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JP6573441B2 - マイクロ波照射装置および方法 - Google Patents

マイクロ波照射装置および方法 Download PDF

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Description

本発明は、マイクロ波照射装置および方法に関し、例えば、農作物の乾燥・蒸留・抽出・ブランチングに用いられるマイクロ波照射装置および方法に関する。
マイクロ波に、従来の加熱法とは異なる化学反応促進効果が認められることは周知であり、かかる効果はマイクロ波効果、マイクロ波電界効果、若しくは非熱的効果と呼ばれている。マイクロ波の応用分野は、有機化学、無機化学、セラミックス、医療、農業など幅広く、例えば、農作物の乾燥・蒸留では、マイクロ波の内部加熱により、細胞壁を内部から破砕することで、乾燥効率や有用成分の抽出の点から優れていることが知られている。
マイクロ波化学反応装置も種々提案されており、出願人も、特許文献1で、化学反応容器に設けられたマイクロ波照射窓から、反応溶液の温度に応じて出力を制御しながらマイクロ波を照射できるようにした反応溶液の加熱手段と共に、該反応溶液を外部強制冷却可能な手段として、該化学反応容器の胴体から下部を覆う、液状媒体を強制循環出来るジャケットを有し、該液状媒体での冷却により、反応温度の精密制御を可能にしたマイクロ波化学反応装置を提案した。
マイクロ波透過材を通してのマイクロ波照射態様には、空中照射方式と液中照射方式があり、加熱効率の観点からは、マイクロ波が被加熱物の直接照射される液中照射方式の方が優れているとされる。また、液中照射方式ではマイクロ波が被加熱物に直接照射されるため、熱電対や撹拌軸等の金属製部品に高出力のマイクロ波エネルギーが直接作用することを防ぐという有利な効果を奏する場合がある。マイクロ波が誘電体に進入すると、熱に変化して急激に強度が弱くなるので、液中の金属製部品への作用は極めて限られたものとなるからである。例えば、25℃の水の場合、電力半減深度と言われるマイクロ波の電力密度が1/2に半減するまでの深さがわずか1.3cmであることが知られている。
出願人は、特許文献2で、導波管からのマイクロ波が照射されるマイクロ波透過材で構成された照射部を有する管状容器と、撹拌軸に所定の間隔で配設された仕切板、および/または、管状容器の内壁に所定の間隔で配設された仕切板により構成する、管状容器を所定の間隔で仕切る仕切部材と、前記仕切部材間に位置する1以上の被加熱物の流れ方向とは逆方向の混合が発生する撹拌翼(撹拌羽根)を有し、前記管状容器を軸通する撹拌軸と、マイクロ波加熱手段とを備え、前記管状容器内を流れる被加熱物を、撹拌翼(撹拌羽根)で撹拌しながらマイクロ波加熱するマイクロ波化学反応装置を提案した。
呼気中に含まれる種々の成分を大量に濃縮して捕集する濃縮捕集装置としては、冷媒を収容する冷却容器と、この冷却容器に収容された冷媒に差し込まれると共に一端に形成された呼気入口と他端に形成された呼気出口と最下部に形成された滴下口とを有する捕集管と、この捕集管の前記滴下口に着脱自在に連結された回収びんとを備え、前記捕集管は、前記滴下口に向かって螺旋状に低くなるように曲げられた捕集部を有する、コールドトラップ方式の濃縮捕集装置が知られている(特許文献3)。
特許第4145335号公報 特許第5016984号公報 特開平7−103974号公報
従来、マイクロ波照射装置は、蒸留・抽出は可能であるが乾燥はできない装置、あるいはスラリー状のものは乾燥できても野菜などの立体形状を保ったままの乾燥はできない装置、ブランチングのみしかできない装置など、特定の機能に特化した装置が提供されるのみであった。
しかしながら、用途に応じて複数のマイクロ波照射装置を準備することは、高コストで有り、設置スペースの問題もある。そこで、本発明は、多用途に用いることができるマイクロ波照射装置および当該装置を用いたマイクロ波照射方法を提供することを目的とする。
また、マイクロ波照射による加熱では、どんなに注意を払っていても被照射物に焦げが生じてしまう場合がある。被照射物に少しでも焦げが発生すると、香り成分を含む水や精油成分に焦げたにおいが移り、商品として全く使い物にならなくなる。本発明は、焦げの問題を解決することができるマイクロ波照射装置および当該装置を用いたマイクロ波照射方法を提供することも目的とする。
発明者は、釜の内部構造を対象物の性状にあわせて変更可能とすることで、多用途に用いることができるマイクロ波照射装置および方法を提供することを可能とした。これによれば、マイクロ波の選択加熱を利用し、例えば大きな形状の野菜でもそのままの形を残したまま、焦げなしで乾燥することが可能となる。
すなわち、本発明は、以下の技術手段から構成される。
[1]導波管が接続される照射窓加熱容器前記加熱容器の底に配置された接続軸前記接続軸を回動させる駆動装置、および、加熱容器の蓋備え、減圧可能な加熱釜と、前記加熱釜に接続される導波管と、マイクロ波発振器と、を備えたマイクロ波照射装置であって、前記接続軸は、互いに異なる複数のアタッチメントを着脱自在に切り替えて装着することができ、前記複数のアタッチメントは、撹拌羽根およびマイクロ波透過性材により構成される回転盤を含み、さらに、マイクロ波透過性材により構成される皿部と、脚部とを有し、前記回転盤上に着脱自在に設置可能な第1の回転棚(33)と、水分を通過させる孔が多数設けられたマイクロ波透過性材により構成され、前記回転盤上に着脱自在に設置可能な乾燥カゴと、を備えることを特徴とするマイクロ波照射装置
[2]さらに、マイクロ波透過性材により構成される皿部と、脚部とを有し、前記第1の回転棚(33)上に着脱自在に設置可能な第2の回転(34)を備えることを特徴とする[1]に記載のマイクロ波照射装置
[3]前記第1の回転棚(33)および前記第2の回転棚(34)の脚部が、マイクロ波透過性の絶縁物により構成されていることを特徴とする[2]に記載のマイクロ波照射装置
[4]被照射物の露出面を覆うメッシュ部を有し、乾燥カゴの上部に取り付け可能な蓋アタッチメントを備えることを特徴とする[1]または[2]に記載のマイクロ波照射装置
][1]に記載のマイクロ波照射装置を用いたマイクロ波照射方法であって、前記乾燥カゴに被照射物を配置し、前記加熱容器内に、前記被照射物の乾燥重量に対し1/10〜20倍のマイクロ波を吸収する液体を配置した状態でマイクロ波を所定時間照射することにより被照射物を乾燥させることを特徴とするマイクロ波照射方法。
[6]前記加熱容器内の被照射物が柑橘類の皮、柑橘類の残渣、野菜類、根菜類、果物類および樹木の葉からなる群から選択されることを特徴とする[5]に記載のマイクロ波照射方法。
本発明によれば、釜の内部構造を対象物の性状にあわせて変更可能とすることで、多用途に用いることができるマイクロ波照射装置を提供することができる。
また、被照射物の露出面を覆う部材を備える構成によれば、マイクロ波の偏った当たり方を防止し、また乾燥時に生じ得る被照射物の飛散による焦げを防止することが可能となる。
また、マイクロ波を吸収する液体を配置する構成によれば、焦げの問題を解決し、従来よりも均一な乾燥を行うことが可能となる。
さらに、蒸留部を備える構成によれば、従来は除去されていた低沸点成分の回収が可能となる。
撹拌羽根が装着された第一実施形態例に係るマイクロ波照射システムの構成図である。 実施形態例に係る加熱容器の(a)側面図および(b)上面図である。 撹拌羽根と接続軸との接続態様を示した加熱容器の側面図であって、(a)は撹拌羽根を接続軸に装着した状態の側面図であり、(b)は撹拌羽根を接続軸から分離した状態の側面図である。 回転盤と接続軸との接続態様を示した加熱容器の側面図であって、(a)は回転盤を接続軸に装着した状態の側面図であり、(b)は回転盤を接続軸から分離した状態の側面図である。 回転棚を備えた加熱容器の側面図であって、(a)は回転盤および回転棚を装着した状態の側面図であり、(b)は回転盤および回転棚を分離した状態の側面図である。 所定量の水を加熱容器内に配置した状態でトマトをほぼ絶乾状態まで加熱した際の測定結果を示すグラフである。 第二実施形態例に係るマイクロ波照射システムの構成図である。
以下、本発明の好ましい実施形態例に係るマイクロ波照射システムを説明する。実施形態例に係るマイクロ波照射システムは、蒸留機能、抽出機能、乾燥機能、ブランチング機能を備えている。これらの各機能はそれぞれを単独で実施するだけでなく、同時に或いは連続して実施することも可能である。例えば、蒸留をしながら乾燥物を得ること、ブランチングをした後、そのまま乾燥を行うことが開示される。
《第一実施形態例》
図1は、撹拌羽根21が装着された第一実施形態例に係るマイクロ波照射システム1の構成図である。このマイクロ波照射システム1は、照射部Aと蒸留部Bとから構成される。照射部Aは、被反応物が収納される加熱釜10と、撹拌羽根21を回動させる駆動装置22と、加熱釜10にマイクロ波を供給するマイクロ波発振器31と、加熱釜10とマイクロ波発振器31とを接続する導波管32とを備えている。蒸留部Bは、コンデンサ41と、チラー42と、ジャケット付きの分液容器43と、蒸留水回収容器44と、コールドトラップ45と、真空ポンプ46とを備えている。
<照射部A>
加熱釜10は、加熱容器11と、加熱容器の蓋12とから構成される。加熱容器11および蓋12は、それぞれフランジ部を有しており、対向する両フランジ部を狭圧することにより固定される。加熱釜10は、例えば、数リットル〜数百リットルの容量(最低容量は撹拌羽根の中央固定ノブが隠れる液量、最大容量は攪拌時の液面上昇を加味すれば、釜容量の2/3となる)であり、複数の加熱釜を連結して使用する場合もある。乾燥時、蒸留時、抽出時およびブランチング時には、気化効率を高めるために加熱釜内を減圧することが好ましい。加熱釜10は、例えば0.1kPa〜大気圧、好ましくは2kPa〜大気圧で、さらに好ましくは10kPa〜20kPaの減圧下で用いられ、内部温度は例えば最大150℃である。
加熱容器11には、排水バルブ13が設けられた配管および駆動装置22が接続される。駆動装置22は、例えばモータであり、接続軸23を介して撹拌羽根21を回動させる。撹拌羽根21および接続軸23の構成については後述する。
蓋12には、導波管32、大気開放バルブ14が設けられた配管およびコンデンサ41と連通する配管15が接続される。大気開放バルブ14は、圧力逃し弁(ベント)として機能するものであるが、必須の構成では無い。
導波管32が接続される蓋12の開口部には、マイクロ波を吸収しないマイクロ波透過性材からなる照射窓(図示せず)を設けることが好ましい。この照射窓は、例えば、石英、セラミックス、テフロン(登録商標)などにより構成することができる。導波管32の接続位置は図示する空間照射の態様に限定されず、液中照射するものでもよい。また、導波管32は、複数本設けてもよく、空間照射と液中照射を組み合わせてもよい。
導波管32の蓋12とは逆側の端部は、マイクロ波発振器31と接続されている。マイクロ波発振器31の出力は、例えば、0.1kW〜3.0kW/Lである。
図2は、実施形態例に係る加熱容器の(a)側面図および(b)上面図である。
加熱容器11の底の中心には接続軸23が設けられている。接続軸23は、図2(b)に示すように、上面視略正方形の形状で有り、正方形の中央にネジ穴が設けられている。接続軸23は、加熱釜10の内部構造を組み替えるためのアタッチメントを取り付けるための部材であり、実施形態例では用途に応じて撹拌羽根21および回転盤27が装着される。皿状の回転盤27の上には、用途に応じてカゴ29が載置され、或いは、二段目以降の回転棚(33,34)が設置される。
実施形態例に係るマイクロ波照射システムは、例えば農作物の乾燥・蒸留・抽出・ブランチングに用いることができる。具体的には、撹拌羽根を装着することで、竹の抗菌剤を抽出すること、オレンジ等の柑橘類(ゆず、だいだい、みかん、伊予柑、スダチ)の皮や花類(柑橘の花、バラやラベンダーの花や葉、ショウガ、シソ)から精油を抽出すること、果実酒やオリーブの芯漬けを製造すること、農作物の乾燥・ブランチングをすることができ、回転盤を装着しカゴを載置することで柑橘類の皮、野菜類、根菜類、果物類、樹木の葉、例えば、アスパラガス、ブロッコリー、ボイセンベリー、金時にんじん、トマト、ネギ、アロエ、ジャガイモ、サツマイモ、ジネンジョ、ピーマン、パセリ、ほうれん草、ショウガ、笹の葉、桑の葉、柿の葉、枇杷の葉等の形状を保ったまま乾燥・ブランチングをすることができ、回転盤を装着し二段目以降の回転棚を載置することで少量多品種、特にイチゴ、桃など形が崩れてはいけない果物の乾燥・ブランチングを一度にすることができる。
(撹拌羽根)
図3は、撹拌羽根21と接続軸23との接続態様を示した加熱容器の側面図であって、(a)は撹拌羽根21を接続軸23に装着した状態の側面図であり、(b)は撹拌羽根21を接続軸23から分離した状態の側面図である。
撹拌羽根21は、図3に示す如く接続軸21に装着される。接続軸23は、駆動装置22からの駆動力を撹拌羽根21に伝達する回動軸の役割を奏する。駆動装置22は、回動速度を調節することができる。撹拌羽根21により、被照射物が液体である場合に生じる加熱ムラの問題を解決することができる。
撹拌羽根21は、二羽根の中央に凹部および貫通孔を有するキャップ部を備え、例えば表面がテフロン(登録商標)被覆されたSUSにより構成される。このキャップ部の凹部を接続軸23に嵌着させ、キャップ部の貫通孔を介して固定用ノブ24を螺合することで撹拌羽根21は固定される。固定用ノブ24およびカバー固定ねじ26は、放電防止材として機能するものであり、例えば、表面がテフロン(登録商標)被覆されたSUSにより構成される。被照射物に接触する部分が金属むき出しであると放電が発生する可能性があるので、撹拌羽根等を被覆することで放電を防止している。撹拌羽根21の効果は、次の実験例により確認された。
(実験例1)
酵素が乾燥物中に残存すると、乾燥過程および保存過程で酵素が働き、変色等の劣化が生じる。そこで、被照射物に短時間に高出力のマイクロ波照射して急速加熱して酵素を失活させた後、被照射物を乾燥させることが行われる。
本実験例では、ブロッコリーやアスパラガスなどの粉砕した野菜を加熱釜10に直に投入し、撹拌羽根21を回転した状態において、被照射物が75℃以上になるまで急速加熱した後、40〜60℃に維持して乾燥したところ、変色等の劣化および放電を生じることなく均等に乾燥できることが確認できた。なお、加熱釜10に水等のマイクロ波を吸収する液体は配置しなかった。
(回転盤)
図4は、回転盤27と接続軸23との接続態様を示した加熱容器の側面図であって、(a)は回転盤27を接続軸23に装着した状態の側面図であり、(b)は回転盤27を接続軸23から分離した状態の側面図である。
接続軸23には、図4に示す如く、皿状の回転盤27を装着することも可能である。回転盤27は、被照射物が投入されるカゴ29を載置するための回転棚の役割を奏する。回転盤27の皿部は、テフロン(登録商標)やポリプロピレンなどのマイクロ波透過性材により構成される。回転盤27は、その中央には貫通孔を有する凹部を備えている。この凹部を接続軸23に嵌着させ、凹部の貫通孔を介して回転盤固定ねじ28を螺合することで回転盤27は固定される。マイクロ波照射時、回転盤27は所望の速度で回転される。
カゴ29は、水分は通過するが、被照射物は通過しない孔を多数設けた構造で、マイクロ波透過性材からなる材質で構成される。カゴ29は、例えば、テフロン(登録商標)やポリプロピレンなどのマイクロ波を吸収しにくい疎水性高分子樹脂(完全に透過する材質でなくても良いが、少なくとも100℃以上の耐熱性が必要)により構成される。
(カバー部材)
マイクロ波照射時には、カゴ29に投入された被照射物の上面をカバー部材30により覆うことが好ましい。カバー部材30は、マイクロ波の一部を遮蔽する構造物あるいは吸収する物質であって、布、メッシュ、板が例示される。メッシュの目の粗さは0.5mm以下とすることが好ましく、被照射物が飛散した場合もある程度遮蔽できるように、更に目を細かくすること(例えば、0.3mm以下)が好ましい。マイクロ波を多少吸収する綿、セルロース、ポリエステルなどがメッシュの好ましい材質として例示される。板の材質としては、マイクロ波を多少吸収する木材、PET、ポリカーボネート、アクリル樹脂などが使用でき、マイクロ波の透過の割合(強度)に合わせて、1mm程度の厚みから調整する。
カバー部材30は、本システムによるブランチング処理→乾燥処理という連続処理においても有効である。例えば、枇杷などの果実をカゴ29に入れ、布などのカバー部材30で表面を覆い、ブランチング処理した後、減圧下で乾燥することが開示される。
カバー部材30は、カゴ29に取り付け可能な蓋構造(蓋アタッチメント)としてもよい。カバー部材30を設置することで、マイクロ波の偏った当たり方を防止することで従来よりも均一な加熱を行うことが可能となり、また被照射物である乾燥物の焦げや急速昇温(突沸)による飛散を防ぐことが可能となる。特に、塩分を含む被照射物の乾燥に有効である。カバー部材30の効果は、次の実験例により確認された。
(実験例2)
トマトの乾燥において、遮蔽物なしでそのまま加熱すると、トマトの表面のみが高温になり、表面が焦げたのに対し、カバー部材としての木綿の布をかぶせることにより表面の焦げを防ぐことができた。ただし、水分含量が低下した状態で100%のマイクロ波出力を加えた場合には焦げが発生し、50%のマイクロ波出力を加えた場合には焦げなしで80%の水分が除去された。
塩漬けトマトの乾燥において、遮蔽物を置かずに加熱すると、急速に加熱されたトマトが突沸により加熱釜内に飛散し、飛散したトマトがさらに加熱され、高分子樹脂からなるカゴ29を焦がし、煙が発生した。
(保湿用液体)
被照射物を乾燥させる際には、加熱容器11内に水等のマイクロ波を吸収する液体(保湿用液体)を配置することが好ましい。加熱容器11内に配置する保湿用液体は、その量が少なすぎると焦げが生じる原因となり、多すぎると乾燥が遅くなる原因となる。従って、加熱容器11内に配置する保湿用液体の量は、被加熱物の乾燥重量に対し1/10〜20倍とすることが好ましく、1/2〜10倍とすることがより好ましく、1〜5倍とすることがさらに好ましい。
また、被照射物を乾燥させる際には、流出水分量に応じて照射出力を下げていくことが好ましい。例えば、被照射物中の水分量に対し照射出力を1kW/kg〜0.2kW/kgとすることが開示される。
保湿用液体は、本システムによるブランチング処理→乾燥処理という連続処理においても有効である。例えば、枇杷などの果実をカゴ29に入れ、加熱容器11内に保湿用液体を配置し、ブランチング処理した後、減圧下で乾燥することが開示される。
(実験例3)
約500gのトマト、ボイセンベリー、イチゴなどの農作物を四国計測工業(株)製μリアクターExで重量が約200gになるまでマイクロ波で加熱した。被照射物は、足のついた網状の台(テフロン(登録商標)またはポリプロピレン製)の上に置き、収納容器に収納した。収納容器は、パイレックス(登録商標)ガラス製の蓋付きセパラブル容器を使用した。加熱釜の底部に水100gを入れた保湿容器を置き、出力を落としながら、試料中の水分が50〜70g減少するまで、約30分間をかけてマイクロ波を照射した。このとき、保湿容器中の水の減少量は15〜20gであり、試料中の水と保湿容器中の水の減少割合は約7:3であった。保湿容器の水を補充し、乾燥を続けることで、試料の焦げなしで、試料中の約85%の水分が除去できたが、保湿容器中の水の減少割合は徐々に増大していった。最終的な乾燥は低温乾燥機により行った。
以上の工程を経ることにより、上記の農作物に焦げを発生させることなく、均一な乾燥を実現することができた。
(実験例4)
584gのトマトを四国計測工業(株)製μリアクターExで重量が29.5gになるまでマイクロ波で加熱した。トマトは、実験例3と同様に、足のついた網状の台(テフロン(登録商標)またはポリプロピレン製)の上に置き、パイレックス(登録商標)ガラス製収納容器に収納した。乾燥時間は5時間30分で、2時間終了時に台の下に水を100g添加した。3時間経過時以降、30分毎に添加した水の減少量を測定し、再度水を100g添加する工程を5時間30分経過時まで繰り返した。この測定結果を図6に示す。
以上の工程を経ることにより、未処理トマトをほぼ絶乾(残存水分0.6%)となるまで焦げなしで乾燥することができた。
(実験例5)
約35kgのネギを直接マイクロ波で加熱し、ネギ中の水分の約50〜60%を蒸発させた。このときの水分の流出速度は4kg/hrであった。このネギをカゴに入れ、加熱釜の底部に水を入れた保湿容器を置き乾燥を継続した結果、焦げなしで7.7kgまでネギを乾燥することができた。最終的には低温乾燥機で乾燥し、ネギの重量は2.9 kgとなった。
以上の工程を経ることにより、ネギに焦げを発生させることなく、均一な乾燥を実現することができた。
(回転棚)
図5は、回転棚を備えた加熱容器11の側面図であって、(a)は回転盤27および回転棚33,34を装着した状態の側面図であり、(b)は回転盤27および回転棚33,34を分離した状態の側面図である。
回転盤27には、図5に示す如く、皿状の回転棚33,34を載置して利用することも可能である。実施形態例に係る回転棚33,34は、回転盤27に積載されるのみであり、固定されていない。
回転棚33,34は、皿部と脚部とを備える。皿部は、孔のない容器構造としてもよいし、被照射物が通過しない程度の孔を多数設けたザル構造としてもよい。脚部は、皿部を支持すると共に、下段との固定に用いられる。皿部は、テフロン(登録商標)やポリプロピレンなどのマイクロ波透過性材により構成される。脚部は、その上部がSUS304、下部がテフロン(登録商標)などのマイクロ波透過性の絶縁物により構成される。脚部の下部を絶縁物により構成するのは、放電の可能性があるためである。
<蒸留部B>
蒸留部Bは、精油成分の抽出、エキス分を含む水の回収に用いられる。例えば、柑橘類の残渣から水分や精油を気化させるとともに、気化した水分や精油を冷却し、凝縮液として抽出するために用いられる。柑橘類には、ゆず、だいだい、みかん、伊予柑、スダチが含まれる。柑橘類から精油成分を抽出する工程で得られる水には香り成分、水溶性低沸点成分などが含まれており、これをエキス分を含む水として利用する。同様にエキス分を含む水を、野菜類、根菜類、果物類、樹木の葉、例えば、アスパラガス、ブロッコリー、ボイセンベリー、金時にんじん、トマト、ネギ、アロエ、ジャガイモ、サツマイモ、ジネンジョ、ピーマン、パセリ、ほうれん草、ショウガ、笹の葉、桑の葉、柿の葉、枇杷の葉、イチゴおよび桃などからも得ることができる。ただし、これらからは精油成分が得られないので、乾燥物とエキス分を含む水が主生成物となる。
コンデンサ41は、配管15により加熱釜10と連通され、配管16によりジャケット付きの分液容器43に連通されており、分液容器43に所望の凝縮液が流入する。コンデンサ41および分液容器43には、チラー42からの冷媒が循環する配管が接続されている。分液容器43の下部には、蒸留水容器44と連通する配管17が接続されており、エキス分を含む水が蒸留水容器44に流入する。被照射物が柑橘類の場合には、アルコール系精油成分を含むオイリーな蒸留水(例えば、精油成分を0.1〜1%含む蒸留水)が蒸留水容器44に流入する。
蒸留水容器44と加熱釜10を配管で連通し、加熱釜10に蒸留水を返送するようにしてもよい。上述したように、被照射物の焦げを防止するために、保湿用液体を加熱釜10内に配置することが好ましいところ、蒸留水容器44に流入した蒸留水を戻すことで、エキス分を低濃度にすることなく回収することができるという有利な効果が奏されるからである。
分液容器43は、一般的な化学実験に使用される分液漏斗と同様な構造で、油分と水分を分離する。好ましい態様の分液容器43は冷却機能を実現するために二重管構造とする。外側を冷却することにより、揮発しやすい香り成分、低沸点成分のロスを防げるからである。
蒸留水容器44は、配管18により真空ポンプ46と連通されている。真空ポンプ46による減圧度は、バルブ52により調節可能である。好ましくは、蒸留水容器44と真空ポンプ46との間に低温トラップ45を設ける。低温トラップ45は、例えば、ガラスまたはSUS等の金属製、液体窒素あるいはドライアイス+アセトンで冷却して捕集する公知の構造のものを用いることができる。低温トラップ45の大きさは流量により決せられ、例えば、高さ20cm〜50cm、直径5cm〜30cmの円筒形のものを用いる。油分等を抽出するために蒸留水容器44を減圧すると、香り成分、低沸点成分も水相から取り除かれることになるが、低温トラップ45を設けることにより香り成分、低沸点成分を回収することが可能である。低温トラップ45が内部を通過する気体を、例えば10℃以下に冷却することで、香り成分や低沸点成分がトラップの内壁に付着する。
低温トラップ45により、精油成分が回収されることは実験で確認済みである。トラップされた香り成分、低沸点成分は、エキス分を含む水で溶解・再分散することで回収される。この際、蒸留水、エタノールなどのアルコール、ヘキサンなどの炭化水素を用いて回収することも可能である。ただし、アルコールや炭化水素を用いて回収すると、溶解度の関係で、水の場合と異なる成分が回収されることに注意が必要である。
以上に説明した本発明のマイクロ波照射装置によれば、対象物の性状(液状、固形物、ペースト状)にあわせて内部構造をアタッチメントで組み替えられるので、蒸留、抽出、乾燥、ブランチング(酵素の失活)を同一の装置で行うことが可能である。
また、マイクロ波を吸収する液体を加熱釜内に配置する構成によれば、食材などにとって致命的な焦げの問題を解決し、従来よりも均一な乾燥を行うことが可能となる。
さらに、蒸留部を設けることにより、被照射物を乾燥すると共に、エキス分を含む水(および精油成分)を回収することが可能である。
《第二実施形態例》
図7は、第二実施形態例に係るマイクロ波照射システム1の構成図である。第二実施形態例は、冷却器47および第二のチラー48を備える点で第一実施形態例と相違し、その他の構成は第一実施形態例と同じである。以下では、第一実施形態例との相違点に係る構成を中心に説明し、同じ構成については説明を割愛する。
第二実施形態例の冷却器47は、コンデンサ41と分液容器43とを接続する配管16に設けられる。このような位置に冷却器47が設けられるのは、配管16が常温であると、コンデンサ41で冷却された成分の一部が分液容器43へ到達する前に揮発し、真空状態のコンデンサ41に引き戻されるという課題があるからである。すなわち、冷却器47は、第一冷却器として機能するコンデンサ41と第二冷却器として機能する分液容器43とを連通する配管16に設けられた第三の冷却器として機能するといえる。
第二実施形態例の冷却器47は、配管16と連通する内管と、当該内管を覆う外部容器とを備える二重管構造であり、外部容器内に第二のチラー48から供給される冷媒(例えば、冷却水)を循環させることで、内管を通過する成分を冷却する。ここで、冷却器47の外部容器は任意の形状を採用することができ、例えば、内管と同心の大径の管状としてもよいし螺旋管状としてもよい。また、外部容器は、第一実施形態例の配管16をそのまま用いた上で、配管16を覆う外部容器を後付けすることにより実現してもよい。
また、本実施形態例では、第二のチラー48を第一のチラー42と別個に設けているが、第一のチラー42により冷却器47に冷媒を供給する構成としてもよい。また、コンデンサ41および冷却器47で冷却を行い、分液容器43では冷却を行わない構成としてもよい。
以上の構成を備える第二実施形態例のシステムによれば、コンデンサ41から分液容器43への送出途中に成分が揮発し、真空状態のコンデンサ41に引き戻されるという課題を解消することが可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
1 マイクロ波照射システム
10 加熱釜
11 加熱容器
12 蓋
13 排水バルブ
14 大気開放バルブ
15〜18 配管
21 撹拌羽根
22 駆動装置
23 接続軸
24 固定用ノブ
25 ノブカバー
26 カバー固定ねじ
27 回転盤
28 回転盤固定ねじ
29 カゴ
30 カバー部材
31 マイクロ波発振器
32 導波管
33 回転棚(二段目)
34 回転棚(三段目)
41 コンデンサ(成分濃縮装置)
42 (第一の)チラー
43 分液容器
44 蒸留水回収容器
45 低温トラップ
46 真空ポンプ(減圧装置)
47 冷却器
48 (第二の)チラー
51 排水バルブ
52 バルブ


Claims (6)

  1. 導波管が接続される照射窓、加熱容器、前記加熱容器の底に配置された接続軸、前記接続軸を回動させる駆動装置、および、加熱容器の蓋を備え、減圧可能な加熱釜と、
    前記加熱釜に接続される導波管と、
    マイクロ波発振器と、を備えたマイクロ波照射装置であって、
    前記接続軸は、互いに異なる複数のアタッチメントを着脱自在に切り替えて装着することができ、
    前記複数のアタッチメントは、撹拌羽根およびマイクロ波透過性材により構成される回転盤を含み、
    さらに、マイクロ波透過性材により構成される皿部と、脚部とを有し、前記回転盤上に着脱自在に設置可能な第1の回転棚(33)と、
    水分を通過させる孔が多数設けられたマイクロ波透過性材により構成され、前記回転盤上に着脱自在に設置可能な乾燥カゴと、を備えることを特徴とするマイクロ波照射装置。
  2. さらに、マイクロ波透過性材により構成される皿部と、脚部とを有し、前記第1の回転棚(33)上に着脱自在に設置可能な第2の回転棚(34)を備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
  3. 前記第1の回転棚(33)および前記第2の回転棚(34)の脚部が、マイクロ波透過性の絶縁物により構成されていることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ波照射装置。
  4. 被照射物の露出面を覆うメッシュ部を有し、乾燥カゴの上部に取り付け可能な蓋アタッチメントを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマイクロ波照射装置。
  5. 請求項1に記載のマイクロ波照射装置を用いたマイクロ波照射方法であって、
    前記乾燥カゴに被照射物を配置し、前記加熱容器内に、前記被照射物の乾燥重量に対し1/10〜20倍のマイクロ波を吸収する液体を配置した状態でマイクロ波を所定時間照射することにより被照射物を乾燥させることを特徴とするマイクロ波照射方法。
  6. 前記加熱容器内の被照射物が柑橘類の皮、柑橘類の残渣、野菜類、根菜類、果物類および樹木の葉からなる群から選択されることを特徴とする請求項に記載のマイクロ波照射方法。
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