JP6279338B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、端当て状態が継続したときに、電動モータの駆動負荷を軽減させつつ、断続的な圧力の変動を抑制できるパワーステアリング装置を提供することにある。
図1は、実施例1の電動油圧パワーステアリング装置の構成図である。
操舵機構1は、ステアリングホイール2の操舵操作に伴い前輪(転舵輪)3を転舵させるもので、ラック&ピニオン式のステアリングギア4を有する。ステアリングギア4のピニオンギア5は、ステアリングシャフト6を介してステアリングホイール2と連結されている。ステアリングギア4のラックギア7の両端は、ステアリングロッド8,9、タイロッド10,11を介して前輪3と連結されている。
パワーシリンダ12は、操舵機構1に対し操舵力を付与するもので、シリンダ13と、シリンダ13内に貫挿されステアリングロッド9と一体に設けられたピストン14と、シリンダ13内においてピストン14によって隔成された1対の液圧室15,16とを有する。1対の液圧室15,16には、オイル供給路17,18を介してロータリバルブ19が接続されている。
ロータリバルブ19は、ステアリングシャフト6とピニオンギア5との間に介装され、ステアリングシャフト6の回転方向に応じて1対の液圧室15,16の一方に作動油を供給するもので、オイル循環路20に介装されている。リザーバタンク21に貯留されている作動油はオイルポンプ22により汲み出され、この汲み出された作動油がオイルポンプ22から吐出された後、ロータリバルブ19に供給され、再びリザーバタンク21に戻る。
オイルポンプ22は、電動モータ23により回転駆動される駆動軸(不図示)と、この駆動軸が回転駆動されることにより作動油を吐出するポンプ室(不図示)とを備えた、例えば外接ギアポンプである。電動モータ23は、例えば3相ブラシレスモータである。
電動モータ23は、ECU(制御装置)24により駆動制御される。ECU24は、車速センサ25により検出された車速と、操舵角速度センサ(操舵角速度信号受信部)26により検出されたステアリングホイール2の操舵角速度とに応じて電動モータ23に電流を供給する。
ロータリバルブ19は、入力軸27に連結された筒状のスプール28と、出力軸29に連結されスプール28の外周を覆う筒状のスリーブ30とを有する。入力軸27はステアリングシャフト6と連結され、出力軸29はピニオンギア5と連結されている。スプール28とスリーブ30とはトーションバー31を介して連結されている。ステアリングホイール2から加えられた操舵力によりトーションバー31が捩れると、スプール28とスリーブ30との間に相対的な変位が生じることで、作動油の流れが切り替えられる。トーションバー31の捩れ角θr[deg]は、ロータリバルブ19のスプール28とスリーブ30の位相差であり、スプール28の回転角θh[deg]からスリーブ30の回転角θh[deg]を減じた値となる。
(a) 中立状態(θr=0)の場合、スプール28とスリーブ30との位置関係は中立にあり、ロータリバルブ19において、オイルポンプ22からパワーシリンダ12の1対の液圧室15,16への流路は共に開いており、両液圧室15,16からリザーバタンク21への流路も共に開いているため、オイルポンプ22の吐出圧にかかわらず、両液圧室15,16に作用する油圧は共に大気圧となる。
(b) 左操舵の場合、オイルポンプ22から液圧室15への流路は閉じ、液圧室15からリザーバタンク21への流路は開く。一方、オイルポンプ22から液圧室16への流路は開き、液圧室16からリザーバタンク21への流路は閉じる。よって、液圧室15は大気圧となり、液圧室16にはオイルポンプ22の吐出圧が作用するため、両液圧室15,16の差圧によりピストン14は車幅方向左側に付勢され、操舵方向に補助的な操舵力が付与される。このとき、捩れ角θrの絶対値が大きいほど、オイルポンプ22から液圧室16への流路の開口面積が拡大するため、液圧室16にはより多くの作動油が供給され、補助的な操舵力は大きくなる。
(c) 右操舵の場合、オイルポンプ22から液圧室15への流路は開き、液圧室15からリザーバタンク21への流路は閉じる。一方、オイルポンプ22から液圧室16への流路は閉じ、液圧室16からリザーバタンク21への流路は開く。よって、液圧室15にはオイルポンプ22の吐出圧が作用し、液圧室16は大気圧となるため、両液圧室15,16の差圧によりピストン14は車幅方向右側に付勢され、操舵方向に補助的な操舵力が付与される。このとき、捩れ角θrの絶対値が大きいほど、オイルポンプ22から液圧室15への流路の開口面積が拡大するため、液圧室15にはより多くの作動油が供給され、補助的な操舵力は大きくなる。
回転数指令演算部(モータ指令信号演算部)41は、車速と操舵角速度とに基づき、図5に示すマップを参照して電動モータ23の目標回転数を演算する。図5は、車速と操舵角速度とに応じた目標モータ回転数設定マップであり、目標回転数は、操舵角速度が高いほど、かつ、車速が低いほど高い値となるように設定されている。なお、目標回転数には上限値および下限値が設けられている。
ここで、回転数指令演算部41は、後述する端当て判定処理部49から出力された端当て判定信号が0(false)のときは、上記のように図5のマップを参照して目標回転数を演算する。一方、端当て判定信号が1(true)のときはあらかじめ設定された所定回転数を目標回転数とする。所定回転数は、電動モータ23の負荷抑制を目的とし、図5のマップにおける下限値よりも低い値とする。
回転数FB制御部42は、目標回転数と現在のモータ回転数との偏差をゼロに近づけるモータトルク指令値Td*を演算する。回転数指令演算部41と回転数FB制御部42により、回転数FB制御が構成される。電動モータ23の回転数はポンプ吐出流量に比例するため、回転数FB制御によって適切なポンプ制御を行うことができる。
ここで、回転数FB制御部42は、端当て判定処理部49から出力された端当て判定信号が0(false)のときは、上記のように目標回転数と現在のモータ回転数とに基づいてモータトルク指令値Td*を演算する。一方、1(true)のときはモータトルク指令値Td*の上限を最大値からあらかじめ設定された所定トルクまで所定勾配で徐々に減少させ、端当て判定信号が0(false)となるまでの間、所定トルクを制限することにより、電動モータ23の負荷抑制を図る。
PI制御部44は、電流目標値(q軸電流目標値)と電流センサ33により検出された現在のモータ電流値(q軸電流値)との偏差(q軸電流差)をゼロに近づけるように電圧指令値(q軸電圧指令値)を演算する。
3相変換部45は、電圧指令値(d軸電圧指令値、q軸電圧指令値)と現在のモータ回転角θmとに基づき、dq逆変換(2軸3相変換)を行い、U相、V相、W相の目標相電圧vu*,vv*,vw*を算出する。
電圧−PWMduty変換部(デューティ信号演算部)46は、目標相電圧vu*,vv*,vw*にそれぞれ対応するデューティ比のU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成する。
インバータ回路47は、U相、V相およびW相に対応した3相インバータ回路であり、この回路を構成するパワー素子が各PWM制御信号によって制御されることで、目標相電圧vu*,vv*,vw*に相当する電圧が電動モータ23の各相のステータ巻線に印加されることになる。
角度−速度算出処理部48は、角度センサ(回転速度検出手段)32により検出されたモータ回転角からモータ回転数を算出する。
ディザ信号生成部50は、オイルポンプ22が1対の液圧室15,16のうち高圧側の液圧によって周期的に逆回転方向に戻されるように電動モータ23をディザ制御するディザ信号を生成する。ディザ信号の周波数は、オイルポンプ22からパワーシリンダ12に作動油が供給される供給通路における圧力伝播周波数よりも大きく、かつ、電動モータ23(オイルポンプ22)の回転が充分応答可能な周波数(100Hz以下)となるように、周波数を10〜100Hzの範囲内(例えば30Hz)とし、デューティレシオを50%に設定したパルス信号とする。
スイッチ51は、端当て判定処理部49から出力された端当て判定信号を入力し、端当て判定信号が0(false)のときは1を出力し、1(true)のときはディザ信号生成部50により生成されたディザ信号を出力する。すなわち、端当て状態であると判定された場合にのみモータトルク指令値Td*にディザ信号が重畳される。
ステップS1では、操舵角速度センサ26により検出されたステアリングホイール2の操舵角速度が規定値(第2所定値)未満であって、かつ、角度センサ32により検出されたモータ回転角から算出したモータ回転数(モータ回転速度)が規定値(第1所定値)未満であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2へ進み、NOの場合にはステップS5へ進む。
ステップS2では、判定タイマの値をインクリメント(+1)する。
ステップS3では、判定タイマの値が規定値(第3所定値)を超えたか否かを判定する。YESの場合にはステップS4へ進み、NOの場合にはリターンへ進む。
ステップS4では、端当て状態であると判定し、端当て判定信号を1(true)とする。
ステップS5では、判定タイマの値をリセット(=0)する。
ステップS6では、端当て状態ではないと判定し、端当て判定信号を0(false)とする。
[端当て状態継続時の脈圧抑制作用]
従来の電動油圧パワーステアリング装置では、端当て状態であると判定された場合、電動モータの目標回転数を制限している。ところが、モータトルクは目標回転数とモータ回転数との偏差で決まるため、当該偏差が大きくなるとモータトルクは増大し、電動モータの負荷軽減効果は低い。そこで、端当て状態のとき、モータトルクを制限する手法が考えられる。図7は、実施例1の電動油圧パワーステアリング装置の比較例として、端当て状態で電動モータの目標回転数とモータトルク指令値を共に制限し、実施例1のディザ制御を実施しない場合の動作を示すタイムチャートである。モータトルク指令値は、実施例1と同様に、現在の値から所定トルクまで所定勾配で徐々に減少させ、その後は所定トルクを維持している。
ここで、端当て状態のとき、トーションバーの捩れ角θrは最大であり、パワーシリンダの高圧側液圧室とリザーバタンクとの間の流路は塞がれた状態である。このため、時点t1からモータトルク指令値の制限を開始し、モータトルク指令を徐々に減少させた場合、モータトルク指令値の減少に合わせてモータ回転数は徐々に低下し、時点t2で電動モータは液圧に打ち勝ってオイルポンプを回転駆動できずに停止する。このポンプ停止状態の継続中、オイルポンプの内部リークにより高圧側液圧室の圧力は徐々に低下するため、時点t3で電動モータは液圧に打ち勝ってオイルポンプを回転駆動するものの、直ぐに高圧側液圧室の圧力が復帰することで再び停止する。以降、この現象が断続的に繰り返されることで定期的に断続的な圧力変動が発生し(t4,t5,…)、操舵トルクの断続的な変動によりドライバに違和感を与える。
図8は実施例1の電動油圧パワーステアリング装置における端当て状態での動作を示すタイムチャート、図9は図8の一部拡大図である。図8および図9を見れば明らかなように、時点t1で端当て状態であると判定された場合、端当て状態の継続中に電動モータ23をディザ制御することにより、モータ回転数はゼロ付近で搖動し、電動モータ23が完全に停止した状態となるのを回避することができる。このため、操舵トルクの急変は発生せず、操舵フィーリングの悪化を抑制できる。なお、時点t1以降はモータトルク指令値Td*の上限値を所定トルクに制限しているため、ディザ制御を実施した場合であっても、電動モータ23の駆動負荷軽減効果が阻害されることはない。
また、ディザ信号の周波数は30Hzであり、オイルポンプ22からパワーシリンダ12に作動油が供給される供給通路における圧力伝播周波数よりも大きいため、ディザ制御による操舵トルクの変動を抑制できる。さらに、ディザ信号の周波数(30Hz)は電動モータ23の回転が充分応答可能な周波数(100Hz以下)であるため、デューティレシオを50%に設定することで、モータ回転数をゼロ付近で確実に揺動させることができ、効果的にオイルポンプ22の停止を抑制できる。
従来技術では、操舵角速度が閾値未満、かつ、モータ電流が閾値を超えたとき端当て状態であると判定している。このため、実施例1のように端当て状態でモータトルク指令の上限値を制限すると、この制限によりモータ電流が低下し、端当て状態が継続しているにもかかわらず、端当て状態との判定が解除されるおそれがある。一方、端当て状態が誤って解除されるのを回避するために、モータトルク指令の上限値を閾値よりも大きくしなければならず、この場合、電動モータの負荷軽減効果が小さくなる。
これに対し、実施例1では、モータ回転数(モータ回転速度)が第1所定値未満、かつ、操舵角速度が第2所定値未満である場合に、端当て状態であると判定している。これにより、電動モータ23の電流制限を行った場合であっても、適切に端当て状態を判定できる。
実施例1にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) ステアリングホイール2の操舵操作に伴い転舵輪を転舵させる操舵機構1と、操舵機構1に設けられ、ピストン14によって隔成された1対の液圧室15,16を有し、操舵機構1に対し操舵力を付与するパワーシリンダ12と、駆動軸と駆動軸が回転駆動されることにより作動液を吐出するポンプ室を備え、1対の液圧室に選択的に供給される作動油を供給するオイルポンプ22と、オイルポンプ22を回転駆動する電動モータ23と、電動モータ23を駆動制御するECU24と、ECU24に設けられ、車両の運転状態(車速、操舵角速度)に応じて電動モータ23の目標回転数を演算する回転数指令演算部41と、ECU24に設けられ、パワーシリンダ12のピストン14がストロークエンドに到達したかまたはストロークエンド付近にある端当て状態であるかを判断する端当て判定処理部49と、ECU24に設けられ、端当て判定処理部49によって端当て状態であると判断されるとき、オイルポンプ22が1対の液圧室15,16のうち高圧側の液圧によって周期的に逆回転方向に戻されるようにモータトルク指令値Td*をディザ制御するための信号を生成するディザ信号生成部50と、を有する。
よって、ポンプ停止状態が継続し、急にオイルポンプ22が再始動することにより発生する圧力変動を抑制できる。
なお、ディザ信号パルスはモータトルク指令値Td*に乗算する係数として出力するので、
ディザ制御トルク指令値Td**=モータトルク指令値Td*×ディザ信号
によりディザ制御トルク指令が求まる。一方、ディザ制御しない場合は、ディザ信号を"1"に保持とすれば良いので、制御が簡便に構築できる。
(3) ディザ信号生成部50は、ディザ信号の周波数がオイルポンプ22からパワーシリンダ12に作動油が供給される供給通路における圧力伝播周波数よりも大きくなるようにデューティ信号の周波数を設定する。
よって、ディザ制御による操舵トルクの変動を抑制できる。
(4) ディザ信号生成部50は、端当て判定処理部49が端当て状態であると判断するとき、デューティレシオを約50パーセントに設定する。
よって、モータ回転数をゼロ付近で確実に揺動させることができ、効果的にオイルポンプ22の停止を抑制できる。
電動モータ23の回転数はポンプ吐出圧に比例するため、回転数フィードバック制御によって適切なポンプ制御を行うことができる。
(6) ECU24は、ステアリングホイール2の回転角速度情報である操舵角速度信号を受信する操舵角速度センサ26を備え、端当て判定処理部49は、電動モータ23の回転速度が第1所定値未満であって、かつ操舵角速度が第2所定値未満であるとき、端当て状態であると判断する。
よって、電動モータ23の電流制限を行った場合であっても、適切に端当て状態を判定できる。
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例1では、回転速度検出手段として、電動モータ23の回転速度を検出する角度センサ32を設けた例を示したが、電動モータ23の回転速度を推定する構成としてもよい。また、実施例1では、操舵角速度信号受信部として、操舵角速度センサ26を設けた例を示したが、操舵角センサのセンサ値を1階微分して操舵角速度を得る構成としてもよい。
2 ステアリングホイール
3 前輪(転舵輪)
12 パワーシリンダ
14 ピストン
15,16 1対の液圧室
22 オイルポンプ
23 電動モータ
24 ECU(制御装置)
41 回転数指令演算部(モータ指令信号演算部)
49 端当て判定処理部
50 ディザ信号生成部
Claims (3)
- ステアリングホイールの操舵操作に伴い転舵輪を転舵させる操舵機構と、
前記操舵機構に設けられ、ピストンによって隔成された1対の液圧室を有し、前記操舵機構に対し操舵力を付与するパワーシリンダと、
駆動軸と前記駆動軸が回転駆動されることにより作動液を吐出するポンプ室を備え、前記1対の液圧室に選択的に供給される作動液を供給するポンプと、
前記ポンプを回転駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動制御する制御装置と、
前記制御装置に設けられ、車両の運転状態に応じて前記電動モータへの指令信号であるモータ指令信号を演算するモータ指令信号演算部と、
前記制御装置に設けられ、前記パワーシリンダのピストンがストロークエンドに到達したかまたはストロークエンド付近にある端当て状態であるかを判断する端当て判定処理部と、
前記制御装置に設けられ、前記端当て判定処理部によって端当て状態であると判断されるとき、前記ポンプが前記1対の液圧室のうち高圧側の液圧によって周期的に逆回転方向に戻されるように前記電動モータをディザ制御するディザ信号を生成するディザ信号生成部と、
を有することを特徴とするパワーステアリング装置。 - 請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記ディザ信号生成部は、前記ディザ信号パルスがLowレベルのときに、前記ポンプが前記1対の液圧室のうち高圧側の液圧によって周期的に逆回転方向に戻されるように前記ディザ信号のデューティレシオを決定することを特徴とするパワーステアリング装置。 - 請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記電動モータは、前記電動モータの回転速度を検出または推定する回転速度検出手段を備え、
前記制御装置は、前記電動モータの目標回転数を設定し、前記電動モータの回転速度が前記目標回転数に近づくようにフィードバック制御を行う回転数フィードバック制御回路を有することを特徴とするパワーステアリング装置。
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