JP6573441B2 - マイクロ波照射装置および方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、以下の技術手段から構成される。
[2]さらに、マイクロ波透過性材により構成される皿部と、脚部とを有し、前記第1の回転棚(33)上に着脱自在に設置可能な第2の回転棚(34)を備えることを特徴とする[1]に記載のマイクロ波照射装置。
[3]前記第1の回転棚(33)および前記第2の回転棚(34)の脚部が、マイクロ波透過性の絶縁物により構成されていることを特徴とする[2]に記載のマイクロ波照射装置。
また、被照射物の露出面を覆う部材を備える構成によれば、マイクロ波の偏った当たり方を防止し、また乾燥時に生じ得る被照射物の飛散による焦げを防止することが可能となる。
また、マイクロ波を吸収する液体を配置する構成によれば、焦げの問題を解決し、従来よりも均一な乾燥を行うことが可能となる。
さらに、蒸留部を備える構成によれば、従来は除去されていた低沸点成分の回収が可能となる。
図1は、撹拌羽根21が装着された第一実施形態例に係るマイクロ波照射システム1の構成図である。このマイクロ波照射システム1は、照射部Aと蒸留部Bとから構成される。照射部Aは、被反応物が収納される加熱釜10と、撹拌羽根21を回動させる駆動装置22と、加熱釜10にマイクロ波を供給するマイクロ波発振器31と、加熱釜10とマイクロ波発振器31とを接続する導波管32とを備えている。蒸留部Bは、コンデンサ41と、チラー42と、ジャケット付きの分液容器43と、蒸留水回収容器44と、コールドトラップ45と、真空ポンプ46とを備えている。
加熱釜10は、加熱容器11と、加熱容器の蓋12とから構成される。加熱容器11および蓋12は、それぞれフランジ部を有しており、対向する両フランジ部を狭圧することにより固定される。加熱釜10は、例えば、数リットル〜数百リットルの容量(最低容量は撹拌羽根の中央固定ノブが隠れる液量、最大容量は攪拌時の液面上昇を加味すれば、釜容量の2/3となる)であり、複数の加熱釜を連結して使用する場合もある。乾燥時、蒸留時、抽出時およびブランチング時には、気化効率を高めるために加熱釜内を減圧することが好ましい。加熱釜10は、例えば0.1kPa〜大気圧、好ましくは2kPa〜大気圧で、さらに好ましくは10kPa〜20kPaの減圧下で用いられ、内部温度は例えば最大150℃である。
加熱容器11には、排水バルブ13が設けられた配管および駆動装置22が接続される。駆動装置22は、例えばモータであり、接続軸23を介して撹拌羽根21を回動させる。撹拌羽根21および接続軸23の構成については後述する。
導波管32が接続される蓋12の開口部には、マイクロ波を吸収しないマイクロ波透過性材からなる照射窓(図示せず)を設けることが好ましい。この照射窓は、例えば、石英、セラミックス、テフロン(登録商標)などにより構成することができる。導波管32の接続位置は図示する空間照射の態様に限定されず、液中照射するものでもよい。また、導波管32は、複数本設けてもよく、空間照射と液中照射を組み合わせてもよい。
導波管32の蓋12とは逆側の端部は、マイクロ波発振器31と接続されている。マイクロ波発振器31の出力は、例えば、0.1kW〜3.0kW/Lである。
加熱容器11の底の中心には接続軸23が設けられている。接続軸23は、図2(b)に示すように、上面視略正方形の形状で有り、正方形の中央にネジ穴が設けられている。接続軸23は、加熱釜10の内部構造を組み替えるためのアタッチメントを取り付けるための部材であり、実施形態例では用途に応じて撹拌羽根21および回転盤27が装着される。皿状の回転盤27の上には、用途に応じてカゴ29が載置され、或いは、二段目以降の回転棚(33,34)が設置される。
図3は、撹拌羽根21と接続軸23との接続態様を示した加熱容器の側面図であって、(a)は撹拌羽根21を接続軸23に装着した状態の側面図であり、(b)は撹拌羽根21を接続軸23から分離した状態の側面図である。
撹拌羽根21は、図3に示す如く接続軸21に装着される。接続軸23は、駆動装置22からの駆動力を撹拌羽根21に伝達する回動軸の役割を奏する。駆動装置22は、回動速度を調節することができる。撹拌羽根21により、被照射物が液体である場合に生じる加熱ムラの問題を解決することができる。
酵素が乾燥物中に残存すると、乾燥過程および保存過程で酵素が働き、変色等の劣化が生じる。そこで、被照射物に短時間に高出力のマイクロ波照射して急速加熱して酵素を失活させた後、被照射物を乾燥させることが行われる。
本実験例では、ブロッコリーやアスパラガスなどの粉砕した野菜を加熱釜10に直に投入し、撹拌羽根21を回転した状態において、被照射物が75℃以上になるまで急速加熱した後、40〜60℃に維持して乾燥したところ、変色等の劣化および放電を生じることなく均等に乾燥できることが確認できた。なお、加熱釜10に水等のマイクロ波を吸収する液体は配置しなかった。
図4は、回転盤27と接続軸23との接続態様を示した加熱容器の側面図であって、(a)は回転盤27を接続軸23に装着した状態の側面図であり、(b)は回転盤27を接続軸23から分離した状態の側面図である。
接続軸23には、図4に示す如く、皿状の回転盤27を装着することも可能である。回転盤27は、被照射物が投入されるカゴ29を載置するための回転棚の役割を奏する。回転盤27の皿部は、テフロン(登録商標)やポリプロピレンなどのマイクロ波透過性材により構成される。回転盤27は、その中央には貫通孔を有する凹部を備えている。この凹部を接続軸23に嵌着させ、凹部の貫通孔を介して回転盤固定ねじ28を螺合することで回転盤27は固定される。マイクロ波照射時、回転盤27は所望の速度で回転される。
カゴ29は、水分は通過するが、被照射物は通過しない孔を多数設けた構造で、マイクロ波透過性材からなる材質で構成される。カゴ29は、例えば、テフロン(登録商標)やポリプロピレンなどのマイクロ波を吸収しにくい疎水性高分子樹脂(完全に透過する材質でなくても良いが、少なくとも100℃以上の耐熱性が必要)により構成される。
マイクロ波照射時には、カゴ29に投入された被照射物の上面をカバー部材30により覆うことが好ましい。カバー部材30は、マイクロ波の一部を遮蔽する構造物あるいは吸収する物質であって、布、メッシュ、板が例示される。メッシュの目の粗さは0.5mm以下とすることが好ましく、被照射物が飛散した場合もある程度遮蔽できるように、更に目を細かくすること(例えば、0.3mm以下)が好ましい。マイクロ波を多少吸収する綿、セルロース、ポリエステルなどがメッシュの好ましい材質として例示される。板の材質としては、マイクロ波を多少吸収する木材、PET、ポリカーボネート、アクリル樹脂などが使用でき、マイクロ波の透過の割合(強度)に合わせて、1mm程度の厚みから調整する。
カバー部材30は、カゴ29に取り付け可能な蓋構造(蓋アタッチメント)としてもよい。カバー部材30を設置することで、マイクロ波の偏った当たり方を防止することで従来よりも均一な加熱を行うことが可能となり、また被照射物である乾燥物の焦げや急速昇温(突沸)による飛散を防ぐことが可能となる。特に、塩分を含む被照射物の乾燥に有効である。カバー部材30の効果は、次の実験例により確認された。
トマトの乾燥において、遮蔽物なしでそのまま加熱すると、トマトの表面のみが高温になり、表面が焦げたのに対し、カバー部材としての木綿の布をかぶせることにより表面の焦げを防ぐことができた。ただし、水分含量が低下した状態で100%のマイクロ波出力を加えた場合には焦げが発生し、50%のマイクロ波出力を加えた場合には焦げなしで80%の水分が除去された。
塩漬けトマトの乾燥において、遮蔽物を置かずに加熱すると、急速に加熱されたトマトが突沸により加熱釜内に飛散し、飛散したトマトがさらに加熱され、高分子樹脂からなるカゴ29を焦がし、煙が発生した。
被照射物を乾燥させる際には、加熱容器11内に水等のマイクロ波を吸収する液体(保湿用液体)を配置することが好ましい。加熱容器11内に配置する保湿用液体は、その量が少なすぎると焦げが生じる原因となり、多すぎると乾燥が遅くなる原因となる。従って、加熱容器11内に配置する保湿用液体の量は、被加熱物の乾燥重量に対し1/10〜20倍とすることが好ましく、1/2〜10倍とすることがより好ましく、1〜5倍とすることがさらに好ましい。
また、被照射物を乾燥させる際には、流出水分量に応じて照射出力を下げていくことが好ましい。例えば、被照射物中の水分量に対し照射出力を1kW/kg〜0.2kW/kgとすることが開示される。
保湿用液体は、本システムによるブランチング処理→乾燥処理という連続処理においても有効である。例えば、枇杷などの果実をカゴ29に入れ、加熱容器11内に保湿用液体を配置し、ブランチング処理した後、減圧下で乾燥することが開示される。
約500gのトマト、ボイセンベリー、イチゴなどの農作物を四国計測工業(株)製μリアクターExで重量が約200gになるまでマイクロ波で加熱した。被照射物は、足のついた網状の台(テフロン(登録商標)またはポリプロピレン製)の上に置き、収納容器に収納した。収納容器は、パイレックス(登録商標)ガラス製の蓋付きセパラブル容器を使用した。加熱釜の底部に水100gを入れた保湿容器を置き、出力を落としながら、試料中の水分が50〜70g減少するまで、約30分間をかけてマイクロ波を照射した。このとき、保湿容器中の水の減少量は15〜20gであり、試料中の水と保湿容器中の水の減少割合は約7:3であった。保湿容器の水を補充し、乾燥を続けることで、試料の焦げなしで、試料中の約85%の水分が除去できたが、保湿容器中の水の減少割合は徐々に増大していった。最終的な乾燥は低温乾燥機により行った。
以上の工程を経ることにより、上記の農作物に焦げを発生させることなく、均一な乾燥を実現することができた。
584gのトマトを四国計測工業(株)製μリアクターExで重量が29.5gになるまでマイクロ波で加熱した。トマトは、実験例3と同様に、足のついた網状の台(テフロン(登録商標)またはポリプロピレン製)の上に置き、パイレックス(登録商標)ガラス製収納容器に収納した。乾燥時間は5時間30分で、2時間終了時に台の下に水を100g添加した。3時間経過時以降、30分毎に添加した水の減少量を測定し、再度水を100g添加する工程を5時間30分経過時まで繰り返した。この測定結果を図6に示す。
以上の工程を経ることにより、未処理トマトをほぼ絶乾(残存水分0.6%)となるまで焦げなしで乾燥することができた。
約35kgのネギを直接マイクロ波で加熱し、ネギ中の水分の約50〜60%を蒸発させた。このときの水分の流出速度は4kg/hrであった。このネギをカゴに入れ、加熱釜の底部に水を入れた保湿容器を置き乾燥を継続した結果、焦げなしで7.7kgまでネギを乾燥することができた。最終的には低温乾燥機で乾燥し、ネギの重量は2.9 kgとなった。
以上の工程を経ることにより、ネギに焦げを発生させることなく、均一な乾燥を実現することができた。
図5は、回転棚を備えた加熱容器11の側面図であって、(a)は回転盤27および回転棚33,34を装着した状態の側面図であり、(b)は回転盤27および回転棚33,34を分離した状態の側面図である。
回転盤27には、図5に示す如く、皿状の回転棚33,34を載置して利用することも可能である。実施形態例に係る回転棚33,34は、回転盤27に積載されるのみであり、固定されていない。
回転棚33,34は、皿部と脚部とを備える。皿部は、孔のない容器構造としてもよいし、被照射物が通過しない程度の孔を多数設けたザル構造としてもよい。脚部は、皿部を支持すると共に、下段との固定に用いられる。皿部は、テフロン(登録商標)やポリプロピレンなどのマイクロ波透過性材により構成される。脚部は、その上部がSUS304、下部がテフロン(登録商標)などのマイクロ波透過性の絶縁物により構成される。脚部の下部を絶縁物により構成するのは、放電の可能性があるためである。
蒸留部Bは、精油成分の抽出、エキス分を含む水の回収に用いられる。例えば、柑橘類の残渣から水分や精油を気化させるとともに、気化した水分や精油を冷却し、凝縮液として抽出するために用いられる。柑橘類には、ゆず、だいだい、みかん、伊予柑、スダチが含まれる。柑橘類から精油成分を抽出する工程で得られる水には香り成分、水溶性低沸点成分などが含まれており、これをエキス分を含む水として利用する。同様にエキス分を含む水を、野菜類、根菜類、果物類、樹木の葉、例えば、アスパラガス、ブロッコリー、ボイセンベリー、金時にんじん、トマト、ネギ、アロエ、ジャガイモ、サツマイモ、ジネンジョ、ピーマン、パセリ、ほうれん草、ショウガ、笹の葉、桑の葉、柿の葉、枇杷の葉、イチゴおよび桃などからも得ることができる。ただし、これらからは精油成分が得られないので、乾燥物とエキス分を含む水が主生成物となる。
蒸留水容器44と加熱釜10を配管で連通し、加熱釜10に蒸留水を返送するようにしてもよい。上述したように、被照射物の焦げを防止するために、保湿用液体を加熱釜10内に配置することが好ましいところ、蒸留水容器44に流入した蒸留水を戻すことで、エキス分を低濃度にすることなく回収することができるという有利な効果が奏されるからである。
分液容器43は、一般的な化学実験に使用される分液漏斗と同様な構造で、油分と水分を分離する。好ましい態様の分液容器43は冷却機能を実現するために二重管構造とする。外側を冷却することにより、揮発しやすい香り成分、低沸点成分のロスを防げるからである。
また、マイクロ波を吸収する液体を加熱釜内に配置する構成によれば、食材などにとって致命的な焦げの問題を解決し、従来よりも均一な乾燥を行うことが可能となる。
さらに、蒸留部を設けることにより、被照射物を乾燥すると共に、エキス分を含む水(および精油成分)を回収することが可能である。
図7は、第二実施形態例に係るマイクロ波照射システム1の構成図である。第二実施形態例は、冷却器47および第二のチラー48を備える点で第一実施形態例と相違し、その他の構成は第一実施形態例と同じである。以下では、第一実施形態例との相違点に係る構成を中心に説明し、同じ構成については説明を割愛する。
以上の構成を備える第二実施形態例のシステムによれば、コンデンサ41から分液容器43への送出途中に成分が揮発し、真空状態のコンデンサ41に引き戻されるという課題を解消することが可能である。
10 加熱釜
11 加熱容器
12 蓋
13 排水バルブ
14 大気開放バルブ
15〜18 配管
21 撹拌羽根
22 駆動装置
23 接続軸
24 固定用ノブ
25 ノブカバー
26 カバー固定ねじ
27 回転盤
28 回転盤固定ねじ
29 カゴ
30 カバー部材
31 マイクロ波発振器
32 導波管
33 回転棚(二段目)
34 回転棚(三段目)
41 コンデンサ(成分濃縮装置)
42 (第一の)チラー
43 分液容器
44 蒸留水回収容器
45 低温トラップ
46 真空ポンプ(減圧装置)
47 冷却器
48 (第二の)チラー
51 排水バルブ
52 バルブ
Claims (6)
- 導波管が接続される照射窓、加熱容器、前記加熱容器の底に配置された接続軸、前記接続軸を回動させる駆動装置、および、加熱容器の蓋を備え、減圧可能な加熱釜と、
前記加熱釜に接続される導波管と、
マイクロ波発振器と、を備えたマイクロ波照射装置であって、
前記接続軸は、互いに異なる複数のアタッチメントを着脱自在に切り替えて装着することができ、
前記複数のアタッチメントは、撹拌羽根およびマイクロ波透過性材により構成される回転盤を含み、
さらに、マイクロ波透過性材により構成される皿部と、脚部とを有し、前記回転盤上に着脱自在に設置可能な第1の回転棚(33)と、
水分を通過させる孔が多数設けられたマイクロ波透過性材により構成され、前記回転盤上に着脱自在に設置可能な乾燥カゴと、を備えることを特徴とするマイクロ波照射装置。 - さらに、マイクロ波透過性材により構成される皿部と、脚部とを有し、前記第1の回転棚(33)上に着脱自在に設置可能な第2の回転棚(34)を備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
- 前記第1の回転棚(33)および前記第2の回転棚(34)の脚部が、マイクロ波透過性の絶縁物により構成されていることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ波照射装置。
- 被照射物の露出面を覆うメッシュ部を有し、乾燥カゴの上部に取り付け可能な蓋アタッチメントを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマイクロ波照射装置。
- 請求項1に記載のマイクロ波照射装置を用いたマイクロ波照射方法であって、
前記乾燥カゴに被照射物を配置し、前記加熱容器内に、前記被照射物の乾燥重量に対し1/10〜20倍のマイクロ波を吸収する液体を配置した状態でマイクロ波を所定時間照射することにより被照射物を乾燥させることを特徴とするマイクロ波照射方法。 - 前記加熱容器内の被照射物が柑橘類の皮、柑橘類の残渣、野菜類、根菜類、果物類および樹木の葉からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載のマイクロ波照射方法。
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