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JP6945819B2 - 歯科用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な歯科用組成物に関する。詳しくは、シランカップリング剤、酸性化合物、有機溶媒、および水を同一の包装内に含有してなる新規な歯科用組成物に関する。
歯科治療に用いられる歯科用組成物として、シランカップリング剤を含むものが知られている。主に、歯および歯科用修復材料の接着に使用するプライマー、および、ボンディング材が挙げられる。
例えば、歯科用修復材料は、補綴物には歯科用セラミックスが使用され、歯科用セメント、コンポジットレジンなどには無機化合物、重合性単量体を含む有機質複合体が使用される場合が多い。このような補綴物、および歯科用セメント、コンポジットレジン等を接着させるために、シランカップリング剤を含む歯科用組成物が使用されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
シランカップリング剤を含む歯科用組成物が有効に作用する機構は、以下の通りに考えられている。すなわち、シランカップリング剤のアルコキシ基等の加水分解性基が加水分解することによりシラノール基が生じ、補綴物の表面と結合する。一方で、シランカップリング剤の重合性基(反応性基)は歯科用セメント中の重合性単量体と重合することで補綴物と歯科用セメント、およびコンポジットレジンが接着する。この機構で接着するためには、シランカップリング剤のシラノール基を発生させるために、酸、塩基、および/または水が必要になる。
特許文献1には、シランカップリング剤、酸性化合物、水を含むシランカップリング剤について記載されている。特許文献1には、各成分を特定の割合で含むことが示されている。そして、各成分の保存については、その組み合わせにおいて保存安定性を考慮して決定することが示され、各成分を混合して直ぐに使用するか、あるいは、シランカップリング剤と、酸性化合物および水とを分別することが記載されている。
また、同様に、特許文献2には、水を含まず、シランカップリング剤と酸とを分別した接着性組成物が提案されている。
以上のように通常であれば、シランカップリング剤と、それを加水分解する酸、塩基、および/または水とは、別々に保存するのが一般的であった。ただし、これらを分別した場合には、分別した両者を実使用時に混和する作業が必要となり、操作性が煩雑である。また、十分に混和しなければ、シランカップリング剤が加水分解されず、その効果を十分に発揮できない場合があり、改善の余地があった。
特開2002−265312号公報 特開2003−230574号公報 特開2007−277114号公報 特開2017−218407号公報
前記のような点を改善するために、一液タイプの歯科用組成物も開発されている(例えば、特許文献3、4参照)。特許文献3においては、光重合において、酸又は塩基を発生する材料を使用して一液タイプとしている。また、特許文献4においては、アリールボレートのアルカリ金属塩を使用して一液タイプとしている。
しかしながら、これら発明においては、以下の点で改善の余地があった。つまり、特許文献3に記載された発明では、光照射により、酸又は塩基を発生する必要があるため、どうしても作業性が低下するという点で改善の余地があった。また、特許文献4に記載された発明では、酸を含まないため、卑金属、歯質等への接着性が低いという点で改善の余地があった。以上のように、シランカップリング剤、酸性化合物、および水を少なくとも含み、これらを同一の包装内で含有する歯科用組成物は存在していないのが現状であった。
したがって、本発明の目的は、従来には存在しない、シランカップリング剤、酸性化合物、および水を少なくとも含み、これらを同一の包装内で含有する歯科用組成物であって、接着性の向上はもちろんのこと、保存安定性にも優れる組成物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った。特に、シランカップリング剤の種類を検討した。すなわち、歯科用組成物において、十分な接着性を発揮するとともに、酸性化合物、および水と共存させたとしても、保存安定性に優れるシランカップリング剤の検討を行った。その結果、分子内にシロキサン結合を有する特定のシランカップリング剤を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の本発明は、(A)シランカップリング剤(以下、単に「(A)成分」とする場合もある。)、(B)酸性化合物(以下、単に「(B)成分」とする場合もある。)、(C)有機溶媒(以下、単に「(C)成分」とする場合もある。)及び(D)水(以下、単に「(D)成分」とする場合もある。)を同一包装内に含有する歯科用組成物であって、前記(A)シランカップリング剤が、(メタクリロキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリロキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−アクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン及び1、3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサンからなる群より選らばれる少なくとも1種からなり、前記(B)酸性化合物が酸性基含有重合性単量体(以下、単に「(B1)成分」とする場合もある。)からなり、前記(A)シランカップリング剤:100質量部に対する前記(D)水の含有量が50〜500質量部である、ことを特徴とする歯科用組成物である。

本発明は、以下の態様をとることができる。
前記(B1)成分である酸性基含有重合性単量体が、リン酸二水素モノエステル基またはリン酸二水素ジエステル基を含有する酸性基含有重合性単量体である前記歯科用組成物。

らに、(E)分子内にフッ素原子を有するフッ素化合物(以下、単に「(E)成分」とする場合もある。)を含む前記科用組成物。

また、第二の本発明は、前記第一の本発明の歯科用組成物からなる歯科用接着性組成物である

また、第三の本発明は、前記第一の本発明の歯科用組成物からなる歯科用接着プライマー組成物である

本発明によれば、(A)シランカップリング剤、(B)酸性化合物、および(D)水が同一系内(同一の包装内)に存在していても、保存安定性が良好であり、かつ高い接着性を有する。
本発明の歯科用組成物は、前記(A)〜(D)成分、および必要に応じて配合される(E)成分等のその他の成分が同一の包装内に含有される。(A)成分、(B)成分、および(D)成分が同一系内に存在するため、(A)成分の加水分解を十分に生じさせることが可能となり、その効果を十分に発揮させることができる。その結果、同一の包装内で混合した後、直接使用する一液タイプとして使用することができるだけでなく、本発明の歯科用組成物と他の成分とを混合して使用する多液タイプ(例えば、2液タイプ)としても使用可能となる。
また、上記効果を有しながら、本発明においては、分子内にシロキサン結合を有する特定の(A)成分を使用するため、保存安定性に優れたものとなる。加えて、(E)成分を更に配合することにより、保存安定性の効果がさらに高めることができる。
本発明は、前記(A)〜(D)成分を必須成分とし、それらを同一包装内に含有する歯科用組成物である。以下、順を追って説明する。
<(A)シランカップリング剤;(A)成分>
本発明で使用する(A)成分は、前記第一シランカップリング剤、および前記第二シランカップリング剤から選らばれる少なくとも1種である。先ず、第一シランカップリング剤について説明する。
(第一シランカップリング剤)
本発明において、第一シランカップリング剤は、
下記式(1)
Figure 0006945819
{式中、
11は、メチル基、または水素原子であり、
11は、酸素原子、またはイミノ基であり、
11は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、
11、Y11、およびZ11は、それぞれ、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は下記式(1s)
Figure 0006945819
(式中、
12、R13、およびR14は、それぞれ、炭素数1〜30の炭化水素基、または炭素数1〜30のアルコキシ基である。)
で示される基であり、
ただし、 X11、Y11、およびZ11の少なくとも1つは、前記式(1s)で示される基である。}で示されるシランカップリング剤である。
前記式(1)において、R11は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。中でも、優れた保存安定性、および接着性を考慮すると、炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、より具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等の炭素数が1〜3のアルキレン基が好ましい。
前記式(1)において、V11はメチル基、または水素原子である。中でも、優れた接着性を考慮すると、メチル基が好ましい。
前記式(1)において、W11は酸素原子、またはイミノ基(−NH−)である。
前記式(1)において、X11、Y11、およびZ11は、それぞれ、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、あるいは前記式(1s)で示される基である。そして、X11、Y11、およびZ11のうち少なくとも一つが前記式(1s)で示される基である。
11、Y11、およびZ11において、炭素数1〜30の炭化水素基としては、炭素数1〜30のアルキル基のような飽和炭化水素基が挙げられる。炭素数1〜30のアルキル基としては、特に、炭素数1〜10の直鎖・分岐状のアルキル基が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
11、Y11、およびZ11において、炭素数1〜30の炭化水素基としては、炭素数1〜30の不飽和炭化水素基であってもよい。中でも、接着性において優れた効果を発揮するためには、炭素数1〜10の不飽和炭化水素基が好ましく、ビニル基、アリル基のような末端に重合性基を有する基が好ましい。
11、Y11、およびZ11において、炭素数1〜30のアルコキシ基としては、優れた効果を発揮するためには、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
11、Y11、およびZ11においては、少なくとも1つが下記式(1s)で示される基とならなければならない。
Figure 0006945819
式中、R12、R13、およびR14は、それぞれ、炭素数1〜30の炭化水素基、または炭素数1〜30のアルコキシ基である。
12、R13、およびR14において、炭素数1〜30の炭化水素基、および炭素数1〜30のアルコキシ基は、前記、X11、Y11、およびZ11において説明した基と同様の基が挙げられ、保存安定性の観点から炭化水素基であることが好ましい。
11、Y11、およびZ11においては、少なくとも1つが前記式(1s)で示される基となればよく、2つ、又は全3つが前記式(1s)で示される基であってもよい。中でも、優れた保存安定性、および接着性を考慮すると、2つまたは3つが好ましい。
前記式(1)で示される第一シランカップリング剤は、市販のものを使用できるが、本発明においては、前記式(1)で示される第一シランカップリング剤としては、保存安定性をより向上できるという点から、(メタクリロキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリロキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、及び(3−アクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シランからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用する。

(第二シランカップリング剤)
本発明において、第二シランカップリング剤は、
下記式(2)
Figure 0006945819
{式中、
21は、メチル基、または水素原子であり、
21は、酸素原子、またはイミノ基であり、
21は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、
21、およびZ21は、それぞれ、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は下記式(2s)
Figure 0006945819
(式中、
22、R23、およびR24は、それぞれ、炭素数1〜30の炭化水素基、または炭素数1〜30のアルコキシ基である。)で示される基である。}
で示されるシランカップリング剤である。
前記式(2)において、R21は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、前記R11で説明した基と同様の基であり、好適な基もR11と同じである。
前記式(2)において、V21はメチル基、または水素原子である。中でも、優れた接着性を考慮すると、メチル基が好ましい。
前記式(2)において、W21は酸素原子、またはイミノ基(−NH−)である。
前記式(2)において、X21、およびZ21は、それぞれ、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、あるいは前記式(2s)で示される基である。
21、およびZ21において、炭素数1〜30の炭化水素基としては、前記、X11、Y11、およびZ11において説明した基と同様の基が挙げられ、好ましい基も同様である。
また、同じく、X21、およびZ21において、炭素数1〜30のアルコキシ基としては、前記、X11、Y11、およびZ11において説明した基と同様の基が挙げられ、好ましい基も同様である。
さらに、前記式(2s)で示される基において、R22、R23、およびR24は、それぞれ、炭素数1〜30の炭化水素基、または炭素数1〜30のアルコキシ基である。これら炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基は、前記R12、R13、およびR14(X11、Y11、およびZ11)で説明した基と同様の基が挙げられ、保存安定性の観点から炭化水素基であることが好ましい。
21、およびZ21において、特に保存安定性、接着性を向上させるためには、両方が前記式(2s)で示される基となることが好ましい。
前記式(2)で示される第二シランカップリング剤は、市販のものを使用できるが、本発明においては、前記式(2)で示される第二シランカップリング剤としては、保存安定性をより向上できるという点から、1、3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサンを使用する。

((A)成分の配合量)
本発明において、(A)成分は、前記第一シランカップリング剤、および第二シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のシランカップリング剤である。(A)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。2種以上を組み合わせて使用した場合には、基準となる質量は、それらの合計量である。
本発明において、歯科組成物中における(A)成分の配合割合としては特に限定されないが 0.1〜70質量%の範囲内が好ましく、1〜50質量%の範囲内がより好ましい。配合割合が0.1質量%未満では十分な接着強さ及び保存安定性が得られなくなる場合があり、70質量%を超えると硬化性が低下し接着強さが低下する場合がある。
<(B)酸性化合物; (B)成分>
本発明において、(B)酸性化合物は、前記(A)成分の加水分解の促進、および前記(A)成分と被接着体表面のシラノール基との脱水縮合を促進する酸触媒として機能する。
前記(B)成分は、成分は、水中に1mol/Lの濃度で溶解および/または分散させた水溶液、あるいは水性分散液において、pHが5以下となる物質を意味する。前記(B)成分としては、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、等の有機酸などの公知の化合物が挙げられる。なお、酸性化合物は、1種又は2種類以上のものを組み合わせて使用することができる。2種類以上のものを組み合わせて使用する場合には、基準となる質量は、それらの合計量である。
本発明においては、歯質(象牙質、エナメル質)、卑金属(鉄、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、アルミニウム、銅、チタン等あるいはこれらを主成分として含む合金)、および、ジルコニウムなどの金属と酸素とを主成分として含む金属酸化物(ジルコニアセラミックスなど)に対する接着性も向上させる点から、酸性基含有重合性単量体B1成分を用いるそのため、使用する成分を選定することにより、本発明の歯科用組成物は、卑金属製あるいは金属酸化物製の補綴物と、歯質とを接着させて修復するために使用する歯科用接着性組成物として好適に用いることができる。

((B1)酸性基含有重合性単量体;(B1)成分)
酸性基含有重合性単量体としては、1分子中に少なくとも1つの酸性基と少なくとも1つの重合性不飽和基を持つ化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
ここで、酸性基とは、該基を有す重合性単量体の水分散媒又は水懸濁液が酸性を呈す基であり、単なる酸性基だけでなく、当該酸性基の二つが脱水縮合した酸無水物構造や、酸性基がハロゲン化された酸ハロゲン化物基であってもよい。具体的には、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}、カルボキシル基{−C(=O)OH}、リン酸二水素モノエステル基{−O−P(=O)(OH)}、リン酸水素ジエステル基{(−O−)P(=O)OH}、スルホ基(−SOH)、及び酸無水物骨格{−C(=O)−O−C(=O)−}等が挙げられる。
以上のような具体的な基の中でも、水に対する安定性が高く、歯面のスメアー層の溶解や歯牙脱灰を緩やかに実施できるため、カルボキシル基、リン酸二水素モノエステル基、リン酸水素ジエステル基がより好ましい。その中でも上記の効果が最も高いリン酸二水素モノエステル基とリン酸水素ジエステル基が最も好ましい。
リン酸二水素モノエステル基またはリン酸水素ジエステル基を有する重合性単量体としては、具体的には、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。
カルボキシル基を有する重合性単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
スルホ基を有する重合性単量体としては、具体的には、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸等が挙げられる。
以上のような酸性基を有する重合性単量体の中でも、特に好ましい単量体を例示すると、下記式の化合物が挙げられる。
Figure 0006945819
上記式で示される酸性基含有重合性単量体において、Rは、水素原子、またはメチル基である。
また、これら酸性基含有重合性単量体は、必要に応じて2種以上のものを併用してもよい。2種類以上のものを併用した場合には、基準となる質量は、それらの合計量である。当然のことながら、酸性基含有重合性単量体とその他の酸性化合物とを併用して使用した場合には、基準となる酸性化合物の質量は、それらの合計量である。
なお、本発明の(B)酸性化合物には、前記(B1))酸性基含有重合性単量体が重合したポリマーを含むこともできる。
((B)酸性化合物の配合量)
本発明において、(B)成分の配合量は特に制限されるものではないが、(A)成分100質量部に対して、1〜10000質量部の範囲内が好ましく、10質量部〜1000質量部の範囲内がより好ましい。酸性化合物の配合量が1質量部未満では接着性が低下してしまう場合があり、配合量が10000質量部を超える場合は、保存後の接着性が低下(保存安定性が低下)してしまう場合がある。
<(C)有機溶媒; (C)成分>
本発明において、有機溶媒としては、公知のものが制限なく使用でき、歯科用組成物の目的に応じて適宜選択できる。具体的には、
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
エチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;
酢酸エチル、蟻酸エチル等のエステル類;
トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族系溶媒;
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のハイドロカーボン系溶媒;
塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒;
トリフルオロエタノール等のフッ素系溶媒等が挙げられる。
これらの中で、溶解性および保存安定性等の理由で、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール等が特に好ましく使用される。上記の有機溶媒は1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。2種類以上の有機溶媒を使用した場合には、基準となる量は、それらの合計量である。
歯科組成物中における有機溶媒の配合割合としては、前記(A)、(B)成分、下記に詳述する(D)成分、および必要に応じて配合されるその他の成分以外の残分に該当する。そのため、(C)成分の配合割合は、他の成分の配合割合によって適宜決定すればよい。中でも、(C)成分の配合割合は、歯科用組成物の全量を100質量%としたとき、5〜99質量%の範囲内が好ましく、10〜95質量%の範囲内がより好ましい。歯科組成物中の(C)有機溶媒が5質量%未満であると(A)シランカップリング剤と(D)水の濃度が高くなるため、保存安定性が低下する傾向にある。また、(C)有機溶媒が99質量%を超えると(A)シランカップリング剤の濃度が希薄となり接着強さ(接着性)が十分に得られない場合がある。
<(D)水;(D)成分>
本発明において、(D)水としては、貯蔵安定性、生体適合性及び接着性の観点で有害な不純物を実質的に含まない事が好ましく、例としては脱イオン水、蒸留水等が挙げられる。
水の配合量は、(A)シランカップリング剤100質量部に対して、水の配合量は、10〜2000質量部の範囲内でもよいが、本発明では、50〜500質量部の範囲内とする。(D)成分の配合量が10質量部未満では接着強さが低下してしまう傾向があり、2000質量部を超える場合は、水がエアブローで除去しきれずに残存して接着を阻害する場合や、(A)シランカップリング剤の加水分解が促進され過ぎて保存安定性が低下する傾向がある。
本発明においては、以上の(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を同一包装内に含有すれば、この4成分だけでもよいし、さらなる性能を発揮するために、その他の成分を含有されることができる。なお、「同一包装内に含有する」とは、同一の袋等の容器内に各成分が存在していることを指す。次に、本発明で使用できるその他の成分について説明する。
<その他の成分>
<(E)分子内にフッ素原子を有するフッ素化合物;(E)成分>
本発明においては、(E)分子内にフッ素原子を有するフッ素化合物を配合することもできる。前記(E)成分は、歯科用に使用できるフッ素化合物であれば、特に制限されるものではない。前記(E)成分を配合することにより、より一層、保存安定性を高めることができる。
前記(E)成分としては、歯科用組成物内で溶解した時に、フッ素イオンを放出するものが好ましい。(E)成分の具体的な例としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化銅、フッ化ジルコニウム、フッ化アルミニウム、フッ化チタン等の金属フッ化物塩および、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウムフッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等のフッ化4級アンモニウム塩が用いられる。
前記(E)成分が配合されることにより保存安定性が向上する理由は明らかではないが、本発明者等は以下のように推定している。先ず、該(E)成分から生じたフッ素イオンが、(A)シランカップリング剤のシラノール基同士が脱水縮合した縮合体のシロキサン結合を切断する。そして、再度シラノール基が生成することができるため、保存中におけるシラノール基同士の縮合を抑制し、シラノール基が多く存在する状態を保つものと考えられる。その結果、歯科用組成物の使用時に、シラノール基が被接着体表面と作用し易くなり、接着性が低下しないものと予測している。
本発明において、(E)成分の配合量は、特に制限されるものではないが、保存安定性、および接着性を考慮すると以下の範囲であることが好ましい。具体的には、前記(A)シランカップリング剤における加水分解性基1モルに対して、前記(E)におけるフッ素イオンのモル数が0.001〜6モルとなることが好ましく、0.01〜3モルとなることが好ましく、0.1〜1.5となることがさらに好ましい。前記(E)成分の配合量が多過ぎると、(A)成分における加水分解性基の多くがフッ素化され、接着に関与できないおそれが生じる。一方、前記(E)成分の配合量が少な過ぎると、前記(E)成分の配合効果が十分発揮されず、保存安定性が低下するおそれがある。なお、前記(A)成分における加水分解性基は、第一、二シランカップリング剤において、加水分解するSi−Oの結合部を有する基を指す。例えば、第一シランカップリング剤である(メタクリロキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの場合、1モルの(メタクリロキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランであれば、2モルの加水分解性基が存在することとなる。また、第二シランカップリング剤である1、3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサンの場合、1モルの1、3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサンであれば、5モルの加水分解性基が存在することとなる。
なお、(E)成分の配合量は、前記の範囲が好ましいが、質量で換算すると、通常であれば、(A)成分100質量部に対して、(E)成分を0.0005〜50000質量部とすることが好ましく、0.05〜20000質量部とすることがより好ましく、0.05〜10000質量部とすることがさらに好ましい。
また、本実施形態の歯科用組成物には、酸性基を有さない重合性単量体、フィラー、光重合開始剤、重合禁止剤等の、歯科用組成物に使用される公知の化合物を配合することができる。次に、これらの化合物について説明する。
<その他の成分;酸性基を有さない重合性単量体>
酸性基を有しない重合性単量体(以下、単に「酸性基非含有重合性単量体」とする場合もある。)としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等の有機酸のエステル類、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ− N−ビニル誘導体、スチレン誘導体が例示される。中でも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。酸性基を有しない重合性単量体の具体例を以下に示す。以下の説明においてn官能性の単量体とは、n個のオレフィン性二重結合(官能基)を有する単量体のことである。該酸性基非含有重合性単量体は、1官能、2官能、および3官能以上の重合性単量体が挙げられる。酸性基を有さない1官能の重合性単量体を、以下、単に「単官能重合性単量体」とし、酸性基を有さない2官能の重合性単量体を、以下、単に「2官能重合性単量体」とし、酸性基を有さない3官能以上の重合性単量体を、以下、単に「多官能重合性単量体」とする場合もある。
<その他の成分;酸性基非含有重合性単量体;単官能重合性単量体>
本発明においては、単官能重合性単量体としては、以下の化合物が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1 0−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどである。
<その他の成分;酸性基非含有重合性単量体;2官能重合性単量体>
本発明においては、2官能重合性単量体としては、以下の化合物が挙げられる。具体的には、 エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA ジグリシジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3 −(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレートなどである。
<その他の成分;酸性基非含有重合性単量体;多官能重合性単量体>
本発明においては、多官能重合性単量体としては、以下の化合物が挙げられる。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン) ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどである。
以上の酸性基非含有重合性単量体は、歯科用組成物の目的とする用途に応じて適宜組み合わせて使用することができる。これら酸性基非含有重合性単量体は1種類または複数種類の組み合わせで用いられる。複数種類を使用した場合には、基準となる配合量は、それらの合計量である。
<その他の成分;酸性基非含有重合性単量体の配合量>
本発明において、酸性基非含有重合性単量体の配合量は、必須成分ではないため、当然含まれなくてもよいが、様々な用途に適用するためには、以下の配合量を満足することが好ましい。具体的には、(A)成分 100質量部に対して、酸性基非含有重合性単量体の配合量が1〜90000質量部とすることが好ましく、10〜50000質量部とすることが好ましい。なお、最適配合量は、歯科用組成物の目的とする用途に応じて適宜決定すればよい。
また、酸性基非含有重合性単量体を配合する場合、目的とする用途に応じて、前記単官能重合性単量体、前記2官能重合性単量体、および前記多官能重合性単量体を組み合わせて使用することが好ましい。
<その他の成分;フィラー>
本発明においては、フィラーを配合することもできる。フィラーとしては、公知の有機フィラー、無機フィラーのうち、本発明の効果を阻害しない範囲で使用することができる。
有機フィラーを具体的に例示すると、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルメタクリレート共重合体、エチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、塩素化ポリエチレン、ナイロン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート等が挙げられる。なお、これら有機フィラーは、酸性基は含まないものである。
無機フィラーを具体的に例示すると、石英、無定形シリカ、シリカジルコニア、クレー、酸化アルミニウム、タルク、雲母、カオリン、ガラス、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等が挙げられる。
さらに、これら無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが好ましい。これにより、重合性単量体とのなじみをよくし、機械的強度や耐水性を向上させることが容易になる。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、表面処理剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
前記フィラーは、単独でも、2種類以上のものを組み合わせて使用できる。2種類以上のものを使用した場合には、基準となる配合量は、それらの合計量である。
前記フィラーは、必須成分ではないため、本発明の歯科用組成物に含まれなくてもよい。ただし、前記フィラーを使用する場合には、前記(A)成分 100質量部に対して、前記フィラーの配合量が1〜50000質量部とすることが好ましく、10〜30000質量部とすることが好ましい。なお、最適配合量は、歯科用組成物の目的とする用途に応じて適宜決定すればよい。
<その他の成分; 光重合開始剤>
本発明において、光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光増感剤を用いることができる。紫外線に対する光増感剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン化合物系、アセトインべンゾフェノン、p−クロロべンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、等のチオキサントン系化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド類、3,3'−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チェノイルクマリンなどのクマリン類、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体などが挙げられる。また、可視光線で重合を開始する光増感剤は、人体に有害な紫外線を必要としないために好適に使用される。これらの例としては、ベンジル、カンファーキノン、アセトナフセン、p,p’−ジメトキシベンジル、p,p’−ジクトレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン 等のα−ジケトン類が挙げられる。好ましくは、カンファーキノンが用いられる。
これら光増感剤(光重合開始剤)は、単独でも、2種類以上のものを組み合わせて使用できる。2種類以上のものを使用した場合には、基準となる配合量は、それらの合計量である。
また、上記光増感剤に光重合促進剤を組み合わせて用いることも好ましい。特に第三級アミン類を光重合促進剤として用いる場合には、芳香族基に直接窒素原子が置換した化合物を用いることがより好ましい。光重合促進剤としては、Ν,Ν−ジメチルアニリン、Ν,Ν−ジエチルアニリン、Ν,Ν−ジ−n−ブチルアニリン、Ν,Ν−ジベンジルアニリン、Ν,Ν−ジメチル−p−トルイジン、Ν,Ν−ジメチル−m−トルイジン、Ν,Ν−ジエチル−p−トルイジン、p−ブロモ−Ν,Νジメチルアニリン、m−クロロΝ,Ν−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノべンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノべンゾイックアシッドエチルエステル、p−ジメチルアミノべンゾイックアシッドアミノエステル、Ν,Ν−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、Ν,Ν−ジヒドロキシエチルアニリン、Ν,Ν−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノスチレン、Ν,Ν−ジメチル−3,5−キシリジン、 4−ジメチル アミノピリジン、Ν,Ν−ジメチル−α−ナフチルアミン、Ν,Ν−ジメチル−β−ナフチルアミン等が挙げられる。これらの光重合促進剤のうち少なくとも一種を選んで用いることができ、さらに二種以上を混合して用いることもできる。
これら光重合促進剤は、単独でも、2種類以上のものを組み合わせて使用できる。2種類以上のものを使用した場合には、基準となる配合量は、それらの合計量である。
上記光重合開始剤および光重合促進剤の添加量は適宜決定することができる。 通常、有効量の光重合開始剤、および光重合促進剤を使用することが好ましい。中でも、歯科用組成物における重合性単量体成分の全量、すなわち、前記(A)成分がラジカル重合性基を含む場合はその化合物、酸性化合物として酸性基含有重合性単量体を含む場合には酸性基含有重合性単量体、および酸性基非含有重合性単量体を使用する場合には酸性基非含有重合性単量体の合計量を100質量部としたとき、光重合開始剤を0.001〜30質量部使用することが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。また光重合促進剤の配合量は、前記重合性単量体成分の全量を100質量部としたとき、0.001〜30質量部使用することが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。
<その他の成分; 化学重合開始剤>
本実施形態の歯科用接着性組成物に用いられる化学重合開始剤としては、公知の化学重合開始剤であればいずれも制限無く利用することができる。このような化学重合開始剤としては、たとえば、有機過酸化物及びアミン類の組み合わせ、有機過酸化物、アミン類及びスルフィン酸塩類の組み合わせ、酸性化合物及びアリールボレート化合物の組み合わせ、第4周期遷移金属化合物及び有機過酸化物の組み合わせ、有機過酸化物及びチオ尿素誘導体の組み合わせ、バルビツール酸、アルキルボラン等の化学重合開始剤等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリールパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートに分類される各種過酸化物を挙げることができる。これらは、単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。
アミン類としては、第二級又は第三級アミン類が好ましく、具体的に例示すると、第二級アミンとしてはN−メチルアニリン、N−メチル−p−トルイジン等が挙げられ、第三級アミンとしてはN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。
アリールボレート化合物としては、1分子中に少なくても1つのホウ素−アリール結合を有していれば、公知のものを使用することができるが、保存安定性が高いことや取り扱いの容易さ、入手のし易さから、1分子中に4つのホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物が最も好ましい。1分子中に4つのホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物の具体例としては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素などのホウ素化合物の塩を挙げることができる。ホウ素化合物と塩を形成する陽イオンとしては、金属イオン、第3級または第4級アンモニウムイオン、第4級ピリジニウムイオン、第4級キノリニウムイオン、または第4級ホスホニウムイオンを使用することができる。これらは、単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。
チオ尿素誘導体としては、チオ尿素骨格を有する化合物が特に制限はなく使用でき、後述するチオ尿素化合物やメルカプトベンゾイミダゾール化合物が含まれ、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記チオ尿素化合物としては、エチレンチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、1−(2−テトラヒドロフルフリル)−2−チオ尿素、1−アセチル−2−チオ尿素等が挙げられる。前記メルカプトベンゾイミダゾール化合物としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エチルベンゾイミダゾール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。
第4周期遷移金属化合物において、第4周期の遷移金属とは、周期表第4周期の3〜12族の金属元素であり、具体的には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)である。これらの遷移金属元素は、各々が複数の価数を取りうるが、安定に存在できる価数のもの、例えば、Sc(III)、Ti(IV)、V(III〜V)、Cr(II、III、VI)、Mn(II〜VII)、Fe(II、III)、Co(II、III)、Ni(II)、Cu(I、II)、Zn(II)の化合物が、少なくとも有機過酸化物と組み合わされて化学重合開始剤として使用される。
このような第4周期遷移金属化合物の具体例としては、ヨウ化スカンジウム(III)、塩化チタン(IV)、チタニウム(IV)テトライソプロポキシド、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、塩化クロム(III)、クロム酸(VI)、クロム酸塩(VI)、酢酸マンガン(II)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト(II)、塩化ニッケル(II)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)、アセチルアセトン銅(II)、酢酸亜鉛(II)等を挙げることができ、これらは、単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。
上記化学重合開始剤の添加量は、使用する化学重合開始剤の種類等に応じて適宜決定することができる。 通常、有効量の化学重合開始剤を使用することが好ましい。中でも、歯科用組成物における重合性単量体成分の全量、すなわち、前記(A)成分がラジカル重合性基を含む場合はその化合物、酸性化合物として酸性基含有重合性単量体を含む場合には酸性基含有重合性単量体、および酸性基非含有重合性単量体を使用する場合には酸性基非含有重合性単量体の合計量を100質量部としたとき、化学重合開始剤を0.001〜30質量部使用することが好ましく、0.1〜10質量部使用することが好ましい。
化学重合開始剤を使用する場合は、通常、上記の反応成分を分包し、本発明の歯科用組成物と他の成分とを混合して使用する多液タイプとなる。ただし、本発明の歯科用組成物は、他の修復材料、例えば、歯科用ボンディング材、コンポジットレジン、コンポマー、レジンコア、レジンセメント、レジン強化型グラスアイオノマーセメント、義歯床用レジンなどと組み合わせて使用するものである。そのため、化学重合触媒の反応成分の一方を修復材料に添加することで、一液タイプとして使用することもできる。
<その他の成分;重合禁止剤>
本発明において、歯科用材料に使用できる公知の重合禁止剤を配合することもできる。重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドトキノンモノメチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。 これらの重合禁止剤のうち少なくとも1種を選んで用いることができ、さらに2種以上を混合して用いることもできる。
前記重合禁止剤は、単独でも、2種類以上のものを組み合わせて使用できる。2種類以上のものを使用した場合には、基準となる配合量は、それらの合計量である。
前記重合禁止剤は、必須成分ではないため、本発明の歯科用組成物に含まれなくてもよい。ただし、前記重合禁止剤を使用する場合には、前記重合性単量体成分の全量を100質量部としたとき、重合性禁止剤を0.0001〜10質量部使用することが好ましい。
その他、本発明の歯科用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で前記(A)成分以外の、歯科用材料に使用できるシランカップリング剤を配合することができる。ただし、保存安定性のことを考慮すると、シランカップリング剤は前記(A)成分のみであることが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、接着性が高く、保存安定性に優れる。そのため、保存状態は特に制限されるものではないが、0〜25℃の範囲で、同一包装内で保存することが好ましい。この温度範囲であれば、100日以上保存したとしても、接着性の低下を抑制できる。保存日数の上限値は、特に制限されるものではないが、0〜10℃の温度範囲であれば、1000日である。
本発明の歯科用組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分、および前記(D)成分を同一包装内に含有しているため、これら成分の混合が容易となる。そのため、前記(A)成分の加水分解を十分に生じさせることができる。その結果、同一の包装内で混合した後、直接使用する一液タイプとして使用することができるだけでなく、本発明の歯科用組成物と他の成分とを混合して使用する多液タイプ(例えば、2液タイプ)としても使用可能となる。
多液タイプとする場合、本発明の歯科用組成物と組み合わせて使用する他方の材料は、特に制限されるものではなく、目的とする用途に応じて適宜決定すればよい。例えば、本発明の歯科用組成物に化学重合開始剤を添加した場合、前記化学重合開始剤と反応する成分を添加した他の材料と混合することにより、化学重合型の歯科用組成物として使用することも可能となる。
<歯科用組成物の好適な用途(被接着体)>
本発明の歯科用組成物は、様々な被接着体を対象とすることができる。具体的には、ジルコニアセラミックスや、シリカ系セラミックス(ポーセレンなど)などのセラミックス、歯質(象牙質、エナメル質)、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、アルミニウム、銅、チタン等を主成分として含む卑金属、金、白金、パラジウム、銀等を主成分として含む貴金属、シリカ粒子あるいはシリカ−ジルコニア粒子などのフィラーを分散含有するレジン硬化体(硬質レジン歯、ハイブリッドレジン、CAD/CAMレジンブロック)等の各種歯科材料に対する接着に利用できる。
このような被接着体への接着用途の中でも、特に、セラミックスやシリカ系粒子を含むレジン硬化体に対する接着性に優れることから、セラミックスプライマーおよび多目的接着用接着材として利用することが好適である。
次に、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。
<物質の略称>
以下に、実施例および比較例において使用した物質の略称について説明する。
<(A)シランカップリング剤>
・MPS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(第一、二シランカップリング剤に非該当)。
・MPTES:γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシシラン(第一、二シランカップリング剤に非該当)。
・MPTIPS:γ−メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン(第一、二シランカップリング剤に非該当)
・MMBSS:(メタクリロキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(第一シランカップリング剤に該当)。
・MPBSS:3−メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(第一シランカップリング剤に該当)。
・MMTSS:メタクリロキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(第一シランカップリング剤に該当)
・MPTSS:メタクリロキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン(第一シランカップリング剤に該当)
・BMPTSS:1、3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン(第二シランカップリング剤に該当)。
<(B)酸性化合物>
<(B1)酸性基含有重合性単量体>
・MDP:10−メタアクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート。
・PM2:ビス(2−メタクリロキシエチル)アシッドホスフェート。
<その他の成分;(E)フッ素化合物>
・NaF:フッ化ナトリウム。
・TBAF:フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム。
<その他の成分;酸性基非含有重合性単量体>
・BisGMA:2.2’ ―ビス[4―(2―ヒドロキシ―3―メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン。
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート。
・HEMA:2―ヒドロキシエチルメタクリレート。
<その他の成分>
・CQ:カンファーキノン。
・DMBE:4−ジメチルアミノ安息香酸エチル。
実施例1〜18、比較例1〜8
表1〜表3に示す配合割合で上記に示した各成分を同一包装内で混合して歯科用組成物を調製した。表1には、各実施例、各比較例において、歯科用組成物の全量を100質量%とした場合の各成分の配合割合(質量%)を記載した。
表2、表3には、各実施例(表2)、および各比較例(表3)において、(A)シランカップリング剤100質量部当たりの各成分の各成分の配合割合(質量部)を示した。
得られた歯科用組成物(実施例、比較例の歯科用組成物)を下記の<1.接着強度評価>に従い接着性を評価した。
Figure 0006945819
Figure 0006945819
Figure 0006945819
<1.接着強度評価>
被着体として、シリカ系結晶化ガラスを材質とする歯科用セラミックス(いわゆるポーセレン)である「ノリタケスーパーポーセレンAAA」(クラレノリタケ製、縦15mm×横15mm×厚さ3mm)を用い、この被着体の片面を#800の耐水研磨紙で研磨した。その後、被着体の研磨面に、直径3mmの穴を開けた両面テープを貼り付けた。続いて、研磨面のうち両面テープの穴から露出している接着面に各実施例、および各比較例の歯科用組成物をそれぞれマイクロブラシで塗布し、接着面に塗布された歯科用組成物を5秒間エアブローすることにより乾燥させた。
続いて、光重合触媒を添加した実施例4〜18、比較例3〜8においては、歯科用組成物を可視光線照射器(パワーライト、トクヤマデンタル社製)にて10秒間光照射して硬化させた。
直径8mmの穴が設けられた厚み0.5mmのパラフィンワックスを、パラフィンワックスの穴と、両面テープの穴とが同心円となるように歯科用組成物が塗布された接着面に貼り付けて模擬窩洞を作製した。この模擬窩洞に歯科用コンポジットレジン(エステライトΣクイック、トクヤマデンタル社製)を充填してポリエステルフィルムで軽く圧接した後、可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)を用い、光照射10秒による光硬化を行った。その後、あらかじめ研磨したSUS304製丸棒(直径8mm、高さ18mm)をレジンセメント(ビスタイトII、トクヤマデンタル社製)で接着した。最後に、37℃の水中にて24時間浸漬することで接着強度測定用のサンプルを得た。なお、使用したコンポジットレジン(エステライトΣクイック)は、カンファーキノンおよびアミン化合物を含む光重合性の組成物である。
接着面に対して調製直後の歯科用組成物を塗布することにより得られたサンプルの接着強度(初期の接着強度)の測定結果、接着面に対して調製後にさらに50℃の恒温槽中で2週間保管した後の歯科用組成物を塗布することにより得られたサンプルの接着強度(保管後の接着強度)の測定結果を表4に示す。
Figure 0006945819
<表4に示す評価結果ついて>
実施例1〜18は本発明の構成を満足するよう配合された歯科用組成物を用いたものである。いずれの場合においても、接着試験結果は初期、保存後共に良好であった。
一方、比較例1〜5の歯科用組成物は(A)シランカップリング剤と異なりシロキサン結合を持たないシランカップリング剤を用いているため、保管中に(A)シランカップリング剤の加水分解、脱水縮合が生じ、接着強度が大きく低下した。
比較例6、7、8は、それぞれ(D)水、(B)酸性化合物、(A)シランカップリング剤を含まないため、十分な接着強度は得られなかった。

Claims (5)

  1. A)シランカップリング剤、(B)酸性化合物、(C)有機溶媒及び(D)水を同一包装内に含有する歯科用組成物であって、
    前記(A)シランカップリング剤が、(メタクリロキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリロキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−アクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン及び1、3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサンからなる群より選らばれる少なくとも1種からなり、
    前記(B)酸性化合物が酸性基含有重合性単量体からなり、
    前記(A)シランカップリング剤:100質量部に対する前記(D)水の含有量が50〜500質量部である、
    ことを特徴とする歯科用組成物
  2. 前記性基含有重合性単量体が、リン酸二水素モノエステル基またはリン酸二水素ジエステル基を含有する酸性基含有重合性単量体である、請求項に記載の歯科用組成物。
  3. さらに、(E)分子内にフッ素原子を有するフッ素化合物を含む請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
  4. 請求項1〜の何れかに記載の歯科用組成物からなる歯科用接着性組成物。
  5. 請求項1〜の何れかに記載の歯科用組成物からなる歯科用プライマー組成物。
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