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JP6624438B2 - 疲労耐久性に優れた高引張強度モルタル - Google Patents

疲労耐久性に優れた高引張強度モルタル Download PDF

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JP6624438B2 JP2015253189A JP2015253189A JP6624438B2 JP 6624438 B2 JP6624438 B2 JP 6624438B2 JP 2015253189 A JP2015253189 A JP 2015253189A JP 2015253189 A JP2015253189 A JP 2015253189A JP 6624438 B2 JP6624438 B2 JP 6624438B2
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Description

本発明は、疲労耐久性に優れると共に、高い流動性によって狭間隙への自己充填性に優れ、かつ圧縮強度および引張強度の大きい繊維補強モルタルに関し、さらに好ましくは、可使時間が長く、長距離のポンプ圧送が可能である繊維補強モルタルに関する。
有機繊維や無機繊維を配合してモルタル強度を高めた繊維補強モルタルが従来から知られている。従来の繊維補強モルタルは、配合された繊維がモルタル粒子を拘束するので高い強度が得られる一方、繊維を含むことによってモルタルの流動性が低下し、狭間隙への自己充填性が低下する傾向がある。
繊維補強モルタルの自己充填性を改善するため、平均粒径1mm以下の針状粒子ないし薄片状粒子を所定量配合した水硬性組成物(特開2002−193655号)が知られており、また、比表面積の差が所定範囲になる比表面積の異なる二種の無機粉末を配合した水硬性組成物(特開2002−348166号)が知られている。さらに、繊維の含有量を1〜3vol%にし、繊維以外の材料を混合した際の粘度が一定範囲になるように配合量を調整することによってモルタルの流動性を高めた繊維補強セメント複合材料(特開2010−95406号)が知られている。
特開2002−193655号公報 特開2002−348166号公報 特開2010−095406号公報
特許文献1の水硬性組成物は針状粒子や薄片状粒子の選択および配合の調整が面倒であり、特許文献2の水硬性組成物は二種の無機粉末の選択や調整が面倒である。また特許文献3の維補強セメント複合材料は混練後の粘度に基づいて材料の配合量を決めるので施工が面倒であると云う不都合がある。
また、従来の繊維補強モルタルは、十分な流動性を維持しつつ、繰返し荷重に対する高い疲労耐久性を有することが難しいと云う問題がある。
さらに、従来の繊維補強モルタルは、混練直後の流動性が高くても、使用時間の経過につれて流動性がかなり低下するため、十分な可使時間を得るのが難しいと云う問題がある。
本発明は、高い圧縮強度および引張強度を有すると共に、十分な流動性を維持しつつ、繰返し荷重に対する高い疲労耐久性を有する繊維補強モルタルを提供する。さらに、好ましくは、混練後の一定時間まで高い流動性を保持して狭間隙への自己充填性に優れ、可使時間が長く施工性に優れた繊維補強モルタルを提供する。本発明のモルタルは、針状粒子や薄片状粒子を含有せず、かつ混練直後の粘度に基づいて材料の配合量を調整する必要が無いので施工性にも優れている。
本発明は以下の構成を有する高引張強度モルタルに関する。
〔1〕セメント、細骨材、ポゾラン質粉末混和材、補強繊維、および混和剤を含有するモルタルであり、セメント100重量部に対して、細骨材量50〜200重量部、ポゾラン質粉末混和材量2〜20重量部を含有し、該補強繊維が繊維径10μm〜30μmおよび繊維長さ4mm〜8mmのポリビニルアルコール系合成繊維であって、モルタル体積に対する補強繊維量が0.1〜0.3vol%であり、該混和剤が変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤であって、混和剤量が0.2〜2.0重量部であり、水粉体比9〜13%において、練混ぜ直後の静置フロー値が200mm以上であって、練混ぜ3時間までの静置フロー値が190mm以上であり、上限応力比65%における繰返し応力回数が150万回以上であり、材齢28日の圧縮強度が150N/mm以上であって、材齢28日の引張強度が7.0N/mm以上であることを特徴とする高引張強度モルタル。
〔2〕上限応力比80%における繰返し応力回数が1500回以上である上記[1]に記載する高引張強度モルタル。
〔3〕セメントがポルトランドセメントであり、ポゾラン質粉末がシリカフューム、シリカダスト、または微粉末シリカの何れか、あるいは、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、火山灰、または珪藻土の何れかである上記[1]または上記[2]に記載する高引張強度モルタル。
〔4〕練混ぜ直後のフロー値(Fa)に対する、10m圧送後〜40m圧送後のフロー値(Fb)の比(Fb/Fa)が0.90〜1.50である上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する高引張強度モルタル。
〔5〕練混ぜ直後の引張強度(Xa)に対する、10m圧送後〜40m圧送後の引張強度(Xb)の比(Xb/Xa)が0.90〜1.50である上記[1]〜上記[4]の何れか記載する高引張強度モルタル。
〔6〕アウイン−無水石膏系または酸化カルシウム−無水石膏系の粉末膨張材をセメント100重量部に対して2〜15重量部含有する上記[1]〜上記[5]の何れかに記載する高引張強度モルタル。
〔具体的な説明〕
以下、本発明の高引張強度モルタルについて具体的に説明する。なお、wt%は特に示す以外はモルタルの粉体全量に対する値である。
本発明のモルタルは、セメント、細骨材、ポゾラン質粉末混和材、補強繊維、および混和剤を含有するモルタルであり、セメント100重量部に対して、細骨材量50〜200重量部、ポゾラン質粉末混和材量2〜20重量部を含有し、該補強繊維が繊維径10μm〜30μmおよび繊維長さ4mm〜8mmのポリビニルアルコール系合成繊維であって、モルタル体積に対する補強繊維量が0.1〜0.3vol%であり、該混和剤が変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤であって、混和剤量が0.2〜2.0重量部であり、水粉体比9〜13%において、練混ぜ直後の静置フロー値が200mm以上であって、練混ぜ3時間までの静置フロー値が190mm以上であり、上限応力比65%における繰返し応力回数が150万回以上であり、材齢28日の圧縮強度が150N/mm以上であって、材齢28日の引張強度が7.0N/mm以上であることを特徴とする高引張強度モルタルである。
本発明のモルタルは、上限応力比Sが65%における繰返し応力回数Nが150万回以上の疲労耐久性を有し、好ましくは、さらに上限応力比Sが80%における繰返し応力回数Nが2000回以上の疲労耐久性を有する。
上記疲労耐久性は、旧JSTM C 7104「繰返し圧縮応力によるコンクリートの疲労試験方法」によって測定される。供試体が圧縮破壊する静的圧縮強度に対する一定比の荷重(上限応力比Sと下限応力比S10)の間で圧縮荷重を繰り返し加え、供試体が破壊する回数(N)によって疲労耐久性が示される。具体的には、上限応力比は静的圧縮強度の65%、70%、80%に相当する応力を、下限応力比は静的圧縮強度の10%に相当する応力とした。
本発明のモルタルは、上限応力比Sが65%における繰返し応力回数Nが150万回以上であり、好ましくは200万回以上である。また上限応力比Sが80%における繰返し応力回数Nが1500回以上であり、好ましくは2000回以上である。従来の繊維補強モルタルの疲労耐久性は、上限応力比65%における繰返し応力回数は1000〜2000回程度、上限応力比80%における繰返し応力回数は10〜30回程度であるのに対して、本発明のモルタルは格段に優れた疲労耐久性を有している。
本発明のモルタルは、水粉体比9〜13%において練混ぜ直後の静置フロー値が170mm以上の高い流動性を有する補強繊維モルタルであり、狭間隙への自己充填性に優れている。この流動性は、補強繊維の種類および含有量、混和剤の種類および含有量を選択することによって練混ぜ3時間までの静置フロー値が190mm以上の持続性の高い流動性を有することができる。
また、本発明の繊維補強モルタルは、材齢28日の圧縮強度が150N/mm2以上であって、材齢28日の引張強度が7.0N/mm以上、好ましくは材齢28日の引張強度が8.0N/mm以上の強度を有する。
本発明のモルタルは、水粉体比9〜13%において、好ましくは、練混ぜ直後の静置フロー値が200mm以上であって、練混ぜ3時間までの静置フロー値が190mm以上の持続性の長い流動性を有する。また、
本発明のモルタルは、長い圧送距離の後でもフロー値の変化が格段に小さい。具体的には、練混ぜ直後のフロー値(Fa)に対する、10m圧送後〜40m圧送後のフロー値(Fb)の比(Fb/Fa)は0.90〜1.50の範囲内であり、好ましくは0.95〜1.10の範囲内であり、圧送後のフロー値の変化が格段に小さい。
また、本発明のモルタルは、長い圧送距離の後でも、引張強度の変化が格段に小さい。具体的には、練混ぜ直後の引張強度(Xa)に対する、10m圧送後〜40m圧送後の引張強度(Xb)の比(Xb/Xa)は0.90〜1.50の範囲内であり、好ましくは0.95〜1.10の範囲内である。
本発明の高引張強度モルタルに使用するセメントは、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントなどの各種のポルトランドセメントを用いることができる。高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの混合セメントなどでもよい。強度を早期に発現させたい場合には早強ポルトランドセメントが好ましい。
ポゾラン質粉末混和材は、シリカフューム、シリカダストを用いることができ、または、高炉スラグ微粉末、フライアッシュなどの粉末を用いることができる。あるいは、珪石微粉末、火山灰、珪藻土などの天然ポゾラン類でもよい。シリカフュームやシリカダストはBET比表面積15m/g以上の粉末が好ましい。シリカフュームは、一般的に平均粒径が0.1μm程度であり、ポゾラン活性やマイクロフィラー効果、分散性、ボールベアリング効果などの点から好ましい。また、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、珪石微粉末、火山灰、珪藻土はブレーン値が3000g/cm以上の粉末が好ましい。
ポゾラン質粉末混和材の配合量は、セメント100重量部に対して、2〜20重量部が好ましい。2重量部未満では強度増進効果が得られない。また、20重量部を超えると流動性が低下して粘性が高くなり、狭間隙への充填用として使用し難い。
細骨材として、川砂、陸砂、海砂、砕砂、硅砂などを用いることができる。細骨材の配合量は、セメント100重量部に対して50〜200重量部が好ましい。50重量部未満では所要の流動性が得られず、また収縮量が多くなる。また、200重量部を超えると相対的にセメント量が不足するので、材料分離が生じやすくなり、強度が低下し所要の強度が得られない。
補強繊維は、ポリビニルアルコール系合成繊維(PVA繊維)、ナイロン繊維(Ny繊維)、またはアラミド繊維(Ar繊維)の何れか、またはこれらの混合繊維が好ましい。補強繊維の形状は、繊維径10μm〜30μmであって繊維長さ4mm〜10mmの大きさが好ましい。繊維径が10μm未満では繊維の強度が小さいので繊維を補強する効果が十分ではない。繊維径が30μmを上回り、また繊維長さが4mm未満では繊維の絡み付きが十分ではなく補強効果が低下する。一方、繊維長さが10mmを上回ると繊維のダマ(ファイバーボール)を生じやすいため繊維が分散し難くなり、時間経過による流動性の低下が大きくなる。
練混ぜ直後の静置フロー値が170mm以上の流動性を維持して材齢28日の引張強度7.0N/mm以上の強度を有するためには、補強繊維の含有量はモルタルの体積に対して0.1〜1.0vol%が好ましい。繊維の含有量が0.1vol%未満では引張り強度が不足し、7.0N/mm以上の引張強度(材齢28日)を有するのが難しい。一方、繊維の含有量が1.0vol%を上回ると、練混ぜ直後の静置フロー値が170mmを下回るようになり、狭間隙への充填性が低下する。
本発明のモルタルは、さらに練混ぜ直後の静置フロー値が200mm以上であって、練混ぜ3時間までの静置フロー値が190mm以上の持続性の長い流動性を有することができる。このような、流動性の持続性が長いモルタルに含まれる補強繊維は、繊維径10μm〜30μmおよび繊維長さ4mm〜8mmのポリビニルアルコール系合成繊維(PVA繊維)が好ましい。また該PVA繊維の含有量はモルタルの体積に対して0.1〜0.3vol%が好ましい。
アラミド繊維およびナイロン繊維は吸水性が高いので、混練水が繊維に吸収されてモルタルの自由水が不足するため流動性が低下する傾向があり、混練後3時間経過するまでの間に静置フロー値が190mmを下回り、十分な可使時間を得ることが難しくなる傾向がある。
本発明のモルタルは混和剤を含有する。混和剤を含有することによって流動性の高いモルタルを得ることができる。混和剤は、(イ)変性ポリカルボン酸を主成分とするもの、(ロ)ポリカルボン酸塩型共重合体(低水比対応型)、ポリエーテル・ポリカルボン酸(早期流動性発現型)、またはポリエチレングレコール基(低水比対応型)を主成分とするものなどを用いることができる。
練混ぜ直後の静置フロー値が170mm以上の流動性を有するためには、上記繊維量の範囲において、上記(イ)または上記(ロ)の混和剤の含有量は、セメント100重量部に対して0.2〜2.0重量部が好ましい。
さらに、練混ぜ直後の静置フロー値が200mm以上であって、練混ぜ3時間までの静置フロー値が190mm以上の持続性の長い流動性を有するには、変性ポリカルボン酸が主成分の混和剤を含有するものが好ましい。上記(ロ)のポリカルボン酸系混和剤およびポリエチレングレコール系混和剤は、繊維補強モルタルに使用した場合、何れも混練後に短時間で流動性が大幅に低下する。
具体的には、水粉体比11%において、例えば、ポリエーテル・ポリカルボン酸系混和剤を用いたモルタル、またはポリエチレングレコール系混和剤を用いたモルタルは、何れも混練直後の静置フロー値が約290mm程度であったものが、混練2時間後には静置フロー値が約150mm以下に急激に低下するので、十分な可使時間を得ることが難しい。
一方、変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤を用いた繊維補強モルタルでは、例えば、水粉体比11%において、混練直後のモルタルのフロー値が約290mmのとき、混練2時間経過時のフロー値は約255mm、混練3時間経過時のフロー値は約240mmであり(実施例5、表9、PVA0.1vol%、繊維長4mm)、混練3時間経過しても高い流動性を有し、可使時間を長く維持することができる。
変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤の配合量は、持続性の長い流動性を有するには、セメント100重量部に対して0.2〜2.0重量部が好ましい。該混和剤が0.2重量部未満であると流動性が低く、硬化後の引張強度も向上しない。一方、該混和剤の量が2.0重量部を上回っても流動性はあまり変らない(実施例6、表10)。混和剤の添加量が過剰であると凝結遅延を招き、初期強度が低下するので好ましくない。
本発明のモルタルには膨張材を含有することができる。膨張材はアウイン−無水石膏系または酸化カルシウム−無水石膏系の粉末膨張材を用いると良い。膨張材を配合することによって、モルタルの効果収縮や乾燥収縮を低減でき、型枠とモルタル間の肌分かれを防止することができる等の効果を得ることができる。膨張材の配合量はセメント100重量部に対して2〜15重量部が好ましい。
本発明のモルタルは、上限応力比65%における繰返し応力回数が150万回以上であり、さらに好ましくは上限応力比80%における繰返し応力回数が1500回以上の優れた疲労耐久性を有するので、モルタルの品質を長期間にわたり安定に保つことがでる。
本発明のモルタルは水粉体比9〜13%において練混ぜ直後の静置フロー値が170mm以上の高い流動性を有するので、狭隙間に対しても優れた自己充填性を発揮する。また、本発明のモルタルは針状粒子や薄片状粒子を含有せず、かつ混練直後の粘度に基づいて材料の配合量を調整する必要が無いので施工性にも優れている。
本発明のモルタルは、水粉体比9〜13%において、練混ぜ直後の静置フロー値が200mm以上であって、練混ぜ3時間までの静置フロー値が190mm以上の持続性の長い流動性を有することができるので、可使時間を長く保持することができる。従って、長時間にわたって高い自己充填性を発揮する。
また、本発明のモルタルは、長い圧送距離でもフロー値が殆ど変化せず、優れたポンプ圧送性を有する。具体的には、例えば、練混ぜ直後のフロー値(Fa)に対する、10m圧送後〜40m圧送後のフロー値(Fb)の比(Fb/Fa)は0.90〜1.50の範囲内であり、長距離のポンプ圧送でもフロー値の変化が格段に小さい。
さらに、本発明のモルタルは、長い圧送距離の後でも、引張強度の変化が格段に小さい。具体的には、練混ぜ直後の引張強度(Xa)に対する、10m圧送後〜40m圧送後の引張強度(Xb)の比(Xb/Xa)は0.90〜1.50の範囲内である。
さらに、本発明のモルタルは、硬化後、材齢1日の圧縮強度が100N/mm以上の高い初期強度を有しており、1日程度の初期材齢でプレストレスの導入や軸力を掛けることが可能になる。また、材齢28日の引張強度が7.0N/mm以上、好ましくは8.0N/mm以上であり、高い引張強度を有するので、引張荷重を繰返し受けるような接合部でも構造的な破壊を確実に回避することができる。
実施例3のフロー値のグラフ。 実施例3の引張強度のグラフ。 実施例4のフロー値のグラフ。 実施例5のPVA0.1%のフロー値のグラフ。 実施例5のPVA0.2%のフロー値のグラフ。 実施例5のPVA0.3%のフロー値のグラフ。 実施例5の引張強度のグラフ。 実施例7のフロー値のグラフ 実施例7の吐出圧力のグラフ 実施例7の引張強度のグラフ 実施例8の型枠の概略図 実施例8の型枠の上端平面図
以下、本発明の実施例を示す。
〔使用材料〕
モルタルの材料として表1に示す材料を用いた。補強繊維の種類および混入量を表2に示す。モルタルの配合量比を表3に示す。
〔試験方法、試験水準〕
試験方法、試験水準を以下に示す。試験環境温度は何れも30℃である。
(イ) 疲労耐久性の試験は、旧JSTM C 7104:1999「繰返し圧縮応力によるコンクリートの疲労試験方法」に準拠した。試験水準は、静的圧縮強度160N/mmにおいて、上限応力比(S)が80%、70%、65%の3水準、下限応力比は10%、繰返し速度は10Hzとし、繰返し応力回数(N)を測定した。
である。供試体寸法はφ50×100mmである。
(ロ) モルタルのフロー値はJIS-R-5201:1997に従い、0打でのフロー(静置フロー値)を測定した。
(ハ) 引張強度はJIS-A-1113:2006に従い、φ50×100mm(材齢28日)の供試体について測定した。圧縮強度はJIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に従い、φ50×100mm(材齢28日)の供試体について測定した。
Figure 0006624438
Figure 0006624438
Figure 0006624438
〔実施例1〕
表1および表2の材料を用い、表3に示す配合比に従って、セメント、細骨材、繊維、混和材、混和剤、膨張材を配合し、水粉体比11%に調整して繊維補強モルタルを製造した。この繊維補強モルタルについて、φ50×100mmの供試体を作成し、材齢28日において、繰返し応力回数(N)を測定した。試験水準は、上限応力比(S)が静的圧縮強度の80%、70%、65%の3水準、下限応力比(S10)は静的圧縮強度の10%、繰返し速度は10Hzである。この結果を表4に示した。
表4に示すように、補強繊維としてPVA繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維を用い、該繊維の含有量が0.1〜1.0vol%のモルタル(試料A1〜A13)は、練混ぜ直後の静置フロー値が170mm以上であって、上限応力比65%における繰返し応力回数が150万回以上であり、上限応力比80%における繰返し応力回数が1500回以上である。また、材齢1日の圧縮強度が100N/mm以上であり、材齢28日の引張強度が7.0N/mm以上である。
一方、該繊維の含有量が0.05vol%の試料A14は繊維量が少なすぎるので、上限応力比65%における繰返し応力回数、および上限応力比80%における繰返し応力回数が何れも試料A1〜A13の繰返し応力回数より大幅に低い。また、該繊維の含有量が1.5vol%の試料A15は繊維量が多すぎるので、練混ぜ直後の静置フロー値が170mmより小さい。従って、繊維の含有量は0.1〜1.0vol%の範囲が好ましい。
また、繊維長さが1mmの試料A12は繊維含有量が0.2vol%でも繰返し応力回数が少なく、繊維長さが12mmの試料A13は繊維含有量が0.2vol%でも練混ぜ直後の静置フロー値が170mmより小さい。従って、補強繊維の繊維長さは4mm〜10mmが好ましい。また、使用繊維の繊維径から補強繊維の繊維径は10μm〜30μmが好ましい。
Figure 0006624438
〔実施例2〕
表1および表2の材料を用い、表5に示す配合比に従って、セメント、細骨材、繊維、混和材、混和剤、膨張材を配合し、水粉体比9〜13に調整して繊維補強モルタルを製造した。この繊維補強モルタルについて、実施例1と同様の試験を行った。この結果を表6に示す。表6に示すように、セメント100重量部に対して、細骨材量50〜200重量部、ポゾラン質粉末混和材2〜20重量部、混和剤0.2〜2.0重量部の範囲で、練混ぜ直後の静置フロー値が170mm以上であって、上限応力比65%における繰返し応力回数が150万回以上であり、上限応力比80%における繰返し応力回数が1500回以上である。また、材齢1日の圧縮強度が100N/mm以上であり、材齢28日の引張強度が7.0N/mm以上である。
Figure 0006624438
Figure 0006624438
〔実施例3〕
表1および表2に示す材料を用い、繊維の配合量を表7に示すように0.1vol%、0.3vol%、0.5vol%にしてモルタルを調製した。このモルタルについて、混練直後のフロー値と材齢28日の引張強度を測定した。この結果を表7、および図1、図2に示した。
上記結果に示すように、ナイロン繊維を配合したモルタルは繊維量約0.5vol%でも混練直後のフロー値は約200mmであり流動性が良いが、材齢28日の引張強度は約7.5N/mm以下であり、硬化後の引張強度はPVA繊維およびアラミド繊維より低い。アラミド繊維を配合したモルタルは繊維量約0.5vol%において材齢28日の引張強度は約8.4N/mmと高いが、混練直後のフロー値は約110mmであり、流動性がPVA繊維およびナイロン繊維より低い。一方、PVA繊維を配合したモルタルは、繊維量約0.1vol%〜0.5vol%で材齢28日の引張強度は8.0N/mm以上と高く、一方、混練直後のフロー値は207mm〜147mmであり、アラミド繊維を用いたモルタルよりも流動性が高い。この結果によれば、引張強度とフロー値の両方を高めるにはPVA繊維がナイロン繊維およびアラミド繊維よりも有利である。
Figure 0006624438
〔実施例4〕
表2に示すPVA繊維(繊維径26μm、繊維長さ6mm)を用い、繊維量0.1vol%としたほかは表3の配合に従い、表8に示す混和剤を用いたモルタルを調製した。このモルタルについて混練直後、1時間経過、2時間経過、3時間経過の各フロー値を測定した。
この結果を表8、図3に示す。
この結果に示すように、ポリカルボン酸塩型共重合体を主成分とする混和剤(PM)を配合したモルタルのフロー値は混練直後207mmであるが、混練2時間後100mmに大幅に低下する。ポリエーテル・ポリカルボン酸を主成分とする混和剤(6681)を配合したモルタル、およびポリエチレングレコール基を主成分とする混和剤(FS)のフロー値は、混練直後288mm、290mmと高いが、混練2時間後155mm、139mmに低下し、混練3時間後には何れも100mmまで大幅に低下する。
一方、変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤(AP)を配合したモルタルのフロー値は、混練直後290mmと高く、混練3時間後でも240mmと高い流動性を保持している。この結果から、変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤を用いるのが好ましいことが分かる。従来から常用されているポリカルボン酸塩型共重合体を主成分とする混和剤やポリエーテル・ポリカルボン酸を主成分とする混和剤はポリカルボン酸系であっても、繊維補強モルタルにおいて、本発明と同様の流動性を有するのは難しい。
Figure 0006624438
〔実施例5〕
繊維長4mm、6mm、8mm、10mmのPVA繊維(繊維径26μm)を用い、繊維量を0.1vol%、0.2vol%、0.3vol%とし、混和剤として変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤(AP)をセメント100重量部に対して0.6重量部配合し、水粉体比11%のモルタルを調製した。このモルタルについて混練直後、1時間経過、2時間経過、3時間経過の各フロー値および材齢28日の引張り強度を測定した。この結果を表9、図4〜図7に示す。
この結果に示すように、PVA繊維について繊維長が10mmのモルタルは繊維量が0.1〜0.3vol%の何れの場合にもフロー値が大幅に減少する。一方、繊維長4mm〜8mmのモルタルは繊維量が0.1〜0.3vol%の何れの場合にもフロー値が190mm以上であり、高い流動性を有する。従って、繊維長は4mm〜8mmが好ましい。また、図7に示すように、繊維長4mm〜10mmのPVA繊維は繊維量0.1〜0.3vol%の何れの場合にも、硬化後の引張強度は8.0N/mm以上であり、高い引張強度を有する。
Figure 0006624438
〔実施例6〕
繊維長6mmのPVA繊維(繊維径26μm)を用い、繊維量を0.1vol%一定にし、混和剤として変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤(AP)を用い、該APの添加量をセメント100重量部に対して0.1〜3.0重量部にし、その他は実施例5と同様にして水粉体比11wt%のモルタルを調製した。このモルタルの混練直後、1時間経過、2時間経過、3時間経過の各フロー値、材齢1日の圧縮強度および材齢28日の引張り強度を測定した。この結果を表10に示す。
この結果に示すように、混和剤の添加量が0.1重量部では、3時間経過後にフロー値が190mm以下になり、所要の流動性が得られなくなる。また、混和剤添加量が3.0重量部になると材齢1日の初期圧縮強度が低下する。一方、混和剤の添加量が0.2〜2.0重量部の範囲では、フロー値およびその時間変化は少なく、また、圧縮強度および引張強度の物性も所要の値を満足する。
Figure 0006624438
〔実施例7〕
繊維長6mmのPVA繊維(繊維径26μm)を用い、繊維量を0.1vol%にし、混和剤として変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤(AP)を用い、該APの添加量をセメント100重量部に対して0.6重量部にし、その他は実施例5と同様にして、水粉体比11wt%のモルタルを調製した。このモルタルを用いてポンプ圧送試験を実施し、水平圧送距離の違いが高強度モルタルの物性に与える影響や、ポンプ圧送時の圧力を計測した。試験は練混ぜ直後と水平圧送距離(10〜40m)ごとに採取した5試料について行った。
フロー値および吐出圧力および引張強度は練混ぜ直後から水平圧送距離10〜40mまで測定した。また、吐出量は水平圧送距離40mにおいて計測した。この結果を表11、図8〜図10に示す。
表11に示すように、圧送後のフローの変化は小さく、練混ぜ直後のフロー値(Fa)に対する圧送後のフロー値(Fb)の比(Fb/Fa)は0.90〜1.50の範囲内であり、具体的には0.98〜1.05である。また、圧送後の引張強度の変化も小さく、練混ぜ直後の引張強度(Xa)に対する圧送後の引張強度(Xb)の比(Xb/Xa)は0.90〜1.50の範囲内であり、具体的には0.98〜1.06である。
また、ポンプ圧送40m後の吐出量は公称能力とほぼ同等であること(測定値0.744m/h、公称0.800m/h)から、当該モルタルのポンプ圧送性は良好であることが示された。吐出圧力は水平圧送距離が長くなるほど高くなる傾向にあるものの、圧送距離が長くなるにつれてその勾配が緩慢になる。これは、ポゾラン物質として添加した微小の球形粒子であるシリカフュームのボールベアリング効果により、ホース壁面とモルタルの摩擦が大幅に低減されることによりもたらされるものと考えられる。およそ、100m以上の水平距離を圧送することが可能である。また、材齢28日引張強度は水平圧送距離の違いによる影響は小さく、ほぼ同等であった(8.0〜8.5N/mm)。
Figure 0006624438
〔実施例8〕
繊維長6mmのPVA繊維(繊維径26μm)を用い、繊維量を0.1vol%にし、混和剤として変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤(AP)を用い、該APの添加量をセメント100重量部に対して0.6重量部にし、その他は実施例5と同様にして、水粉体比11wt%のモルタルを調製した。
図11、図12に示す二重型枠A(外枠10:縦400mm×横400mm×高さ900mm、内枠20と外枠の隙間、a:20mm、b:30mm、c:40mm、d:60mm)を用い、該型枠Aの外枠10と内枠20の隙間a〜dに型枠下部の注入管30を通じて上記モルタルを圧力注入し、モルタル充填の様子を確認した。充填開始後、注入孔から各隙間a〜dに上記モルタルが一様に広がっていくことが確認できた。また、最も間隙の狭い隙間a(20mm)への充填も可能であることを確認した。また、充填中に隙間d(60mm)と隙間a(20mm)について型枠上端からの深さを同時に測定したところ、何れの隙間の充填高さ(上端からの深さ)は同じ値であり、隙間の寸法にかかわらず同等に充填され、充填高さが水平に保たれることを確認した。さらに各隙間の肌面は、材料分離や未充填個所および気泡等は確認されず、密実に充填されていることが確認された。
10−外枠、20−内枠、30−注入管。

Claims (6)

  1. セメント、細骨材、ポゾラン質粉末混和材、補強繊維、および混和剤を含有するモルタルであり、セメント100重量部に対して、細骨材量50〜200重量部、ポゾラン質粉末混和材量2〜20重量部を含有し、該補強繊維が繊維径10μm〜30μmおよび繊維長さ4mm〜8mmのポリビニルアルコール系合成繊維であって、モルタル体積に対する補強繊維量が0.1〜0.3vol%であり、該混和剤が変性ポリカルボン酸を主成分とする混和剤であって、混和剤量が0.2〜2.0重量部であり、水粉体比9〜13%において、練混ぜ直後の静置フロー値が200mm以上であって、練混ぜ3時間までの静置フロー値が190mm以上であり、上限応力比65%における繰返し応力回数が150万回以上であり、材齢28日の圧縮強度が150N/mm以上であって、材齢28日の引張強度が7.0N/mm以上であることを特徴とする高引張強度モルタル。
  2. 上限応力比80%における繰返し応力回数が1500回以上である請求項1に記載する高引張強度モルタル。
  3. セメントがポルトランドセメントであり、ポゾラン質粉末がシリカフューム、シリカダスト、または微粉末シリカの何れか、あるいは、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、火山灰、または珪藻土の何れかである請求項1または請求項2に記載する高引張強度モルタル。
  4. 練混ぜ直後のフロー値(Fa)に対する、10m圧送後〜40m圧送後のフロー値(Fb)の比(Fb/Fa)が0.90〜1.50である請求項1〜請求項3の何れかに記載する高引張強度モルタル。
  5. 練混ぜ直後の引張強度(Xa)に対する、10m圧送後〜40m圧送後の引張強度(Xb)の比(Xb/Xa)が0.90〜1.50である請求項1〜請求項4の何れか記載する高引張強度モルタル。
  6. アウイン−無水石膏系または酸化カルシウム−無水石膏系の粉末膨張材をセメント100重量部に対して2〜15重量部含有する請求項1〜請求項5の何れかに記載する高引張強度モルタル。
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