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JP6497990B2 - 地盤安定化用液体混和剤、地盤安定化材料、およびそれを用いた地盤安定化工法 - Google Patents

地盤安定化用液体混和剤、地盤安定化材料、およびそれを用いた地盤安定化工法 Download PDF

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Description

本発明は、地中にセメントミルクを注入し、地盤を硬化、安定化させる地盤安定化用液体混和剤、地盤安定化材料、および地盤安定化工法に関する。
軟弱地盤のような不安定な地盤を改良するためには、軟弱な地盤を硬化、安定化させなければならない。この際、セメント系固化材に水を混合したセメントスラリーを地盤に混合して固化させる方法がある。このような工法として、地盤改良工法、山留め工法、基礎杭工法、埋め戻し工法などがある。地盤改良工法としては、深層混合処理工法または浅層混合処理工法が代表例であり、山留め工法はソイルセメント柱列壁工法、ソイルセメント地中壁工法、基礎杭工法の代表例は、鋼管ソイルセメント杭工法や鋼管の代わりにPH C杭などの既製杭を使用する合成杭工法などである。
これらの工法は、セメントスラリーを地盤に注入するとセメント粒子と土の粒子とが電気的作用により互いに凝集するために、粘性が上昇し、施工し難い課題がある。また、粘性が高いと、注入したセメントスラリーと同体積の地盤と混入したスライムを排泥できず、地盤中で圧力がかかり地盤が隆起し地表面が盤膨れしてしまうという課題があった(非特許文献1参照)。
混合土の粘性を低下させるものとして、液状のものとしては、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び/又はポリカルボン酸系化合物等を含有する超高圧噴流注入工法用セメント添加剤が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、これらの超高圧噴流注入工法用セメント添加剤は、砂質土や砂分の多いシルト地盤では、その効果がある程度認められるものの、粘性土地盤においては、粘性低下の効果が小さいために多量に添加する必要があり、強度発現性が向上しにくいという課題があった。
一方、混合土の粘性を低下させるものとして、粉体のものとしては、リン酸塩、アルカリ金属含有物(硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機酸、およびアンモニウム塩等を含有する物質を組み合わせたものが知られている(特許文献2〜7参照)。
近年、セメント産業が各方面の産業副産物を原料に受け入れており、産業副産物に由来する微量成分が、セメントの品質に大きな影響を及ぼし、六価クロムの溶出量などにも大きな違いが出てくる。
特許文献8は、CaとSを含む化合物である多硫化カルシウムに生石灰などの固定化材に担持させて、改良処理土の強度の低下をもたらすことなく、有害重金属溶出を著しく抑制する機能を付加した地盤改良材を提供することを目的としている。この文献には、固定化材である生石灰に担持させた後、セメントやセッコウと混合する技術が開示されている。
特許文献9は、Ca(S)(OH)12・20HO及び水酸化カルシウムを主成分とする重金属固定化剤であり、多硫化カルシウムとして市販の石灰硫黄合剤を用いることが記載されている。
しかしながら、これら文献では、混合土の粘性を低下させる効果が少なく、高い粘性低減効果の付与と六価クロムの溶出量を抑えることが可能となるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
坪井 直道、薬液注入工法の実際、第5〜9頁、昭和56年3月25日、鹿島出版会、改訂版第2刷発行
特開平06−127993号公報 特開平05−254903号公報 特開平06−206747号公報 特開平07−206495号公報 特開平07−069695号公報 特開2004−143041号公報 特開平09−194835号公報 特開2001−342461号公報 特開2004−33839号公報
本発明は、スライム(混合土)の流動化によって施工性が改善するだけでなく、六価クロム溶出量が低減する、地盤安定化用液体混和剤、地盤安定化材料、及び地盤安定化工法を提供する。
すなわち、本発明は、(1)pH10以上、酸化還元電位(ORP)が−450mv以下、MgO含有量が0.3%以上の溶液である石灰硫黄合剤を含有してなる地盤安定化用液体混和剤、(2)セメント100質量部に対して0.01〜10質量部使用してなる(1)の地盤安定化用液体混和剤、(3)さらに、ナフタレン類、メラミン類、アミノスルホン酸類、ポリカルボン酸類またはポリエーテル類の中から選ばれた1種または2種の液体減水剤を混合してなる(1)または(2)の地盤安定化用液体混和剤、(4)(1)〜(3)のいずれかの地盤安定化用液体混和剤、水およびセメントを混合してなる地盤安定化用材料。(5)(4)の地盤安定化材料を地盤中に注入し、土と混合して粘性を低下させる地盤安定化工法、である。
本発明の地盤安定化用液体混和剤、地盤安定化材料および地盤安定化工法により、スライムの流動化によって施工性が改善するだけでなく、六価クロム溶出量が低減するなどの効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。
本発明の石灰硫黄合剤とは、主に果樹の農薬として知られ、生石灰と硫黄と水を原料とし、オートクレーブで反応させて得られる固液分離した黄褐色の液体である。CaとSと水を主成分とし、多硫化カルシウム(CaS)が主であり、T‐Ca換算で5〜10%、T−S換算で15〜30%、MgO換算で0.3〜2.0%の範囲でMgを含み、pHは10.0以上である。また、石灰硫黄合剤の酸化還元電位(ORP)は特異的で−450mv以下である。
本発明の石灰硫黄合剤のpHがアルカリ性領域であることは、極めて重要である。pHが10.0未満では、本発明の効果、すなわち、流動性の向上や六価クロムの還元効果、さらには強度発現性が十分に得られない場合がある。
本発明の石灰硫黄合剤の酸化還元電位(ORP)が、−450mv以下の範囲にないと、本発明の効果、すなわち、スライムの流動性の向上や六価クロムの還元効果、さらには強度発現性が十分に得られない場合がある。
本発明の石灰硫黄合剤には、MgO換算で0.3〜2.0%の範囲でMgが含まれる。Mgの含有量がMgO換算で0.3%未満であると、本発明の効果、すなわち、流動性の向上や六価クロムの還元効果、さらには強度発現性が十分に得られない場合がある。
本発明の地盤安定化用液体混和剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、セメント100部に対して0.01〜10部が好ましく、0.1〜5部がより好ましい。地盤安定化用液体混和剤の使用量が少ないと、本発明の効果、すなわち、スライムの流動性の向上や六価クロムの還元効果、さらには強度発現性が十分に得られない場合がある。
本発明の地盤安定化用液体混和剤に、ナフタレン類、メラミン類、アミノスルホン酸類、ポリカルボン酸類またはポリエーテル類からなる1種または2種の液体減水剤を併用することでさらなる流動性の向上を図ることができる。
ナフタレン類、メラミン類、アミノスルホン酸類、ポリカルボン酸類またはポリエーテル類としては、分子量や重合度など特に限定されるものではない。
さらに、スライムの粘性を低下させるものとしてリン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、オキシカルボン酸類があり、これらを併用することも可能である。
本発明の地盤安定化用液体混和剤は、本液体混和剤とセメントと水とを混合して地盤安定化材料を調製する。
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、および中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュまたはシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、ならびに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)などのポルトランドセメント、ならびに、市販されている微粒子セメントなどが挙げられ、これらのうちの一種または二種以上が使用可能である。また、通常セメントに使用されている成分(例えば石膏など)量を増減して調整されたものも使用可能である。
本発明で使用する水の使用量は、土の含水比等で異なり、特に限定されるものではないが、通常、セメント100部に対して、30〜500部が好ましく、50〜300部がより好ましい。30部未満ではスライムの流動性が小さく、500部を超えると強度発現性を阻害する場合がある。
本発明の地盤安定化用液体混和剤は、粘性土に限らず、砂質土や腐食土等の土に対しても優れた効果がある。
この地盤を安定化させる方法の例として、例えば、セメントミルクを、高圧で地中深くに噴射し、土と混合して硬化させ安定化する工法が挙げられ、この方法について以下に記する。
この工法は、地中にセメントミルクを噴射する管を挿入し、管を回転させながら管先端付近からセメントミルクを高圧噴射し、地中の土を切削すると同時に、切削された土とセメントミルクとが混合された混合土を別の管内を通して地上へ排出しながら、一定速度で管を上昇させ、地中を、セメントミルクと土との混合物で置換して硬化させ、地盤を安定化させる工法である。
本発明の混合や攪拌の条件は、地中に高圧噴射する前に本液体混和剤と水とが混合されていれば特に限定するものではないが、本液体混和剤と水とを、回転数10〜1000rpm 程度で回転するグラウトミキサーにより混合するバッチ混合方式や、管内に羽根を設置しているラインミキサーにより混合する連続混合方式等により混合や攪拌が可能である。
次に、本発明の地盤安定化工法について説明する。
まず、地盤改良が必要な箇所を削孔する。削孔径は特に限定されるものではないが注入ロッドが挿入できる大きさであればよい。
削孔の深さは、改良したい領域により変更し特に限定することはできないが、10〜50m程度が通常である。
次に、二重管や三重管構造の注入ロッドを挿入し、セメントスラリーをグラウトポンプ、超高圧ポンプ、又はコンプレッサーなどを用いて圧送し、二重管または三重管のノズルから噴射する。
セメントミルクの圧送圧力は大きい方が好ましいが、二重管、三重管、またはこれらのノズルの磨耗等を考慮すると50〜700kg/cm2程度が通常である。
セメントミルクの送液量は特に限定されるものではないが、30〜800リットル/分程度が好ましい。
このように地中で高圧噴射されたセメントスラリーは、土と一緒に混合攪拌され、また、注入ロッドは回転しながら一定速度で地上へ上昇するので、最終的にはセメントスラリーと土とからなる円柱状の杭が地中に形成される。
この杭の直径は、地盤の硬さを示すN値等の土の条件や噴射の圧送圧力等の施工条件により変化し、特に限定されるものではないが、0.5〜20mが適当である。杭の長さは3m〜50m程度のものが形成可能である。
以下、実験例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
「実験例1」
セメント100部に対して水150部、A〜Kに調製した地盤安定化用液体混和剤をセメント100部に対して2部混合してセメントスラリーを作製する。地盤安定化用液体混和剤GとHはセメント100部に対して4部混合してセメントスラリーを作製した。そのセメントスラリー0.5リットルに対して以下に示す土1リットルをモルタルミキサで低速1分間混合して得られたスライムの粘度、六価クロム溶出量、圧縮強度を測定した。
「使用材料」
土:東京都町田市産粘性土、密度1.47g/ cm3、含水比85%
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
地盤安定化用液体混和剤として以下の溶液を使用した。
地盤安定化用液体混和剤A:石灰硫黄合剤、pHが11.0、酸化還元電位−540mv、MgO含有量が1.0%、T‐Ca量13%、T−S量26%。
地盤安定化用液体混和剤B:石灰硫黄合剤、pHが10.5、酸化還元電位−500mv、MgO含有量が1.0%、T‐Ca量12%、T−S量24%。
地盤安定化用液体混和剤C:石灰硫黄合剤、pHが10.0、酸化還元電位−450mv、MgO含有量が1.0%、T‐Ca量11%、T−S量22%。
地盤安定化用液体混和剤D:石灰硫黄合剤、pHが10.5、酸化還元電位−500mv、MgO含有量が0.5%。T‐Ca量10%、T−S量21%。
地盤安定化用液体混和剤E:石灰硫黄合剤、pHが10.5、酸化還元電位−500mv、MgO含有量が2.0%、T‐Ca量8%、T−S量19%。
地盤安定化用液体混和剤F:石灰硫黄合剤、pHが11.0、酸化還元電位−540mv、MgO含有量が1.0%、T‐Ca量13%、T−S量26%。
地盤安定化用液体混和剤G:ナフタレンスルホン酸塩系減水剤、電気化学工業社製、商品名「FT−500V」、ナフタレンスルホン酸含有率40%
地盤安定化用液体混和剤H:ポリカルボン酸塩系減水剤、花王社製、商品名「マイティ21P」
地盤安定化用液体混和剤I:地盤安定化用液体混和剤AとGを同量混合したもの
地盤安定化用液体混和剤J:地盤安定化用液体混和剤AとHを同量混合したもの
地盤安定化用液体混和剤K:地盤安定化用液体混和剤Iを70%にトリポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムを10%ずつ混合したもの
「試験方法」
粘度:混合したスライムの直後と30分後の粘度をB型粘度計で測定
六価クロム溶出量:混合した排泥をφ5×10cmの型枠に詰めて、水が飛ばないようにビニール袋で封緘にして20℃で材齢7日まで養生する。その後、環境庁台46号法に従って測定
圧縮強度:混合した排泥をφ5×10cmの型枠に詰めて、水が飛ばないようにビニール袋で封緘にして20℃で材齢28日まで養生後に耐圧試験機にて測定
Figure 0006497990
表1より、本発明の地盤安定化用液体混和剤を使用することで、スライムの粘性を低減させ、六価クロム溶出量を減らしながら、さらに強度性状が良好であることが分かる。
「実験例2」
本発明の地盤安定化用液体混和剤Aを使用し、使用量を表2に示すように変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
Figure 0006497990
表2より、本発明の地盤安定化用液体混和剤を使用することにより、スライムの粘度が低減し、六価クロム溶出量を減らしながら、さらに強度性状が良好であることが分かる。
本発明の地盤安定化用液体混和剤、地盤安定化材料および地盤安定化工法により、スライムの流動化によって施工性が改善するだけでなく、六価クロム溶出量が低減するので、環境に配慮した材料を提供することが可能となり、土木、建築分野に好適である。

Claims (5)

  1. pH10以上、酸化還元電位(ORP)が−450mv以下、MgO含有量が0.3%以上2.0%以下の溶液である石灰硫黄合剤を含有してなる地盤安定化用液体混和剤。
  2. セメント100質量部に対して0.01〜10質量部使用してなる請求項1に記載の地盤安定化用液体混和剤。
  3. さらに、ナフタレン類、メラミン類、アミノスルホン酸類、ポリカルボン酸類またはポリエーテル類の中から選ばれた1種または2種の液体減水剤を混合してなる請求項1または2に記載の地盤安定化用液体混和剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の地盤安定化用液体混和剤、水およびセメントを混合してなる地盤安定化用材料。
  5. 請求項4に記載の地盤安定化材料を地盤中に注入し、土と混合して粘性を低下させる地盤安定化工法。
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