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JP6763163B2 - 導電性組成物、蓄電デバイス用下地層付き集電体、蓄電デバイス用電極、及び蓄電デバイス - Google Patents

導電性組成物、蓄電デバイス用下地層付き集電体、蓄電デバイス用電極、及び蓄電デバイス Download PDF

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Description

本発明は、導電性組成物、その組成物を用いて得られる蓄電デバイス用電極、及びその電極を用いて得られる蓄電デバイスに関する。詳しくは、蓄電デバイスの温度が上昇した場合に該蓄電デバイスの内部抵抗を高くする機能を備えた導電性組成物、蓄電デバイス用電極並びに蓄電デバイスに関する。
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される蓄電デバイスにおいても、小型、軽量かつ大容量の蓄電デバイスの実現が求められている。特にリチウムイオン二次電池は鉛蓄電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池等の水溶系二次電池と比較して大きなエネルギー密度が得られることから、パソコンや携帯端末等の電源としての重要性が高まっており、さらには車載搭載用高出力電源として好ましく用いられるものとして期待されている。
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いという利点の反面、非水電解質を使用することから、安全性に対する十分な対応策が必要になる。近年、電池の大型化及び高容量化に応じて、安全性の確保が大きな課題となっている。例えば、過充電や電池内部での短絡等により、電池温度が異常に、かつ急激に上昇する場合、電池の外部に設けられた安全性機構だけでは、発熱を規制するのは困難となり、発火する危険性がある。
特許文献1では、集電体に正温度係数抵抗体(以下PTC)の機能を有する電子伝導材料を接合する方法が記載されている。しかし、電子伝導性材料の厚みが50μmと厚いために、電池全体としてのエネルギー密度が低下する問題があった。
特許文献2では、正極、負極、非水電解液のいずれかにPTCの特性をもたせることが開示されている。しかし、これらにPTC特性を付与するには、電池容量に寄与しない多量の添加物を加える必要があり、エネルギー密度の低下が起こる。
特許文献3では、集電体表面に結晶性熱可塑性樹脂と導電剤および結着材からなる導電層を設ける方法が記載されている。この導電層は、電池内の温度が結晶性熱可塑性樹脂の融点を超えると、導電層の抵抗が上昇して、集電体と活物質間の電流が遮断される。しかし、電池の通常作動時における内部抵抗が高くなり、電池の出力特性が低下する問題があった。
特許文献4では、集電体表面にポリフッ化ビニリデンと導電剤からなる導電層を設け、この導電層を設けた集電体を120℃を超える温度で加熱する方法が記載されている。しかし、熱処理する工程が追加されるほか、電池内の温度が上昇したときの抵抗上昇は十分でない問題があった。
特許文献5では、導電性カーボンと、中和剤で中和された微粒子状結着剤からなる導電層を設けた集電体を製造する方法が記載されている。しかし、導電性カーボンに対する微粒子状結着剤の含有量が少ないため、PTC特性が不十分な結果につながりやすい。
特開平10−241665号公報 特開平11−329503号公報 特開2001−357854号公報 特開2012−104422号公報 特開2014−137915号公報
本発明者は鋭意検討を行った結果、特許文献5のように中和された微粒子状結着剤を使用すると、中和剤の種類によって、蓄電デバイスの導電性および長期信頼性が低下することがわかった。
例えば、水酸化ナトリウムで中和された微粒子状結着剤を使用すると、水酸化ナトリウム特有の高い吸湿性により、内部抵抗が増加し、蓄電デバイスの出力特性が低下することが分かった。一方、アンモニアのような沸点が100℃以下のアミン化合物で中和された微粒子結着剤を使用すると、アンモニアが揮発することにより、微粒子結着剤が凝集し、導電性組成物の長期保存性が悪化することが分かった。また、ジメチルアミノエタノールのような沸点が100℃以上の高いアミン化合物で中和された微粒子結着剤を使用すると、下地層に残存したアミンの酸化分解により、蓄電デバイスの保存劣化が生じることが分かった。
本発明の目的は、通常作動時の導電性に優れることから、蓄電デバイスの出力特性等に優れ、かつ、下地層に残存するアミン化合物の影響がないことから、蓄電デバイスの長期信頼性に優れ、さらには、蓄電デバイスの内部温度が上昇した場合に、内部抵抗を上昇させる機能を備えた蓄電デバイス(例えばリチウムイオン二次電池)を形成するための導電性組成物であって、蓄電デバイスの導電性、長期信頼性、および安全機能に優れる導電性組成物を提供することである。
導電性の炭素材料(A)と、中和剤で中和されたカルボニル基を含む化合物で変性されたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)と、水性液状媒体(C)とを含む導電性組成物であり、蓄電デバイスの発熱時には、集電体の抵抗が増大し、電流を遮断することで、蓄電デバイスの発火等を回避するものである。
さらに、導電性組成物中の水分散樹脂微粒子(B)の固形分と中和剤とpHを制御することにより、蓄電デバイス内の温度が上昇したときの抵抗上昇を効果的に発現でき、かつ通常作動時の内部抵抗を低減でき、出力特性を改善するほか、電極下地層にアミン化合物を殆ど含まないことから、長期信頼性に優れた蓄電デバイスを提供することができる。
また、導電性組成物から形成された下地層付き集電体の乾燥温度を適切に制御することで、電極下地層からアミン化合物を除去することができ、出力特性や長期信頼性に優れた蓄電デバイスを提供することができる。
即ち、本発明は、導電性の炭素材料(A)と、沸点が100℃以上のアミン化合物で中和され、かつカルボニル基を含む化合物で変性されたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)と、水性液状媒体(C)とを含む導電性組成物であって、
前記導電性組成物の固形分中、導電性の炭素材料(A)が、20〜70質量%であり、水分散樹脂微粒子(B)が、20〜60質量%であり、
さらに、水分散樹脂微粒子(B)の固形分10〜60質量%である水分散液のpHが、5.0〜8.5であることを特徴とする導電性組成物に関する。
また、上記カルボニル基を含む化合物が少なくともカルボン酸またはカルボン酸エステルを含むことを特徴とする上記導電性組成物に関する。
また、上記導電性組成物の固形分100質量%に対して、さらに、水溶性樹脂(D)を10〜50質量%含むことを特徴とする上記導電性組成物に関する。
また、蓄電デバイス用電極の下地層形成用であることを特徴とする上記導電性組成物に関する。
また、集電体と、上記導電性組成物から形成された下地層とを有する蓄電デバイス用下地層付き集電体に関する。
また、集電体と、上記導電性組成物から形成された下地層と、電極活物質とバインダーとを含有する電極形成用組成物から形成された合材層とを有する蓄電デバイス用電極に関する。
また、正極と負極と電解液とを具備する蓄電デバイスであって、前記正極または前記負極の少なくとも一方が、上記蓄電デバイス用電極である、蓄電デバイスに関する。
また、導電性の炭素材料(A)と、沸点が100℃以上のアミン化合物で中和され、かつカルボニル基を含む化合物で変性されたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)と、水性液状媒体(C)を含む導電性組成物から形成された下地層付き集電体の乾燥温度が、130〜250℃であることを特徴とする蓄電デバイス用下地層付き集電体の製造方法に関する。
導電性の炭素材料(A)と、中和剤で中和されたカルボニル基を含む化合物で変性されたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)と、水性液状媒体(C)とを含むことにより、蓄電デバイスの内部温度が上昇した場合に、内部抵抗を上昇させる機能を備えた蓄電デバイスを提供できる。
さらに、集電体上に形成した下地層にアミン化合物を殆ど含まないことから、蓄電デバイスの長期信頼性を損ねることがなく、出力特性を改善する蓄電デバイスを提供できる。
<導電性組成物>
前記したように、本発明の導電性組成物は、蓄電デバイスの下地層形成用として使用できる。導電性組成物は、導電性の炭素材料(A)と、中和剤で中和された変性オレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)と、水性液状媒体(C)とを含有する。
導電性組成物中の導電性の炭素材料(A)を分散する場合、導電性組成物の固形分の観点から界面活性剤を用いることが好ましく、耐電解液耐性および発熱時における蓄電デバイスの内部抵抗上昇の観点から水溶性樹脂(D)を用いることがさらに好ましい。
導電性組成物の固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)の含有量は、導電性と内部抵抗、および発熱時における蓄電デバイスの内部抵抗上昇の観点から、20〜70質量%であり、好ましくは20〜50質量%である。
導電性組成物の固形分の合計100質量%中、中和剤で中和された変性オレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)の含有量は、内部抵抗と導電性、および発熱時における蓄電デバイスの内部抵抗上昇の観点から、20〜60質量%であり、好ましくは30〜60質量%である。
導電性組成物の固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)と中和剤で中和された変性オレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)の合計量は、内部抵抗と導電性、および発熱時における蓄電デバイスの内部抵抗上昇の観点から、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上である。
導電性組成物の固形分の合計100質量%中、水溶性樹脂(D)の含有量は、電極の密着性と導電性、および発熱時における蓄電デバイスの内部抵抗上昇の観点から、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜35質量%である。
導電性組成物のpHは、集電体の腐食や蓄電デバイスの酸化還元による劣化の観点から、好ましくは5.0〜9.0であり、より好ましくは6.0〜8.5である。
また、導電性組成物の適正粘度は、導電性組成物の塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
まず、導電性の炭素材料(A)について説明する。
本発明における導電性の炭素材料(A)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、導電性の観点から酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
本発明で用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子同士の接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、導電性と入手のし易さの観点から、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、好ましくは20〜1500m2/g、より好ましくは40〜1500m2/gのものを使用することが望ましい。また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
導電性の炭素材料(A)の導電性組成物中の分散粒径は、組成物作製の困難性、塗膜の材料分布のバラつきおよび電極の抵抗分布のバラつきの観点から、0.03μm以上、5μm以下に微細化することが望ましい。
ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA
、Conductex 975 ULTRA等、PUER BLACK100、115、2
05等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては、例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
次に、中和剤で中和された変性オレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)について説明する。
本発明に用いる水分散樹脂微粒子(B)としては、一般的に水性エマルションとも呼ばれるものであり、樹脂粒子が水中で溶解せずに、微粒子の形態で分散されているものを意味する。
水分散樹脂微粒子は少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含み、水分散樹脂微粒子に含まれるオレフィン系樹脂微粒子の割合が固形分として、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは60〜100質量%であり、さらに好ましくは70〜100質量%である。必要に応じて、オレフィン系樹脂微粒子以外の水分散樹脂微粒子を組み合わせても良い。オレフィン系樹脂微粒子以外の水分散樹脂微粒子は特に限定されないが、(メタ)アクリル系エマルション、ニトリル系エマルション、ウレタン系エマルション、ジエン系エマルション(SBRなど)、フッ素系エマルション(PVDFやPTFEなど)等が挙げられ、これらに2種以上を組み合わせて用いても良い。
水分散樹脂微粒子としては、80〜180℃の範囲内で樹脂が体積膨張して、導電層中に分散している導電性の炭素材料同士の接触を引き剥がすことができる樹脂であれば特に限定されるものではない。ポリオレフィン樹脂のオレフィン成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボネン等が挙げられる。これらオレフィン成分単一の重合体でも良く、2成分以上の共重合体でも良い。
本発明において、水分散樹脂微粒子(B)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子が少なくともカルボン酸またはカルボン酸エステルで変性されたものを含有する。変性によって、樹脂の溶融耐性を付与できることから、内部短絡などによる蓄電デバイスの内部温度上昇時に、ポリオレフィン樹脂の体積膨張を維持することができ、炭素材料同士の切断効果を維持し続けることができると考えられる。
カルボン酸またはカルボン酸エステルの成分としては特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピパリン酸ビニルなどが挙げられる。
上記に変性されたポリオレフィン樹脂微粒子の変性量としては、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR:PerkinElmer社製Spectrum One/100)による全反射測定法(ATR)によって求めることができ、2800〜3000cm-1のオレフィン由来の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690〜1740cm-1のカルボニル由来の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05〜1.0であることが好ましい。また、ポリエチレンからなる樹脂微粒子においては、上記(Y)/(X)が0.3〜0.8であり、ポリプロピレンからなる樹脂微粒子においては、上記(Y)/(X)が0.05〜0.5であることがさらに好ましい。
ここでいうピーク高さとは、水分散樹脂微粒子(C)から分散媒を除去し、最終的に120℃で乾燥させて得られた固形物をFT−IRにて測定したものである。ポリオレフィン樹脂微粒子の変性量は、波数に対して吸光度をプロットしたスペクトルを用い、2700m-1における吸光度を示す点と3000cm-1における吸光度を示す点との2点を結ぶ直線をベースラインBXとした際の、2800〜3000cm-1に見られるオレフィン由来の2本または4本のうち、最大ピークからベースラインBXまでの高さ(極大吸光度)(X)と、1650m-1における吸光度を示す点と1850cm-1における吸光度を示す点との2点を結ぶ直線をベースラインBYとした際の、1690〜1740cm-1のカルボニル由来の最大ピークからベースラインBYまでの高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)から求めることができる。一般的に、ポリエチレン系樹脂は2本、ポリプロピレン系樹脂は4本みられるが、両者とも最大ピークは2915cm-1付近に見られる。
本発明において、水分散樹脂微粒子(B)が中和剤で中和された水分散樹脂微粒子を含む。本発明における中和とは、カルボン酸またはカルボン酸エステルのような酸性基の少なくとも一部を塩基性化合物で反応させたことを意味する。中和することで、水等の溶媒中でエマルションの状態で存在することが可能となり、良好な分散安定性が得られる。
中和剤に用いる沸点が100℃以上のアミン化合物としては、ヘキシルアミン(130℃)、2−エチルヘキシルアミン(169℃)、3−エトキシプロピルアミン(132℃)、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン(120℃)、3−アミノプロパノール(188℃)、2−ピペリジンエタノール(131℃)、ジメチルアミノエタノール(133℃)、アミノメチルプロパノール(165℃)、エタノールアミン(170℃)、トリエタノールアミン(208℃)、モルホリン(129℃)などが挙げられる。
沸点の高いアミン化合物を使用する場合、中和時の水分散樹脂微粒子(B)のpHを制御することが重要であり、pHは5.0〜8.5である。pHが8.5以下であれば、塗膜中にアミンが殆ど残存しないため、良好な蓄電デバイス保存特性が得られる。また、pHが5.0以上であれば、アニオンの静電反発により、水分散樹脂微粒子の分散安定性を保持できる。
中和をする場合、沸点が100℃以上のアミン化合物を初めからpHが5.0〜8.5となるように添加しても良く、過剰量添加した後、pHが5.0〜8.5となるように除去しても良い。また、沸点が100℃以上のアミン化合物を過剰量除去した後、さらにpHが5.0〜8.5となるように中和剤を新たに添加してもよい。中和剤として沸点が100℃以下のアミン化合物やアルカリ金属水酸化物を添加してもよい。
沸点が100℃以下のアミン化合物としては、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、イソアミルアミン、イソブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エチルヘキシルプロピルアミンなどが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
アミン化合物を除去する方法としては、限外ろ過による洗浄や、イオン交換法などにより除去できるが、これらに限定されない。
本発明の水分散樹脂微粒子(B)の分散媒は水系分散媒であり、水を使用することが好ましいが、樹脂微粒子の安定化等のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。水分散樹脂微粒子(B)の分散媒合計100質量%中、水と相溶する液状媒体の含有量は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
なお、中和された水分散樹脂微粒子(B)のpHとしては、pHメータにて測定した値を意味する。具体的には、上記の水系分散媒に、水分散樹脂微粒子(B)が固形分10〜60質量%で分散されてなる分散液を、液温25℃の環境下、pHメータ(堀場製作所社製 D−54)にて測定する。水分散樹脂微粒子(B)の分散媒として、水と相溶する液状媒体を使用する場合、pH測定上の観点から、水分散樹脂微粒子(B)の分散媒合計100質量%中、水と相溶する液状媒体の含有量は50%以下にて測定する。
以上のような水分散樹脂微粒子(B)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子は、市販品を用いることが可能であり、市販品としてはユニチカ社製のアローベースSB−1200、SD−1200、SE−1200、TC−4010、TD−4010、住友化学社製のザイクセンAC、A、AC−HW−10,L、NC、Nなど、三井化学社製のケミパールS100、S200、S300、V100、V200、V300、東洋紡社製のハードレンNZ−1004、NZ−1015、東邦化学社製ハイテックS−3121などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良く、必要に応じてアミン化合物を添加、除去しても良い。
本発明に用いる水分散樹脂微粒子(B)の平均粒子径は、生産性、樹脂微粒子もしくは導電性組成物の経時安定性、および蓄電デバイスの内部抵抗の観点から、0.01〜5μmが好ましく、さらには0.05〜1μmがさらに好ましい。
なお、本発明における平均粒子径とは、体積平均粒子径(D50)のことを表し、動的光散乱法により測定できる。動的光散乱法による平均粒子径の測定は、以下のようにして行うことができる。水分散樹脂微粒子分散液は固形分に応じて200〜1000倍に水希釈しておく。該希釈液約5mlを測定装置[(株)日機装製 ナノトラック]のセルに注入し、サンプルに応じた溶剤(本発明では水)および樹脂の屈折率条件を入力後、測定を行う。
つぎに、水性液状媒体(C)について説明する。
本発明に使用する水性液状媒体(C)としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、集電体への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
さらに、導電性組成物には、界面活性剤、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
本発明で用いられる界面活性剤は、導電性の炭素材料を分散できるものであれば、特に限定されないが、例えば、非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステルのようなエステル型、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのようなエーテル型等が挙げられ、イオン性界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤のモノアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等、カチオン性界面活性剤としては、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
次に、水溶性樹脂(D)について説明する。
本発明の水溶性樹脂(D)とは、25℃の水99g中に水溶性樹脂(D)1g入れて撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中で樹脂が溶解可能なものである。
水溶性樹脂(D)としては、上述の通り水溶性を示す樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等の多糖類の樹脂を含む高分子化合物が挙げられるが、入手の容易さや、スラリーの安定性、およびコスト面から、カルボキシメチルセルロースの使用が好ましい。
また、水溶性であれば、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これら水溶性樹脂は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
水溶性樹脂(D)の分子量は特に限定されないが、好ましくは質量平均分子量が5,000〜2,000,000である。質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算分子量を示す。
(分散機・混合機)
本発明の導電性組成物や後述する合材インキを得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正または負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
(蓄電デバイス用下地層付き集電体、蓄電デバイス用電極)
本発明の蓄電デバイス用下地層付き集電体とは、集電体上に、本発明の導電性組成物から形成された下地層を有するものである。
また、本発明の蓄電デバイス用電極とは、集電体上に、本発明の導電性組成物から形成された下地層と、後述する合材インキから形成された合材層とを有する。
(集電体)
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種蓄電デバイス用にあったものを適宜選択することができる。
例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。リチウムイオン電池の場合、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、それぞれ好ましい。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
集電体上に導電性組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができる。
乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機、真空乾燥機等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
乾燥温度は集電体に塗布した導電性組成物中の水性液状媒体(C)を除去できる温度であれば良く、一般的に乾燥温度としては50〜300℃である。
水分散樹脂微粒子(B)のpHが8.5以下の場合、乾燥温度は特に制限されず、水性液状媒体(C)を除去できる範囲であればよい。
一方、アミン化合物で中和された水分散樹脂微粒子(B)のpHが8.5以上の場合、乾燥温度は130〜250℃であり、好ましくは150〜200℃である。乾燥温度が130℃以上であれば、導電性下地層中に含まれる過剰なアミンが揮発し、含有量が大幅に減少するため、保存特性に優れた蓄電デバイスが得られる。また、電池特性、生産性の観点から、乾燥温度は250℃以下である。乾燥による水性液状媒体(C)とアミン化合物の除去方法については、特に限定されないが、130〜250℃で水性液状媒体(C)とアミン化合物を同時に除去する一段階工程でもよく、130℃以下で水性液状媒体(C)を除去した後、130〜250℃でアミン化合物を除去してもよい。
上述したとおり、アミンを除去する方法としては、限外ろ過や、イオン交換法により水分散樹脂微粒子(B)から除去したり、導電性下地層形成時の高温乾燥でも除去できる。限外ろ過やイオン交換法では、安定した品質管理ができるが、製造工程が複雑となる一方、導電性下地層の高温乾燥では、乾燥設備に制約がかかる場合があるため、生産性や、製造コスト、品質管理などの観点から、必要に応じてこれらを使い分けることができる。
下地層の厚みは、好ましくは0.1〜10μmであり、より好ましくは0.5〜5μmである。下地層の厚みが薄すぎると、集電体と活物質とが直接接触するバイパス部分が局所的に形成され、蓄電デバイスが発熱した際、下地層部分の抵抗増大による電流遮断効果が不十分となる。一方、下地層の厚みが厚すぎると、電極に占める下地層の割合が増大し、活物質の含有比率が低下し、蓄電デバイスの容量が低下する。
(合材インキ)
一般的な蓄電デバイス用の合材インキ(電極形成用組成物)は、活物質と、溶媒を必須とし、必要に応じて導電助剤と、バインダーとを含有する。
活物質はできるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、合材インキ固形分に占める活物質の割合は、80〜99質量%が好ましい。導電助剤を含む場合、合材インキ固形分に占める導電助剤の割合は、0.1〜15質量%であることが好ましい。バインダーを含む場合、合材インキ固形分に占めるバインダーの割合は、0.1〜15質量%であることが好ましい。
塗工方法によるが、固形分30〜90質量%の範囲で、合材インキの粘度は、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
集電体に合材インキを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、溶媒乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機、真空乾燥機等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではなく、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
(活物質)
合材インキ中で使用される活物質について以下で説明する。
正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、導電性高分子、および導電性炭素等を使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。
また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や導電性高分子を混合して用いてもよい。
また、活性炭、黒鉛などの導電性炭素を使用することもできる、
負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、活性炭、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
合材インキ中の導電助剤とは、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではなく、上述の導電性の炭素材料(A)と同様のものも使用できる。
合材インキ中のバインダーとは、活物質や導電性の炭素材料などの粒子同士、あるいは導電性の炭素材料と集電体を結着させるために使用されるものである。
合材インキ中で使用されるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
また、水性の合材インキ中で好適に使用されるバインダーとしては水媒体のものが好ましく、水媒体のバインダーの形態としては、水溶性型、エマルション型、ハイドロゾル型等が挙げられ、適宜選択することができる。
合材インキ中の溶媒とは、特に限定されないが、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどのアミド類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)ジメチルアミンなどのアミン類、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサンなどのケトン類、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、水等が挙げられる。
さらに、合材インキには、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
(電極の製造方法)
本発明の導電性組成物を、集電体上に塗工・乾燥し、下地層を形成し、蓄電デバイス用下地層電極を得ることができる。
あるいは、本発明の導電性組成物を、集電体上に塗工・乾燥し、下地層を形成し、該下地層上に、合材層を設け、蓄電デバイス用電極を得ることもできる。下地層上に設ける合材層は、上記した合材インキを用いて形成することができる。
(電解液)
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。
電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4等が挙げられるがこれらに限定されない。
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;
メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、
アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びそれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(蓄電デバイス構造・構成)
本発明の組成物を用いた蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウム空気電池などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例で使用した材料を以下に示す。
(導電性の炭素材料)
・A−1:デンカブラックHS−100(電気化学工業社製)
・A−2:ケッチェンブラックEC−300J(ライオン社製)
(水分散樹脂微粒子)
・B−1:ザイクセンL(固形分24%水分散液、変性量(Y)/(X)0.64、pH9.0、変性されたポリエチレン)(住友精化社製)
・B−2:アローベースTD−4010(固形分25%水分散液、変性量(Y)/(X)0.08、pH9.5、変性されたポリプロピレン)(ユニチカ社製)
※(Y)は、カルボン酸、またはカルボン酸エステルに由来する。
(水溶性樹脂)
・D−1:CMCダイセル#1240(ダイセル化学工業社製)
・D−2:ポリアクリル酸ナトリウム、平均分子量10000(和光純薬工業社製)
・D−3:クラレポバールPVA235(クラレ社製)
(導電性組成物)
(実施例1)
ジメチルアミノエタノール中和されたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子であるザイクセンL(B−1:住友精化社製、変性量(Y)/(X)0.64、pH9.0、ポリエチレン)24質量%水分散液を限外ろ過装置(日本ポール社製限外ろ過デバイス、分画分子量300K)を用いて濃縮しながら、イオン交換水を添加し、オレフィン系樹脂微粒子の固形分が20〜25質量%の範囲内で洗浄を行い、pH8.0、固形分25質量%になるまで洗浄を行った。
導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A−1:デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40質量部に、水性液状媒体(C)であるイオン交換水970質量部とエーテル型の非イオン界面活性剤(トリトンX、ロシェライフサイエンス社製)0.4質量部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った。次に上記限外ろ過洗浄により得られた25質量%水分散樹脂微粒子240質量部(固形分として60質量部)を入れ、ミキサーで混合し、導電性組成物(1)を得た。
(水分散樹脂微粒子(B)のpH)
中和されたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)が25質量%分散されてなる水分散液を、液温25℃の環境下、pHメータ(堀場製作所製 D−54)にて測定した。
(水分散樹脂微粒子(B)の変性量(Y)/(X))
水分散オレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(B)を80℃のオーブンに入れ、分散媒を除去した後、120℃で30分乾燥させて固形物を得た。これをフーリエ変換赤外分光装置(FT−IR:PerkinElmer社製Spectrum One/100)による全反射測定法(ATR)によって測定した。
変性量は、波数に対して吸光度をプロットしたスペクトルを用い、2700cm-1における吸光度を示す点と3000cm-1における吸光度を示す点との2点を結ぶ直線をベースラインBXとした際の、2800〜3000cm-1のオレフィン由来の最大ピークからベースラインBXまでの高さ(極大吸光度)(X)と、1650m-1における吸光度を示す点と1850cm-1における吸光度を示す点との2点を結ぶ直線をベースラインBYとした際の、1690〜1740cm-1のカルボニル由来の最大ピークからベースラインBYまでの高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)を求めた。
(実施例2、実施例3、実施例5、実施例6)
表1に示す材料および条件に変更した以外は、導電性組成物(1)と同様の方法により、それぞれ実施例の導電性組成物(2)、(3)、(5)、(6)を得た。
(実施例4)
再生済みの陽イオン交換樹脂(オルガノ社製 アンバーライトIR120B)をカラムに詰め、このカラムにイオン交換水で5質量%に希釈したジメチルアミノエタノールで中和されたザイクセンL(B−1:住友精化社製)を通し、イオン交換を行った。得られたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子を限外ろ過にて固形分25質量%、pH5.5となるまで濃縮を行った。
導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A−1:デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40質量部に、水性液状媒体(C)であるイオン交換水970質量部とエーテル型の非イオン界面活性剤(トリトンX、ロシェライフサイエンス社製)0.4質量部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った。次に上記限外ろ過洗浄により得られた25質量%水分散樹脂微粒子240質量部(固形分として60質量部)を入れ、ミキサーで混合し、導電性組成物(4)を得た。
(実施例7)
再生済みの陽イオン交換樹脂(オルガノ社製 アンバーライトIR120B)をカラムに詰め、このカラムにイオン交換水で5質量%に希釈したジメチルアミノエタノールで中和されたザイクセンL(B−1:住友精化社製)を通してpH4.0になるまでイオン交換を行った。イオン交換直後、上記オレフィン系樹脂微粒子に、中和剤として、3−エトキシプロピルアミンをpH8.0となるように添加した。得られたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子を限外ろ過にて固形分25質量%となるまで濃縮を行った。
導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A−1:デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40質量部に、水性液状媒体(C)であるイオン交換水970質量部とエーテル型の非イオン界面活性剤(トリトンX、ロシェライフサイエンス社製)0.4質量部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った。次に上記限外ろ過洗浄により得られた25質量%水分散樹脂微粒子240質量部(固形分として60質量部)を入れ、ミキサーで混合し、導電性組成物(7)を得た。
(実施例8)
イオン交換後の中和剤をヘキシルアミンに変えた以外は、実施例7と同様にして導電性組成物(8)を得た。
(実施例9)
ジメチルアミノエタノール中和されたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子であるアローベースTD−4010(B−2:ユニチカ社製、変性量(Y)/(X)0.08、pH9.5、ポリプロピレン)25質量%水分散液を限外ろ過装置(日本ポール社製限外ろ過デバイス、分画分子量300K)を用いて濃縮しながら、イオン交換水を添加し、オレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子の固形分が20〜25質量%の範囲内で洗浄を行い、pH8.0、固形分25質量%になるまで洗浄を行った。
導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A−1:デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)25質量部に、水性液状媒体(C)であるイオン交換水25質量部と水溶性樹脂であるカルボキシメチルセルロース(D−1:CMCダイセル#1240、ダイセル化学工業社製)2.5%水溶液1000質量部(固形分として25質量部)をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った。次に上記限外ろ過洗浄により得られた25質量%水分散樹脂微粒子200質量部(固形分として50質量部)を入れ、ミキサーで混合し、導電性組成物(9)を得た。
(実施例10〜実施例14、比較例5、比較例6)
表1に示す材料および条件に変更した以外は、導電性組成物(9)と同様の方法により、それぞれ実施例、比較例の導電性組成物(10)〜(14)、(19)、(20)を得た。
ただし、本明細書において実施例15〜19は参考例である。

(比較例2)
導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A−1:デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40質量部に、水溶性樹脂であるカルボキシメチルセルロース(D−1:CMCダイセル#1240、ダイセル化学工業社製)2.5%水溶液2400質量部(固形分として60質量部)をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、導電性組成物(16)を得た。
(比較例3)
導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A−1:デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40質量部に、水性液状媒体(C)であるイオン交換水960質量部とエーテル型の非イオン界面活性剤(トリトンX、ロシェライフサイエンス社製)0.4質量部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った。次にジメチルアミノエタノール中和されたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子であるザイクセンL(B−1:住友精化社製、変性量(Y)/(X)0.64、pH9、ポリエチレン)24質量%水分散液250質量部(固形分として60質量部)を入れ、ミキサーで混合し、導電性組成物(17)を得た。
(比較例4)
再生済みの陽イオン交換樹脂(オルガノ社製 アンバーライトIR120B)をカラムに詰め、このカラムにイオン交換水で5質量%に希釈したジメチルアミノエタノールで中和されたザイクセンL(B−1:住友精化社製)を通してイオン交換を行い、得られたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子を限外ろ過にて固形分25質量%、pH4.0となるまで濃縮を行った。
導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A−1:デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40質量部に、水性液状媒体(C)であるイオン交換水970質量部とエーテル型の非イオン界面活性剤(トリトンX、ロシェライフサイエンス社製)0.4質量部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った。次に上記限外ろ過洗浄により得られた25質量%水分散樹脂微粒子240質量部(固形分として60質量部)を入れ、ミキサーで混合し、導電性組成物(18)を得た。
(実施例15)
導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A−1:デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40質量部に、水性液状媒体(C)であるイオン交換水960質量部とエーテル型の非イオン界面活性剤(トリトンX、ロシェライフサイエンス社製)0.4質量部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った。次にジメチルアミノエタノール中和されたオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子であるアローベースTD−4010(B−2:ユニチカ社製)25質量%水分散液240質量部(固形分として60質量部)を入れ、ミキサーで混合し、導電性組成物(21)を得た。
(実施例16〜19、比較例7)
表1に示す材料および条件に変更した以外は、導電性組成物(21)と同様の方法により、それぞれ実施例、比較例の導電性組成物(22)〜(25)、(26)を得た。
導電性組成物(1)〜(14)、(16)〜(26)について、塗液の安定性を評価した。評価結果を表2に示す。
(塗液の安定性)
上記で作製した導電性組成物を50℃で保管し、固形物の凝集、沈降、溶媒との分離を観察し、目視判定で判定した。評価基準を下記に示す。
◎:「四週間以上、上記現象が見られなかった。非常に優れている。」
○:「二週間から四週間の間に、上記現象が見られた。優れている。」
○△:「一週間から二週間の間に、上記現象が見られた。(実使用可能なレベル)」
×:「一週間以内で、上記現象が見られた。劣っている。」
<下地層付き集電体>
(実施例1〜14、比較例2〜7)
導電性組成物(1)〜(14)、(16)〜(20)、(26)を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にバーコーターを用いて塗布をした後、80℃10分で乾燥し、下地層の厚みが2μmとなるように下地層付き集電体(1)〜(14)、(16)〜(20)、(26)をそれぞれ得た。
(実施例15)
導電性組成物(21)を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にバーコーターを用いて塗布し、80℃で10分乾燥した後、130℃で30秒で乾燥して、下地層の厚みが2μmとなるように下地層付き集電体(21)を得た。
(実施例16〜19)
表1に示す乾燥温度に変更した以外は、下地層付き集電体(21)と同様の方法により、それぞれ実施例の下地層付き集電体(22)〜(25)をそれぞれ得た。
<リチウムイオン二次電池正極用合材インキ>
正極活物質としてLiNi0.5Mn0.3Co0.2293質量部、導電剤としてアセチレンブラック4質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン3質量部、N―メチルピロリドン45質量部を入れて混合して、正極用合材インキを作製した。
<リチウムイオン二次電池負極用合材インキ>
負極活物質として人造黒鉛98質量部、カルボキシメチルセルロース1.5%水溶液66.7質量部(固形分として1質量部)をプラネタリーミキサーに入れて混練し、水33質量部、スチレンブタジエンエマルション48質量%水系分散液2.08質量部(固形分として1質量部)を混合して、負極用合材インキを得た。
<下地層付きリチウムイオン二次電池用正極>
(実施例1〜19、比較例2〜7)
上述のリチウムイオン二次電池正極用合材インキを、下地層付き集電体(1)〜(14)、(16)〜(26)上にドクターブレードを用いて塗布した後、80℃で乾燥して電極の単位面積当たりの目付け量が20mg/cm2となるようにとなるように調整した。さらにロールプレスによる圧延処理を行い、合材層の密度が3.1g/cm3となる正極(1)〜(14)、(16)〜(26)を作製した。
(比較例8)
比較例7で作製した下地層付きリチウムイオン二次電池用正極(26)を、200℃で12時間真空加熱乾燥し、正極(27)を作製した。
<下地層なしリチウムイオン二次電池用正極>(比較例1)
上述のリチウムイオン二次電池正極用合材インキを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥して電極の単位面積当たりの目付け量が20mg/cm2となるようにとなるように調整した。さらにロールプレスによる圧延処理を行い、合材層の密度が3.1g/cm3となる正極(15)を作製した。
<下地層なしリチウムイオン二次電池用負極>(実施例1〜19、比較例1〜8)
上述のリチウムイオン二次電池負極用合材インキを、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、80℃で乾燥して電極の単位面積当たりの目付け量が12mg/cm2となるように調整した。さらにロールプレスによる圧延処理を行い、合材層の密度が1.5g/cm3となる負極(1)〜(27)を作製した。
<ラミネート型リチウムイオン二次電池>(実施例1〜19、比較例1〜8)
表2に示す正極と負極を各々45mm×40mm、50mm×45mmに打ち抜き、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロプレンフィルム)とをアルミ製ラミネート袋に挿入し、真空乾燥の後、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)を注入した後、アルミ製ラミネートを封口してラミネート型リチウムイオン電池を作製した。ラミネート型リチウムイオン型電池の作製はアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、ラミネート型リチウムイオン型電池作製後、以下に示す初期抵抗、抵抗増加、レート特性、サイクル特性および保存特性の電池特性評価を行った。
(抵抗測定)
放電電流12mA(0.2C)にて放電終止電圧3.0Vで定電流放電を行ったラミネート型電池を、インピーダンスアナライザー(biologic社製SP−50)にて500kHzでの抵抗測定を行った。
上述したラミネート型電池を25℃から180℃まで加熱し、各々の温度での抵抗測定を行った。25℃で測定した抵抗を初期抵抗とし、180℃で測定した抵抗値と25℃で測定した抵抗値の商を抵抗増加とした。すなわち抵抗増加は以下(式1)で表される。
(式1) 抵抗増加=180℃での抵抗値/25℃での抵抗値
初期抵抗および抵抗増加について、以下の基準で評価した結果を表2に示す。
・初期抵抗
○:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗より小さい。優れている。」
△:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗と同等。」
×:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗より大きい。劣っている。」
・抵抗増加
◎:「抵抗増加が初期抵抗の5倍以上。優れている。」
○:「抵抗増加が初期抵抗の3倍以上、5倍未満。やや優れている。」
△:「抵抗増加が初期抵抗の3倍未満。電流の遮断効果が低い。劣っている。」
(レート特性)
上述したラミネート電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。
充電電流12mA(0.2C)にて充電終止電圧4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.6mAを行った後、放電電流12mA(0.2C)および120mA(2C)で放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行って、それぞれ放電容量を求めた。レート特性は0.2C放電容量と2C放電容量の比、つまり以下(式2)で表される。
(式2) レート特性=2C放電容量/0.2C放電容量×100(%)
以下の基準で評価した結果を表2に示す。
・レート特性
○:「レート特性が80%以上。特に優れている。」
○△:「レート特性が75%以上、80%未満。優れている。」
△:「レート特性が70以上、75%未満。下地層なしの比較例1のレート特性と同等。」
×:「レート特性が70%未満。劣っている。」
(サイクル特性)
50℃恒温槽にて充電電流を60mAにて充電終止電圧を4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.6mA)を行った後、放電電流60mAで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行って、初回放電容量を求めた。この充放電サイクルを200回行い、放電容量維持率(初回放電容量に対する200回目の放電容量の百分率)を算出した。以下の基準で評価した結果を表2に示す。
・サイクル特性
○:「放電容量維持率が90%以上。特に優れている。」
○△:「放電容量維持率が85%以上、90%未満。優れている。」
△:「放電容量維持率が80%以上、85%未満。下地層なしの比較例1の放電容量維持率と同等。」
×:「放電容量維持率が80%未満。劣っている。」
(保存特性)
[初期容量]
50℃恒温槽にて充電電流を30mAにて充電終止電圧を4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.6mA)を行った後、放電電流30mAで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行って、初回放電容量を求めて初期容量とした。
[保存容量]
初回放電容量を求めた上記電池を、50℃恒温槽にて充電電流を30mAにて充電終止電圧を4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.6mA)を行った後、50℃で7日間保管を行った。
7日間保管した電池を50℃恒温槽にて、放電電流30mAで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行い(放電1−1)、充電電流を30mAにて充電終止電圧を4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.6mA)を行った後、放電電流30mAで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行い(放電2−1)、放電2−1の放電容量を保存容量(放電2−1)とした。
上記試験を4回繰り返し、4.2V充電状態における50℃、28日間の保存試験を行った後の保存容量(放電2−4)をもとに保存容量維持率を算出した。
保存特性は初期容量と28日間の保存試験後の放電容量(放電2−4)の比、つまり以下(式3)の保存容量維持率で表される。
(式3) 保存容量維持率=28日間の保存容量(放電2−4)/初期容量×100(%)
以下の基準で評価した結果を表2に示す。
・保存特性
○:「保存容量維持率が80%以上。優れている。」
○△:「保存容量維持率が70%以上、80%未満。やや優れている。」
△:「保存容量維持率が60以上、70%未満。下地層なしの比較例1の保存容量維持率と同等。」
×:「保存容量維持率が60%未満。劣っている。」

Figure 0006763163

Figure 0006763163
表2に示すように、本発明の導電性組成物から形成された下地層を用いることで、通常作動温度においては、蓄電デバイスの内部抵抗が低減し、出力特性やサイクル特性および保存特性が改善され、さらに蓄電デバイスの内部温度が上昇した場合、内部抵抗が上昇することが確認された。このことから、内部短絡などにより蓄電デバイスが異常発熱した場合には集電体の抵抗が増大し、電流を遮断することによって、蓄電デバイスの発火等を回避するものと考える。
一方、下地層を形成していない比較例1や、オレフィン系樹脂微粒子を含まない下地層を形成した比較例2では、蓄電デバイスの内部温度が上昇しても、目立った内部抵抗の上昇は見られなかった。比較例1は下地層を形成していないため、発熱時に抵抗を増大させる効果がなく、比較例2では、発熱時における樹脂の体積膨張が不十分なため、導電層中に分散している導電性の炭素材料同士を引き剥がすことができなかったためと考えられる。
また、オレフィン系樹脂微粒子のpHが高い比較例3、7や、オレフィン系樹脂微粒子の組成比が大きい比較例6では、蓄電デバイスの保存劣化が確認された。下地層にアミン化合物が残存し、アミンの酸化分解が生じたためと考えられる。
また、沸点が100℃以上のアミン化合物を過剰に含有するオレフィン系樹脂微粒子を使用した場合において、130〜250℃で乾燥を行った実施例15〜19では、良好な保存特性が得られたが、合材層を塗布した後に高温で乾燥を行った比較例8では蓄電デバイスの保存劣化が確認された。下地層付き集電体を130〜250℃で乾燥を行うことによって、効果的にアミン化合物を除去することができ、特性改善につながったと考えられる。
オレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子のpHが低い比較例4では、オレフィンおよびカーボンの凝集が見られ、初期抵抗、レート特性、サイクル特性が悪化した。アニオンの静電反発が不充分であり、オレフィンの分散状態を維持できず、下地層を形成できなかったことが要因と考えられる。
以上の結果から、本発明によって、蓄電デバイスの出力特性に優れ、かつ、サイクル特性、保存特性などの長期信頼性にも優れ、さらには内部短絡などにより蓄電デバイスの内部温度が上昇した場合に、内部抵抗を上昇させて流れる電流を抑制することによって、安全性を高める機能を備えた蓄電デバイスを形成するための導電性組成物を提供することができる。

Claims (7)

  1. 導電性の炭素材料(A)と、沸点が100℃以上のアミン化合物で中和され、かつカルボニル基を含む化合物で変性されたオレフィン系樹脂微粒子を50〜100質量%の割合で含む水分散樹脂微粒子(B)と、水性液状媒体(C)とを含む導電性組成物であって、
    前記導電性組成物の固形分中、導電性の炭素材料(A)が、20〜70質量%であり、水分散樹脂微粒子(B)が、20〜60質量%であり、
    さらに、水分散樹脂微粒子(B)の固形分10〜60質量%である水分散液のpHが、5.0〜8.5であることを特徴とする導電性組成物。
  2. 上記カルボニル基を含む化合物が少なくともカルボン酸またはカルボン酸エステルを含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
  3. 上記導電性組成物の固形分100質量%に対して、さらに、水溶性樹脂(D)を10〜50質量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性組成物。
  4. 蓄電デバイス用電極の下地層形成用であることを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載の導電性組成物。
  5. 集電体と、請求項1〜4いずれかに記載の導電性組成物から形成された下地層とを有する蓄電デバイス用下地層付き集電体。
  6. 集電体と、請求項1〜4いずれかに記載の導電性組成物から形成された下地層と、電極活物質とバインダーとを含有する電極形成用組成物から形成された合材層とを有する蓄電デバイス用電極。
  7. 正極と負極と電解液とを具備する蓄電デバイスであって、前記正極または前記負極の少なくとも一方が、請求項6に記載の蓄電デバイス用電極である、蓄電デバイス。
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