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JP6637952B2 - 車両の車線逸脱防止制御装置 - Google Patents

車両の車線逸脱防止制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、車両の走行車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止制御を実行する車両の車線逸脱防止制御装置に関する。
自動車等の車両においては、例えば特許文献1に開示されているように、ドライバによる操舵操作と独立して電動モータを介して操舵角を制御可能な電動パワーステアリング(EPS;Electric Power Steering)装置等の操舵装置を備え、カメラやレーダ装置等によって認識した車両周囲の外部環境に基づいて、自車両の走行位置を車線内に維持する車線維持制御や、自車両の走行車線外への逸脱を防止する車線逸脱防止制御等の操舵支援制御を行う技術が知られている。
特開2016−64799号公報
一般に、EPS装置等の電動モータを介した操舵制御では、車両の姿勢を目標とするヨー角に制御するための目標操舵トルクには、操舵系の摩擦を補償する摩擦補償トルクが付加されており、これにより、操舵系の個体差や経年変化によるばらつき等の影響を低減してより精度の高い制御が可能となる。
これに対して、ドライバのステアリング把持を前提とする操舵支援制御では、システムが車線外に逸脱する虞があると判断して車線逸脱防止制御を開始したとき、同時にドライバが車線逸脱を防止する方向にステアリングを操作する場合がある。
このため、一義的に摩擦補償トルクを目標操舵トルクに加算すると、ドライバの操舵トルクによって操舵系の摩擦の一部又は全部が補償されてしまい、最終的な指示トルクに過不足が生じて円滑を欠くトルク変動や操舵角変化が発生し、ドライバに違和感を与える虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車線逸脱防止制御の開始時に操舵系の摩擦を適正に補償し、ドライバに違和感を与えることなく車線逸脱を防止することのできる車両の車線逸脱防止制御装置を提供することを目的としている。
本発明の第1の態様による車両の車線逸脱防止制御装置は、自車両が走行する車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止制御を実行する車両の車線逸脱防止制御装置であって、前記車線からの逸脱を防止するために操舵系に付与する目標操舵トルクを算出する目標操舵トルク算出部と、前記操舵系の摩擦トルクを推定する摩擦トルク推定部と、前記目標操舵トルクに加算して前記操舵系の摩擦を補償する前記摩擦トルクの加算割合を、ドライバの操舵トルクと自車両の走行状態とに基づいて可変制御する摩擦補償割合可変制御部と、前記目標操舵トルクの変化速度を抑制するレートリミット処理を行うリミット処理部とを備え、前記摩擦補償割合可変制御部は、前記リミット処理部で前記レートリミット処理された前記目標操舵トルクに加算する前記摩擦トルクの加算割合を可変制御する。
本発明の第2の態様による車両の車線逸脱防止制御装置は、自車両が走行する車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止制御を実行する車両の車線逸脱防止制御装置であって、前記車線からの逸脱を防止するために操舵系に付与する目標操舵トルクを算出する目標操舵トルク算出部と、前記操舵系の摩擦トルクを推定する摩擦トルク推定部と、前記目標操舵トルクに加算して前記操舵系の摩擦を補償する前記摩擦トルクの加算割合を、ドライバの操舵トルクと自車両の走行状態とに基づいて可変制御する摩擦補償割合可変制御部とを備え、前記摩擦補償割合可変制御部は、前記加算割合を増加方向にのみ可変し、前記加算割合の減少方向への変化は許容しない。
本発明の第3の態様による車両の車線逸脱防止制御装置は、自車両が走行する車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止制御を実行する車両の車線逸脱防止制御装置であって、前記車線からの逸脱を防止するために操舵系に付与する目標操舵トルクを算出する目標操舵トルク算出部と、前記操舵系の摩擦トルクを推定する摩擦トルク推定部と、前記目標操舵トルクに加算して前記操舵系の摩擦を補償する前記摩擦トルクの加算割合を、ドライバの操舵トルクと自車両の走行状態とに基づいて可変制御する摩擦補償割合可変制御部とを備え、前記車線逸脱防止制御は、前記車線からの逸脱を抑制するための逸脱抑制制御と、逸脱抑制後に自車両の姿勢を制御終了地点まで制御する姿勢決定制御とを切り換える制御であり、前記摩擦補償割合可変制御部は、前記摩擦トルク推定部で推定した前記摩擦トルクに基づいて、前記逸脱抑制制御中の摩擦トルクと前記姿勢決定制御中の摩擦トルクをそれぞれ算出し、さらに、前記逸脱抑制制御中の摩擦トルクの前記目標操舵トルクへの加算割合を可変制御し、前記姿勢決定制御中の摩擦トルクの前記目標操舵トルクへの加算割合を一定とする。
本発明によれば、車線逸脱防止制御の開始時に操舵系の摩擦を適正に補償し、ドライバに違和感を与えることなく車線逸脱を防止することができる。
車両操舵系の構成図 操舵制御系の機能を示すブロック図 自車両及び車線と各パラメータを示す説明図 摩擦トルクの推定を示す説明図 摩擦補償割合の変化を示す説明図 車線逸脱防止制御ルーチンを示すフローチャート 逸脱防止制御トルク算出ルーチンを示すフローチャート 摩擦補償割合及び逸脱防止制御トルク算出ルーチンを示すフローチャート(その1) 摩擦補償割合及び逸脱防止制御トルク算出ルーチンを示すフローチャート(その2)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1において、符号1は、ドライバによる操舵操作と独立してアクチュエータを介して操舵角を制御可能な操舵装置としての電動パワーステアリング(EPS;Electric Power Steering)装置を示す。このEPS装置1においては、図示しない自動車等の車両の車体フレームに、ステアリング軸2がステアリングコラム3を介して回動自在に支持されている。
ステアリング軸2の一端は運転席側へ延出され、他端がエンジンルーム側へ延出されている。ステアリング軸2の運転席側端部には、ステアリングホイール4が固設され、このステアリングホイール4が結合されるステアリング軸2の外周側に、舵角センサ21が配設されている。
舵角センサ21は、例えば、その内部に検知ギヤに内蔵された磁石の回転を検知する磁気抵抗素子を二組備えて構成されている。この舵角センサ21は、ステアリングホイール4の基準となる回転位置(例えば、車両直進状態におけるステアリングホイール4上部の回転位置)を予め設定しておき、検知ギヤが回転することで生じる磁気変化に基づいて、予め設定した固定の基準位置からの回転角(舵角)及び回転方向(操舵方向)を検出することができる。
また、ステアリング軸2の中途には、トーションバー2aが介装され、エンジンルーム側に延出される端部に、ピニオン軸5が連設されている。トーションバー2aの外周側には、トルクセンサ22が配設されている。トルクセンサ22は、トーションバー2aの捩れによってステアリング軸2の軸周りに生じるステアリングホイール4側とピニオン軸5側との変位を検出することにより、ドライバの操舵操作によるドライバの操舵トルクを検出可能となっている。
一方、エンジンルーム内には、車幅方向へ延出するステアリングギヤボックス6が配設されており、このステアリングギヤボックス6にラック軸7が往復移動自在に挿通支持されている。このラック軸7に形成されたラック(図示せず)に、ピニオン軸5に形成されたピニオンが噛合されて、ラックアンドピニオン式のステアリング機構が形成されている。
また、ラック軸7の左右両端はステアリングギヤボックス6の端部から各々突出されており、その端部に、タイロッド8を介してフロントナックル9が連設されている。このフロントナックル9は、操舵輪としての左右輪10L,10Rを回動自在に支持すると共に、車体フレームに転舵自在に支持されている。ステアリングホイール4を操作し、ステアリング軸2、ピニオン軸5を回転させると、このピニオン軸5の回転によりラック軸7が左右方向へ移動し、その移動によりフロントナックル9がキングピン軸(図示せず)を中心に回動して、左右輪10L,10Rが左右方向へ転舵される。
また、ピニオン軸5に、ウォームギヤ等の減速ギヤ機構からなるアシスト伝達機構11を介して、ドライバの操舵操作に対するアシスト及び自動操舵を可能とするアクチュエータとしての電動パワーステアリングモータ(EPSモータ)12が連設されている。EPSモータ12は、例えばケースに固定されたステータとステータの内部で回転するロータとを有するDCブラシレスモータからなる電動モータであり、この電動モータのロータの回転がアシスト伝達機構11を介してラック軸7の軸方向の動きに変換される。
EPSモータ12には、ロータの回転角を検出する回転角センサ23が内蔵されている。この回転角センサ23は、例えば、ロータリエンコーダ等によって所定の零点位置からのロータの相対的な回転角を検出するセンサであり、回転角センサ23からの信号が操舵制御装置50に入力される。
尚、回転角センサ23は、例えば、イグニッションON時に、舵角センサ21による舵角とアシスト伝達機構11の減速比とに基づいての零点位置が初期設定され、通常、回転角センサ23で検出する回転角と舵角センサ21で検出するステアリングホイール4の回転角(ハンドル角)とは、同じ舵角(操舵角)として扱うことができる。
操舵制御装置50は、マイクロコンピュータを中心として構成される制御ユニットであり、モータ駆動部20を介してEPSモータ12を駆動制御する。操舵制御装置50には、舵角センサ21、トルクセンサ22、回転角センサ23、その他、車速を検出する車速センサ24、車両の鉛直軸回りの回転速度すなわちヨーレートを検出するヨーレートセンサ25等のセンサ類や図示しないスイッチ類からの信号が入力される。
また、操舵制御装置50は、車内ネットワークを形成する通信バス200に接続されている。通信バス200には、車両の外部環境を認識して走行環境情報を取得する外部環境認識装置150をはじめとして、その他、図示しないエンジン制御装置、変速機制御装置、ブレーキ制御装置等の他の制御装置が接続され、各制御装置が通信バス200を介して互いに制御情報を交換することができる。
外部環境認識装置150は、前方認識用のカメラやミリ波レーダ、側方認識用のサイドカメラや側方レーダ等の各種デバイスによる自車両周囲の物体の検出情報、路車間通信や車車間通信等のインフラ通信によって取得した交通情報、GPS衛星等からの信号に基づく自車両位置の測位情報、道路の曲率、車線幅、路肩幅等の道路形状データや、道路方位角、車線区画線の種別、レーン数等の走行制御用データを含む高精細の地図情報等により、自車両周囲の外部環境を認識する。
本実施の形態においては、外部環境認識装置150は、車載のカメラ及び画像認識装置による自車両の前方環境の認識を主として、前方認識用のカメラは、同一対象物を異なる視点から撮像する2台のカメラで構成されるステレオカメラを用いる。このステレオカメラを構成する2台のカメラは、CCDやCMOS等の撮像素子を有するシャッタ同期のカメラであり、例えば、車室内上部のフロントウィンドウ内側のルームミラー近傍に所定の基線長で配置されている。
ステレオカメラからの画像データの処理は、例えば以下のように行われる。まず、ステレオカメラで撮像した自車両の進行方向の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から距離情報を有する距離画像を生成し、この距離画像の距離情報を用いて、白線等の車線区画線の認識、先行車両や対向車両等の立体物の認識処理を行う。
白線等の車線区画線の認識では、車線区画線は道路面と比較して高輝度であるという知得に基づき、道路の幅方向の輝度変化を評価して、画像平面における左右の車線区画線の位置を画像平面上で特定する。この車線区画線の実空間上の位置(x,y,z)は、画像平面上の位置(i,j)とこの位置に関して算出された視差とに基づいて、すなわち、距離情報に基づいて、周知の座標変換式より算出される。
自車両の位置を基準に設定された実空間の座標系は、本実施の形態では、例えば、図3に示すように、カメラの中央真下の道路面を原点として、車幅方向をx軸、車高方向をy軸、車長方向(距離方向)をz軸とする。このとき、x−z平面(y=0)は、道路が平坦な場合、道路面と一致する。道路モデルは、道路上の自車両の走行レーンを距離方向に複数区間に分割し、各区間における左右の車線区画線を所定に近似して連結することによって表現される。
左右車線区画線の近似処理は、例えば、車線区画線を最小自乗法によって近似する処理が採用される。具体的には、自車両の左側の車線区画線は、最小自乗法により、以下の(1)式により近似され、自車両の右側の車線区画線は、最小自乗法により、以下の(2)式により近似される。
x=AL・z2+BL・z+CL …(1)
x=AR・z2+BR・z+CR …(2)
ここで、上述の(1)式、(2)式における、「AL」と「AR」は、それぞれの曲線における曲率を示し、左側の車線区画線の曲率κLは、2・ALであり、右側の車線区画線の曲率κRは、2・ARである。従って、車線の曲率κは、以下の(3)式となる。
κ=(2・AL+2・AR)/2=AL+AR …(3)
また、(1)式、(2)式における、「BL」と「BR」は、それぞれの曲線の自車両の幅方向における傾きを示し、「CL」と「CR」は、それぞれの曲線の自車両の幅方向における位置を示す(図3参照)。
更に、外部環境認識装置150は、自車両の対車線ヨー角θyawを、以下の(4)式により算出する。
θyaw=tan-1((BL+BR)/2) …(4)
外部環境認識装置150による外部環境の認識結果は、操舵制御装置50や他の制御装置に送信される。操舵制御装置50は、自車両の自動運転やドライバの運転を支援する運転支援制御において、外部環境の認識結果から自車両が走行する目標コースを設定し、この目標コースに追従して走行するよう、EPSモータ12を駆動するモータ駆動部20を介して操舵支援制御を実行し、ドライバの操舵操作による操舵介入が検知された場合には、EPSモータ12によりドライバの操舵操作をアシストする補助トルクを出力する。
操舵制御装置50の操舵制御における目標コースは、外部環境認識装置150による外部環境の認識結果に基づいて設定される。例えば、自車両を車線に追従させて車線中央に維持する車線維持制御では、車線区画線としての左右の白線の道路幅方向の中央位置が目標コースとして設定される。操舵制御装置50は、自車両の車幅方向の中心位置を目標コースに一致させる目標操舵角を設定し、操舵制御の舵角が目標操舵角となるよう、EPSモータ12の駆動電流を制御する。尚、目標コースは、操舵制御装置50ではなく、外部環境認識装置150等の他の制御装置で設定するようにしても良い。
また、操舵制御装置50は、自車両を車線中央に維持する車線維持制御に加えて、自車両の車線から逸脱を防止する車線逸脱防止制御を実行する。具体的には、操舵制御装置50は、外部環境認識装置150からの情報及び自車両の運転状態に基づいて、自車両の対車線ヨー角が逸脱方向を向いている場合、自車両が逸脱方向の車線を跨ぐまでの車線逸脱推定時間Ttlcを算出し、車線逸脱推定時間Ttlcが自車両の車速Vと車線曲率κとによって決定される閾値Tth以下の場合、車線逸脱防止制御を開始する。
車線逸脱推定時間Ttlcは、以下の(5)式に示すように、自車両から逸脱方向の車線までの距離Lを、自車両の車速Vの対車線ヨー角θyawに応じた速度成分で除算して求めることができる。
Ttlc=L/(V・sinθyaw) …(5)
この車線逸脱防止制御においては、EPSモータ12の指示トルクには、操舵系の摩擦を補償するための摩擦補償トルクが含まれており、車線逸脱防止制御によるEPSモータ12の駆動に対して、ドライバが逸脱回避の操舵を行うと、ドライバの操舵操作で発生する操舵トルクによって摩擦補償トルクの一部又は全てが補償されてしまい、EPSモータ12の指示トルクが過剰になる虞がある。このため、操舵制御装置50は、車線逸脱防止制御が開始されたときにドライバが逸脱回避の操舵を行った場合にも適正な摩擦補償がなされるよう、ドライバの操舵トルクに応じて摩擦補償トルクを可変制御する。
この摩擦補償に係る車線逸脱防止制御の機能部として、操舵制御装置50は、図2に示すように、自車両が目標コースに沿って走行するための目標ヨーレートを算出する目標ヨーレート算出部60、目標ヨーレートを実現するための目標操舵トルクを算出する目標操舵トルク算出部70、目標操舵トルクの変化速度を主としてドライバに違和感を与えない速度に抑制するリミット処理部としてのレートリミッタ75、操舵系の摩擦トルクを推定する摩擦トルク推定部80、レートリミッタ75でレートリミット処理された目標操舵トルクに加算して操舵系の摩擦を補償するための摩擦トルクの加算割合(補償割合)を可変制御する摩擦補償割合可変制御部85を主要部として備えている。
尚、本実施の形態においては、レートリミット処理された後の目標操舵トルクに加算する摩擦トルクの加算割合(補償割合)を可変制御する例について説明するが、レートリミット処理前の目標操舵トルクに加算する摩擦トルクの加算割合(補償割合)を可変制御するようにしても良い。
詳細には、目標ヨーレート算出部60は、車線の曲率に応じた目標旋回量となるヨーレート(車線曲率旋回目標ヨーレート)γtgt_laneと、車線に対して逸脱を防止する目標旋回量となるヨーレート(逸脱防止挙動生成目標ヨーレート)γtgt_turnとを算出する。逸脱防止挙動生成目標ヨーレートγtgt_turnと車線曲率旋回目標ヨーレートγtgt_laneとは、以下の(6)式に示すように、互いに加算されて最終的な目標ヨーレートγtgtとして算出される。
γtgt=γtgt_lane+γtgt_turn …(6)
尚、ヨーレート及び曲率は、正の符号で左旋回を表し、対車線ヨー角は、正の符号で左側の車線への逸脱方向を表すものとする。また、横位置は、正の符号で車線内側を表すものとする。
詳細には、車線曲率旋回目標ヨーレートγtgt_laneは、以下の(7)式に示すように、自車両の車速Vと車線の曲率κとにより算出される。
γtgt_lane=κ・V …(7)
また、逸脱防止挙動生成目標ヨーレートγtgt_turnは、詳細には、車線逸脱防止制御の制御開始から逸脱を抑制するための挙動を自車両に発生させる逸脱抑制制御(対車線ヨー角θyaw≧0)の目標ヨーレートγtgt_turn_1と、逸脱抑制制御後に自車両の姿勢を制御終了地点まで制御する姿勢決定制御(対車線ヨー角θyaw<0)の目標ヨーレートγtgt_turn_2とに分けて算出される。これらの目標ヨーレートγtgt_turn_1,γtgt_turn_2は、自車両の対車線ヨー角及び横位置に応じて切り換えられ、逸脱防止挙動生成目標ヨーレートγtgt_turnとして出力される。
逸脱抑制制御中の目標ヨーレートγtgt_turn_1は、以下の(8)式に示すように、対車線ヨー角θyawと車線逸脱推定時間Ttlcに基づいて算出される。
γtgt_turn_1=θyaw/Ttlc …(8)
一方、姿勢決定制御中の目標ヨーレートγtgt_turn_2は、以下の(9)式に示すように、制御終了時の目標対車線ヨー角θtgt_yawと姿勢決定制御中の対車線ヨー角θyawとの偏差に所定のフィードバックゲインKyawfbを乗算した値を、目標対車線ヨー角θtgt_yawに到達するまでの目標時間Ttgtで除算して算出される。
γtgt_turn_2=−Kyawfb・(θtgt_yaw−θyaw)/Ttgt …(9)
目標操舵トルク算出部70は、フィードフォワード制御によるフィードフォワードトルクを算出するフィードフォワードトルク算出部71と、フィードバック制御によるフィードバックトルクを算出するフィードバックトルク算出部72を備えている。以下に説明するように、フィードフォワードトルクとフィードバックトルクとは合算され、目標操舵トルクとなる。
フィードフォワードトルク算出部71は、車線曲率旋回目標ヨーレートγtgt_laneを発生させるためのフィードフォワードトルクTp_ff_laneを算出し、また、逸脱防止挙動生成目標ヨーレートγtgt_turnを発生させるためのフィードフォワードトルクTp_ff_turnを算出する。
各フィードフォワードトルクTp_ff_lane,Tp_ff_turnは、例えば、ヨーレート/トルク変換ゲインのマップを予め作成しておき、マップ参照によって得られたトルク変換ゲインKyawr_to_trqを用いて算出する。
すなわち、以下の(10),(11)式に示すように、トルク変換ゲインKyawr_to_trqを、車線曲率旋回目標ヨーレートγtgt_lane、逸脱防止挙動生成目標ヨーレートγtgt_turnに乗算することにより、フィードフォワードトルクTp_ff_lane,Tp_ff_turnを算出する。
Tp_ff_lane=Kyawr_to_trq・γtgt_lane …(10)
Tp_ff_turn=Kyawr_to_trq・γtgt_turn …(11)
フィードバックトルク算出部72は、目標ヨーレートγtgtとヨーレートセンサ25で検出した自車両の実ヨーレートγとの偏差に基づくフィードバックトルクTp_fbを算出する。具体的には、フィードバックトルクTp_fbは、以下の(12)式に示すように、目標ヨーレートγtgtと実ヨーレートγとの偏差(γtgt−γ)に対するPID制御によって算出される。
Tp_fb=Kp・(γtgt−γ)+Ki・∫(γtgt−γ)dt+Kd・d(γtgt−γ)/dt…(12)
(12)式におけるPID制御の比例ゲインKp、積分ゲインKi、微分ゲインKdは、ドライバの操舵操作の有無に応じて設定される。ドライバの操舵操作がない場合(トルクセンサ22によって操舵トルクが検出されない場合)、各ゲインKp,Ki,Kdは、予め最適に設定された特性に従って設定される。
一方、トルクセンサ22によって逸脱防止方向にドライバの操舵操作が検出され、なおかつ目標ヨーレートに対し実ヨーレートがオーバーシュートしている場合(例えば、右側の車線に対して逸脱防止する際に、目標ヨーレートの値より実ヨーレートの値が大きい場合)には、各ゲインKp,Ki,Kdが零とされ、以下の(13)式に示すように、フィードバックトルクTp_fbは零となる。
Tp_fb=0 …(13)
フィードフォワードトルク算出部71からのフィードフォワードトルクTp_ff_lane,Tp_ff_turnと、フィードバックトルク算出部72からのフィードバックトルクTp_fbは、以下の(14)式に示すように互いに加算され、目標操舵トルクTpが算出される。
Tp=Tp_ff_lane+Tp_ff_turn+Tp_fb …(14)
目標操舵トルク算出部70で算出された目標操舵トルクTpは、レートリミッタ75でレートリミット処理される。このレートリミット処理により、目標操舵トルクが急激に変化してドライバに不快感を与えないよう、目標操舵トルクの変化速度が抑制される。レートリミット処理された目標操舵トルクTp_limには、以下の(15)式に示すように、操舵系の摩擦を補償する摩擦補償トルクTp_fricが加算され、EPSモータ12への指示トルクとなる逸脱防止制御トルクTp_cmdとして出力される。
Tp_cmd=Tp_lim+Tp_fric…(15)
尚、摩擦補償トルクTp_fricは、以下に説明するように、摩擦トルク推定部80で推定される摩擦トルクT_fricに、摩擦補償割合可変制御部85で算出される摩擦補償割合Frを乗算して算出される。
摩擦トルク推定部80は、ステアリングホイール4からステアリング機構を経て操舵輪に至る操舵系の摩擦トルクT_fricを推定する。この摩擦トルクT_fricは、操舵系の特性に応じて実験やシミュレーション等で推定した摩擦トルクを車両毎に学習して更新することにより、個体差や経年変化によるばらつきが低減される。
具体的には、例えば、図4(a)に示すように、舵角センサ21で検出されるハンドル角θHと、トルクセンサ22で検出されるピニオン軸トルクTp_senとを軸とする座標系におけるヒステリシス幅Hwを計測し、図4(b)に示すように、ヒステリシス幅Hwをハンドル角θH−ヒステリシス幅Hwの座標系に投影する。そして、ハンドル角θHに対するヒステリシス幅Hwの特性を線形回帰して得られる特性直線の回帰係数(切片)に基づいて操舵系の摩擦トルクT_fricを推定して、マップに格納しておく。
後述するように、摩擦トルクT_fricは、逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwと、姿勢決定制御中の摩擦トルクT_fric_rvとに分けて算出される。逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwと姿勢決定制御中の摩擦トルクT_fric_rvは、マップから得られる摩擦トルクT_fricをベースとして、それぞれ、所定のゲインを乗算する等して算出される。
尚、摩擦トルクT_fricは、電流センサ(図示せず)で検出されるEPSモータ12の電流値と、回転角センサ23で検出されるEPSモータ12のモータ回転角と軸とする座標系におけるヒステリシス幅に基づいて推定するようにしても良い。
摩擦補償割合可変制御部85は、レートリミット処理後の目標操舵トルクTp_limに加算する摩擦トルクT_fricの摩擦補償割合Frを可変制御する。本実施の形態においては、摩擦トルクT_fricは、逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwと姿勢決定制御中の摩擦トルクT_fric_rvとを区別して求めており、ドライバの操舵操作に応じて摩擦補償トルクを考慮する必要のある逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwに対してのみ摩擦補償割合が可変される。
尚、摩擦補償割合Frは、車線逸脱防止制御開始後の逸脱抑制制御中に可変され、逸脱抑制制御から姿勢決定制御に移行した後は、摩擦補償割合Frは100%に固定される。
逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwは、以下の(16)式に示すように、ドライバ操舵トルクTdrvに応じて0〜100%の間で可変される摩擦補償割合Frが乗算され、摩擦補償トルクTp_fricとして算出される。そして、ドライバ操舵トルクに応じて可変される摩擦補償トルクTp_fricがレートリミット処理後の目標操舵トルクTp_limに加算される。
Tp_fric=T_fric_fw×Fr …(16)
摩擦補償割合Frは、ドライバ操舵トルクTdrvと自車両の走行状態とに基づいて設定される。例えば、摩擦補償割合Frは、ドライバ操舵トルクTdrvと自車両の車速Vと車線の曲率κとに基づいて設定され、一定の車速V及び曲率κに対しては、ドライバ操舵トルクTdrvが小さいほど、摩擦補償割合Frが大きくなるように設定される。具体的には、予め走行試験やシミュレーション等により、車線逸脱防止性能と、滑らかなトルク変動や操舵角変化とを両立可能な摩擦トルクの加算割合を求めて摩擦補償割合マップを作成しておく。
本実施の形態においては、この摩擦補償割合マップとして、カーブ内側の車線に対して逸脱を防止する場合とカーブ外側の車線に対して逸脱を防止する場合とを考慮して、カーブ内側用マップとカーブ外側用マップとの2つのマップを作成しておく。そして、これらの2つのマップの何れかを選択して、摩擦補償割合Frを算出する。
この場合、摩擦補償割合Frは、車線逸脱防止制御開始時の値から増加方向にのみ可変され、途中でドライバ操舵トルクが増加しても、摩擦補償割合Frの減少方向への変化は許容されない。例えば、ドライバ操舵トルクTdrvのトルク範囲を0〜1で表現し、Tdrv=0(ドライバの操舵操作無し)でFr=1(100%)、Tdrv=1(ドライバ操舵トルク最大)でFr=0(0%)とするとき、車線逸脱防止制御開始後の逸脱抑制制御中は、図5に示すように、ドライバ操舵トルクTdrvの増減に対して、摩擦補償割合Frが増加方向にのみ可変される。
例えば、車線逸脱防止制御開始時刻t1以後は逸脱抑制制御中とすると時刻t2においてドライバ操舵トルクTdrvが1から0.75に減少すると、摩擦補償割合Frが0から0.5に増加され、更に時刻t3でドライバ操舵トルクTdrvが0.75から0.5に減少すると、摩擦補償割合Frが0.5から0.75に増加される。その後、時刻t4でドライバ操舵トルクTdrvが0.5から0.75に増加しても、摩擦補償割合Frは図5中に破線で示すような減少が許容されず、0.75の状態に維持される。そして、時刻t5でドライバ操舵トルクTdrvが0.75から0に減少したとき、摩擦補償割合Frは0.75から1に増加される。
すなわち、車線逸脱防止制御開始時にドライバの操舵操作によって摩擦補償トルクが減少し、その後、逸脱抑制制御中にドライバが操舵トルクを弱めてドライバの操舵操作がほぼ無くなった場合には、目標ヨーレートと実ヨーレートの乖離が発生する。その際に目標ヨーレートに向けてフィードバック制御が作動するが、フィードバック制御では目標ヨーレートと実ヨーレートの乖離を即時に補うことはできないため、車線逸脱防止性能が悪化する虞がある。このため、車線逸脱防止制御開始後にドライバ操舵トルクが変動しても摩擦補償割合の減少方向への変化を許容しないことで、摩擦補償トルクの減少による逸脱防止制御トルクの不足を防止する。
一方、姿勢決定制御中の摩擦トルクT_fric_rvは、摩擦補償割合Frを一定値に固定した摩擦補償トルクTp_fricとして算出される。本実施の形態においては、以下の(17)式に示すように、Fr=1すなわち、姿勢決定制御中の摩擦トルクT_fric_rvがそのまま摩擦補償トルクTp_fricとして算出され、レートリミット処理後の目標操舵トルクTp_limに加算される。
Tp_fric=T_fric_rv …(17)
次に、以上の操舵制御装置50で実行される車線逸脱防止制御に係るプログラム処理について、図6〜図9のフローチャートを用いて説明する。
先ず、車線逸脱防止制御ルーチンについて、図6のフローチャートに基づいて説明する。この車線逸脱防止制御ルーチンは、車線逸脱防止制御の開始条件が成立する場合、例えば、進行方向左側の車線を逸脱防止制御対象の車線とするとき、現在の自車両の対車線ヨー角θyawがθyaw≧0で逸脱方向を向いている条件、自車両が車線を逸脱するまでの車線逸脱推定時間Ttlcが車速Vと車線曲率κとによって決定される閾値Tth以下の条件が成立する場合に開始される。
操舵制御装置50は、車線逸脱防止制御ルーチンの最初のステップS1において、センサ信号、認識情報、制御情報等を入力する入力処理を行う。例えば、操舵制御装置50は、舵角センサ21、トルクセンサ22、回転角センサ23、車速センサ24、ヨーレートセンサ25等のセンサ類や図示しないスイッチ類からの信号、外部環境認識装置150からのカメラによる認識情報、通信バス200を介した他の制御装置からの制御情報を入力する。
次に、ステップS2へ進み、車線曲率旋回目標ヨーレートγtgt_lane及び逸脱防止挙動生成目標ヨーレートγtgt_turnを目標ヨーレートとして算出すると、ステップS3で、目標ヨーレートγtgtを実現するための目標操舵トルクTpを算出する。この目標操舵トルクTpは、車線曲率旋回目標ヨーレートγtgt_lane、逸脱防止挙動生成目標ヨーレートγtgt_turnをトルク変換したフィードフォワードトルクTp_ff_lane及びTp_ff_turnと、目標ヨーレートγtgtと実ヨーレートγとの偏差に基づくフィードバックトルクTp_fbとを加算したトルクとなる。但し、ドライバの逸脱防止方向への操舵操作が検出され、なおかつ目標ヨーレートに対し実ヨーレートがオーバーシュートしている場合には、フィードバックトルクTp_fbは零とされる。
その後、ステップS4へ進み、目標操舵トルクTpをレートリミッタ75に入力し、トルク変化速度を抑制するレートリミット処理を行い、ステップS5で図7の逸脱防止制御トルク算出ルーチンを実行し、レートリミット処理後の目標操舵トルクTpに摩擦補償トルクTp_fricを加算して逸脱防止制御トルクTp_cmdを算出する処理を行う。そして、ステップS6で、EPSモータ12を駆動するモータ駆動部20に逸脱防止制御トルクTp_cmdを出力する出力処理を行う。
以上の車線逸脱防止制御ルーチンのステップS5における図7の逸脱防止制御トルク算出ルーチンについて説明する。この逸脱防止制御トルク算出ルーチンは、最初のステップS11において、レートリミット後の目標操舵トルクTp_limが0か否かを調べる。Tp_lim=0の場合、ステップS11からステップS12へ進んで逸脱防止制御トルクTp_cmdを0とする。
一方、ステップS11においてTp_lim≠0の場合には、ステップS11からステップS13へ進んで操舵系の摩擦トルクT_fricを算出する。そして、ステップS14で図8,図9に示す摩擦補償割合及び逸脱防止制御トルク算出ルーチンを実行し、摩擦トルクT_fricから摩擦補償トルクTp_fricを設定して逸脱防止制御トルクTp_cmdを算出する。
次に、ステップS14における摩擦補償割合及び逸脱防止制御トルク算出ルーチンについて、図8,図9のフローチャートを用いて説明する。
摩擦補償割合及び逸脱防止制御トルク算出ルーチンでは、先ず、ステップS21,S22において、姿勢決定制御中の摩擦トルクT_fric_rv、逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwを算出する。本実施の形態においては、姿勢決定制御中の摩擦トルクT_fric_rv、逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwは、マップ参照によって得られる摩擦トルクT_fricに、それぞれ、所定のゲインを乗算する等して算出される。
続くステップS23では、逸脱抑制制御中のドライバの操舵操作による操舵トルク入力の有無を示すドライバトルクフラグを判定する。このドライバトルクフラグは、フラグONで逸脱抑制制御中のドライバの操舵トルク有り、フラグOFFでドライバの操舵トルク無し又は逸脱抑制制御を終了して姿勢決定制御に移行していることを示す。ステップS23でドライバトルクフラグのON,OFFを判定した後は、ステップS24へ進み、車線逸脱防止制御開始時か否かを調べる。
そして、車線逸脱防止制御開始時でない場合には、ステップS26へジャンプし、車線逸脱防止制御開始時の場合、ステップS25で大小比較の基準値をリセットする。この大小比較基準値リセットは、後述するステップS37において、制御周期毎に算出される摩擦補償割合の大小を比較して摩擦補償割合を増加方向にのみ可変するためのものであり、制御周期毎に更新される基準値を、車線逸脱防止制御開始時に所定値(例えば最小値0)にリセットする。
その後、ステップS26へ進んで現在逸脱抑制制御中か否かを判断する。逸脱抑制制御中か否かは例えばヨー角の変化量及び方向から判断することができる。
ステップS26で逸脱抑制制御中でない場合には、後述するステップS40へジャンプし、逸脱抑制制御中の場合、ステップS28へ進む。ステップS28では、車線逸脱方向が走行路のカーブに対して内側か外側かの判定結果を取得し、ステップS29で車速Vとカーブの曲率κとドライバ操舵トルクTdrvを取得する。
そして、ステップS30で曲率κ及びドライバ操舵トルクTdrvの絶対値を取得する絶対値処理を行ってステップS31へ進み、ドライバトルクフラグのON,OFF状態を調べる。ドライバトルクフラグがOFFの場合、ステップS32で摩擦補償割合Frを100%(Fr=1)に設定してステップS37へ進む。
一方、ドライバトルクフラグがONの場合には、ステップS33へ進んで直線走行中か否かを判断する。ここでの直線走行とは、カーブの内側/外側が判定できない曲率κ=0(1/m)の場合である。そして、直線走行中でない場合、ステップS34へ進んでカーブ内側/外側判定結果を参照し、カーブ内側を走行中か否かを調べる。
カーブ内側を走行中の場合、ステップS34からステップS35へ進み、車速Vと曲率κの絶対値とドライバ操舵トルクTdrvの絶対値とに基づいて、カーブ内側用マップより摩擦補償割合Frを算出する。このカーブ内側用マップは、直線走行中の場合にも用いられ、ステップS33で直線走行中と判断された場合も、カーブ内側用マップより摩擦補償割合Frを算出する。一方、ステップS34でカーブ内側でない場合には、ステップS34からステップS36へ進んで、車速Vと曲率κの絶対値とドライバ操舵トルクTdrvの絶対値とに基づいて、カーブ外側用マップより摩擦補償割合Frを算出する。
摩擦補償割合Frを算出した後は、ステップS37へ進み、摩擦補償割合Frの今回の値と前回の値とを比較して大小関係を調べ、摩擦補償割合Frの変化を増加方向のみ許容する。すなわち、摩擦補償割合Frの今回の値が前回の値よりも大きい場合、今回の値を摩擦補償割合Frとして算出・保持し、摩擦補償割合Frの今回の値が前回の値以下の場合には、前回の値を摩擦補償割合Frとして保持する。
そして、ステップS38で今回保持した摩擦補償割合Frを、前回の摩擦補償割合Frとして記憶することで、大小比較の基準値を更新し、ステップS39へ進む。ステップS39では、(16)式で説明したように、逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwに摩擦補償割合Frを乗算して摩擦補償トルクTp_fricを更新する。
その後、ステップS40へ進み、車線逸脱防止制御が非作動状態か否かを調べる。制御作動中の場合、ステップS41で逸脱抑制制御中か否かを調べて、逸脱抑制制御中か否かに応じて逸脱防止制御トルクTp_cmdを算出する。車線逸脱防止制御が非作動状態となった場合には、ステップS40からステップS44へ進む。
すなわち、ステップS41において逸脱抑制制御中の場合、ステップS41からステップS42へ進み、逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwを考慮した摩擦補償トルクTp_fricとして、逸脱抑制制御中の摩擦トルクT_fric_fwに摩擦補償割合Frを乗算した値をレートリミット処理後の目標操舵トルクTp_limに加算して、逸脱防止制御トルクTp_cmdを算出する。
一方、ステップS41において逸脱抑制制御中でない場合には、ステップS41からステップS43へ進み、姿勢決定制御中の摩擦トルクT_fric_rvを考慮した摩擦補償トルクTp_fricとして、姿勢決定制御中の摩擦トルクT_fric_rvをレートリミット処理後の目標操舵トルクTp_limに加算して、逸脱防止制御トルクTp_cmdを算出する。
ステップS40で車線逸脱防止制御が非作動状態となった場合には、ステップS40からステップS44へ進み、逸脱防止制御トルクTp_cmdを0とする。
このように本実施の形態においては、車線逸脱防止制御の開始時にドライバの操舵操作があった場合、ドライバの操舵トルクと自車両の走行状態とに基づいて目標操舵トルクに対する摩擦トルクの加算割合を可変制御するので、ドライバの操舵操作によってEPSモータ12への指示トルクに過不足が生じることがない。これにより、ドライバの操舵操作に応じて操舵系の摩擦を適正に補償することができ、ドライバに違和感を与えることなく車線逸脱を防止することができる。
1 電動パワーステアリング装置
12 電動パワーステアリングモータ(EPSモータ)
21 舵角センサ
22 トルクセンサ
23 回転角センサ
25 ヨーレートセンサ
50 操舵制御装置
60 目標ヨーレート算出部
70 目標トルク算出部
75 レートリミッタ(リミット処理部)
80 摩擦トルク推定部
85 摩擦補償割合可変制御部
150 外部環境認識装置

Claims (3)

  1. 自車両が走行する車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止制御を実行する車両の車線逸脱防止制御装置であって、
    前記車線からの逸脱を防止するために操舵系に付与する目標操舵トルクを算出する目標操舵トルク算出部と、
    前記操舵系の摩擦トルクを推定する摩擦トルク推定部と、
    前記目標操舵トルクに加算して前記操舵系の摩擦を補償する前記摩擦トルクの加算割合を、ドライバの操舵トルクと自車両の走行状態とに基づいて可変制御する摩擦補償割合可変制御部と
    前記目標操舵トルクの変化速度を抑制するレートリミット処理を行うリミット処理部と
    を備え
    前記摩擦補償割合可変制御部は、前記リミット処理部で前記レートリミット処理された前記目標操舵トルクに加算する前記摩擦トルクの加算割合を可変制御することを特徴とする車両の車線逸脱防止制御装置。
  2. 自車両が走行する車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止制御を実行する車両の車線逸脱防止制御装置であって、
    前記車線からの逸脱を防止するために操舵系に付与する目標操舵トルクを算出する目標操舵トルク算出部と、
    前記操舵系の摩擦トルクを推定する摩擦トルク推定部と、
    前記目標操舵トルクに加算して前記操舵系の摩擦を補償する前記摩擦トルクの加算割合を、ドライバの操舵トルクと自車両の走行状態とに基づいて可変制御する摩擦補償割合可変制御部と
    を備え、
    前記摩擦補償割合可変制御部は、前記加算割合を増加方向にのみ可変し、前記加算割合の減少方向への変化は許容しないことを特徴とする車両の車線逸脱防止制御装置。
  3. 自車両が走行する車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止制御を実行する車両の車線逸脱防止制御装置であって、
    前記車線からの逸脱を防止するために操舵系に付与する目標操舵トルクを算出する目標操舵トルク算出部と、
    前記操舵系の摩擦トルクを推定する摩擦トルク推定部と、
    前記目標操舵トルクに加算して前記操舵系の摩擦を補償する前記摩擦トルクの加算割合を、ドライバの操舵トルクと自車両の走行状態とに基づいて可変制御する摩擦補償割合可変制御部と
    を備え、
    前記車線逸脱防止制御は、前記車線からの逸脱を抑制するための逸脱抑制制御と、逸脱抑制後に自車両の姿勢を制御終了地点まで制御する姿勢決定制御とを切り換える制御であり、
    前記摩擦補償割合可変制御部は、前記摩擦トルク推定部で推定した前記摩擦トルクに基づいて、前記逸脱抑制制御中の摩擦トルクと前記姿勢決定制御中の摩擦トルクをそれぞれ算出し、さらに、前記逸脱抑制制御中の摩擦トルクの前記目標操舵トルクへの加算割合を可変制御し、前記姿勢決定制御中の摩擦トルクの前記目標操舵トルクへの加算割合を一定とすることを特徴とする車両の車線逸脱防止制御装置。
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