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JP6940064B2 - スピクリスポール酸またはその誘導体の液晶、その製造方法 - Google Patents

スピクリスポール酸またはその誘導体の液晶、その製造方法 Download PDF

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JP6940064B2 JP2017162848A JP2017162848A JP6940064B2 JP 6940064 B2 JP6940064 B2 JP 6940064B2 JP 2017162848 A JP2017162848 A JP 2017162848A JP 2017162848 A JP2017162848 A JP 2017162848A JP 6940064 B2 JP6940064 B2 JP 6940064B2
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Description

本発明は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩から形成される液晶およびその利用に関する。
スピクリスポール酸は発酵により得られる天然の多価カルボン酸であり、反応点が多い、皮膚刺激性が少ないなどの特性から、種々の用途が提案されている。また、その誘導体化も試みられている(特許文献1)。
特開平08−198864号公報
本発明者らは、特定のスピクリスポール酸誘導体またはその塩と、特定の溶媒とを組み合わせることによって液晶が形成され得ることを予想外に見出した。このように形成された液晶は様々な用途に使用することができ、特に化粧品および微細構造制御などの用途に有用である。
したがって、本発明は以下を提供する。
(項目1)
スピクリスポール酸
Figure 0006940064
またはその誘導体あるいはその塩と、溶媒とを含む液晶。
(項目2)
前記スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩が、開環スピクリスポール酸
Figure 0006940064
の塩である、項目1に記載の液晶。
(項目3)
前記溶媒がアルコールを含む、項目1または2に記載の液晶。
(項目4)
前記アルコールが、1,3−ブタンジオール、1−オクタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目3に記載の液晶。
(項目5)
前記溶媒が、1,3−ブタンジオールまたは1−オクタノールを含む、項目3に記載の液晶。
(項目6)
リオトロピック液晶である、項目1〜5のいずれか1項に記載の液晶。
(項目7)
ヘキサゴナル液晶またはラメラ液晶である、項目6に記載の液晶。
(項目8)
項目1〜7のいずれか1項に記載の液晶を含む化粧品。
(項目9)
前記スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩が、開環スピクリスポール酸
Figure 0006940064
の塩である、項目8に記載の化粧品。
(項目10)
前記開環スピクリスポール酸の塩が、1分子の開環スピクリスポール酸に対して1分子の陽イオン種が組み合わされた塩である、項目9記載の化粧品。
(項目11)
前記液晶がラメラ液晶である、項目8〜10のいずれか1項に記載の化粧品。
(項目12)
項目1〜7のいずれか1項に記載の液晶の製造方法であって、
前記スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩と、前記溶媒とを混合して液晶を形成させる工程を含む製造方法。
(項目13)
多孔質材料の製造方法であって、
スピクリスポール酸
Figure 0006940064
またはその誘導体あるいはその塩と、溶媒とを含む組成物を提供する工程、および
該組成物中で多孔質材料を調製する工程
を含む製造方法。
(項目14)
前記スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩が、開環スピクリスポール酸
Figure 0006940064
の塩である、項目13に記載の製造方法。
(項目15)
多孔質材料の製造方法であって、
項目1〜7のいずれか1項に記載の液晶を提供する工程、および
形成された液晶を鋳型として多孔質材料を調製する工程
を含む製造方法。
(項目16)
前記液晶がヘキサゴナル液晶である、項目13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
(項目17)
前記多孔質材料がメソポーラスシリカである、項目13〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
(項目18)
項目13〜17のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された多孔質材料。
本発明において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
本発明は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩から形成される液晶を提供することで、化粧品および微細構造制御などにおける使用に有用な新規材料を提供する。
図1は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩の臨界ミセル濃度(CMC)およびCMCにおける表面張力値(γCMC)を示す。また、Caをキレートにより捕捉する能力を示す。 図2は、開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩(O−3Na)が形成するミセルの粒子径を示す。横軸はミセルの粒子径を対数で表し、縦軸は形成されたミセル粒子の数を100%としたときのそれぞれの粒子径のミセル粒子の数を表す。O−3Naはミセルの粒子径は3.4±0.4nmであった。 図3は、O−3Naおよび水のみの場合、あるいはO−3Naおよび水にさらにグリセリン、1,3−ブタンジオールまたはソルビトールを添加した場合の液晶形成の成否を示す。1,3−ブタンジオールを添加した溶液においてのみ液晶(ヘキサゴナル液晶)が形成された。下段の写真は、偏光顕微鏡(OLYMPUS BX41)による画像であり、スケールバーは60μmを表す。 図4は、O−3Na、水および1,3−ブタンジオール(1,3−BG)の三成分系におけるリオトロピック液晶形成能を示す。写真は、O−3Na:水:1,3−ブタンジオール(w/w)=53:35:12(上)および46:46:8(下)の組成における偏光顕微鏡(OLYMPUS BX41)による画像であり、スケールバーは60μmを表す。ヘキサゴナル液晶に特有な扇状のテクスチャが観察された。 図5は、O−3Na、水、1−オクタノールの三成分系において形成された液晶の画像を示す。O−3Na:水:1−オクタノール(w/w)=65:28:7の組成における偏光顕微鏡(OLYMPUS BX41)による画像であり、スケールバーは60μmを表す。ラメラ液晶に特有なモザイク状のテクスチャが観察された。 図6は、メソポーラスシリカ(MS)の合成の概略図である。 図7は、開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩(O−3Na)を鋳型にして得られるメソポーラスシリカ(MS)の性能評価を示す。O−3Naを鋳型にして得られたメソポーラスシリカ、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を鋳型として得られたメソポーラスシリカ、およびSBA−15のメソポーラスシリカについての窒素吸脱着等温線を示す。塗りつぶした円は吸着等温線を示し、白抜きの円は脱着等温線を示す。 図8は、開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩(O−3Na)を鋳型にして得られるメソポーラスシリカ(MS)のSEM画像(上)およびTEM画像(下)、ならびにpH=10におけるO酸およびシリカ骨格の化学的状態を示す。スケールバーは100nmを表す。
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
本明細書において、「陽イオン種」とは、常温常圧でpH=7の水中に薄い濃度で存在する場合に大部分が陽イオンとして存在するか、または陽イオン部分を含む分子(例えば、アミノ酸など)として存在する分子または原子を指す。例えば、陽イオン種として、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、NH(アンモニア)、CH(OH)CHNH(エタノールアミン)、およびCH(COOH)(NH)CHCHCHCHNH(リシン)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において、陽イオン種が原子であっても分子であっても、1分子の陽イオン種および2分子の陽イオン種などと数えられる。
スピクリスポール酸(本明細書において「S酸」とも呼ぶ)は、以下の構造
Figure 0006940064
(3S,4S)−3−ヒドロキシ−1,3,4−テトラデカントリカルボン酸1,3−ラクトン(S酸)
を有する天然の両親媒性化合物であり、糸状菌(Penisillium spiculisporum Lehman 10−1)から生産することができる。本明細書において、(3S,4S)−3−ヒドロキシ−1,3,4−テトラデカントリカルボン酸1,3−ラクトンおよびその塩を総称して、スピクリスポール酸またはS酸と呼ぶ。スピクリスポール酸は微生物由来の酵素反応によって生産され、分子内に少なくとも二つのキラル炭素を含み、複数の官能基を有することが特徴である。スピクリスポール酸は二価の酸であり、pKaは4.51であり、pKaは6.88である。1分子のスピクリスポール酸は、1分子の陽イオン種または2分子の陽イオン種とともに塩を形成し得る。本明細書において、「S−1B」および「S−2B」(Bは、Na(ナトリウム)などの陽イオン種を表す)と表記する場合、それぞれ、1分子のスピクリスポール酸に対して1分子の陽イオン種が組み合わされた塩、および1分子のスピクリスポール酸に対して2分子の陽イオン種が組み合わされた塩を表す。例えば、スピクリスポール酸の2ナトリウム塩は、「S−2Na」と表記される。ここで、陽イオン種Bは、常温常圧でpH=7の水中に薄い濃度で存在する場合に大部分が1価、2価またはそれより多くの価数の陽イオンとして存在する原子または分子であり得る。
本明細書において、「スピクリスポール酸誘導体」とは、スピクリスポール酸と類似の化学構造を有する化合物を指す。一つの実施形態において、スピクリスポール酸誘導体は、スピクリスポール酸を出発原料に合成された化合物であり得る。
開環スピクリスポール酸(オープンリング酸)(本明細書において「O酸」とも呼ぶ)は、以下の構造
Figure 0006940064
(3S,4S)−3−ヒドロキシ−1,3,4−テトラデカントリカルボン酸
を有する天然の両親媒性化合物であり、スピクリスポール酸誘導体の1種である。本明細書において、(3S,4S)−3−ヒドロキシ−1,3,4−テトラデカントリカルボン酸およびその塩を総称して、開環スピクリスポール酸またはO酸と呼ぶ。開環スピクリスポール酸は三価の酸であり、pKaは4.86であり、pKaは6.56であり、pKaは7.44である。1分子の開環スピクリスポール酸は、1分子の陽イオン種、2分子の陽イオン種または3分子の陽イオン種とともに塩を形成し得る。本明細書において、「O−1B」、「O−2B」および「O−3B」(Bは、Na(ナトリウム)などの陽イオン種を表す)と表記する場合、それぞれ、1分子の開環スピクリスポール酸に対して1分子の陽イオン種が組み合わた塩、1分子の開環スピクリスポール酸に対して2分子の陽イオン種が組み合わた塩および1分子の開環スピクリスポール酸に対して3分子の陽イオン種が組み合わた塩を表す。例えば、開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩は、「O−3Na」と表記される。ここで、陽イオン種Bは、常温常圧でpH=7の水中に薄い濃度で存在する場合に大部分が1価、2価またはそれより多くの価数の陽イオンとして存在する原子または分子であり得る。
本明細書において、「溶媒」とは、スピクリスポール酸誘導体またはその塩を分散させることができる任意の液体を指す。溶媒と混合されたスピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩は、溶解されていてもよいし、ミセルを形成していてもよいし、液晶を形成していてもよいし、懸濁等の不溶状態であってもよい。
本明細書において、「ミセル」とは、水中で形成される両親媒性分子の凝集体を指す。ミセルが水中で形成した場合、両親媒性分子の親油性部分は凝集体の内部に向かって配向し、極性親水性部分は凝集体の外部に向かって配向する。また、水中に形成するミセルに過剰の油を添加すると、油が水に分散した水中油型エマルションを形成する。
本明細書において、「液晶」とは、典型的な液体に見られる等方性の分子秩序と典型的な固体に見られる分子の構造化した秩序との間の状態にある物質の形態を指し、液晶では、液体中で分子秩序が形成されている。液晶において、スピクリスポール酸またはその誘導体は、何らかの分子秩序を示すように配置される。形成された液晶構造の間隙の空間には、何らかの化合物を保持させることができる。特定の化合物については、液晶形成能があることが公知であるが、スピクリスポール酸またはその誘導体から液晶が形成され得ることは知られていなかった。
本明細書において、「リオトロピック液晶」とは、溶媒中の成分の濃度変化により等方相から液晶相へ(またはその逆の)相変化を起こすことができる液晶を指す。
本明細書において、「ヘキサゴナル液晶」とは、六角柱が多数並んだハニカム状構造(六方晶相)の分子秩序を有する液晶を指す。
本明細書において、「ラメラ液晶」または「Lα液晶」とは、両親媒性分子の親水部が外向きに配向され、疎水部分が内向きに配向されることで形成された2分子層の膜の分子秩序を有する相(ラメラ相)を有する液晶を指す。ラメラ相および六方晶相は、例えば、偏光顕微鏡を介して観察することができる。
本明細書において、「キュービック液晶」とは、両親媒性分子が形成するミセルが立方晶の配置をとった分子秩序を有する液晶を指す。キュービック液晶は、光学的に等方性であり、偏光顕微鏡を介して観察することはできないが、例えば、小角X線散乱法や粘弾性測定によってその形成を確認することができる。
本明細書において、ある成分について「X%が液晶である」というとき、組成物中に存在するその成分のうちX%が液晶構造の形成に関わっていることを意味する。
本明細書において、「化粧品」とは、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることを目的とする任意の製品を指す。本明細書において、「化粧品」とは、いわゆる医薬品医療機器等法(旧薬事法)上の「化粧品」に限定されず、例えば、医薬部外品、医薬品、雑貨のいずれであってもよい。
本明細書において、「メソポーラスシリカ」とは、二酸化ケイ素(シリカ)を主成分とし、均一な平均直径2〜50nmの細孔(メソ孔)を持つ多孔質材料を指す。メソポーラスシリカは、触媒、吸着材料、光学デバイス、ガスセンサー、および分離膜などとして利用される。
(液晶の形成)
1つの局面において、本発明は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩と、溶媒とを含む液晶を提供する。発明者らは、スピクリスポール酸またはその誘導体の中の特定のものを使用することで液晶を形成させることが可能であることを見出した。1つの実施形態において、液晶はリオトロピック液晶であり得る。1つの実施形態において、液晶は、ヘキサゴナル液晶、ラメラ液晶、三角柱状構造の液晶またはキュービック液晶であり得る。同じスピクリスポール酸誘導体(例えば、O酸)を使用する場合であっても、塩の形態が異なれば形成される液晶の構造は異なり得る。液晶の形態は、例えば、偏光顕微鏡で観察することで確認することができる。
1つの局面において、本発明は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩と、溶媒とを含む液晶の製造方法を提供する。1つの実施形態において、本発明の液晶は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩と、溶媒とを混合し、加熱、撹拌した後に静置することで調製することができる。1つの実施形態において、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩と、溶媒とは種々の割合で混合され得る。1つの実施形態において、加熱は70℃付近までの加熱であり得る。撹拌には任意の手段を使用することができ、例えば、ボルテックスミキサー等を使用することができる。1つの実施形態において、加熱、撹拌およびその後の静置は、複数回繰り返してもよい。
1つの実施形態において、本発明の液晶は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩から形成される。1つの実施形態において、使用されるスピクリスポール酸誘導体は、以下の式I
Figure 0006940064
で表される構造を有し、式中、
、RおよびRは、それぞれ独立に、−OR、−NHRまたは−N(Rであり、
は、Hまたは−ORであり、
ここで、Rは、炭素数1〜21の飽和又は不飽和である分岐または直鎖炭化水素基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、アリル、オクチル、4−オクテニル、2−オクテニル、2−エチルヘキシル、オレイル、パルミチル、ヘキシル、2−ヘキセニル、11−ヘキサデセニル、ヘキサデシル、シクロヘキシル、ステアリル、またはゲラニルなどであるか、または
、R、RおよびRのうちのいずれか2つは、一緒になって環を形成していてもよく、ここで、R、R、RおよびRのうちの環を形成した2つは、一緒になって−O−を形成する、あるいは、2つの分子におけるR、R、RおよびRのうちのいずれか1つ同士が分子間で連結し、2量体を形成してもよい。
1つの実施形態において、使用されるスピクリスポール酸またはその誘導体は
Figure 0006940064
の構造を有する開環スピクリスポール酸(O酸)である。1つの実施形態において、スピクリスポール酸またはその誘導体は塩の形態で使用される。スピクリスポール酸またはその誘導体の塩は、スピクリスポール酸またはその誘導体と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グアニジン、アルギニン、リシンおよびそれらの組み合わせから選択される塩基との組み合わせで形成される塩であり得る。スピクリスポール酸またはその誘導体の塩は、スピクリスポール酸またはその誘導体に対して、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グアニジン、アルギニン、リシンおよびそれらの組み合わせから選択される陽イオン種が組み合わされた塩であり得る。1つの実施形態において、本発明の液晶は、開環スピクリスポール酸(O酸)と、水酸化ナトリウムとの組み合わせで形成される塩から形成される。
1つの実施形態において、本発明の液晶は、1分子の開環スピクリスポール酸(O酸)に対して、1分子の陽イオン種が組み合わされた塩(O−1B)、2分子の陽イオン種が組み合わされた塩(O−2B)または3分子の陽イオン種が組み合わされた塩(O−3B)(Bは陽イオン種を表す)から形成される。スピクリスポール酸またはその誘導体の塩における陽イオン種の数および/または価数は、液晶の形態に影響を及ぼし得る。1つの実施形態において、本発明の液晶は、1分子の開環スピクリスポール酸に対して1分子の陽イオン種が組み合わされた塩(O−1B)から形成されるラメラ液晶である。1つの実施形態において、本発明の液晶は、1分子の開環スピクリスポール酸に対して、2分子の陽イオン種が組み合わされた塩(O−2B)または3分子の陽イオン種が組み合わされた塩(O−3B)から形成されるヘキサゴナル液晶である。
1つの実施形態において、本発明の液晶は、アルコールを含む溶媒中で形成される。アルコールを含む溶媒(溶媒の種類、および/または組成の重量比)が適切に選択されなかった場合、液晶が形成されない、または所望の液晶が形成されないことがあり得る。1つの実施形態において、アルコールを含む溶媒には水が含まれる。水としては、常水、精製水、硬水、軟水、天然水、海洋深層水、電解アルカリイオン水、電解酸性イオン水、イオン水、およびクラスター水が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、アルコールは、1,3−ブタンジオール、1−オクタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。1つの実施形態において、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリグリセリンなどのポリマーアルコールを使用する場合、その数平均分子量は、100〜20000、好ましくは200〜2000、より好ましくは400〜1500である。
1つの実施形態において、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩、水、
およびアルコールの3成分のみから液晶が得られる。
本発明の液晶は、さらにスピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩以外の界面活性剤を含んでいてもよい。スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩以外の界面活性剤をさらに添加することで、形成される液晶の構造が変化し得る。このような界面活性剤は、化粧品および材料の微細構造制御などの用途に応じて適切なものを任意に選択することができ、例えば、界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン性界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン性界面活性剤類、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等)、ソルビタン脂肪酸エステル類(モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等)、モノグリセリン脂肪酸類(ラウリン酸グリセリン、ミリスチン酸グリセリン、ステアリン酸グリセリン、ベヘニン酸グリセリン、オレイン酸グリセリン、イソステアリン酸グリセリン、ヤシ油脂肪酸グリセリン、硬化牛脂油脂肪酸グリセリン、ラノリン酸グリセリン等)、ポリグリセリン脂肪酸類(ステアリン酸ジグリセリル、オレイン酸ジグリセリル、イソステアリン酸ジグリセリル、ステアリン酸テトラグリセリル、オレイン酸テトラグリセリル、ラウリン酸ヘキサグリセリル、ステアリン酸デカグリセリル等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(モノミリスチン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル等)、POE脂肪酸エステル類(POEモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド(ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールラノリン、ジメチルラウリルアミンオキシド等の非イオン性界面活性剤類などが挙げられる。
本発明の液晶は、さらに油性成分、各種有効成分、増粘剤、紛体類、紫外線吸収剤、有機変性粘土鉱物等から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
1つの実施形態において、本発明の液晶は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩を、0.02〜70重量%、好ましくは27〜70重量%、より好ましくは43〜63重量%含む溶媒中で形成される。1つの実施形態において、本発明の液晶は、水を、5〜46重量%、好ましくは7〜46重量%、より好ましくは8〜30重量%含む溶媒中で形成される。1つの実施形態において、本発明の液晶は、アルコールを、9〜55重量%、好ましくは9〜29重量%、より好ましくは14〜22重量%含む溶媒中で形成される。1つの実施形態において、液晶を形成させるために好ましいスピクリスポール酸またはその誘導体の塩、水およびアルコールの組成の重量比は、開環スピクリスポール酸塩:水:(1,3−ブタンジオールまたは1−オクタノール)=53:36:11〜47:31:22の範囲であり得る。1つの実施形態において、ヘキサゴナル液晶を形成させるために好ましいスピクリスポール酸またはその誘導体、水およびアルコールの組み合わせは、開環スピクリスポール酸塩、水および1,3−ブタンジオールまたは1−オクタノールである。理論に束縛されることを望むものではないが、1,3−ブタンジオールなどのアルカンジオールの添加は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩の親水性を向上させ、水に馴染みやすくすることで液晶の形成を促進すると考えられる。
1つの実施形態において、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩から液晶を形成させるとき、他の成分を添加することで、形成された液晶中にその成分が担持され得る。液晶に担持させる成分は、目的に応じて任意のものを選択することができるが、例えば、界面活性剤、油性成分、各種有効成分、増粘剤、紛体類、紫外線吸収剤、有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
(液晶の利用)
1つの局面において、本発明は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩から形成される液晶を含む組成物を提供する。組成物は、本発明の液晶に適した任意の用途に使用され得る。1つの実施形態において、組成物は化粧品のための組成物であり得る。1つの実施形態において、組成物は材料の微細構造制御のための組成物であり得る。1つの実施形態において、組成物は多孔質材料調製のための組成物であり得る。
1つの実施形態において、化粧品のための本発明の組成物は、スピクリスポール酸誘導体またはその塩を、0.02〜70重量%、好ましくは27〜70重量%、より好ましくは43〜63重量%含む。液晶を形成したスピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩は、組成物に添加した後でも液晶状態を維持し得る。1つの実施形態において、化粧品のための本発明の組成物は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩から形成されたヘキサゴナル液晶またはラメラ液晶、好ましくはラメラ液晶を含む。リオトロピック液晶の液晶構造をラメラ構造とすることで、ヒトの角質層の細胞間脂質が形成する構造に近似させることができる。このようにリオトロピック液晶の液晶構造をラメラ構造にすることで、細胞間脂質の構造への親和性が増大し、液晶に保持された成分が皮膚に馴染みやすくなり得る。
1つの実施形態において、化粧品のための本発明の組成物に含まれるスピクリスポール酸誘導体またはその塩は、0.02〜70重量%%、好ましくは27〜70重量%、より好ましくは43〜63重量%が液晶である。
化粧品のための本発明の組成物は、本発明の液晶に適した任意の形態であってよいが、例えば、水中油(O/W)型、油中水(W/O)型、W/O/W型、O/W/O型などの乳化型化粧品、油性化粧品、固形化粧品、液状化粧品、練状化粧品、スティック状化粧品、揮発性油型化粧品、粉状化粧品、ゼリー状化粧品、ジェル状化粧品、ペースト状化粧品、乳化高分子型化粧品、シート状化粧品、ミスト状化粧品、スプレー型化粧品、エアロゾル型化粧品などが挙げられる。
化粧品のための本発明の組成物は、本発明の液晶に適した任意の用途に使用され得るが、例えば、清浄用化粧品、頭髪用化粧品、基礎化粧品、メークアップ化粧品、芳香化粧品、日焼け・日焼け止め化粧品、口唇化粧品または入浴剤として利用することができる。
化粧品のための本発明の組成物は、通常化粧品に用いられる任意の成分または添加剤が添加されていてもよく、例えば、油性基剤、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、溶剤・噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、粉体類、無機塩類、紫外線吸収剤、ビタミン類、抗炎症剤、血行促進剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス類、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、酵素類、核酸類、香料、色素・着色剤・染料・顔料などが添加されていてもよい。
1つの実施形態において、材料の微細構造制御のための本発明の組成物は、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩を、0.02〜70重量%、好ましくは0.02〜63重量%、より好ましくは0.02〜50重量%含む。液晶を形成したスピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩は、組成物に添加した後でも液晶状態を維持し得る。
材料の微細構造制御のための本発明の組成物は、本発明の液晶に適した任意の用途に使用され得るが、例えば、化粧品や医薬品の基材、多孔質材料の調製のための鋳型、液晶乳化法、電子材料、特異反応場などとして利用することができる。1つの実施形態において、多孔質材料は、メソポーラスシリカ(MS)である。1つの実施形態において、多孔質材料の製造のための好ましい液晶はハチの巣状のハニカム状構造を持つヘキサゴナル液晶であり得る。形成された多孔質材料の単位体積当たりの表面積(比表面積)が大きく吸着量が大きくなるからである。
1つの局面において、本発明は、多孔質材料の製造方法であって、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩と溶媒とを含む組成物を提供する工程、および該組成物中で多孔質材料を調製する工程を含む製造方法を提供する。一つの実施形態において、本発明は、多孔質材料の製造方法であって、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩と溶媒とを含む液晶を提供する工程、および形成された液晶を鋳型として多孔質材料を調製する工程を含む製造方法を提供する。1つの実施形態において、スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩、水、およびアルコールの3成分のみから液晶が得られ、石油由来合成界面活性剤を使用せずに多孔質材料が調製され得る。
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を記載する。
(実施例1)
開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩(O−3Na)の合成
Figure 0006940064
ナスフラスコにスピクリスポール酸(S酸)10g(磐田化学、静岡、日本)を測りとり、これに水15mlおよび3N NaOH水溶液35ml(S酸に対して3.2等量)を加えて溶解させ、100℃で2時間還流した。エバポレーター及び凍結乾燥処理を行うことで、開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩(O−3Na)を得た。
得られた生成物を同定するため、各種NMR(Bruker AVANCE 400)(ブルカー・バイオスピン、神奈川、日本)測定を行った。生成物30mgを重水0.6mlに溶解させ、内標準物質として1,4−ジオキサン2μlを加えた。この溶液について、H−NMR(400MHz)、13C−NMR(100MHz)の測定を行ったところ以下のスペクトルが得られた。
H−NMR(400MHz)スペクトル:δ(ppm)=2.54(dd,J=4.0,12.0Hz,1H,CHOONa,d),2.27(m,1H,CH,f),1.96(m,2H,CH,e and f),1.66(m,2H,CH,c and e),1.23,(17H,−CH−,b and c),0.82(t,J=6.5Hz)。(水のピークを基準(δ=4.79)とした)。
13C−NMR(100MHz)スペクトル:δ(ppm)=184.8(C=O,g),184.3(C=O,i),181.9(C=O,h),80.9(C,j),57.0(CH,d),37.1(CH,e),34.4(CH,f),32.8(CH),30.4(CH),30.3(2C,CH),30.1(2C,CH),29.6(CH),28.9(CH),23.6(CH),15.0(CH,a)。(1,4-ジオキサンのピークを基準(δ=68.1)とした)。
(実施例2)
表面張力測定
実施例1で得られたO−3Naを超純水に溶解し、各種濃度のO−3Na希薄水溶液を調製した。その水溶液をシャーレに入れ、1日間静置した後、25℃においてウィルヘルミー法により表面張力測定(Kyowa DY−500)(協和界面科学、埼玉、日本)を行った。同様に、S−1Na、S−2Na、O−1NaおよびO−2Naについても測定を行った。その結果、O−3Naの臨界ミセル濃度(CMC)は85mM、その際の表面張力値は、γCMCは36.9mN/mであり、その他の塩の臨界ミセル濃度およびその際の表面張力値は図1に示すとおりであることが分かった。また、S−1Na、S−2NaおよびO−3NaのCaに対するキレート能力について測定を行った。結果を図1に示す。
このことから、開環スピクリスポール酸の3つのカルボキシル基の解離に伴いCaに対するキレート能力が大幅に向上し、このうち開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩(O−3Na)が、Caに対する優れたキレート能力を持つことが理解される。これは、O−3Naが分子集合することによってキレート能力が増強されるためと考えられ、化粧品や食品等におけるキレート剤として有用である。
(実施例3)
開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩(O−3Na)が形成するミセルの粒子径測定
O−3Naが形成するミセルの粒子径を、動的光散乱法(DLS)で測定した。100mMのO−3Na水溶液を調製し、PVDFシリンジフィルター(細孔:0.45μm、Merck Millipore、米国、マサチューセッツ)でろ過した。DLS7000(大塚電子、大阪、日本)を用い、Arレーザー(波長:488nm)を用いて散乱角90にて測定した。結果を図2に示す。O−3Naはミセルを形成し、その粒子径は3.4±0.4nmであった。
このことから、O−3Naはその分子長の約2倍程度の直径のミセルを形成することが理解される。
(実施例4)
溶媒の選択による液晶形成
O−3Naおよび水のみ、あるいはO−3Naおよび水にさらにグリセリン、1,3−ブタンジオールまたはソルビトールを添加した4種類の溶液について、各成分の濃度を調整したところ、1,3−ブタンジオールを添加した溶液においてのみ液晶が形成された(図3)。
O−3Na、水および1,3−ブタンジオールの三成分系においてリオトロピック液晶形成能を評価した。各種濃度になるように試験管に測りとったサンプルを、恒温槽にて70℃で約20分加熱し、ボルテックスで約3分間攪拌した後に室温に静置した。この操作を数回繰り返したものをサンプルとした。このサンプルを目視及び偏光顕微鏡(OLYMPUS BX41)(オリンパス、東京、日本)で観察することにより三成分相図を作成した。その結果を図4に示す。幅広い領域でO−3Naがリオトロピック液晶を形成することが分かった。また、ヘキサゴナル液晶に特有な扇状のテクスチャが得られたことから、リオトロピック液晶の中でもヘキサゴナル液晶の形成が示唆された。
また、O−3Na、水、1−オクタノールの三成分系においてもリオトロピック液晶を形成させることができた。O−3Na:水:1−オクタノール=63:27:10又は65:28:7の組成において、ラメラ液晶に特有なモザイク状のテクスチャが観察されたことから、ラメラ液晶の形成が示唆された(図5)。
溶媒の種類および組成を選択することで、液晶の構造および/またはパターンが制御され得ることが示された。
(実施例5)
スピクリスポール酸誘導体塩による液晶形成
S酸、S−1Na、S−2Na、O酸、O−1Na、O−2Na、またはO−3Naを、水および1−オクタノールと組み合わせて液晶の形成を観察した。各成分の濃度を調整したところ、S酸、S−1Na、S−2NaまたはO酸を使用した場合には液晶が形成されず、O−1Naを使用した場合にはラメラ液晶が形成され、O−2NaまたはO−3Naを使用した場合にはヘキサゴナル液晶が形成された。
スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩の選択によって、液晶の構造および/またはパターンが制御され得ることが示された。
(実施例6)
開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩(O−3Na)を鋳型にして得られるメソポーラスシリカ(MS)の合成
O−3Naから形成された液晶を鋳型にしてメソポーラスシリカ(MS)を合成した(図6)。水・エタノール混合溶液(水:エタノール=3:1(体積比))にO−3Naを添加して52mM O−3Na溶液を調製し、約3時間攪拌した。次に、シリカ源としてN−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(TMAPS)およびテトラエトキシシラン(TEOS)を、O−3Naに対してそれぞれ1.0等量および9.1等量加え、水酸化ナトリウム水溶液でpHを10.0に調整した。60℃で24時間攪拌した後、静置し、シリカの加水分解を促進させた。得られた生成物を、十分な量の水で吸引ろ過により洗浄し、乾燥させ(100℃、10時間、1℃/分)、焼成して(550℃、5時間、1℃/分)、O−3Naを熱分解除去し、白色粉体を得た。
(実施例7)
開環スピクリスポール酸の3ナトリウム塩(O−3Na)を鋳型にして得られるメソポーラスシリカ(MS)の性能評価
実施例5で得られた白色粉末の細孔特性を評価するため、窒素吸脱着測定(BELSORP−mini)(マイクロトラック・ベル、大阪、日本)を行った。前処理(300℃、8時間、真空)した後、液体窒素で一定温度(77K)に維持しながら測定を行った。
得られた吸脱着等温線を図7に示す。比較のために、アニオン性界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を鋳型として得られたメソポーラスシリカ、SBA−15例えば、Dongyuan Zhao, Jianglin Feng, Qisheng Huo, Nicholas Melosh, Glenn H. Fredrickson, Bradley F. Chmelka, Galen D. Stucky. Science 279(1998) 548−552.およびAbdelhamid Syari, Bao−Hang Han, Yong Yang. J. AM. CHEM. SOC. 126(2004) 14348−14349.を参照のこと)のメソポーラスシリカについての結果も示す。O−3Naを鋳型にしたメソポーラスシリカが最も高い窒素吸着量を示した。窒素吸着量は、窒素分圧0.4〜0.8付近において急激に変化し、等温線の吸着過程と脱着過程は一致しなかった。このヒステリシスは、メソ孔特有の毛管凝縮現象に起因すると考えられる。
得られたMSの比表面積(BET法)、全細孔容積、及び細孔径(BJH法)を吸着等温線から解析した結果を以下の表に示す。O−3Naを鋳型にしたMSの細孔径(dBJH)は12.1nm、全細孔容積(Vtotal)は0.94cm/gと他のMSより大きくなった。一方、O−3Naを鋳型にしたメソポーラスシリカの比表面積(SBET)は他のものよりも小さくなった。
表1.それぞれのMSの細孔特性
Figure 0006940064
また、O−3Naを鋳型にしたメソポーラスシリカのSEM及びTEM観察を行った。なお、SEMでは20mMのO−3Na溶液中で合成したMSを、TEMでは52mMのO−3Na溶液中で合成したMSを観察した。SEM(Hitachi S−4800)(日立製作所、東京、日本)は、試料台の中央にカーボンテープを貼り付け、そこに試料を付着させ、試料台を装置にセットして撮像した。また、試料へのダメージを低減させながら、より高倍率で観察するためにリタ―ディングモードに設定した。加速電圧は0.5〜1.0kVを使用した。TEM(Hitachi H−7650)(日立製作所、東京、日本)は、粉末試料に超純水を加え、ボルテックス攪拌処理することで懸濁させ、これをCu製のグリッドに滴下した後、デシケーター中で1日乾燥させて撮像した。120kVの加速電圧を使用した。結果を図7および図8に示す。SEM像より、表面の凹凸構造が確認されるとともに、TEM像からも5nm前後のナノ粒子が堆積していることが確認され、これら粒子間に細孔が形成されることが示唆された。O−3Naを鋳型とすることで、優れた吸着特性を示すMSが合成された。
スピクリスポール酸またはその誘導体あるいはその塩から形成される液晶を利用した微細構造制御により、従来より優れた性質を有する素材が調製され得ることが示された。
(注記)
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明は、化粧品、微細構造制御材料およびその開発に利用可能である。

Claims (18)

  1. スピクリスポール酸
    Figure 0006940064

    または開環スピクリスポール酸
    Figure 0006940064

    あるいはその塩と、溶媒とを含む、ヘキサゴナル液晶またはラメラ液晶である液晶。
  2. スピクリスポール酸
    Figure 0006940064

    または開環スピクリスポール酸
    Figure 0006940064

    あるいはその塩と、アルコールを含む溶媒とを含む液晶。
  3. リオトロピック液晶である、請求項2に記載の液晶。
  4. ヘキサゴナル液晶またはラメラ液晶である、請求項3に記載の液晶。
  5. 前記スピクリスポール酸または開環スピクリスポール酸あるいはその塩が、開環スピクリスポール酸の塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶。
  6. 前記溶媒が、1,3−ブタンジオール、1−オクタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコールを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶。
  7. 前記溶媒が、1,3−ブタンジオールまたは1−オクタノールを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶を含む化粧品。
  9. 前記スピクリスポール酸または開環スピクリスポール酸あるいはその塩が、開環スピクリスポール酸
    Figure 0006940064

    の塩である、請求項8に記載の化粧品。
  10. 前記開環スピクリスポール酸の塩が、1分子の開環スピクリスポール酸に対して1分子の陽イオン種が組み合わされた塩である、請求項9記載の化粧品。
  11. 前記液晶がラメラ液晶である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の化粧品。
  12. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶の製造方法であって、
    前記スピクリスポール酸または開環スピクリスポール酸あるいはその塩と、前記溶媒とを混合して液晶を形成させる工程を含む製造方法。
  13. 多孔質材料の製造方法であって、
    スピクリスポール酸
    Figure 0006940064

    または開環スピクリスポール酸
    Figure 0006940064

    あるいはその塩と、溶媒とを含む組成物を提供する工程、および
    該組成物中で多孔質材料を調製する工程
    を含む製造方法。
  14. 前記スピクリスポール酸または開環スピクリスポール酸あるいはその塩が、開環スピクリスポール酸
    Figure 0006940064

    の塩である、請求項13に記載の製造方法。
  15. 多孔質材料の製造方法であって、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶を提供する工程、および
    形成された液晶を鋳型として多孔質材料を調製する工程
    を含む製造方法。
  16. 前記液晶がヘキサゴナル液晶である、請求項13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 前記多孔質材料がメソポーラスシリカである、請求項13〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
  18. 請求項13〜17のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された多孔質材料。
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