意味は次の通りである。
H:ドライバ383からFB−NC用マイク384までの空間392の空間特性
M:FB−NC用マイク384の特性
A:アンプ391の特性
D:ドライバ383の特性
F:パッシブ遮音素子393の特性
−β:FBフィルタ385の特性
また、Nはノイズを示し、Pは鼓膜位置の音圧を示す。
図23に示すように、FB−NC用マイク384により生成された音響信号は、FBフィルタ385に入力される。FBフィルタ385は、入力された音響信号に基づいてノイズキャンセル信号を生成する。FBフィルタ385により生成されたノイズキャンセル信号は、アンプ391により増幅されて、ドライバ383から出力される。ドライバ383から出力された音響は、空間392を経由後、空間394においてパッシブ遮音素子393を経由したノイズNと干渉し、ノイズNをキャンセルする。キャンセルされきれなかったノイズNは、FB−NC用マイク384に収音されると共に、鼓膜位置音圧Pとして鼓膜に伝達される。
キャンセルポイントはFB−NC用マイク384の位置になる。FB−NC用マイク384の位置における残差信号r(residual noise)について、感度関数を算出すると次式の通りとなる。
上記数式(B1)に示すように、感度関数は、NCフィルタβを大きくすることにより、最小化される。
ここで、FBフィルタ385は、ADC及びDACを含むものとする。ADC及びDACによるデジタル処理の遅延等の、システムの遅延による影響を抑制することで、FB−NCの性能は向上する。一方で、遅延に寄与するパラメータとしては、システムの遅延の他に、音響空間における距離の遅延がある。この距離の遅延も、FB−NCの性能を左右する。
図24は、ヘッドホンドライバからFB−NC用マイクまでの距離に応じた位相特性の一例を示す図である。図24では、ヘッドホンドライバからFB−NC用までの距離が、20mm、50mm、又は100mmである場合の位相特性が示されている。図24に示すように、ヘッドホンドライバからFB−NC用までの距離が長くなるに従い、位相回転が大きくなる。そして、位相回転が大きくなるほど、FB−NCの限界性能は劣化する。以上から、距離の遅延に起因するFB−NCの性能劣化を防止するためには、ドライバとFB−NC用との間の距離を小さくすることが望ましいと言える。
図22に示したFB−NC機能付きヘッドホン380−1では、ハウジング381内のドライバ383に近い位置にFB−NC用マイク384が配置されている。よって、上述した距離の遅延は少ない。しかし、FB−NC用マイク384の位置は、最も音圧(ノイズに起因する音圧)を最小化したいポイントである鼓膜9の位置と離れている。そのため、FB−NC用マイク384の位置における音圧の最小化が、鼓膜9の位置での音圧最小化に繋がるとは限らなかった。即ち、FB−NCの性能が劣化するおそれがあった。
理想的には、鼓膜9の位置にFB−NC用マイクを配置することにより、上述した距離の遅延を解消することが可能であると考えられる。そのようなFB−NC機能付きヘッドホンについて、図25を参照して説明する。
図25は、FB−NC機能付きヘッドホン380−2の一例を示す図である。図25に示すように、FB−NC機能付きヘッドホン380−2は、鼓膜9付近に配置されるFB−NC用マイク384を有する。そのため、FB−NC用マイク384の位置における音圧の最小化が、鼓膜9の位置での音圧最小化に繋がりやすく、FB−NCの性能の劣化を抑制することができる。しかし、ドライバ383とFB−NC用マイク384との距離が大きいので、上述した距離の遅延の影響でFB−NCの性能が劣化するおそれがあった。
まとめると、図22に示したFB−NC用マイク384の配置によれば、距離由来の位相遅延は少ない一方で、鼓膜位置の音圧が最小化されるとは限らない。一方で、図25に示したFB−NC用マイク384の配置によれば、鼓膜位置の音圧がフィードバックされる一方で、距離由来の位相遅延が大きい。
以上説明したように、ヘッドホンにおけるFB−NCの性能を向上させるためには、以下の2つの指針が考えられるものの、ドライバの位置が固定されているという前提でこれらの指針は矛盾していた。
第1の指針:距離の遅延を抑える:FB−NC用マイクをドライバの近くに配置する
第2の指針:キャンセルポイントを鼓膜近くにする:FB−NC用マイクをドライバから遠くに配置する
そこで、本実施形態では、上記矛盾を解消したノイズキャンセル処理の仕組みを提案する。詳しくは、本実施形態では、ドライバの付近に設置されたFB−NC用マイクに加えて、鼓膜位置付近に設置されたエラーマイクを併用する、ノイズキャンセル処理の仕組みを提案する。かかる仕組みによれば、FB−NC用マイクを用いて距離の遅延を抑制しつつ、エラーマイクを用いて鼓膜位置に近いキャンセルポイントの音圧を最小化することが可能である。
NC機能付きヘッドホンには、上述したFB型に加えて、FF型、並びにFB及びFFの併用型がある。一般的には、併用型のNC機能付きヘッドホンが、これらの各型のうち最も高いNC性能を有すると言われている。参考のため、併用型のNC機能付きヘッドホンについて、図26及び図27を参照して説明する。
図26は、併用型NC機能付きのヘッドホン380−3の構成例を示す図である。図26に示すように、併用型NC機能付きのヘッドホン380−3には、図22に示した380−1の構成に加えて、FF−NCのためのFF−NC用マイク386及び特性−αを有するFFフィルタ387が設けられている
図27は、図26に示した併用型NC機能付きヘッドホン380−3によるノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図27に示すモデル構成例は、図23に示したモデル構成例に、FF−NCのための構成要素が追加されている。以下では、当該追加されたブロックについて説明する。追加されたブロックの記号の意味は次の通りである。
M1:FB−NC用マイク384の特性
M2:FF−NC用マイク386の特性
−α:FFフィルタ387の特性
図27に示すように、FF−NC用マイク386により収音されたノイズNに基づいて生成された音響信号は、FFフィルタ387に入力される。FFフィルタ387は、入力された音響信号に基づくFF方式のノイズキャンセル処理により、ノイズキャンセル信号を生成する。加算器395は、FFフィルタ387により生成されたノイズキャンセル信号、及びFBフィルタ385により生成されたノイズキャンセル信号を合成して合成信号を生成する。かかる合成信号は、アンプ391を経由してドライバ383から出力される。ドライバ383から出力された音響は、空間392を経由後、空間394においてパッシブ遮音素子393を経由したノイズNと干渉し、ノイズNをキャンセルする。キャンセルされきれなかったノイズNは、FB−NC用マイク384に収音されると共に、鼓膜位置音圧Pとして鼓膜に伝達される。
<2.2.ヘッドホンの外観構成>
以下、図28〜図30を参照して、本実施形態に係る音響処理装置(ヘッドホン)の外観構成の一例を説明する。
図28及び図29は、本実施形態に係るヘッドホン300の外観構成の一例を説明するための図である。図28は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態の外観構成を示している。図29は、図28に示したヘッドホン300を、図28に示す内側空間30から見た外観構成を示している。以下では、主に図28を参照しながら、ヘッドホン300の外観構成を説明する。
図28に示すように、ヘッドホン300は、ハウジング301及びイヤーパッド302を含む。ハウジング301及びイヤーパッド302により、ヘッドホン300を装着したユーザの片耳は覆われる(典型的には、密閉される)。ハウジング301には、音響出力部310、音響入力部320−1及び320−2及びフィルタ回路等の信号処理のための各種装置が格納される。イヤーパッド302は、ユーザの頭部と接触面302aで接触する。イヤーパッド302は、スポンジ等の弾性体により形成され、ユーザの頭部に合わせて変形しながらユーザの頭部に密着し、内側空間30を形成する。内側空間30は、ハウジング301、イヤーパッド302及びユーザの頭部により形成される空間である。内側空間30は、外界側の空間である外側空間31と隔絶した密閉空間であってもよいし、外側空間31と繋がっていてもよい。内側空間30には、ハウジング301、イヤーパッド302及びユーザの頭部等のパッシブ遮音素子によるパッシブ遮音後のノイズが到来する。ハウジング301の壁部301aは内側空間30と接し、ハウジング301の外側の壁部301bは外側空間31と接する。
音響出力部310は、音響信号に基づいて音響を空間に出力する。音響出力部310は、ドライバとも称され得る。ドライバ310は、ハウジング301に設けられる。そして、ドライバ310は、ハウジング301よりも鼓膜側の空間である内側空間30に向けて音響を出力する。例えば、ドライバ310は、音響入力部320−1〜320−3による収音結果に基づいて生成されたノイズキャンセル信号に基づいて、音響を空間に出力する。これにより、内側空間30に到来したノイズをキャンセルすることができる。
音響入力部320(320−1〜320−3)は、周囲音を収音して音響信号を生成する。図28に示すように、音響入力部320は、ユーザに装着された状態でユーザの片耳側に3つ配置される。
音響入力部320−1は、FB−NCのための収音を行うマイク(即ち、FB−NC用マイク)である。FB−NC用マイク320−1は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態で、ユーザの鼓膜9からの距離が、音響入力部320−2より短く音響入力部320−3より長い位置に配置される。より具体的には、FB−NC用マイク320−1は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態で、ノイズが遮蔽物を介して、即ちパッシブ遮音されて収音される位置に配置される。さらには、FB−NC用マイク320−1は、ユーザの鼓膜9とドライバ310との間に配置されることが望ましい。ここでの遮蔽物とは、パッシブ遮音素子であり、ハウジング301、イヤーパッド302及びユーザの頭部に相当する。図28に示すように、FB−NC用マイク320−1は、ハウジング301の内側空間30側の壁部301aに設けられる。そして、FB−NC用マイク320−1は、内側空間30の音響を収音し、音響信号を生成する。このとき収音される音響は、パッシブ遮音素子によるパッシブ遮音後のノイズを含む。FB−NC用マイク320−1は、第1の音響入力部に相当し、FB−NC用マイク320−1により生成される音響信号は第1の音響信号とも称され得る。FB−NC用マイク320−1により生成された音響信号は、FBフィルタに入力されて、ノイズキャンセル信号の生成に用いられる。
音響入力部320−2は、FF−NCのための収音を行うマイク(即ち、FF−NC用マイク)である。また、FF−NC用マイク320−2は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態で、ユーザの鼓膜9からの距離が最も長い位置に配置される。より具体的には、FF−NC用マイク320−2は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態で、ノイズが遮蔽物を介さないで、即ちパッシブ遮音されないで収音される位置に配置される。図28に示すように、FF−NC用マイク320−2は、ハウジング301の外側空間31側の壁部301bに設けられる。そして、FF−NC用マイク320−2は、外側空間31の音響を収音し、音響信号を生成する。このとき収音される音響は、外側空間31に到来したノイズを含む。FFマイク320−2は、第2の音響入力部に相当し、FFマイク320−2により生成される音響信号は第2の音響信号とも称され得る。ここで、FF−NC用マイク320−2は、外側空間31に露出していてもよいし、露出していなくてもよい。例えば、FF−NC用マイク320−2は、ハウジング301に埋め込まれていてもよく、回り込み音又は布地等のカバーを透過した音を収音してもよい。FF−NC用マイク320−2により生成された音響信号は、FFフィルタに入力されて、ノイズキャンセル信号の生成に用いられる。
音響入力部320−3は、ハウジング301と離隔して配置される音響入力部であって、ヘッドホン300がユーザに装着された状態で外耳道5の入り口付近に配置されるマイク(以下、外耳道マイクとも称する)である。外耳道マイク320−3は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態で、ユーザの鼓膜9からの距離が最も短い位置に配置される。外耳道マイク320−3は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態で、ノイズが遮蔽物を介して収音される位置に配置される。図28に示すように、外耳道マイク320−3は、内側空間30に配置されている。ここで、外耳道マイク320−3は、保持部303によりユーザの外耳道5の入り口付近に保持される。そして、外耳道マイク320−3は、パッシブ遮音素子によるパッシブ遮音後のノイズを収音し、音響信号を生成する。外耳道マイク320−3は、第3の音響入力部に相当し、外耳道マイク320−3により生成される音響信号は第3の音響信号とも称され得る。外耳道マイク320−3により生成された音響信号は、ノイズキャンセル信号の生成に用いられる。
保持部303は、外耳道5の入り口付近(例えば、珠間切痕)と係合して、外耳道マイク320−3を外耳道5の入り口付近に保持する。外耳道マイク320−3の外径は、耳穴の内径よりもはるかに小さくなるように形成されている。従って、外耳道マイク320−3が保持部303によって外耳道5の入り口付近で保持されている状態でも、聴取者の耳穴を塞ぐことはない。
また、保持部303は、外耳道マイク320−3を保持した状態でも、外耳道5の入り口(耳穴)を外界に開放する開口部304を備えている。ここでの外界とは、ノイズがパッシブ遮音される空間であり、内側空間30である。図28に示した例では、保持部303はリング状の構造体であり、リング内側方向に設けられた棒状の第1の支持部材305がリング中心付近で合わさる部分に外耳道マイク320−3が設けられており、リング状構造体のそれ以外の部分はすべて開口部304となっている。棒状の第1の支持部材305は、緩やかに湾曲しており、複数の第1の支持部材305及び保持部303により、保持部303を割平面とする半球状の形状が形作られる。保持部303は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態で、ユーザの片耳の耳甲介腔4又は外耳道5の内壁に当接する。そして、保持部303は、外耳道マイク320−3を、耳珠6より鼓膜9側の空間に保持する。このような保持部303の構成は、第1の実施形態における保持部130の構成と同様である。なお、保持部303は、リング状構造に限定されるものではなく、中空構造を備えていれば、外耳道マイク320−3を設けられる任意の形状でよい。保持部303の形状の一例を、図30に示した。図30は、本実施形態に係るヘッドホン300の保持部303の形状の一例を示す図である。図30に示すように、保持部303Aはリング状構造を有し、保持部303Bは一部が切断され除去されたリング状構造を有し、保持部303Cは3つに分割されたリング状構造を有する。このように、保持部303の形状は、リング状構造又はその類型であってもよい。
第2の支持部材306は、一端がハウジング301と連結され、他端が保持部303と連結される構造体である。図28に示すように、第2の支持部材306は、S字状に湾曲した棒状の構造体であってもよい。また、複数の第2の支持部材306が設けられてもよい。
なお、図28及び図29では、ヘッドホン300の右耳側の外観構成が示されているが、左耳側の外観構成は右耳側の外観構成と左右対称に構成される。ヘッドホン300は、右耳側と左耳側とで互いに分離独立して構成されてもよいし、一体的に構成されてもよい。また、ヘッドホン300は、密閉型、開放型、オーバーヘッド型、ネックバンド型、耳かけ型等の任意の構造を有し得る。
<2.3.ヘッドホンの内部構成>
図31は、本実施形態に係るヘッドホン300の内部構成の一例を示す図である。図31に示すように、ヘッドホン300は、音響出力部310、音響入力部320、制御部330、及びセンサ部370を含む。
・音響出力部310
音響出力部310(ドライバ)は、音響信号に基づいて音響を出力する機能を有する。ドライバ310は、信号処理部331から出力された出力信号に基づいて音響を空間に出力する。
・音響入力部320
音響入力部320は、周囲音を検出するマイクロホン(以下、単にマイクとも称する)を含み、マイクによる検出結果を示す音響信号を生成する。
・制御部330
制御部330は、演算処理装置及び制御装置として機能し、各種プログラムに従ってヘッドホン300による処理全般を制御する。制御部330は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)、DSP(Demand-Side Platform)等の電子回路によって実現される。なお、制御部330は、使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、及び適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。典型的には、制御部330は、ハウジング301に格納される。
図31に示すように、制御部330は、信号処理部331及び動作制御部333を含む。
信号処理部331は、音響入力部320により生成された音響信号に基づいて、ノイズを対象とするノイズキャンセル信号を生成する機能を有する。信号処理部331は、3つの音響入力部320−1〜320−3により生成された3つの音響信号に基づいて、複数のノイズキャンセル信号を生成する。例えば、信号処理部331は、FB方式のノイズキャンセル処理又はFF方式のノイズキャンセル処理の少なくともいずれかを行い、複数のノイズキャンセル信号を生成する。信号処理部331は、生成した複数のノイズキャンセル信号に基づいて音響信号(以下、出力信号とも称する)を生成し、ドライバ110に出力する。例えば、出力信号は、複数のノイズキャンセル信号を合成した信号であってもよいし、音源から取得された音楽信号等の他の音響信号とノイズキャンセル信号とが合成された合成信号であってもよい。信号処理部331は、図32〜図37等を参照して説明するノイズキャンセル処理のための各種構成要素を含む。例えば、信号処理部331は、ノイズキャンセル信号を生成するための各種フィルタ回路、フィルタ回路を適応的に制御するための適応制御部、信号を合成するための加算器、内部モデル並びに後述する測定信号を生成及び解析するための装置等を含む。また、信号処理部331は、アンプ、ADC及びDAC等の回路も含む。
・動作制御部333
動作制御部333は、ヘッドホン300の動作モードを制御する機能を有する。動作制御部333は、ヘッドホン300の機能の一部又は全部を停止させたり起動させたりする。例えば、動作制御部333は、センサ部370による検出結果に基づいて、ヘッドホン300の機能の停止/起動を制御する。
・センサ部370
センサ部370は、ヘッドホン300に関する情報又はヘッドホン300を装着したユーザに関する情報を検出する装置である。センサ部370は、感圧センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、及び体温センサ等の各種センサ装置を含み得る。例えば、センサ部370は、感圧センサにより、イヤーパッド302等のヘッドホン300を構成する部材の変形を検出する。これにより、ヘッドホン300の装着/非装着が判定され得る。
<2.4.ノイズキャンセル処理の詳細>
(1)第1のノイズキャンセル処理
第1のノイズキャンセル処理は、外耳道マイク320−3をFB−NCのエラーマイクとして用いる処理を含む。詳しくは、信号処理部331は、外耳道マイク320−3により生成された第3の音響信号に基づいて、外耳道マイク320−3をキャンセルポイントとするFB−NCにより第3のノイズキャンセル信号を生成する。外耳道マイク320−3は、鼓膜9の近くに配置されるので、FB−NCのキャンセルポイントを鼓膜9の近くにすることができる。即ち、上記第2の指針が満たされる。
さらに、第1のノイズキャンセル処理は、FB−NC用マイク320−1をFB−NCのエラーマイクとして用いる処理を含む。詳しくは、信号処理部331は、FB−NC用マイク320−1により生成された第1の音響信号に基づいて、FB−NC用マイク320−1をキャンセルポイントとするFB−NCにより第1のノイズキャンセル信号を生成する。FB−NC用マイク320−1は、ドライバ310の近くに配置されるので、上述した距離に起因する位相回転が少なくなる。即ち、上記第1の指針が満たされる。
このように、第1のノイズキャンセル処理によれば、上記第1の指針及び第2の指針を共に満たすことが可能である。したがって、第1のノイズキャンセル処理によれば、距離の遅延を抑制しつつ、鼓膜位置に近いキャンセルポイントの音圧を最小化することが可能である。以下、第1のノイズキャンセル処理の詳細について、図32を参照して説明する。
図32は、本実施形態に係るヘッドホン300による第1のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図32〜図37に示す各ブロックの記号の意味は、次の通りである。
H1:ドライバ310からFB−NC用マイク320−1までの空間401の特性
H2:FB−NC用マイク320−1から外耳道マイク320−3までの空間402の特性(より正確には、ドライバ310からFB−NC用マイク320−1までの空間と、ドライバ310から外耳道マイク320−3までの空間特性との間の、差分特性)
F1:ノイズ源からFB−NC用マイク320−1までの空間403の特性
F2:ノイズ源から外耳道マイク320−3までの空間404の特性
M1:FB−NC用マイク320−1の特性
M2:FF−NC用マイク320−2の特性
M3:外耳道マイク320−3の特性
A:アンプ421の特性
D:ドライバ310の特性
−α:FFフィルタ414の特性
−β1:第1のFBフィルタ411の特性
−β2:第2のFBフィルタ412の特性
−β3:第3のFBフィルタ413の特性
H1´:空間401の模擬特性
H2´:空間402の模擬特性
M1´:FB−NC用マイク320−1の模擬特性
M3´:外耳道マイク320−3の模擬特性
また、Nはノイズを示し、Pは鼓膜位置の音圧を示す。
まず、第1のFBフィルタ411に関するノイズキャンセル処理について説明する。FB−NC用マイク320−1により収音された音響に基づいて生成された音響信号は、第1のFBフィルタ411に入力される。第1のFBフィルタ411は、入力された音響信号に基づき、FB−NC用マイク320−1をキャンセルポイントとするFB方式のノイズキャンセル処理を行い、ノイズキャンセル信号(第1のノイズキャンセル信号)を生成する。第1のFBフィルタ411により生成されたノイズキャンセル信号は、加算器431により、第2のFBフィルタ412及びFFフィルタ414により生成されたノイズキャンセル信号と合成される。かかる合成信号は、アンプ421により増幅されてドライバ310から出力される。
次いで、FFフィルタ414に関するノイズキャンセル処理について説明する。FF−NC用マイク320−2により収音された音響に基づいて生成された音響信号は、FFフィルタ414に入力される。FFフィルタ414は、入力された音響信号に基づくFF方式のノイズキャンセル処理により、ノイズキャンセル信号(第2のノイズキャンセル信号)を生成する。FFフィルタ414により生成されたノイズキャンセル信号は、加算器431により、第1のFBフィルタ411及び第2のFBフィルタ412により生成されたノイズキャンセル信号と合成される。かかる合成信号は、アンプ421により増幅されてドライバ310から出力される。
最後に、第2のFBフィルタ412に関するノイズキャンセル処理について説明する。外耳道マイク320−3は、音響を収音して、音響信号を生成する。加算器432は、外耳道マイク320−3により生成された音響信号から、ドライバ310に入力される出力信号に、ブロック441、442、443及び444に示す内部モデル(特性:D´、H1´、H2´及びM3´)を適用した信号を、減算して合成する。ここでの内部モデルは、出力信号がドライバ310に入力されてから第3の音響信号が生成されるまでの間の特性を模擬した特性を有する。かかる合成信号は、第2のFBフィルタ412に入力される。第2のFBフィルタ412は、入力された音響信号に基づき、外耳道マイク320−3をキャンセルポイントとするFB方式のノイズキャンセル処理を行い、ノイズキャンセル信号(第3のノイズキャンセル信号)を生成する。第2のFBフィルタ412により生成されたノイズキャンセル信号は、加算器431により、第1のFBフィルタ411及びFFフィルタ414により生成されたノイズキャンセル信号と合成される。かかる合成信号は、アンプ421により増幅されてドライバ310から出力される。
ドライバ310から出力された音響は、まず、空間401を経由後、空間405において空間403を経由したノイズNと干渉し、ノイズNをキャンセルする。キャンセルされきれなかったノイズNは、FB−NC用マイク320−1に収音される。また、ドライバ310から出力された音響は、さらに空間402を経由後、空間406において、空間404を経由したノイズNと干渉し、ノイズNをキャンセルする。キャンセルされきれなかったノイズNは、外耳道マイク320−3に収音されると共に、鼓膜位置音圧Pとして鼓膜に伝達される。
以上、第1のノイズキャンセル処理の詳細を説明した。第1のノイズキャンセル処理によれば、内部モデルが導入されている。以下では、内部モデルを導入することにより、ノイズキャンセル性能が向上し得ることについて詳しく説明する。
まず、ドライバ310に入力される出力信号をyと定義する。すると、外耳道マイク320−3の位置での音圧Pは、次式のようになる。
続いて、出力信号yを算出する数式を以下により求める。
以上により、出力信号yは、次式のように表記される。
数式(B2)及び数式(B6)により、外耳道マイク320−3の位置での感度関数Pは、次式のようになる。
数式(B7)に示した感度関数Pのうち、次の数式(B8)に示す項は、内部モデルに含まれる各模擬特性が一致するならば、即ちM3=M3´、D=D´、H1=H1´、H2=H2´である場合、省略可能である。
一方で、数式(B7)に示した感度関数Pのうち、次の数式(B9)に示す項は、設計可能なパラメータであるβ2を次の数式(B10)の通り設計することにより省略可能である。
数式(B10)の通り設計したβ2を数式(B9)に代入すると、次式のようになる。
以上により、省略された項を数式(B7)から除くと、感度関数Pは次式のようになる。
上記数式(B12)により、β1を最大化することにより、感度関数Pを最小化できることが分かる。即ち、遅延の少ないFB−NC用マイク320−1を有する系のゲインを最大化することにより、鼓膜により近い外耳道マイク320−3の位置における感度関数を最小化できることが分かる。以上説明したように、内部モデルを導入することにより、鼓膜により近い外耳道マイク320−3の位置においてノイズをキャンセルすることが可能であると言える。
(2)第2のノイズキャンセル処理
第2のノイズキャンセル処理は、外耳道マイク320−3を、FF−NCのために用いる処理である。第2のノイズキャンセル処理として、外耳道マイク320−3は、適応的なFF−NCのためのエラーマイクとして用いられてもよいし、固定的なFF−NCのフィルタを設定するために用いられてもよい。以下、これらについて順に説明する。
−外耳道マイク320−3をエラーマイクとして用いる場合
外耳道マイク320−3は、FF−NCにおける適応処理のためのエラーマイクとして用いられてもよい。適応処理とは、エラーマイク位置での誤差信号を最小化するようにフィルタ特性を適応的に変化させる手法である。詳しくは、信号処理部331は、FF−NC用マイク320−2により生成された第2の音響信号に基づいて、FF−NCにより第2のノイズキャンセル信号を生成する。信号処理部331は、このFF−NCに用いられるFFフィルタのフィルタ特性を、外耳道マイク320−3により生成された第3の音響信号に基づいて適応的に制御する。本手法によれば、FF−NCのエラーマイク位置が鼓膜9の近くになるので、高いノイズキャンセル効果が期待される。外耳道マイク320−3をエラーマイクとして用いる場合の第2のノイズキャンセル処理の詳細について、図33を参照して説明する。
図33は、本実施形態に係るヘッドホン300による第2のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。第1のFBフィルタ411に関するノイズキャンセル処理については、図32を参照して上記説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
以下では、FFフィルタ414に関するノイズキャンセル処理について説明する。FF−NC用マイク320−2により収音された音響に基づいて生成された音響信号は、FFフィルタ414に入力される。適応制御部415には、FF−NC用マイク320−2により収音された音響に基づいて生成された音響信号、及び外耳道マイク320−3により収音された音響に基づいて生成された音響信号が入力される。そして、適応制御部415は、これらの音響信号に基づいて、FFフィルタ414の特性−αを適応的に制御する。適応制御部415による適応的な制御の元、FFフィルタ414は、入力された音響信号に基づくFF方式のノイズキャンセル処理により、ノイズキャンセル信号(第2のノイズキャンセル信号)を生成する。FFフィルタ414により生成されたノイズキャンセル信号は、加算器431により、第1のFBフィルタ411により生成されたノイズキャンセル信号と合成される。かかる合成信号は、アンプ421により増幅されてドライバ310から出力される。
以上、外耳道マイク320−3をエラーマイクとして用いる場合について詳細に説明した。適応制御部415のアルゴリズムとしては、例えばLMS(Least Mean Square)又はFiltered−X LMS等が用いられ得る。適応制御部415による制御に、2次音源からエラーマイクまでの特性(2次経路又は2次経路特性とも称される)が用いられることが、ノイズキャンセル性能の向上のためには望ましい場合がある。図33に示したモデル構成例における2次経路特性は、ドライバ310から外耳道マイク320−3までの特性である、ADH1H2に相当する。
2次経路特性は、ユーザがヘッドホンを装着している時に測定信号を用いて測定されてもよいし、事前に測定された一般的な測定値が用いられてもよい。以下では、図34を参照して、測定信号を用いて2次経路特性を測定する信号処理について説明する。
図34は、本実施形態に係るヘッドホン300による2次経路特性の測定処理のモデル構成例を示す図である。図34に示したモデル構成例は、図33に示したモデル構成例に、測定信号生成部451及び測定信号解析部452が追加されている。また、第1のFBフィルタ411及びFFフィルタ414は、共にOFFにされ、動作を停止している。以下、測定信号生成部451及び測定信号解析部452について詳しく説明する。
測定信号生成部451は、測定信号を生成する。測定信号としては、例えばTSP(Time Stretched Pulse)信号、ホワイトノイズ、又はM系列信号等の任意の系列が用いられ得る。測定信号生成部451により生成された測定信号は、アンプ421により増幅されてドライバ310に入力され、音響として出力される。ドライバ310から出力された音響は、空間401及び402を経由して、外耳道マイク320−3に収音される。そして、外耳道マイク320−3により生成された音響信号が、測定信号解析部452に入力される。以上により、測定信号解析部452に入力される音響信号は、測定信号に、特性ADH1H2M3を適用したものとなる。測定信号解析部452は、測定信号生成部451により生成された測定信号、外耳道マイク320−3により得られた音響信号、及び既知のM3に基づいて、2次経路特性ADH1H2を計算する。
このようにして、2次経路特性ADH1H2を測定することができる。適応制御部415は、上述した処理により予め測定した2次経路特性に基づいてFFフィルタの特性−αを制御することで、ノイズキャンセル性能を向上させることができる。
ここで、特性H1及びH2は、外耳道5の特性及び耳介2の形状等の身体的特徴に起因して、ユーザごとに異なる。そこで、固定フィルタが用いられる場合には、測定信号を用いて測定されたユーザ個人の2次経路特性ADH1H2に基づくフィルタ特性の補正が行われることが望ましい。以下では、この点について詳しく説明する。
−外耳道マイク320−3を用いて固定フィルタを補正する場合
外耳道マイク320−3は、NCの固定フィルタを補正するために用いられてもよい。詳しくは、信号処理部331は、上述した測定信号生成部451及び測定信号解析部452を用いた測定処理により、2次経路特性ADH1H2を測定する。そして、信号処理部331は、測定した2次経路特性ADH1H2に基づいて、ノイズキャンセル信号を生成するための固定フィルタの特性(即ち、フィルタ係数)を補正する。固定フィルタの特性は、一般的な2次経路特性に基づいて設計されるところ、ヘッドホン300を装着したユーザに関し測定された2次経路特性に基づいてフィルタ特性を補正することで、ユーザの個人差を吸収することができる。これにより、ノイズキャンセル性能を向上させることができる。補正対象の固定フィルタは、FFフィルタであってもよいし、FBフィルタであってもよい。以下では、補正対象の固定フィルタが図34に示すFFフィルタ414である例を説明する。
事前に測定された一般的な2次経路特性を、ADH1commonH2commonとする。また、外耳道5の特性及び耳介2の形状等の身体的特徴に起因する影響を含む、ユーザ個人の2次経路特性を、ADH1personalH2personlalとする。
一般的な2次経路特性ADH1commonH2commonとユーザ個人の2次経路特性ADH1personalH2personlalとの差分特性をΔHとする。ΔHは、次式のように定義される。
FF−NCは、漏れこみ信号に対して鼓膜位置での音圧を最小化するように設計される。即ち、次式が満たされるように、FFフィルタの特性αが設計される。
FF−NCの固定フィルタは、一般的な2次経路特性DH1commonH2commonに基づいて設計される。即ち、FFフィルタの特性αは次式のように固定的に設計される。
一般的な2次経路特性DH1commonH2commonに基づいて設計された固定フィルタが用いられる場合、身体的特徴の個人差に起因するFF−NCの残差は、数式(B14)で求めたフィルタ特性を数式(B13)に代入することにより、次式の通りに表現される。
ここで、一般的な2次経路特性とユーザ個人の2次経路特性が同一であれば、即ちADH1personalH2personlal=ADH1commonH2commonであれば、鼓膜位置の音圧は最小化される。しかし、一般的な次経路特性とユーザ個人の2次経路特性とに間には差があることが多い。よって、信号処理部331は、固定フィルタのフィルタ特性に対して、ΔHを補正特性として乗ずることにより、フィルタ特性を個人化して、個人差を吸収することができる。固定フィルタのフィルタ特性に補正特性ΔHを乗じたフィルタ特性は、次式で表される。
数式(B16)に示すように、信号処理部331は、FF−NCの固定フィルタに補正特性を乗じて、ユーザの個人差を吸収することができる。従って、一般的な2次経路特性に基づき設計された固定フィルタをそのまま用いる場合と比較して、ノイズキャンセル性能を向上させることが可能である。
(3)第3のノイズキャンセル処理
第3のノイズキャンセル処理は、図32を参照して上記説明した第1のノイズキャンセル処理と図33を参照して上記説明した第2のノイズキャンセル処理とを組み合わせた処理である。即ち、第3のノイズキャンセル処理は、外耳道マイク320−3を、第2のFBフィルタ412によるFB−NCのエラーマイクとして用いつつ、及びFFフィルタ414によるFF−NCの適応制御のためのエラーマイクとして用いる処理である。第3のノイズキャンセル処理では、第1のノイズキャンセル処理と第2のノイズキャンセル処理の双方の効果が奏されるので、いずか一方よりも高いノイズキャンセル効果が期待される。以下、第3のノイズキャンセル処理の詳細について、図35を参照して説明する。
図35は、本実施形態に係るヘッドホン300による第3のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図35に示すように、外耳道マイク320−3は、音響を収音して、音響信号を生成する。この音響信号は、加算器432を経由して第2のFBフィルタ412に入力されると共に、適応制御部415にも入力される。このようにして、外耳道マイク320−3が、第2のFBフィルタ412によるFB−NCのエラーマイクとして機能しつつ、FFフィルタ414によるFF−NCの適応制御のためのエラーマイクとして機能する。詳細な信号処理については、図32及び図33を参照して上記説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
なお、FFフィルタ414が固定フィルタとして設計される場合、外耳道マイク320−3は、かかる固定フィルタのフィルタ特性を補正するために用いられてもよい。即ち、外耳道マイク320−3は、2次経路特性の測定処理に用いられ、測定結果に基づく補正特性が固定フィルタに適用されてもよい。これにより、2次経路特性の個人差を吸収することができるので、ノイズキャンセル性能を向上させることができる。
(4)第4のノイズキャンセル処理
第4のノイズキャンセル処理は、外耳道マイク320−3を用いてIMC(Internal model control)型のFB−NCを行う処理である。IMC型のFB−NCは、FF−NCと同様に、感度関数の分子(即ち、上記数式(A3)のノイズNにかかる係数の分子)を最小化することによりノイズキャンセル効果を最大化する手法である。以下では、特性βを用いて上記数式(1)の分母を最大化するFB−NCと区別するために、IMC型のFB−NCをIMC−FBと称するものとする。第4のノイズキャンセル処理では、信号処理部331は、FB−NC用マイク320−1により生成された第1の音響信号に基づいて、IMC−FBにより第4のノイズキャンセル信号を生成する。信号処理部331は、このIMC−FBに用いられるFBフィルタ413のフィルタ特性を、外耳道マイク320−3により生成された第3の音響信号に基づいて適応的に制御する。本手法によれば、IMC−FBのエラーマイク位置が鼓膜9の近くになるので、高いノイズキャンセル効果が期待される。以下、第4のノイズキャンセル処理の詳細について、図36を参照して説明する。
図36は、本実施形態に係るヘッドホン300による第4のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図36に示すモデル構成例は、図33に示したモデル構成例と比較して、第1のFBフィルタ411に代えて第3のFBフィルタ413を有する点、及び第3のFBフィルタ413を適応的に制御する適応制御部416を有する点で相違する。FFフィルタ414に関するノイズキャンセル処理については、図33を参照して上記説明した通りであるので、ここでの詳細な説明は省略する。以下では、第3のFBフィルタ413に関するノイズキャンセル処理(IMC−FB)について詳しく説明する。
FB−NC用マイク320−1は、音響を収音して、音響信号を生成する。加算器433は、FB−NC用マイク320−1により生成された音響信号から、ドライバ310に入力される出力信号に、ブロック441、442、及び445に示す内部モデル(:特性D´、H1´及びM1´)を適用した信号を、減算して合成する。本内部モデルは、出力信号がドライバ310に入力されてから第1の音響信号が生成されるまでの間の特性を模擬した特性を有する。かかる合成信号は、第3のFBフィルタ413に入力されると共に、適応制御部416に入力される。一方で、外耳道マイク320−3により収音された音響に基づいて生成された音響信号も、適応制御部416に入力される。適応制御部416は、入力されたこれらの音響信号に基づいて、第3のFBフィルタ413の特性−β3を適応的に制御する。適応制御部416による適応的な制御の元、第3のFBフィルタ413は、入力された音響信号に基づくFB方式のノイズキャンセル処理により、ノイズキャンセル信号を生成する。第3のFBフィルタ413により生成されたノイズキャンセル信号は、加算器431により、FFフィルタ414により生成されたノイズキャンセル信号と合成される。かかる合成信号は、アンプ421により増幅されてドライバ310から出力される。
なお、第3のFBフィルタ413が固定フィルタとして設計される場合、外耳道マイク320−3は、かかる固定フィルタのフィルタ特性を補正するために用いられてもよい。即ち、外耳道マイク320−3は、2次経路特性の測定処理に用いられ、測定結果に基づく補正特性が固定フィルタに適用されてもよい。これにより、2次経路特性の個人差を吸収することができるので、ノイズキャンセル性能を向上させることができる。
(5)第5のノイズキャンセル処理
第5のノイズキャンセル処理は、図32を参照して上記説明した第1のノイズキャンセル処理と図36を参照して上記説明した第4のノイズキャンセル処理とを組み合わせた処理である。即ち、第5のノイズキャンセル処理は、外耳道マイク320−3を、次の3種類のエラーマイクとして用いる処理である。第1に、外耳道マイク320−3は、適応制御部415によるFF−NCの適応制御のためのエラーマイクとして用いられる。第2に、外耳道マイク320−3は、第2のFBフィルタ412によるFB−NCのエラーマイクとして用いられる。第3に、外耳道マイク320−3は、適応制御部416によるIMC−FBの適応制御のためのエラーマイクとして用いられる。第5のノイズキャンセル処理では、第1のノイズキャンセル処理と第4のノイズキャンセル処理の双方の効果が奏されるので、いずか一方よりもより高いノイズキャンセル効果が期待される。以下、第5のノイズキャンセル処理の詳細について、図37を参照して説明する。
図37は、本実施形態に係るヘッドホン300による第5のノイズキャンセル処理のモデル構成例を示す図である。図37に示すように、外耳道マイク320−3は、音響を収音して、音響信号を生成する。この音響信号は、加算器432を経由して第2のFBフィルタ412に入力され、適応制御部415に入力され、且つ適応制御部416に入力される。このようにして、外耳道マイク320−3が、上述した3種類のエラーマイクとして機能する。詳細な信号処理については、図32及び図36を参照して上記説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
(6)補足
上記では、本実施形態に係るヘッドホン300が3つの音響入力部320を有することを前提に説明したが、本実施形態はかかる例に限定されない。ヘッドホン300は、3つの音響入力部320のうち、FB−NC用マイク320−1又はFF−NC用マイク320−2のいずれか一方を有していなくてもよい。ヘッドホン300がFF−NC用マイク320−2を有していない場合、上述した第1〜第5のノイズキャンセル処理から、FFフィルタ414を用いたノイズキャンセル処理が省略される。ヘッドホン300がFB−NC用マイク320−1を有していない場合、上述した第1〜第5のノイズキャンセル処理から、第1のFBフィルタ411及び第3のFBフィルタ413を用いたノイズキャンセル処理が省略される。いずれの場合も、少なくともエラーマイクの位置が鼓膜9の近くになるので、高いノイズキャンセル効果が期待される。
<2.5.ヘッドホン300の構造の詳細>
以下、本実施形態に係るヘッドホン300の構造について詳細に説明する。
(1)音響入力部の配置
まず、図38〜図39を参照して、ヘッドホン300が有する音響入力部320の配置について説明する。
図38は、本実施形態に係るヘッドホン300の構成の一例を説明するための図である。図38は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態の構成を示している。図38に示すように、ヘッドホン300は、ハウジング301及びイヤーパッド302を含む。ハウジング301には、ドライバ310、FB−NC用マイク320−1及びFF−NC用マイク320−2が設けられる。また、図38に示すように、ハウジング301から離れた位置に外耳道マイク320−3が配置される。これらの各構成要素の構成は、図28等を参照して上記説明した通りである。
上述したように、ヘッドホン300は、FB−NC用マイク320−1又はFF−NC用マイク320−2のいずれか一方を有していなくてもよい。図39に、FF−NC用マイク320−2を有さず、FB−NC用マイク320−1及び外耳道マイク320−3を有するヘッドホン300Aの構成の一例を示した。図40に、FB−NC用マイク320−1を有さず、FF−NC用マイク320−2及び外耳道マイク320−3を有するヘッドホン300Bの構成の一例を示した。
(2)保持部の形状
以下、図41〜図46を参照して、保持部303の形状のバリエーションを説明する。
図41は、本実施形態に係るヘッドホン300の保持部303の構成の一例を示す図である。図41に示すように、保持部303は、円形を形成するリング状の構造体であってもよい。保持部303のリング内側方向へ設けられた棒状の第1の支持部材305の先端に外耳道マイク320−3が設けられており、リング状構造体のそれ以外の部分はすべて開口部304となっている。
図42は、本実施形態に係るヘッドホン300の保持部303の構成の一例を示す図である。図42に示すように、保持部303は、楕円形を形成するリング状の構造体であってもよい。保持部303のリング内側方向へ設けられた棒状の第1の支持部材305の先端に外耳道マイク320−3が設けられており、リング状構造体のそれ以外の部分はすべて開口部304となっている。
図43は、本実施形態に係るヘッドホン300の保持部303の構成の一例を示す図である。図43に示すように、保持部303は、棒状の構造体で三角形の各辺を形成した構造体であってもよい。保持部303の三角形内側方向へ設けられた棒状の第1の支持部材305の先端に外耳道マイク320−3が設けられており、三角形状構造体のそれ以外の部分はすべて開口部304となっている。
図44は、本実施形態に係るヘッドホン300の保持部303の構成の一例を示す図である。図44に示すように、保持部303は、円形を形成するリング状の構造体から成る保持部303Aと楕円形を形成するリング状の構造体から成る保持部303Bとが連結された構造体であってもよい。保持部303Aのリング内側方向へ設けられた棒状の第1の支持部材305の先端に外耳道マイク320−3が設けられており、リング状構造体のそれ以外の部分はすべて開口部304となっている。
図41〜図44に示した例では、保持部303は、開口部304を有する。一方で、図45及び図46に示すように、保持部303は、開口部304を有さなくてもよい。
図45は、本実施形態に係るヘッドホン300の保持部303の構成の一例を示す図である。図45に示すように、保持部303は、円形を形成するスポンジ状の構造体であってもよい。外耳道マイク320−3は、保持部303の中央に設けられている。
図46は、本実施形態に係るヘッドホン300の保持部303の構成の一例を示す図である。図46に示すように、保持部303は、外耳道5への挿入方向(X軸負方向)の外径が狭く、反対側(X軸正方向)の外径が広い、傘状の構造体であってもよい。外耳道マイク320−3は、保持部303の中央に設けられている。
以上、保持部303の形状の一例を説明した。なお、保持部303は、ゴム、シリコン又はスポンジ等の弾性体により形成され得る。
外耳道マイク320−3は、第1の実施形態において図6等を参照して説明した、マイク141と同様の位置に配置されることが望ましい。即ち、外耳道マイク320−3は、耳甲介腔4と外耳道5の境界19から鼓膜9側に15mmまでの空間、又は耳甲介腔4と外耳道5の境界19から鼓膜9と反対側に15mmまでの空間に配置されることが望ましい。換言すると、保持部303は、ヘッドホン300がユーザに装着された状態で、耳甲介腔4と外耳道5の境界19から鼓膜9側に15mmまでの空間、又は耳甲介腔4と外耳道5の境界19から鼓膜9と反対側に15mmまでの空間に外耳道マイク320−3を保持することが望ましい。ここで、外耳道マイク320−3の位置における周波数特性と鼓膜9の位置における周波数特性との差は、外耳道マイク320−3が鼓膜9に近いほど少なくなる。従って、外耳道マイク320−3の位置は鼓膜9の近いほど望ましい。この点、境界19から鼓膜9と反対側に15mmまでの空間であれば、上記周波数特性の差は許容可能な範囲に収めることができ、所定のノイズキャンセル性能を担保することができる。また、境界19から鼓膜9側に15mm以内の範囲に外耳道マイク320−3が配置される場合、境界19から鼓膜9と反対側の空間にマイク141が配置される場合と比較して、マイク141の位置を鼓膜9の近くにすることができる。さらに、少なくともマイク141が鼓膜9に接触して鼓膜9を傷つけることを防止し、安全性を担保することができる。
(3)有線接続部
続いて、図47〜図49を参照して、ハウジング301と外耳道マイク320−3との接続について説明する。
図47は、本実施形態に係るヘッドホン300の構成の一例を示す図である。図48は、図47に示したヘッドホン300を、別の視点から見た構成を示す図である。図47に示した例では、ヘッドホン300は、有線接続部340を有する。有線接続部340は、ハウジング301と外耳道マイク320−3とを有線で接続する。さらに詳しくは、有線接続部340は、ハウジング301に格納される信号処理部331と外耳道マイク320−3とを有線で接続する。有線接続部340は、電線又は光ファイバ等の、信号を伝達可能な部材により形成される。
さらに、ヘッドホン300は、有線接続部340を巻き取る巻き取り部341を有する。巻き取り部341は、例えば、有線接続部340が巻き付けられる巻芯部と、巻芯部を回転可能に支持する支持部と、有線接続部340を巻き取る方向に巻芯部を回転させる駆動部とを含んで構成される。駆動部は、ゼンマイバネ又はモータ等を含み、巻芯部から送り出された有線接続部340を、巻芯部に巻き取るよう駆動する。これにより、内側空間30内に有線接続部340が余分に送り出されたままになることが防止される。よって、有線接続部340の絡まりが防止される。また、ユーザがヘッドホン300を装着した際に、有線接続部340がイヤーパッド302とユーザの頭部とに挟まれることを防止することができる。
巻き取り部341は、ユーザに合わせて有線接続部340の巻き取り量を変えるストッパー機構、及び駆動部の回転を制御する装置等を含んでいてもよい。ユーザの耳の大きさ等により最適な巻き取り量が異なり得るところ、かかる構成により巻き取り量を最適にすることができる。
有線接続部340は、巻き取り部341から自在に送り出される。ユーザは、ヘッドホン300を装着する前に有線接続部340を引き出して保持部303を装着した上で、有線接続部340を巻き取り部341に巻き取らせながらヘッドホン300を装着することができる。
図49は、本実施形態に係るヘッドホン300の構成の一例を示す図である。図49に示すように、ハウジング301は、内側空間30側に、保持部303及び外耳道マイク320−3の少なくとも一部を収容可能な凹部342を備えていてもよい。凹部342は、ハウジング301の内側空間30側の壁部301aに形成される。例えば、凹部342は、保持部303及び外耳道マイク320−3の形状に合致する形状の溝を有し、非装着時には、当該溝に保持部303及び外耳道マイク320−3を収容する。なお、凹部342は、イヤーパッド302に設けられてもよい。
(4)第2の支持部材
図28等を参照して上記説明したように、ヘッドホン300は、第2の支持部材306を含み得る。以下では、第2の支持部材306の構成について、図50〜図62を参照して説明する。
図50は、本実施形態に係るヘッドホン300の構成の一例を示す図である。図51〜図53は、図50に示したヘッドホン300を、別の視点から見た構成を示す図である。図50に示した例では、ヘッドホン300は、一端306aがハウジング301と連結され、他端306bが保持部303と連結される第2の支持部材306を含む。図50に示すように、第2の支持部材306は、S字状に湾曲した棒状の構造体であってもよい。第2の支持部材306は、例えばシリコン又はゴム等の弾性体により、ハウジング301からユーザの耳側に突出するよう形成される。これにより、ヘッドホン300がユーザに装着されると、第2の支持部材306は、ユーザの耳の形状、大きさ、及び頭部の大きさに追従して、保持部303をユーザの外耳道5の入り口付近に緩やかに押接して固定する。また、第2の支持部材306は、熱可塑性樹脂により形成されてもよく、その場合、保持部303がユーザの耳に過度に押接されることを防止することができる。
図54は、図50に示したヘッドホン300の、非装着時の構成を示す図である。図54に示すように、保持部303は、イヤーパッド302のユーザの頭部との接触面302aを超えて外側に突出する。これにより、ヘッドホン300がユーザに装着される際に、第2の支持部材306が弾性変形しつつ、弾性変形に起因する応力により保持部303がユーザの耳に押接される。保持部303が接触面302aを超えて突出する長さは、30mm以下であることが望ましい。これにより、保持部303がユーザの耳に過度に押接されることを防止することができる。また、保持部303がユーザの外耳道5の内部に過度に挿入されることを防止することができる。
図55は、本実施形態に係るヘッドホン300の構成の一例を示す図である。図55に示した例では、第2の支持部材306の内部に有線接続部340が格納される。この場合、内側空間30に有線接続部340が露出しなくなるので、有線接続部340を巻き取り部341から引き出したり、巻き取らせたりする手間が省略され、ユーザの利便性が向上する。
図56は、本実施形態に係るヘッドホン300の構成の一例を示す図である。図57〜図59は、図56に示したヘッドホン300を、別の視点から見た構成を示す図である。図56に示した例では、ヘッドホン300は、複数の第2の支持部材306A〜306Cを含む。第2の支持部材306A〜306Cの一端306Aa〜306Caは、互いに異なる位置でハウジング301と連結される。また、第2の支持部材306A〜306Cの他端306Ab〜306Cbは、互いに異なる位置で保持部303と連結される。かかる構成により、外耳道マイク320−3とドライバ310との相対的位置関係が、ヘッドホン300の装着毎に変わり難くなる。相対的位置関係が一定となるので、ヘッドホン300の装着毎にノイズキャンセルリングフィルタの更新を行わなくても済む、又は更新量を抑制することができる。また、かかる構成により、ヘッドホン300の装着中に外耳道マイク320−3の位置が耳穴からずれに難くなる。これにより、ヘッドホン300の装着中のノイズキャンセル処理を安定化することができる。
図60は、本実施形態に係るヘッドホン300の構成の一例を示す図である。図61は、図60に示したヘッドホン300を、別の視点から見た構成を示す図である。図60に示した例では、第2の支持部材306は、リンク構造を有する。詳しくは、第2の支持部材306は、リンク350a及び350bと、リンク350a及び350bを可動に接続するジョイント部351とを含んで構成される。リンク350は、弾性体により形成されていてもよいし、プラスチック、金属又は木材等の弾塑性体又は塑性体により形成されてもよい。第2の支持部材306は、1自由度を有していてもよいし、複数の自由度を有していてもよい。例えば、第2の支持部材306は、3以上の複数のリンク350を有していてもよい。また、ジョイント部351は、各リンク350を1自由度で回転可能に接続するピンであってもよいし、2以上の自由度で接続するボール及びソケットであってもよい。高い自由度を有するリンク構造の第2の支持部材306が用いられることで、様々な耳の形状を有するユーザに保持部303をフィットさせることができる。
また、図60を参照すると、リンク350a及び350bの各々が拘束部材352により接続され、可動域が所定範囲に拘束されている。拘束部材352は、例えばゴム又はバネ等の弾性体により形成される。拘束部材352は、リンク350の可動域を所定範囲に拘束することで、保持部303及び外耳道マイク320−3が向く方向を所定範囲に拘束することができる。例えば、拘束部材352は、保持部303及び外耳道マイク320−3が向く方向をユーザの耳の方向に拘束することができる。
また、第2の支持部材306は、スライド機構を有していてもよい。図61を参照すると、第2の支持部材306の一端306aは、ハウジング301の壁部301aを滑動する滑動部材353に連結される。滑動部材353は、内側空間30の壁部301aに設けられたレール354に係り合わされて滑動する。レール354は、例えば溝状の構造体であり、ドライバ310の周りを一部囲むように形成される。第2の支持部材306がスライド機構を有することにより、保持部303及び外耳道マイク320−3の可動域が広くなるので、様々な耳の形状を有するユーザに保持部303をフィットさせることができる。
なお、図61に示すように、保持部303及び外耳道マイク320−3の可動域は、接触面302aと平行な平面内で、ユーザの頭部前後方向(略Y軸方向)に40mm以内、ユーザの頭部上下方向(略Z軸方向)に70mm以内に制限されることが望ましい。かかる制限は、例えば、リンク350の長さ、ジョイント部351の可動域、並びにレール354の配置等により実現される。このような可動域の制限により、保持部303及び外耳道マイク320−3の可動域を、ユーザの耳にフィット可能な範囲に制限することができる。
図62及び図63は、本実施形態に係るヘッドホン300の構成の一例を示す図である。図62に示した例では、ヘッドホン300は、リンク構造を有する第2の支持部材306A及び306Bを含んでいる。図63に示した例では、ヘッドホン300は、リンク構造を有する第2の支持部材306A、306B及び306Cを含んでいる。第2の支持部材306Aは、レール354Aを滑動する滑動部材353Aに連結される。第2の支持部材306Bは、レール354Bを滑動する滑動部材353Bに連結される。第2の支持部材306Cは、レール354Cを滑動する滑動部材353Cに連結される。このように、ヘッドホン300は、リンク構造を有する第2の支持部材306を複数含んでいてもよい。かかる構成により、外耳道マイク320−3とドライバ310との相対的位置関係が、ヘッドホン300の装着毎に変わり難くなる。相対的位置関係が一定となるので、ヘッドホン300の装着毎にノイズキャンセルリングフィルタの更新を行わなくても済む、又は更新量を抑制することができる。また、かかる構成により、ヘッドホン300の装着中に外耳道マイク320−3の位置が耳穴からずれに難くなる。これにより、ヘッドホン300の装着中のノイズキャンセル処理の効果を安定化することができる。
図64は、本実施形態に係るヘッドホン300の構成の一例を示す図である。図64に示した例では、ヘッドホン300は、第2の支持部材306の姿勢を制御する姿勢制御装置360を含む。姿勢制御装置360は、操作体361と、リンク362と、ジョイント部363とを含む。リンク362は、ハウジング301を内側空間30から外側空間31まで貫通する貫通孔を通って配置される。内側空間30に突出したリンク362の一端は、ジョイント部363により第2の支持部材306と可動に接続される。外側空間31側のリンク362の他端は、操作体361に接続される。操作体361は、少なくとも一部が外側空間31に露出して、可動に配置される。操作体361が動かされると、その動きがリンク362及びジョイント部363を介して第2の支持部材306に伝達される。ユーザは、操作体361をつまんで3軸方向に動かすことで、第2の支持部材306の姿勢を動かしたり、変形させたりすることができる。これにより、ユーザは、ヘッドホン300を装着したまま、即ち内側空間30に手をいれなくても、第2の支持部材306を動かすことが可能となる。また、ヘッドホン300の着脱時に、保持部303、外耳道マイク320−3又は第2の支持部材306が耳に引っ掛かっても、ユーザは、姿勢制御装置360を操作することで、容易にこの引っ掛かりを解消することができる。よって、ユーザに引っ掛かった部材が破損したり、ユーザが怪我をしたりすることを防止することができる。姿勢制御装置360は、モータ等の動力を含んでいてもよく、かかる動力を用いて第2の支持部材306の姿勢を制御してもよい。例えば、姿勢制御装置360は、ヘッドホン300の着脱が検出された場合に、自動的に第2の支持部材306の姿勢を制御する。
<2.6.ヘッドホン300の装着/非装着に応じた制御>
動作制御部333は、ヘッドホン300の装着/非装着を判定する。
例えば、図49に示した例では、動作制御部333は凹部342に保持部303及び外耳道マイク320−3が収容されているか否かに基づいて、ヘッドホン300の装着/非装着を判定する。例えば、動作制御部333は、凹部342に保持部303及び外耳道マイク320−3が収容されていない場合、ヘッドホン300が装着されていると判定する。また、動作制御部333は、凹部342に保持部303及び外耳道マイク320−3が収容されている場合、ヘッドホン300が装着されていないと判定する。なお、凹部342に保持部303及び外耳道マイク320−3が収容されているか否かを検出するセンサ又はスイッチが、凹部342又は巻き取り部341に設けられ得る。
他にも、図50に示した例では、動作制御部333は、第2の支持部材306の変形が検出されたか否か等に基づいて、ヘッドホン300の装着/非装着を判定してもよい。また、図64に示した例では、動作制御部333は、姿勢制御装置360へのユーザの操作入力があったか否か、イヤーパッド302の変形が検出されたか否か等に基づいて、ヘッドホン300の装着/非装着を判定してもよい。
そして、動作制御部333は、ヘッドホン300の装着/非装着の判定結果に基づいて、ヘッドホン300の動作を制御する。例えば、動作制御部333は、ヘッドホン300が装着されていると判定した場合に、信号処理部331にノイズキャンセル信号の生成を開始させてもよい。また、動作制御部333は、ヘッドホン300が装着されていると判定した場合に、ドライバ310に出力信号の出力を開始させてもよい。これにより、ユーザがヘッドホン300を装着すると自動的に耳穴開放デバイス100の動作が開始されるので、ユーザの操作負担が軽減される。また、動作制御部333は、ヘッドホン300が装着されていないと判定した場合、ノイズキャンセル信号の生成及び出力信号の出力を停止させてもよい。これにより、非装着時にはヘッドホン300の動作が自動的に停止又は一部停止されるので、無駄な電力消費を防止することができる。
<2.7.まとめ>
以上、第2の実施形態について詳細に説明した。上記説明したように、第2の実施形態に係るヘッドホン300は、FB−NC用マイク320−1、FF−NC用マイク320−2及び外耳道マイク320−3を有し、これらのマイクにより生成された音響信号に基づいてノイズキャンセル処理を行う。外耳道マイク320−3がFB−NCのエラーマイクとして用いられる場合、FB−NCのキャンセルポイントが鼓膜9の近くになるので、高いノイズキャンセル効果が期待される。さらに、FB−NCのエラーマイクとしてFB−NC用マイク320−1が併用される場合、上記第1の指針及び第2の指針を共に満たすことができる。即ち、距離の遅延を抑制しつつ、鼓膜位置に近いキャンセルポイントの音圧を最小化することが可能となる。
また、外耳道マイク320−3は、FF−NC又はIMC−FBにおける適応処理のためのエラーマイクとして使用されてもよい。いずれにしろ、鼓膜9の近くにエラーマイクが配置されるので、ノイズキャンセル性能の向上が期待される。
また、外耳道マイク320−3は、固定フィルタの補正特性の計算のための測定処理に用いられてもよい。この場合、ヘッドホン300を装着したユーザの身体的特徴に起因する個人差を吸収することができるので、固定フィルタをそのまま用いてノイズキャンセル処理を行う場合と比較し、ノイズキャンセル性能を向上させることができる。
<<3.第3の実施形態>>
第3の実施形態は、第2の実施形態において説明したノイズキャンセル処理を、第1の音響処理装置及び第2の音響処理装置の協働により実現する形態である。例えば、第1の音響処理装置は、第1の実施形態において説明した耳穴開放デバイス100等のイヤホンであってもよい。また、第2の音響処理装置は、以下に説明するヘッドホン500等であってもよい。なお、協働する2つの音響処理装置は、互いに一部又は全部を重ねて装着可能であれば、イヤホンとヘッドホンとの組み合わせに限定されない。
<3.1.耳穴開放デバイスの基本構成>
まず、図65及び図66を参照して、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100の基本構成を説明する。
図65は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100の内部構成の一例を示す図である。図65に示すように、耳穴開放デバイス100は、ドライバ110、音響情報取得部140、制御部150、センサ部160及び無線通信部170を含む。
ドライバ110の構成は、第1の実施形態において上記説明した通りである。
音響情報取得部140の構成は、第1の実施形態において上記説明した通りである。
制御部150は、第1の実施形態において上記説明した信号処理部151、及び動作制御部153を含み、認証部155に代えて通信制御部157を含む。信号処理部151及び動作制御部153の構成は、第1の実施形態において上記説明した通りである。通信制御部157は、無線通信部170による無線通信処理を制御する機能を有する。具体的には、通信制御部157は、通信相手の選択、及び通信データの送受信処理を制御する。本実施形態に係る制御部150は、認証部155を有していてもよい。
センサ部160は、耳穴開放デバイス100に関する情報、耳穴開放デバイス100を装着したユーザに関する情報、又は耳穴開放デバイス100と重ねて装着されるヘッドホン500に関する情報を検出する装置である。センサ部160は、感圧センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、及び体温センサ等の各種センサ装置を含み得る。また、センサ部160は、磁気センサを含み得る。また、センサ部160は、RFID(radio frequency identifier)タグ若しくはリーダ等のRFID装置を含み得る。
無線通信部170は、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との無線通信のためのインタフェースである。無線通信部170は、任意の方式で無線通信を行い得る。例えば、無線通信部170は、光通信によって無線通信を行ってもよい。光通信は、超低遅延を実現可能である。また、無線通信部170は、FM(Frequency Modulation)又はAM(amplitude modulation)等のラジオ放送と同様のアナログ手法で無線通信を行ってもよい。これらのアナログ手法も、低遅延を実現可能である。他にも、無線通信部170は、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又はBLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))等のいわゆる2.4GHz帯の無線通信規格に準拠した無線通信を行ってもよい。また、無線通信部170は、NFMI(Near Field Magnetic Induction)等の、磁気共鳴を利用した方法で無線通信を行ってもよい。もちろん、通信方式、帯域及び変調方式は、上記の例に限定されない。
以上、耳穴開放デバイス100の内部構成を説明した。続いて、図66を参照して、耳穴開放デバイス100の外観構成及び基本的な内部処理を説明する。
図66は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100の概要を説明するための図である。図66の上段の図は耳穴開放デバイス100の外観構成を示している。図66の上段に示すように、耳穴開放デバイス100は、第1の実施形態において上記説明した通りの外観構成を有する。本実施形態では、音響情報取得部140としてマイク141が用いられる例を前提に説明するが、音響情報取得部140として鼓膜音圧取得部142が用いられてもよい。
図66の下段は、耳穴開放デバイス100が単体で動作する場合の内部処理の概略を示している。マイク141により生成された音響信号は、FBフィルタ601に入力される。FBフィルタ601は、入力された音響信号に基づいてFB方式のノイズキャンセル処理を行ってノイズキャンセル信号を生成し、ノイズキャンセル信号をドライバ110に出力する。ドライバ110は、入力されたノイズキャンセル信号に基づいて音響を出力する。このようにして、マイク141をキャンセルポイントとするFB方式のノイズキャンセル処理が行われる。
詳細な信号処理については、図8を参照して上記説明した通りである。FBフィルタ601は、第1のFBフィルタ201に相当する。詳しくは、FBフィルタ601は、マイク141をキャンセルポイントとするFB方式のノイズキャンセル処理を行う。
<3.2.ヘッドホン500の基本構成>
続いて、図67及び図68を参照して、本実施形態に係るヘッドホン500の基本構成を説明する。
図67は、本実施形態に係るヘッドホン500の内部構成の一例を示す図である。図67に示すように、ヘッドホン500は、音響出力部510、音響入力部520、制御部530、センサ部540及び無線通信部550を含む。
・音響出力部510
音響出力部510(ドライバ)は、音響信号に基づいて音響を出力する機能を有する。例えば、ドライバ510は、信号処理部531から出力された出力信号に基づいて音響を空間に出力する。
・音響入力部520
音響入力部520は、周囲音を検出するマイクロホン(以下、単にマイクとも称する)を含み、マイクによる検出結果を示す音響信号を生成する。
・制御部530
制御部530は、演算処理装置及び制御装置として機能し、各種プログラムに従ってヘッドホン500による処理全般を制御する。制御部530は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)、DSP(Demand-Side Platform)等の電子回路によって実現される。なお、制御部530は、使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、及び適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。典型的には、制御部530は、ハウジングに格納される。
図67に示すように、制御部530は、信号処理部531、動作制御部533及び通信制御部535を含む。
信号処理部531は、音響入力部520により生成された音響信号及び無線通信部550により耳穴開放デバイス100から受信された音響信号に基づいて、ノイズを対象とするノイズキャンセル信号を生成する機能を有する。信号処理部531は、複数のノイズキャンセル信号を生成し得る。例えば、信号処理部531は、FB方式のノイズキャンセル処理又はFF方式のノイズキャンセル処理の少なくともいずれかを行い、複数のノイズキャンセル信号を生成する。信号処理部531は、生成した複数のノイズキャンセル信号に基づいて音響信号(以下、出力信号とも称する)を生成し、ドライバ510に出力する。例えば、出力信号は、複数のノイズキャンセル信号を合成した信号であってもよいし、音源から取得された音楽信号等の他の音響信号とノイズキャンセル信号とが合成された合成信号であってもよい。信号処理部531は、図68〜図74等を参照して説明するノイズキャンセル処理のための各種構成要素を含む。例えば、信号処理部531は、ノイズキャンセル信号を生成するための各種フィルタ回路、フィルタ回路を適応的に制御するための適応制御部、信号を合成するための加算器等を含む。また、信号処理部531は、アンプ、ADC及びDAC等の回路も含む。
動作制御部533は、ヘッドホン500の動作モードを制御する機能を有する。動作制御部533は、ヘッドホン500の機能の一部又は全部を停止させたり起動させたりする。例えば、動作制御部533は、センサ部540による検出結果に基づいて、ヘッドホン500の機能の停止/起動を制御する。
・センサ部540
センサ部540は、ヘッドホン500に関する情報、ヘッドホン500を装着したユーザに関する情報、又はヘッドホン500と重ねて装着される耳穴開放デバイス100に関する情報を検出する装置である。センサ部540は、感圧センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、及び体温センサ等の各種センサ装置を含み得る。また、センサ部540は、磁気センサ又はRFID(radio frequency identifier)タグ若しくはリーダ等のRFID装置を含み得る。
・無線通信部550
無線通信部550は、ヘッドホン500と耳穴開放デバイス100との無線通信のためのインタフェースである。無線通信部550は、任意の方式で無線通信を行い得る。例えば、無線通信部550は、光通信によって無線通信を行ってもよい。光通信は、超低遅延を実現可能である。また、無線通信部550は、FM(Frequency Modulation)又はAM(amplitude modulation)等のラジオ放送と同様のアナログ手法で無線通信を行ってもよい。これらのアナログ手法も、低遅延を実現可能である。他にも、無線通信部550は、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又はBLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))等のいわゆる2.4GHz帯の無線通信規格に準拠した無線通信を行ってもよい。また、無線通信部550は、NFMI(Near Field Magnetic Induction)等の、磁気共鳴を利用した方法で無線通信を行ってもよい。もちろん、通信方式、帯域及び変調方式は、上記の例に限定されない。
以上、ヘッドホン500の内部構成を説明した。続いて、図68を参照して、ヘッドホン500の外観構成及び基本的な内部処理を説明する。
図68は、本実施形態に係るヘッドホン500の概要を説明するための図である。図68の上段の図はヘッドホン500の外観構成を示している。図68の上段に示すように、ヘッドホン500は、第2の実施形態において上記説明したヘッドホン300から、外耳道マイク320−3を除いた構成を有する。以下に詳しく説明する。
図68の上段に示すように、ヘッドホン500は、ハウジング501及びイヤーパッド502を含む。ハウジング501及びイヤーパッド502により、ヘッドホン500を装着したユーザの片耳は覆われる(典型的には、密閉される)。ハウジング501には、ドライバ510、音響入力部520−1及び520−2及びフィルタ回路等の信号処理のための各種装置が格納される。イヤーパッド502は、ユーザの頭部と接触面502aで接触する。イヤーパッド502は、スポンジ等の弾性体により形成され、ユーザの頭部に合わせて変形しながらユーザの頭部に密着し、内側空間30を形成する。内側空間30は、ハウジング501、イヤーパッド502及びユーザの頭部により形成される空間である。内側空間30は、外界側の空間である外側空間31と隔絶した密閉空間であってもよいし、外側空間31と繋がっていてもよい。内側空間30には、ハウジング501、イヤーパッド502及びユーザの頭部等のパッシブ遮音素子によるパッシブ遮音後のノイズが到来する。ハウジング501の壁部501aは内側空間30と接し、ハウジング501の外側の壁部501bは外側空間31と接する。
ドライバ510は、音響信号に基づいて音響を空間に出力する。ドライバ510は、ハウジング501に設けられる。そして、ドライバ510は、ハウジング501よりも鼓膜側の空間である内側空間30に向けて音響を出力する。例えば、ドライバ510は、ノイズキャンセル信号に基づいて音響を空間に出力する。これにより、内側空間30に到来したノイズをキャンセルすることができる。
音響入力部520(520−1、520−2)は、周囲音を収音して音響信号を生成する。図68に示すように、音響入力部520は、ユーザに装着された状態でユーザの片耳側に2つ配置される。
音響入力部520−1は、FB−NCのための収音を行うマイク(即ち、FB−NC用マイク)である。FB−NC用マイク520−1は、ヘッドホン500がユーザに装着された状態で、ユーザの鼓膜9からの距離が、音響入力部320−2より短い位置に配置される。より具体的には、FB−NC用マイク520−1は、ヘッドホン500がユーザに装着された状態で、ノイズが遮蔽物を介して、即ちパッシブ遮音されて収音される位置に配置される。さらには、FB−NC用マイク520−1は、ユーザの鼓膜9とドライバ510との間に配置されることが望ましい。ここでの遮蔽物とは、パッシブ遮音素子であり、ハウジング501、イヤーパッド502及びユーザの頭部に相当する。図68に示すように、FB−NC用マイク520−1は、ハウジング501の内側空間30側の壁部501aに設けられる。そして、FB−NC用マイク520−1は、内側空間30の音響を収音し、音響信号を生成する。このとき収音される音響は、パッシブ遮音素子によるパッシブ遮音後のノイズを含む。FB−NC用マイク520−1は、第1の音響入力部に相当し、FB−NC用マイク520−1により生成される音響信号は第1の音響信号とも称され得る。FB−NC用マイク520−1により生成された音響信号は、FBフィルタに入力されて、ノイズキャンセル信号の生成に用いられる。
音響入力部520−2は、FF−NCのための収音を行うマイク(即ち、FF−NC用マイク)である。また、FF−NC用マイク520−2は、ヘッドホン500がユーザに装着された状態で、ユーザの鼓膜9からの距離がFB−NC用マイク520−1よりも長い位置に配置される。より具体的には、FF−NC用マイク520−2は、ヘッドホン500がユーザに装着された状態で、ノイズが遮蔽物を介さないで、即ちパッシブ遮音されないで収音される位置に配置される。図68に示すように、FF−NC用マイク520−2は、ハウジング501の外側空間31側の壁部501bに設けられる。そして、FF−NC用マイク520−2は、外側空間31の音響を収音し、音響信号を生成する。このとき収音される音響は、外側空間31に到来したノイズを含む。FFマイク520−2は、第2の音響入力部に相当し、FFマイク520−2により生成される音響信号は第2の音響信号とも称され得る。ここで、FF−NC用マイク520−2は、外側空間31に露出していてもよいし、露出していなくてもよい。例えば、FF−NC用マイク520−2は、ハウジング501に埋め込まれていてもよく、回り込み音又は布地等のカバーを透過した音を収音してもよい。FF−NC用マイク520−2により生成された音響信号は、FFフィルタに入力されて、ノイズキャンセル信号の生成に用いられる。
なお、図68では、ヘッドホン500の右耳側の外観構成が示されているが、左耳側の外観構成は右耳側の外観構成と左右対称に構成される。ヘッドホン500は、右耳側と左耳側とで互いに分離独立して構成されてもよいし、一体的に構成されてもよい。また、ヘッドホン500は、オーバーヘッド型、ネックバンド型、耳かけ型等の任意の構造を有し得る。
以上、ヘッドホン500の外観構成を説明した。引き続き図68を参照して、ヘッドホン500が単体で動作する場合の内部処理を説明する。
図68の下段は、ヘッドホン500が単体で動作する場合の内部処理の概略を示している。FB−NC用マイク520−1により生成された音響信号は、FBフィルタ701に入力される。FBフィルタ701は、入力された音響信号に基づいて、FB−NC用マイク520−1をキャンセルポイントとするFB方式のノイズキャンセル処理を行い、ノイズキャンセル信号を生成する。生成されたノイズキャンセル信号は、加算器703に入力される。一方で、FF−NC用マイク520−2により生成された音響信号は、FFフィルタ702に入力される。FFフィルタ702は、入力された音響信号に基づいてFF方式のノイズキャンセル処理を行ってノイズキャンセル信号を生成する。生成されたノイズキャンセル信号は、加算器703に入力される。加算器703は、FBフィルタ701及びFFフィルタ702の各々から入力されたノイズキャンセル信号を合成して、かかる合成信号をドライバ110に出力する。ドライバ110は、入力された合成信号に基づいて音響を出力する。このようにして、併用型のノイズキャンセル処理が行われる。
詳細な信号処理については、図27を参照して上記説明した通りである。詳しくは、FBフィルタ701はFBフィルタ385に相当し、FFフィルタ702はFFフィルタ387に相当する。
<3.3.ノイズキャンセル処理の詳細>
ユーザは、耳穴開放デバイス100を装着しつつ、さらに追加でヘッドホン500を装着し得る。この場合、耳穴開放デバイス100又はヘッドホン500のいずれか一方を単体で用いるよりも、ノイズキャンセル効果を向上させることができる。以下、図69〜図74を参照して、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とが併用される場合のノイズキャンセル処理について説明する。
(1)第1の併用例
第1の併用例は、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とが互いに独立してノイズキャンセル処理を行う例である。本例について、図69を参照して説明する。
図69は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との第1の併用例を説明するための図である。図69に示すように、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とが重ねて装着されている。詳しくは、耳穴開放デバイス100は、ユーザに装着されたヘッドホン500の内側(ユーザの耳側、即ちX軸正方向)に、重ねて装着されている。ヘッドホン500は、ユーザに装着された耳穴開放デバイス100の外側(ユーザの耳と反対側、即ちX軸負方向)に重ねて装着されている。ヘッドホン500と耳穴開放デバイス100とが重ねて装着されるとは、ヘッドホン500の内側空間30に、少なくとも耳穴開放デバイス100のマイク141が含まれていることを指す。ヘッドホン500の内側空間30に耳穴開放デバイス100が全て含まれてもよいし、一部のみ含まれてもよい。
ここで、本例では、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とは通信していない。即ち、図66及び図68を参照して上記説明したノイズキャンセル処理の各々が独立して行われる。この場合、図68を参照して上記説明したノイズキャンセル処理によりキャンセルし切れなかったノイズが、図66を参照して上記説明したノイズキャンセル処理によりキャンセルされる。そのため、耳穴開放デバイス100又はヘッドホン500のいずれか一方を単体で用いるよりも、ノイズキャンセル効果を向上させることができる。
上記説明したように、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とが独立して動作する場合も、ノイズキャンセル効果は向上する。しかし、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とが協働して動作することで、さらにノイズキャンセル効果を向上させることが可能である。以下、図70〜図74を参照して、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とが協働して動作する場合について説明する。
(2)第2の併用例
第2の併用例は、ヘッドホン500が、耳穴開放デバイス100から受信した音響信号に基づいてFB方式のノイズキャンセル処理を行う例である。本例について、図70を参照して説明する。
図70は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との第2の併用例を説明するための図である。図70に示すように、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とが重ねて装着されている。このように装着された場合、耳穴開放デバイス100の無線通信部170とヘッドホン500の無線通信部550とは、無線通信を行う。そして、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とは協働してノイズキャンセル処理を行う。詳しくは、図70に示すように、マイク141により生成された音響信号は、無線通信部170に入力される。そして、無線通信部170は、マイク141により生成された音響信号をヘッドホン500に無線送信する。無線通信部550は、耳穴開放デバイス100から無線送信された音響信号を受信する。無線通信部550は、受信した音響信号をFBフィルタ704に出力する。FBフィルタ704は、入力された音響信号に基づいて、マイク141をキャンセルポイントとするFB方式のノイズキャンセル処理を行い、ノイズキャンセル信号を生成する。生成されたノイズキャンセル信号は、加算器703に入力される。加算器703は、FBフィルタ701及びFFフィルタ702の各々から入力されたノイズキャンセル信号に加えて、FBフィルタ704から入力されたノイズキャンセル信号を合成して、かかる合成信号をドライバ110に出力する。ドライバ110は、入力された合成信号に基づいて音響を出力する。
詳細な信号処理は、図32を参照して上記説明した第1のノイズキャンセル処理とほぼ同様である。即ち、FFフィルタ702はFFフィルタ414に相当し、FBフィルタ701は第1のFBフィルタ411に相当し、FBフィルタ704は第2のFBフィルタ412に相当する。ただし、本例では、図32のブロック441、442、443及び444に示す内部モデルが含まれていない点で、図32を参照して上記説明した第1のノイズキャンセル処理と相違する。
なお、図70では、耳穴開放デバイス100側でのノイズキャンセル処理は図示されていないが、もちろん耳穴開放デバイス100側でもノイズキャンセル処理が行われてもよい。例えば、耳穴開放デバイス100は、マイク141により生成された音響信号に基づきノイズキャンセル信号を生成し、ドライバ110から出力する。以降の各併用例でも同様である。
また、本実施形態では、耳穴開放デバイス100が、マイク141により生成した音響信号をヘッドホン500に送信する場合について説明するが、本技術は係る例に限定されない。例えば、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との間に他の装置が介在していてもよい。また、ヘッドホン500が、FB−NC用マイク520−1及び/又はFF−NC用マイク520−2により生成された音響信号を耳穴開放デバイス100に送信してもよい。以降の各併用例でも同様である。
(3)第3の併用例
第3の併用例は、ヘッドホン500が、耳穴開放デバイス100から受信した音響信号に基づいて、内部モデルを適用したFB方式のノイズキャンセル処理を行う例である。本例について、図71を参照して説明する。
図71は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との第3の併用例を説明するための図である。図71に示す処理ブロックは、図70に示した処理ブロックに内部モデル705及び加算器706が追加されている。加算器703から出力された出力信号は、内部モデル705に入力される。内部モデル705は、出力信号がドライバ510に入力されてからマイク141により音響信号が生成されるまでの間の特性を模擬した特性を有する。内部モデル705を経由した音響信号は、加算器706に入力される。加算器706は、マイク141により生成された音響信号から、内部モデル705を経由した信号を、減算して合成する。そして、加算器706は、かかる合成信号をFBフィルタ704に出力する。
詳細な信号処理は、図32を参照して上記説明した第1のノイズキャンセル処理と同様である。即ち、FFフィルタ702はFFフィルタ414に相当し、FBフィルタ701は第1のFBフィルタ411に相当し、FBフィルタ704は第2のFBフィルタ412に相当する。また、内部モデル705は、ブロック441、442、443及び444に相当し、加算器706は加算器432に相当する。
(4)第4の併用例
第4の併用例は、ヘッドホン500が、耳穴開放デバイス100から受信した音響信号に基づいて、適応型のFF方式のノイズキャンセル処理を行う例である。本例について、図72を参照して説明する。
図72は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との第4の併用例を説明するための図である。図72に示す処理ブロックは、図70に示した処理ブロックから、FBフィルタ704に代えて適応制御部707が追加されている。適応制御部707には、FF−NC用マイク520−2により収音された音響に基づいて生成された音響信号、及び無線通信部550により受信された音響信号が入力される。そして、適応制御部707は、これらの音響信号に基づいて、FFフィルタ702の特性を適応的に制御する。適応制御部707による適応的な制御の元、FFフィルタ702は、入力された音響信号に基づくFF方式のノイズキャンセル処理により、ノイズキャンセル信号を生成する。FFフィルタ702により生成されたノイズキャンセル信号は、加算器703により、FBフィルタ701により生成されたノイズキャンセル信号と合成される。かかる合成信号は、ドライバ510から出力される。
詳細な信号処理は、図33を参照して上記説明した第2のノイズキャンセル処理と同様である。即ち、FFフィルタ702はFFフィルタ414に相当し、FBフィルタ701は第1のFBフィルタ411に相当し、適応制御部707は適応制御部415に相当する。
(5)第5の併用例
第5の併用例は、上記第3の併用例と上記第4の併用例との組み合わせである。本例について、図73を参照して説明する。
図73は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との第5の併用例を説明するための図である。図73に示す処理ブロックは、図71に示した内部モデル705及び加算器706、並びに図72に示した適応制御部707を含む。
詳細な信号処理は、図35を参照して上記説明した第3のノイズキャンセル処理と同様である。即ち、FFフィルタ702はFFフィルタ414に相当し、FBフィルタ701は第1のFBフィルタ411に相当し、FBフィルタ704は第2のFBフィルタ412に相当し、適応制御部707は適応制御部415に相当する。また、内部モデル705は、ブロック441、442、443及び444に相当し、加算器706は加算器432に相当する。
(6)第6の併用例
第6の併用例は、上記第5の併用例に加えて、耳穴開放デバイス100側でのノイズキャンセル信号の出力が行われる例である。本例について、図74を参照して説明する。
図74は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との第6の併用例を説明するための図である。図74に示す処理ブロックは、図73に示した処理ブロックに、FBフィルタ601が追加されている。FBフィルタ601の動作については、図66を参照して上記説明した通りである。
本例では、ドライバ110及びドライバ310の双方からノイズキャンセル信号に基づく音響が出力される。耳穴開放デバイス100がユーザに常時装着され得ることを考慮すれば、ドライバ110の振動板は、ドライバ310よりも小さいことが想定される。そこで、耳穴開放デバイス100は、所定の周波数よりも高域のノイズを対象にしたノイズキャンセル信号を生成し、かかるノイズキャンセル信号に基づく音響を出力する。他方、ヘッドホン500は、所定の周波数よりも低域のノイズを対象にしたノイズキャンセル信号を生成し、かかるノイズキャンセル信号に基づく音響を出力する。例えば、耳穴開放デバイス100が中高域を対象とし、ヘッドホン500が低域を対象とする。なお、双方が対象とする帯域は重複していてもよい。このような分担により、双方の消費電力を低減することができる。
ここで、耳穴開放デバイス100では、ドライバ110から出力された音響が音導部120を介して耳穴付近で放射される。そのため、ドライバ110とマイク141との間の距離に応じた位相遅延が生じ得る。そこで、耳穴開放デバイス100は、例えば、音導部120のうち保持部130に近い位置に、バランスドアーマチャー(Balanced armature type)型の第2の音響出力部を有していてもよい。そして、耳穴開放デバイス100は、第2の音響出力部からノイズキャンセル信号に基づく音響を出力してもよい。この場合、第2の音響出力部は、ドライバ110よりもマイク141に近いので、距離に応じた位相遅延が少なくなる。さらには、第2の音響出力部は、ドライバ310よりもよりもマイク141に近い。従って、第2の音響出力部により、高域を対象にしたノイズキャンセル信号に基づく音響が出力されることが望ましい。これにより、高域のノイズに対するノイズキャンセル性能を向上させることができる。
(7)まとめ
以上、各併用例について説明した。これらの各併用例によれば、第2の実施形態において説明した効果と同様の効果が奏される。さらに、本実施形態によれば、ユーザは、第2の実施形態において説明した外耳道マイク320−3を有するヘッドホン300を用意せずとも、耳穴開放デバイス100にヘッドホン500を重ねて装着することで、簡易に同様の効果を得ることができる。
<3.4.無線通信のバリエーション>
耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とは、任意の方式で無線通信を行い得る。ここでは一例として、光通信を用いた無線通信処理について、図75〜図77を参照して説明する。その後、NFMIを用いた無線通信処理について、図78を参照して説明する。なお、以下の説明では、耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500は、それぞれアクティブな電池及び回路を持つものとする。また、耳穴開放デバイス100からヘッドホン500へ無線送信されるものとして説明する。
(1)光を用いた通信の場合
図75は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との光を用いた無線通信処理の一例を説明するための図である。とりわけ、図75では、アナログシステムにおける伝送のための処理ブロックが示されている。まず、送信側である耳穴開放デバイス100の処理について説明する。マイク141により生成された音響信号(アナログ信号)は、コンデンサ611及び抵抗612を介してアンプ613に入力される。音響信号は、アンプ613により増幅され、抵抗614を介して光送信部615から光として放射される。次いで、受信側であるヘッドホン500の処理について説明する。光受信部711は、光送信部615から放射された光を受信して、受信結果を示す信号を出力する。受信結果を示す信号は抵抗712に入力される。マイク141における電圧と、抵抗712に生じる電圧とが、比例関係を有する。そこで、ヘッドホン500は、抵抗712における電圧に基づき、マイク141により生成された音響信号を取得する。
図76は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との光を用いた無線通信処理の一例を説明するための図である。とりわけ、図76では、デジタルシステムにおける伝送のための処理ブロックが示されている。まず、送信側である耳穴開放デバイス100の処理について説明する。マイク141により生成された音響信号(アナログ信号)は、コンデンサ611を介してADC621に入力される。音響信号は、ADC621によりデジタル信号に変換されて、デジタル変調部622により変調され、その後DAC623によりアナログ信号に変換される。その後、音響信号は、コンデンサ624、アンプ613及び抵抗614を介して光送信部615から光として放射される。次いで、受信側であるヘッドホン500の処理について説明する。光受信部711は、光送信部615から放射された光を受信して、受信結果を示す信号を出力する。受信結果を示す信号は、抵抗712に並列するコンデンサ721を経由し、ADC722に入力される。ADC722は、入力された信号をデジタル信号に変換して、デジタル復調部723に出力する。デジタル復調部723は、入力された信号を復調する。このようにして、ヘッドホン500は、マイク141により生成された音響信号を、デジタル信号として取得する。
図77は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との光を用いた無線通信処理の一例を説明するための図である。とりわけ、図77では、デルタシグマ変調を用いる処理ブロックが示されている。まず、送信側である耳穴開放デバイス100の処理について説明する。マイク141により生成された音響信号(アナログ信号)は、コンデンサ611を介してデルタシグマ変調部631に入力されて、デルタシグマ変調が適用される。デルタシグマ変調部631により、アナログ信号であった音響信号が1ビット信号に変換されて出力される。デルタシグマ変調部631から出力された信号は、コンデンサ632、アンプ613及び抵抗614を介して光送信部615から光として放射される。次いで、受信側であるヘッドホン500の処理について説明する。光受信部711は、光送信部615から放射された光を受信して、受信結果を示す信号を出力する。受信結果を示す信号は、抵抗712に並列するコンデンサ731を経由して、デジタル変調部732によりデジタル信号に復調され、ダウンサンプリング部733によりダウンサンプリングされる。このようにして、ヘッドホン500は、マイク141により生成された音響信号を、デジタル信号として取得する。図77に示した無線通信処理によれば、デルタシグマ変調が用いられるので、図76に示した無線通信処理と比較して、変調に掛かる演算時間も少ない上に、数MHz/bitでの高速伝送が可能である。このため、ヘッドホン500は、超低遅延で、マイク141により生成された音響信号を受信し、ノイズキャンセル処理に用いることができる。
(2)NFMIを用いた通信の場合
図78は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とのNFMIを用いた無線通信処理の一例を説明するための図である。まず、送信側である耳穴開放デバイス100の処理について説明する。図78に示すように、耳穴開放デバイス100は、抵抗641、コンデンサ642及びインダクタ643を含む。マイク141により生成された音響信号(アナログ信号)は、抵抗641を経由後、コンデンサ642及びインダクタ643に入力される。インダクタ643では、入力された信号に応じた磁気を発生する。次いで、受信側であるヘッドホン500の処理について説明する。図78に示すように、ヘッドホン500は、抵抗741、コンデンサ742及びインダクタ743を含む。インダクタ743は、インダクタ643により発生された磁気に共鳴して、インダクタ643に入力された信号と同様の信号を生成し、出力する。このようにして、ヘッドホン500は、マイク141により生成された音響信号を取得する。
<3.5.相互機器検出>
ユーザは、耳穴開放デバイス100を装着している状態から、さらに重ねてヘッドホン500を装着する。その動機として考えられることは、耳穴開放デバイス100単体よりもさらに強いノイズキャンセル効果を望んだことである。
そこで、耳穴開放デバイス100の外側にヘッドホン500が装着されたことが検出された場合には、上述した第1の併用例〜第6の併用例のいずれかに係るノイズキャンセル処理が開始されることが望ましい。そこで、耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500は、重ねて装着された場合に相互の機器を検出し、ノイズキャンセル処理を開始する。例えば、いずれか一方の電源がOFFであれば電源ONにされる。また、無線通信が行われていなければ、無線通信が開始される。即ち、耳穴開放デバイス100は、マイク141により生成された音響信号のヘッドホン500への送信を開始し、ヘッドホン500は、かかる音響信号の耳穴開放デバイス100からの受信を開始する。これにより、ユーザは、耳穴開放デバイス100に重ねてヘッドホン500を装着するだけで、自動的に強いノイズキャンセル効果を享受することができる。以下では、この点について詳しく説明する。
(1)非接触給電
耳穴開放デバイス100の外側にヘッドホン500が装着されたことは、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との間で非接触給電が行われたことに基づいて検出されてもよい。非接触給電は、ヘッドホン500から耳穴開放デバイス100へ行われてもよいし、耳穴開放デバイス100からヘッドホン500へ行われてもよい。以下では、これらの2通りについて説明する。
・ヘッドホン500から耳穴開放デバイス100への非接触給電
耳穴開放デバイス100は、電源OFF状態でヘッドホン500からの非接触給電があった場合に、電源ONしてもよい。例えば、ヘッドホン500からの非接触給電があった場合に、動作制御部153がまず起動する。次いで、動作制御部153は、耳穴開放デバイス100自身が有する電池の電力を用いて耳穴開放デバイス100の電源をONにする。その後、動作制御部153は、無線通信部170による無線通信を開始させる。無線通信部170は、マイク141により生成された音響信号のヘッドホン500への送信を開始する。
ヘッドホン500は、耳穴開放デバイス100に非接触給電を行う非接触給電部を含む。非接触給電部は、耳穴開放デバイス100への非接触給電を試みる。非接触給電部は、耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500が重ねて装着されたことが検出されたことをトリガとして非接触給電を試みてもよいし、当該トリガなしに周期的に試みてもよい。無線通信部550は、非接触給電部が耳穴開放デバイス100に非接触給電を行った場合(即ち、非接触給電に成功した場合)、マイク141により生成された音響信号の耳穴開放デバイス100からの受信を開始する。
・耳穴開放デバイス100からヘッドホン500への非接触給電
ヘッドホン500は、電源OFF状態で耳穴開放デバイス100からの非接触給電があった場合に、電源ONしてもよい。例えば、耳穴開放デバイス100からの非接触給電があった場合に、動作制御部533がまず起動する。次いで、動作制御部533は、ヘッドホン500自身が有する電池の電力を用いてヘッドホン500の電源をONにする。その後、動作制御部533は、センサ部540による無線通信を開始させる。例えば、無線通信部550は、マイク141により生成された音響信号の受信を開始する。
耳穴開放デバイス100は、ヘッドホン500に非接触給電を行う非接触給電部を含む。非接触給電部は、ヘッドホン500への非接触給電を試みる。非接触給電部は、耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500が重ねて装着されたことが検出されたことをトリガとして非接触給電を試みてもよいし、当該トリガなしに周期的に試みてもよい。無線通信部170は、非接触給電部がヘッドホン500に非接触給電を行った場合(即ち、非接触給電に成功した場合)、マイク141により生成された音響信号のヘッドホン500への送信を開始する。
・RFID装置による非接触給電の例
上述した非接触給電は、RFID装置により行われ得る。リーダがRFタグの読み取りを行う際に、リーダから放射された電波によりRFタグが通電する。これにより、RFタグを有する側は、リーダを有する装置を検出する。一方で、RFタグに通電したことをトリガとして、RFタグからリーダ側にRFタグに格納されたタグデータが返信される。これにより、リーダを有する側は、RFタグを有する装置を検出する。非接触給電は、RFID装置のような電波受信方式の他にも、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式等の任意の方式が採用され得る。以下では、図79を参照して、耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500がRFID装置を含む構成を説明する。
図79は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500によるRFID装置を用いた相互機器検出を説明するための図である。図79に示すように、ヘッドホン500には、イヤーパッドの接触面502aよりも内側の側壁502bに、RFID装置541が設けられている。また、耳穴開放デバイス100には、音導部120の保持部130の付近に、RFID装置161が設けられている。ヘッドホン500から耳穴開放デバイス100への非接触給電は、RFID装置541がリーダであり、RFID装置161がRFタグである場合に実現される。一方で、耳穴開放デバイス100からヘッドホン500への非接触給電は、RFID装置161がリーダであり、RFID装置541がRFタグである場合に実現される。RFID装置541及びRFID装置161の各々は、リーダ及びRFタグの双方を有していてもよい。耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とが重ねて装着されると、RFID装置541及びRFID装置161が近接することにある。これにより、RFタグとRFリーダとの間で通電及び読み取りが行われ、相互機器検出が行われる。
以下では、図80を参照して、ヘッドホン500から耳穴開放デバイス100への非接触給電に基づいて、ノイズキャンセル処理が開始される場合の処理の流れの一例を説明する。
図80は、本実施形態に係るノイズキャンセル処理が、ヘッドホン500から耳穴開放デバイス100への非接触給電に基づいて開始される場合の処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図80に示すように、本シーケンスには耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500が関与する。本シーケンスは、耳穴開放デバイス100がRFタグを有し、ヘッドホン500がリーダを有する場合のシーケンスである。
開始時点で、ヘッドホン500は電源ON状態であり(ステップS202)、耳穴開放デバイス100は電源OFF状態又は電源ON状態のいずれかであるものとする(ステップS302)。ヘッドホン500は、リーダによりRFタグの読み取りを開始する(ステップS204)。リーダによりRFタグに電力が供給されて、耳穴開放デバイス100のRFタグが通電し(ステップS304)、RFタグからリーダ側にタグデータが返信される(ステップS306)。
耳穴開放デバイス100は、RFタグが通電したことをトリガとして、電源OFF状態の場合は電源ONする(ステップS308)。その後、耳穴開放デバイス100は、ヘッドホン500と無線接続する(ステップS310)。そして、耳穴開放デバイス100は、マイクデータ(即ち、マイク141により生成された音響信号)をヘッドホン500に送信する(ステップS312)。その後、耳穴開放デバイス100は、上述したノイズキャンセル処理に関する規定動作を行う。
ヘッドホン500は、RFタグからのタグデータが読み取れたか否かを判定する(ステップS206)。RFタグからのタグデータが読み取れないと判定された場合(ステップS206/NO)、ヘッドホン500は、読み取り失敗カウントをインクリメントする(ステップS208)。次いで、ヘッドホン500は、読み取り失敗カウントが既定回数に達したか否かを判定する(ステップS210)。読み取り失敗カウントが既定回数に達したと判定された場合(ステップS210/YES)、処理は終了する。一方で、読み取り失敗カウントが既定回数に達していないと判定された場合(ステップS210/NO)、処理は再度ステップS204に戻る。また、RFタグからのタグデータが読み取れたと判定された場合(ステップS206/YES)、ヘッドホン500は、耳穴開放デバイス100と無線接続する(ステップS212)。そして、ヘッドホン500は、耳穴開放デバイス100からマイクデータを受信する(ステップS312)。その後、ヘッドホン500は、上述したノイズキャンセル処理に関する規定動作を行う。
次いで、図81を参照して、耳穴開放デバイス100からヘッドホン500への非接触給電に基づいて、ノイズキャンセル処理が開始される場合の処理の流れの一例を説明する。
図81は、本実施形態に係るノイズキャンセル処理が、耳穴開放デバイス100からヘッドホン500への非接触給電に基づいて開始される場合の処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図81に示すように、本シーケンスには耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500が関与する。本シーケンスでは、耳穴開放デバイス100がリーダを有し、ヘッドホン500がRFタグを有する場合のシーケンスである。
開始時点で、ヘッドホン500は電源OFF状態であり(ステップS222)、耳穴開放デバイス100は電源ON状態であるものとする(ステップS322)。耳穴開放デバイス100は、リーダによりRFタグの読み取りを開始する(ステップS324)。リーダによりRFタグに電力が供給されて、ヘッドホン500のRFタグが通電し(ステップS224)、RFタグからリーダ側にタグデータが返信される(ステップS226)。
耳穴開放デバイス100は、RFタグからのタグデータが読み取れたか否かを判定する(ステップS326)。RFタグからのタグデータが読み取れないと判定された場合(ステップS326/NO)、耳穴開放デバイス100は、読み取り失敗カウントをインクリメントする(ステップS328)。次いで、耳穴開放デバイス100は、読み取り失敗カウントが既定回数に達したか否かを判定する(ステップS330)。読み取り失敗カウントが既定回数に達したと判定された場合(ステップS330/YES)、処理は終了する。一方で、読み取り失敗カウントが既定回数に達していないと判定された場合(ステップS330/NO)、処理は再度ステップS324に戻る。また、RFタグからのタグデータが読み取れたと判定された場合(ステップS326/YES)、耳穴開放デバイス100は、ヘッドホン500と無線接続し(ステップS332)、マイクデータ(即ち、マイク141により生成された音響信号)をヘッドホン500に送信する(ステップS334)。その後、耳穴開放デバイス100は、上述したノイズキャンセル処理に関する規定動作を行う。
ヘッドホン500は、RFタグが通電したことをトリガとして、電源ONする(ステップS228)。その後、ヘッドホン500は、耳穴開放デバイス100と無線接続する(ステップS230)。そして、ヘッドホン500は、マイクデータ(即ち、マイク141により生成された音響信号)を耳穴開放デバイス100から受信する(ステップS334)。その後、ヘッドホン500は、上述したノイズキャンセル処理に関する規定動作を行う。
(2)NFMI
耳穴開放デバイス100の外側にヘッドホン500が装着されたことは、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との間で磁気共鳴が行われたことに基づいて検出されてもよい。左右両耳に耳穴開放デバイス100が装着されている場合、左右の耳穴開放デバイス100同士はNFMIにより音楽信号等を送受信し得る。左右の耳穴開放デバイス100に重ねてヘッドホン500が装着された場合、ヘッドホン500は、このNFMIによる左右の耳穴開放デバイス100同士の通信を検出して、ノイズキャンセル処理を開始してもよい。以下、図82〜図85を参照して、この点について説明する。
図82〜図85は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500によるNFMIを用いた相互機器検出を説明するための図である。図82〜図85においては、耳穴開放デバイス100Aの構成要素の符号の末尾に「A」を付し、耳穴開放デバイス100Bの構成要素の符号の末尾に「B」を付すものとする。また、ヘッドホン500の構成要素のうち、耳穴開放デバイス100Aに近接する構成要素の符号の末尾に「A」を付し、耳穴開放デバイス100Bに近接する構成要素の符号の末尾に「B」を付すものとする。端末装置800は、例えばタブレット端末、スマートフォン又はエージェント機器等の任意の装置である。
図82に示すように、ユーザは、片耳に耳穴開放デバイス100Aを装着し、他方の片耳に耳穴開放デバイス100Bを装着しているものとする。端末装置800は、Bluetooth又はWi−Fi等の任意の通信方式を用いて音楽信号を送信する。無線通信部170Aは、端末装置800により送信された音楽信号を受信し、ドライバ110Aは、受信された音楽信号に基づき音楽を出力する。また、無線通信部170Aは、NFMIを用いて音楽信号を耳穴開放デバイス100Bに転送する。無線通信部170Bは、転送された音楽信号を受信し、ドライバ110Bは、受信された音楽信号に基づき音楽を出力する。
次いで、図83に示すように、ユーザは、ヘッドホン500を、耳穴開放デバイス100A及び100Bに重ねて装着したものとする。この場合、耳穴開放デバイス100Aが耳穴開放デバイス100B宛てにNFMIを用いて送信した音楽信号により、ヘッドホン500の無線通信部550A及び550BのNFMI送受信器も共鳴する。ヘッドホン500は、このような磁気共鳴により、耳穴開放デバイス100A及び100Bに重ねて装着されたことを検出する。同様に耳穴開放デバイス100A及び100Bも、ヘッドホン500が重ねて装着されたことを検出する。
その後、図84に示すように、ヘッドホン500と耳穴開放デバイス100A及び100Bとは、ノイズキャンセル処理を開始する。詳しくは、耳穴開放デバイス100Aは、マイク141Aにより生成したマイクデータを、無線通信部170Aにより送信する。例えば、無線通信部170Aは、NFMIを用いた音楽信号の転送を停止し、NFMIを用いてマイクデータを送信する。無線通信部170Aから送信されたマイクデータは、無線通信部170Aに近接する無線通信部550Aにより受信される。ヘッドホン500は、受信した音響信号に基づいてノイズキャンセル処理を行い、生成したノイズキャンセル信号をドライバ510Aから出力する。耳穴開放デバイス100Bに関しても同様である。
図85に示すように、ヘッドホン500が、音楽信号の受信及び左右への音楽信号の配信を代行してもよい。詳しくは、まず、無線通信部550Aが、端末装置800から送信された音楽信号を受信する。無線通信部550Aは、端末装置800から受信した音楽信号、及び耳穴開放デバイス100Aから受信したマイクデータを信号処理部531に出力する。また、無線通信部550Bは、耳穴開放デバイス100Bから受信したマイクデータを信号処理部531に出力する。信号処理部531は、耳穴開放デバイス100A及び100Bから受信されたマイクデータに基づいてノイズキャンセル信号を生成し、生成したノイズキャンセル信号に音楽信号を合成した合成信号を生成する。かかる合成信号は、ドライバ510A及びドライバ510Bに入力され、音響として出力される。このような処理により、ヘッドホン500の装着前後で、音楽再生が途切れる等の違和感をユーザに与えることがない、音楽再生主体のシームレスな移行を実現することができる。
NFMIは、特にペアリング等を要さないので、このような相互機器検出が可能である。もちろん、ペアリングされた機器のみが、相互機器検出の対象となってもよい。
以下、図86を参照して、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との磁気共鳴に基づいてノイズキャンセル処理が開始される場合の処理の流れの一例を説明する。
図86は、本実施形態に係るノイズキャンセル処理が、耳穴開放デバイス100とヘッドホン500との磁気共鳴に基づいて開始される場合の処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図86に示すように、本シーケンスには耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500が関与する。
開始時点で、ヘッドホン500は電源ON状態である(ステップS242)。また、耳穴開放デバイス100は、電源ON状態であり(ステップS342)、他の耳穴開放デバイス100とNFMI通信を行っている(ステップS344)。
耳穴開放デバイス100は、NFMI通信中に、NFMIで送信された規定信号を検出したか否かを判定する(ステップS346)。NFMIで送信された規定信号を検出していないと判定された場合(ステップS346/NO)、処理は再度ステップS346に戻る。一方で、NFMIで送信された規定信号を検出したと判定された場合(ステップS346/YES)、耳穴開放デバイス100は、他の耳穴開放デバイス100とのNFMI通信を行う動作モードからヘッドホン500とのNFMI通信を行う動作モードへ動作モードを変更し、ヘッドホン500とNFMIで無線接続する(ステップS348)。そして、耳穴開放デバイス100は、マイクデータ(即ち、マイク141により生成された音響信号)をヘッドホン500に送信する(ステップS350)。その後、耳穴開放デバイス100は、上述したノイズキャンセル処理に関する規定動作を行う。
ヘッドホン500は、NFMI通信の検出を開始し(ステップS244)、NFMI通信を検出したか否かを判定する(ステップS246)。NFMI通信を検出していないと判定された場合(ステップS246/NO)、ヘッドホン500は、読み取り失敗カウントをインクリメントする(ステップS248)。次いで、ヘッドホン500は、読み取り失敗カウントが既定回数に達したか否かを判定する(ステップS250)。読み取り失敗カウントが既定回数に達したと判定された場合(ステップS250/YES)、処理は終了する。一方で、読み取り失敗カウントが既定回数に達していないと判定された場合(ステップS250/NO)、処理は再度ステップS244に戻る。また、FMI通信を検出したと判定された場合(ステップS246/YES)、ヘッドホン500は、規定信号をNFMIで送信する(ステップS252)。そして、ヘッドホン500は、耳穴開放デバイス100とNFMIで無線接続し(ステップS254)、耳穴開放デバイス100からマイクデータを受信する(ステップS350)。その後、ヘッドホン500は、上述したノイズキャンセル処理に関する規定動作を行う。
(3)音響
耳穴開放デバイス100の外側にヘッドホン500が装着されたことは、耳穴開放デバイス100又はヘッドホン500が所定の音響を収音したことに基づいて検出されてもよい。この点について、図87を参照して説明する。
図87は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500による音響を用いた相互機器検出を説明するための図である。例えば、ヘッドホン500は、ヘッドホン500がユーザに装着されたことが検出された場合に、所定の音響を出力する。ユーザへの装着/非装着は、例えば感圧センサにより検出されるイヤーパッド502の変形に基づいて検出され得る。耳穴開放デバイス100は、かかる所定の音響がマイク141により収音された場合に、ヘッドホン500が重ねて装着されたことを検出する。この所定の音響は、可聴帯域以上の超音波領域の音響であってもよい。その場合、ユーザに不快感を与えずに、相互機器検出を行うことが可能となる。また、図87に示した例とは逆に、耳穴開放デバイス100が所定の音響を出力し、ヘッドホン500が収音してもよい。
(4)ドライバの磁気
耳穴開放デバイス100の外側にヘッドホン500が装着されたことは、耳穴開放デバイス100又はヘッドホン500が所定の磁気を検出したことに基づいて検出されてもよい。この点について、図88を参照して説明する。
図88は、本実施形態に係る耳穴開放デバイス100及びヘッドホン500による磁気を用いた相互機器検出を説明するための図である。例えば、耳穴開放デバイス100には、音導部120の保持部130の付近に、磁気センサ162が設けられている。ヘッドホン500のドライバ510には、磁石が含まれており磁気751を発する。そこで、耳穴開放デバイス100は、磁気センサ162により磁気751が検出されたことに基づいて、ヘッドホン500が重ねて装着されたことを検出する。なお、図88に示した例とは逆に、ヘッドホン500に磁気センサが設けられ、耳穴開放デバイス100のドライバ110からの磁気を検出してもよい。
<3.6.まとめ>
以上、第3の実施形態について詳細に説明した。上記説明したように、第3の実施形態によれば、ユーザに重ねて装着された耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とは、無線通信して協働することができる。具体的には、耳穴開放デバイス100は、音響入力部141により生成した音響信号をヘッドホン500に送信する。そして、ヘッドホン500は、受信した音響信号に基づいてノイズキャンセル処理を行う。ヘッドホン500は、鼓膜に近い位置の収音結果に基づいてノイズキャンセル処理行うことができるので、高いノイズキャンセル性能を実現することができる。
<<4.ハードウェア構成例>>
最後に、図89を参照して、各実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成について説明する。図89は、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、図89に示す情報処理装置900は、例えば、図3に示した耳穴開放デバイス100、図31に示したヘッドホン300、図65に示した耳穴開放デバイス100、及び図67に示したヘッドホン500を実現し得る。本実施形態に係る耳穴開放デバイス100、ヘッドホン300又はヘッドホン500による情報処理は、ソフトウェアと、以下に説明するハードウェアとの協働により実現される。
図89に示すように、情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901、ROM(Read Only Memory)902、RAM(Random Access Memory)903及びホストバス904aを備える。また、情報処理装置900は、ブリッジ904、外部バス904b、インタフェース905、入力装置906、出力装置907、ストレージ装置908、ドライブ909、接続ポート911及び通信装置913を備える。情報処理装置900は、CPU901に代えて、又はこれとともに、電気回路、DSP若しくはASIC等の処理回路を有してもよい。
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って情報処理装置900内の動作全般を制御する。また、CPU901は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM902は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。CPU901は、例えば、図3に示す制御部150、図31に示す制御部330、図65に示す制御部150又は図67に示す制御部530を形成し得る。
CPU901、ROM902及びRAM903は、CPUバスなどを含むホストバス904aにより相互に接続されている。ホストバス904aは、ブリッジ904を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス904bに接続されている。なお、必ずしもホストバス904a、ブリッジ904および外部バス904bを分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
入力装置906は、例えば、マイク又はアレイマイク等の音響を収音し、音響信号を生成することが可能な装置によって実現される。他にも、入力装置906は、測距センサ及び測距センサにより得られた振動情報を処理する回路を含み、離れた位置の音圧情報を取得可能な装置によって実現される。これらの入力装置906は、例えば、図3に示す音響情報取得部140、図31に示す音響入力部320、図65に示す音響情報取得部140又は図67に示す音響入力部520を形成し得る。
他にも、入力装置906は、各種情報を検出する装置により形成され得る。例えば、入力装置906は、画像センサ(例えば、カメラ)、深度センサ(例えば、ステレオカメラ)、加速度センサ、ジャイロセンサ、磁気センサ、地磁気センサ、光センサ、音センサ、測距センサ、力センサ等の各種のセンサを含み得る。また、入力装置906は、情報処理装置900の姿勢、移動速度等、情報処理装置900自身の状態に関する情報や、情報処理装置900の周辺の明るさや騒音等、情報処理装置900の周辺環境に関する情報を取得してもよい。また、入力装置906は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して装置の緯度、経度及び高度を含む位置情報を測定するGNSSモジュールを含んでもよい。また、位置情報に関しては、入力装置906は、Wi−Fi(登録商標)、携帯電話・PHS・スマートフォン等との送受信、または近距離通信等により位置を検出するものであってもよい。これらの入力装置906は、例えば、図31に示すセンサ部370、図65に示すセンサ部160又は図67に示すセンサ部540を形成し得る。
出力装置907は、スピーカ、指向性スピーカ、又は骨伝導スピーカ等の、音響を出力可能な音響出出力装置で形成される。出力装置907は、例えば、図3に示す音響出力部110、図31に示す音響出力部310、図65に示す音響出力部110又は図67に示す音響出力部510を形成し得る。
ストレージ装置908は、情報処理装置900の記憶部の一例として形成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置908は、例えば、HDD等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等により実現される。ストレージ装置908は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。このストレージ装置908は、CPU901が実行するプログラムや各種データ及び外部から取得した各種のデータ等を格納する。
ドライブ909は、記憶媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ909は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体に記録されている情報を読み出して、RAM903に出力する。また、ドライブ909は、リムーバブル記憶媒体に情報を書き込むこともできる。
接続ポート911は、外部機器と接続されるインタフェースであって、例えばUSB(Universal Serial Bus)などによりデータ伝送可能な外部機器との接続口である。
通信装置913は、例えば、ネットワーク920に接続するための通信デバイス等で形成された通信インタフェースである。通信装置913は、例えば、有線若しくは無線LAN(Local Area Network)、LTE(Long Term Evolution)、Bluetooth(登録商標)又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置913は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ又は各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置913は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。通信装置913は、例えば、図65に示す無線通信部170又は図67に示す無線通信部550を形成し得る。
なお、ネットワーク920は、ネットワーク920に接続されている装置から送信される情報の有線、または無線の伝送路である。例えば、ネットワーク920は、インターネット、電話回線網、衛星通信網などの公衆回線網や、Ethernet(登録商標)を含む各種のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを含んでもよい。また、ネットワーク920は、IP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)などの専用回線網を含んでもよい。
以上、本実施形態に係る情報処理装置900の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて実現されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより実現されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る情報処理装置900の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、PC等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
<<5.まとめ>>
以上、図1〜図89を参照して、本開示の各実施形態について説明した。
第1の実施形態に係る耳穴開放デバイス100は、耳甲介腔、又は外耳道の内壁に当接する保持部130により、音響情報を取得する音響情報取得部140を耳珠よりも鼓膜側の空間に保持しつつも、開口部131により耳穴を外界に開放する。そして、耳穴開放デバイス100は、当該音響情報取得部140により取得された音響情報に基づいてノイズキャンセル信号を生成する。例えば、耳穴開放デバイス100は、音響情報取得部140の位置又は鼓膜位置をキャンセルポイントとするノイズキャンセル処理を行う。鼓膜に近い位置又は鼓膜がキャンセルポイントになるので、高いノイズキャンセル性能を実現することができる。
第2の実施形態に係るヘッドホン300は、ユーザに装着された状態でユーザの片耳側に配置される3つのマイク320−1〜320−3を有する。そして、ヘッドホン300は、3つのマイク320−1〜320−3により生成された3つの音響信号に基づいて、複数のノイズキャンセル信号を生成するノイズキャンセル処理を行う。典型的なノイズキャンセル機能搭載型のヘッドホンではマイクの数が最大2つであったところ、ヘッドホン300は3つのマイクを有する。とりわけ、外耳道マイク320−3は、装着状態で外耳道の入り口付近に配置される。そのため、ヘッドホン300は、多くのマイクにより生成された音響信号、又は外耳道の入り口付近に配置されたマイクにより生成された音響信号という、適切な情報に基づいてノイズキャンセル処理を行うことが可能である。
また、第2の実施形態に係るヘッドホン300は、ハウジング301と、イヤーパッド302と、外耳道マイク320−3と、ドライバ310とを含む。そして、ヘッドホン300は、装着状態で耳甲介腔、又は外耳道の内壁に当接する保持部130により、外耳道マイク320−3を耳珠よりも鼓膜側の空間に保持しつつも、開口部304により耳穴をヘッドホン300の内側空間に開放する。このような構成により、外耳道マイク320−3が耳珠よりも鼓膜側の空間に保持される。従って、ヘッドホン300は、併用型のノイズキャンセル機能を有する典型的なヘッドホンと比較して、ノイズキャンセル処理のキャンセルポイントをユーザの鼓膜により近い位置にすることが可能である。
第3の実施形態に係る耳穴開放デバイス100は、ユーザに装着された耳穴開放デバイス100の外側に重ねて装着されたヘッドホン500と無線通信する。同様に、第3の実施形態に係るヘッドホン300は、ユーザに装着されたヘッドホン500よりも内側に重ねて装着された耳穴開放デバイス100と無線通信する。このように、重ねて装着された耳穴開放デバイス100とヘッドホン500とは、無線通信して協働することができる。具体的には、耳穴開放デバイス100は、音響入力部141により生成した音響信号をヘッドホン500に送信する。そして、ヘッドホン500は、受信した音響信号に基づいてノイズキャンセル処理を行う。ヘッドホン500は、鼓膜に近い位置の収音結果に基づいてノイズキャンセル処理行うことができるので、高いノイズキャンセル性能を実現することができる。
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
また、本明細書においてフローチャート及びシーケンス図を用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
イヤホン装置であって、
ユーザに装着された前記イヤホン装置の外側に重ねて装着されたヘッドホン装置と無線通信する無線通信部を備える、イヤホン装置。
(2)
前記イヤホン装置は、音響を収音して音響信号を生成する音響入力部をさらに備え、
前記無線通信部は、前記音響入力部により生成された前記音響信号を前記ヘッドホン装置に送信する、前記(1)に記載のイヤホン装置。
(3)
前記イヤホン装置は、
前記音響入力部により生成された前記音響信号に基づいてノイズキャンセル信号を生成し、生成した前記ノイズキャンセル信号に基づいて出力信号を生成する信号処理部と、
前記出力信号に基づいて音響を出力する音響出力部と、
をさらに備える、前記(2)に記載のイヤホン装置。
(4)
前記信号処理部は、所定の周波数よりも高域のノイズを対象にして前記ノイズキャンセル信号を生成する、前記(3)に記載のイヤホン装置。
(5)
前記無線通信部は、前記ヘッドホン装置が前記イヤホン装置の外側に重ねて装着されたことが検出された場合に、前記音響信号の前記ヘッドホン装置への送信を開始する、前記(2)〜(4)のいずれか一項に記載のイヤホン装置。
(6)
前記ヘッドホン装置が前記イヤホン装置の外側に重ねて装着されたことは、前記ヘッドホン装置とイヤホン装置との間で非接触給電が行われたことに基づいて検出される、前記(5)に記載のイヤホン装置。
(7)
前記ヘッドホン装置が前記イヤホン装置の外側に重ねて装着されたことは、前記ヘッドホン装置とイヤホン装置との間で磁気共鳴が行われたことに基づいて検出される、前記(5)に記載のイヤホン装置。
(8)
前記ヘッドホン装置が前記イヤホン装置の外側に重ねて装着されたことは、前記音響入力部により所定の音響が収音されたことに基づいて検出される、前記(5)に記載のイヤホン装置。
(9)
前記イヤホン装置は、前記イヤホン装置がユーザに装着された状態で、耳甲介腔、又は外耳道の内壁に当接して、耳珠よりも鼓膜側の空間に前記音響入力部を保持する保持部をさらに備える、前記(2)〜(8)のいずれか一項に記載のイヤホン装置。
(10)
前記保持部は、耳穴を外界に開放する開口部を備える、前記(9)に記載のイヤホン装置。
(11)
ヘッドホン装置であって、
ユーザに装着された前記ヘッドホン装置よりも内側に重ねて装着されたイヤホン装置と無線通信する無線通信部を備える、ヘッドホン装置。
(12)
前記イヤホン装置は、音響を収音して音響信号を生成するイヤホン側音響入力部を有し、
前記無線通信部は、前記イヤホン側音響入力部により生成された前記音響信号を受信する、前記(11)に記載のヘッドホン装置。
(13)
前記ヘッドホン装置は、
前記イヤホン側音響入力部により生成された前記音響信号に基づいてノイズキャンセル信号を生成し、生成した前記ノイズキャンセル信号に基づいて出力信号を生成する信号処理部と、
前記出力信号に基づいて音響を出力する音響出力部と、
をさらに備える、前記(12)に記載のヘッドホン装置。
(14)
前記信号処理部は、前記イヤホン側音響入力部により生成された前記音響信号に基づいて、前記イヤホン側音響入力部をキャンセルポイントとするフィードバック方式のノイズキャンセル処理により前記ノイズキャンセル信号を生成する、前記(13)に記載のヘッドホン装置。
(15)
前記ヘッドホン装置は、音響を収音して音響信号を生成する第1の音響入力部を備え、
前記信号処理部は、前記第1の音響入力部により生成された前記音響信号に基づいて、前記第1の音響入力部をキャンセルポイントとするフィードバック方式のノイズキャンセル処理により前記ノイズキャンセル信号を生成する、前記(13)又は(14)に記載のヘッドホン装置。
(16)
前記ヘッドホン装置は、音響を収音して音響信号を生成する第2の音響入力部を備え、
前記信号処理部は、前記第2の音響入力部により生成された前記音響信号に基づいて、フィードフォワード方式のノイズキャンセル処理により前記ノイズキャンセル信号を生成し、当該フィードフォワード方式のノイズキャンセル処理のフィルタ特性を、前記イヤホン側音響入力部により生成された前記音響信号に基づいて適応的に制御する、前記(13)〜(15)のいずれか一項に記載のヘッドホン装置。
(17)
前記無線通信部は、前記ヘッドホン装置が前記イヤホン装置の外側に重ねて装着されたことが検出された場合に、前記イヤホン側音響入力部により生成された前記音響信号の受信を開始する、前記(13)〜(16)のいずれか一項に記載のヘッドホン装置。
(18)
前記音響出力部は、前記ヘッドホン装置が装着されたことが検出された場合に、所定の音響を出力する、前記(17)に記載のヘッドホン装置。
(19)
イヤホン装置により実行される方法であって、ユーザに装着された前記イヤホン装置の外側に重ねて装着されたヘッドホン装置と無線通信することを含む、方法。
(20)
ヘッドホン装置により実行される方法であって、ユーザに装着された前記ヘッドホン装置よりも内側に重ねて装着されたイヤホン装置と無線通信することを含む、方法。