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JP6286323B2 - ライニングの偏摩耗量測定方法及びエレベーター - Google Patents

ライニングの偏摩耗量測定方法及びエレベーター Download PDF

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本発明は、ブレーキ装置を有するエレベーターに関し、特に非常時にかごをブレーキ装置により強制的に停止させるものに好適である。
従来、エレベーターにはいくつかの安全装置が備えられている。そのひとつに、かご走行速度が所定値よりも超えて走行した場合に、巻き上げ機に備えたブレーキを用いて駆動シーブに制動力を与えてかごを安全に減速停止させる非常停止モードがある。駆動シーブに制動力を与える方法としては、駆動シーブと一体に形成されたブレーキディスク表面に摩擦材であるブレーキライニングをばねなどで押し付けた際に発生する摩擦力を利用するものがある。ブレーキライニングは樹脂からなり、使用回数が増加するに従って摩耗していく。所定の摩耗が発生した場合には、保守交換を行い所定のブレーキ性能を確保している。ライニングの摩耗は取り付け誤差やばね押付力ばらつきなどが原因で偏摩耗が発生する場合があり、その検出には、ライニング材にセンサを埋め込む方法があり例えば、特許文献1に記載されている。
特開2009-257550号公報
上記従来技術では、ライニング材に穴加工を行ってセンサとなる光ファイバーを埋め込む構造になっている。そのためライニング材の強度は低下してしまう。よって、本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑み、ライニングに偏摩耗検出用の加工を施すことなく強度を確保しつつライニング偏摩耗を検出することにある。
ライニングを押し当てられるブレーキディスクの半径方向二か所の温度を測定することによりライニングの偏摩耗量を測定する。
本発明によれば、ライニングの強度低下に繋がる加工を施すことなくライニング偏摩耗量を検出することができる。
本発明による一実施の形態であるエレベーターを示す正面図。 一実施の形態であるブレーキ装置を示す正面図。 一実施の形態であるブレーキ装置を示す側断面図。 一実施の形態であるブレーキ装置のブレーキ部の構成を示す正面図。 一実施の形態であるブレーキ制御部のブロック図。 一実施の形態であるディスク温度分布を示す説明図。 一実施の形態であるブレーキ警報フロー図。 一実施形態のブレーキ制御を示すフロー図。
エレベーターは、かごを昇降させるための巻上機と、かごの増速を検出するガバナ装置、さらにガバナ装置の信号に基づいてかごを制動するブレーキ装置が備えられており、非常制動時に作動する。非常制動とは、エレベーター制御装置の暴走など、なんらかの原因でかごが異常増速した際に、巻上機に備えたブレーキ装置を用いて強制的にかごを停止させ乗客の安全を確保するものである。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1は、エレベーターの全体構成を示す正面図である。乗客が乗り込むかご5は、主ロープ7の一端に接続され、他端にはつり合い重り6が接続され、巻上機2で主ロープ7を巻き上げることによって昇降させる。巻上機2には、主ロープ7を巻きかけるシーブ4と、このシーブ4と同一回転軸上に設けたブレーキ装置3を有する。ブレーキ装置3は、図示されていない駆動回路を介してエレベータ制御装置1からの指令信号によってON,OFFの制御が行われる。
かご5が異常に増速した場合には、乗客の安全を守るため、かご5を安全かつ早急に停止させなければならない。この異常速度を検出する手段として、昇降路内上下方向には、ガバナプーリ9、下側プーリ11、およびこれらのプーリに巻きかけたガバナロープ10が配置されている。また、ガバナプーリ9には回転検出器8が備えられている。そして、ガバナロープ12はかご5と連結されている。よって、回転検出器8の回転速度を検出することでかご速度を把握できる。また、ガバナ装置には回転検出器8が所定の回転速度超過を検出した時にブレーキ装置2を作動させるための図示されていないトリガ機構を備える。
図2は、巻上機2を乗りかごの正面側から見た図である。シーブ4には両端部を下方部へと伸ばして逆U字状に主ロープ7が巻き掛けられている。シーブ4の外周部にはシーブ4と一体的に構成されたブレーキディスク17が配置されている。このブレーキディスク17はシーブ4と一体に回転し、背後に位置する筺体14に接触することなく回転可能に構成されている。ブレーキディスク17の材質は、一般的には金属であり例えば鋳鉄からなる。筐体14には1組のブレーキ機構12,13が固定されており、シーブ4の横中心線よりも上方部に位置する。このブレーキディスク17とブレーキ機構12,13を組み合わせてブレーキ装置3と呼称する。
図3は、ブレーキ機構12の側断面図を示す。ブレーキ機構12,13はブレーキ筐体19に内蔵された固定鉄心20、27と電磁コイル21,26よりなる電磁石部と、この電磁石部の固定鉄心20,27に吸着される可動鉄心22,25及びこの可動鉄心に固定されたライニング23,24と、ライニング23,24をブレーキディスク17側に附勢する制動ばね18,28より構成されている。このライニングはレジンモールド材、チタン酸カリウムウィスカ、金属、カーボンが用いられるが、比較的熱に弱いレジンモールド材の場合に特に有効である。また、ライニング23,24とブレーキディスク17の間は所定間隔を隔てて配置されている。尚、ブレーキ筐体19はブレーキディスク17を内部に受け入れる開口29を備え、この開口29からブレーキディスク17がブレーキ筐体19内に導かれている。ブレーキ装置の動作は、かご走行中には電磁コイル21,26に通電して制動ばね力がライニングに作用させずにライニングとブレーキディスク17の制動面が離間するように設定してある。そして、かごが階床に停止したとき、あるいは非常制動を行う際には、電磁コイルへの通電を遮断して、制動ばね力をブレーキライニングに作用させ、ブレーキライニングを押し出しディスク制動面を押し付けて制動力を発生させ、かごを減速停止させる。
以上の動作は、各ブレーキ機構12,13毎に独立して行うことができ、万が一、一方のブレーキが故障して動作しない場合でも他方のブレーキだけでも安全に停止できるようなっている。
ブレーキディスクとライニング間に発生する制動力は、ばね力と両者間の摩擦係数によって決まる。ばね力はブレーキディスクとライニング間のギャップ管理を定期的に行うことで所定値を確保できる。一方、摩擦係数を安定して発揮させるためには、ブレーキディスクとライニング間の面当たりが均等になっていることが重要である。ライニングに偏摩耗が発生すると面当たりが不均等となり摩擦係数が低下する。よって、所定の制動力を発揮して所定の減速度でかごを停止させるには、ライニング偏摩耗量の異常を検出して、偏摩耗が発生した場合には、速やかにライニングを交換する必要がある。
図4は、ブレーキ装置3と温度検出器30,31の配置を示す図である。ブレーキディスク17の表面近傍には、ブレーキディスク表面の温度を検出する温度検出器30,31、例えば非接触温度計が設置されている。この温度検出器30,31はブレーキディスクの半径方向に複数備えられている。温度検出器の半径方向の設置位置は、ライニング23,ブレーキ機構13のライニング34がブレーキディスクに押し当てられたときに摩擦される摩擦面内35,37の間であって、一つは、摩擦面の半径方向外周側37、もう一つは摩擦面の半径方向中央近傍側36になっている。なお、温度検出器31の位置は、外周側のかわりに内周側に設置してもよい。温度検出器30,31はブレーキ制御装置32に接続され、所定の演算を行い、その結果を監視装置33へと送る。図示はされていないが、ライニング、及び温度検出器はブレーキディスクの裏面側にも設置され同様にブレーキ制御装置32に接続されている。
図5は、ブレーキ制御装置32を示すブロック図である。ブレーキ制御装置32には、2つの温度検出器の計測結果からブレーキディスク表面温度差を計算する演算部38、該演算結果と記憶されている基準温度差を比較してライニングの偏摩耗量の異常を判定する比較・判定部39、該比較・判定部の結果を受けてブレーキの異常の有無を監視装置33に送る通信指令部40を備える。また、図示しない記憶部を備え、この記憶部にはライニング偏摩耗を許容するディスク温度差が記憶されている。
図6は、ディスク温度差とライニング偏摩耗の関係を示すグラフである。ディスク温度は、摩擦熱に比例する。この摩擦熱は摩擦係数、面圧、摩擦速度によって決定する。面圧はばね力に比例して変化するが、ライニングに偏摩耗が発生すればそれが面圧差になって、ディスク温度差に現れる。偏摩耗が発生した部分は、偏摩耗していない部分に比べディスク温度は低くなる。よって、半径方向の二か所のディスク温度差を監視することでライニング偏摩耗量の異常を検出可能になる。ここで、実験により所定の摩擦係数が確保できる許容偏摩耗量W0を設定すると、許容ディスク温度差T0が決定される。この温度差T0と実機エレベーターで発生したディスク温度差を比較して許容ライニング偏摩耗量に達したか判定できる。なお、ディスク温度差と偏摩耗量の関係はライニング材質、ディスク材質やばね力などの条件で変化するのでエレベーター仕様に合わせて特性を取得するとよい。また、ライニング偏摩耗は、摩擦係数に反映される。偏摩耗が小さいほど摩擦係数は大きい。よって、データベースを構築する場合は、ディスク温度差と摩擦係数の関係としても整理できる。
ライニングの偏摩耗はディスクの回転方向よりも半径方向に発生し易い。これは、ライニングに蓄熱される摩擦熱がブレーキディスクを介して拡散される際に、表面温度が殆ど上がらないライニング摩擦面よりもブレーキディスク半径方向の外側や内側に拡散される結果、ライニング中央部のディスク温度は高く、内外周側は低くなり半径方向に温度分布が付きやすい。ディスク温度が高くなるとライニングが熱膨張して、その部位の面圧が上がりさらに温度上昇する。ライニング耐熱温度以上に昇温すれば摩耗が顕著となる。ライニング端部は摩耗が殆どないとすると、ディスク半径方向に摩耗分布が現れ偏摩耗状態となる。そのため、この半径方向の偏摩耗を検知するために、ディスクの中央付近及び外周又は内周付近の二か所に温度検出器を設け、温度を測定する。
図7は、ディスク温度波形を示すグラフである。
(a)は、ライニング偏摩耗がない場合のディスク温度波形である。2本の曲線41,42は、異なるディスク半径位置での計測結果である。ブレーキが動作されるとディスク温度は一気に高くなっていき、停止前に最大値をとって徐々に低下する。そして、ディスク半径位置で比較すると最大温度差T1は小さい。
(b)は、非常制動によってライニング中央部に偏摩耗が発生した場合のディスク温度波形である。曲線41はライニング外周側のディスク温度で、曲線42はライニング中央側のディスク温度である。ライニング摩耗が発生した部位の面圧は低いのでディスク温度は低くなる。よって、ディスク温度は中央<外側の関係になる。(a)図同様の温度変化プロファイルとなっているが、偏摩耗が発生したことでディスク半径位置方向の大温度差T2はT1に比べて大きくなる。温度検出器で定常的又は定期的に温度差を検出し許容ディスク温度差T0に比べてT2が大きいと判定した場合は、次の非常制動に備えてライニング交換指令を行う。
図8は、本発明の一実施形態のブレーキ制御を示すフロー図である。ブレーキ制御装置32は図示しない記憶部を備え、前記記憶部はライニング偏摩耗を許容するディスク温度差が記憶されており、この値を読み込み、非常制動が動作した場合に備える(ステップs100)。ブ、温度検出器31はブレーキディスクの摩擦面の半径方向外周側のディスク温度41、温度検出器30はブレーキディスクの摩擦面の半径方向中央近傍側のディスク温度42をそれぞれ常時測定している(ステップs101)。エレベーター制御部でかごが走行中か、或いは停止中かを判定する(ステップs102)。停止中の場合は電磁コイルの通電を行わずに2つのブレーキをONしてライニングをディスクに押し付けてシーブを保持する(ステップs103)。かごが走行中、或いは停止から走行状態に移ると判定した場合は電磁コイルに通電して2つのブレーキをOFFしてシーブの保持を解放する(ステップs104)。次に、かごが走行中に何らの原因で速度超過となった場合には、非常制動によってかごを停止させる必要がある(ステップs105)。電磁コイルへの通電を遮断すると、制動ばねによってブレーキディスクへと押し付けられライニングによってディスクを表裏から挟みこんで制動力を発揮し、かごを減速停止させる(ステップs106、s107)。次に、演算部38は常時モニターしていたディスク温度T1,T2の温度差∂Tを計算する。次に比較・判定部39は温度差∂Tとライニング偏摩耗許容ディスク温度差T0を比較する(ステップs108)。
温度差∂TがT0小さい場合は、非常制動制御を終了する。但し、非常制動が動作したことは所定の手段で監視センターに報告される。一方、温度差∂TがT0より大きい場合は、通信指令部40によって監視装置33にライニングが許容偏摩耗量を超えたことを知らせる(ステップs109)。監視装置は、所定の手段によって監視センターに警告を発し、エレベーター復帰する際の保守時にライニングの検査・交換を行うことを促す。
以上、非常制動時にライニング偏摩耗が発生し許容値を超えたかを監視する方法について述べたが、温度検出器は一つとして、温度計測分解能がライニング内外周と中央部で区別できるもの、例えば赤外線放射温度カメラに置き換えて、中央川と内外周側の温度差を検出してもよい。
また、本実施形態では、ディスク温度を常時測定しているが、ブレーキONしたときのみ測定するようにしてもよい。この場合、温度検出器による電力消費などが抑えられる可能性がある。
また、本実施形態では、2つのブレーキに対して1組の温度検出器を備えたが、各ブレーキに対にして設置すればライニング個別に偏摩耗量の異常を検出できるのでライニング交換作業数が減り効率がよくなる場合もある。
さらに、ディスク温度を常時モニターすることで、なんらかの原因でかご走行中にライニングがディスクに接触するようなことがあれば、ディスク温度が高くなるので、かごを停止させた後に警告を促し保守点検を促すこともできる。この場合は、ディスク半径方向全域の温度を監視できる赤外線放射温度カメラが適当である。そして、保守点検時に非常制動を動作させてライニング材の偏摩耗が発生しているか検査する事が出来る。また、乗客が利用していない時など或いは所定の運行タイミングで非常制動を動作させて、温度を検出する事で定期的に自動的にライニングの偏摩耗の状態を監視できる。
偏摩耗量が少なくなるよう、重さや速度によってブレーキの強さを変更しても良い。
以上述べたように、ディスク温度差からライニング偏摩耗を検出することによって、穴加工などライニングの強度低下に繋がる加工を施すことなく、ライニングに大きな押付力を与えることがでる。よって、大きな制動力が必要となる高速仕様や大容量仕様のエレベーターといった偏摩耗の生じやすいエレベータにも適用でき、かつ所定のブレーキ性能を確保できる。
本実施例ではエレベータの制御に適用した例を開示したが、同様のブレーキ機構を備える、自動車、二輪車等にも適用可能である。
3 ブレーキ装置
4 シーブ
7 主ロープ
12,13 ブレーキ機構
17 ブレーキディスク
18,28 制動ばね
30,31 温度検出器
32 ブレーキ制御装置
33 監視装置

Claims (11)

  1. ライニングの偏摩耗量測定方法であって、
    前記ライニングを押し当てられるブレーキディスクの半径方向二か所の温度を測定することによりライニングの偏摩耗量を測定する方法
  2. 請求項1記載のライニングの偏摩耗量測定方法であって、
    前記温度の測定個所は
    ブレーキディスクの半径方向外周側及び摩擦面の半径方向中央近傍側である
    ことを特徴とするライニングの偏摩耗量測定方法
  3. 請求項2記載のライニングの偏摩耗量測定方法であって、
    ブレーキディスクの半径方向外周側の温度が摩擦面の半径方向中央近傍側の温度より
    あらかじめ定められる閾値以上高い場合前記ライニング偏摩耗量の異常と判定する
    ことを特徴とするライニングの偏摩耗量測定方法
  4. 請求項1から3記載のライニングの偏摩耗量測定方法であって、
    保守点検時、或いは所定の運行タイミングで非常制動を動作させ、
    前記ライニングを押し当てられるブレーキディスクの半径方向二か所の温度を測定する
    ことを特徴とするライニングの偏摩耗量測定方法
  5. かごを吊るロープを巻きかけるシーブと、前記シーブに連動して回転するブレーキディスクにライニングを押し当てて制動トルクを与えるブレーキ装置とを備えるエレベーターにおいて、
    前記ブレーキディスクの半径方向二か所の温度を検出する温度検出手段と、前記半径方向二か所の温度差から前記ライニング偏摩耗量を判定する制御手段と、を備えることを特徴とするエレベーター。
  6. 請求項5記載のエレベーターであって、
    前記温度検出手段はブレーキディスクの半径方向外周側及び摩擦面の半径方向中央近傍側の温度を検出する、
    ことを特徴とするエレベーター
  7. 請求項6記載のエレベーターであって
    さらに前記制御手段からの信号を受けて警告を発する監視装置を備える
    ことを特徴とするエレベーター
  8. 請求項6記載のエレベーターであって、
    前記制御手段はライニング偏摩耗許容限界値となるディスク温度差が格納されている記憶部を備え、
    前記温度検出手段の温度差と前記ライニング偏摩耗許容限界値となるディスク温度差を比較してライニング偏摩耗量の異常を判定することを特徴とするエレベーター。
  9. 請求項5及び6記載のエレベーターであって、
    前記温度検出手段は複数の検出器で構成され、
    前記複数の温度検出器はそれぞれ各ライニングと対を成して設けられることを特徴とするエレベーター
  10. 請求項8に記載のエレベーターであって、前記制御手段は前記半径方向二か所の温度差が前記ライニング偏摩耗許容限界値となるディスク温度差以上になった場合はかごを停止することを特徴とするエレベーター
  11. 請求項5から8に記載のエレベーターであって、前記温度検出手段は赤外温度カメラであることを特徴とするエレベーター
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