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JP6817561B2 - 三次元形状造形物の製造方法 - Google Patents

三次元形状造形物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、三次元形状造形物の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、粉末層への光ビーム照射によって固化層を形成する三次元形状造形物の製造方法に関する。
光ビームを粉末材料に照射することを通じて三次元形状造形物を製造する方法(一般的には「粉末床溶融結合法」と称される)は、従来より知られている。かかる方法は、以下の工程(i)および(ii)に基づいて粉末層形成と固化層形成とを交互に繰り返し実施して三次元形状造形物を製造する。
(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射し、かかる所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程。
(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、同様に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程。
このような製造技術に従えば、複雑な三次元形状造形物を短時間で製造することが可能となる。粉末材料として無機質の金属粉末を用いる場合、得られる三次元形状造形物を金型として使用することができる。一方、粉末材料として有機質の樹脂粉末を用いる場合、得られる三次元形状造形物を各種モデルとして使用することができる。
粉末材料として金属粉末を用い、それによって得られる三次元形状造形物を金型として使用する場合を例にとる。図10に示すように、まず、スキージング・ブレード23を動かして造形プレート21上に所定厚みの粉末層22を形成する(図10(a)参照)。次いで、粉末層22の所定箇所に光ビームLを照射して粉末層22から固化層24を形成する(図10(b)参照)。引き続いて、得られた固化層の上に新たな粉末層を形成して再度光ビームを照射して新たな固化層を形成する。このようにして粉末層形成と固化層形成とを交互に繰り返し実施すると固化層24が積層することになり(図10(c)参照)、最終的には積層化した固化層24から成る三次元形状造形物を得ることができる。最下層として形成される固化層24は造形プレート21と結合した状態になるので、三次元形状造形物と造形プレート21とは一体化物を成すことになり、その一体化物を金型として使用できる。
特開2010−065259号公報
ここで、本願発明者らは、固化層形成段階において以下の事象を見出した。具体的には、本願発明者らは、金属粉末に光ビームを照射して固化層を形成する際において、当該固化層内に細孔が局所的に存在し得ることを見出した。細孔が固化層内に局所的に存在する場合、細孔が空隙を成していることに起因して、細孔が存在する領域の構造強度は相対的に弱くなっており、かかる領域を起点としてクラックが生じ得る虞があり得る。そのため、これに起因して最終的に得られる三次元形状造形物の構造強度が低下する虞があり得る。つまり、高精度な三次元形状造形物が得られない虞があり得る。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものである。すなわち、本発明の目的は、高精度な三次元形状造形物を得ることが可能な三次元形状造形物の製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明では、
光ビームの照射によって複数の固化層を逐次形成して三次元形状造形物を製造する方法であって、
固化層内の残存ガスに起因して生じる細孔を減じることを含んで成る、三次元形状造形物の製造方法が提供される。
本発明の製造方法では、高精度な三次元形状造形物を得ることができる。
固化層内の細孔を減じる態様を模式的に示した断面図(図1(a):細孔を減じる前、図1(b):細孔を減じた後) 細孔の発生現象を模式的に示した断面図 細孔の発生箇所を特定する態様を模式的に示した断面図 細孔を含んで成る固化層の所定部分に光ビームを照射する態様を模式的に示した断面図(図4(a):細孔の発生箇所特定、図4(b):光ビーム照射開始、図4(c):光ビーム照射終了後) 光ビームの照射条件を調整する態様を模式的に示した断面図(図5(a):光ビームの出力調整、図5(b):光ビームの走査速度調整、図5(c):光ビームのスポット径調整) 細孔を含んで成る固化層の所定部分を外部から押圧する態様を模式的に示した断面図 細孔を含んで成る固化層の所定部分を外部から押圧する別態様を模式的に示した断面図 細孔を含んで成る固化層の所定部分を切削加工に付す態様を模式的に示した断面図(図8(a):切削加工開始、図8(b):切削加工終了後、図8(c):粉末充填、図8(d):光ビーム照射) 粉末から成る層の厚さを調整する態様を模式的に示した断面図(図9(a):スキージング・ブレードによる厚さ調整、図9(b):粉末供給ノズルによる厚さ調整、図9(c):粉末吸引ノズルによる厚さ調整) 粉末床溶融結合法が実施される光造形複合加工のプロセス態様を模式的に示した断面図(図10(a):粉末層形成時、図10(b):固化層形成時、図10(c):積層途中) 光造形複合加工機の構成を模式的に示した斜視図 光造形複合加工機の一般的な動作を示すフローチャート
以下では、図面を参照して本発明の一実施形態をより詳細に説明する。図面における各種要素の形態および寸法は、あくまでも例示にすぎず、実際の形態および寸法を反映するものではない。
本明細書において「粉末層」とは、例えば「金属粉末から成る金属粉末層」または「樹脂粉末から成る樹脂粉末層」を意味している。また「粉末層の所定箇所」とは、製造される三次元形状造形物の領域を実質的に指している。従って、かかる所定箇所に存在する粉末に対して光ビームを照射することによって、その粉末が焼結又は溶融固化して三次元形状造形物を構成することになる。更に「固化層」とは、粉末層が金属粉末層である場合には「焼結層又は溶融固化層」を意味し、粉末層が樹脂粉末層である場合には「硬化層又は溶融結合層」を意味している。
また、本明細書で直接的または間接的に説明される“上下”の方向は、例えば造形プレートと三次元形状造形物との位置関係に基づく方向であって、造形プレートを基準にして三次元形状造形物が製造される側を「上方向」とし、その反対側を「下方向」とする。
[粉末床溶融結合法]
まず、本発明の製造方法の前提となる粉末床溶融結合法(いわゆるパウダーベッド方式)について説明する。特に粉末床溶融結合法において三次元形状造形物の切削処理を付加的に行う光造形複合加工を例として挙げる。図10は、光造形複合加工のプロセス態様を模式的に示しており、図11および図12は、粉末床溶融結合法と切削処理とを実施できる光造形複合加工機の主たる構成および動作のフローチャートをそれぞれ示している。
光造形複合加工機1は、図11に示すように、粉末層形成手段2、光ビーム照射手段3および切削手段4を備えている。
粉末層形成手段2は、金属粉末または樹脂粉末などの粉末を所定厚みで敷くことによって粉末層を形成するための手段である。光ビーム照射手段3は、粉末層の所定箇所に光ビームLを照射するための手段である。切削手段4は、積層化した固化層の表面、すなわち、三次元形状造形物の表面を削るための手段である。
粉末層形成手段2は、図10に示すように、粉末テーブル25、スキージング・ブレード23、造形テーブル20および造形プレート21を主に有して成る。粉末テーブル25は、外周が壁26で囲まれた粉末材料タンク28内にて上下に昇降できるテーブルである。スキージング・ブレード23は、粉末テーブル25上の粉末19を造形テーブル20上へと供して粉末層22を得るべく水平方向に移動できるブレードである。造形テーブル20は、外周が壁27で囲まれた造形タンク29内にて上下に昇降できるテーブルである。そして、造形プレート21は、造形テーブル20上に配され、三次元形状造形物の土台となるプレートである。
光ビーム照射手段3は、図11に示すように、光ビーム発振器30およびガルバノミラー31を主に有して成る。光ビーム発振器30は、光ビームLを発する機器である。ガルバノミラー31は、発せられた光ビームLを粉末層22にスキャニングする手段、すなわち、光ビームLの走査手段である。
切削手段4は、図11に示すように、エンドミル40および駆動機構41を主に有して成る。エンドミル40は、積層化した固化層の表面、すなわち、三次元形状造形物の表面を削るための切削工具である。駆動機構41は、エンドミル40を所望の切削すべき箇所へと移動させる手段である。
光造形複合加工機1の動作について詳述する。光造形複合加工機1の動作は、図12のフローチャートに示すように、粉末層形成ステップ(S1)、固化層形成ステップ(S2)および切削ステップ(S3)から構成されている。粉末層形成ステップ(S1)は、粉末層22を形成するためのステップである。かかる粉末層形成ステップ(S1)では、まず造形テーブル20をΔt下げ(S11)、造形プレート21の上面と造形タンク29の上端面とのレベル差がΔtとなるようにする。次いで、粉末テーブル25をΔt上げた後、図10(a)に示すようにスキージング・ブレード23を粉末材料タンク28から造形タンク29に向かって水平方向に移動させる。これによって、粉末テーブル25に配されていた粉末19を造形プレート21上へと移送させることができ(S12)、粉末層22の形成が行われる(S13)。粉末層22を形成するための粉末材料としては、例えば「平均粒径5μm〜100μm程度の金属粉末」および「平均粒径30μm〜100μm程度のナイロン、ポリプロピレンまたはABS等の樹脂粉末」を挙げることができる。粉末層22が形成されたら、固化層形成ステップ(S2)へと移行する。固化層形成ステップ(S2)は、光ビーム照射によって固化層24を形成するステップである。かかる固化層形成ステップ(S2)においては、光ビーム発振器30から光ビームLを発し(S21)、ガルバノミラー31によって粉末層22上の所定箇所へと光ビームLをスキャニングする(S22)。これによって、粉末層22の所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させ、図10(b)に示すように固化層24を形成する(S23)。光ビームLとしては、炭酸ガスレーザ、Nd:YAGレーザ、ファイバレーザまたは紫外線などを用いてよい。
粉末層形成ステップ(S1)および固化層形成ステップ(S2)は、交互に繰り返して実施する。これにより、図10(c)に示すように複数の固化層24が積層化する。
積層化した固化層24が所定厚みに達すると(S24)、切削ステップ(S3)へと移行する。切削ステップ(S3)は、積層化した固化層24の表面、すなわち、三次元形状造形物の表面を削るためのステップである。エンドミル40(図10(c)および図11参照)を駆動させることによって切削ステップが開始される(S31)。例えば、エンドミル40が3mmの有効刃長さを有する場合、三次元形状造形物の高さ方向に沿って3mmの切削処理を行うことができるので、Δtが0.05mmであれば60層分の固化層24が積層した時点でエンドミル40を駆動させる。具体的には駆動機構41によってエンドミル40を移動させながら、積層化した固化層24の表面に対して切削処理を施すことになる(S32)。このような切削ステップ(S3)の最終では、所望の三次元形状造形物が得られているか否かを判断する(S33)。所望の三次元形状造形物が依然得られていない場合では、粉末層形成ステップ(S1)へと戻る。以降、粉末層形成ステップ(S1)〜切削ステップ(S3)を繰り返し実施して更なる固化層の積層化および切削処理を実施することによって、最終的に所望の三次元形状造形物が得られる。
[本発明の製造方法]
本発明は、固化層形成段階において特徴を有している。
具体的には、本発明の製造方法は、図1(a)および図1(b)に示すように固化層24の形成段階において、固化層24内に生じる細孔10を減じることを含んで成る。より具体的には、本発明の製造方法は、図1(a)および図1(b)に示すように固化層24の形成段階において、固化層24内の残存ガスに起因して生じる細孔10を減じることを含んで成る。
ここでいう「細孔10」とは、図1(a)の右上拡大図に示すように固化層24内に形成される空隙を指し、断面視において特に限定されるものではないが20〜100μmの寸法を有し得るものを指す。より具体的には、ここでいう「細孔10」とは、固化層24における固化密度が例えば80〜100%の高密度領域に生じる空隙を指す。換言すれば、ここでいう「細孔10」とは、固化層24における固化密度が例えば80%未満の低/中密度領域には生じないものを指す。なお、固化層における固化密度が相対的に低い密度領域では、固化密度が相対的に低いことに起因していわゆるポーラス領域が内部に形成され得る。一方、本発明では、上述のように固化密度が相対的に高い密度領域内に細孔10が存在し得る。以上の事からも、本発明における「細孔10」は、固化層における固化密度が相対的に低い密度領域内に形成される「ポーラス領域」とは本質的に異なるものであることを確認的に付言しておく。
特定の理論に拘束されるものではないが、本発明における「細孔10」は以下の現象により生じ得ると考えられる。具体的には、図2に示すように、光ビームLを照射して新たな固化層24Bを形成する際においては、光ビームLの照射熱が既に形成した下層に位置する固化層24Aに伝わり得る。光ビームLの照射熱が既に形成した下層に位置する固化層24Aに伝わると、当該固化層24A内に局所的に残存し得る残存ガス5が当該光ビームLの照射熱により膨張し得る。かかる残存ガス5の膨張により、既に形成した下層に位置する固化層24A内に局所的に細孔10が生じ得る。なお、ここでいう「残存ガス5」とは、特に限定されるものではないが、例えば、粉末層の所定箇所に光ビームを照射した際に生じるガスが固化層内に残存することに起因して生じるものであり得る。
図1(b)に示すように、固化層24内の残存ガスに起因して内部に局所的に生じ得る細孔10を減じると、固化層24の内部は空隙が減じられた状態となり得る。ここでいう「細孔を減じる」とは、細孔の数および/又は細孔の寸法を減じることを実質的に指す。また、ここでいう「減じる」とは、完全に除去したものも含む。空隙が減じられると、細孔10が空隙を成していることに起因して細孔10が存在する領域の構造強度が相対的に弱くなるといった問題を抑制することができ得る。これにより、固化層内の構造強度が相対的に弱い部分(すなわち、細孔10が存在する領域)を起点としたクラックの発生を抑制することができ得る。これにより、クラックの発生抑制に起因して、最終的に得られる三次元形状造形物100の構造強度を維持し得る。その結果として、本発明では、高精度な三次元形状造形物100を得ることができ得る。
なお、本発明は、下記態様を採ってよい。
<細孔の特定態様>
一態様では、図3に示すように固化層24内の細孔10と当該細孔10の周縁部分の温度差に基づき、細孔10の発生箇所を予め特定してよい。
具体的には、図3に示すように、固化層24の形成段階で固化層24の最上面24aに光ビームLを照射し、赤外線カメラ50、特に赤外線サーモグラフィを用いて、光ビームLを照射した最上面24aの所定部分の下方領域の温度分布を測定する。特定の理論に拘束されるものではないが、固化層24内に細孔10が生じている場合、細孔10が空隙を成すことに起因して固化層24の最上面24aに照射した光ビームLの照射熱が固化層24を介して細孔10内へ伝わり得る。この時、細孔10は空隙を成すため、これに起因して光ビームLの照射熱が当該空隙に留まる状態、すなわち“こもる”状態となり得る。そのため、赤外線カメラ50を用いて照射した最上面24aの所定部分の下方領域の温度分布を測定した場合、平面視において図3の右上図に示すように細孔10発生部分の温度域60と細孔10発生部分の周縁部分の温度域70との温度分布が異なり得る。具体的には、平面視において図3の右上図に示すように細孔10発生部分の温度域60が細孔10発生部分の周縁部分の温度域70よりも温度が相対的に高くなり得る(細孔部10の発生部分:図3右上図の黒色部分)。かかる温度分布の違いを利用することで、細孔10がいずれの箇所に生じているかを特定でき得る。
<既に形成した固化層内に生じた細孔を減じるための態様>
具体的には、本発明では下記態様により既に形成した固化層内の細孔を減じてよい。
一態様では、図4に示すように細孔10の発生箇所を特定した上で、細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’に光ビームLを照射して当該部分24’を溶融させて、細孔10を減じてよい。
具体的には、図4(a)に示すように、上述の赤外線カメラ50を用いて細孔10の発生箇所を予め特定する。細孔10の発生箇所を特定した後、図4(b)に示すように細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’に対して光ビームLを照射する。なお、ここでいう「光ビームL」とは、新たな固化層(図4(b)内の最上層の固化層に相当)の形成に用いる際のものであってよい。光ビームLを照射すると、細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’が溶融状態となり得る。その後、図4(c)に示すように溶融状態となった細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’は、かかる部分24’の温度が低下することで固化状態となり得る。以上により、固化層24内に存在し得る細孔10を減じることができ得る。
なお、図5に示すように光ビームLの照射条件を調節して、既に形成した固化層24内の細孔10を減じてよい。
一態様では、固化層形成段階において、上述の赤外線カメラを用いて特定する細孔10の発生箇所の数が所定基準を超えている場合には、例えば図5(a)に示すように光ビームLの出力を適宜変更してよい。具体的には、細孔10の発生箇所の数が所定基準を超えている場合には、固化層24内に細孔10を生じさせる原因となり得る残存ガスが多いと判断し、それに応じて光ビームLの出力を増大させてよい。光ビームLの出力を増大させると、それに起因して下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24の所定部分に対して相対的に大きな光ビームLの照射熱を供することができ得る。これにより、細孔10を含んで成る既に形成した固化層24の所定部分を好適に溶融状態にすることができ得る。その後、温度低下に伴い、好適な溶融状態である細孔10を含んで成る既に形成した固化層24の所定部分を好適に固化状態とすることができ得る。これにより、既に形成した固化層24内の細孔10を好適に減じることができ得る。なお、例えば、図5(a)に示すように、所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度に応じて、通常の固化層形成時と比べて光ビームLの出力をどの程度増大させるか決定してよい。一例を挙げると、所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度が相対的に小さい場合、通常の固化層形成時と比べて増大させる光ビームLの出力の程度は相対的に小さくてよい。所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度が相対的に大きい場合、通常の固化層形成時と比べて増大させる光ビームLの出力の程度は相対的に大きくてよい。
一態様では、固化層形成段階において、上述の赤外線カメラを用いて特定する細孔10の発生箇所の数が所定基準を超えている場合には、例えば図5(b)に示すように光ビームLの走査速度を適宜変更してよい。具体的には、細孔10の発生箇所の数が所定基準を超えている場合には、固化層24内に細孔10を生じさせる原因となり得る残存ガスが多いと判断し、それに応じて光ビームLの走査速度を小さくしてよい。光ビームLの走査速度を小さくすると、それに起因して下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24の所定部分に対して相対的に十分に光ビームLの照射熱を供することができ得る。これにより、細孔10を含んで成る既に形成した固化層24の所定部分を好適に溶融状態にすることができ得る。その後、温度低下に伴い、好適な溶融状態である細孔10を含んで成る既に形成した固化層24の所定部分を好適に固化状態とすることができ得る。これにより、既に形成した固化層24内の細孔10を好適に減じることができ得る。なお、例えば、図5(b)に示すように、所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度に応じて、通常の固化層形成時と比べて光ビームLの走査速度をどの程度小さくするか決定してよい。一例を挙げると、所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度が相対的に小さい場合、通常の固化層形成時と比べて小さくする光ビームLの走査速度の程度は相対的に小さくてよい。所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度が相対的に大きい場合、通常の固化層形成時と比べて小さくする光ビームLの出力の程度は相対的に大きくてよい。
一態様では、固化層形成段階において、上述の赤外線カメラを用いて特定する細孔10の発生箇所の数が所定基準を超えている場合には、例えば図5(c)に示すように光ビームLのスポット径を適宜変更してよい。具体的には、細孔10の発生箇所の数が所定基準を超えている場合には、固化層24内に細孔10を生じさせる原因となり得る残存ガスが多いと判断し、それに応じて光ビームLのスポット径を通常の固化層形成時よりも小さくしてよい。光ビームLのスポット径が小さくなると、それに起因して下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24の所定部分に対して相対的に大きな光ビームLの照射熱を供することができ得る。これにより、細孔10を含んで成る既に形成した固化層24の所定部分を好適に溶融状態にすることができ得る。その後、温度低下に伴い、好適な溶融状態である細孔10を含んで成る既に形成した固化層24の所定部分を好適に固化状態とすることができ得る。これにより、既に形成した固化層24内の細孔10を好適に減じることができ得る。なお、例えば、図5(c)に示すように、所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度に応じて、通常の固化層形成時と比べて光ビームLのスポット径をどの程度小さくさせるか決定してよい。一例を挙げると、所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度が相対的に小さい場合、通常の固化層形成時と比べて小さくする光ビームLのスポット径の程度は相対的に小さくてよい。所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度が相対的に大きい場合、通常の固化層形成時と比べて小さくする光ビームLのスポット径の程度は相対的に大きくてよい。
一態様では、図6に示すように細孔10を含んで成る固化層24の所定部分を外部から押圧して、既に形成した固化層24内の細孔10を減じてよい。
具体的には、図6に示すように細孔10の発生箇所を特定した上で細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’を例えば切削手段4(但し、切削刃が設置されていないもの)で外部から押圧してよい。押圧方向としては、図6に示すように積層方向に対向する方向であってよい。細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’を外部から押圧することで、細孔10を押しつぶすことができ得る。これにより、固化層24内の細孔10を減じることができ得る。なお、細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’の押圧前後の固化層の最上面24aの高さを比べると、その差は約10μmであり得る(図6内の拡大図参照)。そのため、固化層24の最上面24aの平坦性は確保されていると言える。
なお、細孔10の大きさおよび形状によっては、細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’を外部から押圧するのみでは好適に細孔10を押しつぶすことができない場合があり得る。そこで、図7に示すように切削手段4を用いて細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’に外部から押圧力を加えつつ、切削手段4を回転させて細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’に回転力を更に加えてよい。これにより、細孔10をより好適に押しつぶすことができ得る。その結果、既に形成した固化層24内の細孔10をより好適に減じることができ得る。
一態様では、図8に示すように細孔10を含む固化層24の所定部分24’を切削加工に付して、細孔10を減じてよい。
具体的には、赤外線カメラを用いて細孔10の発生箇所を特定した上で、図8(a)に示すように細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’を、切削手段4を用いて切削加工に付す。切削加工に付すと、図8(b)に示すように固化層24内に細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’が存在し得ない状態になる。固化層24内に細孔10を含んで成る固化層24の所定部分24’が存在しない状態にした後、図8(c)に示すように当該所定部分24’が存在しない箇所に粉末19を充填する。粉末19を充填した後、図8(d)に示すように、当該粉末19を充填した部分に光ビームLを照射して、充填した粉末19を溶融固化させる。以上により、既に形成した固化層24内から細孔10を減じることができ得る。
一態様では、図9に示すように固化層の形成に用いる粉末の供給条件を調節して、既に形成した固化層内の細孔を減じてよい。
一態様では、上述の赤外線カメラを用いて特定する細孔10の発生箇所の数が所定基準を超えている場合には、以下の態様をとってよい。具体的には、固化層24内に細孔10を生じさせる原因となり得る残存ガスが多いと判断し、それに応じて例えば図9(a)に示すようにスキージング・ブレード23を用いて形成される粉末層22の厚さを適宜調整してよい。例えば、図9(a)に示すように、所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度に応じて、かかる層の厚さをL、L(>L)、又はL(>L)としてよい。なお、粉末層22の厚さが相対的に小さくなると、粉末層22の所定箇所に光ビームを照射して新たな固化層を形成する際に、下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24内の所定部分に対して光ビームの照射熱を好適に供することができ得る。これにより、下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24内の所定部分を好適に溶融状態にすることができ得る。その後、温度低下に伴い、好適な溶融状態である下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24内の所定部分を好適に固化状態とすることができ得る。これにより、既に形成した固化層24内の細孔10を好適に減じることができ得る。
なお、これまで主として粉末床溶融結合法(いわゆるパウダーベッド方式)で固化層を形成する態様に基づき説明してきたが、これに限定されることなく、例えば図8(b)に示すようにパウダースプレー方式で固化層を形成してよい。ここでいう「パウダースプレー方式」とは、粉末供給と光ビーム照射とを実質的に同時に行って固化層を形成する方式である。粉末床溶融結合法(いわゆるパウダーベッド方式)との対比でいうと、パウダースプレー方式は、固化層を得るに際して粉末層形成を行わないといった特徴を有する。つまり、パウダースプレー方式では、粉末供給箇所に光ビームが照射されると共に、その粉末供給箇所に対して粉末等が直接的に供給されることを通じて、その供給される粉末から固化層を形成する。
一態様では、上述の赤外線カメラを用いて特定する細孔10の発生箇所の数が所定基準を超えている場合には、以下の態様をとってよい。具体的には、固化層24内に細孔10を生じさせる原因となり得る残存ガスが多いと判断し、それに応じて例えば図9(b)に示すように粉末供給ノズル80から粉末19を供給して形成される粉末19から成る層の厚さを適宜調整してよい。例えば、図9(b)に示すように、所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度に応じて、かかる層の厚さをL、L(>L)、又はL(>L)としてよい。なお、粉末19から成る層の厚さが相対的に小さくなると、新たに供給した粉末19に光ビームを照射して新たな固化層を形成する際に、下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24内の所定部分に対して光ビームの照射熱を好適に供することができ得る。これにより、下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24内の所定部分を好適に溶融状態にすることができ得る。その後、温度低下に伴い、好適な溶融状態である下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24内の所定部分を好適に固化状態とすることができ得る。これにより、既に形成した固化層24内の細孔10を好適に減じることができ得る。
一態様では、上述の赤外線カメラを用いて特定する細孔10の発生箇所の数が所定基準を超えている場合には、以下の態様をとってよい。具体的には、固化層24内に細孔10を生じさせる原因となり得る残存ガスが多いと判断し、それに応じて例えば図9(c)に示すように粉末吸引ノズル90から粉末19を吸引して形成される粉末19から成る層の厚さを適宜調整してよい。例えば、図9(c)に示すように、所定基準と比べて超過する当該特定した細孔10の発生箇所の数の程度に応じて、かかる層の厚さをL、L(>L)、又はL(>L)としてよい。なお、粉末19から成る層の厚さが相対的に小さくなると、粉末19に光ビームを照射して新たな固化層を形成する際に、下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24内の所定部分に対して光ビームの照射熱を好適に供することができ得る。これにより、下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24内の所定部分を好適に溶融状態にすることができ得る。その後、温度低下に伴い、好適な溶融状態である下層に位置する細孔10を含んで成る既に形成した固化層24内の所定部分を好適に固化状態とすることができ得る。これにより、既に形成した固化層24内の細孔10を好適に減じることができ得る。
<新たに形成する固化層内に生じ得る細孔を減じるための態様>
上記では、既に形成した固化層内に生じた細孔を減じるための態様について主として説明してきたが、新たに形成する固化層内に生じ得る細孔を減じるためには下記の態様をとってよい。
具体的には、下記態様により新たに形成する固化層内に生じ得る細孔を減じてよい。
上述のとおり、光ビームLの照射熱が既に形成した下層に位置する固化層24Aに伝わると、当該固化層24A内に局所的に残存し得る残存ガス5が当該光ビームLの照射熱により膨張し、かかる残存ガス5の膨張により、固化層24A内に局所的に細孔10が生じ得る(図2参照)。特定の理論に拘束されるものではないが、特に、かかる残存ガス5は、形成時の固化層の温度が高い程発生し易いと考えられ得る。そこで、この点を鑑み、新たな固化層を形成する際には、細孔10が生じる原因となり得る残存ガス5の発生を事前抑制するために、通常の固化層形成時と比べて光ビームLの照射エネルギーを相対的に小さくする、光ビームLの走査速度を相対的に大きくする、および/または光ビームLのスポット径を相対的に大きくするといった光ビームLの照射条件の調節を行うことがよい。また、これに限定されず、新たな固化層を形成する際には、細孔10が生じる原因となり得る残存ガス5の発生を事前抑制するために、母材となる既に形成した固化層(造形物)および/または造形プレートの温度を低くして新たな粉末層表面の温度を低くするといった温度調節を行うことがよい。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。
5 残存ガス
10 細孔
19 粉末
24 固化層
24’ 固化層の所定部分
60 細孔発生部分の温度域
70 細孔発生部分の周縁部分の温度域
100 三次元形状造形物
L 光ビーム

Claims (6)

  1. 光ビームの照射によって複数の固化層を逐次形成して三次元形状造形物を製造する方法であって、
    前記光ビームを用いて粉末を溶融固化することで前記固化層を形成し、
    前記固化層内の残存ガスに起因して生じる細孔を減じることを含んで成り、
    前記細孔は前記固化層における固化密度が80〜100%の高密度領域に生じる、三次元形状造形物の製造方法。
  2. 前記細孔と該細孔の周縁部分との温度差に基づき、該細孔の発生箇所を特定する、請求項に記載の三次元形状造形物の製造方法。
  3. 前記細孔を含んで成る前記固化層の所定部分に前記光ビームを照射して該部分を溶融固化させ、前記細孔を減じる、請求項1又は2に記載の三次元形状造形物の製造方法。
  4. 前記細孔を含んで成る前記固化層の前記所定部分を外部から押圧して、前記細孔を減じる、請求項1〜3のいずれかに記載の三次元形状造形物の製造方法。
  5. 前記細孔を含んで成る前記固化層の前記所定部分を切削加工に付して、前記細孔を減じる、請求項1〜4のいずれかに記載の三次元形状造形物の製造方法。
  6. 前記固化層を粉末床溶融結合法で形成する、請求項1〜のいずれかに記載の三次元形状造形物の製造方法。
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