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JP6516278B2 - バタークリームの製造方法 - Google Patents

バタークリームの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、生クリームのようなみずみずしい口溶けでありながら、良好な耐熱保形性を有するバタークリーム、及び、その製造方法に関する。
バタークリームは、甘味料を含有し、油脂を連続相とするクリームのことであり、水を連続相とする水中油型の乳化形態のクリームの代表である生クリームに対し、コクのある風味であることや、日保ちが良好であることなどの優れた点をもつが、反面、油脂を連続相として持つ関係上油性感が強く、口溶けが重く感じられるという欠点があった。
ここで、油性感が減じられたみずみずしい口溶けのバタークリームを得るためには、卵類や糖液などの水相成分の配合量を増加させたり、使用油脂を低融点の口溶けのよい油脂に変更すればよいが、当然にして耐熱保形性(高温保管時の保形性)が悪化してしまうし、とくに前者の方法の場合、乳化安定性が低下して、水相成分が分離しやすくなる問題もある。
水相成分の配合量を増加させたり、低融点の口溶けのよい油脂を使用したバタークリームの耐熱保形性を改善するための方法として、ペクチンなどの増粘安定剤を水相または油相に配合する方法(例えば非特許文献1参照)、含気していないイタリアンメレンゲを配合する方法(例えば特許文献1参照)、アルギン酸エステルを使用する方法(例えば特許文献2参照)、低HLBのシュガーエステルに代表される特定の乳化剤を油相に添加する方法(例えば特許文献3、4参照)などの方法が提案されている。
しかしこれらの方法は基本的に水相や油相の粘度や硬さを増やすことでその効果が得られるため、高い効果を得ようとしてこれらの増粘安定剤や乳化剤を多く配合すると、口溶けの悪化につながりやすいという問題があった。
そのため、口溶けを悪化させることなく、耐熱保形性を向上させる方法として、極度硬化油脂と液状油からなる特定の油脂組成物を別途添加する方法(例えば特許文献5参照)、テンパー型チョコレートを別途添加する方法(例えば特許文献6参照)、特定の粒径の水中油型乳化物を別途添加する方法などが提案された。
しかしこれらの方法はバタークリーム製造時に別途他の油脂組成物を準備し、細心の注意をはらいながら均質に混合するという緻密な作業が必要であり、安定して均質の品質のバタークリームを得るのは困難であった。
一方、水相成分の配合量や低融点の油脂を使用することなく、油性感が低減されたバタークリームを得る方法として、油相に高HLBの乳化剤を含有させることでバタークリームを口に入れた際の口中分散性を向上させる方法(例えば、特許文献7、8参照)、さらには2種のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用して同様の効果を得る方法(例えば、特許文献9記載)が提案されている。
しかしこれらの方法はみずみずしい食感のバタークリームを得ることはできるが、耐熱保形性については改良されるものではない。
このように、比重が軽く、油性感が低減され、生クリームのようなみずみずしい口溶けでありながら、十分な耐熱保形性と乳化安定性を有するバタークリームを、簡単な操作で安定して得ることは大変に困難であった。
特開昭51−035460号公報 特開2012−000023号公報 特開昭58−043744号公報 特開平09−187222号公報 特開昭62−022547号公報 特開平09−019266号公報 特開2004−329025号公報 特開平06−209706号公報 特開平08−231981号公報 特開2006−273925号公報
「製菓理論 基本生地とその応用」松田兼一著 昭和62年11月1日刊 242頁〜245頁
したがって本発明の目的は、油性感が減じられ、生クリームのようなみずみずしい口溶けでありながら、良好な耐熱保形性と乳化安定性を有するバタークリーム、及び、その製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究した結果、特定の乳原料を使用することにより上記課題を解決可能なことを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有し、比重が0.4〜0.9であるバタークリームを提供するものである。
また本発明は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を油脂に添加し、クリーミングした後、甘味料を添加し、混合し、比重を0.4〜0.9とすることを特徴とする、バタークリームの製造方法を提供するものである。
本発明のバタークリームは、油性感が減じられ、生クリームのようなみずみずしい口溶けでありながら、良好な耐熱保形性と乳化安定性を有する。
また本発明のバタークリームの製造方法によれば、油性感が減じられ、生クリームのようなみずみずしい口溶けでありながら、良好な耐熱保形性と乳化安定性を有するバタークリームを容易に安定して得ることができる。
以下、本発明のバタークリームについて好ましい実施形態に基づき詳述する。
本発明のバタークリームは、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である乳原料を含むことを特徴とする。乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%未満である乳原料を用いるとみずみずしい口溶けが得られない。
上記の乳由来の固形分中のリン脂質とは、乳原料中の乳由来の固形分中に含まれる乳由来のリン脂質のことを指す。
乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である上記乳原料は、その形態に特に制限はなく、例えば、液体状でも、粉末状でも、濃縮物でも構わない。但し、溶剤を用いて乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した乳原料は、風味上の問題から、本発明のバタークリームにおいては、上記乳原料として用いないのが好ましい。
乳原料中のリン脂質の定量方法としては、例えば下記の定量方法が挙げられる。但し、抽出方法等については、乳原料の形態等によって適正な方法が異なるため、下記の定量方法に制限されるものではない。
先ず、乳原料の脂質をFolch法を用いて抽出する。次いで、抽出した脂質の溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1 食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から、以下の計算式を用いて、乳原料100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/乳原料採取量(g)〕×25.4×(0.1/1000)
乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である上記乳原料としては、例えば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分が挙げられる。クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクとは組成が大きく異なり、リン脂質を多量に含有しているという特徴がある。バターミルクは、その製法の違いによって大きく異なるが、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、通常0.5〜1.5質量%程度であるのに対して、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、大凡2〜15質量%であり、多量のリン脂質を含有している。
本発明のバタークリームでは、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクそのものを用いることはできないが、バターミルクを乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮したものを用いることは可能である。
クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる上記水相成分の製造方法の一例を以下に説明する。
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明のバタークリームで用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
一方、バターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
バターを溶解機で溶解し、熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明のバタークリームで用いられる上記水相成分は、遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
本発明のバタークリームにおいては、得られた上記水相成分中の乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上であれば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じた水相成分をそのまま用いてもよく、また、上記水相成分に噴霧乾燥、濃縮、冷凍等の処理を施したものを用いてもよい。
また、本発明のバタークリームでは、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である上記乳原料中のリン脂質の一部又は全部がリゾ化されたものであると、本発明のバタークリーム中における上記乳原料の含有量が少なくても、良好な乳化安定性を得ることが可能となる。
乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である上記乳原料中のリン脂質をリゾ化するには、ホスホリパーゼAで処理すればよい。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置き換える作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、本発明のバタークリーム用油脂組成物においてはホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である上記乳原料中における総リン脂質含有量に占めるリゾリン脂質含有量の割合は、乳化安定性の点から、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が一層好ましい。リゾ化する際には、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である上記乳原料をそのままリゾ化してもよく、また、上記乳原料を濃縮した後にリゾ化してもよい。さらに、得られたリゾ化物に濃縮あるいは噴霧乾燥処理等を施してもよい。
また、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である上記乳原料が実質的に加熱変性していないものであると、みずみずしい口溶けがさらに優れた本発明のバタークリームを得ることが可能となる。「実質的に加熱変性していない」とは、濃縮や殺菌等による加熱履歴が、加熱温度にして好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下、最も好ましくは60℃以下のみであるものを指す。濃縮や殺菌時による加熱履歴が上記範囲超であると、風味成分の蒸散あるいは焦げ臭の発生等により、風味が悪化し、また乳化安定性が劣ったものとなってしまう。ここで、実質的に加熱変性していない、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である上記乳原料としては、例えば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる上記水相成分そのもの、あるいは、該水相成分の冷凍品、該水相成分を限外濾過したもの、該水相成分に上記温度条件内で噴霧乾燥、濃縮、冷凍等の処理を施したものが挙げられる。
本発明のバタークリームは、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を、固形分として、好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%、最も好ましくは0.1〜4質量%含有する。
バタークリームにおける上記乳原料の含有量が0.01質量%未満であると、油性感の改良効果が乏しくなり好ましくない。また、バタークリームにおける上記乳原料の含有量が10質量%超であると、口溶けが悪化しやすいため好ましくない。
本発明のバタークリームで使用される油脂は、食用に適する油脂であればよく、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴー脂、乳脂等の常温で固体の油脂も挙げられ、更に、これらの食用油脂の硬化油、分別油、エステル交換油等の物理的又は化学的処理を施した油脂を使用することもできる。本発明のバタークリームでは、これらの油脂の中でも、大豆油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、乳脂並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂からなる群から選択される一種又は二種以上を用いるのが好ましい。
本発明のバタークリームにおける上記油脂の含有量は、乳化安定性のためには、好ましくは18〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは25〜60質量%であることが好ましい。なお、本発明においては、油脂を含有する原材料を使用した場合は、該原材料に含まれる油脂純分についても上記油脂の含有量に含めることとする。
また、本発明のバタークリームにおける水の含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。なお、本発明においては、水分を含有する原材料を使用した場合は、該原材料に含まれる水分についても上記水の含有量に含めることとする。
本発明のバタークリームで使用される甘味料としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等が挙げられる。これらの甘味料は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、果汁、野菜汁、フルーツピューレ、フルーツペースト、ジャム、清涼飲料水などの上記甘味料を含有する飲食品を使用してもよい。
また、本発明のバタークリームにおける甘味料の含有量は、特に制限されるものではなく、求められる甘味度に応じて適宜設定可能であるが、固形分として水相中の85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明のバタークリームには、必要により、上記以外の原材料、たとえば、卵類、乳化剤、澱粉類、繊維類、増粘多糖類等の安定剤、「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料」以外の乳原料、果実、果汁、カカオ及びカカオ製品、ナッツペースト、香辛料、茶、酒類、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類、コーヒー及びコーヒー製品等の呈味成分、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、調味料、酵素、着香料、着色料、食品保存料、日持ち向上剤、酸化防止剤、pH調整剤等の食品素材や食品添加物を配合してもよい。
上記卵類としては、全卵、卵黄、卵白、加塩全卵、加塩卵黄、加塩卵白、加糖全卵、加糖卵黄、加糖卵白、乾燥全卵、乾燥卵黄、凍結全卵、凍結卵黄、凍結卵白、凍結加糖全卵、凍結加糖卵黄、凍結加糖卵白、酵素処理全卵、酵素処理卵黄などを用いることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記乳化剤としては、特に制限されないが、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。これらの乳化剤は単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記乳化剤の含有量は、本発明のバタークリーム中、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜1質量%である。
上記安定剤としては、リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、有機酸塩類(クエン酸塩、酒石酸塩等)、無機塩類(炭酸塩等)、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、ファーセルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、カードラン、澱粉、化工澱粉、結晶セルロース、ゼラチン、デキストリン、寒天、デキストラン等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記の「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料以外の乳原料」としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、バター、クリーム、チーズ、クリームチーズ、冷凍変成したクリームチーズ、濃縮ホエイ、蛋白質濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、カゼインカルシウム、ホエープロテインコンセントレート、トータルミルクプロテイン、乳清ミネラルなどが挙げられる。
本発明のバタークリームの比重は、0.4〜0.9、より好ましくは0.5〜0.8である。バタークリームの比重が0.4未満であると軽すぎてバタークリーム特有のコクのある風味が感じられなくなってしまう。また、バタークリームの比重が0.9を超えると、口溶けが重過ぎて、みずみずしさを感じにくいものとなる。
本発明のバタークリームは、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を必須成分として含有し、上記油脂及び甘味料を少なくとも含有し、油脂が連続相となるクリームである。すなわち、水を含有する場合は、油中水型であることが必要である。
なお上記油中水型とは、連続した油相中に、水、あるいは水相を含有するコロイド粒子が分散している形態を指す。具体的な乳化形態としては、W/O型のみならず、O/W/O型やO/O型をも含むものである。
次に、本発明のバタークリームの製造方法について以下に説明する。
本発明のバタークリームは、その製造過程において、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を添加し、最終比重を0.4〜0.9、より好ましくは0.5〜0.8とする以外は、一般的なバタークリームの製造方法によって得ることができる。
具体的には、油脂に甘味料を添加しクリーミングするか、又はクリーミングした油脂に甘味料を添加する一般的なバタークリームの場合、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料は、油脂に添加してもよく、また甘味料に添加してもよく、また、別途添加してもよいが、製造過程及び得られるバタークリームの乳化安定性が良好であることから、好ましくは油脂に添加する。
すなわち、本発明のバタークリームは、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を油脂に添加し、クリーミングした後、甘味料を添加、混合し、比重を0.4〜0.9、より好ましくは0.5〜0.8とすることによって得ることが好ましい。なお、この場合、甘味料添加前の好ましい比重は0.2〜0.8、より好ましくは0.4〜0.8である。
ここで本発明のバタークリームの製造方法においては、みずみずしい口溶けのバタークリームを得ることが可能な点で、上記油脂として、水分含量が20〜60質量%、より好ましくは20〜40質量%の油中水型乳化物を使用することが好ましい。
また上記油中水型乳化物は、油相中にレシチン及びグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステルを含有するものであることが油中水型乳化物のクリーミング性を高め、また、得られるバタークリームの乳化安定性をより高めることができる点で好ましい。レシチンの好ましい含有量は油中水型乳化物中に0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜2質量%である。また、グリセリンモノ不飽和脂肪酸エステルの好ましい含有量は油中水型乳化物中に0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜2質量%である。
なお、本発明のバタークリームの製造方法においては、クリーミング性が極めて良好である点で、上記油脂として、油脂を連続相とする可塑性油脂、たとえば、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、ヘットのうちの1種又は2種以上を使用することが好ましく、特に好ましくはマーガリンを使用する。
また油脂として可塑性油脂を使用する場合、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料は、可塑性油脂の製造時に油相及び/または水相に添加してもよく、また可塑性油脂を混合可能な程度に軟化させてから添加してもよい。
また本発明のバタークリームの製造方法においては、上記甘味料として、甘味料含有水溶液またはフォンダンを使用することが好ましくとくに好ましくは甘味料含有水溶液を使用する。すなわち上述の甘味料を水に溶解させた水溶液として使用するか、又は、上述の甘味料のうち水飴を使用することが好ましい。
なお、上記水としては、水道水や天然水が挙げられる。なお、水の一部または全部を、例えば、上記のその他の原材料のうち、牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、加工乳、果汁、コーヒー飲料、紅茶飲料等の、水を多く含む食品や添加物で置換しても良い。
なお、保存性を高めることが可能な点で、甘味料含有水溶液中の甘味料の含有量は固形分として50〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜85質量%、さらに好ましくは65〜75質量%である。なお上記水を多く含む食品や添加物が甘味料を含有する場合は、上記糖類の含有量に、その純分を含めて算出するものとする。
また本発明のバタークリームが卵類を含有する場合、たとえば全卵を使用する場合は、油脂に添加してもよく、また甘味料に添加してもよく、また、別途添加してもよいが、好ましくは保存性を向上させることが可能である点で甘味料に添加する。具体的には、クリーミングした油脂に全卵と甘味料を混合しホイップした後にクリーミングした油脂と混合する方法、全卵をホイップし、ここに100℃超に煮詰めた甘味料含有水溶液を添加混合した後、さらにクリーミングした油脂と混合する方法、卵黄に100℃超に煮詰めた甘味料含有水溶液を添加混合した後、さらにクリーミングした油脂と混合する方法、卵黄又は全卵を使用して製造したカスタードクリームとクリーミングした油脂と混合する方法、イタリアンメレンゲとクリーミングした油脂と混合する方法、卵白に甘味料を加えてホイップしたメレンゲとクリーミングした油脂と混合する方法などを挙げることができる。
なお本発明のバタークリームが卵類を含有する場合であって、卵類が加熱殺菌する工程を経る場合には、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料はみずみずしい口溶けという本発明の効果が得られにくくなるため、卵類には添加しないことが好ましい。
以上のようにして得られた本発明のバタークリームは、生クリームのようなみずみずしい口溶けでありながら、良好な耐熱保形性を有する。
本発明のバタークリームはフィリング用として広く使用することができる。なお、フィリング用としては、サンド用、トッピング用、スプレッド用、コーティング用も含まれる。
なお、本発明のバタークリームの上記用途における使用量は、各用途により異なるものであり、特に制限されるものではない。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例により何等制限されるものではない。
<可塑性油脂の製造>
〔製造例1〕
パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂とコーン油を60:40の質量比で混合した混合油脂70質量部及び色素液0.1質量部からなる油相と、水29.9質量部からなる水相とを、55℃の温度で混合乳化して油中水型乳化物を得た。この油中水型乳化物を急冷可塑化して油中水型可塑性油脂(マーガリン1)を得た。
〔製造例2〕
パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂とコーン油を60:40の質量比で混合した混合油脂68質量部、レシチン1質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル1質量部、及び色素液0.1質量部からなる油相と、水29.9質量部からなる水相とを、55℃の温度で混合乳化して油中水型乳化物を得た。この油中水型乳化物を急冷可塑化して油中水型可塑性油脂(マーガリン2)を得た。
〔製造例3〕
製造例2における混合油脂を68質量部から66質量部に、レシチン1質量部を2質量部に、グリセリンモノオレイン酸エステル1質量部を2質量部に、それぞれ変更した以外は、製造例2と同様の配合・製法で油中水型可塑性油脂(マーガリン3)を得た。
〔製造例4〕
製造例2におけるレシチン1質量部を2質量部に、グリセリンモノオレイン酸エステル1質量部を無添加に、それぞれ変更した以外は、製造例2と同様の配合・製法で油中水型可塑性油脂(マーガリン4)を得た。
〔製造例5〕
製造例2におけるレシチン1質量部を無添加に、グリセリンモノオレイン酸エステル1質量部を2質量部に、それぞれ変更した以外は、製造例2と同様の配合・製法で油中水型可塑性油脂(マーガリン5)を得た。
〔製造例6〕
パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂とコーン油を60:40の質量比で混合した混合油脂66質量部、レシチン1質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル1質量部、及び色素液0.1質量部からなる油相と、水29.9質量部からなる水相とを、55℃の温度で混合乳化して油中水型乳化物を得た。この油中水型乳化物に、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量部を添加して十分に混合後、急冷可塑化して油中水型可塑性油脂(マーガリン6)を得た。
〔製造例7〕
製造例6における混合油脂を66質量部から63質量部に、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物2質量部から5質量部に、それぞれ変更した以外は、製造例6と同様の配合・製法で油中水型可塑性油脂(マーガリン7)を得た。
〔製造例8〕
製造例6における混合油脂を66質量部から58質量部に、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物2質量部から10質量部に、それぞれ変更した以外は、製造例6と同様の配合・製法で油中水型可塑性油脂(マーガリン8)を得た。
〔製造例9〕
パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂とコーン油を60:40の質量比で混合した混合油脂97.9質量部、レシチン1質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル1質量部、及び色素液0.1質量部からなる油相を55℃に加温し、急冷可塑化して水相を含有しない可塑性油脂(ショートニング1)を得た。
〔製造例10〕
パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂とコーン油を60:40の質量比で混合した混合油脂95.9質量部、レシチン1質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル1質量部、及び色素液0.1質量部からなる油相を55℃に加温し、ここに、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量部を添加して十分に混合後、急冷可塑化して油中水型可塑性油脂(マーガリン9)を得た。
〔製造例11〕
市販の無塩バター(油分81質量%、水分16質量%)98質量部を室温で軟化させ、ここにクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量部を添加して十分に混合し、油中水型可塑性油脂(バター加工品1)を得た。
<バタークリームの作成>
〔実施例1〕
上記製造例1で得られたマーガリン1を室温で1時間調温した後、100質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して低速1分混合し、更に、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量部を添加した後、最高速で比重が0.45となるまでクリーミングした。ここに、転化糖シロップ(糖の固形分の含有量は70質量%)50質量部を添加し、十分に混合し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は46質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム1を得た。
〔実施例2〕
マーガリン1に代えて製造例2で得られたマーガリン2を使用した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は45質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム2を得た。
〔実施例3〕
マーガリン1に代えて製造例3で得られたマーガリン3を使用した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は43質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム3を得た。
〔実施例4〕
マーガリン1に代えて製造例4で得られたマーガリン4を使用した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は45質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム4を得た。
〔実施例5〕
マーガリン1に代えて製造例5で得られたマーガリン5を使用した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は45質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム5を得た。
〔実施例6〕
マーガリン1に代えて製造例2で得られたマーガリン2を使用し、さらに、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の添加量を2質量部から5質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として1.2質量%含有し、油分含量は44質量%、水分含量は31質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム6を得た。
〔実施例7〕
マーガリン1に代えて製造例2で得られたマーガリン2を使用し、さらに、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の添加量を2質量部から10質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として2.4質量%含有し、油分含量は43質量%、水分含量は32質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム7を得た。
〔実施例8〕
マーガリン1に代えて製造例2で得られたマーガリン2を使用し、さらに、転化糖シロップの添加量を50質量部から25質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.6質量%含有し、油分含量は54質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム8を得た。
〔実施例9〕
マーガリン1に代えて製造例2で得られたマーガリン2を使用し、さらに、転化糖シロップの添加量を50質量部から75質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.4質量%含有し、油分含量は38質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.7である、本発明のバタークリーム9を得た。
〔実施例10〕
上記製造例2で得られたマーガリン2を室温で1時間調温した後、100質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して最高速で比重が0.45になるまでクリーミングした。ここに、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量部を転化糖シロップ(糖の固形分の含有量は70質量%)50質量部に添加・混合した甘味料含有水溶液を添加し、十分に混合し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は45質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム10を得た。
〔実施例11〕
上記製造例2で得られたマーガリン2を室温で1時間調温した後、100質量部、及び、転化糖シロップ(糖の固形分の含有量は70質量%)50質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して低速1分混合し、更に、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量部を添加した後、最高速でクリーミングし、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は45質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム11を得た。
〔実施例12〕
上記製造例6で得られたマーガリン6を室温で1時間調温した後、100質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して最高速で比重が0.45となるまでクリーミングした。ここに、転化糖シロップ(糖の固形分の含有量は70質量%)50質量部を添加し、十分に混合し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は44質量%、水分含量は31質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム12を得た。
〔実施例13〕
マーガリン6に代えて製造例7で得られたマーガリン7を使用した以外は実施例12と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として1.3質量%含有し、油分含量は42質量%、水分含量は32質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム13を得た。
〔実施例14〕
マーガリン6に代えて製造例8で得られたマーガリン8を使用した以外は実施例12と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として2.5質量%含有し、油分含量は39質量%、水分含量は34質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム14を得た。
〔実施例15〕
全卵(正味)70質量部及び上白糖20質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して最高速でクリーム状となるまでクリーミングした。ここに、上白糖50質量部及び水20質量部を115℃まで煮詰めたシロップ液を少しづつ添加、混合し、殺菌加糖卵液を得た。一方、マーガリン6及びマーガリン9を室温で1時間調温した後、それぞれ50質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して、最高速で比重が0.45となるまでクリーミングした。ここに、上記殺菌加糖卵液の全量を少しづつ添加、混合し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.3質量%含有し、油分含量は27質量%、水分含量は34質量%であり、比重が0.7である、本発明のバタークリーム15を得た。
〔実施例16〕
卵黄30質量部及び上白糖10質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して低速1分混合した。ここに、上白糖40質量部及び水13質量部を115℃まで煮詰めたシロップ液を少しづつ添加、混合し、殺菌加糖卵液を得た。一方、マーガリン6及びマーガリン9を室温で1時間調温した後、それぞれ50質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して、最高速で比重が0.45となるまでクリーミングした。ここに、上記殺菌加糖卵液の全量を少しづつ添加、混合し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.4質量%含有し、油分含量は38質量%、水分含量は24質量%であり、比重が0.8である、本発明のバタークリーム16を得た。
〔実施例17〕
卵白30質量部及び上白糖10質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して中速5分混合しメレンゲ1を得た。ここに、上白糖33質量部及び水11質量部を115℃まで煮詰めたシロップ液を少しづつ添加、混合し、イタリアンメレンゲを得た。一方、マーガリン6及びマーガリン9を室温で1時間調温した後、それぞれ50質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して、最高速で比重が0.45となるまでクリーミングした。ここに、上記イタリアンメレンゲの全量を少しづつ添加、混合し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.4質量%含有し、油分含量は35質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム17を得た。
〔実施例18〕
マーガリン6及びマーガリン9を室温で1時間調温した後、それぞれ50質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して、最高速で比重が0.45となるまでクリーミングした。ここに、市販のカスタードクリーム(油分含量10質量%、糖の固形分含量18質量%、水分含量65質量%)176質量部を少しづつ添加、混合し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.3質量%含有し、油分含量は29質量%、水分含量は47質量%であり、比重が0.8である、本発明のバタークリーム18を得た。
〔実施例19〕
マーガリン1に代えて製造例9で得られたショートニング1を使用した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は64質量%、水分含量は11質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム19を得た。
〔実施例20〕
上記製造例9で得られたショートニング1を室温で1時間調温した後、100質量部、及び、粉糖37.5質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、ビーターを使用して低速1分混合し、更に、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)2質量部を添加した後、最高速でクリーミングし、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は70質量%、水分含量は1質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム20を得た。
〔実施例21〕
マーガリン2に代えて製造例9で得られたショートニング1を使用した以外は実施例11と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は64質量%、水分含量は11質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム21を得た。
〔実施例22〕
マーガリン6に代えて製造例10で得られたマーガリン9を使用した以外は実施例12と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は40質量%、水分含量は10質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム22を得た。
〔実施例23〕
マーガリン1に代えて製造例11で得られたバター加工品1を使用した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は53質量%、水分含量は21質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム23を得た。
〔実施例24〕
マーガリン6に代えて市販の無塩バター(油分81%、水分16%)1を使用した以外は実施例12と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を固形分として0.5質量%含有し、油分含量は53質量%、水分含量は21質量%であり、比重が0.6である、本発明のバタークリーム24を得た。
〔比較例1〕
マーガリン1に代えて製造例2で得られたマーガリン2を使用し、さらに、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の添加量を無添加に変更した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有せず、油分含量は45質量%、水分含量は30質量%であり、比重が0.6である、比較例のバタークリーム25を得た。
〔比較例2〕
マーガリン1に代えて製造例9で得られたショートニング1を使用し、さらに、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の添加量を無添加に変更した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有せず、油分含量は65質量%、水分含量は10質量%であり、比重が0.6である、比較例のバタークリーム26を得た。
〔比較例3〕
マーガリン1に代えて製造例11で使用した無塩バターを使用し、さらに、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の添加量を無添加に変更した以外は実施例1と同様にして、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有せず、油分含量は54質量%、水分含量は21質量%であり、比重が0.6である、比較例のバタークリーム27を得た。
<バタークリームの口溶けの評価>
上記実施例1〜24及び上記比較例1〜3でそれぞれ得られたバタークリーム1〜27について、下記の評価基準にしたがって口溶け及び油性感の評価を行ない、その結果を表1に記載した。
(口溶け評価基準)
◎:さっぱりとしてみずみずしく、キレがある極めて良好な口溶けである。
○+:みずみずしく、キレがある良好な口溶けである。
○:みずみずしい良好な口溶けである。
△:ややもたつきが感じられ、やや不良な口溶けである。
×:口中での溶解性が悪く、不良な口溶けである。
(油性感評価基準)
◎: 油性感が感じられない。
○: 油性感がほとんど感じられない。
△: やや油っぽさを感じる。
×: 油っぽい。
<バタークリームの離水耐性及び耐熱保形性の評価>
上記実施例1〜24及び上記比較例1〜3でそれぞれ得られたバタークリーム1〜27について、下記の保管テストによって乳化安定性及び耐熱保形性の評価を行ない、その結果を表1に記載した。
なお、保管テストにおいては、バタークリームを一旦25℃に調温した後、絞り袋に入れ、菊型口金でシャーレに花型に絞り、蓋をし、これを5℃に60分調温後、20℃、25℃及び30℃の各恒温槽に一晩おき、表面状況及びダレの状況を観察し、前者を乳化安定性、後者を耐熱保形性の評価とし、下記評価基準に従い4段階で評価した。
(乳化安定性評価基準)
◎: 良好なクリーム表面である。
○: わずかに離水が見られるが良好なクリーム表面である。
△: やや離水が見られる。
×: はっきりした離水が見られる。
(耐熱保形性評価基準)
◎: 線もシャープでありダレが全く見られない。
○: やや線が丸くなったがダレは見られない。
△: ダレが見られるが菊型形状を有している。
×: はっきりしたダレが見られる。
Figure 0006516278

Claims (2)

  1. 乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を油脂に添加し、クリーミングした後、甘味料を添加し、混合し、比重を0.4〜0.9とするバタークリームの製造方法であって、
    上記油脂として油中水型乳化物を使用し、
    上記油中水型乳化物は、水分含量が20〜60質量%であり、油相中にレシチンを0.5〜2質量%及びグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステルを0.5〜2質量%含有することを特徴とする、バタークリームの製造方法。
  2. 上記バタークリームが、上記乳原料を固形分として0.01〜10質量%含む請求項1記載のバタークリームの製造方法
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