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JP6454460B2 - 樹脂組成物、樹脂成形体及び多層構造体 - Google Patents

樹脂組成物、樹脂成形体及び多層構造体 Download PDF

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JP6454460B2 JP2013207779A JP2013207779A JP6454460B2 JP 6454460 B2 JP6454460 B2 JP 6454460B2 JP 2013207779 A JP2013207779 A JP 2013207779A JP 2013207779 A JP2013207779 A JP 2013207779A JP 6454460 B2 JP6454460 B2 JP 6454460B2
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Description

本発明は、樹脂組成物、樹脂成形体及び多層構造体に関する。
容器、フィルム、シート等の成形には、一般に樹脂組成物を用いた溶融成形が利用されている。このような樹脂組成物には、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥が少なく外観性に優れる成形品を形成できること、長時間の溶融成形を行っても上記欠陥が発生し難い長時間運転特性(ロングラン性)に優れること等が要求される。特に、このような欠陥は、成形品の外観を損ねるだけでなく性能劣化をも引き起こすため、欠陥の発生を抑制することが重要となる。
一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」ともいう)は、酸素等のガス遮蔽性、耐油性、非帯電性、機械強度等に優れた高分子材料である。そのため、EVOH含有樹脂組成物は、容器等の成形品の成形材料として広く用いられている。
しかし、EVOHは分子内に比較的活性な水酸基を有するため、酸素がほとんど無い状態の押出成形機内部でも高温溶融状態で酸化、架橋反応が起こり、熱劣化物を生じるおそれがある。特に、長期連続運転を行うと熱劣化物が成形機内部に堆積し、フィッシュアイの原因となるゲル状ブツが発生し易くなる。そのため、EVOH含有樹脂組成物を用いる溶融成形では、ロングラン性が不十分となりやすい。
このような不都合を改善するために様々なEVOH含有樹脂組成物が開発されている。例えば、ホウ素化合物、酢酸ナトリウム及び酢酸マグネシウムを含有することで、溶融成形時のロングラン性を改善したEVOH含有樹脂組成物(特開平11−60874号公報参照)、共役ポリエン化合物を含有することで溶融成形によるゲル、ブツの発生が抑制されたEVOH含有樹脂組成物(特開平9−71620号公報参照)、特定のカルボン酸金属塩及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有することで熱安定性に優れ高温における酸化性ゲルの形成が抑制されるEVOH含有樹脂組成物(特開平4−227744号公報参照)等が開発されている。
しかし、これら従来のEVOH含有樹脂組成物は、ロングラン性の改善が十分でないばかりか、樹脂組成物中に金属塩を多量に含有させた場合に成形品が黄変し外観不良が発生し易い。また、環境への対応、例えば包装材等の成形品の原料及び廃棄物量の低減の観点からは、成形品の薄層化が求められる。このような薄型化を実現する場合、外観不良が発生し易いため、外観についてのさらなる改善の必要性が生じる。加えて、環境面の観点からは、成形時の臭気についての配慮も必要となる。
特開平11−60874号公報 特開平9−71620号公報 特開平4−227744号公報 特開2007−31725号公報 特開2001−72823号公報
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、溶融成形のロングラン性に優れると共に、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色が抑制され、外観性に優れる成形品を臭気の発生を抑制しつつ形成できる樹脂組成物、樹脂成形体及び多層構造体を提供することである。
上記課題を解決するためになされた発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)(以下、「EVOH(A)」ともいう)及び飽和ケトン(B)を含有し、飽和ケトン(B)の含有量が0.01ppm以上100ppm以下の樹脂組成物である。
当該樹脂組成物は、EVOH(A)及び特定量の飽和ケトン(B)を含有することにより、溶融成形によるストリーク、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色が抑制され、成形品の外観性に優れる。これにより、外観の悪化を抑制しつつ薄型化の要請に応えることができ、原料及び廃棄物量の低減に寄与することができる。また、当該樹脂組成物は、長時間の溶融成形を行っても欠陥及び臭気が発生し難く、十分なロングラン性を有する。
特定量の飽和ケトン(B)を含有することで欠陥の発生が抑制される作用は必ずしも明確ではないが、飽和ケトン(B)がEVOH(A)に比べて酸化されやすいためであると考えられる。すなわち、ゲル状ブツ等の熱劣化物は、EVOH(A)が酸化劣化して発生すると推定されるが、飽和ケトン(B)がEVOH(A)よりも早く酸化されることで熱劣化物の発生が抑制されるものと推定される。
上記飽和ケトン(B)の炭素数としては3から8が好ましい。この飽和ケトン(B)としてはアセトン、メチルエチルケトン及び2−ヘキサノンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。このように飽和ケトン(B)として特定の飽和ケトンを含有することで、溶融成形による欠陥の発生及び着色がより抑制されるため、成形品の外観性により優れる。
当該樹脂組成物は、ホウ素化合物をさらに含有するとよい。このホウ素化合物の含有量としては100ppm以上5,000ppm以下が好ましい。このように特定量のホウ素化合物をさらに含有することで、溶融成形時のゲル状ブツの発生が抑制され、また押出成形機等のトルク変動(加熱時の粘度変動)を抑制することができる。これにより、外観性に優れる容器等の成形品を形成することができると共に、ロングラン性をより向上させることができる。
当該樹脂組成物は、共役ポリエン化合物をさらに含有するとよい。この共役ポリエン化合物の含有量としては0.01ppm以上1,000ppm以下が好ましい。このように特定量の共役ポリエン化合物をさらに含有することで、溶融成形時の酸化劣化を抑制することができる。これにより、欠陥の発生及び着色をより抑制できるために外観性により優れる成形品を形成できる共に、ロングラン性をより向上させることができる。
上記共役ポリエン化合物としてはソルビン酸及びソルビン酸塩のうちの少なくとも一方が好ましい。このようにソルビン酸又はソルビン酸塩を含有することで、溶融成形時の酸化劣化をより効果的に抑制することができる。これにより、欠陥の発生及び着色をさらに抑制することができるために成形品の外観性を向上させることができると共に、ロングラン性をより向上させることができる。
当該樹脂組成物は、酢酸及び酢酸塩のうちの少なくとも一方をさらに含有するとよい。この酢酸及び酢酸塩の合計含有量としては50ppm以上1,000ppm以下が好ましい。このように特定量の酢酸類をさらに含有することで、成形品の着色をより防止することができる。
当該樹脂組成物は、リン化合物をさらに含有するとよい。このリン化合物の含有量としては1ppm以上200ppm以下が好ましい。このように特定量のリン化合物をさらに含有することにより、欠陥の発生及び着色をより抑制できるために成形品の外観性をより向上させることができると共に、ロングラン性をより向上させることができる。
本発明は、当該樹脂組成物から形成される樹脂成形体及び多層構造体を含む。これらの樹脂成形体及び多層構造体は、当該樹脂組成物から形成されるため、溶融成形時の熱劣化物の発生及び蓄積が抑制される。そのため、当該樹脂成形体及び当該多層構造体の形成時に熱劣化物がダイス内外に滞留、付着することが防止されることで、長時間連続運転時に形成される樹脂成形体及び多層構造体であっても外観に優れるものとなる。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形時の欠陥の発生及び着色を抑制することができるため外観性に優れる成形品を提供することができる。また、当該樹脂組成物は、長時間の溶融成形を行っても欠陥及び臭気が発生し難くロングラン性に優れる。そのため、当該樹脂組成物は、容器、フィルム、シート等に成形され、その成形体を多層構造体、各種包装材として好適に用いることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されない。また、以下において例示される材料は、特に記載がない限り、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<樹脂組成物>
当該樹脂組成物は、EVOH(A)及び飽和ケトン(B)を含有する。この樹脂組成物は、好適成分として、ホウ素化合物、共役ポリエン化合物、酢酸類又はリン化合物をさらに含有していてもよい。当該樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有していてもよい。以下、EVOH(A)、飽和ケトン(B)、ホウ素化合物、共役ポリエン化合物、酢酸類、リン化合物及びその他の任意成分について詳述する。
ここで、「ppm」は、樹脂組成物中の該当成分の質量割合であり、1ppmは0.0001質量%である。「ホウ素化合物の含有量」は、ホウ酸換算質量としての含有量である。「酢酸塩の含有量」は、酢酸換算質量としての含有量である。「リン化合物の含有量」は、リン元素換算質量としての含有量である。
[EVOH(A)]
EVOH(A)は、エチレンとビニルエステルとの共重合体をケン化したエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
上記ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。これらのビニルエステルは、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
EVOH(A)は、エチレン及びビニルエステル以外の単量体単位に由来する他の構造単位を含んでいてもよい。このような単量体単位としては、例えばビニルシラン系化合物、その他の重合性化合物が挙げられる。上記他の構造単位の含有量としては、EVOH(A)の全構造単位に対して、0.0002モル%以上0.2モル%以下が好ましい。
上記ビニルシラン系化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましい。
上記その他の重合性化合物としては、例えばプロピレン、ブチレン等の不飽和炭化水素;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドンなどが挙げられる。
EVOH(A)のエチレン含有量としては、通常20モル%以上60モル%以下であり、24モル%以上55モル%以下が好ましく、27モル%以上45モル%以下がより好ましく、27モル%以上42モル%以下がさらに好ましく、27モル%以上38モル%以下が特に好ましい。エチレン含有量が20モル%未満であると、溶融押出時の熱安定性が低下してゲル化しやすくなり、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥が発生し易くなるおそれがある。特に、一般的な溶融押出し時の条件よりも高温又は高速の条件下で長時間運転を行うとゲル化する可能性が高くなる。一方、エチレン含有量が60モル%を超えると、ガスバリア性等が低下し、EVOHが有する有利な特性を十分に発揮できないおそれがある。
EVOH(A)のビニルエステルに由来の構造単位のケン化度としては、通常85%以上であり、90%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。このケン化度が85%未満であると、熱安定性が不十分となるおそれがある。
当該樹脂組成物におけるEVOH(A)の含有量としては、通常95質量%以上であり、98.0質量%以上が好ましく、99.0質量%がより好ましく、99.5質量%以上がさらに好ましい。EVOH(A)の含有量を95質量%以上とすることで、EVOHが有する有利な特性を十分に発揮できるため、当該樹脂組成物から得られる成形体等はガス遮蔽性、耐油性等に優れる。
[飽和ケトン(B)]
飽和ケトン(B)は、溶融成形によるストリーク、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色を抑制すると共にロングラン性を改善するものである。ここで、飽和ケトン(B)とは分子内のカルボニル基以外の部分に不飽和結合を含まないケトンをいう。飽和ケトン(B)は、カルボニル基以外の部分に不飽和結合を含まない限りは、直鎖状のケトンであっても、分枝状のケトンであっても、分子内に環構造を有するケトンであってもよい。飽和ケトン(B)の分子内のカルボニル基の数は、1であっても2以上であってもよい。
飽和ケトン(B)としては、例えば飽和脂肪族ケトン、飽和環状ケトンが挙げられる。
飽和脂肪族ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2−オクタノン、3−メチル−2−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、3−オクタノン、6−メチル−2−ヘプタノン、2−ノナノン、5−ノナノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、6−ウンデカノン、2−ウンデカノン、7−トリデカノン、メチルシクロペンチルケトン、メチルシクロヘキシルケトン等が挙げられる。
飽和環状ケトンとしては、例えばシクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン等が挙げられる。
飽和ケトン(B)の炭素数としては、飽和ケトン(B)の水溶性向上の観点から、3〜50が好ましく、3〜15がより好ましく、3〜8がさらに好ましい。飽和ケトン(B)としては、例示した中でも、溶融成形による欠陥の発生及び着色を抑制し、ロングラン性を改善する観点から、飽和脂肪族ケトンが好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘキサノンがより好ましく、アセトンがさらに好ましい。
飽和ケトン(B)は、本発明の効果を損なわない範囲において、水素原子の一部又は全部が置換基により置換されていてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、シアノ基等が挙げられる。
当該樹脂組成物における飽和ケトン(B)の含有量の下限としては、0.01ppmであり、0.05ppmが好ましく、0.1ppmがより好ましく、0.15ppmがさらに好ましく、0.2ppmが特に好ましい。飽和ケトン(B)の含有量の上限としては、100ppmであり、95ppmが好ましく、50ppmがより好ましく、30ppmがさらに好ましく、20ppmが特に好ましい。飽和ケトン(B)の含有量が上記下限未満であると、飽和ケトン(B)を含有させることによる効果、例えば欠陥の発生や着色の抑制効果を十分に得られない。一方、飽和ケトン(B)の含有量が上記上限を超えると、溶融成形時の当該樹脂組成物の飽和ケトン(B)による酸化、架橋が発生し易くなってゲル状ブツの発生を誘発するおそれがあり、また樹脂組成物が着色し易くなる。
[ホウ素化合物]
ホウ素化合物は、溶融成形時のゲル化を抑制すると共に押出成形機等のトルク変動(加熱時の粘度変化)を抑制するものである。
上記ホウ素化合物としては、例えば
オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸類;ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等のホウ酸エステル;
上記ホウ酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂等のホウ酸塩;
水素化ホウ素類などが挙げられる。これらの中でも、ホウ酸類が好ましく、オルトホウ酸(以下、「ホウ酸」ともいう)がより好ましい。
当該樹脂組成物のホウ素化合物の含有量の下限としては、100ppmが好ましく、150ppmがより好ましい。ホウ素化合物の含有量の上限としては、5,000ppmが好ましく、4,000ppmがより好ましく、3,000ppmがさらに好ましい。ホウ素化合物の含有量が上記下限未満であると、押出成形機等のトルク変動を十分に抑制することができないおそれがある。一方、ホウ素化合物の含有量が上記上限を超えると、溶融成形時にゲル化を起こし易くなり成形品の外観が悪化するおそれがある。
[共役ポリエン化合物]
共役ポリエン化合物は、溶融成形時の酸化劣化を抑制するものである。ここで、共役ポリエン化合物とは、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造を有し炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。この共役ポリエン化合物は、共役二重結合を2個有する共役ジエン、3個有する共役トリエン、又はそれ以上の数を有する共役ポリエンであってもよい。また、上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエン構造が同一分子内に3個ある化合物も上記共役ポリエン化合物に含まれる。
上記共役ポリエン化合物の共役二重結合の数としては、7個以下が好ましい。当該樹脂組成物は、共役二重結合を8個以上有する共役ポリエン化合物を含有すると、成形品の着色が起こる可能性が高くなる。
上記共役ポリエン化合物は、共役二重結合に加えて、カルボキシル基及びその塩、水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、ジアゾ基、ニトロ基、スルホン基及びその塩、スルホニル基、スルホキシド基、スルフィド基、チオール基、リン酸基及びその塩、フェニル基、ハロゲン原子、二重結合、三重結合等のその他の官能基を有していてもよい。
上記共役ポリエン化合物としては、例えば
イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩等の共役ジエン化合物;
1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール、フルベン、トロポン等の共役トリエン化合物;
シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の共役ポリエン化合物などが挙げられる。上記共役ポリエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
共役ポリエン化合物の炭素数としては4〜30が好ましく、4〜10がより好ましい。例示した共役ジエン化合物のうち、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、ミルセン、これらのうちの2以上の混合物が好ましく、ソルビン酸、ソルビン酸塩、これらの混合物がより好ましい。ソルビン酸、ソルビン酸塩及びこれらの混合物は、高温での酸化劣化の抑制効果が高く、また食品添加剤としても広く工業的に使用されているため衛生性や入手性の観点からも好ましい。
上記共役ポリエン化合物の分子量は、通常1,000以下であり、500以下が好ましく、300以下がより好ましい。上記共役ポリエン化合物の分子量が1,000を超えると、EVOH(A)中への共役ポリエン化合物の分散状態が悪化し、溶融成形後の外観が悪化するおそれがある。
当該樹脂組成物における共役ポリエン化合物の含有量の下限としては、0.01ppmが好ましく、0.1ppmがより好ましく、0.5ppmがさらに好ましく、1ppmが特に好ましい。上記含有量の上限としては、1,000ppmが好ましく、800ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。共役ポリエン化合物の含有量が上記下限未満であると、溶融成形時の酸化劣化を抑制する効果を十分に得られないおそれがある。一方、共役ポリエン化合物の含有量が上記上限を超えると、樹脂組成物のゲル化を促進するおそれがある。
[酢酸類]
酢酸類は、成形品の着色を防止すると共に防止溶融成形時のゲル化を抑制するものである。この酢酸類は、酢酸及び酢酸塩を含む。酢酸類としては、酢酸及び酢酸塩を併用することが好ましく、酢酸及び酢酸ナトリウムを併用することがより好ましい。
当該樹脂組成物における酢酸類の含有量の下限としては、50ppmが好ましく、100ppmがより好ましく、150ppmがさらに好ましく、200ppmが特に好ましい。酢酸類の含有量の上限としては、1,000ppmが好ましく、500ppmがより好ましく、400ppmがさらに好ましい。酢酸類の含有量が上記下限未満であると、十分な着色防止の効果を得られず、成形品に黄変が発生するおそれがある。一方、酢酸類の含有量が上記上限を超えると、溶融成形時、特に長時間に及ぶ溶融成形時にゲル化が生じ易くなり、成形品の外観が悪化するおそれがある。
[リン化合物]
リン化合物は、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色を抑制すると共に、ロングラン性を向上させるものである。このリン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸等のリン酸塩などが挙げられる。
上記リン酸塩としては、第1リン酸塩、第2リン酸塩及び第3リン酸塩のいずれの形でもよい。また、リン酸塩のカチオン種についても特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましく、これらのうちリン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムがより好ましく、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2カリウムがさらに好ましい。
当該樹脂組成物におけるリン化合物の含有量の下限としては、1ppmが好ましく、2ppmがより好ましく、3ppmがさらに好ましく、5ppmが特に好ましい。リン化合物の含有量の上限としては、200ppmが好ましく、150ppmがより好ましく、100ppmがさらに好ましい。リン化合物の含有量が上記下限未満である場合、又は上記上限を超える場合、熱安定性が低減し、長時間にわたる溶融成形を行なう際のゲル状ブツの発生、着色が生じ易くなるおそれがある。
[その他の任意成分]
当該樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有していてもよい。その他の任意成分としては、例えばアルカリ金属又はその塩、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、熱安定剤、他の樹脂、高級脂肪族カルボン酸の金属塩等が挙げられる。当該樹脂組成物は、これらの任意成分を2種以上含有してもよく、任意成分の合計含有量としては、当該樹脂組成物中の1質量%以下が好ましい。
上記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。また、上記アルカリ金属の塩としては、例えば1価の金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、金属錯体等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましい。当該樹脂組成物におけるアルカリ金属の含有量としては、20ppm以上1,000ppm以下が好ましく、50ppm以上500ppm以下がより好ましい。
上記酸化防止剤としては、例えば2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、例えばエチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキトシキベンゾフェノン等が挙げられる。
上記可塑剤としては、例えばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
上記帯電防止剤としては、例えばペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール(商品名:カーボワックス)等が挙げられる。
上記滑剤としては、例えばエチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等が挙げられる。
上記着色剤としては、例えばカーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等が挙げられる。
上記充填剤としては、例えばグラスファイバー、ウォラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等が挙げられる。
上記熱安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
上記他の樹脂としては、例えばポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。
上記高級脂肪族カルボン酸の金属塩としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
なお、ゲル化対策として、例えば上記熱安定剤として例示したヒンダードフェノール系化合物及びヒンダードアミン系化合物、上記高級脂肪酸カルボン酸の金属塩、ハイドロタルサイト系化合物等を添加してもよい。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。ゲル化対策のための化合物の添加量は、通常0.01質量%〜1質量%である。
<樹脂組成物の製造方法>
当該樹脂組成物の製造方法としては、EVOH(A)中に飽和ケトン(B)を均一にブレンドでき、最終的に得られる樹脂組成物に飽和ケトン(B)を0.01ppm以上100ppm以下含有させられる方法であれば特に限定されない。当該樹脂組成物は、例えばエチレンとビニルエステルとを共重合させる工程(以下、「工程(1)」ともいう)、及びこの工程(1)により得られる共重合体をケン化する工程(以下、「工程(2)」ともいう)を備える製造方法により得ることができる。
樹脂組成物中に特定量の飽和ケトン(B)を含有させる方法としては、特に限定されないが、例えば工程(1)において特定量の飽和ケトン(B)を添加する方法、工程(2)において特定量の飽和ケトン(B)を添加する方法、工程(2)により得られたEVOH(A)に、特定量の飽和ケトン(B)を添加する方法等が挙げられる。
但し、工程(1)において特定量の飽和ケトン(B)を添加する方法、又は工程(2)において特定量の飽和ケトン(B)を添加する方法を採用する場合には、得られる樹脂組成物中に所望量の飽和ケトン(B)を含有させるために、工程(1)における重合反応、又は工程(2)におけるケン化反応で消費される量を考慮して添加量を多くする必要がある。しかし、飽和ケトン(B)の量が多いとこれらの反応を阻害するおそれがある。また、工程(1)での重合反応や工程(2)でのケン化反応の条件により飽和ケトン(B)が消費される量が変動するため、樹脂組成物中の飽和ケトン(B)の含有量を調節することが難しい。従って、工程(2)より後において、この工程(2)により得られたEVOH(A)に、特定量の飽和ケトン(B)を添加する方法が好ましい。
EVOH(A)に特定量の飽和ケトン(B)を添加する方法としては、例えば飽和ケトン(B)を予めEVOH(A)に配合してペレットを造粒する方法、エチレン−ビニルエステル共重合体のケン化後に析出させるストランドに飽和ケトン(B)を含浸させる方法、析出させるストランドをカットした後に飽和ケトン(B)を含浸させる方法、乾燥樹脂組成物のチップを再溶解したものに飽和ケトン(B)を添加する方法、EVOH(A)及び飽和ケトン(B)を溶融混練する方法、押出機の途中からEVOH(A)の溶融物に飽和ケトン(B)を供給し含有させる方法、飽和ケトン(B)をEVOH(A)の一部に高濃度で配合して造粒したマスターバッチをEVOH(A)とドライブレンドして溶融混練する方法等が挙げられる。
これらの中でも、EVOH(A)中に微量の飽和ケトン(B)を均一に分散することができる観点から、飽和ケトン(B)を添加する方法としては、飽和ケトン(B)を予めEVOH(A)に配合してペレットを造粒する方法が好ましい。具体的には、飽和ケトン(B)の添加は、EVOH(A)を水/メタノール混合溶媒等の良溶媒に溶解させた溶液に、飽和ケトン(B)を添加し、その混合溶液をノズル等から貧溶媒中に押出して析出及び/又は凝固させ、それを洗浄及び/又は乾燥することにより行うことが好ましい。この場合、当該樹脂組成物は、EVOH(A)に飽和ケトン(B)が均一に混合されたペレットとして得られる。
当該樹脂組成物に飽和ケトン(B)以外の各成分を含有させる方法としては、例えば上記ペレットを各成分と共に混合して溶融混練する方法、上記ペレットを調製する際に、飽和ケトン(B)と共に各成分を混合する方法、上記ペレットを各成分が含まれる溶液に浸漬させる方法等が挙げられる。なお、ペレットと他の成分の混合には、リボンブレンダー、高速ミキサーコニーダー、ミキシングロール、押出機、インテンシブミキサー等を用いることができる。
<樹脂成形体>
当該樹脂成形体は、当該樹脂組成物から形成される。フィルムとは、通常300μm未満の厚みを有するものをいい、シートとは、通常300μm以上の厚みを有するものをいう。この樹脂成形体としては、例えばフィルム、シート、容器、パイプ、ホース、繊維、包装材等が挙げられる。当該樹脂成形体は、例えば溶融成形により形成され、必要に応じて、二次加工成形を行うことで形成される。この溶融成形の方法としては、例えば押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形、射出ブロー成形等が挙げられる。溶融成形温度としては、EVOH(A)の融点等により異なるが、150℃〜270℃程度が好ましい。上記二次加工成形としては、例えば曲げ加工、真空成形、ブロー成形、プレス成形等が挙げられる。
<多層構造体>
当該多層構造体は、当該樹脂組成物から形成される層(以下、「樹脂組成物層」ともいう)を含む。当該多層構造体の層構成は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂から形成される層(以下、「熱可塑性樹脂層」ともいう)を含むことが好ましく、この熱可塑性樹脂層が上記樹脂組成物層に隣接することがより好ましい。熱可塑性樹脂層は、接着性樹脂層として構成することもできる。この接着性樹脂層は、他の樹脂層同士を接着するものであり、他の樹脂層よりも融点又は軟化点が低い層である。
上記熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂としては、
高密度、中密度又は低密度のポリエチレン;
酢酸ビニル、アクリル酸エステル、又はブテン、ヘキセン等のα−オレフィン類を共重合したポリエチレン;
アイオノマー樹脂;
ポリプロピレンホモポリマー;
エチレン、ブテン、ヘキセン等のα−オレフィン類を共重合したポリプロピレン;
ゴム系ポリマーをブレンドした変性ポリプロピレン等のポリオレフィン類;
これらの樹脂に無水マレイン酸を付加又はグラフトした樹脂;
ポリエステル樹脂が好ましい。
上記熱可塑性樹脂としてはさらに、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
当該多層構造体の層構成としては、成形性及びコスト等の観点から、例えば
熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層;
樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層(接着性樹脂層)/熱可塑性樹脂層;
熱可塑性樹脂層/熱可塑性樹脂層(接着性樹脂層)/樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層(接着性樹脂層)/熱可塑性樹脂層等が挙げられる。当該多層構造体が複数の熱可塑性樹脂層を含む場合、複数の熱可塑性樹脂層は互いに異なる樹脂からなる層であってもよいし、同一の樹脂からなる層であってもよい。
これらの中でも、熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層の層構成が好ましく、上記樹脂組成物層の両側に、ポリエステル樹脂からなる熱可塑性樹脂層が積層される層構成がより好ましい。
上記多層構造体を得る方法としては、特に限定されるものではないが、例えば押出ラミネート法、ドライラミネート法、押出ブロー成形法、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出パイプ成形法、共押出ブロー成形法、共射出成形法、溶液コート法等が挙げられる。なお、このような方法で得られた多層構造体に対しては、EVOH(A)の融点以下の範囲で再加熱後、真空圧空深絞り成形、ブロー成形等により二次加工を施してもよい。
なお、当該多層構造体の成形時に発生するスクラップは、上記熱可塑性樹脂層にブレンドして再利用してもよいし、別途用いてもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(1)含水EVOHペレットの含水率の測定
メトラー・トレド社のハロゲン水分率分析装置「HR73」を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量約10gの条件で、含水EVOHペレットの含水率を測定した。以下に示す含水EVOHの含水率は、EVOHの乾燥質量基準の質量%である。
(2)EVOH(A)のエチレン含有量及びけん化度
核磁気共鳴装置(日本電子社の「超伝導核磁気共鳴装置 Lambda500」)を用い、DMSO−dを測定溶媒として、H−NMRにより求めた。
(3)カルボン酸及びカルボン酸イオンの定量
乾燥EVOHペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOHを、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z8801−1〜3準拠)で分けた。上記ふるいを通過したEVOH粉末10gとイオン交換水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付けて、95℃で10時間撹拌した。得られた溶液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。この希釈溶液を、横河電機社のイオンクロマトグラフィー「ICS−1500」を用い、下記測定条件に従ってカルボン酸イオンの量を定量することで、カルボン酸及びカルボン酸イオンの量を算出した。なお、定量に際してはモノカルボン酸又は多価カルボン酸を用いて作成した検量線を用いた。
(測定条件)
カラム :DIONEX社の「IonPAC ICE−AS1(9φ×250mm、電気伝導度検出器)」
溶離液 :1.0mmol/L オクタンスルホン酸水溶液
測定温度 :35℃
溶離液流速 :1mL/min.
分析量 :50μL
(4)金属イオンの定量
乾燥EVOHペレット0.5gをアクタック製のテフロン(登録商標)製耐圧容器に仕込み、和光純薬工業社の精密分析用硝酸5mLをさらに加えた。30分放置後、ラプチャーディスク付きキャップリップにて容器に蓋をし、アクタック社のマイクロウェーブ高速分解システム「スピードウェーブ MWS−2」にて150℃10分、次いで180℃10分処理し、乾燥EVOHペレットを分解させた。乾燥EVOHペレットの分解が完了できていない場合は、処理条件を適宜調節した。得られた分解物を10mLのイオン交換水で希釈し、すべての液を50mLのメスフラスコに移し取り、イオン交換水で定容し、分解物溶液を得た。
上記得られた分解物溶液を、パーキンエルマージャパン社のICP発光分光分析装置「Optima 4300 DV」を用い、以下に示す各観測波長で定量分析することで、金属イオン、リン酸化合物及びホウ素化合物の量を定量した。リン酸化合物の量は、リン元素を定量しリン元素換算質量として算出した。ホウ素化合物の含有量は、ホウ酸換算質量として算出した。
Na :589.592nm
K :766.490nm
Mg :285.213nm
Ca :317.933nm
P :214.914nm
B :249.667nm
Si :251.611nm
Al :396.153nm
Zr :343.823nm
Ce :413.764nm
W :207.912nm
Mo :202.031nm
<EVOH(A)の合成>
[合成例1]
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件で重合を実施し、エチレン−酢酸ビニル共重合体を合成した。
(仕込み量)
酢酸ビニル83.0kg
メタノール26.6kg
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2.5g/Lメタノール溶液)の供給量 1119.5mL/hr
(重合条件)
重合温度 60℃
重合槽エチレン圧力 3.6MPa
重合時間 5.0時間
得られた共重合体における酢酸ビニルの重合率は約40%であった。この共重合反応液にソルビン酸を添加した後、追出塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により未反応酢酸ビニルを塔頂より除去して、エチレン−酢酸ビニル共重合体の41%メタノール溶液を得た。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量は32mol%であった。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を、共重合体中のビニルエステル成分に対して0.4当量となるように添加し、メタノールを加えて共重合体濃度が20%になるように調整した。この溶液を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。この溶液を円形の開口部を有する金板から水中に押し出して析出させ、切断することで直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットは遠心分離機で脱液し、さらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
[合成例2]
重合時にアセトン濃度が0.5ppmとなるようにアセトンを供給した以外は合成例1と同様にして重合、ケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。
<樹脂組成物の調製>
[実施例1〜9、12〜18、21及び比較例2]
上記合成例1で脱液して得られたペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に飽和ケトン(B)、及び共役ポリエン化合物を添加し、さらに1時間攪拌して飽和ケトン(B)及び共役ポリエン化合物を完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザーに導入して多孔質の樹脂組成物チップを得た。得られた多孔質の樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。この浸漬処理用水溶液と樹脂組成物チップとを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量は、上記定量方法を用いて定量した。なお、飽和ケトン(B)の添加量、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、各成分の含有量が表1に記載の通りとなるように樹脂組成物を調製した。
[実施例10]
共役ポリエン化合物としてソルビン酸に代えてミルセンを用いた以外は実施例1と同様とし、樹脂組成物ペレットを調製した。
[実施例11]
共役ポリエン化合物としてソルビン酸に代えてソルビン酸カリウムを用いた以外は実施例1と同様とし、樹脂組成物ペレットを調製した。
[実施例19]
飽和ケトンとしてアセトンに代えてメチルエチルケトンを用いた以外は実施例1と同様とし、樹脂組成物ペレットを調製した。
[実施例20]
飽和ケトンとしてアセトンに代えて2−ヘキサノンを用いた以外は実施例1と同様とし、樹脂組成物ペレットを調製した。
[比較例1、3、4]
上記合成例2で得られたペレット20kgを180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に共役ポリエン化合物としてソルビン酸を添加し、さらに1時間攪拌してソルビン酸を完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザーに導入して多孔質の樹脂組成物チップを得た。得られた多孔質の樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。この浸漬処理用水溶液と樹脂組成物チップを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量は、上記定量方法を用いて定量した。なお、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、各成分の含有量が表1に記載の通りとなるように比較例1,3,4の樹脂組成物を調製した。ここで、飽和ケトン(B)は検出下限未満であった。
[比較例5]
飽和ケトンを用いなかった以外は実施例1と同様とし樹脂組成物ペレットを調製した。
<樹脂組成物の評価>
実施例1〜21及び比較例1〜5の樹脂組成物について、各成分の含有量、成形時の臭気、ロングラン性、ロール端部の着色、フィルム外観、溶液外観及びモータートルク変動を以下の方法に従い評価した。評価結果を表1に併せて示す。
[飽和ケトンの含有量]
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを添加し、DNPH調整溶液を作製した。その後、乾燥樹脂組成物ペレット1gをDNPH調整溶液20mLに添加し、35℃にて1時間攪拌溶解させた。この溶液にアセトニトリルを添加してEVOH(A)を沈降させ、溶液を濾過、濃縮し、抽出サンプルを得た。この抽出サンプルを高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで飽和ケトン(B)の量を定量した。なお、定量に際しては、それぞれの飽和ケトン(B)をDNPH調製溶液と反応させて得た標品を用いて作成した検量線を使用した。
カラム:TSKgel ODS−80Ts(東ソー社)
移動相:水/アセトニトリル=52:48(体積比)
検出器:PDA(360nm)、TOF−MS
[共役ポリエン化合物の含有量]
乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕により粉砕し、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801−1〜3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物10gをソックスレー抽出器に充填し、クロロホルム100mLを用いて48時間抽出処理した。この抽出液中の共役ポリエン化合物の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、共役ポリエン化合物の量を定量した。なお、定量に際しては、それぞれの共役ポリエン化合物の標品を用いて作成した検量線を使用した。
[成形時の臭気]
樹脂組成物の試料ペレット20gを100mLガラス製サンプル管に入れ、アルミホイルで口部に蓋をした後、熱風乾燥機内において220℃で30分間加熱した。乾燥機から取り出し、室温で30分間放冷した後、サンプル管を2〜3回振り混ぜた後、アルミホイルの蓋を取り臭気を確認した。試料ペレットの臭気の強さは、以下の基準で評価した。
A: 臭気を感じない
B: 弱い臭気を感じる
C: 明らかに臭気を感じる
[ロングラン性]
単軸押出装置(東洋精機製作所社の「D2020」;D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用い、下記条件に従い、各乾燥樹脂組成物ペレットから厚さ20μmの単層フィルムを作製した。
(試験条件)
押出温度:220℃
スクリュー回転数:40rpm
ダイス幅:30cm
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:3.1m/分
上記条件で連続運転して単層フィルムを作製し、運転開始から8時間後及び15時間後に作製された各フィルムについて、フィルム長17cm当たりの欠点数をカウントした。上記欠点数のカウントは、フィルム欠点検査装置(フロンティアシステム社の「AI−10」)を用いて行った。なお、上記装置における検出カメラは、そのレンズ位置がフィルム面より195mmの距離となるように設置した。各樹脂組成物のロングラン性は、以下の基準で評価した。
A(良好):欠点数が50個未満
B(やや良好):欠陥数が50個以上200個未満
C(不良):欠陥数が200個以上
[ロール端部の着色]
ロングラン性の評価と同様にして運転開始から8時間後及び15時間後に作製された各フィルムをロール状とし、このロールの端部の着色を確認した。各樹脂組成物のロール端部の着色は、以下の基準で評価した。
A(良好):ロール端部に着色が認められない
B(やや良好):ロール端部に着色が認められるが、製品として問題がない
C(不良):ロール端部に明らかな着色が認められる
[フィルム外観]
運転開始から15時間後に作製されたフィルムについて、目視にて外観を確認した。フィルム外観は、以下の基準でストリーク及び着色のそれぞれについて評価した。
(ストリークの評価基準)
A(良好):ストリークは認められなかった
B(やや良好):ストリークが確認された
C(不良):多数のストリークが確認された
(着色の評価基準)
A(良好):無色
B(やや良好):黄変
C(不良):著しく黄変
[溶液外観]
乾燥樹脂組成物ペレットを空気中120℃で15時間熱処理したペレット10gを300mLの三角フラスコに取り、水/プロパノール混合溶液(質量比:水/プロパノール=45/55)100mLを加え、75℃で3時間攪拌し、目視にて溶液を確認した。溶液外観は、以下の基準で溶液の透明性及び着色のそれぞれについて評価した。
(透明性の評価基準)
A(良好):透明(目視で確認できる浮遊物なし)
B(やや良好):やや白濁(目視で確認できる浮遊物あり)
C(不良):白濁(浮遊物あり)
(溶液の着色評価基準)
A(良好):無色
B(やや良好):やや着色
C(不良):著しく着色
[モータートルク変動]
乾燥樹脂組成物ペレット60gをラボプラストミル(東洋精機製作所社の「20R200」;二軸異方向)100rpm、260℃で混練し、混練開始から5分後のトルク値が1.5倍になるまでの所要時間を測定することで行った。モータートルク変動は、以下の基準で評価した。なお、加熱状態での樹脂組成物の粘度は、二次加工時のロングラン性に影響する要因である。
A(良好):60分以上
B(やや良好):40分以上60分未満
C(不良):40分未満
Figure 0006454460
表1に示すように、実施例1〜21の樹脂組成物は、成形時の臭気及びロール端部の着色が抑制され、ストリークの発生及び着色が起こり難い外観性に優れるフィルムを形成することができた。また、実施例1〜21の樹脂組成物は、加熱時のモータートルク変動及びフィルム形成時の欠陥の発生数が抑制され、溶融成形時のロングラン性に優れることがわかった。
<多層構造体の製造>
[実施例22]
下記4種の押出機を備える7層共押出キャスト製膜設備を用いて、多層構造体としての多層フィルムの共押出製膜試験を実施した。
外層ポリオレフィン用押出機(1):単軸、スクリュー直径65mm、L/D=22
ポリオレフィン用押出機(2) :単軸、スクリュー直径40mm、L/D=26
接着性樹脂用押出機(3) :単軸、スクリュー直径40mm、L/D=22
EVOH用押出機(4) :単軸、スクリュー直径40mm、L/D=26
押出機(1)及び押出機(2)にポリプロピレン(以下、「PP」という)を供給し、押出機(3)に無水マレイン酸変性ポリプロピレン系の接着性樹脂(三井化学社の「ADMER QF−500」)を供給し、押出機(4)に実施例1で得た樹脂組成物を供給して共押出製膜を行うことでトータル厚みが100μmの7層構造の多層フィルムを得た。押出温度は、押出機(1)については200〜250℃、押出機(2)については200〜250℃、押出機(3)については160〜250℃、押出機(4)については170〜250℃、フィードブロック及びダイについては250℃に設定した。上記多層フィルムの構成及び厚みは、PP/PP/接着性樹脂/樹脂組成物/接着性樹脂/PP/PP=30μm/15μm/2.5μm/5μm/2.5μm/15μm/30μmとした。
製膜開始から10時間後の多層フィルムをサンプリングし、外観を観察したところ、EVOHの凝集による外観不良及び流動異常によるフローマークがほとんど認められず、実用上問題のない多層フィルムが得られた。
[比較例6]
実施例1の樹脂組成物に代えて比較例5の樹脂組成物を用いた以外は実施例22と同様にして多層フィルムを作成し、製膜開始から10時間後の多層フィルムをサンプリングした。この多層フィルムについて外観を観察したところ、EVOHの凝集による外観不良及び流動異常によるフローマークが多数観察された。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形時の欠陥の発生及び着色を抑制することができるため外観性に優れる成形品を提供することができる。また、当該樹脂組成物は、長時間の溶融成形を行っても欠陥及び臭気が発生し難くロングラン性に優れる。そのため、当該樹脂組成物は、容器、フィルム、シート等に成形され、その成形体を多層構造体、各種包装材として好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び飽和ケトン(B)を含有し、
    上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の含有量が95質量%以上であり、
    上記飽和ケトン(B)の含有量が0.3ppm以上100ppm以下であり、
    アルカリ金属の含有量が1,000ppm以下である樹脂組成物。
  2. 上記飽和ケトン(B)の炭素数が3から8である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 上記飽和ケトン(B)がアセトン、メチルエチルケトン及び2−ヘキサノンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. ホウ素化合物をさらに含有し、
    上記ホウ素化合物の含有量が100ppm以上5,000ppm以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 共役ポリエン化合物をさらに含有し、
    上記共役ポリエン化合物の含有量が0.01ppm以上1,000ppm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 上記共役ポリエン化合物がソルビン酸及びソルビン酸塩のうちの少なくとも一方である請求項5に記載の樹脂組成物。
  7. 酢酸及び酢酸塩のうちの少なくとも一方をさらに含有し、
    上記酢酸及び酢酸塩の合計含有量が50ppm以上1,000ppm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. リン化合物をさらに含有し、
    上記リン化合物の含有量が1ppm以上200ppm以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成される樹脂成形体。
  10. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成される層を含む多層構造体。

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