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JP6706951B2 - 手袋 - Google Patents

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本発明は、例えば、工業用や漁業用の手袋に関する。
近年、耐油性があり機械的強度が高く且つ柔軟性を有する手袋が開発されている(特許文献1)。この手袋は、例えば、手の形をしたメリヤス素材(基材)の表面にNBR(ニトリル−ブタジエンゴム)層を設けて形成される。NBR層がメリヤス素材に必要以上に浸透して手袋の柔軟性が損なわれることのないように、界面活性剤を適切な割合で含むNBRラテックスを用いている。
しかし、上述した従来の手袋は、耐油性に優れ、機械的強度が高く、柔軟性に優れている反面、物を掴んだときの滑り難さの点で十分に満足のいくものではなかった。特に水作業を行う場合には、非常に滑りやすくなる問題があった。このような問題を解決する手段として、種々の滑止加工が検討されている。たとえば、手袋表面に複数の突起を設けたり、手袋表面に発泡剤を混入させた樹脂ペーストを塗布し、手袋表面に微細な凹凸を形成し摩擦係数を増大させた手袋(特許文献2)等が提案されている。しかしこれらの方法でも、濡れた魚や油の付着した機械を掴む作業など濡れたものに対する滑り止め効果は低く、利便性に欠けていた。
特開平7−258905号公報 特開平5−51804号公報
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、耐油性に優れ、機械的強度が高く、柔軟性に優れており、且つ物を掴んだときに滑り難い手袋を提供することを目的とする。
本発明の手袋の一態様は、手の表面を覆う形状の基材と、格子状に配置した複数本の線材、および前記線材同士が交差した部位に設けた複数の球状凸部を有し、前記基材の掌側の表面に設けた網状シートと、前記網状シートとともに前記基材の表面を被覆したゴム又は合成樹脂製の被覆層と、を有し、前記被覆層が、前記球状凸部を覆った部位に少なくとも層厚が薄くなった吸盤状の凹部を有する。
本発明の一態様によれば、耐油性に優れ、機械的強度が高く、柔軟性に優れており、且つ物を掴んだときに滑り難い手袋を提供することができる。
図1は、実施形態に係る手袋を示す外観斜視図である。 図2は、図1の手袋の網状シートを示す外観斜視図である。 図3は、図1の手袋を図2のF3−F3線で切断した部分拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る手袋10を示す外観斜視図であり、図2は、手袋10の網状シート4を示す外観斜視図であり、図3は、手袋10を図2のF3−F3で切断した部分拡大断面図である。図1では、手袋10の掌側の表面に形成された突起12を部分的に拡大して示してあり、図2では、メリヤス素材2(基材)および被覆層6の図示を省略してある。
手袋10は、手の表面を覆う形状のメリヤス素材2と、網状シート4と、網状シート4とともにメリヤス素材2の表面を被覆した被覆層6と、を有する。網状シート4は、格子状に配置した複数本の線材4b、および線材4b同士が交差した部位に設けた複数の球状凸部4aを有する。網状シート4は、メリヤス素材2の掌側の表面に設けられる。
メリヤス素材2は、例えば、繊維が13ゲージ程度の縫製タイプのメリヤス手袋であり、被覆層6を形成するNBRラテックス(後述する)が適度に浸透する素材である。本実施形態では、手袋10の基材としてメリヤス素材2を用いたが、これに限らず、不織布などの他の素材を用いてもよい。
網状シート4は、例えば、伸縮性の殆ど無い樹脂繊維を格子状に重ねて発泡性の天然ゴムなどの弾性部材を樹脂繊維の表面に被覆して形成されている。弾性部材を被覆する際、格子状に重ねた部分に弾性部材を多めに設け、複数本の線材4bが交差した部位に球状凸部4aを形成した。球状凸部4aは、弾性変形可能であり、樹脂繊維を弾性部材で被覆した線材4bの太さより十分に大きな外径を有する。このため、網状シート4をメリヤス素材2の表面に重ねると、球状凸部4aが線材4bに対して突出する。
網状シート4の弾性部材は、上述した発泡性の天然ゴムに限らず、他のゴム材料や樹脂材料などであってもよく、線材4bの基材(本実施形態では樹脂繊維)に対して接着性が良く、後述する被覆層6との間の親和性の良好な材料であればよい。また、線材4bの基材も樹脂繊維に限らず任意に選択可能である。
被覆層6は、例えば、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)のラテックス(NBRラテックス)をメリヤス素材2(および網状シート4)の表面にコーティングして、50℃〜120℃程度の熱風を吹き付けてラテックスを熱により変性させることで形成される。NBRラテックスは、メリヤス素材2に浸透して手袋10の柔軟性を低下させるため、適度な表面張力を持たせることが好ましい。本実施形態では、オレイン酸カリウムなどの界面活性剤をNBRラテックスに混ぜて表面張力をコントロールしている。NBRは、石油類に対する溶融耐性があり、機械的強度が強く、柔軟性に優れている。
また、上述したNBRに限らず、塩化ビニルなどの合成樹脂材料をメリヤス素材2(および網状シート4)の表面にコーティングして熱により変性させることで被覆層6を形成してもよい。また、被覆層6の表面にさらにNBR層や塩化ビニル層による保護層を重ねて設けてもよい。
上述したように、網状シート4を間に挟んでメリヤス素材2の表面に被覆層6を設けた本実施形態の手袋10は、掌側の少なくとも一部に複数の突起12を有する。複数の突起12は、網状シート4の球状凸部4aに対応する位置にある。また、各突起12の頂点近くには、吸盤状の凹部14が形成されている。さらに、複数の突起12の間には、液体を流すことのできる溝16が形成されている。
各突起12の凹部14は、0.1〜10mm程度の直径を有する。凹部14の直径が0.1mm未満であると、吸盤としての機能が不十分となり、所望する吸着力を得ることができない。一方、凹部14の直径が10mmを超えると、吸盤全体が物に接触し難くなり、十分な吸着力を得ることができない。本実施形態では、凹部14の直径を1〜2mm程度に設計した。
突起の間の溝16は、1〜10mm程度の幅を有する。溝16の幅が1mm未満であると、水や油などの流体が流れ難くなり、溝としての機能が不十分となる。一方、溝16の幅が10mmを超えると、その分、凹部14同士の間隔が広くなり、凹部14による吸着効果が低くなる。本実施形態では、溝16の幅を1.5〜3mm程度に設計した。
ここで、上述した手袋10の製造方法の一例について説明する。
まず、メリヤス素材2の掌側の表面に網状シート4を貼り付ける。このとき、メリヤス素材2がしわにならないように図示しない金型に装着する。網状シート4は、掌や指の腹など物を掴むときに力が作用し易い箇所に接着剤や両面テープにより貼り付ける。網状シート4のメリヤス素材2に対する貼り付けは仮留めであるため、接着剤は必ずしも使わなくてもよい。網状シート4は、所望する形状に切り取って所望する箇所に貼り付ける。例えば、左右兼用の手袋を製造する場合には、メリヤス素材2の両面に網状シート4を貼り付けてもよい。
次に、網状シート4を貼り付けたメリヤス素材2の表面全体にNBRラテックスを被覆する。
このとき、金型に装着したメリヤス素材2を、指先が下になる向きでNBRラテックス液に浸漬させ、NBRラテックス液から取り出した状態(指先が下の状態)で1〜3分放置する。この状態で、メリヤス素材2にNBRラテックス液が適度に浸透して、メリヤス素材2の表面に付着したNBRラテックス液の余剰液が垂れ落ち、メリヤス素材2の表面にNBRラテックス液が略均一な膜厚で塗布される。
この後、金型に装着した状態の手袋に70〜100℃の熱風を約10分間吹き付けて乾燥させ、常温で3〜10分程度冷却する。そして、この後、NBRラテックス液に再び浸漬させて、70〜100℃の熱風により10〜20分間乾燥させる。さらに、NBRラテックス液に再び浸漬させた後、100〜120℃で30〜40分間加硫を行う。最後に、手袋を金型から取り外して、120℃の熱風で10〜15分間乾燥させ、手袋10の製造が完了する。
上述した手袋10を上述した手順で製造すると、図1に一部拡大して示すように、手袋10の表面に上述した複数の突起12が形成される。各突起12は、網状シート4の球状凸部4aに対応する位置に形成される。網状シート4を介して被覆層6を設けると、NBRラテックスが格子状の線材4bの間からメリヤス素材2に浸透し、球状凸部4aの表面および線材4bの表面を覆う。球状凸部4aは線材4bの径より十分に大きな外径を有するため、球状凸部4aがメリヤス素材2の表面から突出し、この球状凸部4aを覆う被覆層6の層厚が他の部位より薄くなり易い。
各球状凸部4aの頂点近くで層厚が薄くなった被覆層6の部位は、他の部位を被覆した十分な層厚の被覆層6より破れ易い。或いは、各球状凸部4aの頂点近くで層厚が薄くなった被覆層6の部位は、球状凸部4aの弾性変形により容易に凹み、図1および図3に示すように、各球状凸部4aの頂点近くで、被覆層6に吸盤状の凹部14が形成される。つまり、凹部14の底は、網状シート4の球状凸部4aの表面を薄く覆う層を形成し、或いは球状凸部4aの頂点近くが部分的に露出する小さな孔を形成する。いずれにしても、手袋10を使用するにつれ、球状凸部4aの弾性変形に伴い、凹部14が形成される。
以上のように、本実施形態によると、NBRラテックスによる被覆層6を表面にコーティングした、耐油性に優れ、機械的強度が高く、柔軟性に優れた手袋10を提供することができる。その上、本実施形態によると、メリヤス素材2と被覆層6の間に網状シート4を介在させることで、球状凸部4aに対応する突起12の頂点近くに複数の吸盤状の凹部14を形成でき、物を掴んだときに滑り難い手袋10を提供することができる。特に、濡れた魚や油の付着した機械を掴む際などに、凹部14による吸着性に加え、複数の球状凸部4aの間の格子状の溝16(図1、図3参照)を介して水分や油分といった液体を流すことができ、突起12の頂部にある凹部14の表面に液体の膜が形成されにくくなり、物に対する吸着性を高めることができる。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
手の表面を覆う形状の基材と、前記基材の表面を被覆したゴム又は合成樹脂製の被覆層と、を有し、掌側の少なくとも一部に複数の突起を有する手袋において、
前記突起の頂点近くに吸盤状の凹部を有するとともに、
複数の前記突起の間に溝を有する手袋。
[2]
前記凹部の直径が0.1〜10mmである[1]に記載の手袋。
[3]
前記溝の幅が1〜10mmである[1]に記載の手袋。
[4]
手の表面を覆う形状の基材と、
格子状に配置した複数本の線材、および前記線材同士が交差した部位に設けた複数の球状凸部を有し、前記基材の掌側の表面に設けた網状シートと、
前記網状シートとともに前記基材の表面を被覆したゴム又は合成樹脂製の被覆層と、
を有する手袋。
[5]
前記被覆層が、前記球状凸部を覆った部位に少なくとも層厚が薄くなった吸盤状の凹部を有する、
[4]に記載の手袋。
[6]
前記球状凸部は、弾性変形可能な材料により形成されている、
[4]または[5]に記載の手袋。
[7]
手の形をした基材の掌側の表面に、複数本の線材を格子状に配置して前記線材同士が交差した部位に球状凸部を設けた網状シートを設け、
前記網状シートとともに前記基材の表面にラテックス又はビニルゾルを塗布し、
前記ラテックス又はビニルゾルを加熱して前記基材の表面に被覆層を形成する、
手袋の製造方法。
2…メリヤス素材、 4…網状シート、 4a…球状凸部、 4b…線材、 6…ゴム層、 10…手袋、 12…突起、 14…凹部、 16…溝。

Claims (2)

  1. 手の表面を覆う形状の基材と、
    格子状に配置した複数本の線材、および前記線材同士が交差した部位に設けた複数の球状凸部を有し、前記基材の掌側の表面に設けた網状シートと、
    前記網状シートとともに前記基材の表面を被覆したゴム又は合成樹脂製の被覆層と、を有し、
    前記被覆層が、前記球状凸部を覆った部位に少なくとも層厚が薄くなった吸盤状の凹部を有する
    手袋。
  2. 前記球状凸部は、弾性変形可能な材料により形成されている、
    請求項1に記載の手袋。
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