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JP6670081B2 - オレフィン類重合用触媒の製造方法 - Google Patents

オレフィン類重合用触媒の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、オレフィン類重合用触媒の製造方法に関する。
従来より、オレフィン類重合用触媒として、チタンなどの遷移金属触媒成分とアルミニウムなどの典型金属触媒成分とからなる固体触媒が広く知られている。
オレフィン類重合用触媒は、マグネシウム化合物を担体として用いた担持型触媒の登場により、重合活性が飛躍的に増大し、さらにエステル化合物などの電子供与体を添加することで、炭素原子数3以上のα-オレフィンから立体規則性の高い重合体を製造することも可能となっている。
たとえば、特許文献1(特開昭57−63310号公報)には、フタル酸エステル等の電子供与性化合物が担持された固体状チタン触媒成分と、助触媒成分として有機アルミニウム化合物と、少なくとも一つのSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物とを用いて、プロピレンを重合させる方法が提案されており、上記特許文献を含め多くの文献において電子供与性化合物としてフタル酸エステルを使用し、高立体規則性ポリマーを高収率で得る方法が提案されている。
しかしながら、フタル酸エステルの一種であるフタル酸ジ−n−ブチルやフタル酸ベンジルブチルは、欧州のRegistration,Evaluation,Authorization and Restriction of Chemicals(REACH)規制におけるSubstance of Very High Concern(SVHC)として特定されており、環境負荷低減の観点から、SVHC物質を使用しない触媒系への転換要求が高まっている。
SVHC規制対象とされていない電子供与性化合物として、コハク酸エステル、マレイン酸エステル、マロン酸エステル、ジエーテル等を用いた固体触媒成分が知られている。
特開昭57−63310号公報
しかしながら、SVHC規制対象とされていない電子供与性化合物を用いた固体触媒成分は、フタル酸エステルを用いた固体触媒成分と同等の性能を発揮し難く、特に、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で固体触媒成分と有機アルミニウム化合物および外部電子供与性化合物を接触させるプロセスが存在する重合設備においては、SVHC規制対象物質とされていない電子供与性化合物を用いた固体触媒成分は著しく活性を低下させる傾向があることから、さらなる改良が求められるようになっていた。
このような状況下、本発明は、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分を用いる場合において、不活性ガス雰囲気中で重合触媒を調製した場合であっても、重合処理時に優れた触媒活性を示し、立体規則性、溶融流れ性等に優れる重合体を製造し得るオレフィン類重合用触媒の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子およびフタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物を含む固体触媒成分(A)、特定の有機アルミニウム化合物(B)および外部電子供与性化合物(C)を、オレフィン類の非存在下、15℃未満の温度で30分間以下の時間接触させる予備接触処理を施してオレフィン類重合用触媒を調製することにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子と、フタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物を含む固体触媒成分(A)、下記一般式(I);
AlQ3−p (I)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物(B)および外部電子供与性化合物(C)を、
オレフィン類の非存在下、10℃以下の温度で15分間以下の時間接触させる予備接触処理を施す
ことを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法、
(2)前記フタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物が、エステル基、カーボネート基およびエーテル基から選ばれる一種以上の基を有する化合物である上記(1)に記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法、
(3)前記フタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物が、コハク酸ジエステル、マロン酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、シクロヘキセンカルボン酸ジエステル、エーテルカルボン酸エステル、ジカーボネート、カーボネート−エーテルから選ばれる少なくとも一種である上記(1)または(2)に記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法、
(4)前記予備接触処理時の処理温度が−15℃〜10℃である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法、
(5)前記予備接触処理時の処理時間が5秒間〜15分間である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法
を提供するものである。
なお、以下、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子およびフタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物を含む固体触媒成分(A)を、適宜、固体触媒成分(A)または固体触媒成分と称するものとする。
本発明によれば、不活性ガス雰囲気下においてオレフィン類と接触させる前に、オレフィン類の非存在下、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子およびフタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物を含む固体触媒成分(A)と、助触媒である特定の有機アルミニウム化合物(B)と、外部電子供与性化合物(C)とを低温でかつ短時間接触させることにより、触媒活性点の失活を抑制しつつ、電子供与性化合物(c)に対する特定の有機アルミニウム化合物(B)の作用を向上させ、固体触媒成分を最適に活性化し得ると考えられ、このために、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分を用いる場合において、不活性ガス雰囲気中で重合触媒を調製した場合であっても、重合処理時に優れた触媒活性を示し、立体規則性、溶融流れ性等に優れる重合体を製造し得るオレフィン類重合用触媒の製造方法を提供することができる。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法は、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子およびフタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物を含む固体触媒成分(A)、下記一般式(I);
AlQ3−p (I)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物(B)および外部電子供与性化合物(C)を、
オレフィン類の非存在下、15℃未満の温度で30分間以下の時間接触させる予備接触処理を施す
ことを特徴とするものである。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法において、固体触媒成分(A)は、マグネシウム化合物(a)、チタンハロゲン化合物(b)およびフタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物(c)を接触させて得られるものであることが好ましい。
上記マグネシウム化合物(a)としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等から選ばれる一種以上が挙げられる。
これらのマグネシウム化合物の中、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムとジアルコキシマグネシウムの混合物、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、特にジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的にはジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられ、これらのうち、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。
また、上記ジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲン含有有機金属等の存在下にアルコールと反応させて得たものであってもよい。
さらに、上記ジアルコキシマグネシウムとしては、顆粒状または粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものであってもよい。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ易く、重合操作時の生成重合体粉末の取り扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する重合体の分離装置におけるフィルターの閉塞等の問題が容易に解決される。
上記ジアルコキシマグネシウムは、単独あるいは2種以上併用することもできる。
また、球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものであってもよい。具体的には、粒子形状が、長軸径Lと短軸径Wとの比(L/W)が3以下であるものが好ましく、1〜2であるものがより好ましく、1〜1.5であるものがさらに好ましい。
さらに、上記ジアルコキシマグネシウムは、平均粒径が1〜200μmのものが好ましく、5〜150μmのものがより好ましい。
上記ジアルコキシマグネシウムが球状のものである場合、その平均粒径は1〜100μmが好ましく、5〜80μmがより好ましく、10〜60μmがさらに好ましい。
また、上記ジアルコキシマグネシウムの粒度は、微粉及び粗粉が少なく、かつ粒度分布の狭いものが好ましい。
具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であるものが好ましく、5μm以下の粒子が10%以下であるものがより好ましい。一方、100μm以上の粒子が10%以下であるものが好ましく、100μm以上の粒子が5%以下であるものがより好ましい。
更にその粒度分布をD90/D10(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒度である。)で表すと3以下であるものが好ましく、2以下であるものがより好ましい。
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムを製造する方法は、例えば、特開昭58−4132号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報等に例示されている。
上記、チタンハロゲン化合物(b)としては、特に制限されないが、チタンテトラハライドおよびアルコキシチタンハライド等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
チタンハロゲン化合物(b)としては、一般式Ti(OR4−i(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、iは0以上4以下の整数である。)で表されるチタンテトラハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される一種の化合物であることが好ましい。
チタンハロゲン化合物(b)として、具体的には、チタンハライドとして、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが例示され、アルコキシチタンハライドとして、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。
チタンハロゲン化合物(b)のうち、チタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。
固体触媒成分(A)において電子供与性化合物として使用される、フタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物(c)は、フタル酸エステル構造を有さず、エステル基、カーボネート基およびエーテル基から選ばれる一種以上の基を有する有機化合物であることが好ましい。
電子供与性化合物(c)がエステル基を有する化合物である場合、1〜3個のエステル残基を有する化合物が好ましく、エステル残基を1つ有するモノカルボン酸エステル、エステル残基を2つ有するジカルボン酸ジエステル、エステル残基を3つ以上有するポリカルボン酸ポリエステル、エステル残基とアルコキシ基を其々1個ずつ有するエーテル−カルボン酸エステル、ジオールエステル、ポリオールエステルおよび置換フェニレン芳香族ジエステル等を挙げることができ、コハク酸ジエステル、マロン酸ジエステル、マレイン酸ジエステルおよびシクロヘキセンカルボン酸ジエステル等が好適である。
上記の中でも、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル、p−トルイル酸エステル、アニス酸エステル等のモノカルボン酸エステル、マレイン酸ジエステル、2,3−ジアルキルコハク酸ジエステル、ベンジリデンマロン酸ジエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステル等のジカルボン酸ジエステル類、3−エトキシ−2−イソプロピルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−イソブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ペンチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−シクロヘキシルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−シクロペンチルプロピオン酸エチル等のエーテル−カルボン酸エステル類、および2,4−ペンタンジオールジベンゾエート、3−メチル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアート、3,5−ジイソプロピル−1,2−フェニレンジベンゾアート等のジオールエステル類が好ましく、特に好ましいものは、マレイン酸ジエチル、ベンジリデンマロン酸ジエチル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、3−エトキシ−2−イソプロピルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ペンチルプロピオン酸エチル、2,4−ペンタンジオールジベンゾエート、3−メチル−2,4−ペンタンジオールジベンゾエート、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアート、3,5−ジイソプロピル−1,2−フェニレンジベンゾアート等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
電子供与性化合物(c)が、カーボネート基を有する化合物である場合、1〜3個のカーボネート基を有する化合物が好ましく、カーボネート基とアルコキシ基を其々1個ずつ有するカーボネート−エーテル、カーボネート基とエステル残基を其々1個ずつ有するカーボネート−エステル、またはカーボネート基とカルボキシル基を其々1個ずつ有する化合物、カーボネート基を2個有するジカーボネート、カーボネート基を3個以上有するポリカーボネート等が挙げられる。中でも、カーボネート−エーテル、カーボネート−エステルおよびジカーボネートが好ましく、特に好ましいものは、2−エトキシエチルメチルカーボネート、2−プロポキシエチルメチルカーボネート、2−ベンジルオキシエチルフェニルカーボネート、5−t−ブチル−1,2−フェニレンジフェニルジカーボネートである。
電子供与性化合物(c)が、エーテル基を有する化合物である場合、1個のエーテル基を有する化合物、フルオレン構造を有する化合物、あるいは炭素数3〜7のアルキル基もしくはシクロアルキル基を1〜2個有するジエーテル構造の化合物が好ましく、具体的には、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミールエーテル等のモノエーテル類、ジフェニルエーテル、2,2−ジアルキル-1,3−ジアルコキシプロパン、2,2−ジシクロアルキル−1,3−ジメトキシプロパン、および9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン等のジエーテル類から選ばれる一種以上を挙げることができ、エーテルカルボン酸エステル等が好適である。
上記の中でも特に好ましいものは、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンである。
電子供与性化合物(c)としては、コハク酸ジエステル、マロン酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、シクロヘキセンカルボン酸ジエステル、ジカーボネート、カーボネート−エーテルおよびエーテルカルボン酸エステルから選ばれる少なくとも一種以上であることが好ましい。
固体触媒成分(A)は、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物(c)を含むものであるが、後述するように、特定の有機アルミニウム化合物(B)および外部電子供与性化合物(C)を、オレフィン類の非存在下、15℃未満の温度で30分間以下の時間接触させる予備接触処理を施してオレフィン類重合用触媒を調製することにより、重合処理時に優れた触媒活性を示し、立体規則性、溶融流れ性等に優れた重合体を製造することができる。
固体触媒成分(A)は、ポリシロキサンを含むものであってもよい。
この場合、固体触媒成分(A)としては、上述した、マグネシウム化合物(a)、チタンハロゲン化合物(b)およびとしてフタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物(c)とともにさらにポリシロキサンを接触させてなるものを挙げることができる。
ポリシロキサンを接触させることにより、得られるポリマーの立体規則性あるいは結晶性を容易に向上させることができ、さらには得られるポリマーの微粉を容易に低減することができる。
ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm/s(2〜1000センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘ちょう状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンを意味する。
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルキクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
固体触媒成分(A)は、マグネシウム化合物(a)、チタンハロゲン化合物(b)および電子供与性化合物(c)と、さらに必要に応じてポリシロキサンとを、不活性有機溶媒の存在下に接触させることによって調製してなるものであることが好ましい。
上記不活性有機溶媒としては、チタンハロゲン化合物(b)を溶解しかつマグネシウム化合物(a)は溶解しないものが好ましく、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2−ジエチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、デカリン、ミネラルオイル等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記不活性有機溶媒としては、沸点が50〜200℃程度の、常温で液状の飽和炭化水素化合物あるいは芳香族炭化水素化合物が好ましく用いられ、中でも、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチルシクロヘキサン、ミネラルオイル、トルエン、キシレン、エチルベンゼンから選ばれる一種以上が好ましい。
固体触媒成分(A)の調製方法としては、例えば、マグネシウム化合物(a)および電子供与性化合物(c)を、不活性有機溶媒(沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物等)に懸濁させて懸濁液を形成し、チタンハロゲン化合物(b)および不活性有機溶媒(芳香族炭化水素化合物等)から形成した混合溶液を上記懸濁液に接触させ、反応させる調製方法を挙げることができる。
また、固体触媒成分(A)の調製方法としては、マグネシウム化合物(a)を、チタンハロゲン化合物(b)または不活性有機溶媒(芳香族炭化水素化合物等)に懸濁させ、次いで電子供与性化合物(c)と、更に必要に応じてチタンハロゲン化合物(b)を接触させ、反応させる調製方法を挙げることができる。
本調製方法においては、マグネシウム化合物(a)として、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな触媒成分を得ることができ、結果として同様の形態を有する固体触媒成分(A)を得ることができる。また、球状のマグネシウム化合物(a)を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができる。
マグネシウム化合物(a)、チタンハロゲン化合物(b)および電子供与性化合物(c)と、さらに必要に応じてポリシロキサン等とを接触して固体触媒成分(A)を調製する場合、各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
具体的には、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、攪拌機を具備した容器中で、各成分を攪拌しながら接触させることができる。
接触温度は、単に接触させて攪拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましく、この場合、接触後に同温度で保持して反応させることが好ましい。
上記温度が40℃未満の場合は十分に反応が進行せず、結果として得られる固体触媒成分が十分な性能を発揮し難くなり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。
反応時間は1分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上がさらに好ましい。
固体触媒成分(A)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため、適宜決定すればよい。
固体触媒成分(A)を調製する際、マグネシウム化合物(a)1モルあたり、チタンハロゲン化合物(b)を0.5〜100モル接触させることが好ましく、0.5〜10モル接触させることがより好ましく、1〜5モル接触させることがさらに好ましい。
また、触媒成分を調製する際、マグネシウム化合物(a)1モルあたり、電子供与性化合物(c)を0.01〜10モル接触させることが好ましく、0.01〜1モル接触させることがより好ましく、0.02〜0.6モル接触させることがさらに好ましい。
触媒成分を調製する際、ポリシロキサンを使用する場合は、マグネシウム化合物(a)1モルあたり、ポリシロキサンを0.01〜100g接触させることが好ましく、0.05〜80g接触させることがより好ましく、1〜50g接触させることがさらに好ましい。
また、触媒成分を調製する際、芳香族炭化水素化合物等の不活性有機溶媒の使用量は、マグネシウム化合物(a)1モルあたり、0.001〜500モルであることが好ましく、0.001〜70モルであることがより好ましく、0.005〜50モルであることがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法において、固体触媒成分(A)を構成するチタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子および電子供与性化合物の含有量は、本発明の効果を発揮し得る範囲において特に既定されない。
固体触媒成分(A)は、チタン原子を、1.0〜10質量%含有することが好ましく、1.5〜8質量%含有することがより好ましく、1.5〜5質量%含有することがさらに好ましい。
固体触媒成分(A)は、マグネシウム原子を、10〜70質量%含有することが好ましく、10〜50質量%含有することがより好ましく、15〜40質量%含有することがさらに好ましく、15〜25質量%含有することが一層好ましい。
固体触媒成分(A)は、ハロゲン原子を、20〜90質量%含有することが好ましく、30〜85質量%含有することがより好ましく、40〜80質量%含有することがさらに好ましく、45〜80質量%含有することが一層好ましい。
固体触媒成分(A)は、電子供与性化合物(c)を、合計0.5〜30質量%含有することが好ましく、合計1〜25質量%含有することがより好ましく、合計2〜20質量%含有することがさらに好ましい。
本出願書類において、固体触媒成分(A)中に含まれるチタン原子の含有率およびマグネシウム原子の含有率は、JIS 8311−1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味する。
本出願書類において、本発明の固体触媒成分(A)を構成するハロゲン原子の含有量は、固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法によって測定した値を意味し、電子供与体化合物の含有率は、固体触媒を加水分解した後、芳香族溶剤を用いて内部電子供与体を抽出し、この溶液をガスクロマトグラフィーFID(Flame Ionization Detector、水素炎イオン化型検出器)法によって測定した値を意味する。
固体触媒成分(A)の特に好ましい調製方法としては、先ず、マグネシウム化合物(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物に懸濁させ、次いで得られた懸濁液にチタンハロゲン化合物(b)を接触させて、反応処理を行い、上記懸濁液にチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前または接触した後に、フタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物(c)から選ばれる一種以上を−20〜130℃で接触させ、さらに必要に応じてポリシロキサンを接触させて反応処理を行うことにより、調製する方法を挙げることができる。
上記調製方法においては、電子供与性化合物(c)を接触させる前または後に、低温で熟成反応を行うことが望ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法においては、上記固体触媒成分(A)と、下記一般式(I);
AlQ3−p (I)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物(B)および外部電子供与性化合物(C)を接触させる。
上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物において、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基およびイソヘキシル基から選ばれる基を挙げることができ、エチル基またはイソブチル基が好ましい。
上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物において、Qは、水素原子またはハロゲン原子であり、水素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
また、上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物において、pは0<p≦3の実数であり、2または3が好ましく、3がより好ましい。
このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法において、上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物を使用することにより、固体触媒成分(A)を構成する電子供与性化合物に対する特定の有機アルミニウム化合物(B)の作用を向上させ、固体触媒成分を最適に活性化し得ると考えられ、このために、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分(A)を用いる場合において、不活性ガス雰囲気中で重合触媒を調製した場合であっても、重合処理時に優れた触媒活性を示し、立体規則性、溶融流れ性等に優れる重合体を製造し得ると考えられる。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法において、外部電子供与性化合物(C)としては、上述した固体触媒成分(A)を構成する電子供与性化合物(c)と同様のものを挙げることができ、その中でも、カーボネート類、エーテル類、エステル類又は有機ケイ素化合物から選ばれる一種以上が好ましい。
外部電子供与性化合物がカーボネート類である場合、カーボネート類としては、2−エトキシエチルフェニルカーボネート、2−ベンジルオキシエチルフェニルカーボネートおよび2−エトキシエチル−1−メチルカーボネートから選ばれる一種以上が好ましい。
外部電子供与性化合物がエーテル類である場合、エーテル類としては、1,3ジエーテルが好ましく、特に、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンおよび2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパンから選ばれる一種以上が好ましい。
外部電子供与性化合物がエステル類である場合、エステル類としては、安息香酸メチルおよび安息香酸エチルから選ばれる一種以上が好ましい。
外部電子供与性化合物が有機ケイ素化合物である場合、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物および、Si−N−C結合を含む有機ケイ素化合物から選ばれる一種以上が好ましい。
上記有機ケイ素化合物としては、下記一般式(II);
Si(NR(OR4−(r+s)(II)
(式中、rおよびsはそれぞれ独立に0〜4の整数であって、r+sは0〜4の整数であり、R、R又はRは、水素原子または炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、アリル基、置換又は未置換のシクロアルキル基、フェニル基およびアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有していてもよく、互いに同一であっても異なっていてもよい。RとRは結合して環形状を成していてもよく、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、アリル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のフェニル基およびアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有してもよい。)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(II)中、Rとしては、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐鎖状アルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、炭素数3〜8の分岐鎖状アルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が特に好ましい。
また、上記一般式(II)中、RおよびRとしては、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐鎖状アルキル基、または炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、炭素数3〜8の分岐鎖状のアルキル基、または炭素数5〜7のシクロアルキル基が特に好ましい。なお、RとRは、結合して環形状を形成していてもよく、この場合、環形状を形成する(NR)として基は、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基が挙げられる。
上記一般式(II)中、Rとしては、炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基およびアラルキル基から選ばれるいずれかであり、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、又は炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基が好ましく、特に炭素数1〜4の直鎖状アルキル基又は炭素数3〜4の分岐鎖状アルキル基が好ましい。
上記一般式(II)で示される外部電子供与性化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキル(アルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)シラン、アルキルアミノシラン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、
具体的には、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等から選ばれる一種以上が挙げられ、これらの中でも、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等から選ばれる一種以上が好ましく用いられる。
上記外部電子供与性化合物(C)は、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
本出願書類において、予備接触とは、固体触媒成分(A)、一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(B)および外部電子供与性化合物(C)を、オレフィン類と接触させる前に、接触させることを意味する。
上記予備接触時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気であることが好ましく、不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、メタンガス、エタンガスおよびプロパンガス等から選ばれる一種以上を挙げることができ、窒素ガスまたはアルゴンガスであることが好ましい。
また、上記予備接触は、不活性有機溶媒の共存下で行ってもよく、ここで、不活性有機溶媒は、各成分を反応させる媒体として使用されるものであって、鎖式飽和炭化水素および脂環式炭化水素から選ばれる一種以上であることが好ましい。
上記不活性有機溶媒として、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2‐ジエチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、デカリン、ミネラルオイル等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記不活性有機溶媒としては、沸点が50〜200℃程度の、常温で液状の芳香族炭化水素化合物、具体的にはヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンから選ばれる一種以上であることが好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、予備接触時における一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(B)の接触量は、固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、0.1〜1000モルであることが好ましく、1〜800モルであることがより好ましく、20〜600モルであることがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、予備接触時における外部電子供与性化合物(C)の接触量は、一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(B)1モル当たり、0.005〜1モルであることが好ましく、0.08〜0.5モルであることがより好ましく、0.01〜0.3モルであることがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法においては、固体触媒成分(A)、一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物(B)および外部電子供与性化合物(C)を、オレフィン類の非存在下、15℃未満の温度で30分間以下の時間接触させる予備接触処理を施す。
上記予備接触時の接触温度は、15℃未満であり、−15〜10℃が好ましく、0〜10℃がより好ましい。
また、上記予備接触時の接触時間は、30分間以下であり、5秒間〜20分間が好ましく、30秒間〜15分間がより好ましく、1〜10分間がさらに好ましい。
通常、固体触媒成分に助触媒である有機アルミニウム化合物と外部電子供与性化合物とを接触させると急減に反応が進行し、固体触媒成分を構成する電子供与性化合物の脱離および外部電子供与性化合物との交換や、助触媒である有機アルミニウム化合物による固体触媒成分の活性化が生じ、特に不活性ガス雰囲気下においては、過剰な反応により触媒活性点(チタン活性点)の失活が生じ易くなる。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法においては、上記接触温度および接触時間で予備接触処理することにより、有機アルミニウム化合物による固体触媒成分中のチタン活性点への過剰な反応を抑制して触媒活性点の失活を効果的に抑制することができる。
本発明に係る製造方法においては、上記予備接触処理により、目的とするオレフィン類重合用触媒を調製することができる。
本発明に係る製造方法で得られた重合用触媒を用いてオレフィン類を重合する場合、上記予備接触処理後に重合用触媒を単離してオレフィン類と接触させるか、または上記予備接触処理後にそのままオレフィン類と接触させることにより重合処理に供することができる。
オレフィン類の重合は、オレフィン類の単独重合であってもよいし共重合であってもよく、ランダム共重合であってもよいしブロック共重合であってもよい。
上記オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、特にプロピレンが好適である。
オレフィン類を共重合する場合、例えば、プロピレンとプロピレン以外のオレフィン類とを共重合する場合、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、とりわけ、エチレン、1−ブテンが好適である。
プロピレンと他のオレフィン類とを共重合させる場合、プロピレンと少量のエチレンをコモノマーとして1段で重合するランダム共重合と、第一段階(第一重合槽)で プロピレンの単独重合を行い、第二段階(第二重合槽)あるいはそれ以上の多段階(多段重合槽)でプロピレンとエチレンの共重合を行う、所謂プロピレン−エチレンブロック共重合を挙げることができる。
オレフィン類の重合温度は、室温以上200℃以下であることが好ましく、室温以上100℃以下であることがより好ましい。
オレフィン類の重合圧力は、10MPa以下であることが好ましく、6MPa以下であることがより好ましい。
オレフィン類は、連続重合法で重合してもよいし、バッチ式重合法で重合してもよい。さらに、重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上の多段で行ってもよい。
上記オレフィン類の重合反応を行う場合、重合雰囲気としては、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合対象となるオレフィン類のガス雰囲気の何れであってもよい。
本発明によれば、不活性ガス雰囲気下においてオレフィン類と接触させる前に、オレフィン類の非存在下、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子およびフタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物を含む固体触媒成分(A)と、助触媒である特定の有機アルミニウム化合物(B)と、外部電子供与性化合物(C)とを低温でかつ短時間接触させることにより、触媒活性点の失活を抑制しつつ、電子供与性化合物(c)に対する特定の有機アルミニウム化合物(B)の作用を向上させ、固体触媒成分を最適に活性化し得ると考えられ、このために、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分を用いる場合において、不活性ガス雰囲気中で重合触媒を調製した場合であっても、重合処理時に優れた触媒活性を示し、立体規則性、溶融流れ性等に優れる重合体を製造し得るオレフィン類重合用触媒の製造方法を提供することができる。
(実施例1)
<固体触媒成分の調製>
攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコ内部を窒素ガスで充分に置換し、ジエトキシマグネシウム20g及びトルエン60mlを装入し、懸濁状のジエトキシマグネシウム含有液を得た。
次いで、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された容量500mlの丸底フラスコに予め装填された、トルエン50ml及び四塩化チタン40mlの混合溶液中に、上記ジエトキシマグネシウム含有液を添加し、懸濁液とした。
次いで、得られた懸濁液を−6℃で1時間反応させた後、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルを添加し、さらに100℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間反応処理を行った。
反応終了後、上澄みを抜き出し、90℃のトルエン150mlで4回洗浄した。得られた反応生成物に四塩化チタン20mlおよびトルエン100mlを加えて、100℃まで昇温し、15分反応させる処理を4回行った後、40℃のn−ヘプタン150mlで6回洗浄して固体触媒成分(固体触媒成分(A))を得た。
固液分離後、得られた固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ3.2質量%であった。
<重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、n−ヘプタン7ml、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルおよび、上記固体触媒成分(A1)をチタン原子として0.0026ミリモル装入し、窒素雰囲気下、内温10℃を3分間維持して重合用触媒を形成した。
次いで、水素ガス1.5リットルおよび液化プロピレン1.4リットルを装入し、オートクレーブを20℃まで昇温し、内温20℃において5分間の予備重合を行なった後、オートクレーブを70℃まで昇温し、内温70℃で1時間の重合反応を行った。
上記反応の重合活性を以下の方法で求めるとともに、得られた重合体について、下記の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
<重合活性>
固体触媒成分1g当たり、重合時間1時間当たりの重合体生成量(F)kgを示す重合活性(kg−PP/g−cat)は、下式により算出した。
重合活性(kg−PP/g−cat)=生成重合体(F)kg/固体触媒成分g/1時間
<重合体の溶融流れ性(MFR)>
重合体の溶融流れ性を示すメルトフローレート(MFR)は、ASTM D238、JIS K 7210に準じて測定した。
<重合体のキシレン可溶分(XS)>
攪拌装置を具備したフラスコ内に、4.0gの重合体(ポリプロピレン)と、200mlのp−キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp-キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、2時間かけて重合体を溶解した。その後1時間かけて液温を23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。上記溶解成分の溶液を採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物をキシレン可溶分(XS)とし、その質量を重合体(ポリプロピレン)に対する相対値(質量%)で求めた。
(実施例2)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温10℃を20分間維持した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
なお、本願において、実施例2は参考例として扱われるものである。
(比較例1)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温15℃を3分間維持した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温20℃を3分間維持した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温35℃を3分間維持した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温10℃を60分間維持した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、同モルの5−t−ブチル-1,2-フェニレンジエチルカーボネートを添加し、かつ、重合触媒の形成時(予備接触時)に内温10℃を3分間維持することに代えて内温5℃を3分間維持した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例4)
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、同モルの2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルを用いた以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例5)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温20℃を3分間維持した以外は、実施例4と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、同モルの3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルを添加し、かつ、重合触媒の形成時(予備接触時)に内温10℃を3分間維持することに代えて内温5℃を3分間維持した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例6)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温20℃を3分間維持した以外は、実施例5と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例6)
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、同モルの2−ベンジルオキシエチルフェニルカーボネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例7)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温10℃を60分間維持した以外は、実施例6と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例7)
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、2−エトキシエチル−1−メチルカーボネート24ミリモルおよび2−イソプロピル2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン6.0ミリモルを添加し、かつ、重合触媒の形成時(予備接触時)に内温10℃を3分間維持することに代えて内温4℃を6分間維持した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例8)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温4℃を6分間維持することに代えて、内温10℃を3分間維持した以外は、実施例7と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例9)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温4℃を6分間維持することに代えて、内温13℃を3分間維持した以外は、実施例7と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
なお、本願において、実施例9は参考例として扱われるものである。
(実施例10)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温4℃を6分間維持することに代えて、内温10℃を20分間維持した以外は、実施例7と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
なお、本願において、実施例10は参考例として扱われるものである。
(比較例8)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温4℃を6分間維持することに代えて、内温20℃を3分間維持した以外は、実施例7と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例9)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温4℃を6分間維持することに代えて、内温34℃を3分間維持した以外は、実施例7と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例10)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温4℃を6分間維持することに代えて、内温10℃を60分間維持した以外は、実施例7と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例11)
2−イソプロピル2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、2−エトキシエチル−1−エチルカーボネート24ミリモルおよび2−イソプロピル2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン6.0ミリモルを添加した以外は、実施例1と同様に処理することにより、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例11)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温20℃を3分間維持した以外は、実施例11と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例12)
<固体触媒成分の調製>
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、同モルの1-シクロヘキセン-1、2-ジカルボン酸ジエチルを用いた以外は、実施例1と同様に処理することにより、固体触媒成分(固体触媒成分(A2))を得た。
<重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合>
固体触媒成分(A1)に代えて同モルの固体触媒成分(A2)を用いるとともに、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルに代えて、ジイソペンチルジメトキシシラン(DIPDMS)0.13ミリモルを用いた以外は実施例1と同様にして、重合用触媒の形成(予備接触)および重合反応を行ってポリプロピレン重合体を得た。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
(比較例12)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温20℃を3分間維持した以外は、実施例12と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
(実施例13)
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、ベンジリデンマロン酸ジエチル24ミリモルおよび2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン6.0ミリモルを添加した以外は、実施例1と同様に処理することにより、固体触媒成分(固体触媒成分(A3))を得た。
<重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合>
固体触媒成分(A1)に代えて同モルの固体触媒成分(A3)を用いるとともに、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルに代えて、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルを用いた以外は実施例1と同様にして、重合用触媒の形成(予備接触)および重合反応を行ってポリプロピレン重合体を得た。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
(比較例13)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温20℃を3分間維持した以外は、実施例12と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
(実施例14)
<固体触媒成分の調製>
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、2−エトキシエチル−1−エチルカーボネート7.5ミリモルおよびジイソブチルマロン酸ジメチル22ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様に処理することにより、固体触媒成分(固体触媒成分(A4))を得た。
<重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合>
固体触媒成分(A1)に代えて同モルの固体触媒成分(A4)を用いるとともに、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルに代えて、ジイソペンチルジメトキシシラン(DIPDMS)0.13ミリモルを用いた以外は実施例1と同様にして、重合用触媒の形成(予備接触)および重合反応を行ってポリプロピレン重合体を得た。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
(比較例14)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温20℃を3分間維持した以外は、実施例14と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
(比較例15)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温34℃を3分間維持した以外は、実施例14と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
(比較例16)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて内温10℃を60分間維持した以外は、実施例14と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
(実施例15)
2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン22.9ミリモルに代えて、マレイン酸ジエチル7.5ミリモルおよびジイソブチルマロン酸ジメチル22ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
(比較例17)
重合触媒の形成時(予備接触時)において、内温10℃を3分間維持することに代えて、内温20℃を3分間維持した以外は、実施例15と同様にして、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行った。
上記反応の重合活性を実施例1と同様にして測定するとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、溶融流れ性(MFR)およびキシレン可溶分(XS)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0006670081
Figure 0006670081
表1〜表3の結果から、実施例1〜実施例15で得られたオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類と接触させる前に、オレフィン類の非存在下、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子およびフタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物を含む固体触媒成分(A)と、助触媒である特定の有機アルミニウム化合物(B)と、外部電子供与性化合物(C)とを15℃未満の温度で30分間以下の時間接触させる予備接触処理を施して調製されたものであるために、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分を用いるものであるにも拘わらず、不活性ガス雰囲気中で重合触媒を調製した場合であっても、重合処理時に優れた触媒活性を示し、立体規則性、溶融流れ性等に優れる重合体を製造し得るオレフィン類重合用触媒の製造方法を提供することができることが分かる。
一方、表1の結果から、比較例1〜比較例17で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分は、固体触媒成分(A)と、助触媒である特定の有機アルミニウム化合物(B)と、外部電子供与性化合物(C)とを接触させる予備接触時の接触温度が15℃以上であったり(比較例1〜比較例3、比較例5、比較例6、比較例8、比較例9、比較例11〜比較例15、比較例17)、予備接触時の接触時間が30分を超えることにより(比較例4、比較例7、比較例10、比較例16)、得られるオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類を重合した際の重合活性に劣るものであったり、重合体の溶融流れ性(MFR)に劣るものであったり、キシレン可溶分(XS)が低く立体規則性に劣るものであることが分かる。
本発明によれば、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分を用いる場合において、不活性ガス雰囲気中で重合触媒を調製した場合であっても、重合処理時に優れた触媒活性を示し、立体規則性、溶融流れ性等に優れる重合体を製造し得るオレフィン類重合用触媒の製造方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子と、フタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物を含む固体触媒成分(A)、下記一般式(I);
    AlQ3−p (I)
    (式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
    で表される有機アルミニウム化合物(B)および外部電子供与性化合物(C)を、
    オレフィン類の非存在下、10℃以下の温度で15分間以下の時間接触させる予備接触処理を施すことを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法。
  2. 前記フタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物が、エステル基、カーボネート基およびエーテル基から選ばれる一種以上の基を有する化合物である請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法。
  3. 前記フタル酸エステル構造を有さない電子供与性化合物が、コハク酸ジエステル、マロン酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、シクロヘキセンカルボン酸ジエステル、エーテルカルボン酸エステル、ジカーボネート、カーボネート−エーテルから選ばれる少なくとも一種である請求項1または請求項2に記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法。
  4. 前記予備接触処理時の処理温度が−15℃〜10℃である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法。
  5. 前記予備接触処理時の処理時間が5秒間〜15分間である請求項1〜請求項4のいずれかに記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法。
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