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JP6455855B2 - 水性金属表面処理剤 - Google Patents

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JP6455855B2 JP2015085759A JP2015085759A JP6455855B2 JP 6455855 B2 JP6455855 B2 JP 6455855B2 JP 2015085759 A JP2015085759 A JP 2015085759A JP 2015085759 A JP2015085759 A JP 2015085759A JP 6455855 B2 JP6455855 B2 JP 6455855B2
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Description

本発明は、従来のクロム酸塩処理及びリン酸塩処理に替わる、耐食性、耐水性、耐薬品性、上塗密着性に優れた処理皮膜を形成でき、かつ貯蔵安定性に優れた、クロム化合物を含まない水性金属表面処理剤、該水性金属表面処理組剤を用いた金属表面処理方法及び該表面処理剤を用いた表面処理金属板に関する。
従来、金属表面の耐食性を向上させるためクロム酸塩処理及びリン酸塩処理が一般に行われている。しかしながら近年クロムの毒性が社会問題になっている。クロム酸塩を使用する表面処理方法は、処理工程でのクロム酸塩ヒュームの飛散の問題、排水処理設備に多大な費用を要すること、さらには化成処理皮膜からクロム酸の溶出による問題などがある。
また、リン酸塩処理では、リン酸亜鉛系、リン酸鉄系の表面処理が通常行われているが、耐食性を付与する目的でリン酸塩処理後、通常クロム酸によるリンス処理を行うためクロム処理の問題とともに、金属表面のエッチングを行うため、金属イオンなどの排水処理、および被処理金属からの金属イオンの溶出によるスラッジ処理などの問題がある。
クロム酸塩処理やリン酸亜鉛処理以外の処理方法としては、
(1)重燐酸アルミニウムを含有する水溶液で処理した後、150〜550℃の温度で加熱する表面処理方法(例えば、特許文献1など参照)、
(2)タンニン酸を含有する水溶液で処理する方法(例えば、特許文献2 など参照)などが提案されている。
しかしながら、(1)の方法は、この上に塗料を塗装する場合、塗料の密着性が十分ではなく、(2)の方法は、耐食性が劣るという問題がある。
また、例えば、特許文献3には、膜厚数μm以下の薄膜の表面処理被膜を有する亜鉛系めっき鋼板として、亜鉛系めっき鋼板を基材とし、これにクロメート被膜を形成し、さらにこの上に最上層として有機複合シリケート被膜を形成した、カチオン電着塗装用防錆鋼板が知られており、このものは、加工性及び耐食性に優れた性能を有する。しかしながら、この防錆鋼板はクロメート被膜を有するため、前記したと同様にクロメートイオンによる安全衛生面の問題があった。また、この防錆鋼板からクロメート被膜を除いた鋼板では、耐食性が大幅に低下する。
特許文献4には、カチオン性ウレタン樹脂、特定のフェノール樹脂、シランカップリング剤、チタン化合物、ならびに特定の酸もしくはその塩を含む表面処理液を用いて亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板を表面処理した表面処理鋼板が開示されている。しかしながら、この表面処理鋼板では、平面部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、加工部耐食性などの耐食性;耐水性、上塗密着性、耐酸性等の特性の性能バランスが必ずしも良好ではない。
また、表面処理剤として、クロムフリーであって、耐食性、耐水性、加工性などの性能に加え、絞り加工などの厳しい加工条件に対しても対応可能な潤滑処理皮膜を形成できる表面処理剤又は表面処理鋼板に関する技術としては、例えば、下記特許文献5〜7に示されるものが知られている。
特許文献5には、ケイ酸リチウム水溶液に有機樹脂、シランカップリング剤、固体潤滑剤を含有させた処理液で金属板表面を処理する技術が開示されているが、無機成分が硬い高分子を形成し易く、処理液がアルカリ金属を多く含むため、表面処理鋼板上に上塗塗膜を形成した場合に、上塗塗膜の二次密着性に劣る。
特許文献6には、有機樹脂、リン酸化合物、固形潤滑剤を含有し、任意成分として微粒シリカ、チオカルボニル基含有有機化合物、バナジウム化合物を含有するクロムフリー表面処理亜鉛系めっき鋼板が開示されている。しかしながら、耐食性や、アルカリや酸に対する耐薬品性については満足できるものではない。
また、特許文献7には、カチオン性ポリウレタン樹脂、カチオン性フェノール樹脂、シランカップリング剤、マンガン化合物、ジルコニウム化合物、バナジウム化合物、特定の物性を有するフィッシャートロプッシュワックスを含有する表面処理液による皮膜を形成させた亜鉛系めっき鋼板が開示されている。しかしながら、アルカリ脱脂後の耐食性、耐薬品性などの点からは必ずしも満足できるものではなく、表面処理液の貯蔵安定性も充分ではないという問題があった。
特公昭53−28857号公報 特開昭51−71233号公報 特開昭60−50180号公報 特開2003−105562号公報 特開平11−58599号公報 特開2000−248384号公報 特開2008−194839号公報
これまでに提案されたクロムフリーの表面処理金属板は、クロメート皮膜上に有機樹脂をコーティングした従来の表面処理金属板に比べて、耐食性、アルカリ脱脂後の耐食性、耐水性、耐薬品性、上塗密着性等の要求特性に関する性能バランスが十分ではなく、また、用いられる水性金属表面処理剤には、貯蔵安定性が十分でないものがあった。
本発明の目的は、クロム化合物を含有することなく、耐食性、アルカリ脱脂後の耐食性、耐水性、耐薬品性、上塗密着性等といった諸性能のバランスに優れた表面処理皮膜を形成した表面処理金属板を得ることができ、かつ貯蔵安定性に優れた、クロムフリーの水性表面処理剤を提供することである。さらに本発明は、この表面処理剤を用いた金属表面処理方法、及びこの表面処理剤による表面処理がなされた表面処理金属板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、リン酸系化合物、フルオロ金属酸及び/又はその塩、アルミナゾル、カチオン性樹脂、及び水をそれぞれ所定量含有する水性金属表面処理剤が、貯蔵安定性に優れ、かつ該水性金属表面処理剤による処理皮膜が形成された表面処理金属板が、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は、(a)リン酸系化合物、
(b)フルオロ金属酸及び/又はその塩、
(c)アルミナゾル、
(d)カチオン性樹脂、並びに
(e)水、
を含有する処理剤であって、カチオン性樹脂(d)100質量部に基づき、
(a)リン酸系化合物を0.5〜10質量部、
(b)フルオロ金属酸及び/又はその塩を0.5〜10質量部、並びに
(c)アルミナゾルを5〜100質量部、含有することを特徴とする水性金属表面処理剤、を提供するものである。
また、本発明は、上記水性金属表面処理剤を、金属基材上に塗布し、乾燥させることを特徴とする金属表面処理方法を提供するものである。
さらに、本発明は、上記水性金属表面処理剤による表面処理が金属基材の表面になされてなる表面処理金属板を提供するものである。
本発明によれば、クロム化合物を含有しない水性金属表面処理剤でありながら、耐食性、アルカリ脱脂後の耐食性、耐水性、耐薬品性、上塗密着性などに優れた表面処理皮膜が形成された金属板を得ることができ、かつ貯蔵安定性に優れた水性金属表面処理剤を提供できる。
したがって、本発明の水性金属表面処理剤、この処理剤による表面処理がなされた表面処理金属板は、環境上の問題を克服でき、かつ、前記各性能を満たすため、極めて大きな産業上の利用価値を有する。
本発明の水性金属表面処理剤における各成分について以下に述べる。
リン酸系化合物(a)
本発明の水性金属表面処理剤の(a)成分であるリン酸系化合物は、リン酸基、ホスホン酸基又はこれらの基の塩を含有し、水溶性を有する化合物である。リン酸系化合物(a)としては、リン酸及び有機ホスホン酸並びにそれらの塩であることができる。
上記(a)成分であることができるリン酸としては、オルトリン酸、及び縮合リン酸を包含し、縮合リン酸はメタリン酸及びポリリン酸を包含する。メタリン酸は環状のリン酸縮合物であって、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸等を包含し、ポリリン酸は鎖状のリン酸縮合物であって、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等を包含する。
上記(a)成分であることができる有機ホスホン酸としては、例えば、ヒドロキシメタンジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸等のヒドロキシル基含有有機ホスホン酸;2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)等のカルボキシル基含有有機ホスホン酸;ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)、ニトリロトリス(エチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(プロピレンホスホン酸)、ニトリロビス(エチレンホスホン酸)モノ(メチレンホスホン酸)、ニトリロビス(メチレンホスホン酸)モノ(プロピレンホスホン酸)等のアルキレン基が同一のもしくは異なる炭素数1〜4のアルキレン基であるニトリロトリス(アルキレンホスホン酸);エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラエチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラプロピレンホスホン酸等のアルキレン基が炭素数1〜4のアルキレン基であるエチレンジアミンテトラアルキレンホスホン酸;ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸;ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸などが挙げられる。
上記(a)成分であることができるリン酸及び有機ホスホン酸の塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アンモニウム塩などを挙げることができる。また、溶解性を考慮して亜鉛、マンガン、ニッケル等の塩も使用し得る。1分子中にリン酸基やホスホン酸基が複数ある場合、それらの一部が塩になっていても全部が塩になっていてもよい。また、リン酸基やホスホン酸基の場合、活性水素原子の一部がアルカリ金属イオンやアンモニウムイオンに置換しても全部が置換してもよい。
上記(a)成分であるリン酸系化合物は、各々単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記リン酸系化合物(a)は、本発明の表面処理剤の貯蔵安定性を向上させるとともに、表面処理皮膜の耐食性を向上させる効果があり、中でも特に、オルトリン酸、ヒドロキシメタンジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。
フルオロ金属酸及び/又はその塩(b)
本発明の水系金属表面処理剤の(b)成分である、フルオロ金属酸及び/又はその塩は、本発明の水系金属表面処理剤から得られる表面処理皮膜の防錆性の向上などを目的に配合される。
本発明の水性金属表面処理剤の(b)成分であることができるフルオロ金属酸は、フッ素原子と、金属を含有する酸であり、該金属としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、タングステン、モリブデン、アルミニウム、ニッケル、コバルト、カルシウムなどの金属の1種または2種以上であることができる。
上記フルオロ金属酸としては、例えば、六フッ化チタン酸( HTiF)、六フッ化ジルコニウム酸(HZrF)、六フッ化ハフニウム酸(HHfF)、六フッ化アルミニウム酸(HAlF)、テトラフルオロホウ酸(HBF)等を挙げることができる。
本発明の水性金属表面処理剤の(b)成分であることができる上記フルオロ金属酸の塩としては、例えば、フルオロ金属酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、亜鉛塩などが挙げられる。
上記フルオロ金属酸及び/又はその塩(b)としては、上記各フルオロ金属酸及びその塩を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記フルオロ金属酸又はその塩(b)としては、なかでも六フッ化チタン酸( HTiF)、六フッ化ジルコニウム酸(HZrF)、これらのフルオロ金属酸のアンモニウム塩、アミン塩が耐食性の点から好適である。
フルオロ金属酸又はその塩(b)は、水中でイオンを発生し、腐食環境における金属表面の腐食電位のコントロールおよび酸化還元反応のコントロール、金属表面への極薄皮膜の成膜および皮膜成分中の官能基との架橋反応による皮膜密度の向上などにより耐食性を向上させる効果を有すると考えられる。
アルミナゾル(c)
本発明の水系金属表面処理剤の(c)成分である、アルミナゾルは、本発明の水系金属表面処理剤から得られる表面処理皮膜の防錆性の向上、耐溶剤性の向上などを目的に配合される。
アルミナゾルは、一般に水性アルミナゾルとも呼ばれ、コロイド状アルミナ粒子が水中に分散されている。この中に含まれるコロイド状アルミナ粒子は、ベーマイト結晶、擬ベーマイト結晶、非晶質のアルミナなどからなることができ、その形状として、粒状、棒状、繊維状、或いは羽毛状を有することが知られている。
アルミナゾルにおいて、分散質であるアルミナは、アルミナ水和物(水酸化アルミニウム)であっても、水和されていない酸化アルミニウムであってもよく、これらの混合物でってもよい。アルミナゾルは、通常、コロイド状アルミナ粒子の周りに存在する陰イオンがこのコロイド状アルミナ粒子間の結合を防ぐことによって、このコロイド状アルミナ粒子の水中での安定な分散状態が維持されている。上記コロイド状アルミナ粒子は、なかでも粒状のものが水系金属表面処理剤の粘度の点から好適である。
コロイド状アルミナ粒子を含むアルミナゾルは、熱を加えることによって自身でも皮膜形成でき耐食性の向上効果を有するほか、皮膜自身が硬くなることにより溶剤ラビングによる皮膜の溶解、欠落を防ぐ効果も有するものと考えられる。
アルミナゾルは、通常、固形分濃度が1〜30質量%、平均粒子径が1〜300nmの範囲内にあることが好適である。上記平均粒子径は、光散乱法粒度分布測定装置によって得られた平均粒子径である。光散乱法粒度分布測定装置としては、ハイアックロイコ社製、「NICOMP−370」が挙げられる。
上記コロイド状アルミナ粒子を含むアルミナ水和物としては、AS−100、AS−200、AS−520、AS−500(以上、日産化学社製)、アルミナゾル−10A、アルミナゾルCSA−10A、アルミナゾル−10D、アルミナゾル−A2(以上、川研ケミカル社製)、Cataloid AS−2、Cataloid AS−3(以上、日揮触媒化成社製)などが挙げられる。
カチオン性樹脂(d)
本発明の金属表面処理組成物の(d)成分であるカチオン性樹脂は、水溶性ないし水分散性を有するカチオン性樹脂であり、その樹脂種としては、代表例として、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂などを挙げることができる。
カチオン性樹脂(d)は、分子構造中に、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などの水性媒体中でカチオン化可能な基であるカチオン性官能基を有する。カチオン性官能基の代表例としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基などが挙げられる。
カチオン性樹脂(d)の水への溶解又は分散は、樹脂中のアミノ基などのカチオン性基を中和することなどにより、水への自己溶解性又は自己分散性に基づいて達成されてもよく、またカチオン性界面活性剤(例えばアルキル4級アンモニウム塩等)及び/又はノニオン性界面活性剤(例えばアルキルフェニルエーテル等)の助けを借りて達成されてもよい。
上記カチオン性アクリル樹脂としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート又はN−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(アミノ基を置換するアルキル基としては炭素数1〜4、特に1〜2のものが例示され、置換アミノ基が置換するアルキル基としては炭素数1〜6、特に1〜4のものが例示される)などのアミノ基を有するカチオン性モノマー;及び/又はメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(アクリエステルDMC、商品名、三菱レイヨン社製)等の第4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーと、その他の重合性不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学工業社製、商品名)、セチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素原子数1〜18のアルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環族ビニル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアミル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、該ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルに対してε−カプロラクトンを1〜5モル開環付加反応させてなる、水酸基を有するカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの酸基含有重合性不飽和モノマー;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−sec−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレン、ブタジエン等を挙げることができる。上記モノマーは、1種で、又は2種以上混合して用いることができる。
その他の重合性不飽和モノマーとして、中でも、スチレン、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数3〜8のアルキルエステル及び水酸基含有重合性不飽和モノマーをモノマー成分として1種以上含有するものが耐食性などの点から好ましい。
上記カチオン性アクリル樹脂中のアミノ基などのカチオン性官能基を無機酸又は酢酸、蟻酸などの有機酸で中和することによって、樹脂に水溶性ないしは水分散性を付与することができる。
本発明において、各化合物における「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を意味する。「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。
カチオン性アクリル樹脂としては、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマーをその他の重合性不飽和モノマーと共重合した後、共重合体中のエポキシ基を、分子中に少なくとも1つ以上の活性水素を有するアミン化合物と反応させてアミノ基を導入したり、3級アミン化合物を用いてアンモニウム基を導入したものであってもよい。
また、カチオン性アクリル樹脂は、二段重合法などの多段重合法にてエマルション重合、シード重合など、それ自体公知の重合方法により得られるものであってもよい。
上記多段重合法によって得られるエマルションは、水中で界面活性剤の存在下で重合して得られるコア/シェル型エマルションであることができ、コアとシェルにおける各重合体を構成するモノマー組成を変えることによってコア/シェル型エマルションの性能を変えることが可能である。
上記シード重合においては、カチオン性アクリル樹脂を重合し、必要に応じて界面活性剤の存在下で、また必要に応じて中和し、該カチオン性アクリル樹脂を水分散してカチオン性アクリル樹脂の微粒子水分散液を作成し、そして、この微粒子水分散液中にモノマー混合物を添加し、モノマー混合物を水分散微粒子中に取り込ませて重合を行うことによって、コア/シェル型樹脂微粒子の水分散液を得ることができる。
カチオン性アクリル樹脂におけるカチオン性官能基濃度(アミン価など)は特に制限されるものではないが、通常、3〜180mgKOH/g樹脂、好ましくは5〜100mgKOH/g樹脂の範囲内のカチオン性官能基濃度を有することが樹脂の安定性、耐食性などの点から好適である。
また、カチオン性アクリル樹脂は、通常、5〜100mgKOH/g樹脂、好ましくは8〜50mgKOH/g樹脂の範囲内の水酸基価を有することが得られる表面処理皮膜の上塗密着性などの点から好適である。
上記カチオン性樹脂(d)であることができるカチオン性ポリウレタン樹脂は、第1級〜第3級アミノ基、アンモニウム基などのカチオン性官能基を有するポリウレタン樹脂である。カチオン性ポリウレタン樹脂としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリオールと、脂肪族、脂環式又は芳香族ポリイソシアネートと、必要に応じて、水、アミンなどの鎖長伸長剤などとの重合物であるポリウレタン樹脂において、用いるポリオールの一部として、第1級〜第3級アミノ基、アンモニウム基などのカチオン性官能基で置換されたポリオール(例えば、N,N−ジメチルアミノジメチロールプロパンなど)を用いることによって得られるカチオン性ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコールなどが例示される。
上記ポリエステルポリオールとしては、アルキレン(例えば炭素数1〜6)グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール等)、上記のようなポリエーテルポリオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多塩基酸との重縮合によって得られる末端に水酸基を有するポリエステルポリオールなどが例示される。
上記の脂肪族、脂環式もしくは芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が例示される。
カチオン性ポリウレタン樹脂におけるカチオン性官能基濃度(アミン価など)は特に制限されるものではないが、通常、3〜180mgKOH/g樹脂、好ましくは5〜100mgKOH/g樹脂の範囲内のカチオン性官能基濃度を有することが樹脂の安定性、耐食性などの点から好適である。
また、カチオン性ポリウレタン樹脂は、通常、5〜100mgKOH/g樹脂、好ましくは8〜50mgKOH/g樹脂の範囲内の水酸基価を有することが得られる表面処理皮膜の上塗密着性などの点から好適である。
上記カチオン性樹脂(d)であることができるカチオン性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂にカチオン性基含有化合物を反応させたものが包含され、なかでもエポキシ樹脂にアミン化合物を反応させてなるアミン変性エポキシ樹脂が好適である。
出発材料として用いられるエポキシ樹脂は、皮膜の防食性などの観点から、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂が好適である。
該エポキシ樹脂の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、それ自体既知のものを使用することができ、そのようなポリフェノール化合物の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(いわゆる、ビスフェノールA)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(いわゆる、ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノール型、特にビスフェノールA型エポキシ化合物が耐食性の点から好適である。
エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が一般に200〜2,000、好ましくは400〜1,500の範囲内、そして数平均分子量が一般に400〜4,000、好ましくは800〜2,500の範囲内にあるものが適している。
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社からエピコート828EL、同左1002、同左1004、同左1007などの商品名で販売されているものが挙げられる。
なお、本明細書におけるカチオン性樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した数平均分子量及び重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。この測定において、カラムは、「TSKgel Super−H3000」を1本、及び「TSKgel Super−H2500」を2本(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の計3本を用い、移動相:テトラヒドロフラン(トリエタノールアミンを0.5重量%含む)、測定温度;25℃、流速:0.6mL/min、検出器:示差屈折率計の条件下で測定する。
上記エポキシ樹脂に反応させるアミン化合物としては、該エポキシ樹脂をカチオン化することができるものであればよく、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個含有するものが好ましく、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、2−(2−アミノエチルエタノール)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミンなどの1級アミン化合物;上記1級アミン化合物のケチミン化物;ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエタノールアミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどの2級アミン化合物等を挙げることができる。
上記エポキシ樹脂とアミン化合物とを、それ自体既知の方法により反応させることにより、アミン変性エポキシ樹脂を得ることができる。
上記アミン変性エポキシ樹脂は、一般に20〜100mgKOH/g樹脂の範囲内のアミン価を有することができ、特に、30〜70mgKOH/g樹脂の範囲内のアミン価を有することが、水分散性や皮膜の防食性を確保する面から好ましい。
また、上記アミン変性エポキシ樹脂は、一般に20〜100mgKOH/g樹脂の範囲内の水酸基価を有することができ、特に、30〜70mgKOH/g樹脂の範囲内の水酸基価を有することが、表面処理皮膜の上塗密着性などの点から好適である。
本発明の水性金属表面処理剤は、上記したリン酸系化合物(a)、フルオロ金属酸及び/又はその塩(b)、アルミナゾル(c)、カチオン性樹脂(d)、並びに水(e)を含有する。
本発明の水性金属表面処理剤における上記(a)、(b)及び(c)成分の配合量は、カチオン性樹脂(d)の固形分100質量部に基づき、固形分量又は有効成分量が下記範囲内である。
(a)リン酸系化合物 0.5〜10質量部、好ましくは0.8〜7質量部、
(b)フルオロ金属酸及び/又はその塩 0.5〜10質量部、好ましくは0.8〜7質量部、
(c)アルミナゾル 5〜100質量部、好ましくは10〜40質量部。
本発明の水性金属表面処理剤は、上記(a)〜(e)成分に加えて、必要に応じて、シランカップリング剤及び/又はその加水分解縮合物(f)、プロパルギル基及び水酸基を有し、且つモノ又はポリ−オキシアルキレン基を有する、分子量100〜800の化合物(g)、ポリオレフィンワックス、防錆金属化合物などを含有することができる。
シランカップリング剤及び/又はその加水分解縮合物(f)
本発明の水性金属表面処理剤に必要に応じて配合される(f)成分であるシランカップリング剤及びその加水分解縮合物は、得られる表面処理皮膜の基材表面への密着性の向上や、皮膜の耐食性、耐水性向上などに寄与することができる場合がある。
上記シランカップリング剤としては、例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン−塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、トリメチルクロロシランなどを挙げることができる。なかでもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤が好適である。これらシランカップリング剤は1種類を単独で使用してもよいし、または2種類以上を併用してもよい。
上記シランカップリング剤の加水分解縮合物とは、シランカップリング剤を原料とし、加水分解縮合させたシランカップリング剤のオリゴマーを意味する。
上記(f)成分を配合する場合、その配合量は、カチオン性樹脂(d)100質量部に基づき、0.1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部の範囲内であることが、表面処理組成物の貯蔵安定性、得られる表面処理皮膜の耐食性及び上塗密着性などの観点から適している。
プロパルギル基及び水酸基を有し、且つモノ又はポリ−オキシアルキレン基を有する、分子量100〜800の化合物(g)
本発明の水性金属表面処理剤に必要に応じて配合される(g)成分は、プロパルギル基及び水酸基を有し、且つモノ又はポリ−オキシアルキレン基を有する、分子量100〜800の化合物(以下、「化合物(g)」と略称することがある。)であって、上記モノ又はポリ−オキシアルキレン基が、オキシエチレン基、ポリオキシエチレン基、オキシプロピレン基、ポリオキシプロピレン基、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの2価の共重合体基から選ばれる少なくとも1種である。
化合物(g)は、表面処理皮膜における、脱脂処理前後の耐食性、上塗密着性を向上させることができる場合がある。化合物(g)において、プロパルギル基は金属表面に配向し、水酸基は水素結合を生成でき、また、上記モノ又はポリ−オキシアルキレン基は、バインダ成分との親和性、分散安定性などに寄与するものと考えられる。
化合物(g)としては、例えば、炭素数3〜6のアセチレンアルコールとエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとの付加物を挙げることできる。この付加物は、アセチレンアルコール1モルに対してエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを1〜12モル、好ましくは1〜6モル付加した付加物であることが好適である。
上記アセチレンアルコールとしては、例えば、2−プロピン−1−オール、3−ブチン−1−オール、1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールなどが挙げられ、なかでも2−プロピン−1−オールが好適である。
化合物(g)の好適なものの代表例として、例えば、2−プロピン−1−オールに上記アルキレンオキシドを付加した下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0006455855
(式中、Xは、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選ばれる少なくとも1種のオキシアルキレン基を表し、繰返し数nは1〜12、好ましくは1〜6の整数を表し、nが2以上のとき、繰返し単位中の各Xは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
上記化合物(g)は、市販品であってもよく、好適なものとして、例えば、BASF社製の、Golpanol PME、Korantin PPなどを挙げることができる。Galpanol、Korantinは、登録商標である。
本発明の水性金属表面処理剤において、化合物(g)を配合する場合、その配合量は、表面処理剤の安定性、得られる表面処理皮膜の耐食性、特に脱脂後の耐食性などの観点から、カチオン性樹脂(d)の固形分量100質量部に基づいて、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
ワックス成分
本発明の水性金属表面処理剤に必要に応じて配合されるワックス成分は、得られる表面処理皮膜に潤滑性を付与する成分であり、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びカルナウバワックスなどを挙げることができる。これらは、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
ワックスを配合する場合、その配合量は、成型加工性、耐食性などの点から、水性金属表面処理剤の全固形分に対して、固形分量として、0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%の範囲内であることが適している。
防錆金属化合物
本発明の水性金属表面処理剤には、得られる処理皮膜の防錆性向上の目的で、必要に応じて、フルオロ金属酸及び/又はその塩(b)以外の防錆金属化合物を併用することができる。
上記防錆金属化合物としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、マンガン、コバルト、亜鉛、マグネシウム、ニッケル、バナジウム、スズ、カルシウム、珪素、タングステン、モリブデン及びアルミニウムなどの金属の弗素元素を含まない金属化合物を挙げることができ、水溶性ないしは水分散性であることが好ましい。かかる金属化合物としては、例えば炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、酸化物等であることができる。これらの金属化合物は、無水物であっても存在する場合の水和物であってもよい。
上記防錆金属化合物としては、なかでも、チタン、ジルコニウム、バナジウムの金属化合物であることが好ましい。
金属化合物の代表例としては、例えば、硫酸チタニル、硝酸チタニル、硝酸チタン、塩化チタニル、塩化チタン、チタニアゾル、酸化チタン、シュウ酸チタン酸カリウム、チタンラクテート、チタンテトライソプロポキシド、チタンアセチルアセトネート、ジイソプロピルチタニウムビスアセチルアセトン、メタチタン酸、メタチタン酸塩、オルソチタン酸、オルソチタン酸塩などのチタニウム化合物;塩基性炭酸ジルコニウム(ZrCO・ZrO・8HO)、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウムなどのジルコニウム化合物;硫酸バナジル、酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウムなどのバナジウム化合物;硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、酢酸ニッケル、酸化アルミニウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、リン酸亜鉛等が挙げられる。
上記防錆金属化合物は、必要に応じて配合される成分であり、配合する場合、その配合量は、得られる処理皮膜の耐食性、特にアルカリ脱脂処理後の耐食性、ならびに表面処理剤の塗装性および貯蔵安定性の面からカチオン性樹脂(d)の固形分量100質量部に基づいて、好ましくは60質量部以下であり、より好ましくは2〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部であることが適している。
本発明の水性金属表面処理剤は水性である。水性とは、溶媒が水を主成分とすることを意味する。溶媒は水のみでもよいが、皮膜の乾燥性、処理剤の粘度などを調整する目的で、1価又は多価のアルコール、ケトン、エーテルアルコール系などの各種の水溶性有機溶剤を1種または2種以上併用してもよい。本発明の水性金属表面処理剤は、溶媒中に水(e)を70質量%以上、好ましくは80質量%以上含有することが好ましい。
本発明の水性金属表面処理剤は、所望により、溶媒及び上記した成分以外に、必要に応じて、pH調整剤(酸もしくは塩基)、チタン含有水性液、充填剤、コロイダルシリカ、着色剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、抗菌剤などを配合することができる。これらは、得られる処理皮膜の性能や表面処理組成物の安定性を損なわない範囲で添加することができる。
本発明の水性金属表面処理剤は、液安定性の点から、pH3〜7が好ましく、pH3.5〜6.5がより好ましい。上記pH調整剤としては、例えば、酢酸、ギ酸、乳酸、アンモニア水などを好適に用いることができる。
本発明の水性金属表面処理剤は、通常、固形分濃度5〜30質量%が好ましく、特に10〜25%が好ましい。
本発明の水性金属表面処理剤に、必要に応じて配合される上記チタン含有水性液は、得られる処理皮膜の耐食性の向上に効果がある場合がある。該チタン含有水性液は、加水分解性チタン、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られる(例えば、特開2006−22370号公報参照)。チタン含有水性液を配合する場合、その配合量は、前記カチオン性樹脂(d)の樹脂固形分100質量部に基づいて、固形分量で、5.0質量部以下であることが、貯蔵安定性などの観点から好適である。
本発明の水性金属表面処理剤に、必要に応じて配合される上記充填剤としては、シリカ、タルク、バリタ、炭酸カルシウム、マイカなどの微粉末を挙げることができ、体質顔料として使用されるものが例示できる。上記着色剤としては、着色顔料、染料などを挙げることができる。
金属表面処理方法
本発明の金属表面処理方法は、上記本発明の水性金属表面処理剤を、金属基材上に塗布し、乾燥することを特徴とする金属表面処理方法であり、金属基材表面に本発明の水性金属表面処理組成物による処理皮膜を形成する方法である。本発明において、「処理皮膜」とは、連続した処理皮膜のみならず、処理付着量が少ないため連続した処理皮膜とならず、不連続となった処理物をも包含する。
上記金属製基材とは、金属素材であれば何ら制限を受けず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛ならびにこれらの金属を含む合金、及びこれらの金属によるめっき鋼板もしくは蒸着製品等が挙げられる。なかで、金属板を好適に使用するこができる。
上記金属基材として用いられる金属板としては、例えば、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金(亜鉛−鉄、亜鉛−アルミニウム、亜鉛−ニッケルなどの合金)メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、ステンレス鋼板、銅メッキ鋼板、錫メッキ鋼板、アルミニウム板、銅板などを挙げることができる。なかでも亜鉛メッキ鋼板(溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板のいずれも包含する)、亜鉛合金メッキ鋼板が好適である。
上記金属基材上に本発明の水性金属表面処理剤を塗布する前に、金属基材を、脱脂、酸洗、湯洗、洗剤洗浄などの1または2以上により表面調整することができ、いずれの場合も、最後に十分に水洗することが好ましい。また、塗布時の本発明の水性金属表面処理剤の液温は常温でよいが、所望により冷却または加温することも可能である。
また、上記金属基材は、金属表面に第1層として他の表面処理がなされたものであってもよい。第1層の他の表面処理は、本発明の水性金属表面処理組成物による処理皮膜と金属表面との密着性強化などの目的で第1層として形成されるものであり、クロムフリーの表面処理剤によるものであることが好ましい。
上記金属基材上に、ロールコート法、スプレー塗装法、刷毛塗り法、静電塗装法、浸漬法、電着塗装法、カーテン塗装法、ローラー塗装法等の公知の方法により本発明の水性金属表面処理剤を塗装し、乾燥させることにより表面処理皮膜を形成させることができる。なお、上述した表面処理皮膜の形成は、金属基材の片面のみ、両面のいずれであってもよい。
本発明の水性金属表面処理剤による処理皮膜の皮膜量は、特に限定されるものではないが、通常0.4〜3.6g/m、好ましくは0.7〜2.5g/mの範囲であることが耐食性、加工性の観点から好適である。処理皮膜の乾燥条件は、適宜設定すればよいが、コイルコーティング法などによって塗装したものを連続的に焼付ける場合には、通常、素材到達最高温度が60〜200℃、好ましくは70〜120℃となる条件で5〜60秒間加熱することにより行なうことができる。バッチ式で焼付ける場合には、例えば、雰囲気温度100〜180℃で1〜30分間加熱することによっても行なうことができる。
表面処理金属板
本発明の表面処理金属板は、本発明の水性金属表面処理剤による表面処理が金属基材の表面になされてなる表面処理金属板である。本発明の表面処理金属板は、金属基材が板状形状であって、上記本発明の金属表面処理方法によって得ることができるものである。
本発明の表面処理金属板は、本発明の水性金属表面処理剤による処理皮膜の皮膜量が、0.4〜3.6g/m、好ましくは0.7〜2.5g/mの範囲であることが耐食性、加工性の観点から好適である。
本発明の表面処理金属板の処理皮膜上には、さらに美粧性向上、耐久性向上、その他機能性向上などの目的で、着色塗膜、クリヤ塗膜などの上層膜を形成することができる。この上層膜の形成は、本発明の表面処理金属板を成型加工する前に行うこともできるが、成型加工後に行うことが好ましい。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されるものではない。
各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準によるものとする。また、処理皮膜の皮膜量は、乾燥皮膜量に基づくものとする。
(カチオン性樹脂の製造)
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水110部、「アデカリアソープER−40」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分60%)8部を仕込み、窒素気流中で攪拌混合し、60℃に昇温した。次いで、下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの5%量、10%「カヤブチルH−70」(商品名、化薬アクゾ製、重合開始剤、有効成分70%)水溶液1部及び3%アスコルビン酸ナトリウム水溶液1部を反応容器内に導入し60℃で1時間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部、10%「カヤブチルH−70」水溶液7部及び3%アスコルビン酸ナトリウム水溶液10部を2時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行った。次に、下記シェル部用モノマー乳化物、10%「カヤブチルH−70」水溶液5部及び3%アスコルビン酸ナトリウム水溶液10部を2時間かけて滴下し、1時間熟成した後、酢酸0.6部を反応容器内に導入し30分間保持した。次に、30℃まで冷却し、脱イオン水で希釈して、平均粒子径170nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N5型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、20℃の条件下で測定した平均粒子直径)を有する、固形分30%のカチオン性アクリル樹脂水分散液(d1)を得た。得られたカチオン性アクリル樹脂は、アミン価10mgKOH/g樹脂、水酸基価16mgKOH/g樹脂、及び数平均分子量約65,000を有していた。
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープER−40」7部、メチルメタクリレート44部、n−ブチルメタクリレート17部、n−ブチルアクリレート5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部及び2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート2部を混合してなるモノマー乳化物、
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水20部、「アデカリアソープER−40」3.5部、スチレン3部、メチルメタクリレート19部、n−ブチルメタクリレート3部、n−ブチルアクリレート2部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート1部を混合してなるモノマー乳化物。
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル50部を仕込み、窒素気流中で攪拌混合し、80℃に昇温後、スチレン20部、メチルメタクリレート40部、n−ブチルアクリレート10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート26部及びアゾビスイソブチルニトリル2部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後100℃に昇温し、さらに1時間熟成した。次に、50℃まで冷却し、酢酸5部反応容器内に導入し30分間保持した後、脱イオン水で希釈して固形分20%のカチオン性アクリル樹脂水分散液(d2)を得た。得られたカチオン性アクリル樹脂は、アミン価93mgKOH/g樹脂、水酸基価17mgKOH/g樹脂、及び数平均分子量約12,000を有していた。
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、固形分20%のカチオン性アクリル樹脂水分散液(d2)250部を仕込み、窒素気流中で攪拌混合し、80℃に昇温した後、アスコルビン酸ナトリウム0.3部と5%硫酸第一鉄水溶液0.3部を導入した。次に、メタクリル酸メチル25部、スチレン20部、n−ブチルアクリレート3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部の混合物及び30%過酸化水素水0.4部と脱イオン水20部との混合物を2時間かけて滴下し、ついで3時間熟成した後、脱イオン水で希釈して、平均粒子径70nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N5型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、20℃の条件下で測定した平均粒子直径)を有する、固形分30%のカチオン性アクリル樹脂水分散液(d3)を得た。得られたカチオン性アクリル樹脂は、アミン価46mgKOH/g樹脂、水酸基価9mgKOH/g樹脂、及び数平均分子量約34,500を有していた。
製造例4
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400部に、ε−カプロラクトン300部を加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、未反応のε−カプロラクトンが実質的になくなったことを確認した時点で冷却し、変性剤1を得た。
別のフラスコに、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、分子量350)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が750になるまで反応させた。次に、変性剤1を200部、ジエタノールアミンを140部及びジエチレントリアミンのケチミン化物65部を加え120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルで固形分を調整し、樹脂固形分80%のポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液を得た。該アミノ基含有エポキシ樹脂は、アミン価が56mgKOH/g樹脂、数平均分子量が2,000であった。ついで、得られた樹脂固形分80%のポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液150部(固形分量で120部)に酢酸2.7部、脱イオン水247.3部を加えて水分散化し、固形分30%のカチオン性エポキシ樹脂水分散液(d4)を得た。
金属表面処理剤の製造
実施例1〜29及び比較例1〜10
後記表1に示す配合割合に従って配合し、固形分濃度が15質量%となるように脱イオン水を加えて調整し、十分攪拌を行って各金属表面処理剤を得た。なお、表1の配合量は固形分質量又は有効成分質量による。
得られた各表面処理剤の貯蔵安定性について、下記試験方法に従って評価した。得られた試験結果を後記表1に示す。
貯蔵安定性:各表面処理剤を密閉した容器に入れ、30℃の恒温室で30日間貯蔵した後の液状態及び液粘度に基づいて下記基準で評価した。液粘度は、測定温度25℃、B型回転粘度計にて60rpmの条件で測定した。
○:液に沈殿物や浮遊物がなく、かつ液粘度10mPa・s以下、
△:液に僅かに沈殿物もしくは浮遊物が見られる、又は液粘度が10mPa・sを超えるが著しい増粘やゲル化は認めらない、
×:液にかなりの沈殿物もしくは浮遊物が見られる、又は著しい増粘もしくはゲル化が認められる。
表1における、リン酸系化合物(a)、フルオロ金属酸塩及び/又はその塩(b)、アルミナゾル(c)、カチオン性樹脂(d)、シランカップリング剤及び/又はその加水分解縮合物(f)ならびに化合物(g)の種類は、下記のとおりである。
a1:オルトリン酸、
a2:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、
b1:六フッ化チタン酸アンモニウム、
b2:六フッ化ジルコン酸アンモニウム。
c1:川研ファインケミカル株式会社製、商品名「アルミゾル−10A」、ベーマイトアルミナコロイド、
c2:川研ファインケミカル株式会社製、商品名「アルミゾルCSA−10A」、アルミナコロイド、
c3:日産化学工業株式会社製、商品名「AS−200」、羽毛状コロイダルアルミナ、
c4:日産化学工業株式会社製、商品名「AS−520」、ベーマイト板状結晶コロイダルアルミナ、
c5:日揮触媒化成株式会社製、商品名「Cataloid AS−2」、高分子量アルミナ(擬ベーマイト)ゾル、
c6:日揮触媒化成株式会社製、商品名「Cataloid AS−3]高分子量アルミナ(擬ベーマイト)ゾル。
d1:製造例1で得たカチオン性アクリル樹脂水分散液(d1)、
d2:製造例2で得たカチオン性アクリル樹脂水分散液(d2)、
d3:製造例3で得たカチオン性アクリル樹脂水分散液(d3)、
d4:製造例4で得たカチオン性エポキシ樹脂水分散液(d4)、
d5:株式会社ADEKA製、商品名「アデカボンタイターHUX−680」(ポリエステル系カチオン性ポリウレタン樹脂)、
d6:第一工業製薬社製、商品名「スーパーフレックス650」(ポリカーボネート系カチオン性ポリウレタン樹脂)。
f1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
f2:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、
f3:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン。
g1:商品名「Golpanol PME」(BASF製)、プロパルギル基、水酸基及びポリオキシエチレン基を有し、ピーク分子量約230を有する、前記式(1)で表される化合物、
g2:商品名「Korantin PP」(BASF製)、プロパルギル基、水酸基及びオキシプロピレン基を有し、ピーク分子量約260を有する、前記式(1)で表される化合物。
Figure 0006455855
Figure 0006455855
Figure 0006455855
実施例30〜65及び比較例11〜20
前記実施例及び比較例で得た各金属表面処理剤を用いて下記表2に示す仕様にて表面処理金属板を得た。
表2における金属板種類は下記のとおりである。
(金属板種類)
EG:メッキ付着量が片面20g/mで、板厚0.8mmの両面電気亜鉛メッキ鋼板、
GI:メッキ付着量が片面60g/mで、板厚0.8mmの両面溶融亜鉛メッキ鋼板、
GL:メッキ付着量が片面90g/mで、板厚0.8mmの両面55%アルミニウム−亜鉛溶融メッキ鋼板、
GA:メッキ付着量が片面45g/mで、板厚0.8mmの両面鉄−亜鉛合金化溶融メッキ鋼板。
(処理工程)
各例において、表2に示す金属板を、アルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」、珪酸3号相当品)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して、液温65℃で60秒間スプレー処理により脱脂し、ついで液温50℃、スプレー時間20秒間の条件にて湯洗を行い乾燥してアルカリ脱脂金属板を得た。得られたアルカリ脱脂金属板について、前記各例で得られた金属表面処理剤を後記表2に示された組み合わせ及び乾燥皮膜質量に従ってバーコータにて塗布し、金属板の最高到達温度が80℃となるように12秒間加熱乾燥し、各表面処理金属板を得た。
得られた各例の表面処理金属板について、処理皮膜性能を下記試験方法に従って評価した。得られた結果を後記表2に示す。
脱脂処理後耐食性:各表面処理金属板について、アルカリ脱脂剤(日本パーカライジング社製、商品名「パルクリーンCL−N364S」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して、温度60℃の条件で2分間スプレー処理により脱脂し、ついで水洗、乾燥した表面処理金属板について、端面部及び裏面部をシールし、JIS Z 2371による塩水噴霧試験(SST)により、試験時間96時間での処理面における錆の発生程度を下記基準により評価した。
◎:白錆の発生が認められない、
○:白錆の発生が認められるが、発生程度が処理膜面積の5%未満、
△:白錆の発生程度が処理膜面積の5%以上で、かつ30%未満、
×:白錆の発生程度が処理膜面積の30%以上。
耐エタノールラビング性:4枚重ねのガーゼにエタノールをしみ込ませて、荷重1kgにて各表面処理金属板の処理面を10往復こすったときの、処理面の外観変化を下記基準で評価した。
◎:全く変化が認められない、
○:わずかにこすった跡が認められる、
×:こすった跡が明確に認められる。
硫酸銅変色試験:各表面処理金属板の処理面に濃度5%の硫酸銅水溶液を20μL載せ、15秒間経過した後、ガーゼなどで硫酸銅水溶液を除去した後の外観変化を下記基準で評価した。
◎:全く変色が認められない、
○:わずかな変色が認められる、
×:かなりの変色又は著しい変色が認められる。
上塗密着性:表面処理金属板の表面を、アルカリ脱脂剤(日本パーカライジング社製、商品名「パルクリーンCL−N364S」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して、温度60℃の条件で2分間スプレー処理により脱脂し、ついで水洗、乾燥して、脱脂表面処理金属板を得た。得られた脱脂表面処理金属板に、「マジクロン1000ホワイト」(関西ペイント社製、アクリル−メラミン樹脂系塗料、白色)を乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、150℃で20分間焼付けて上塗塗装板を得た。この上塗塗装板を約98℃の沸騰水中に2時間浸漬し、引き上げて室温に2時間放置した後、この塗膜面にナイフにて素地に達する縦横各11本の切り傷を碁盤目状に入れて2mm角の桝目を100個作成した。この碁盤目部にセロハン粘着テープを密着させて瞬時にテープを剥がした際に、剥離した碁盤目塗膜の数により以下の基準で評価した。
◎:碁盤目塗膜の剥離が認められない、
○:1〜2個の碁盤目塗膜の剥離が認められる、
△:3〜10個の碁盤目塗膜の剥離が認められる、
×:11個以上の碁盤目塗膜の剥離が認められる。
導電性:三菱化学アナリテック(株)製ロレスタGP、ASP端子を用いて、表面処理板の任意の10箇所の表面抵抗値を測定し、10−4Ω以下を示す回数で評価した。
a :10回全て
b :6〜9回
c :1〜5回
d :0回。
Figure 0006455855
Figure 0006455855
Figure 0006455855
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また、本発明の金属表面処理剤は、いずれも塗装性が良好であり、得られた表面処理金属板はハジキなどの皮膜欠陥のない良好な表面処理皮膜が形成されていた。
上記試験結果から明らかなように、本発明の表面処理剤は、塗装性および貯蔵安定性に優れ、かつ脱脂処理後耐食性、耐エタノールラビング性、硫酸銅変色試験及び上塗密着性などの性能を満足できるものであった。

Claims (10)

  1. (a)リン酸系化合物、
    (b)フルオロ金属酸及び/又はその塩、
    (c)アルミナゾル、
    (d)カチオン性樹脂、並びに
    (e)水、
    を含有する処理剤であって、カチオン性樹脂(d)100質量部に基づき、
    (a)リン酸系化合物を0.5〜10質量部、
    (b)フルオロ金属酸及び/又はその塩を0.5〜10質量部、並びに
    (c)アルミナゾルを5〜100質量部、含有することを特徴とする、金属が亜鉛メッキ鋼板もしくは亜鉛合金メッキ鋼板である、水性金属表面処理剤。
  2. リン酸系化合物(a)が、オルトリン酸、ヒドロキシメタンジホスホン酸及び1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載の水性金属表面処理剤。
  3. フルオロ金属酸及び/又はその塩(b)が、チタンフッ化水素酸、ジルコニウムフッ化水素酸及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1又は2記載の水性金属表面処理剤。
  4. カチオン性樹脂(d)が、水酸基価5〜100mgKOH/g樹脂で、且つアミン価3〜180mgKOH/g樹脂を有するカチオン性アクリル樹脂である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性金属表面処理剤。
  5. さらに、シランカップリング剤及び/又はその加水分解縮合物(f)を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性金属表面処理剤。
  6. さらに、プロパルギル基及び水酸基を有し、且つモノ又はポリ−オキシアルキレン基を有する、分子量100〜800の化合物(g)を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性金属表面処理剤。
  7. pHが3〜7で、固形分濃度が5〜30質量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性金属表面処理剤。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性金属表面処理剤を、金属基材上に塗布し、乾燥させることを特徴とする金属表面処理方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性金属表面処理剤による表面処理が金属基材の表面になされてなる表面処理金属板の製造方法
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性金属表面処理剤による処理皮膜の皮膜量が、固形分で0.5〜3.5g/mである請求項9に記載の表面処理金属板の製造方法
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