JP6232823B2 - 燃料電池セパレータ - Google Patents
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Description
このため、セパレータには、高電気導電性、ガスバリア性、化学的安定性、耐熱性および耐熱水性などの諸特性が要求される。
また、カーボンセパレータでは、燃料電池を組み立てる際のボルトとナットによる締め付けで割れが発生しやすく、この割れからガス漏れが生じてしまうという問題もある。特に、自動車用途ではセパレータの薄肉化が求められており、薄肉成型時にハンドリング性が悪く割れが発生しやすくなるという問題がある。
また、熱可塑性エラストマーの使用により低下した物性を改善するため、導電性フィラーを複合または変性させたものもあるが、ガスバリア性に関する直接的な解決手段は見いだせていない。
このように、柔軟性、ガスバリア性、耐久性、導電性等を満足する燃料電池用セパレータは存在しないのが実情である。
1. 炭素材料と樹脂バインダーとを含む組成物を成形してなり、
前記樹脂バインダーが、熱硬化性樹脂および熱可塑性エラストマーを含み、
前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シリコーン樹脂およびベンゾオキサジン樹脂から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする燃料電池セパレータ、
2. さらに、前記樹脂バインダーが相溶化剤を含む1の燃料電池セパレータ、
3. 前記相溶化剤が、熱可塑性エラストマーである2の燃料電池セパレータ、
4. 前記相溶化剤が、酸変性熱可塑性エラストマーである2または3の燃料電池セパレータ、
5. 前記酸変性熱可塑性エラストマーが、無水マレイン酸変性水添スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体である4の燃料電池セパレータ、
6. 前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む1〜5のいずれかの燃料電池セパレータ、
7. 前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、水添スチレン系熱可塑性エラストマーである6の燃料電池セパレータ、
8. 前記水添スチレン系熱可塑性エラストマーが、側鎖を有する水添スチレン系熱可塑性エラストマーである7の燃料電池セパレータ、
9. 前記側鎖を有する水添スチレン系熱可塑性エラストマーが、側鎖を有するポリオレフィン系重合体ブロックとスチレン重合体ブロックとを含むブロック共重合体である8の燃料電池セパレータ、
10. 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む1〜9のいずれかの燃料電池セパレータ、
11. 炭素材料、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、および溶媒を混合してスラリーを調製し、得られたスラリーを塗布した後、溶媒を除去してシート状のセパレータ前駆体とし、このセパレータ前駆体を成形することを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法
を提供する。
このように本発明の燃料電池セパレータは、エラストマーの柔軟性を維持したまま熱硬化性樹脂主体の現行品と同等のガスバリア性、耐熱性、電気特性を有する優れたものである。
さらに、本発明では、炭素材料、熱硬化性樹脂および熱可塑性エラストマーを含む組成物を、一旦シート状の前駆体とした後、これをさらに圧縮成型等によりセパレータとすることができるため、シート供給によるセパレータの生産性の向上も期待できる。
本発明に係る燃料電池セパレータ(以下、単にセパレータという場合もある)は、炭素材料と樹脂バインダーとを含む組成物を成形してなり、樹脂バインダーが、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーおよび必要に応じて相溶化剤を含むことを特徴とする。
熱硬化性樹脂としては、従来、カーボンセパレータの樹脂バインダーとして汎用されているものから適宜選択することができる。
その具体例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シリコーン樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐熱性および機械的強度に優れていることから、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
エポキシ樹脂を使用する場合の硬化剤としては、フェノール樹脂やアミン化合物、酸無水物、ポリアミノアミド化合物、ジシアンアミド、イミダゾール化合物、ポリメルカプタン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられ、これらの中でも、ガラス転移点を上げて耐熱性を向上させ、かつ、熱間での機械的強度特性を向上させるという観点から、フェノール樹脂を用いることが好ましい。
フェノール樹脂の具体例としては、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アラルキル変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤の配合量は、効率的、かつ、穏やかに硬化反応を進行させることを考慮すると、樹脂バインダー100質量部に対し、0.65〜2.0質量部が好ましい。
このような観点から、本発明で用いる組成物には、混合および成形に際してこれら異種材料を相溶させる相溶化剤を樹脂バインダーの一成分として配合することが好ましい。
相溶化剤の特性としては、性質の異なるポリマーが相として存在しながら、相溶化剤が界面に存在することで分散ポリマーを安定化させる“相分離系”が好ましい。
この相分離系の相溶化剤を用いることで、組成物中において、分散相の中に多数の島相が分散したような構造が形成され、熱硬化性樹脂と熱可塑性エラストマーの両方の特性をより良好に発現させることができる。
非反応型相溶化剤の例としては、異種ポリマーが化学的に結合した構造(ブロック、ランダム、グラフトポリマー)を有するものが挙げられ、その具体例としては、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、水添スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性エラストマー、ポリプロピレンスチレングラフト共重合体等が挙げられる。
反応型相溶化剤の例としては、上記熱可塑性エラストマーにカルボキシル基、エポキシ基、水酸基等の極性官能基を導入した変性熱可塑性エラストマーが挙げられ、その具体例としては、無水マレイン酸変性水添スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(酸変性SEBS)等の酸変性熱可塑性エラストマー、エポキシ化スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(エポキシ化SBS)等のエポキシ変性熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
さらに、反応型相溶化剤の例としては、ホモポリマー(熱可塑性樹脂)に上記極性官能基を導入したものを用いることもでき、その具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。
また、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物や無水マレイン酸等の極性官能基含有モノマーとその他の重合性二重結合含有モノマーとの共重合体(熱可塑性樹脂)化合物も、反応型相溶化剤として用いることができ、その具体例としては、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(EGMA)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)等が挙げられる。
これらの中でも、本発明では、熱硬化性樹脂に対して効果が得られやすいとの理由から反応型相溶化剤を用いることが好ましい。中でも、樹脂バインダーとして熱可塑性エラストマーを用いることから、相溶化剤としても熱可塑性エラストマー系の相溶化剤を用いることがより好ましい。特に、相溶化性能に優れている酸変性熱可塑性エラストマーがより一層好ましく、無水マレイン酸変性水添スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体が最適である。
さらに、得られるセパレータの導電性を高めることを考慮すると、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電性に優れた材料(以下、高導電材)と黒鉛材料とを併用することがより好ましく、鱗片状黒鉛とカーボンブラックとを含む炭素材料が最適である。
この場合、黒鉛材料と高導電材の使用比率としては、特に限定されるものではないが、黒鉛材料100質量部に対し、高導電材1〜50質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましく、8〜15質量部がより一層好ましい。
なお、平均粒径(d=50)は、粒度分布測定装置(日機装(株)製)による測定値である。
また、組成物中における内部離型剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、炭素材料100質量部に対して0.1〜1.5質量部、特に0.3〜1.0質量部であることが好ましい。
組成物の調製は、例えば、樹脂バインダーとして用いる各樹脂と黒鉛粉末を、それぞれ任意の順序で所定割合混合して行えばよい。混合に用いられる混合機としては、例えば、プラネタリミキサ、リボンブレンダ、レディゲミキサ、ヘンシェルミキサ、ロッキングミキサ、ナウターミキサ等が挙げられる。
セパレータの成形方法としても特に限定されるものではなく、射出成形、トランスファ成形、圧縮成形、押出成形等を採用することができる。これらの中でも、精度および機械的強度に優れているセパレータを得るためには、圧縮成形を採用することが好ましい。
圧縮成形の条件は、金型温度が80〜200℃、成形圧力が1.0MPa以上20MPa未満、好ましくは2.0〜10MPa、成形時間20秒〜1時間である。
なお、圧縮成型後、熱硬化を促進させる目的で、さらに150〜200℃で1〜60分程加熱してもよい。
上記スラリーの固形分濃度は特に限定されるものではないが、1〜50質量%程度が好ましく、30〜50質量%程度がより好ましい。
スラリーの塗布法としては、特に限定されるものではなく、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、ジェットディスペンサー法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の公知の方法から適宜選択すればよい。
溶媒除去の温度は、使用溶媒によって変動するため一概には規定できず、また、熱硬化性樹脂の硬化開始温度より低温であることが要求されるが、一般に室温〜150℃程度とすることができ、50〜130℃程度がより好ましい。
なお、溶媒除去の加熱の前に室温〜80℃程度で予備乾燥をしてもよい。
さらに、セパレータにレーザ照射して表面処理を行い、セパレータ表層の樹脂成分を除去し、セパレータの表面抵抗を下げることも可能である。
また、その他のセパレータ特性についても、体積固有抵抗40mΩ・cm以下程度の導電性を有し、ガラス転移温度120℃以上程度の耐熱性および耐熱浸水重量変化2.0質量%以下程度の耐久性をも有しており、組成によっては、体積固有抵抗25mΩ・cm以下の良好な導電性を有し、ガラス転移温度140℃以上、耐熱浸水重量変化1.4質量%以下の良好な耐熱性および耐久性を有するものとすることができる。
以下の実施例における各物性の評価は、以下に示す試験規格および条件にて行った。
[1]体積固有抵抗
長さ100mm×幅100mm×厚さ0.8mmの試験片を用い、JIS K 7194に準じて測定を行った。
[2]ガラス転位点
長さ20mm×幅10mm×厚さ0.8mmの試験片を用い、動的粘弾性測定装置(DMA、(株)日立ハイテクサイエンス製)にて測定した。
[3]耐熱浸水重量変化
長さ50mm×幅50mm×厚み0.8mmの試験片を、300mlのイオン交換水の入ったステンレス製の耐圧容器に入れ、150℃で75時間試験後の重量変化率を測定した。
[4]ガス透過性試験
厚さ800μm、φ44mmの円形状試験片を用い、JIS K 7126−1(差圧法)に準じてガス圧2kgf/cm2(196kPa)で25℃における水素透過係数を測定した。
[5]曲げ試験
長さ20mm×幅25mm×厚み0.8mmの試験片を用い、JIS K 7171に準じて試験速度1mm/分、支点間距離16mmで、25℃における曲げ歪と曲げ応力を測定した。
[樹脂バインダー:熱可塑性エラストマー]
実施例1〜3
スチレンイソブチレンスチレンブロック共重合体(SIBSTAR103T,カネカ(株)製)
比較例2
水添スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(タフテックH1041,旭化成ケミカルズ(株)製)
[樹脂バインダー:熱硬化性樹脂]
実施例1〜3
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jERYX−8000,三菱化学(株)製)とノボラック型フェノール樹脂(ショウノールBRG−556,昭和電工(株)製)を当量比で組み合わせたもの
比較例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポトートYDCN−700−10,新日鉄住金化学(株)製)とフェノールノボラック樹脂(ショウノールBRG−556,昭和電工(株)製)を当量比で組み合わせたもの
[樹脂バインダー:相溶化剤]
無水マレイン酸変性水添スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(タフテックM1913,旭化成ケミカルズ(株)製)
[炭素材料]
信越化成(株)製の天然黒鉛BF−30と三菱化学(株)製の三菱カーボンブラック#3050Bを90:10の質量比で混合したもの
[硬化促進剤]
イミダゾール系硬化促進剤(キュアゾールC11z,四国化成(株)製)
表1に示される各質量比で樹脂バインダーおよび硬化促進剤を混合し、この混合物をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=70:30(質量比))の入ったプラネタリミキサに投入し、これを撹拌して溶解させ、固形分20質量%の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液に表1に示される質量比で炭素材料を投入し、さらに撹拌してスラリー溶液を得た。
その後、このスラリー溶液をコンマコーター(登録商標)R−FC((株)ヒラノテクシード製)にて離型フィルム上にシート状に塗布し、65℃で1時間乾燥後、120℃まで1時間で昇温させてシート中の溶媒を除去し、シート状の燃料電池セパレータ前駆体(厚み760〜790μm)を得た。
得られた前駆体を400×160mmの金型に投入し、金型温度100℃、成型圧力285kg/cm2(2.79MPa)、成形時間30分にて圧縮成形し、175℃で1時間加熱硬化することでガス流路溝を有する板状成形体を得た。
次いで得られた板状成形体の全表面に対し、粒径20μmのアルミナ研創材を0.25MPaでエアブラストにより粗面化処理を施し、燃料電池セパレータを得た。得られた燃料電池セパレータは図1〜3に示されるように曲げても破断しない柔軟性を有するものであった。
表1に示される質量比で熱硬化性樹脂、炭素材料および硬化促進剤を用い、実施例1と同様にして燃料電池セパレータ前駆体および燃料電池セパレータを得た。得られた燃料電池セパレータは図4に示されるように曲げると破断し、柔軟性を有しないものであった。
表1に示される質量比で熱可塑性エラストマーおよび炭素材料を用い、実施例1と同様にして燃料電池セパレータ前駆体および燃料電池セパレータを得た。
一方、比較例1で得られたセパレータは、特性は十分であるものの、剛性が高く(柔軟性に乏しく)薄肉化した際に割れやすい。
比較例2では十分な柔軟性があり薄肉化の際にも割れにくい物性を示すが、セパレータ特性が大きく劣っているのみならず、柔らかすぎてスタック時の圧力により溝形状がつぶれる可能性がある。
Claims (11)
- 炭素材料と樹脂バインダーとを含む組成物を成形してなり、
前記樹脂バインダーが、熱硬化性樹脂および熱可塑性エラストマーを含み、
前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シリコーン樹脂およびベンゾオキサジン樹脂から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする燃料電池セパレータ。 - さらに、前記樹脂バインダーが相溶化剤を含む請求項1記載の燃料電池セパレータ。
- 前記相溶化剤が、熱可塑性エラストマーである請求項2記載の燃料電池セパレータ。
- 前記相溶化剤が、酸変性熱可塑性エラストマーである請求項2または3記載の燃料電池セパレータ。
- 前記酸変性熱可塑性エラストマーが、無水マレイン酸変性水添スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体である請求項4記載の燃料電池セパレータ。
- 前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む請求項1〜5のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ。
- 前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、水添スチレン系熱可塑性エラストマーである請求項6記載の燃料電池セパレータ。
- 前記水添スチレン系熱可塑性エラストマーが、側鎖を有する水添スチレン系熱可塑性エラストマーである請求項7記載の燃料電池セパレータ。
- 前記側鎖を有する水添スチレン系熱可塑性エラストマーが、側鎖を有するポリオレフィン系重合体ブロックとスチレン重合体ブロックとを含むブロック共重合体である請求項8記載の燃料電池セパレータ。
- 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む請求項1〜9のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ。
- 炭素材料、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、および溶媒を混合してスラリーを調製し、得られたスラリーを塗布した後、溶媒を除去してシート状のセパレータ前駆体とし、このセパレータ前駆体を成形することを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。
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