JP6337594B2 - 液晶配向剤、液晶配向膜の製造方法及び液晶表示素子 - Google Patents
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Description
上記式(1)において、Ar1、Ar2及びAr3は、芳香族炭化水素環又は複素環である。Ar1、Ar2及びAr3における芳香族炭化水素環は単環及び縮合環のいずれであってもよく、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。また、Ar1、Ar2及びAr3における複素環は窒素含有複素環であることが好ましい。その具体例としては、例えばピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環等が挙げられる。上記のうちの好ましいAr1、Ar2及びAr3は、1,4−フェニレン基又は2,5−ピリジレン基である。なお、Ar1、Ar2及びAr3は、互いに同じでも異なっていてもよい。
Ar1、Ar2及びAr3の環部分には、R1、R2及びR3以外の置換基が導入されていてもよい。こうした置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基等の鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。
ここで、R4の炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基を挙げることができ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。好ましいR4は水素原子又はメチル基である。なお、R1、R2及びR3は、互いに同じでも異なっていてもよい。
mは0〜rの整数(rは(Ar1の環員数)−2)であり、kは0〜sの整数(sは(Ar2の環員数)−2)であり、jは0〜tの整数(tは(Ar3の環員数)−2)である。好ましくは、m、jは1又は2であり、kは0〜2である。m、k及びjはm+k+j≧1を満たす。適度に高い光感度を塗膜に発現させる観点から、好ましくはm+k+jは2〜6であり、より好ましくは2〜4である。
X1及びX2としては、上記の中でも単結合又はエステル結合であることが好ましい。なお、X1及びX2がエステル結合である場合、「*1−COO−」及び「*1−OCO−」(ただし「*1」は、X1についてはAr1との結合手、X2についてはAr2との結合手を示す。)を含む。
重合体(P)は、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などの各種特性が良好である点から、中でもポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
上記式(1)で表される部分構造を主鎖に有するポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(P)」とも称する。)は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。具体的には、[i]上記式(1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物をモノマー組成に含む重合により合成する方法、[ii]上記式(1)で表される構造を有するジアミンをモノマー組成に含む重合により合成する方法等によって得ることができる。これらのうち、合成しやすさの観点から上記[ii]の方法によることが好ましい。
ポリアミック酸(P)の合成に際し、反応に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、
脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び下記式(t−1)
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物、及び下記式(A1)
それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。なお、テトラカルボン酸二無水物は1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
R11は、重合体の主鎖に柔軟性の高い構造を導入することでポストベーク時における配向膜の加熱再配向性を増大させることができる点で、炭素数1〜10のアルカンジイル基又は炭素数1〜10のアルカンジイル基の水素原子がフッ素原子で置換された基であることが好ましく、中でも1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、−CH2−C2F4−CH2−又は−CH2−C4F8−CH2−であることがより好ましい。
n3は0又は1であることが好ましい。
ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミンは、上記式(1)で表される構造を有するジアミン(以下、「特定ジアミン」とも称する。)を含むことが好ましい。特定ジアミンの好ましい具体例としては、下記式(2)で表される化合物等が挙げられる。
ここで使用することができるその他のジアミンとしては、プレチルト角を発現可能な基(以下「プレチルト角発現性基」ともいう。)を有するジアミン及びプレチルト角発現性基を有さないジアミンに分類して例示することができる。
上記式(D−1)における「−XI−(RI−XII)d−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C2H4−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−CcH2c+1」の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
で表される化合物などを;
R12の炭素数1〜6のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基等を挙げることができる。これらは直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
上記式(M1)のR13の好ましい具体例については、上記式(A1)のR11の説明を適用することができる。アミノフェニル基における1級アミノ基は、他の基に対して4−位又は3−位にあることが好ましい。
また、その他のジアミンとして上記式(M1)で表される化合物を、全ジアミンに対して、1〜80モル%含むことが好ましく、5〜70モル%含むことがより好ましく、10〜60モル%含むことがさらに好ましい。
上記特定ジアミンは、目的とする化合物に応じて、有機化学の定法を適宜組み合わせることによって合成することができる。その一例としては、例えば、上記式(2)中の一級アミノ基に代えてニトロ基を有するジニトロ中間体を合成し、次いで、得られたジニトロ中間体のニトロ基を適当な還元系を用いてアミノ化する方法;上記式(2)に対応する構造を有する芳香族ヒドラゾ化合物を合成し、ベンジジン転位により目的物を得る方法、などが挙げられる。なお、ジニトロ中間体を合成する方法は目的とする化合物に応じて適宜選択することができる。例えば、上記式(2)で表される構造の一部を有する酸塩化物と水酸基含有化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
ポリアミック酸(P)は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、必要に応じて末端封止剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸(P)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
上記末端封止剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。末端封止剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
特に好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒との混合物を、上記割合の範囲で使用することが好ましい。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン並びに必要に応じて使用される末端封止剤の合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。
上記重合体(P)としてのポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸(P)とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などによって得ることができる。
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドは、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
上記(i)の方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が進行しにくく、反応温度が200℃を超えると得られる重合体の分子量が低下することがある。反応時間は、好ましくは1.0〜24時間であり、より好ましくは1.0〜12時間である。
上記(ii)の方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、所望とするイミド化率にもよるが、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。
脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
本発明の液晶配向剤に含有させるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000〜500,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましい。
本発明の液晶配向剤は、必要に応じてその他の成分をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、例えば上記重合体(P)以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物などを挙げることができる。
上記その他の重合体は、例えば液晶配向剤の溶液特性(塗布性)及び電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体は、上記式(1)で表される部分構造を主鎖中に有さない重合体であり、その主骨格については特に限定しない。具体的には、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを主骨格とする重合体を挙げることができる。これらの中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体であることが好ましい。なお、その他の重合体は従来公知の方法により合成することができ、また市販品を用いてもよい。
その他の重合体の使用割合は、重合体(P)100重量部に対して、50重量部以下とすることが好ましく、30重量部以下とすることがより好ましい。
上記エポキシ化合物は、例えば液晶配向膜における基板表面との接着性や電気特性を向上させるために使用することができる。かかるエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミンなどを好ましい具体例として挙げることができる。
上記エポキシ化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、重合体(P)100重量部に対して、40重量部以下とすることが好ましく、0.1〜30重量部とすることがより好ましい。
上記官能性シラン化合物は、例えば液晶配向剤の印刷性の向上を目的として使用することができる。かかる官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
上記官能性シラン化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、重合体(P)100重量部に対して、2重量部以下とすることが好ましく、0.02〜0.2重量部とすることがより好ましい。
本発明の液晶配向剤は、上記重合体(P)及び必要に応じて配合されるその他の成分が、好ましくは有機溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明における液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤を用いて、好ましくは光配向法により形成される。当該液晶配向膜を適用する液晶表示素子の動作モードは特に限定せず、TN型、STN型、垂直配向型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、OCB型など種々の動作モードに適用できる。中でも、TN型、STN型、IPS型、FFS型などの、いわゆる水平配向型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用することが、本発明の有利な効果を最大限に発揮でき好ましい。
本工程では、本発明の液晶配向剤を基板上に塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
TN型又はSTN型の液晶表示素子に適用する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を一対として、その各々の透明導電膜の形成面上に、本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成する。一方、横電界方式(IPS型、FFS型)の液晶表示素子に適用する場合、櫛歯状にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極を片面に有する基板と、電極が設けられていない対向基板とを一対とし、電極の形成面と対向基板の片面とに、それぞれ本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成する。
続いて、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として、プレベーク後の塗膜を焼成するポストベーク工程が実施される。このときのポストベーク温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
本工程では、基板上に形成された塗膜に対し、偏光又は非偏光の放射線を照射することにより液晶配向能を付与する。光照射は、[1]ポストベーク後の塗膜に対して行う方法、[2]プレベーク後であってポストベーク前の塗膜に対して行う方法、[3]プレベーク及びポストベークの少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して行う方法、などを適用することができる。
光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザーなどを使用することができる。好ましい波長領域の光は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。放射線の照射量は、好ましくは400〜50,000J/m2であり、より好ましくは1,000〜10,000J/m2である。また、塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。加温の際の温度は、通常30〜250℃であり、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。こうして、基板上に液晶配向膜が形成される。
本発明の液晶表示素子は、上記で得られた液晶配向膜を具備する。本発明の液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。先ず、上記のようにして液晶配向膜が形成された一対の基板を準備し、この一対の基板間に液晶が挟持された構成の液晶セルを製造する。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。先ず、一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール材を硬化することにより液晶セルを製造する。いずれの方法による場合でも、次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
液晶としては、例えばネマティック液晶、スメクティック液晶などを用いることができる。中でも、ネマティック液晶を形成する正の誘電異方性を有するものが好ましく、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などが用いられる。また液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(以上、メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、さらに添加して使用してもよい。
偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、H膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
下記の重合体の合成例における各重合体溶液の溶液粘度は、各合成例で得られた重合体溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した値である。
以下の合成例は、必要に応じて下記のスケールで繰り返すことにより、以降の重合体の合成における必要量を確保した。なお、以下では、式Xで表される化合物を単に「化合物X」と記す場合がある。
温度計及び窒素導入管を備えた300mLの三口フラスコに、2−ブロモ−4−ニトロ安息香酸メチル 52.0g、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム3.5g、第1ヨウ化銅1.9g、及びトリエチルアミン52.0mLを加えた後、トリメチルシリルアセチレン21.6gを加えて室温で4時間反応させた。反応終了後、セライトろ過を行い、得られたろ液に酢酸エチルを加えて、水で3回、分液洗浄を行った。続いて、硫酸マグネシウムで乾燥した後、エタノールを加えて濃縮することで化合物(1−8A)の黄色結晶を38.8g得た。
(2)化合物(1−8B)の合成
還流管を備えた500mLのナスフラスコに、化合物(1−8A)38.8g、水酸化ナトリウム11.2g、水100mL、及びテトラヒドロフラン100mLを加えて8時間還流させた。反応終了後、濃塩酸を加え、析出した沈殿をろ過により回収した。次に、この沈殿を酢酸エチル1L及びテトラヒドロフラン1Lに溶かして、水で3回、分液洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥し、その後、エタノールを加えて減圧濃縮して析出した黄色結晶をろ過、乾燥することで化合物(1−8B)を24.1g得た。
(3)化合物(1−8C)の合成
還流管及び窒素導入管を備えた500mLのナスフラスコに、化合物(1−8B)24.1g、塩化チオニル200mL及びN,N−ジメチルホルムアミド1mLを加えて1時間還流させた。反応終了後、アスピレーターにより塩化チオニルを除去した後、テトラヒドロフランを200mL加えた(A液とする)。次に、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、ヒドロキノン6.9g、テトラヒドロフラン100mL及びトリエチルアミン15.3gを加えて氷冷した(B液とする)。次に、滴下ロートに、先に調製したA液を仕込み、1時間かけてB液に滴下した後、室温に戻して1時間撹拌した。反応終了後、反応液を2Lの水に注いで析出した沈殿をろ過により回収し、水で洗浄した後、N,N−ジメチルアセトアミドで再結晶し、ろ過、真空乾燥することで化合物(1−8C)の黄色結晶を26.7g得た。
(4)化合物(1−8)の合成
窒素導入管及び温度計を備えた1000mLの三口フラスコに、化合物(1−8C)26.7g、亜鉛73.7g、塩化アンモニウム12.1g、テトラヒドロフラン500mL及びエタノール100mLを加えて氷冷した後、水50mLをゆっくり加え、室温で一昼夜反応させた。反応終了後、濾過により亜鉛を除去し、得られたろ液を2.5Lの水に注ぎ、析出した沈殿を回収、水洗した後、N,N−ジメチルアセトアミドで再結晶により析出させた結晶をろ過、真空乾燥することで化合物(1−8)の白色結晶を21g得た。
温度計及び窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに、2−ヨードニトロベンゼン49.8g、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム3.5g、第1ヨウ化銅1.9g、及びトリエチルアミン49.8mLを加えた後、トリメチルシリルアセチレン21.6gを加えて室温で4時間反応させた。反応終了後、セライトろ過を行い、得られたろ液に酢酸エチルを加えて、水で3回、分液洗浄を行った。続いて、硫酸マグネシウムで乾燥した後、エタノールを加えて濃縮することで化合物(1−1A)の黄色結晶を35.1g得た。
(2)化合物(1−1B)の合成
還流管及び窒素導入管を備えた1Lの三口フラスコに、化合物(1−1A)35.1g、イソプロパノール500mL、亜鉛20.8g、水160mL、及び水酸化ナトリウム25.6gを加えて48時間還流させた。反応終了後、ろ過して得られたろ液に水200mL及びクロロホルム1Lを加えて、水で3回、分液洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで減圧濃縮、真空乾燥することで化合物(1−1B)の粗精製物を26.9g得た。
(3)化合物(1−1C)の合成
窒素導入管を備えた2Lのナスフラスコに、化合物(1−1B)26.9g、アセトン1L、亜鉛46.8g及び飽和塩化アンモニウム水溶液30mLを加えて室温で撹拌し、反応液が橙色から無色に変化したところで反応を終えた。反応終了後、反応液を2Lの10%水酸化アンモニウム水溶液に注ぎ、これにより生じた白色沈殿をろ過により回収し、真空乾燥することで化合物(1−1C)の粗精製物を24.4g得た。
(4)化合物(1−1)の合成
窒素導入管及び温度計を備えた2Lの三口フラスコに、化合物(1−1C)24.4g及びエタノール1.2Lを加えて氷冷した。続いて、エタノール210mLに濃塩酸62mLを混ぜた溶液をゆっくり加えて24時間氷冷下で反応させた。反応終了後、濾過により沈殿を回収し、テトラヒドロフラン200mL及び酢酸エチル200mLを加え、1Nの炭酸ナトリウム水溶液で2回、水で3回、分液洗浄した後、エタノールを加えて減圧濃縮して生じた褐色結晶をろ過、真空乾燥させることで化合物(1−1)を12g得た。
[実施例1B]
テトラカルボン酸二無水物として下記式(A−1−1)で表される化合物10.1g及びジアミンとして上記実施例1Aで得た化合物(1−8)9.9gをN−メチル−2−ピロリドン80gに溶解し、室温で12時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(PA−1)を20重量%含有する溶液を得た。この溶液の溶液粘度は2,800mPa・sであった。
テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を下記表1に示す組成に変更した以外は実施例1Bと同様の操作により重合を行った。
化合物(A−2):下記式(A−2)で表される化合物
化合物(D−1):下記式(M−1)で表される化合物
化合物(D−2):下記式(D−2)で表される化合物
[実施例1C]
1.液晶配向剤の調製
上記実施例1Bで得たポリアミック酸(PA−1)を含有する溶液に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加えて十分に撹拌し、溶媒組成がNMP:BC=60:40(重量比)、固形分濃度2.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤を調製した。
(1)液晶配向性、電圧保持率及びコントラスト評価用の液晶セルの製造
上記1.で調製した液晶配向剤を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板2枚(一対)の各透明電極面上に、膜厚が0.1μmになるようにスピンナーを用いて塗布した後、80℃で1分加熱(プレベーク)して、それぞれ塗膜を形成した。これらの塗膜表面に、Hg−Xeランプを用いて、254nmの輝線を含む偏光の紫外線を700mJ/cm2の照射量で基板法線方向から照射した後、230℃のクリーンオーブンで1時間加熱(ポストベーク)して、2枚(一対)の基板上にそれぞれ液晶配向膜を形成した。
次に、上記光照射処理を行った一対の基板のうちの1枚について、液晶配向膜を形成した面の外周縁部に、液晶注入口を残して直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した後、液晶配向膜形成面が相対し、且つ光照射時の偏光面の基板面への投影方向が一致するように一対の基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。
次いで、液晶注入口から一対の基板間にネマティック液晶(メルク社製、MLC−7028)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くため、これを150℃まで加熱してから室温まで徐冷することにより液晶セルを製造した。
(2)液晶配向性の評価
上記で製造した液晶セルについて、交流5Vの電圧をオン・オフ(印加・解除)したときの異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察した。異常ドメインが観察されなかった場合を液晶配向性「良好」、異常ドメインが表示領域中にひとつでも観察された場合を液晶配向性「不良」と評価したところ、この液晶セルの液晶配向性は「良好」と判定された。
(3)電圧保持率の評価
上記で製造した液晶セルに、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。電圧保持率の測定装置としては、(株)東陽テクニカ社製の型式名「VHR−1」を使用した。電圧保持率が99%以上であった場合を「良好」、97%以上99%未満であった場合を「可」、97%未満であった場合を「不良」と評価した。その結果、上記液晶セルの電圧保持率は99%であり、「良好」と判断された。
上記で製造した液晶セルを30時間駆動した後のコントラストを評価した。コントラストの評価は以下のようにして行った。
光源と光量検出器との間に偏光子と検光子とを設置した装置を使用し、偏光子と検光子との間に上記で製造した液晶セルを配置して、クロスニコル下における光透過量βを調べ、これらの値を下記数式(1)に代入して最小相対透過率(%)を算出した。
最小相対透過率(%)=(β−B0)/(B100−B0)×100 …(1)
(式(1)中、B0はクロスニコル下におけるブランクの光透過量であり、B100はパラニコル下におけるブランクの光透過量であり、βはクロスニコル下において偏光子と検光子との間に液晶セルを配置した状態で測定した光透過量である。)
上記数式(1)で計算される最小相対透過率は暗状態における黒レベルの程度を示し、この最小相対透過率の値が小さいほど、コントラストに優れると評価することができる。最小相対透過率が0.5%未満であった場合をコントラスト「良好」、0.5%以上1.0%以下であった場合をコントラスト「可」、1.0%を超えた場合をコントラスト「不良」として評価した。上記液晶セルの最小相対透過率は0.5%であり、コントラストは「良好」と判断された。
液晶配向剤を塗布する基板として、図1に示した櫛歯状のパターンを有するクロムからなる2系統の電極A,Bが形成されたガラス基板(電極基板)、及び電極が形成されていないガラス基板(対向基板)からなる一対の基板を使用したほかは、上記「2.(1)液晶配向性、電圧保持率及びコントラスト評価用の液晶セルの製造」と同様にして残像特性評価用の液晶セル(FFS型液晶セル)を製造し、さらに、基板の外側両面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子とした。なお、液晶配向剤の塗布は、電極基板の電極形成面と対向基板の片面とに行った。
上記(5)で製造した液晶表示素子を25℃、1気圧の環境下に置き、電極Bには電圧をかけずに、電極Aに交流電圧3.5V及び直流電圧5Vの合成電圧を2時間印加した。2時間経過後、直ちに電極A及び電極Bの双方に交流4Vの電圧を印加した。そして、両電極に交流4Vの電圧を印加し始めた時点から、両電極間の光透過性の差が目視で確認できなくなるまでの時間を測定した。この時間が100秒未満であった場合、残像特性「良好」、100秒以上150秒未満であった場合を残像特性「可」、150秒を超えた場合を残像特性「不良」として評価したところ、上記液晶表示素子の残像特性は「可」であった。
上記「2.(1)液晶配向性、電圧保持率及びコントラスト評価用の液晶セルの製造」と同様にして基板上に液晶配向剤を塗布し、プレベーク、ポストベーク及び700mJ/cm2の偏光UVで光照射して形成した塗膜について、JIS−K5400に準拠して鉛筆硬度(表面硬度)を評価した。鉛筆硬度が4H以上であった場合を「優良」、2H又は3Hであった場合を「良好」、Hであった場合を「可」、H未満であった場合を「不良」と評価したところ、この液晶配向膜の鉛筆硬度は「優良」の評価であった。
ポリアミック酸(PA−1)を含有する溶液の代わりに、それぞれ下記表2に示した種類のポリアミック酸を含有する溶液を使用した点、液晶配向剤の調製に使用した溶剤の組成を下記表2に示した組成に変更した点、並びに「2.(1)液晶配向性、電圧保持率及びコントラスト評価用の液晶セルの製造」及び「2.(5)残像特性評価用の液晶セルの製造」における偏光紫外線の照射量を、それぞれ下記表2に記載の値に変更したほかは、上記実施例1Cと同様にして液晶配向剤を調製し、該液晶配向剤を使用して各種の評価を行った。評価結果は下記表2に示した。
a:N−メチル−2−ピロリドン
b:ブチルセロソルブ
c:ジエチレングリコールジエチルエーテル
d:プロピレングリコールジアセテート
e:ダイアセトンアルコール
f:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
g:ジイソブチルケトン
h:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
Claims (4)
- ポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種である重合体(P)を含有し、
前記重合体(P)は、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステル及びテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物よりなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸誘導体と、下記式(2)で表される化合物を含むジアミンと、を反応させて得られる重合体である液晶配向剤。
- 前記R 1 、R 2 及びR 3 は、「*−C≡C−R 4 」(R 4 は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、「*」は結合手を示す。)で表される1価の基である、請求項1に記載の液晶配向剤。
- 請求項1又は2に記載の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光を照射して液晶配向能を付与する工程と、を含む液晶配向膜の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の液晶配向剤を用いて得られた液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
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