払拭体を保持する保持部をハンドルに対し多段に回動傾斜できる払拭体保持具に関し、特に本願の構造に関連するものとして特許文献1(実開平04−28850号公報)が知られている。特許文献1はスポンジとスクレーパを装着した洗浄用ブラシに関するもので、本願の図18及び図19に図示され、以下に詳細に説明する。
図18は、特許文献1に記載された多段回動傾斜機構を有する洗浄用ブラシの分解斜視図であり、ブラシヘッドA10を棒状体A30に対して多段に回動傾斜して固定する機構を示している。図18を参照すると、スポンジA3を狭着したスポンジ挟み123をスポンジ挟み部材装着部A12に挿し込み、且つスクレーパA2をスクレーパ装着部A11に咬合してブラシヘッドA10が構成される。ブラシヘッドA10の下面には、内歯132を有した2個のU型連結片131が垂下されている。
ハンドルである棒状体A30の先端の雄ネジ形成部311にボス315の雌ネジ形成部313を螺合し、凹凸形成部314を連結部材A20に押し込み、L形切欠きA22にピンPをロックして、棒状体A30は連結部材A20に接続される。切欠部A21が穿設された連結部材A20の先端には、内歯2312を有した2個のブラケットプレート2311が突設されてブラケットサポート231が構成されている。
ブラシヘッドA10のブラケットA13をブラケットプレート231に多段に回動傾斜して固定するために、左右の連動ユニット232、232と左右のスプリング233、233と左右の押し部材234、234と左右の軸桿235、235が配置され、左右の連結状態は同一であるから、片側の連結構造だけを説明する。
軸孔2321の内面にリング状突起2322を形成した連動ユニット232を、ギヤ2323が内歯132に噛合するようにU型連結片131の内側から外向きに挿し込み、更にギヤ2323が内歯2312にも噛合するようにブラケットプレート2311の内側から外向きに挿し込まれる。その結果、ギヤ2323は内歯132と内歯2312と噛み込んで、ブラシヘッドA10は棒状体A30に対し固定される。
ブラケットプレート2311の外面にスプリング233の一端を押し当て、スプリング233の他端を突き当て部2342の環状溝に挿通して押し部材234を嵌め込み、更に軸桿235を突き当て部2342の中を通してギヤ2323の軸孔2321に挿通し、軸桿235のリング状切欠部2351がギヤ2323の中のリング状突起2322と嵌合される。その結果、押し部材234はギヤ2323を有する連動ユニット232と一体化されて抜け止めされる。
図19は、押し部材234を突出させた回動阻止状態と押し部材234を押圧した回動可能状態を示した特許文献1の要部断面図である。
同図(a)は左右の押し部材234、234を突出させた回動阻止状態を示している。押し部材234はブラケットプレート2311からスプリング233の付勢により外方に突出しており、軸桿235が連動ユニット232を外方へ引き出す。従って、連動ユニット232のギヤ2323はU型連結片131の内歯132と噛合し、且つブラケットプレート2311の内歯2312にも噛合するため、ブラシヘッドA10は回動が阻止され、
その状態で固定された状態になる。
同図(b)は左右の押し部材234、234を内方へ押圧した回動可能状態を示している。手指により、押し部材234はブラケットプレート2311に対しスプリング233に抗して内方へ押圧されており、軸桿235が連動ユニット232を内方へ移動させる。従って、連動ユニット232のギヤ2323はU型連結片131の内歯132には噛合しているが、ブラケットプレート2311の内歯2312からは脱離し、ブラシヘッドA10はブラケットプレート2311に対し回動可能になり、結果的に棒状体A30に対し任意の角度で傾斜させることができる。この回動可能状態でブラシヘッドA10を任意の角度まで傾斜させて、手指を左右の押し部材234、234から離せば、スプリング233の付勢力により押し部材234、234が外方へ突出し、図(a)の状態になって上記角度で傾斜固定されることになる。
上記特許文献1の構造は左右の押し部材234、234の同時押圧機構を有する点で取扱い易い構造である。しかし、押し部材234は連動ユニット232のギヤ2323に対し、リング状切欠2351とリング状突起2322との嵌合で一体化されて抜け止めされているが、押し部材234の回転(自転)は規制されずに自由になっている。即ち、押し部材234は回転自由になっているために、押し部材234に手指摩擦で回転させてもブラシヘッドA10を回動傾斜させることができず、汚れたブラシヘッドA10を手で持って回動傾斜させることになり、手が汚れると云う欠点がある。更に、軸桿235のリング状切欠2351はギヤ2323のリング状突起2322と凹凸で嵌合するといっても、軸桿235のリング状切欠2351はリング状突起2322に変形すること無く無理嵌合するだけであるから、その結合力は極めて弱い。従って、軸桿235を無理に引き抜けばリング状切欠2351はリング状突起2322から比較的簡単に抜け、抜け止め構造が簡単に破れるという欠点を有している。
多段回動傾斜構造を備えた払拭体保持具に関して、特許文献2(特開2001−218719号公報)及び特許文献3(特許第4347465号公報)が知られている。特許文献2に係る多段回動傾斜構造を特許文献2の部材符号で説明すると、柄(ハンドル)1の先端に2個の腕部(軸受突部)13、14を間隙部を介して対向配置し、ヘッド(把持部)6の後端に同方向に延びるボス12を突設し、ボス12を2個の腕部13、14の間隙部に挿し込んでボス12を狭着する。次に、腕部13の孔からボス12の軸孔まで第1ストッパー15を挿入し、コイルばね10を介して第2ストッパー16を他方の腕部14の孔からボス12の孔まで挿入し、第1ストッパー15と第2ストッパー16を相互に軸孔の中で係合して全体を一体に回動自在に連結する。ボス12の軸孔には周方向に等間隔に位置決め凹部42が形成され、第2ストッパー16には位置決め係合部28が周方向に突設され、位置決め係合部28が位置決め凹部42に係合すると、ヘッド6は回動不能になる。コイルばね10に抗して第2ストッパー16を押圧すると、位置決め係合部28は位置決め凹部42から離脱してヘッド6は回動可能になる。そこで、ヘッド6を回動してゆくと、コイルばね10の付勢力で隣の位置決め凹部42に位置決め係合部28が係合して、ヘッド6は傾斜した状態でロックされる。このようにして、ヘッド6を回動して多段の傾斜位置でロックすることができる。
特許文献3に開示された角度調節式清掃具は、一部特許文献2と同様の構造を有しているので、特許文献2の用語を括弧内に示しながら特許文献3の部材符号で説明すると、把手部材(ハンドル)4の先端に間隙部を介して第1連結部(腕部)10aと第2連結部(腕部)10bを対向形成し、払掃材(把持部、ヘッド)2の後端に前記間隙部に挿し込まれる連結部(ボス)11を設け、連結部11の内周には周方向に多数の凹部(位置決め凹部)22を形成する。第1連結部10aに周方向に突条(位置決め係合部)15を形成した第1部材(第1ストッパー)13aを挿入し、第2連結部10bに圧縮ばね33を介し
て第2部材(第2ストッパー)13bを挿入して両者を軸孔12の中で一体に係合する。
第2部材13bの操作頭部31を押圧して圧縮バネ33を圧縮させながら第1部材13aを外方に突出させ、突条15を凹部22から離脱させて払掃材2は回動自由になる。払掃材2を少し回動させると、隣の凹部22に突条15が圧縮ばね33の復元力で係合し、払掃材2を傾斜状態で固定できる。手指で操作頭部31を押圧し続けると、払掃材2を多段の傾斜角度で傾斜ロックすることが可能になる。
特許文献2と特許文献3のいずれにあっても、一対の第1ストッパー及び第2ストッパーにより連結した回動軸部を構成してヘッドを多段回動して傾斜ロックするロック構造を有するものの、片方のストッパーは傾斜ロックに関与しない不均衡なロック構造となっており、残りの片側のストッパーだけで傾斜ロックするため、十分なロック保持力が得られないといった欠点があった。
多段回動傾斜構造を備えた払拭体保持具に関する別の特許文献として、特許文献4(特許第4113740号公報)、特許文献5(特許第4041706号公報)及び特許文献6(特許第5052249号公報)がある。
特許文献4の場合、特許文献4の部材符号で説明すると、保持柄(ハンドル)2の先端に2個の支持体33、33を支持空間34を介して対向させ、保持柄2の適当位置に操作孔43が開口される。支持体(把持部、ヘッド)4の後端に回動連結部5を突設し、回動部31の半分の周面には凹部38a〜38dが形成され、残りの半分の周面は小径の円筒となっている。保持柄2の先端側内部には、前記操作孔43に突没する押圧釦70が配置され、ロッド状の係合部61を突設したロック部材60が圧縮コイルスプリング64を介して内設されている。
回動連結部5は支持空間34に配置されて、2個の支持体33、33に狭着される。通常、圧縮コイルスプリング64の付勢力によりロック部材60は押圧され、押圧釦70は操作孔43から突出し、ロッド状の係合部61は回動部31の凹部38a〜38dのいずれかに係合して、支持体4は回動不能になっている。押圧釦71を押下すると、圧縮コイルスプリング64に抗してロック部材60は横移動し、係合部61は凹部から離脱し、支持体4は回動可能になる。押圧釦71から手指を離しながら支持体4を回動させると、圧縮コイルスプリング64の復元力により係合部61が隣の凹部に自然に係合し、その位置で支持体4は傾斜状態でロックされる。このようにして、支持体4を適当な傾斜角度で多段に回動ロックすることができる。
特許文献5には、特許文献4と共通する符号部材として、保持柄2、支持体(把持部)4、凹部38a〜38d、支持体33、支持空間34、回動連結部5、回動部31、傾斜した押圧部71b、72bを有する押圧釦70、操作孔43が存在し、それらの機能は特許文献4と同一である。特許文献5に固有の符号部材として、保持柄2の中に、同軸方向に案内軸54と摺動本体51とロッド状のロック部53が一体形成されて配置され、摺動本体51には摺動傾斜面51e、51fが形成され、案内軸54には圧縮コイルスプリング55が外装されている。
押圧釦70が操作孔43から突出しているとき、圧縮コイルスプリング55の付勢力によりロック部53は凹部38a〜38dのいずれかに係合して回動部31は回動不能になり、支持体4は回動不能に固定されている。押圧釦70を押下して操作孔43に没入させると、押圧釦70に形成された傾斜状の押圧部71b、72bが摺動傾斜面51e、51fに摺動し、押圧分力によりロック部材50と案内軸54が圧縮コイルスプリング55を圧縮してロック部53が凹部38a〜38dから離脱し、回動部31及び支持体4は回動
可能に設定される。押圧釦70から手指を離して支持体4を回動させると、隣の凹部にロック部53が圧縮コイルスプリング55の復元力で押し込まれ、支持体4は傾斜状態で回動不能にロックされる。このようにして、支持体4を適当な傾斜角度で多段に回動ロックすることができる。
特許文献6には、さらに別の多段回動傾斜構造が開示されている。特許文献6の部材符号で説明すると、手指で握る柄(ハンドル)10の先端に周方向に複数の凹面36を形成した取付部31が突設されている。払拭体を装着する本体(把持部、ヘッド)20の先端に二股状の取付部32、32を突設し、その近傍のガイド孔(操作孔)60には、中央に矩形孔を開口して上部が操作部51になり下部がロック部52になるロックピース50がばね61を介して内装されている。本体20の内部には、軸装されたバネ42と、凸部41Fとくびれ部41Cとストッパー面41Dを有して前端に凸面41Aを形成した係合部材41が配置され、凸部41Fはバネ42に内挿され、くびれ部41Cは前記矩形孔を貫通し、凸面41Aは前記凹面36に突合されている。
操作部51がばね61の付勢力でガイド孔60から突出しているとき、ロック部52がストッパー面41Dに当接して係合部材41が後退不能になって凸面41Aが凹面36に突合し、本体20は柄10に対し回動不能に固定される。操作部51を押圧してロックピース50をバネ61に抗して押下すると、ロック部52はストッパー面41Dから抜脱し、係合部材41は後退可能になる。凸面41Aはばね42の付勢力だけで凹面36に当接しているから、本体20を回動すると、凸面41Aは凹面36に当接しながら隣の凹面36に乗り移り、その状態で操作部51から手指を離すとロックピース50の全体がばね61の復元力で上動し、操作部51はガイド孔60から突出し、ロック部52はストッパー面41Dに当接して、本体20は傾斜状態で回動不能にロックされる。このようにして多段の傾斜ロックが可能になる。
特許文献1の構造では、前述したように、押し部材234は回転自由になっているために、押し部材234、234を手指で押して摩擦で押し部材を回転させてもブラシヘッドA10を回動傾斜させることができないから、汚れたブラシヘッドA10を手で持って回動傾斜させることになり、手指が汚れると云う欠点がある。更に、軸桿235を引き抜けばリング状切欠2351はリング状突起2322から簡単に抜け、抜け止め構造が容易に破れるという欠点を有している。
特許文献2、3の構造では、前述したように、第1ストッパー側だけで傾斜ロックするため、十分なロック保持力が得られないといった欠点があった。
特許文献4〜6の場合、回動軸部から離れたハンドル部位に突没可能な1個の押ボタンを配置して、押ボタンの突出状態では回動不能になり、押ボタンの没入状態で回動可能にする構造が採用されている。
しかし、ハンドルの内部にロッド状の可動構造体を内蔵して押ボタンの突没により可動構造体を係脱させる複雑構造を有しているから、可動構造体と押ボタンは小さな構造体にならざるを得ない。従って、払拭紙を用いた紙モップのような軽量の保持具には使用できるが、糸製のパイルモップのような重量の保持具には適さない。また、ロッド状の可動構造体を1個の凹部に押し込んでロックする構造であり、払拭体がパイルのような繊維重量物であるときにはロッドに大きな集中応力が作用し、多数回の使用により凹部が破断する危険性がある。
本発明は、上記課題に鑑み、片側押ボタン操作によりハンドル傾斜角度を多段に切替可能であり、各傾斜角度の保持を強固に行うことのできる片側押ボタン型払拭体保持具及び清掃具を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明に係る第1の形態は、払拭体を装着して保持する保持部と、前記保持部と連結する連結端部を有した連結部と、を備え、前記連結部の後方側にハンドルを取着可能にし、前記保持部に対する前記連結部の傾斜角度を多段階に切替可能にした払拭体保持具であって、前記保持部の幅方向に沿った中空形状を有した頭部を前記保持部に突設し、前記保持部の幅方向に移動可能に前記頭部に可動体を装着し、前記可動体の片側端部に押ボタン部材を設け、前記頭部の外側に向けて付勢する付勢力が前記可動体に付与可能な付勢手段を前記頭部に設け、前記片側端部と反対側の前記可動体の端部に抜止部材を設け、それぞれ中空形状を備え、前記頭部の両端側に配置されて頭部軸芯の回りに回動可能な第1回動片及び第2回動片により構成された回動ロック部材を前記連結端部に設け、前記傾斜角度を多段階に保持するための第1保持手段及び第2保持手段を設け、前記第1保持手段は、前記第1回動片の中空内周に設けられ、傾斜角度に応じた第1ロック係合部と、前記可動体の前記片側端部側に設けられ、前記第1ロック係合部と係合可能な押ボタン側ロック係合部と、を有し、前記第2保持手段は、前記第2回動片の中空内周に設けられ、傾斜角度に応じた第2ロック係合部と、前記抜止部材の内側に設けられ、前記第2ロック係合部と係合可能な抜止側ロック係合部と、を有し、前記第1ロック係合部と前記押ボタン側ロック係合部とをロック係合させた位置に応じた位置にて、前記第2ロック係合部と前記抜止側ロック係合部とがロック係合する2重ロック係合によって、該2重ロック係合に応じた傾斜角度を保持し、前記押ボタン部材を外側から押圧力を付加して、前記付勢手段の付勢力に抗して前記可動体を幅方向に移動させて2重ロック係合を解除して前記回動ロック部材が前記頭部軸芯の回りに回動可能な回動可能状態にし、前記回動ロック部材の回動により2重ロック係合位置を変更してから押圧力を除くことによって、前記付勢力を受けて逆方向に前記可動体を移動させて変更位置における2重ロック係合を可能にしたことを特徴とする片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第2の形態は、前記頭部の中空内周に幅方向に沿って形成された摺動案内部を有し、前記可動体は、中空部を有した筒体形状を備え、筒体外周に前記摺動案内部に係合する摺動用係合部を有し、前記押圧力の付加により、前記可動体は前記摺動用係合部と前記摺動案内部との係合によって前記幅方向に摺動して前記2重ロック係合を解除可能にした片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第3の形態は、前記第1回動片及び前記第2回動片は前記連結端部にて二股状に分岐して配置され、それぞれリング形状を有し、前記第1ロック係合部と前記第2ロック係合部を内歯歯車形状に形成した片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第4の形態は、前記押ボタン部材及び前記抜止部材は、夫々、蓋部材と、
前記蓋部材より延設された内挿部とをフランジ状に造形した形状を有し、前記内挿部を前記中空部に挿入した状態で前記内挿部を前記可動体に係着して、前記頭部において前記押ボタン部材及び前記抜止部材により前記可動体を挟持した片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第5の形態は、前記第1回動片及び前記第2回動片を前記頭部に外嵌される間隔で設け、両回動片を前記頭部に外嵌した状態で前記内挿部を前記中空部に挿着して、前記回動可能状態において前記蓋部材により各回動片を軸支可能にした片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第6の形態は、前記第1回動片の外側に前記蓋部材が嵌入する蓋用凹部を凹設し、前記押ボタン部材を押圧操作し始めてから、前記蓋部材の裏側が前記蓋用凹部の底部に当接するまでの押圧操作ストロークにおいて前記2重ロック係合を解除可能にした片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明の第7の形態は、前記中空部の各開口から内向きに該幅方向に沿って刻設した所定長の条溝と、前記内挿部より外向きに突設した係止部を、内挿部先端側を支点にして前記押ボタン部材及び前記抜止部材の中心軸方向に片持ち状に前記内挿部に支持した係止片と、を備え、前記係止片を前記条溝に沿って撓ませながら前記内挿部を前記中空部の両端側から挿入して、前記係止片の撓み反発力によって前記押ボタン部材及び前記抜止部材を前記可動体に対して挟持状態に結合した片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第8の形態は、前記摺動案内部は前記頭部の中空内周に幅方向に沿ってレール状に突設され、前記摺動用係合部を、前記筒体外周に前記軸芯の方向に沿って前記摺動案内部に摺動自在に嵌合される凹溝形状に凹設した片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第9の形態は、前記付勢手段は、前記頭部の外周と内周との間に環状に形成された有底状の環状溝と、前記環状溝に内装されるスプリングと、内装された前記スプリングが露出するように前記環状溝の内壁の一部を除去した除去部と、前記除去部を遊通して前記内装溝に進入可能に前記可動体に形成されたスプリング当接部と、によって構成され、前記押圧力の付加によって前記スプリングと前記スプリング当接部が当接して前記スプリングを圧縮し前記可動体を幅方向に移動可能にした片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第10の形態は、前記除去部は前記内壁を切欠いた切欠き部で構成され、前記切欠き部の横幅を前記スプリング当接部の幅より広くした片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第11の形態は、複数の除去部を前記内装溝に対して対称状に形成し、各除去部毎に遊通する前記スプリング当接部を設けた片側押ボタン型払拭体保持具である。
本発明に係る第12の形態は、第1〜第11のいずれかの形態に係る片側押ボタン型払拭体保持具を用い、前記保持部に払拭体を装着したことを特徴とする清掃具である。
本発明に係る第1の形態によれば、前記第1保持手段及び前記第2保持手段によって、前記第1ロック係合部と前記押ボタン側ロック係合部とをロック係合させた位置に応じた位置にて、前記第2ロック係合部と前記抜止側ロック係合部とがロック係合する2重ロック係合によって、該2重ロック係合に応じた傾斜角度を保持すると共に、前記押ボタン部
材を外側から押圧力を付加して、前記付勢手段の付勢力に抗して前記可動体を幅方向に移動させて2重ロック係合を解除して前記回動ロック部材が前記頭部軸芯の回りに回動可能な回動可能状態にし、前記回動ロック部材の回動により2重ロック係合位置を変更してから押圧力を除くことによって、前記付勢力を受けて逆方向に前記可動体を移動させて変更位置における2重ロック係合を可能にすることができる。
従って、本形態に係る保持具は、傾斜角度の保持の際には、前記第1ロック係合部と前記押ボタン側ロック係合部による押しボタン側でのロック係合に加え、抜止側にて前記第2ロック係合部と前記抜止側ロック係合部とによってもロック係合する2重ロック係合を行うので、前記保持部を前記ハンドルに対して所定傾斜角度に強固にロックし得るロック保持機能を有する。また、ロック係合の解除の際には前記可動体が幅方向に移動することによって前記2重ロック係合の各係合が同時的に解除可能になって傾斜角度切替操作を円滑に行うことができる。特に、前記保持部と前記ハンドルを相対的に回動させるときには、例えば、保持部側を床面等に添えて前記押ボタン部材を手指で片押し操作すると前記ハンドルが前記保持部に対して回動自在になるロック解除機能を発揮するので、片押しボタン操作によって傾斜角度の切替操作を簡易に行うことができる。
本発明に係る第2の形態によれば、前記頭部の中空内周に幅方向に沿って形成された摺動案内部を有し、前記可動体は、中空部を有した筒体形状を備え、筒体外周に前記摺動案内部に係合する摺動用係合部を有し、前記押圧力の付加により、前記可動体は前記摺動用係合部と前記摺動案内部との係合によって前記幅方向に摺動して前記2重ロック係合を解除可能にしたので、前記可動体の前記幅方向への摺動を自在にする移動機構と、第1及び第2のロック係合部による2重ロック係合機構とを一体的にした強固な傾斜角度切替構造を前記保持部にコンパクトに実装することができる。
本発明に係る第3の形態によれば、前記第1回動片及び前記第2回動片は前記連結端部にて二股状に分岐して配置され、それぞれリング形状を有し、前記前記第1ロック係合部と前記第2ロック係合部を内歯歯車形状に形成したので、例えば、水平状態から180°回動した位置の範囲内で多段に切替可能な片側押ボタン型払拭体保持具を実現することができる。
本発明に係る第4の形態によれば、前記押ボタン部材及び前記抜止部材は、夫々、蓋部材と、前記蓋部材より延設された内挿部とをフランジ状に造形した形状を有し、前記内挿部を前記中空部に挿入した状態で前記内挿部を前記可動体に係着して、前記頭部において前記押ボタン部材及び前記抜止部材により前記可動体を挟持したので、一組の前記押ボタン部材及び前記抜止部材を前記可動体と一体的に結合して挟持する挟持構造によってより強固な傾斜角度切替構造を備えた片側押ボタン型払拭体保持具を実現することができる。しかも、本形態に係る保持具は、該結合による挟持構造を有するので、これらの部材の抜け止めを確実堅固にして耐久性を向上させることができる。
本発明に係る第5の形態によれば、前記第1回動片及び前記第2回動片を前記頭部に外嵌される間隔で設け、両回動片を前記頭部に外嵌した状態で前記内挿部を前記中空部に挿着して、前記回動可能状態において前記蓋部材により各回動片を軸支可能にしたので、傾斜角度切替の際に前記回動ロック部材を円滑に回動可能にし得る強固な傾斜角度切替構造を備えた片側押ボタン型払拭体保持具を実現することができる。
本発明に係る第6の形態によれば、前記第1回動片の外側に前記蓋部材が嵌入する蓋用凹部を凹設し、前記押ボタン部材を押圧操作し始めてから、前記蓋部材の裏側が前記蓋用凹部の底部に当接するまでの押圧操作ストロークにおいて前記2重ロック係合を解除可能にしたので、前記蓋用凹部内部における比較的短い押圧操作ストロークで押ボタン操作を
行うだけで傾斜角度の切替操作を簡易に行える操作性に優れた片側押ボタン型払拭体保持具を実現することができる。
本発明に係る第7の形態によれば、前記中空部の各開口から内向きに該幅方向に沿って刻設した所定長の条溝と、前記内挿部より外向きに突設した係止部を、内挿部先端側を支点にして前記押ボタン部材及び前記抜止部材の中心軸方向に片持ち状に前記内挿部に支持した係止片と、を備え、前記係止片を前記条溝に沿って撓ませながら前記内挿部を前記中空部の両端側から挿入して、前記係止片の撓み反発力によって前記押ボタン部材及び前記抜止部材を前記可動体に対して挟持状態に結合したので、該結合による前記可動体の挟着構造が簡易に組立可能となると共に、確実堅固な押ボタン部材抜け止め構造と堅固なロック保持構造とを有した片側押ボタン型払拭体保持具を実現することができる。
本発明に係る第8の形態によれば、前記摺動案内部は前記頭部の中空内周に幅方向に沿ってレール状に突設され、前記摺動用係合部を、前記筒体外周に前記軸芯の方向に沿って前記摺動案内部に摺動自在に嵌合される凹溝形状に凹設したので、レール状の前記摺動案内部に凹溝形状の前記摺動案内部を嵌合させることによって前記可動体の移動を幅方向に沿った摺動に確実に規制することができ、前記押ボタン部材の突没動作を円滑化した片側押ボタン型払拭体保持具を実現することができる。
本発明においては、前記付勢手段の付勢力発生源として1又は2以上のスプリング部材を使用することができる。特に、本発明に係る第9の形態によれば、前記付勢手段は、前記頭部の外周と内周との間に環状に形成された有底状の環状溝と、前記環状溝に内装されるスプリングと、内装された前記スプリングが露出するように前記環状溝の内壁の一部を除去した除去部と、前記除去部を遊通して前記内装溝に進入可能に前記可動体に形成されたスプリング当接部と、によって構成され、前記押圧力の付加によって前記スプリングと前記スプリング当接部が当接して前記スプリングを圧縮し前記可動体を幅方向に移動可能にしたので、前記可動体にバネ付勢力を与えるスプリングを前記頭部に形成した前記環状溝に内装して付勢力伝達機構をコンパクトに構成して、ハンドルの脆弱化を誘引する穿設加工を施すことなく、しかも組立部品点数を増やすことなく単一のスプリングを用いて前記保持部側に強固に設けた傾斜角度切替機能部を有することができる。
本発明に係る第10の形態によれば、前記除去部は前記内壁を切欠いた切欠き部で構成され、前記切欠き部の横幅を前記スプリング当接部の幅より広くしたので、前記スプリング当接部を介して外部からの押圧力の前記スプリングへの付加と、前記スプリングから前記スプリング当接部へのスプリング力の伝達を確実に行って前記操作側押ボタン部材の突没動作を円滑化した片側押ボタン型払拭体保持具を実現することができる。
本発明に係る第11の形態によれば、複数の除去部を前記内装溝に対して対称状に形成し、各除去部毎に遊通する前記スプリング当接部を設けたので、前記環状溝に内装した前記スプリングの端部の複数箇所において前記スプリング当接部が均一に又は略均一に当接させることができ、外部押圧力の前記スプリングへの付加と、前記スプリングからの前記スプリング当接部へのスプリング付勢力の伝達を確実に行え、前記押ボタン部材の突没動作を円滑化した片側押ボタン型払拭体保持具を実現することができる。
本発明に係る第12の形態によれば、第1〜第11のいずれかの形態に係る片側押ボタン型払拭体保持具を用い、前記保持部に払拭体を装着して、第1〜第11の形態の夫々の利点を備えた清掃具を提供することができる。
払拭体としては、パイル状モップや不織紙やスポンジ体など各種の清掃用払拭体が利用でき、払拭体を装着した把持部を適当な角度に傾斜させることにより、電灯や棚やタンス
等の上側の見え難い部分の清掃を簡単に行える清掃具を提供することができる。
以下に、本発明に係る片側押ボタン型払拭体保持具及び清掃具の実施形態を添付する図面に従って詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る清掃具の全体を示し、図2は図1の清掃具に使用される片側押ボタン型払拭体保持具Aの分解斜視図である。
本実施形態に係る清掃具は、片側押ボタン型払拭体保持具Aと、ハンドルHと、ハンドル先端部に取り付けたグリップ部Gとを有し、払拭体保持具Aに払拭体Mを装着した清掃具である。払拭体保持具Aは、払拭体Mを着脱自在に装着して保持する保持部1と、保持部1を前方側に多段に回動傾斜させて連結固定する連結部2とを有する。ハンドルHは連結部2の後方側に連結される連結管部H1を有する。本実施形態において掃除具組立部材には、PCやPOM等の樹脂成型材を使用することができる。
ハンドルHには全長が例えば、約1mの長尺ハンドルや全長が例えば、50cm前後の短尺状ハンドル、あるいは連結管部を伸縮自在にした長さ調整自在型ハンドルを使用することができる。更に、本発明は短い連結管部を屈曲させてグリップ部を取り付けたハンディ型掃除具にも適用することができる。
連結部2は後方側にて連結管部H1の樹脂管が挿着される連結端部49と、連結端部49の前方側に設けた回動ロック部材とを有する。該回動ロック部材は、一対の回動片28、29により構成されている。各回動片は中空のリング形状を有し、連結端部49の先端側にて二股形状に設けられている。回動片28、29は夫々、本発明における第1、第2の回動片に対応する。
図3は保持部1の全体を示し、図4は保持部1の側面、図5は図4の裏側の側面を示す。図6は保持部1の頭部3を水平状に切り欠いた頭部切断面を示す。
保持部1は細長舌片形状の長手状本体1Aを有し、薄肉の先端側から傾斜状に肉厚になる板片で構成されている。長手状本体1Aの肉厚後部には連結部2と連結される頭部3が一体成型されている。頭部3は台座部1Bを介して長手状本体1Aに突設されている。
本実施形態の掃除具は、頭部3を介して連結部2及びハンドルHが長手状本体1Aの長手方向に向けて連結された「こて」様の形体を有する。本発明は該形体の掃除具に限らず、ハンドル軸方向に対して略T字形ないし略L字形に保持部本体を向けた掃除具にも適用することができる。
払拭体Mは、上部の一部を開口した長手状の袋部を有した基布と、該基布の表側に多数のパイルが植設されたパイルモップにより構成されている。払拭体Mの開口より長手状本体1Aを挿入して保持部1全体を覆うように払拭体Mは保持部1に被着される。パイル材にはナイロン等の合成繊維や、例えば、木綿等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維を使用することができる。本発明においては、パイルモップの他に、払拭体をスポンジ体、ブラシ体、払拭布、払拭紙等により保持部1に装着可能に構成することができる。本実施形態のように保持部1に対し脱着自在にした払拭体に限らず、本発明においては保持部1に固着される払拭体を使用することができる。
頭部3は保持部1の幅方向に沿った軸芯を有する貫通孔部4を形成した筒形状を有する。該軸芯は長手状本体1Aの長手方向の中心線と直交している。貫通孔部4の内周には該幅方向(軸芯方向)に沿って、3本の摺動案内部9a、9b、9c(以下、これらを総称して摺動案内部9という。)が突設されている。摺動案内部9a、9cの中間に位置する摺動案内部9bは貫通孔部4の内周底部に設けられている。摺動案内部9は図4等に示すように、貫通孔部4を正面視したときに摺動案内部9bが下側の頂点に位置して、夫々の端部が逆三角形状をなす位置に対称配置されている。
貫通孔部4の内周より内側には頭部3の外周との間に内装溝7が全周にわたって形成されている。内装溝7は裏側に貫通せず、スプリング6を内装し得る溝深さを有する。図5に示すように正面視と反対の裏側から見ると、頭部3の裏側の端面には3本の摺動案内部9a、9b、9cが逆三角形配置に対称配置されている。貫通孔部4内部には、摺動案内部9に案内され可動体10が軸芯方向に摺動自在になるように装着されている。
内装溝7の内壁で摺動案内部9a、9b、9c間には、貫通孔部4の一開放端より該内壁の一部を矩形に切り欠いて除去した切欠き部で形成した除去部8が設けられている。該切欠き部の横幅はスプリング当接部13の幅より広く、スプリング当接部13が遊挿可能になっている。3つの除去部8は摺動案内部9の逆三角形配置と逆向きの三角形状をなす位置に対称配置されている。該内壁を切り欠いた除去部8の円弧状幅は2つの摺動案内部間の円弧距離の約半分である。除去部8の軸芯方向の奥行きは内装溝7の溝深さの約4/5の長さになっている。
図7は可動体10の外観斜視図であり、図8、図9は可動体10の正面、側面を示す。
可動体10は貫通孔部4より小さく、貫通孔部4内に収容可能な大きさで、中空部11を有した筒体形状に構成されている。筒体外周には中空部11の中心軸方向に3つの摺動用係合部12が刻設されている。3つの摺動用係合部12は夫々、摺動案内部9a、9b、9cが嵌入可能な筒体外周の位置に、図7の正面視に示すように、逆三角形状に配設されている。3つの摺動用係合部12を摺動案内部9に嵌合させることによって可動体10は貫通孔部4内に軸芯方向に摺動自在に装着可能になっている。
中空部11の一端側には、内装溝7に臨むように該筒体外周より鍔状に延設された3つのスプリング当接部13a、13b、13c(以下、これらを総称してスプリング当接部13という。)が設けられている。図8に示すように、スプリング当接部13は3つの除去部8に遊挿し得る幅を有し、夫々の中心が円周を3分割するように配設されている。即ち、可動体10の外周は貫通孔部4の内側外周47より内側に位置すると共に、スプリング当接部13の各最外周端は内装溝7の外側外周48より内側で内装溝7内に位置して、スプリング当接部13の夫々は裏側にて内装溝7に内装されたスプリング6の端部に当接可能になっている。
スプリング当接部13の表側にはリング状の突出部13dの外周より歯車の歯のように突設された押ボタン側ロック係合部14a、14b、14c(以下、これらを総称して押ボタン側ロック係合部14という。)が設けられている。押ボタン側ロック係合部14a、14cは図8に示すように可動体10の中心線C2上に位置し、押ボタン側ロック係合部14bは中心線C1上に位置する。即ち、押ボタン側ロック係合部14bの中心は押ボタン側ロック係合部14a、14cの各中心と90°の角度をなしている。
可動体10を貫通孔部4内に装着した装着状態において、スプリング当接部13a、13cの間のスプリング当接部13bは上側に位置し、その位置でのスプリング当接部13bの鉛直方向の中心線C1に対しスプリング当接部13a、13cは対称位置に位置する。
中空部11内部には、中空部両端の各開口から内向きに軸芯方向に沿って所定長の条溝15が2本ずつ刻設されている。表側の一対の条溝15は中空部11の表側開口より内向きに中心線C1上の上下位置に設けられている。裏側の一対の条溝15は中空部11の裏側開口より内向きに中心線C1と直交する水平線C2上の左右位置に設けられている。
中空部11の各開口より一対の押ボタン部材が挿着可能になっている。一対の押ボタン部材は押ボタン部材16と抜止部材17とによって構成されている。
図10は押ボタン部材16の外観斜視図である。図11は押ボタン部材16の正面図である。
押ボタン部材16は、円形の蓋部材18と、蓋部材18の裏側の略円筒形状の蓋側根元部50より延設された内挿部20、21を有し、蓋部材18に対して内挿部20、21は蓋側根元部50を介してフランジ状に造形されている。内挿部20、21は夫々、部材中心側に向いた開放部分51を備えた略C字形断面形状を有し、互いの開放部分51が対応している。内挿部20、21は蓋側根元部50の縦中心軸上に並ぶように配設されている。蓋部材18の蓋面は手指等により押操作するための操作面に使用される。
図12は抜止部材17の外観斜視図である。図13は抜止部材17の正面図である。
抜止部材17は、円形の蓋部材19と、蓋部材19の裏側の略円筒形状の蓋側根元部5
2より延設された内挿部22、23を有し、蓋部材19に対して内挿部22、23は蓋側根元部52を介してフランジ状に造形されている。内挿部22、23は夫々、部材中心側に向いた開放部分53を備えた略C字形断面形状を有し、互いの開放部分53が対応している。内挿部22、23は蓋側根元部53の縦中心軸上に並ぶように配設されている。
各押ボタン部材には可動体10と係着させるための係着手段が設けられている。該係着手段は裏表側に設けた条溝15に嵌着されて押ボタン部材を圧着させる係止片24、26により構成されている。表側の一対の条溝15に対して裏側の一対の条溝15は90°回転したクロス位置関係に設けられている。押ボタン部材16の内挿部20、21の夫々には、外側に突出した係止部25を備え、先端側を支点にして押ボタン部材16の中心軸方向に片持ち状に支持した係止片24が一体的に形成されている。抜止部材17の内挿部22、23の夫々には、外側に突出した係止部27を備え、先端側を支点にして抜止部材17の中心軸方向に片持ち状に支持した係止片26が一体的に形成されている。上記クロス位置関係により抜止部材17は可動体10に対して非押ボタン部材16と90°回転した位置で係着されている。
図14は連結部2の回動ロック部材を示す。図15は回動片28から見た該回動ロック部材の正面図である。
回動片28、29の外側端部には、夫々、蓋部材18、19が嵌入される蓋用凹部30が凹設されている。回動片28の中空内周に沿って押ボタン側ロック係合部14に係合可能な複数の第1ロック係合部31〜37が設けられている。第1ロック係合部31〜37は回動片28内周を切り欠いた凹部により、押ボタン側ロック係合部14を外歯歯車として歯合し得るように内歯歯車形状に形成されている。
第1ロック係合部31、35は連結部2の長手方向の中心線C5に上に対向して形成されている。第1ロック係合部33、37は連結部2の長手方向の中心線C5に直交する横断線C3上に対向して形成されている。第1ロック係合部32、36は中心線C5と横断線C3の間に45°をなして交差する交差線C4上に対向して形成されている。即ち、第1ロック係合部31〜37の中心はは互いに45°ずつずれて配設されている。第1ロック係合部31と第1ロック係合部37の間には切欠きのない円弧部38が設けられている。
第1ロック係合部31、33、35が、夫々押ボタン側ロック係合部14a、14b、14cに嵌合して係合することによって、図1に示したように、連結部2(ハンドルH)が保持部1にほぼ平行に伏倒した伏倒状態B1になる。伏倒状態B1から、図1のCCW方向、つまり図15の反時計回りに45°回転して、第1ロック係合部32、34、36が、夫々押ボタン側ロック係合部14a、14b、14cに嵌合して係合することによって、連結部2(ハンドルH)が保持部1に対して45°傾斜した45°傾斜状態B2になる。45°傾斜状態B2からさらに45°回転して、第1ロック係合部33、35、37が、夫々押ボタン側ロック係合部14a、14b、14cに嵌合して係合することによって、連結部2(ハンドルH)が保持部1に対して90°傾斜した90°傾斜状態B3になる。
90°傾斜状態B3からさらに45°回転させても円弧部38が障害となって、145°では3つの第1ロック係合部が押ボタン側ロック係合部14と嵌合しないようになっている。勿論、円弧部38に代えて、第1ロック係合部31〜37と同様のピッチで第1ロック係合部を凹設して145°でもロック係合可能にしてもよい。145°を超えて回転させると、第1ロック係合部35、37、31が、夫々押ボタン側ロック係合部14a、14b、14cに嵌合して係合することによって伏倒状態B1と逆向きに、連結部2(ハ
ンドルH)が保持部1側に180°回転してほぼ平行に伏倒した逆伏倒状態B4になる。逆伏倒状態B4でも清掃に供し得るが、逆伏倒状態B4はハンドルHを折り畳んで全体的に短縮した状態になるので未使用時の清掃具の保管、収納に適する。以上のように、本実施形態においては、ハンドルHの向きを伏倒状態B1、45°傾斜状態B2、90°傾斜状態B3及び逆伏倒状態B4の4態様に切り替えることができる。なお、図1においてはこれらの態様を連結部4の軸芯方向で示している。
一方の回動片28と対向する他方の回動片29には、第1ロック係合部31〜37と同様にして、回動片29内周を切り欠いた凹部により第2ロック係合部40〜46が形成されている。抜止部材17の蓋部材19の内側には、抜止側ロック係合部17a〜17cが形成されている。第2ロック係合部40〜46は抜止側ロック係合部17a〜17cを外歯歯車として歯合し得るように内歯歯車形状に形成されている。
押ボタン側ロック係合部14a〜14cは、図7及び図8に示したように、水平側に位置する押ボタン側ロック係合部14a、14cに対して押ボタン側ロック係合部14bは中央上方に位置している。抜止部材17は可動体10に対して非押ボタン部材16と90°回転した位置で係着されているので、抜止側ロック係合部17a〜17cは、押ボタン側ロック係合部14a〜14cを180°反転した位置関係に設けられている。即ち、水平側に位置する抜止側ロック係合部17a、17cに対して抜止側ロック係合部17bは中央下方に位置している。第2ロック係合部40〜46は、第1ロック係合部31〜37と押ボタン側ロック係合部14a〜14cとのロック係合位置に応じて抜止側ロック係合部17a〜17cに係合可能になっている。第2ロック係合部40と第2ロック係合部46の間には、上記180°の反転関係から円弧部38に対応する円弧部39が設けられている。
従って、ロック係合の際には第1ロック係合部31〜37と押ボタン側ロック係合部14との係合に加え、第2ロック係合部40〜46を抜止側ロック係合部17a〜17cに係合させて2重係合状態にしてより強固に傾斜角度を保持することができる。押圧力の付加により可動体10が幅方向に移動することに伴い抜止部材17が外方に移動するので、第1ロック係合部31〜37と押ボタン側ロック係合部14との係合解除と共に抜止側ロック係合部17a〜17cと第2ロック係合部40〜46との係合も解除され、連結部2を回動可能時状態に移行させ、傾斜角度変更の操作を円滑に行うことができる。
本実施形態に係る清掃具は上記の構成を有し、次のようにして組み立てられている。即ち、スプリング6を内装溝7に内装しておき、可動体10を貫通孔部4内に内装溝7の開放口側より挿入して摺動用係合部12は保持部1の幅方向に沿って摺動可能に摺動案内部9a〜9cに嵌合して係合させられる。ついで、除去部8を介してスプリング当接部13がスプリング6の端部に対向するように可動体10は貫通孔部4内に該幅方向に摺動自在に収納した状態で、回動ロック部材が頭部3に外嵌される。更に、各押ボタン部材の内挿部20〜23を中空部11の両端側から挿入して各回動片を蓋部材18、19で規制すると共に可動体10を挟持するように係着手段(中空部内の条溝15、内挿部20〜23の係止部25、27を備えた係止片24、26)を介して可動体10に各押ボタン部材が係着される。
ハンドルHを所定の傾斜角度にして掃除具を使用する場合、いずれかの係合位置で押ボタン側ロック係合部14a〜14cを第1ロック係合部31〜37にロック係合させると共に、該係合位置に応じた位置で抜止側ロック係合部17a〜17cを第2ロック係合部40〜46にロック係合させた強固な2重ロック係合状態により使用される。
図16は、清掃具のハンドルを伏倒状態にしたときの頭部3付近の水平断面を示す部分
切欠斜視図であり、同図(16A)は該伏倒状態のロック係合状態を示し、同図(16B)は該伏倒状態のロック係合の解除状態を示す。図17は、払拭体保持具Aに用いるスプリング6とスプリング当接部13との当接状態を示す部分切欠き断面図である。
係合位置を変更する際には、(16A)の伏倒状態のロック係合状態を例にして説明すると、スプリング当接部13の当接によってスプリング6のバネ力に抗して押ボタン部材16を外側から押圧力を付加することにより、押ボタン部材16と可動体10と抜止部材17を保持部1の幅方向に摺動させることができる。この可動体10の抜止部材17側への移動によって押ボタン側ロック係合部14a〜14cと第1ロック係合部31〜37とのロック係合が解除されるので、回動ロック部材(連結部2を介してハンドルH)は可動体10の軸芯の回りに回動可能になる。ハンドルHを連結部2を通じて回動させ所望の係合位置まで回動させた状態で該押圧力を除くことによって、スプリング6のバネ付勢力を受けて押ボタン部材16と可動体10と抜止部材17はロック係合可能に逆方向に摺動復帰し、該別の係合位置で再びロック係合させることができる。特に、本実施形態においては環状溝7に内装されたスプリング6による弾性付勢力によって可動体10を保持部1の幅方向に移動自在にすることによりロック係合動作あるいはロック係合解除動作を可能にしているので、押ボタン操作を繰り返し行っても押圧力が該幅方向に加わるだけで保持部1の板厚方向への負荷とはならず保持部1の座屈変形を生じさせずに済み、掃除具の耐久性の向上に寄与することができる。
本発明においては単一のスプリング当接部を設けてもよいが、スプリング当接部13a〜13bは複数の除去部8を内装溝7に対して対称状に形成し、各除去部毎に遊通するように設けているので、環状溝7に内装したスプリング6の環状端部の複数箇所においてスプリング当接部13が均一に又は略均一に当接させることができる。従って、外部押圧力のスプリング6への付加と、スプリング6からのスプリング当接部13へのスプリング付勢力の伝達を確実に行え、押ボタン部材16の突没動作を円滑化した片側押ボタン型払拭体保持具Aを実現することができる。なお、均一な当接状態を得るのは、スプリング当接部の個数を2又は4以上にすることができる。
本実施形態によれば、保持部1とハンドルHを相対的に回動させるときには、例えば、保持部1側を床面等に添えて押ボタン部材16の蓋部材18の表面を手指で片押し操作すると保持部1がハンドルHに対して図1のCCW方向、あるいは逆の時計回り方向CWに回動傾斜自在になるロック解除構造を有するので、片押しボタン操作によって傾斜角度の切替操作を簡易に行うことができる。
また、本実施形態においては、可動体10の押ボタン側ロック係合部14を回動ロック部材の第1ロック係合部31〜37にロック係合させることにより、保持部1をハンドルHに対して所定角度にロックするロック機能部を有すると共に、押ボタン部材16を可動体10に係着して該ロック機能部と一体化されて自由回転が規制され、しかも押ボタン部材16を押圧したままで押ボタンを手指の摩擦力で回転(自転)させると保持部も一体に回動する構造になっている。このため、汚れた払拭体を全く触らずに保持部を回動傾斜できるから衛生状態が改善され、適当な傾斜位置で手指を脱離すると押ボタン部材16がスプリング6のばね付勢力で復帰して保持部1が所定の傾斜状態で固定、保持されるので、回動可能状態と回動不能状態の切り換え操作を簡易に行うことができる。
更に、本実施形態によれば、可動体10を押ボタン部材16及び抜止部材17により保持部1の幅方向に摺動自在に挟着する挟着構造を有するので、これらの押ボタン部材の抜け止めを確実堅固にして耐久性を向上させることができる。
以上のように、払拭体Mを装着して、ハンドルHを適当な角度に傾斜させることにより、電灯や棚やタンス等の上側の見え難い部分の清掃を簡単に行える清掃具を提供すること
ができる。
本実施形態における押ボタン側ロック係合部14と第1ロック係合部31〜37は外歯歯車と内歯歯車の歯合形状に形成しているので、歯合位置によって頭部3の軸芯の回りにおける係合位置の組合せを複数にして、回動可能状態においてハンドルHを回動させることにより簡単且つ確実に歯合位置を切り替えることができ、種々の傾斜角度への切替操作の簡易化を促進することができる。
摺動案内部9と摺動用係合部12は互いに嵌合し合う凸部と凹部により形成したので、可動体10を頭部3に対して保持部1の幅方向に摺動可能にすると共に、頭部3の中心軸回りの自転を規制する機能を簡単な機構で付加することができ、回動可能状態と回動不能状態の切り換え操作を簡易化することができる。なお、可動体10に設けた摺動用係合部12を摺動案内部9に嵌入させて摺動可能に係合させる摺動機構を用いて可動体10を貫通孔部4内で軸芯方向に摺動自在にしているが、摺動案内部9を凹状案内部に形成し、且つ摺動用係合部12を凸状係合部に形成して、これらの凹状案内部と凸状係合部を嵌入係合させる摺動機構を用いて可動体10を摺動自在にするようにしてもよい。
係止片24、26を条溝15に沿って撓ませながら各押ボタン部材の内挿部を中空部11の両端側から挿入して、該係止片の撓み反発力によって押ボタン部材16と抜止部材17により可動体10を挟持することによって、押ボタン部材16及び抜止部材17による可動体10の挟着構造を簡単に構成して、且つ確実堅固な押ボタン部材抜け止め機能を付与することができる。
更に、本実施形態においては、内装溝7を頭部3の外周と貫通孔部4の内周との間に同心円状に刻設して形成し、スプリング6を貫通孔部4の該幅方向に沿った横向き状態で内装溝7に内装した付勢手段を有するので、単一のスプリングを用いてロック係合のために押ボタン部材16にスプリング力を付勢するスプリング力付勢機構を設けることができ、しかも、傾斜角度切替機構を簡単な構造にして、確実にロック係合状態に復帰させることができる。なお、本発明における付勢手段は、頭部3外周に内装する単一のスプリング6を用いた付勢手段に限らず、例えば、各スプリング当接部に当接可能な複数のスプリングを収納するスプリング収納部を複数個、頭部2に形設した付勢手段を使用することができる。
本実施形態においては、各回動片の外側に蓋部材18、19が嵌入する蓋用凹部30を凹設し、押ボタン部材16を押圧操作し始めてから、該蓋部材の裏側が蓋用凹部30の底部に当接するまでの押圧操作ストローク(図16(16A)の蓋部材18の沈み量t1と、同図(16B)の押圧時の突出量t2の合計)において押ボタン側ロック係合部14と第1ロック係合部31〜37とのロック係合が解除されるので、押ボタン部材16及び抜止部材17によって、可動体10と一緒に各回動片も挟着、保持し得る挟着機能を具備して、より堅固な傾斜角度切替機能を有した片側押ボタン型払拭体保持具を備え掃除具を実現することができる。
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。